説明

低密度医療用包帯基材、医療用包帯及び医療用包帯製品

本発明は医療用包帯製品用の低密度布地基材に関する。基材は、布地内に形成され、布地の両表面間で布地の厚み方向への水の浸透を提供する複数の縦方向に延びる空隙部を有する。反応性樹脂システムが基材内に含浸あるいは表面コーティングされており、反応性樹脂システムはその乾燥状態では安定しており、充分な湿気と接触して硬化し、剛質自立構造体を形成する。ソフトでフレキシブルな保護材料が基材の少なくとも1表面を覆い、医療材料の使用時に基材と患者の皮膚との間の緩衝材として作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は整形外科分野に関し、特には改良された低密度医療用包帯基材、湿気硬化性材料で形成された医療用包帯(特に副木)及び医療用包帯製品に関する。
【背景技術】
【0002】
身体部の固定を必要とする骨折等の怪我の治療に使用する医療用包帯は一般的に怪我部周囲に巻き付けられた後に剛質構造体を形成すべく硬化する物質が含浸された布地または粗生地の帯体で形成される。伝統的に利用されているこの硬化物質は石膏である。
【0003】
従来は、まず怪我をした手あるいは足に綿布等の保護カバー材を当接させ、その保護カバー材と手あるいは足を使用直前に水に浸された石膏で含浸された織布で覆い、ギブスあるいは副木を形成していた。この方法は現在も広く実施されているが、いくつかの重大な弱点を有している。例えば上述の利用方法は面倒であり、時間がかかる。複数の部材を必要とし、適切な利用には相当な技術が要求される。そのような硬化材は使用中に劣化し、しかも重くて悪臭や痒みを発生させる。
【0004】
石膏と副木とを使用するそれら従来方法の弱点を緩和するために一体型副木材料が考案されている。例えば米国特許3900024、3923049及び4235228が一体型副木材料を開示されている。これら特許は全て複数層の石膏含浸布を含んだパッド材料を解説している。そのような一体型副木材料は使用がさほど面倒ではなく、素早く利用できるが、それでも石膏に特有であるいくつかの弱点を有している。全ての石膏副木はその重量に対して強度が比較的に弱く、結果として副木製品は重くて嵩張るものとなっていた。石膏副木は硬化に時間を要し、最大強度に達するには24時間から72時間を必要とした。石膏は水中で崩壊するため、副木を着用した状態での風呂やシャワーの利用は困難であった。
【0005】
ギブスと副木の技術の進歩は米国特許4411262と4502479で開示されている。これら特許で開示されているギブス材料は、乾燥した湿気不浸透性であるパッケージに収納され、フレキシブルな湿気硬化性樹脂含浸布を含んでいる。石膏と較べてこれら樹脂は非常に軽量であるが非常に頑丈であり、比較的透過性で副木材料に通気性を提供する。従来の湿気硬化システムは湿気硬化性樹脂を含浸した複数層のファイバグラス布のごとき布地を収納するパッケージを含んでいる。しかし、パッケージの再密封は想定されておらず、パッケージから取り出した後には材料全体が迅速に使用されなければならないものであった。なぜならそのような湿気硬化性樹脂は大気中の湿気に触れただけでも比較的素早く硬化するからである。
【0006】
副木技術のさらに大きな進展は本願出願人が所有する米国特許4770299、4869046、4899738及び5003970で開示されている。それぞれの特許は、使用時に所定長の医療用包帯がロールから切り取られ、別使用時まで残りの包帯がフレキシブルな乾燥状態で維持される種々なロール形態の湿気硬化性副木製品を開示する。これらの特許は、硬化した基材と患者皮膚との間に提供される合成不織布保護層内に位置する複層のファイバグラス布の使用を開示する。
【0007】
本発明は現在使用されている製品のさらなる改良を提供し、開示するものである。特に、最適な硬度で硬化する基材の性能を損なわずに基材密度を減少させるべく基材内部に形成された空隙部を有した二重布基材が開示されている。これら空隙部は基材密度を減少させるだけではなく、基材構造内への迅速均等な水の浸透を助ける導水路を形成する。基材の低密度は基材の軽量化に貢献し、湿気硬化性樹脂に対して効果的な水分を供給させるべく含水量及び水分布特性を改善させ、さらに均等な包帯硬化を提供する。加えて基材の縁部は硬化時でも比較的軟質に提供され、患者の着用快適性を高めている。基材は成型性が高く、布層は踝部や肘部等の身体有角部周囲であっても分離することはない。
【0008】
本願で開示される本発明は石膏の利点と湿気硬化性樹脂システム(材料)の利点とを組み合わせ、両者の弱点を回避する。このことは改善強度と改善利便性とを備えた一体型副木システムの提供によって達成される。そのような一体型副木システムの1例は湿気硬化性樹脂を活用する。さらに、所望長の包帯製品が引き出されてカットされた後に再密封可能な湿気不浸透性パッケージを含む。湿気不浸透性パッケージ内の包帯製品の硬化は防止され、副木システムのコスト効果を高めている。本発明の別形態の一体型副木システムはその使用時まで湿気侵入を防止する密封プレカット(カット済み)包帯製品を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって本発明の1目的は改良使用特性を有した医療用包帯基材の提供である。
【0010】
本発明の別目的は比較的に低密度である医療用包帯の提供である。
【0011】
本発明の別目的は改善された湿潤特性及び硬化特性を備えた医療用包帯の提供である。
【0012】
本発明の別目的は湿気と接触して硬化し、剛質自立構造体を形成する湿気硬化性樹脂を使用したロール形態医療用包帯製品の提供である。
【0013】
本発明の別目的は所望長の材料を引き出して利用し、残りをその使用時まで非硬化状態で維持する医療用包帯製品の提供である。
【0014】
本発明の別目的は湿気と接触して硬化し、剛質自立構造体を形成する湿気硬化性樹脂を使用したプレカット医療用包帯製品の提供である。
【0015】
本発明の別目的は医療用包帯製品の提供である。
【0016】
本発明の別目的は患者の皮膚に対して緩衝部を提供するソフトな保護包装体を含んだ一体型医療用包帯製品の提供である。
【0017】
本発明の別目的はその保存容器から取り出した後、患者に適用する前にソフトな保護包装体内に挿入できる医療用包帯基材の提供である。
【0018】
本発明の別目的は上述の特徴を提供し、前述の目的に則した医療用包帯基材の製造方法の提供である。
【0019】
本発明の別目的は上述の特徴を提供し、前述の目的に則した医療用包帯の使用方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のこれら及び他の目的は医療用包帯に低密度基材を提供する以下の好適実施例において達成される。この低密度基材は両者間に提供された糸材で連結されている2表面(表面及び裏面)を有した長形布地を含んでいる。これら2表面それぞれの縦方向に存在する左右両側縁部は所定の布厚で提供される。複数の縦方向に延びる空隙部が布地内に形成され、それら2表面を連通させており、基材密度を減少させている。
【0021】
本発明の1好適実施例によれば布地は縦編二重布を含む。
【0022】
本発明の別好適実施例によれば布地はガラス繊維糸、高粘性ポリエステル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アラミド繊維糸及び超高分子ポリエチレン繊維糸で成る糸群から選択された糸で編成された縦編二重布を含む。
【0023】
本発明の別好適実施例によれば糸番手範囲は約20テックスから約136テックスである。
【0024】
本発明の別好適実施例によれば糸番手範囲は約44テックスから約136テックスである。
【0025】
本発明の別好適実施例によれば基材を形成する布地はメートル当たり約450コースから580コース並びに10センチメートル当たり約50ウェールから90ウェールを含んでいる。
【0026】
本発明の別実施例によれば布地は1mmから10mmの厚みである。
【0027】
本発明の別好適実施例によれば布地は約500g/m2から約3000g/m2の重量である。
【0028】
本発明の別好適実施例によれば布地は縦編布を含み、空隙部は鎖編、挿入編及び中央編のいずれかの基材の縦方向に沿って間をおき省略されたウェールにより形成される。
【0029】
本発明の別好適実施例によれば1つのウェール端が約2ウェールから10ウェールの間隔で省略される。
【0030】
本発明の別好適実施例によれば、両表面間に提供された糸により連結された2表面と、所定の布厚を提供する表面両側の側縁部とを有した長形布地を含んだ低密度基材を含む医療用包帯が提供される。複数の縦長空隙部が布地内に形成され、基材密度を減少させるべく提供された2表面を連通させており、2表面間で布地に水を浸透させる。反応性樹脂システムが基材の表面と基材の厚み方向に提供される。この反応性樹脂システムは基材をフレキシブルで変形自由な第1状態と、反応性樹脂システムが硬化して基材を硬化させ、所望の形状に変形させた第2状態とを有している。
【0031】
本発明の別好適実施例によれば反応性樹脂システムは湿気硬化性樹脂と、基材表面及び基材の厚み方向への水の均等な分布を可能にする空隙部とを含んでいる。
【0032】
本発明の別好適実施例によれば、布地はガラス繊維糸、高粘性ポリエステル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アラミド繊維糸及び超高分子ポリエチレン繊維糸で成る糸群から選択された糸で編成された縦編二重布を含む。布地はさらに基材表面と基材内に提供される湿気硬化性反応樹脂システムを含み、空隙部は布地の表面及び厚み方向への均等な水の浸透を可能にすべく提供されている。
【0033】
本発明の別好適実施例によれば医療用包帯は基材の少なくとも1表面を覆い、基材への水の浸透を可能にしているソフトでフレキシブルな保護材料を含んでいる。
【0034】
本発明の別好適実施例によれば基材は特定の医療的利用に適したプレカット状態で提供される。
【0035】
本発明の別好適実施例によれば基材は所望長が必要に応じて切り取れるロール形態で提供される。
【0036】
本発明の別好適実施例によれば、湿気不浸透性材料で形成され、湿気進入を防止すべく密封可能なスリーブと、スリーブ内に位置し、使用時まで湿気の進入を防止すべく密封された医療材料とを含んだ低密度医療用包帯製品が提供される。この医療材料は両者間に提供された糸で連結された2表面と、それら両側で縦に延び、所定の布厚を提供する2側縁部とを有した長形布地で成る低密度基材を含んでいる。基材の両表面を連通させる複数の縦長空隙部が布地内に形成されて基材密度を減少させており、それら両表面間の水の浸透を助けている。反応性樹脂システムが基材内に含浸され、表面コーティングされる。反応性樹脂システムはその乾燥状態では安定しており、充分な湿気と接触して硬化し、剛質自立構造体を形成する。ソフトでフレキシブルな保護材料が基材の少なくとも1表面を覆い、医療材料の使用時に基材と患者の皮膚との間の緩衝材として作用する。
【0037】
本発明の別好適実施例によれば製品は基材の両表面を覆うソフトでフレキシブルな保護材料を含んでいる。
【0038】
本発明の別好適実施例によれば製品は基材の両表面及び両側縁部を包み込むソフトでフレキシブルな保護材料を含んでいる。
【0039】
本発明の別好適実施例によれば布地は縦織二重布を含んでいる。
【0040】
本発明の別好適実施例によれば布地はガラス繊維糸、高粘性ポリエステル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アラミド繊維糸及び超高分子ポリエチレン繊維糸で成る糸群から選択された糸で編成される縦編二重布を含む。
【0041】
本発明の別好適実施例によれば布地は縦編布を含み、空隙部は布地の鎖編、挿入編及び中央編のいずれかの基材の縦方向に沿って間をおき省略されたウェールによって形成される。
【0042】
本発明の別好適実施例によれば1ウェール端は約2ウェールから10ウェールで間をおいて省略される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の目的の一部は前述した。本発明の他の目的及び利点は添付図面を利用した以下の本発明の詳細な解説で理解されよう。
【0044】
図1は本発明による医療用包帯製品10を示している。包帯製品10は例えば24フィート等の都合の良い長さで販売でき、コイル形態に巻かれて適切なディスペンサ11内に収容されている。ディスペンサカートン11の下隅にはスロット12が提供されており、ここから包帯製品10が排出される。
【0045】
本発明の1実施例によると、包帯製品10は、積層金属ホイル及びプラスチック等の湿気不浸透性材料で形成された外側長形スリーブ13で形成されている。スリーブ13は平行に延びる左右両側縁部に沿って加熱封止されており、長形チューブ体を形成している。後に詳説する長形医療用包帯14はスリーブ13内に収容されており、使用時まで実質的に乾燥した状態に維持される。医療用包帯14はこれを収容しているスリーブと共に必要な量をカートン11から引き出すことで排出され、鋏等で切断する。残りの包帯14の端部はバークリップ等のクリップを受領するに充分な長さのスリーブ部分を確保して、残りのスリーブ本体13内へたくし込む。もちろん、湿気の侵入を防止する限りどのような形態の閉め具を使用してもよい。
【0046】
図2では、包帯14の適切な長さを目盛りで決定できるようにスリーブ13の片側縁部に目盛り “M”が印刷されている。スリーブ13は開封時にスリーブに入る空気量を減少させるよう、好適には包帯14に対して縦方向に密接する。
【0047】
後に詳説するように図3と図4で示す包帯14は好適には二重布で形成された低密度基材16を含んでいる。本発明の1実施例によれば基材16は、好適にはポリプロピレンあるいはその他の適切な繊維等のソフトでフレキシブルな不織繊維で形成された管状包装体18内に収容されている。これで患者皮膚と基材16との間に緩衝保護層が提供される。
【0048】
管状包装体18は、開放気泡あるいは網状泡、独立気泡フォーム、ソフトでフレキシブルなフィルム及び不織材料等であるその他の幅広い材料群から選択できる。好適形態では副木は不織材料内に包まれている。
【0049】
あるいは基材16をスリーブ13内に収容し、適用直前に保護緩衝層内に収容することもできる。これは、緩衝材料を基材16周囲で折り曲げ、テープ等の接着剤でその場に固定することで達成できる。
【0050】
基材16は、実質的に乾燥状態に維持されているときには安定しているが充分な量の湿気にさらされると硬化して剛質自立構造体を形成する反応性樹脂システムが含浸処理またはコーティング処理されている。反応性樹脂システムの典型的な配合例を2例挙げる。

表1

イソネート↓143L または
モンジュール↓CD または ポリイソシアネート 50.0%
ルビネート↓XI168
プルラコール↓P1010 ポリオール 46.6%
DC−200シリコン 消泡剤 0.30%
塩化ベンゾイル 安定剤 0.10%
サンキャット.DM−70 触媒 3.0%

100 %
表2

イソネート↓143L または
モンジュール↓CD または ポリイソシアネート 50.0%
カーボワックスPEG600
カーボワックスPEG4600 22.0%
カーボワックスPEG8000
ボラノール 230−238
ボラノール 220−110 18.0%
イルガノックス 1010 2.0%
消泡剤1400 4.0%
メタンスルホン酸 1.0%
DMDEE 3.0%

100%
これらの配合例と配合割合は一般的に知られている。
【0051】
引き続き図4について説明するが、本発明の1実施例による基材16は例えば前述の湿気硬化性樹脂の1つを含浸させた単層の編成二重布で形成される。他の利用可能な樹脂はポリウレタン、ポリ尿素、ポリエステル、ポリアクリレート及びエポキシ等の幅広いポリマー剤から選択できるが、これらに限らない。1好適実施例では、副木は湿気硬化性ポリウレタン樹脂を含浸させた縦編二重布を含んでいる。縦編二重布は、ガラス繊維糸、高粘性ポリエステル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アラミド繊維糸(ケブラー・)及び超高分子ポリエチレン繊維糸(スペクトラ・)等のあらゆる適した有機または無機糸/繊維で形成できる。糸番手範囲は好適には20テックスから136テックスであり、好適には44テックスから136テックスである。縦編二重布は複数糸で相互連結された上層及び下層を有する3次元基材16で形成されている。上層、下層及びこれらの相互連結部を形成する糸は同じ材料でも異なる材料であってもよい。
【0052】
1好適実施例では、基材材料は6本のガイドバーを有する二重床式縦編機で形成されている。好適な布地表記は、鎖編インレー表地と、 “V”、バタフライまたはアトラス編中地である。糸は、樹脂を基材内に保持するに充分な重量と厚みを有した3次元布基材に形成される。
【0053】
布地構造はどのようなレベルのコース及びウェール密度に形成してもよい。しかしながら好適な構造では基材16を形成する布地はメートル当たり450コースから580コースを含んでおり、好適な範囲はメートル当たり500コースから550コースであり、10センチメートル当たり50ウェールから90ウェールを含んでおり、好適な範囲は10センチメートル当たり65ウェールから75ウェールであり、最も好適な値は10センチメートル当たり70ウェールである。布地を異なる手足のサイズと形状に合うよう適した幅に形成できる。最も好適な編成布地幅は2.5センチメートルから60センチメートルの範囲内である。最終的な堅固性に影響し、患者への快適性と使用利便性を考慮した美観のためにも重要であるため、布厚は重要な特徴の1つである。本実施例の縦編布の厚みは1mmから10mmの間で変動でき、好適には2mmから5mmの範囲である。最終的な布地重量は布構成、使用糸及び既存技術で知られた他の要素等による。最も好適な構造では、布地重量は500g/m2から約3000g/m2の範囲であり、さらに好適には1000g/m2から約1800g/m2の範囲である。
【0054】
本発明の1好適実施例によれば、単層布地の形成にファイバグラス糸が使用される。ファイバグラスは低コストであり、従来のファイバグラス副木で長年使用されてきた実績からいくつかの利点を有する。編成後、湿気硬化樹脂が適用される前に導路20を有する基材布地を熱処理した場合には特に利点が多い。
【0055】
特に温度を徐々に上昇させつつ比較的に高温で処理済スターチを十分に焼き落とすまで基材16を長時間加熱し、その後温度を長時間かけて大気温度まで下げることで、樹脂はファイバガラス繊維により確実及び均等にコーティングできる。
【0056】
1好適プロセスでは、編成ファイバガラス基材を400℃までゆっくりと加熱処理し、400℃に6時間保ち、温度を大気温度まで徐々に下げる。この全処理時間は約24時間である。ファイバグラス糸表面からスターチコーティングを除去することによって樹脂接着性が向上し、ガラス繊維編成構造への樹脂拡散性をさらに向上させる。
【0057】
しかも予想外に、上述の熱処理によって基材16への水の浸透性が向上することが発見された。これも全製品体積の約3パーセントであるスターチ層の除去による結果であると考えられる。スターチ層の除去は個別の糸径を減少させ、よって隣接する糸間の隙間を増加させる。これらの累積効果は基材16内の空間体積を約3パーセント増加させ、よって樹脂浸透のための余地を増加させ、結果的に導路20内のみでなく、基材16の縦、横及び厚み方向の硬化のための導水経路を増加させる。
【0058】
熱処理された編成基材材料と非熱処理の基材材料とを比較試験して性能の向上が実証された。1試験では、非熱処理の編成ファイバガラス基材材料へ36パーセント樹脂含有率を達成すべく樹脂が適用された。樹脂を水によって活性化し、引き続き時間間隔をあけて基材強度を観察した。1標準試験によれば基材を1センチメートル変形させるに必要な力(キログラム)は、15分後は1.29以上であり、30分後は1.82以上であった。30分後の相対的に高い値は15分から30分の間に硬化が続行していることを反映しており、よって1センチメートルの変形にはより大きな力が必要となっている。
【0059】
比較するため、スターチコーティング除去のための熱処理後に同じ編成ファイバガラス基材材料へ樹脂を適用した。非熱処理材料と同様、36パーセント樹脂含有率を達成すべく樹脂が適用された。樹脂を水によって活性化し、引き続き基材強度を時間間隔をあけて観察した。1標準試験による基材を1センチメートル変形させるのに必要な力(キログラム)は、15分後には2.29以上であり、30分後には2.08以上であった。15分後の相対的に高い値は、始めの15分間におけるより迅速な硬化を反映しており、非常に望ましい結果である。15分後と30分後の全体的硬度はだいたい同じであると考えられる。前述のごとく、熱処理された基材は非熱処理の基材と比較して、硬度の絶対値の点でも硬化速度の点でも優れている。
【0060】
試験によって、熱処理基材の強度は24時間で必要な最低強度である2.0以上よりも大きな3.31まで、すなわち50パーセント以上増加することが証明された。
【0061】
図5から図8に示すごとく、典型的には包帯14の片面へ水をスプレーするか注ぐことで包帯14を活性化させ(図5と図6)、余分な水を絞り出し(図7)、適用前に包帯を平坦化する(図8)。
【0062】
包帯14は活性化して損傷部位を適正位置で支えるために必要な堅固性をできるだけ速く達成するものが望ましい。
【0063】
硬化速度に影響を及ぼす要素の1つは、包帯(包装体18及び基材16)の厚み方向に水を浸透させ、包帯14全体を均等迅速に活性化させる基材構造中の空隙である。1好適実施例では基材16は、鎖編、挿入編及び中央編のいずれかによる基材16の縦方向に沿って編成構造から定間隔でウェールを省略することによって形成されている。最も好適な実施例では、1つのウェール端が2ウェールから10ウェールの間隔で省略される。省略されたウェール端は基材16の縦方向と厚み方向に沿って空隙部20を形成し、これによって基材16の密度を減少させ、図6に示すごとく基材16構造内へのより迅速で均等な水の浸透を提供する。実際の空隙部20は利用される布地形成技術によって異なり、空隙部の形状及び大きさはこれを包囲する糸及び繊維によって決定される。低密度基材16は使用原材料と重量が少なくともある程度低減される点で望ましい。空隙部20を形成するための他の方法には基材の横方向あるいは対角線方向と縦方向のステッチまたは糸を省略することが含まれる。要は基材16の重量及び密度を減少させつつ基材16の構造体への高浸透性を提供することが重要である。
【0064】
本発明の別の実施例によれば、“V”編は好適には、二重布の中央部密度を低減させる織加工糸、繊維加工糸あるいは微小繊維加工糸で形成されており、これによって材料の樹脂保持性を高めることができる。
【0065】
この加工によって製品の使用寿命と保存寿命を延ばすことができ、二重布からパッド層への樹脂漏れによる製品性能の低下を防止できる。
【0066】
本発明の別実施例によれば、基材16の縦方向にはソフトな両側縁部22、24が形成されている。
【0067】
図4と図6に示すごとく、ソフトな両側縁部領域22、24は、ポリエステル繊維糸、ポリエチレン繊維糸及びポリプロピレン繊維糸等の軟らかい低モジュラス糸を使用することで基材16の縁部に形成されている。これらの両側縁部領域22、24は1インチ当たり1ウェールから15ウェールで形成でき、好適には1インチ当たり7ウェールであり、さらに好適には1インチ当たり4ウェールである。さらに、両側縁部22、24には別な開状編構造を組み込むこともでき、基材16の縁領域の剛性をさらに低減させている。
【0068】
図9では、適当な長さの材料14が固定される身体部の形状に形成されている。この種の副木は脹脛用短副木として知られており、製品14を脹脛と踵の上で型取って形成される。その後、図10に示すごとく、製品14を弾性を有する従来型包帯“B”で包み込む。
【0069】
図11から図13は本発明の別実施例による医療用包帯製品30を示している。医療用包帯14は収容体31内に収容されており、これは揃えて重ねられた2枚の長形シートで形成されており、共通の縫い目に沿って溶封されてスリーブ13と同じ材料及び構造である湿気遮断性収容体を形成している。外側層は引裂抵抗性を有するプラスチックフィルムで形成されており、中間層は湿気バリヤとして機能するアルミニウムフォイルを含む。内側層は、湿気の侵入を確実に防止すべく収容体31の内側を溶封するのに適した熱可塑特性を有するプラスチックフィルムである。
【0070】
図11に示すごとく、収容体31は巻き上げられた医療用包帯14を収容する製品保存パッケージ34を含んでいる。パッケージ34は、医療用包帯14が排出される開閉可能な端部37を有する長形排出スリーブ36と一体形成されており、これと連通している。
【0071】
図12と図13に示すごとく、排出スリーブ32の端部37をバークランプ39等の適切な締具で封止できる。
【0072】
図12に示すごとく、排出スリーブ36は医療用材料14周囲にしっかりと密着しており、医療用包帯14を排出するために開口部37を開けたときに進入する空気への医療用包帯14の曝露を最小限にさせている。図14は、空気への曝露を最小限化させるよう、医療用材料14が比較的にきつく締まった巻上げ状態で収容体31内に収納されている様子を示している。開口部37が適切に密封されていれば、収容体31内の医療用材料14を使い切るために必要な通常期間よりもずっと長い期間医療用包帯14がソフトな非硬化状態であるように、収容体31は充分な気密状態を保つ。開口部37付近の医療用材料14が硬化したときはその部分を切って捨てればよい。
【0073】
使用の際にはクランプ39を外して医療用材料14の端部を掴んで所望長の医療用材料14を排出させる。適切な長さ分が収容体31から引き出される。医療用材料14の巻き上げ状態が保存パッケージ34内で部分的に解除される。開口部37から適切な長さ分を排出して切断し、残りの端部を排出スリーブ36内へたくし込む。開口部37は直ちに再封止される。
【0074】
図13に示すごとく、必要であれば医療用包帯製品30をカートン11内へ収容し、収容体31の排出スリーブ32をカートン11底部のスロット12から出しておくこともできる。
【0075】
図14はプレカット(カット済み)医療用包帯製品40の実施例を示している。医療用包帯製品40は湿気不浸透性である包装体41を含んでおり、この中にカット済み医療用包帯14が収納されている。医療用包帯14は好適には図1から図13について説明したごとき構造と特徴を有している。医療用包帯製品40は使用目的によってサイズが決められており、目的別にラベル付けされている。医療用包帯14を包装体41から取り出し、そのまま、あるいは医療目的に合うようにカット並びに成形して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1はディスペンサ容器から引き出されている本発明の1好適実施例による医療用包帯製品の斜視図である。
【図2】図2は切り取られた本発明の医療用包帯の切り欠き斜視図である。
【図3】図3は図2の3−3線に沿った断面の形状を図示する。
【図4】図4は説明の目的で露出された低密度基材層を有する医療用材料の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用包帯用の低密度基材であって、
(a)両表面間に提供された糸材で連結されている2表面と、前記2表面の両側で縦に延び、所定の布厚を提供する2側縁部とを有した長形布地と、
(b)反応性樹脂システムの活性化によって剛質構造体へと硬化させるために充分な質量を維持しながら本基材の密度を減少させるよう、前記布地内に形成され、前記2表面を連通させている複数の縦方向に延びる空隙部と、
を含んでいることを特徴とする基材。
【請求項2】
布地は縦編二重布を含んでいることを特徴とする請求項1記載の基材。
【請求項3】
布地は、ガラス繊維糸、高粘性ポリエステル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アラミド繊維糸及び超高分子ポリエチレン繊維糸で成る糸群から選択された糸で編成された縦編二重布を含んでいることを特徴とする請求項1記載の基材。
【請求項4】
糸番手範囲は略20テックスから略136テックスであることを特徴とする請求項3記載の基材。
【請求項5】
糸番手範囲は略44テックスから略136テックスであることを特徴とする請求項3記載の基材。
【請求項6】
基材を形成する布地はメートル当たり略450コースから580コース並びに10センチメートル当たり略50ウェールから90ウェールを含んでいることを特徴とする請求項3記載の基材。
【請求項7】
布地は1mmから10mmの厚みであることを特徴とする請求項1記載の基材。
【請求項8】
布地は略500g/m2から略3000g/m2の重量であることを特徴とする請求項1記載の基材。
【請求項9】
布地は縦編布を含み、密度を減少させる空隙部は鎖編、挿入編及び中央編のいずれかの基材の縦方向に沿って間隔をおき省略されたウェールにより形成されることを特徴とする請求項1記載の基材。
【請求項10】
1つのウェール端が略2ウェールから10ウェールの間隔で省略されることを特徴とする請求項1記載の基材。
【請求項11】
低密度医療用包帯であって、
(a)両表面間に提供された糸材により連結された2表面と、前記2表面の両側で縦に延び、所定の布厚を提供する2側縁部とを有した長形布地の基材と、
(b)前記基材の密度を減少させるよう、前記布地内に形成され、前記2表面を連通させている複数の縦方向に延びる空隙部と、
(c)前記基材の表面と該基材の厚み方向に提供された反応性樹脂システムと、
を含んでおり、該反応性樹脂システムは前記基材をフレキシブルで変形自由な第1状態と、前記反応性樹脂システムが硬化して前記基材を硬化させ、所望の形状に変形させた第2状態とを有していることを特徴とする医療用包帯。
【請求項12】
反応性樹脂システムは湿気硬化性樹脂を含み、空隙部は基材表面及び該基材の厚み方向への水の均等な分布を可能にしていることを特徴とする請求項11記載の医療用包帯。
【請求項13】
布地は、ガラス繊維糸、高粘性ポリエステル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アラミド繊維糸及び超高分子ポリエチレン繊維糸で成る糸群から選択された糸で編成された縦編二重布を含んでおり、前記布地は基材表面と該基材内に提供された湿気硬化性反応樹脂システムを含み、空隙部は前記布地の表面及び厚み方向への均等な水の浸透を可能にすべく提供されていることを特徴とする請求項11記載の医療用包帯。
【請求項14】
基材の少なくとも1表面を覆い、前記基材への水の浸透を可能にしているソフトでフレキシブルな保護材料を含んでいることを特徴とする請求項11記載の医療用包帯。
【請求項15】
布地は織布、不織布及び編成布で成る群から選択されることを特徴とする請求項11記載の医療用包帯。
【請求項16】
布地は1mmから10mmの厚みであることを特徴とする請求項11記載の医療用包帯。
【請求項17】
基材は特定の医療的利用に適したプレカット状態で提供されることを特徴とする請求項11記載の医療用包帯。
【請求項18】
基材はその所望長が必要に応じて切り取れるロール形態で提供されることを特徴とする請求項1記載の医療用包帯。
【請求項19】
低密度医療用包帯製品であって、
(a)湿気不浸透性材料で形成され、湿気侵入を防止すべく密封可能なスリーブと、
(b)前記スリーブ内に位置し、使用時まで湿気の侵入を防止すべく密封された医療材料と、
を含んでおり、該医療材料は、
(i)両表面間に提供された糸で連結された2表面と、該2表面の両側で縦に延び、所定の布厚を提供する2側縁部とを有した長形布地で成る基材と、
(ii)前記基材の密度を減少させるため、前記布地内に形成され、それらの2表面を連通させる複数の縦方向に延びる空隙部と、
を含んでおり、
(c)前記基材内に含浸または表面コーティングされた反応性樹脂システムをさらに含んでおり、該システムは乾燥状態では安定しており、充分な湿気と接触して硬化し、剛質自立構造体を形成し、
(d)前記基材の少なくとも1表面を覆い、前記医療材料の使用時に前記基材と患者の皮膚との間の緩衝材として作用するソフトでフレキシブルな保護材料をさらに含んでいることを特徴とする医療用包帯製品。
【請求項20】
基材の両表面を覆うソフトでフレキシブルな保護材料を含んでいることを特徴とする請求項19記載の医療用包帯製品。
【請求項21】
基材の両表面及び両側縁部を包み込むソフトでフレキシブルな保護材料を含んでいることを特徴とする請求項19記載の医療用包帯製品。
【請求項22】
布地は縦織二重布を含んでいることを特徴とする請求項19記載の医療用包帯製品。
【請求項23】
布地はガラス繊維糸、高粘性ポリエステル繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、アラミド繊維糸及び超高分子ポリエチレン繊維糸で成る糸群から選択された糸で編成される縦編二重布を含むことを特徴とする請求項19記載の医療用包帯製品。
【請求項24】
糸番手範囲は略20テックスから略136テックスであることを特徴とする請求項23記載の医療用包帯製品。
【請求項25】
糸番手範囲は略44テックスから略136テックスであることを特徴とする請求項23記載の医療用包帯製品。
【請求項26】
基材を形成する布地はメートル当たり略450コースから580コース並びに10センチメートル当たり略65ウェールから75ウェールを含んでいることを特徴とする請求項23記載の医療用包帯製品。
【請求項27】
布地は1mmから10mmの厚みであることを特徴とする請求項23記載の医療用包帯製品。
【請求項28】
布地は略500g/m2から略3000g/m2の重量であることを特徴とする請求項23記載の医療用包帯製品。
【請求項29】
布地は縦編布を含み、導水路は前記布地の鎖編、挿入編及び中央編のいずれかの基材の縦方向に沿って間隔をおき省略されたウェールによって形成されることを特徴とする請求項23記載の医療用包帯製品。
【請求項30】
1つのウェール端が略2ウェールから10ウェールの間隔で省略されることを特徴とする請求項23記載の医療用包帯製品。

【図4】図4は本発明の1実施例による医療用包帯基材の斜視図である。
【図5】図5は医療用材料内の湿気硬化性樹脂の湿潤活性化処理を図示する。
【図6】図6は基材の空隙部内に水を供給することによる湿気硬化性樹脂の湿潤活性化処理を図示する。
【図7】図7は適用前に医療用包帯から余分な水を絞り出す様子を図示する。
【図8】図8は適用前に水を絞った医療用包帯の再平坦化処理を図示する。
【図9】図9は怪我を負った足上に配置され、カバーラップ体で固定されている医療用包帯の斜視図である。
【図10】図10は怪我を負った足上に配置され、カバーラップ体で固定されている医療用包帯の斜視図である。
【図11】図11はその使用時まで医療用包帯を内部に保存するディスペンサ容器の別例の斜視図である。
【図12】図12は図11のディスペンサ容器の断面図である。
【図13】図13はディスペンサ容器が収容されたディスペンサカートンの斜視図である。
【図14】図14は使用時まで湿気不浸透性包装体に保存されたプレカット医療用包帯の斜視図である。
【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2008−529720(P2008−529720A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556164(P2007−556164)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/003747
【国際公開番号】WO2006/091349
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507248790)ビーエスエヌ メディカル,インク. (2)
【Fターム(参考)】