説明

低圧ラックおよびこれに用いられる低圧ラック用アダプタ

【課題】様々な形状の街路に立設する電柱に架設される低圧線について、低圧線を低圧碍子に捕縛固定するバインド線を弛みにくい状況下に置く。
【解決手段】低圧ラック101は、凹面状の外周面で低圧線202を支える低圧碍子301の軸心103の両端部分を支持する第1アーム102aおよび第2アーム102bと、これらを接続する接続部材102cとによって構成される。第1アーム102aは、電柱201の長さ方向に沿って電柱201に当接する第1当接領域102abを有する。また、接続部材102cは、第1当接領域102abに対し非垂直状態をなす第2当接領域102cbを有する。直線街路では、第1当接領域102abを電柱201に当接させて低圧ラック101を電柱201に取り付ける。曲線街路では、第2当接領域102cbを電柱201に当接させて低圧ラック101を電柱201に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧碍子を支持する低圧ラックおよびこれに用いられる低圧ラック用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低圧碍子を支持する低圧ラックを電柱や電柱に接続される槍出し金具などに接続し、低圧線を低圧碍子に引き留めて一般家庭まで低圧線を架設することが行われている。
【0003】
低圧線を低圧碍子に引き留める際には、一例として、電柱や槍出し金具に特許文献1の図1に記載されているような低圧ラック(特許文献1では低圧碍子支持金具)を接続し、特許文献2に記載されているようなバインド線を用いて低圧線を低圧ラックに支持される低圧碍子に捕縛させることが行われている。低圧碍子は、鉛直方向に軸心をなす貫通軸(特許文献1ではボルト杆7)が貫通し、低圧碍子の外周に貫通軸の軸回り方向に形成された凹面状の外周面(特許文献1では溝10’)を水平方向に開く向きに向いた状態で低圧ラックに支持されている(特許文献1の図1参照)。そして、略水平に張り架けられた低圧線は、凹面状の外周面に水平方向にフィットした状態でバインド線によって低圧碍子に捕縛固定される(特許文献1の段落番号0010参照)。
【0004】
また、別の一例として、特許文献3の図4に記載されているような、低圧線を引っ掛けるためのフックや低圧線を取り付けるための支持孔を備える電線用碍子を有する電線ラックを電柱に取付けて、この電線用碍子を用いて低圧線を引き留めることも行われている。
【特許文献1】特開平09−027224号公報
【特許文献2】特開平07−193953号公報
【特許文献3】実用新案登録第3110971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような低圧ラックを用いて直線街路に立設する複数の電柱に渡って低圧線を架設する場合、低圧線を低圧碍子に捕縛固定するバインド線は、常に略水平に架設される低圧線の自重を受けることになる。街路が曲線路である場合には、バインド線は、低圧線の自重に加え、低圧線が街路に沿って張架されることにより横方向に作用する低圧線の張力も受けることになる。さらに、低圧線は風力を受けて揺動するため、バインド線は低圧線の揺動力も受ける。
【0006】
このように、特許文献1に記載されているような低圧ラックを用いて低圧線を架設する場合、低圧線を低圧碍子に捕縛固定するバインド線は、低圧線の自重、張力および揺動力を受け、弛みやすくなる状況下に置かれている。バインド線が弛んでしまうと、低圧線が低圧碍子から脱落やすくなり、低圧線を被覆する被覆部材が低圧ラックに接触して低圧線に流れる電流が低圧ラックに漏電する危険性を孕むことになる。
【0007】
また、特許文献3に記載されている電線用碍子は、フックおよび支持孔を備えるという特殊な形状であり、所定の方向に架設される低圧線を支持する場合には適しているが、様々な形状の街路に立設する電柱に低圧線を架設するには適しておらず、汎用性に乏しい。
【0008】
本発明の目的は、様々な形状の街路に立設する電柱に架設される低圧線について、低圧線を低圧碍子に捕縛固定するバインド線を弛みにくい状況下に置くことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の低圧ラックは、電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第1当接領域を備え、凹面状の外周面で低圧線を支える低圧碍子の軸心を前記第1当接領域に対し垂直に向けて当該軸心の一端側を支持する第1アームと、前記第1アームに対し平行に位置付けられ前記軸心の他端側を支持する第2アームと、前記第1アームと前記第2アームとを接続し、前記第1当接領域に対して非垂直状態をなし前記電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第2当接領域を備える接続部材と、を備える。
【0010】
また、別の面から見た本発明の低圧ラックは、(A)凹面状の外周面で低圧線を支える低圧碍子の軸心を垂直に向けて当該軸心の一端側を支持する第1アームと、前記第1アームに対し平行に位置付けられ前記軸心の他端側を支持する第2アームと、前記低圧碍子の軸心方向と平行に配置されて前記第1アームと前記第2アームとを接続する接続部材と、を備える低圧ラック本体部と、(B)電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第1当接領域を備える第1辺部材と、一端側を前記第1辺部材の下端側に接続し当該第1辺部材から前記第1当接領域に対し垂直に延出し前記低圧ラック本体部の接続部材を連結固定させる第2辺部材と、前記第1辺部材の上端側と前記第2辺部材の他端側とを接続し、前記第1当接領域に対して鋭角方向に延出して前記電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第2当接領域を備える第3辺部材と、を備える。
【0011】
また、本発明は、上記低圧ラック用アダプタについても規定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、直線街路においては、第1アーム(第1辺部材)に備わる第1当接領域を電柱の長さ方向に沿わせて低圧ラックを電柱に取り付けることにより低圧碍子の凹面上の外周面は上向きに開き、低圧線を低圧碍子に載置して低圧線の自重を低圧碍子にかけてバインド線が受ける力を軽減させることが可能になり、また、曲線街路においては、接続部材(第3辺部材)に備わる第2当接領域を電柱の長さ方向に沿わせて低圧ラックを電柱に取り付けることにより低圧碍子の凹面上の外周面は斜め上向きに開き、低圧線を凹面上の外周面にフィットさせて鉛直方向に働く低圧線の自重および横方向に働く低圧線の張力の双方を低圧碍子にかけてバインド線が受ける力を軽減させることが可能になり、したがって、様々な形状の街路に立設する電柱に架設される低圧線について、低圧線を低圧碍子に捕縛固定するバインド線を弛みにくい状況下に置くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の一形態を図1ないし図5に基づいて説明する。
【0014】
図1(a)は、直線街路200に立設する電柱201に張り架けられた低圧線202を示す模式図である。図1(b)は、曲線街路200aに立設する電柱201に張り架けられた低圧線202を示す模式図である。低圧ラック101は、街路沿いに所定間隔をもって立設されている電柱201に、電柱201を巻回する支持バンド203によって電柱201の上方に固定されている。低圧ラック101は側面視略コ字形状であり、互いに平行な第1アーム102aおよび第2アーム102bと、この両者を接続する接続部材102cとにより構成されている。第1アーム102aの外側辺102abは、電柱201の長さ方向に沿って電柱201に当接することができる第1当接領域を形成している。第1アーム102aおよび第2アーム102bは、低圧碍子301を貫通する軸心としてのボルト103の両端部分を支持している。接続部材102cの一部は屈曲しており、図2および図4に示すように、平坦部102cxと斜面部102cyとを形成している。接続部材102cの斜面部102cy部分の外側辺102cbは、電柱201の長さ方向に沿って電柱に当接することができる第2当接領域を形成している。
【0015】
低圧碍子301の外周面はボルト103の軸回り方向に沿って凹面状に形成されており、低圧線202を支える支持溝303を形成している。低圧線202は、低圧碍子301の支持溝303にフィットした状態で、バインド線204によって低圧碍子301に捕縛固定される。
【0016】
低圧ラック101は、図1(a)に示すように、第1当接領域としての第1アーム102aの外側辺102abを電柱201の長さ方向に沿わせた状態で、支持バンド203によって電柱に取り付けることが可能である。このように低圧ラック101が設置されることにより、低圧碍子301の支持溝303は上向きに開き、低圧線202を低圧碍子301に載置することが可能になる。このように低圧ラック101を電柱201に取り付ける方法は、電柱201に対し近接もしくは離反する方向にかかる低圧線202の張力が小さい直線街路200において有効である。
【0017】
また、低圧ラック101は、図1(b)に示すように、第2当接領域としての接続部材102cの斜面部102cyの外側辺102cbを電柱201の長さ方向に沿わせた状態で、低圧ラック101を電柱に取り付けることが可能である。このように低圧ラック101が設置されることにより、低圧碍子301の支持溝303は電柱201の方向に傾いた斜め上向きに開き、低圧線202を支持溝303にフィットさせて低圧碍子301に載置することが可能になる。このように低圧ラック101を電柱201に取り付ける方法は、電柱201に対し近接もしくは離反する方向にかかる低圧線202の張力が比較的大きい曲線街路200aにおいて有効である。
【0018】
このように、図1(a)に示す低圧ラック101の取り付け方法、および、図1(b)に示す低圧ラック101の取り付け方法を採用することにより、鉛直方向に働く低圧線202の自重および横方向に働く低圧線202の張力の双方を低圧碍子にかけることができ、相対的にバインド線204が受ける力を軽減させることが可能となる。
【0019】
図1(a)および図1(b)に示すような電柱201の取り付け方が可能である低圧ラック101の構造の詳細について、以下に述べる。
【0020】
図2は、ボルト103によって低圧碍子301を固定した状態の低圧ラック101の左側面図である。図3は、低圧ラック101の背面図である。図4は、低圧ラック101の外観斜視図である。低圧ラック101は、第1アーム102aおよび第2アーム102bのそれぞれの上端を接続部材102cが接続して側面視略コ字形状に一体形成されている。第1アーム102a、第2アーム102bおよび接続部材102cはいずれも長尺の平板形状である。第1アーム102aおよび第2アーム102bは、互いに平行に離間した位置関係をなしている。接続部材102cは、図2に示すように、略45度内側に折れ曲がり、平坦部102cxと斜面部102cyとを形成している。斜面部102cyの長さは、平坦部102cxの長さよりも長くなっている。接続部材102cは、平坦部102cxと第1アーム102aとが直角をなし、斜面部102cyと第2アーム102bとが略135度の角度をなして、第1アーム102aおよび第2アーム102bのそれぞれに接続している。
【0021】
互いに平行に離間している第1アーム102aと第2アーム102bとの間には、低圧碍子301が配置される。第1アーム102aおよび第2アーム102bは、低圧碍子301の軸心となるボルト103を貫通させてその貫通した両端に設けられている締結構造110によって低圧碍子301を支持する構造を有している。より詳細には、第1アーム102aと第2アーム102bとのそれぞれには、互いに向かい合う位置にボルト103を挿通可能なボルト孔102aa、102baが形成されている。低圧碍子301に形成されている貫通孔302の開口部分を第1アーム102aに形成されたボルト孔102aaおよび第2アーム102bに形成されたボルト孔102baのそれぞれに合わせた状態でボルト103を挿通し、ボルト頭103aを第1アーム102aに当接させた状態で第2アーム102bを貫通しボルト孔102baから突出するボルト杆103bにナット103cを装着してそのナット103cを締め付けることによって、ボルト103の両端部分は第1アーム102aおよび第2アーム102bのそれぞれに固定された状態となって、低圧碍子301はボルト103に支持される。すなわち、ボルト頭103aとナット103cとは、締結構造110を構成している。また、ボルト103は図2および図3に示す向きとは反対の向きに挿通することも当然のことながら可能である。この場合、ボルト頭103aは第2アーム102bに当接し、第1アーム102aを貫通しボルト孔102aaから突出するボルト杆103bにナット103cを装着することになる。
【0022】
低圧ラック101を構成する第1アーム102a、第2アーム102bおよび接続部材102cのいずれも、両長辺の側縁部は低圧ラック101の側面視略コ字形状の外側に向けて各々の長辺と平行に折り曲げ加工されており、低圧ラック101の外側に向けて側壁104が形成されている。そのため、第1アーム102a、第2アーム102bおよび接続部材102cのいずれも、幅方向の断面がコ字形状となっている。この折曲加工の折り曲げ高は、第1アーム102aのボルト孔102aaから外側に突出するボルト頭103aの突出高よりも高くなっており、そのために、第1アーム102aの側壁104の外側辺は、第1アーム102aのボルト孔102aaから外側に突出するボルト頭103aよりも外側まで突出している。ここで、ボルト103およびナット103cが図2および図3に示す向きとは反対の向きに挿通されている場合、第1アーム102aのボルト孔102aaからはボルト杆103bの先端が突出することになる。この場合、第1アーム102aの側壁104の外側辺は、ボルト孔102aaから突出するボルト杆103bの突出高よりも外側まで突出するように、第1アーム102aは折曲加工される。なお、側壁104の外側辺はいずれも直線形状となっている。
【0023】
このように形成された低圧ラック101は、第1アーム102aを電柱201の長さ方向に沿わせた状態で支持バンド203によって電柱201に固定することができる。つまり、第1アーム102aの折曲加工部分である側壁104の外側辺102abは、電柱201と当接することができる第1当接領域としての役割を果たす。また、低圧ラック101は、接続部材102cの斜面部102cyを電柱201の長さ方向に沿わせた状態で支持バンド203によって電柱201に固定することができる。つまり、接続部材102cに形成されている側壁104の外側辺102cbは、電柱201と当接することができる第2当接領域としての役割を果たす。
【0024】
図5(a)は、第1アーム102aの外側辺102abを電柱201に沿わせて電柱201に固定された状態の低圧ラック101の右側面図である。図5(b)は、斜面部102cyの外側辺102cbを電柱201に沿わせて電柱201に固定された低圧ラック101の右側面図である。前述したように、第1アーム102a、第2アーム102bおよび接続部材102cのそれぞれに形成されている側壁104の外側辺は直線形状となっている。そのため、本実施の形態の低圧ラック101は、図5(a)に示すように、第1アーム102aの外側辺102abを電柱201の長さ方向に沿わせた状態で支持バンド203によって電柱に固定することができる。また、本実施の形態の低圧ラック101は、図5(b)に示すように、接続部材102cの斜面部102cyの外側辺102cbを電柱201の長さ方向に沿わせた状態で支持バンド203によって電柱に固定することができる。
【0025】
図5(a)に示す方法で低圧ラック101を電柱201に固定した場合、低圧碍子301の支持溝303は上向きに開く。この状態の支持溝303に低圧線202をフィットさせて低圧線202を低圧碍子301に載置すると、低圧線202の自重は低圧碍子301にかかり、その分だけ低圧線202を低圧碍子301に捕縛固定するバインド線204にかかる力は減少する。結果として、バインド線204は弛みにくくなる。また、バインド線204が弛んだとしても、低圧線202はその自重により支持溝303にフィットしたままの状態が維持され低圧線202が低圧碍子301から脱落しにくくなり、低圧線202を被覆する被覆部材が低圧ラック101に接触してその被覆部材が損傷することを防ぐことができる。
【0026】
図5(b)に示す方法で低圧ラック101を電柱201に固定した場合、低圧碍子301の支持溝303は上向きよりも電柱201の方向に略45度傾いた向きに開く。この状態の支持溝303に低圧線202をフィットさせて低圧線202を低圧碍子301に載置すると、低圧線202の自重は低圧碍子301の支持溝303部分にかかり、また、電柱201から離反する方向に働く低圧線202の張力も低圧碍子301の支持溝303部分にかかる。低圧碍子301が受ける力の分だけ、低圧線202を低圧碍子301に捕縛固定するバインド線204にかかる力は減少する。結果として、バインド線204は弛みにくくなる。また、バインド線204が弛んだとしても、低圧線202はその自重および張力によって支持溝303にフィットしたままの状態が維持されるため、低圧線202が低圧碍子301から脱落しにくい。
【0027】
このように、本実施の形態の低圧ラック101によれば、直線街路200(図1(a)参照)において、第1アーム102aの外側辺102abを電柱201の長さ方向に沿わせて低圧ラック101を電柱201に取り付けることにより低圧碍子301の支持溝303は上向きに開き、低圧線202を低圧碍子301に載置して低圧線202の自重を低圧碍子301にかけてバインド線204が受ける力を軽減させることが可能になる。また、本実施の形態の低圧ラック101によれば、曲線街路200a(図1(b)参照)において、接続部材102cの斜面部102cyの外側辺102cbを電柱201の長さ方向に沿わせて低圧ラック101を電柱201に取り付けることにより低圧碍子301の支持溝303は斜め上向きに開き、低圧線202を支持溝303にフィットさせて鉛直方向に働く低圧線202の自重および横方向に働く低圧線202の張力の双方を低圧碍子301にかけてバインド線204が受ける力を軽減させることが可能になる。すなわち、本実施の形態の低圧ラック101によれば、直線および曲線問わず様々な形状の街路に立設する電柱201に架設される低圧線202について、低圧線202を低圧碍子301に捕縛固定するバインド線204を弛みにくい状況下に置くことができる。
【0028】
さらに、本実施の形態の低圧ラック101によれば、バインド線204が弛んだとしても、低圧線202が支持溝303にフィットした状態のまま維持されるので、低圧線202が脱落して低圧ラック101に接触することを防ぐことができる。
【0029】
加えて、本実施の形態の低圧ラック101によれば、バインド線204で低圧線202を低圧碍子301に捕縛固定するバインド打ち作業を行う際にも、作業員は、低圧線202の自重の多くを低圧碍子301に受け止めさせて、より強固に低圧線202と低圧碍子301とを捕縛固定することができる。
【0030】
次いで、別の実施の形態を図6および図7に基づいて説明する。この場合、図1ないし図5に基づいて説明した実施の一形態と同一の部分は同一符号で示し、説明も省略する。本発明の別の実施の一形態の低圧ラック101は、低圧ラック本体部150と低圧ラック用アダプタ151との二部品が連結されたものである。
【0031】
図6は、本実施の形態の低圧ラック101の左側面図である。本実施の形態の低圧ラック101は、低圧ラック本体部150と低圧ラック用アダプタ151とが連結固定されて構成されている。
【0032】
低圧ラック本体部150は、前述した実施の形態の低圧ラック101と同様に、第1アーム102aおよび第2アーム102bのそれぞれの上端を接続部材102cが接続して側面視略コ字形状に一体形成されている。接続部材102cは略45度に屈曲しておらず、第1アーム102aおよび第2アーム102bのそれぞれと略直角をなしている。すなわち、接続部材102cには平坦部102cxのみが形成されており、低圧碍子301の軸心方向と平行に延出している。そして、接続部材102cの外側に位置付けられる側壁104の外側辺102czは直線形状となっている。さらに、接続部材102cの平坦部102cxには、後述する低圧ラック用アダプタ151の第2辺部材153に備わるボルト孔160bと同じ形状のボルト孔160aが設けられている。
【0033】
低圧ラック用アダプタ151は、第1辺部材152、第2辺部材153、第3辺部材154を備えて形成されている。低圧ラック用アダプタ151の第1辺部材152、第2辺部材153および第3辺部材154はいずれも、低圧ラック本体部150の第1アーム102a、第2アーム102bおよび接続部材102cよりも幅広の平板形状である。第2辺部材153は、その一端側を第1辺部材152の下端側に接続しており、第1辺部材152からその第1辺部材152の延びる方向に対し垂直に延出している。第3辺部材154は、第1辺部材152の上端側と第2辺部材153の他端側とを接続し、第1辺部材152の延びる方向に対し鋭角方向に傾斜している。低圧ラック用アダプタ151は、第1辺部材152、第2辺部材153および第3辺部材154が一体形成され側面視略直角三角形形状を形成している。
【0034】
第2辺部材153には、前述したボルト孔160aと同じ形状のボルト孔160bが設けられている。つまり、低圧ラック本体部150の接続部材102cと低圧ラック用アダプタ151の第2辺部材153とは、図6に示すように、ボルト孔160a、160bを貫通する連結ボルト161と、この連結ボルト161に螺合するナット162によって、互いの長手方向を一致させて連結固定が可能となっている。
【0035】
低圧ラック用アダプタ151の第1辺部材152、第2辺部材153および第3辺部材154には、前述した実施の形態の低圧ラック101と同様に、それぞれの両長辺の側縁部は外側に折り曲げられて側壁155をなしており、それぞれの幅方向の断面は略コ字形状となっている。また、側壁155の外側辺は直線形状となっている。第1辺部材152と第3辺部材154とは鋭角をなして接続されているため、第1辺部材152に形成される側壁155の外側辺152aと第3辺部材154に形成される側壁155の外側辺154aとは、互いに鋭角をなす関係となっている。第1辺部材152に形成される側壁155の外側辺152aは、連結ボルト161およびナット162によって接続部材102cと第2辺部材153とが連結した状態で、低圧ラック101の第1アーム102aから突出する側壁104の外側辺102abよりも電柱201側に位置付けられる。そのため、第1辺部材152に形成されている側壁155の外側辺152aは、電柱201の長さ方向に沿って当接することができる第1当接領域としての役割を果たす。また、第3辺部材154に形成されている側壁155の外側辺154aは、電柱201の長さ方向に沿って当接することができる第2当接領域としての役割を果たす。
【0036】
図7は、本実施の形態の低圧ラック101が電柱201に固定された状態を示す概要図である。本実施の形態の低圧ラック101を電柱201に固定する方法は、第1辺部材152に形成されている側壁155の外側辺152aを電柱201に沿わせる向きに低圧ラック101を電柱201に固定し低圧碍子301の支持溝303を上向きに向ける方法(図7(a)参照)と、第3辺部材154に形成されている側壁155の外側辺154aを電柱201に沿わせる向きに低圧ラック101を電柱201に固定し低圧碍子301の支持溝303を上向きよりも電柱201寄りの斜め上方向に向ける方法(図7(b)参照)とがある。これらの方法によれば、前述した実施の形態と同様に、低圧線202の自重や横方向に働く低圧線202の張力を低圧碍子301にかけることができる。
【0037】
このように、本実施の形態の低圧ラック101によっても、直線および曲線問わず様々な形状の街路に立設する電柱201に架設される低圧線202について、低圧線202を低圧碍子301に捕縛固定するバインド線204を弛みにくい状況下に置くことができる。
【0038】
なお、本実施の形態の低圧ラック本体部150に備わる第1アーム102aの外側辺102abは、電柱201と当接しないが、別の実施の形態として、低圧ラック本体部150の接続部材102cに設けるボルト孔160aの第1アーム102aからの距離、および、低圧ラック用アダプタ151の第2辺部材153に設けるボルト孔160bの第1辺部材152からの距離を等しくすることで、低圧ラック用アダプタ151の第1辺部材152だけでなく低圧ラック本体部150の第1アーム102aも電柱に当接するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は、直線街路に立設する電柱に張り架けられた低圧線を示す模式図であり、(b)は、曲線街路に立設する電柱に張り架けられた低圧線を示す模式図である。
【図2】ボルトによって低圧碍子を固定した状態の低圧ラックの左側面図である。
【図3】低圧ラックの背面図である。
【図4】低圧ラックの外観斜視図である。
【図5】(a)は、第1アームの外側辺を電柱に沿わせて電柱に固定された状態の低圧ラックの右側面図であり、(b)は、斜面部の外側辺を電柱に沿わせて電柱に固定された低圧ラックの右側面図である。
【図6】低圧ラックの左側面図である。
【図7】低圧ラックが電柱に固定された状態を示す概要図である。
【符号の説明】
【0040】
101 低圧ラック
102a 第1アーム
102ab 外側辺(第1当接領域)
102ac 凹空間(凹部)
102b 第2アーム
102c 接続部材
102cb 外側辺(第2当接領域)
103 ボルト(軸心)
110 締結構造
150 低圧ラック本体部
151 低圧ラック用アダプタ
152 第1辺部材
152a 外側辺(第1当接領域)
153 第2辺部材
154 第3辺部材
154a 外側辺(第2当接領域)
201 電柱
301 低圧碍子
303 支持溝(凹面状の外周面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第1当接領域を備え、凹面状の外周面で低圧線を支える低圧碍子の軸心を前記第1当接領域に対し垂直に向けて当該軸心の一端側を支持する第1アームと、
前記第1アームに対し平行に位置付けられ前記軸心の他端側を支持する第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームとを接続し、前記第1当接領域に対して非垂直状態をなし前記電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第2当接領域を備える接続部材と、
を備える低圧ラック。
【請求項2】
前記第1アームおよび前記第2アームは、前記低圧碍子の軸心の両端を貫通させてその貫通した両端に設けられている締結構造によって当該低圧碍子を支持する構造を有し、
前記第1アームは、その両側縁が前記締結構造による突出高よりも高くなる折曲げ高で折曲加工され、この折曲加工部分を前記第1当接領域としている、
請求項1記載の低圧ラック。
【請求項3】
凹面状の外周面で低圧線を支える低圧碍子の軸心を垂直に向けて当該軸心の一端側を支持する第1アームと、前記第1アームに対し平行に位置付けられ前記軸心の他端側を支持する第2アームと、前記低圧碍子の軸心方向と平行に配置されて前記第1アームと前記第2アームとを接続する接続部材と、を備える低圧ラック本体部と、
電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第1当接領域を備える第1辺部材と、一端側を前記第1辺部材の下端側に接続し当該第1辺部材から前記第1当接領域に対し垂直に延出し前記低圧ラック本体部の接続部材を連結固定させる第2辺部材と、前記第1辺部材の上端側と前記第2辺部材の他端側とを接続し、前記第1当接領域に対して鋭角方向に延出して前記電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第2当接領域を備える第3辺部材と、を備える低圧ラック用アダプタと、
を備える低圧ラック。
【請求項4】
電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第1当接領域を備える第1辺部材と、一端側を前記第1辺部材の下端側に接続し当該第1辺部材から前記第1当接領域に対し垂直に延出する第2辺部材と、前記第1辺部材の上端側と前記第2辺部材の他端側とを接続し、前記第1当接領域に対して鋭角方向に延出して前記電柱の長さ方向に沿って当該電柱に当接することができる第2当接領域を備える第3辺部材と、を備え、
前記第2辺部材は、凹面状の外周面で低圧線を支える低圧碍子の軸心を垂直に向けて当該軸心の一端側を支持する第1アームと、前記第1アームに対し平行に位置付けられ前記軸心の他端側を支持する第2アームと、前記低圧碍子の軸心方向と平行に配置されて前記第1アームと前記第2アームとを接続する接続部材と、を備える低圧ラック本体部の前記接続部材を連結固定させる、
低圧ラック用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−118566(P2009−118566A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286141(P2007−286141)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】