説明

低塩濃度海水の製造方法

【課題】 一定した塩濃度の海水を得ることができる低塩濃度海水の製造方法の提供。
【解決手段】 タンク1内の海水をNF膜モジュール4で濾過処理する工程を有しており、NF膜モジュール4による濾過処理により、海水の電気伝導度を15%以上低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低塩濃度海水の製造方法とそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
氷を用いて鮮魚を保冷するときは、真水氷よりも海水氷を使用した方が、鮮魚解凍時の味が良いことが知られている。しかし、海水氷を使用すると、氷温が低すぎて鮮魚が冷凍焼けを起こすことがある。このため、海水を真水で薄めたものから造った氷や真水に塩を添加したものから造った氷が使用されている。
【0003】
これらの方法は簡便ではあるが、大量の氷を造ろうとする場合には大量の水や塩が必要となるほか、地域や季節によって海水の塩組成が異なる場合には、水による希釈倍率や塩の添加量を調整する方法では、一定した品質の氷を得ることが難しくなる。
【0004】
特許文献1には、NF膜を用いた濾過方法が記載されている。特許文献2、3には、RO膜とNF膜を組み合わせた海水の濾過処理が記載されている。特許文献4には、RO膜を用いた水からのほう素の除去方法が記載されている。
【特許文献1】特表平11−504564号公報
【特許文献2】特開2002−292248号公報
【特許文献3】特開平9−141260号公報
【特許文献4】特開平9−290275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一定した塩濃度の海水を得ることができる低塩濃度海水の製造方法と、それに使用する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、課題の解決手段として、下記の各発明を提供する。
1.海水をNF膜モジュールで濾過処理する工程を有しており、前記NF膜モジュールによる濾過処理により、処理前の海水の電気伝導度に対して処理後の海水の電気伝導度を15%以上低下させる、低塩濃度海水の製造方法。
2.処理前の海水の電気伝導度に対して処理後の海水の電気伝導度を15〜35%低下させる、請求項1記載の低塩濃度海水の製造方法。
3.処理後の海水の電気伝導度が20,000〜40,000μS/cmである、請求項1又は2記載の低塩濃度海水の製造方法。
4.前記濾過処理運転時において、NF膜モジュールの入口圧力が1.5〜3.0MPa、透過水量が30〜3000L/hr、濃縮水排出量が300〜30,000L/hrである、請求項1〜3のいずれか1項記載の低塩濃度海水の製造方法。
5.請求項1〜4の低塩濃度海水の製造方法を実施するための装置であり、海水の貯水槽、プレフィルタ、NF膜モジュールを備えており、少なくとも前記プレフィルタと前記NF膜モジュールの間に高圧ポンプを備えた装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、NF膜モジュールによる1段階の濾過のみにより、海水の電気伝導度を調整することができる。そして、電気伝導度を指標にすることで、常に一定した塩濃度の海水を製造することができるため、それから得られる氷の品質も一定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に示す本発明の低塩濃度海水の製造方法を実施するための装置(製造フロー)にもとづいて、本発明を説明する。
【0009】
タンク1内には、海から汲み上げた海水が貯水されている。バルブ11を開放し、ポンプ21を作動させて、タンク1内の海水をバグフィルター2とプレフィルター3の順で濾過する。バグフィルター2とプレフィルター3で濾過して大小の異物を取り除くことにより、NF膜モジュール4に対する負荷が軽減され、濾過効率が高められる。なお、海水中の異物の含有状態に応じて、バグフィルター2とプレフィルター3のいずれか一方のみにしてもよいし、両方とも使用しなくてもよい。
【0010】
続いて、高圧ポンプ22を作動させて、プレフィルター3で濾過した前処理海水をNF膜モジュール4に送って濾過する。このとき、高圧ポンプ22と調圧バルブ12により、NF膜モジュール4の入口圧力が所定範囲になるように調整する。前記入口圧力は、1.5〜3.0MPaが好ましく、1.8〜2.5MPaがより好ましい。
【0011】
NF膜モジュール4は、プレフィルター3から送られてくる前処理水の入口、透過水出口、濃縮排水出口の3つの出入口を有するケーシング内にNF膜が充填されたものである。NF膜モジュールは、透過水を所定範囲の電気伝導度に調整できるものであればよく、公知のものを用いることができる。例えば、フィルムテック社(米国ミネソタ州)のNF270−4040(Ser.No.:F2454842,F2454859)、CCM社のNE4040−70(Ser.No.:BSGJF1520003)等を挙げることができる。
【0012】
NF膜モジュール4で濾過後、透過水は図示していない透過水タンクに貯水し、濃縮排水はバルブ12を開放した状態で排出する。透過水ラインと濃縮排水ラインには、それぞれ流量計32、33が設置されている。
【0013】
NF膜モジュール4の運転時、透過水量は100〜300L/hrが好ましく、150〜200L/hrがより好ましく、濃縮水排出量は1000〜3000L/hrが好ましく、1500〜2000L/hrがより好ましい。
【0014】
処理前の海水(タンク1内の海水であるが、プレフィルタ3の処理水でも同じである)の電気伝導度に対して透過水の電気伝導度は、鮮魚保冷用の氷にした場合の保冷性能を考慮すると、15〜35%低下されていることが好ましく、20〜35%低下されていることがより好ましく、30〜35%低下されていることが更に好ましい。
【0015】
透過水の電気伝導度は、鮮魚保冷用の氷にした場合の保冷性能を考慮すると、30,000〜40,000μS/cmが好ましく、30,000〜35,000μS/cmがより好ましく、30,000〜32,000μS/cmが更に好ましい。
【0016】
本発明の製造方法で得られた低塩濃度海水は、冷却した状態、シャーベット状又は氷にした状態で、魚介類と直接又は間接的に接触させることにより、保冷用として使用することができる。なお、間接的に接触させる場合には、本発明の製造方法で得られた低塩濃度海水を柔軟性のある樹脂製の容器(袋等)に充填した状態で使用することができる。
【実施例】
【0017】
実施例1〜7
図1に示す製造フローにより、低塩濃度海水を製造した。製造装置に使用した各要素の詳細と電気伝導度の測定方法は下記のとおりであり、製造条件等は表1に示すとおりである。
【0018】
バグフィルター:濾過精度孔径25μ相当品
プレフィルター:ポリプロピレン製糸巻きフィルター,濾過精度5μ,500mm長2本
NF膜モジュール:SAEHAN社製,4”NFモジュールBSHJA0720001
電気伝導度:サンプル水を容器に採水し、そこにパーソナルSCメーター(横河電機社製,SC72-21-J-AA)のセンサーを差し込んで測定した。
【0019】
【表1】

【0020】
実施例8〜14
図1に示す製造フローにより、実施例1〜7に準じて低塩濃度海水を製造した。製造条件等は表1に示すとおりである。
【0021】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の低塩濃度海水の製造方法を実施するための装置(製造フロー)を示す図。
【符号の説明】
【0023】
1 海水タンク
2 バグフィルター
3 プレフィルター
4 NF膜モジュール
11 元バルブ
12 調圧バルブ
21 原水加圧ポンプ
22 高圧ポンプ
31 濾過圧力計
32 透過水流量計
33 濃縮排水流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水をNF膜モジュールで濾過処理する工程を有しており、前記NF膜モジュールによる濾過処理により、処理前の海水の電気伝導度に対して処理後の海水の電気伝導度を15%以上低下させる、低塩濃度海水の製造方法。
【請求項2】
処理前の海水の電気伝導度に対して処理後の海水の電気伝導度を15〜35%低下させる、請求項1記載の低塩濃度海水の製造方法。
【請求項3】
処理後の海水の電気伝導度が20,000〜40,000μS/cmである、請求項1又は2記載の低塩濃度海水の製造方法。
【請求項4】
前記濾過処理運転時において、NF膜モジュールの入口圧力が1.5〜3.0MPa、透過水量が30〜3000L/hr、濃縮水排出量が300〜30,000L/hrである、請求項1〜3のいずれか1項記載の低塩濃度海水の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の低塩濃度海水の製造方法を実施するための装置であり、海水の貯水槽、プレフィルタ、NF膜モジュールを備えており、少なくとも前記プレフィルタと前記NF膜モジュールの間に高圧ポンプを備えた装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−58101(P2010−58101A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229480(P2008−229480)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】