説明

低沈降性酸性タンパク質飲料

特定種類の低pHタンパク質を基本とする飲料(例えば大豆および/または牛乳を基本とするタイプ)であって、貯蔵中のそのようなタンパク質成分の望ましくない沈降を防ぐために適切に懸濁されている前記飲料を提供する。そのような飲料は、バクテリアセルロース(BC)を基本とする構成成分が、目標タンパク質を懸濁し、そしてそのようなタンパク質のあらゆるかなりの程度の沈降を防ぐ構造を形成するネットワークを提供するような、別の水溶性助剤でコーティングされたBCを包含する増粘システムを含む。加えてこのシステムは、不溶性カルシウムで強化された酸性タンパク質飲料の懸濁を改善する能力がある。本発明に包括的に含まれる飲料は、典型的な貯蔵条件下である種の安定性という利点を示し、そしてシステム全体のpHに依存して、pHレベルがタンパク質の妥当な等電点に近づいたときに、そのような成分タンパク質の凝集を防ぐ、または少なくとも遅延させるために、タンパク質をコーティングする添加物を含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、一般に、特定種類の低pHタンパク質を基本とする飲料(例えば大豆および/または牛乳を基本とするタイプ)であって、保存中のそのようなタンパク質成分の望ましくない沈降を防ぐために適切に懸濁されている前記飲料に関するものである。そのような飲料は、バクテリアセルロース(BC)を基本とする構成成分が、標的タンパク質を懸濁させてそのようなタンパク質のかなりの程度の沈降を防ぐ構造を形成するネットワークを提供するように別の水溶性補助剤(co-agent)でコーティングされたBCを包含する増粘システムを含む。加えて、このシステムは、不溶性カルシウムで強化された酸性タンパク質飲料の懸濁を改善することができる。本発明に包括的に含まれる飲料は、典型的な貯蔵条件下にてある種の安定性という利点を示し、システム全体のpHに依存して、pHレベルがタンパク質の妥当な等電点に近づいたときに、そのような成分タンパク質の凝集を防ぐかまたは少なくとも遅延させるために、タンパク質をコーティングする添加物を含むことができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
大豆および牛乳を基本とするタンパク質飲料は、そのような製品の利用可能性が増大し、そのような飲料の官能特性の改善がなされたことから、人気が高まっている。しかしながら現在は、主に風味およびその他の美観的な特徴の点で、消費者に広く受け入れられるにはある種の限界がある。消費者は一般に摂取飲料について非常にこだわりがある。大衆の健康意識が一層高まるにつれて、そのようなタンパク質を基本とするタイプは、受け入れを拡大してきた。しかしながら、そのような利用が増加するに伴い、より魅力的な製品を提供するために、味覚、におい、および外観に関するオプションを増加するようにとの要望が挙げられている。そのような最終目標は、主としてそのような飲料内に存在する栄養素を基本とする製品のタンパク質に関連した有効期間の安定性の問題によって、達成するのはむしろ困難であることが証明されている。
【0003】
牛乳は、非常に長い間消費されてきており、低温殺菌法後、主要製品である。しかしながら、依然としてpH問題が牛乳に存在するすべての重要なタンパク質に関連して繰り返し起こる問題であるそのような製品内に、様々な調味料を提供するという要望が継続して存在している。豆乳は、特にそのような製品内に乳糖が存在しないことにより、ある種の市場で足掛かりを見出した。しかしながらそのような大豆製品も、長期保存安定性という点で、乳タンパク質を基本とする組成物に伴う問題と類似の問題を提示する。
【0004】
中性または中性に近いpHを有する牛乳または豆乳を用いれば、そのような目標飲料内のタンパク質は、典型的な増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースおよびその他のセルロースエーテル、ペクチン、スターチ、キサンタンガム、グァーガム、イナゴマメガム、カラギーナンガムなど)を用いて容易に懸濁することができる。そのような中性pHレベルでは、大豆タンパク質または乳タンパク質は正味の負の電荷を有しており、それによりタンパク質粒子を、凝集、密集、その他大きな粒子の生成から確実に維持する。これらの典型的な増粘剤は、目標飲料の水相の粘性を増加させると考えられる。したがって、そのような目標飲料の水相保持におけるこの補助が、タンパク質が飲料中に溶解したまま維持される程度に、タンパク質の沈澱形成を潜在的に制限する。したがって、これらの典型的な増粘剤は、中性pHレベルでのタンパク質の沈降を最小とする様式を提供する。
【0005】
主要な問題は、調味料、着色剤などのような官能性を高める物質の添加を受け入れるように、pHレベルを約3.6〜4.5に低下させたときに存在する。これらの飲料の風味を変え、pHを低下させ、したがってこのような目標飲料の官能性および/または美観的な特徴を高めることにより、豆乳の飲み終わった後の香り(off-note)若しくは豆の風味をマスクしたり、または風味の亢進を牛乳に加えたりすることができる。このpHの低下は、タンパク質粒子が電荷密度の低下(すなわち飲料中に存在する特定のタンパク質の等電点またはその近くのpH)を示す原因となり得る。そのような特定pHレベルでは、そのようなタンパク質は熱変性を受けやすく、タンパク質分子の顕著な非常に望ましくない凝集またはクラスター化をもたらし、溶液からの上記のような望ましくない沈降をきたす。ペクチンなどの典型的な安定剤は、低pHの大豆タンパク質飲料の酸性化の間にも、タンパク質の会合を最小限とすることを示すという効能にもかかわらず、時間経過と共に、pH3.6〜4.5の範囲において沈降はなお起こり得る。更に、溶液中のペクチンにより適切かつ十分にコーティングすることを補助し、したがって上で考察した沈降の問題を引き起こすタンパク質間相互作用の傾向を低減する目的で、ペクチン添加前に標的タンパク質の表面を修飾しおよび/または均質化することが仮説として取り上げられている。残念ながら、示唆されたそのような改善は極めて高価であり、実施が難しく、したがって大豆飲料市場において容易に追随されることはなさそうである。
【0006】
したがって長期保存安定性の要件を満たすことのできる懸濁助剤を用いて、低pHタンパク質を基本とする飲料のこの沈降の問題を克服する必要性がある。増粘剤を用いてもそのようなタンパク質の凝集度が十分に高い場合には、そのような成分栄養素を含む懸濁液を保持することは非常に困難であることが認識されている。酸性pHレベルでは、殊にある種のタンパク質、特に大豆飲料および/または乳飲料内のタンパク質は、そのような望ましくない凝集を示し、したがってその荷電部分間の有害な相互作用に非常に影響されやすい。ある種の典型的な増粘剤は、そのような凝集および究極的な沈降を低減するかまたは最善には遅延させる目的で、タンパク質成分のコーティング用添加物として使用することができる。例えばペクチンは、後に酸性pHレベル(すなわち4.5以下)に調整されるそのような飲料組成物に導入することができる。ペクチンは、そのようなタンパク質を適切にコーティングするだけでなく、タンパク質の等電点付近のタンパク質間相互作用を防ぐかまたはより適切には低減するように、本質的にはそのような酸性レベルで活性化される。重要なことは、ペクチンは長期間を基本として、そのような凝集および究極的な沈降を防ぐことはないが;そのような飲料は一般に非常に長い有効期間を必要とするため、大豆タンパク質飲料の風味レベル(一例として)を高めるための低pHシステムの実行に関しては、タンパク質の沈降を低減するそのようなシステム自体では、有効な結果を提供しないということである。基本的にはそして残念ながら、上で示唆したように、そのような沈降は、コーティング添加物としてペクチンが存在しても時間の経過とともに常に最終的には凝集することになる。そして結果として、タンパク質粒子の十分な沈降が時間経過とともに起こってしまった場合、そのような結果として生じた沈降物は強固にパックされまたは固められ、激しく振盪しても容易に遊離することはない。そのような筋書きにおいて、結果として生じた沈降物は消費者によって摂取されることはなく、したがって所望のタンパク質に由来する所望の利点は失われてしまう。
【0007】
しかしながら、そのようなペクチン添加物は、pHがより高レベル(すなわち5.0〜6.0)である場合、同じタイプの顕著であるが限定された利益を提供しない。そのようなpHレベルでは、ペクチンは、適切なコーティング、およびそのような有害な荷電部分の相互作用からの保護を生ずる程度までタンパク質と相互作用することはない。そのようなより高いpHでは、タンパク質はより低いpHと同程度に容易に変性を示すことはない。しかしながら、加工における熱は、たとえ主題の製剤がこのより高いpH範囲(pH5〜6)に存在していても、なおタンパク質の会合および凝固を誘発し得る。より低pHレベルにてある程度の保護を提供するペクチンを用いても、低pHのペクチンのみで保護された飲料に関して結果的に得られる相互作用の程度は、ペクチンの存在にかかわりなく、本質的には、より高pHレベル(すなわち5.0)のタイプの場合と極めて類似することになる。したがって、ペクチン単独では、飲料中に示された実際のpHレベルにかかわりなく、十分な保護システムを提供せず、したがってそのような酸性飲料内のタンパク質の沈降防止を提供することはない。したがって、そのような酸性タンパク質を基本とする飲料に関し、そのようなタンパク質の凝集を潜在的に遅延させるだけでなく、信頼できる長期懸濁システムを提供する適切な様式が、特に美観的展望からそのような製品に関する潜在的市場を拡大するために、大いに必要とされる。今日まで、市場が提供してきた最善策は、上記のようにコーティング添加物としてのペクチン単独の利用である。したがって、特に、低コストで複雑でなく、飲料の製造法に組み込みやすい溶液を用いて懸濁システムを改善することは非常に望ましい。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
したがって、本発明は、少なくとも1つのタンパク質を基本とする材料、ならびに少なくとも1つのバクテリアセルロース材料および少なくとも1つのポリマー性増粘剤を含む少なくとも1つのバクテリアセルロース含有製剤を包含する液体組成物を包括的に含むものであり、前記増粘剤は、少なくとも1つの荷電セルロースエーテル、ならびにキサンタン産物、ペクチン、アルギネート、ジェランガム、ウェランガム、ジウタンガム(diutan gum)、ランザンガム、カラギーナン、グァーガム、寒天、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガカントガム、タマリンドガム、イナゴマメガムなどから成る群より選択される少なくとも1つの沈澱剤、およびそれらの混合物から成る群より選択され、前記液体組成物のpHレベルは高くても5.5である。
【0009】
さらに、本発明は、少なくとも1つのタンパク質を基本とする材料を0.1〜20重量%の量で包含し、pHレベルが高くても5.5である液体組成物であって、22℃の温度で24時間貯蔵後のタンパク質沈降レベルが高くても10%である前記液体組成物も包括的に含むものである。さらに、本発明は、少なくとも1つのタンパク質を基本とする材料を0.1〜20重量%の量で、および不溶性カルシウムの原料を0.05〜5重量%の量で包含し、pHレベルが高くても5.5である液体組成物であって、22℃の温度で24時間貯蔵後のタンパク質沈降レベルが高くても10%でかつ不溶性カルシウムの沈降レベルが高くても10%である、前記液体組成物を包括的に含むものである。
【0010】
バクテリアセルロース含有製剤内の可能な荷電セルロースエーテルは、そのようなバクテリアセルロース含有製剤が加えられる最終用途の組成物において、網状のネットワークを分散させ安定化するために利用される化合物である。荷電化合物は、上で暗示したように、必要とされる繊維のネットワーク形成能を個々の繊維の反発力を通して促進する。そのようなネットワークは、長期保存時の十分な強度および安定性、ならびに揺変性特性を示す優れたネットワークを目標飲料内に提供し、そのような目標飲料内に存在するあらゆる凝集タンパク質は時間を経過しても感知できるほどには沈降しない。バクテリアセルロース含有製剤内の可能な沈澱剤は、乾燥および粉砕時に、網状のバクテリアセルロース繊維の機能性を保存するために利用される化合物である。そのような荷電セルロースエーテルの例は、全体として正または負のいずれかを示すようなセルロースを基本とした化合物を含み、そして非限定的に、あらゆるカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、カチオン性ヒドロキシエチルセルロースなどを含む。沈澱(乾燥)剤は、非限定的に、キサンタン産物、ペクチン、アルギネート、ジェランガム、プロピレングリコールアルギネート、ランザンガム、カラギーナン、グァーガム、寒天、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガカントガム、タマリンドガム、イナゴマメガムなどを含む、天然および/または合成の産物群より選択される。好ましくは、必ずしもそうでなくてもよいが、1種類の沈澱(乾燥)剤が含まれる。
【0011】
1つの潜在的に好ましい態様として、それにより生成されるバクテリアセルロースとペクチンとの製剤は、労働またはエネルギー集約的な活性化を全く必要とせずに、活性化を促進させるという明確な利点を有する。この方法全体のもう1つの明確な利点は、製剤に荷電セルロースエーテルが存在するかまたは沈澱(乾燥)剤が存在するかにかかわりなく、イソプロピルアルコールを用いた沈澱により、得られたバクテリアセルロース含有製剤を回収する能力である。このように、バクテリアセルロースは上記様式で共沈するため、アルコール不溶性のポリマー性増粘剤(例えばキサンタンまたはCMCナトリウム)は、いかなる特定の科学的理論に拘束されることも意図しないが、結果的に形成される繊維の少なくとも一部分を覆うコーティングを提供することにより、バクテリアセルロースの保護を提供すると思われる。そのような方法では、ポリマー性増粘剤は、非水性液(好ましくは低級アルコールなど)の添加時にセルロース繊維の会合および脱水を実際に助け、したがってそのような共沈の段階で低収率の多糖の相当量の回収をもたらす。このように精製および回収ステップの間に相当量の水を回避できることにより、より多量のバクテリアセルロースを最終的に回集させる。この新規工程を用いて、最高量の発酵性バクテリアセルロースを回集することができ、したがって、所望の生成において高い効率を提供し、ならびに上記のような、結果として得られるそのような生成物を得るために典型的に必要とされる脱水および再スラリー化という廃水および多数の手順の回避を提供する。さらに先に記したように、バクテリアセルロース繊維束の少なくとも一部分を覆うコーティングとしての、乾燥剤、特に非限定的一例として、ペクチン産物の存在は、目標の最終用途の組成物内に導入されたときに、活性化の必要性の改善を提供するようである。驚くことに、これまでに実践された類似のタイプの製品と比較して、本発明のバクテリアセルロース含有製剤により与えられる所望の流体力学的修飾の利点を達成するために必要なエネルギーの顕著な低減が認められる。同様にバクテリアセルロース(以下「BC」という)は、可溶性ポリマー性増粘剤単独と比較した場合、独特の機能性および流体力学を提供するため、本発明の方法を介して作製して得られた生成物は、典型的な工程に代わって再活性化の必要性における改善を伴うより低コストな代替法、高温食品加工中の粘性変化に対する抵抗性、および長期保存中の改善された懸濁特性を可能にする。
【0012】
そのような目標飲料は、好ましくは牛乳または大豆を基本としており、したがってそのような材料に直接関連するタンパク質物質を含む。しかしながら凝集の可能性を示すタンパク質を含む他のタイプの飲料も本発明の範囲内において利用してよい。そのような飲料として、非限定的に、果実風味の牛乳または豆乳のドリンク、栄養飲料、およびヨーグルトスムージーを含む。特に興味深いのは、長期的貯蔵後にそのような懸濁の形で栄養素を提供するために、適切な懸濁が所望されるタンパク質含有飲料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の目的に関して、「バクテリアセルロース含有製剤」という用語は、本発明の方法により生成されるような、したがって得られたバクテリアセルロース繊維束の少なくとも一部分をコーティングするポリマー性増粘剤を含む、バクテリアセルロース産物を包括的に含むことを意図する。したがって「製剤」という用語は、その方法から作製された生成物が、そのような様式で生成された、そしてそのような結果的に得られた構造および立体配置を示す、バクテリアセルロースおよびポリマー性増粘剤の組み合わせであることを伝えることを意図する。「バクテリアセルロース」という用語は、酢酸菌属の細菌の発酵を介して産生されたあらゆるタイプのセルロースを包括的に含むことを意図し、そして一般にミクロフィブリル化セルロース、網状化バクテリアセルロースなどといわれる材料を含む。
【0014】
バクテリアセルロースは、様々な組成物において有効な流体力学的修飾物質として使用することができる。そのような材料は、果実中に分散されているとき、高い降伏応力を有する高い粘性、揺変性の混合物を産生する。降伏応力は、ゲル様の系において流動を開始するために必要な力の測定値である。これは、流体の懸濁能力を示しており、同様に垂直面に圧を加えた後in situに維持する流体の能力を示している。
【0015】
典型的には、そのような流体力学的修飾の挙動は、親水性溶媒、例えば水、ポリオール(例えばエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなど)、またはその混合物におけるバクテリアセルロースの混合物のある程度の加工を通して提供される。この加工は「活性化」と呼ばれ、一般に高圧での均質化、および/または高レベルの剪断的混合(shear mixing)を包含する。しかしながら本発明のバクテリアセルロース含有製剤は、低エネルギーの混合で活性化することが発見された。活性化は、活性化が起こるベースの溶媒または溶媒混合物に、または活性化されたセルロースが加えられる組成物に、セルロースが機能性を与えるように、セルロースの三次元構造が修飾される工程である。機能性は、増粘化のような特性を提供すること、降伏応力、熱安定性、懸濁特性、凍結−解凍の安定性、流動コントロール、気泡の安定化、コーティングおよびフィルムの形成などを与えることを含む。活性化工程に続く加工は、ベースの溶媒中にセルロースを単に分散させるという以上に有意な意味を持つ。そのような加工はセルロース繊維を「ばらばらにし」て、セルロース繊維を膨張させる。バクテリアセルロース含有製剤は、湿ったスラリー(分散系)の形で、または周知の乾燥技術、例えば噴霧乾燥または凍結乾燥を用いて分散系を乾燥させることにより生成される、乾燥生成物として使用し、目標の流体組成物に所望の流体力学的利点を付与することができる。バクテリアセルロースBCの活性化はセルロース部分を膨張させ、非常に大きな表面積を有する高度にかみ合った繊維の網状化ネットワークを創出する。活性化された網状化バクテリアセルロースは、従来の微結晶セルロース(すなわち植物原料により提供されるセルロース)より少なくとも200倍高いと考えられる、極めて大きな表面積を有する。
【0016】
本明細書で利用されるバクテリアセルロースは、酢酸菌属微生物の発酵産生物に関連するあらゆるタイプであって、従来より一例として商標名CELLULON(登録商標)でCPKleco U.S.より入手可能であった。そのような好気性培養産生物は、水に不溶性である、繊維の高度な網状化された、分枝鎖の相互に接続したネットワークを特徴とする。
【0017】
そのようなバクテリアセルロース産生物の調製は周知されている。例えば米国特許第5,079,162号、および米国特許第5,144,021号(これらは本明細書にて援用する)は、撹拌培養条件下で、Acetobactoer aceti var. xylinumという細菌株を用いて、網状化バクテリアセルロースを好気的に産生するための方法および培地を開示している。撹拌培養条件の使用で、平均70時間にわたり、少なくとも1時間当たり0.1g/リットルの所望のセルロースの持続的な産生が得られる。およそ80〜85%の水を含有する湿ったケークの網状化セルロースを、上述の特許に開示された方法および条件を使用して産生することができる。乾燥網状化バクテリアセルロースは、乾燥技術、例えば周知されている噴霧乾燥または凍結乾燥を使用して生成することができる。
【0018】
酢酸菌は特徴としては、グラム陰性の、0.6〜0.8μ×1.0〜4μの桿菌である。これは厳密に好気性の有機体である;すなわち代謝は呼吸性であり、発酵性ではない。この細菌は、化学的にはセルロースと同一である、複数のポリβ−1,4−グルカン鎖を産生する能力によってさらに識別される。網状化バクテリアセルロースのミクロセルロース鎖またはミクロフィブリルは、細菌表面で、すなわち細胞膜の外表面部位で合成される。これらのミクロフィブフィルは一般に、約1.6nm×5.8nmの横断面の寸法を有する。反対に静的または静止した培養条件下では、細菌表面のミクロフィブリルが結合して、一般に約3.2nm×133nmの横断面の寸法を有するフィブリルを形成する。付随的にセルロースの大きな表面および固有の親水性を合わせもつ、小さな横断面のサイズのこれら酢酸菌産生フィブリルは、水溶液を吸収する著しく高い能力を有するセルロース産生物を提供する。安定な、粘性の分散系の形成の手助けとなるように、網状化バクテリアセルロースと組み合わせて、添加物がしばしば使用されてきた。
【0019】
そのようなバクテリアセルロースを精製および回収することに伴う固有の前述の問題が、本明細書に使用した方法が所望の程度までの優れた結果を提供するとの決定を導いた。全工程の最初のステップは、発酵した形であらゆる量の目標バクテリアセルロースを提供することである。このステップの産生法は上に記載している。そのような産生物の収量は、一定して高レベルで産生するのは非常に困難であることが証明されており、したがって回集される産生物を最終的に最低コストで提供するように、目標産生物の保持を達成することは不可避である。
【0020】
そのような材料に関する精製は周知されている。バクテリアセルロース産生物からの細菌細胞の溶菌は、セルロース産生物からできるだけ多くの死滅した細菌細胞を適切に除去するための量で、苛性物質(a caustic)、例えば水酸化ナトリウム、またはあらゆる同様の高いpH(好ましくは約pH12.5より高い)の添加物の導入を通して達成される。このステップは、所望であれば1回より多くのステップを続けることができる。その後典型的には酸による中和を行う。アルカリ性に対抗する(したがって効率的に中和し、または産生物のpHレベルをできる限り7.0に近づけて低下させる)ための十分に低いpHおよびモル濃度のあらゆる適切な酸を利用することができる。硫酸、塩酸、および硝酸はすべて、そのようなステップに適する例である。当業者は、そのような目的のためのそのような反応試薬の適切な選択および量を容易に決定するはずである。あるいは酵素的な方法(適当なpHでのリゾチームおよびプロテアーゼによる処理)を通して、細胞を溶菌および消化してもよい。
【0021】
次に溶菌した生成物を、バクテリアセルロースの標的の繊維および繊維束を効果的にコーティングするために、ポリマー性増粘剤と混合させる。ポリマー性増粘剤はアルコール(特にイソプロピルアルコール)中で不溶性でなければならない。そのような増粘剤は、標的の流体組成物内のバクテリアセルロースの分散、または流体製剤からより容易に水を除去するためのバクテリアセルロースの乾燥、のいずれかの手助けとなる、同様に、標的の流体組成物内の繊維を分散または懸濁する手助けとなる可能性がある。適切な分散助剤(分散剤)として非限定的に、(様々なタイプの)CMC、カチオン性HECなど、本質的に、天然において重合体であり、標的液体溶液内に導入したときにバクテリアセルロース繊維に対する必要な分散能力を示すあらゆる化合物を含む。好ましくはそのような分散助剤は、CMC、例えばCP Kelcoより入手可能なCEKOL(登録商標)である。適当な沈澱助剤(沈澱剤)は、上に記したように、キサンタン産物(例えばCP Kelco製のKELTROL(登録商標)、KELTROL T(登録商標)など)、ジェランガム、ウェランガム、ジウタンガム、ランザンガム、グァーガム、イナゴマメガムなどを含む多数のバイオガム、およびその他のタイプの天然のポリマー性増粘剤、非限定的一例として、例えばペクチンを含む。基本的には、ブロス、粉末または再水和した粉末の形において、2つの生成物を混合することで、バクテリアセルロースの繊維および/または繊維束の少なくとも一部分をコーティングするポリマー性増粘剤の、所望の産出が可能である。1つの態様において、バクテリアセルロースおよびキサンタンのブロスは、残渣の細菌細胞を除去するため、双方の精製(溶菌)の後に混合する。もう1つの態様においてブロスは、最初に溶菌せずに合わせて混合してよいが、そのような精製が行われるように混合中に同時に溶菌する。
【0022】
当該方法の範囲内の各成分の量は大きく変動してよい。例えばバクテリアセルロースは典型的には、約0.1〜約5重量%、好ましくは約0.5〜約3.0重量%の量で存在するものとし、それに対してポリマー性増粘剤は、バクテリアセルロースの10〜約900%の量で存在してよい。
【0023】
バクテリアセルロースをポリマー性増粘剤と混合し、コーティングした後、得られた生成物を、水混和性の非水系液体中での共沈により回集する。好ましくは、毒性、利用可能性、およびコスト的理由のため、そのような液体はアルコール、例えば最も好ましくはイソプロピルアルコールである。その他のタイプのアルコール、例えばエタノール、メタノール、ブタノールなども同様に利用してよく、言うまでもなく、他の水混和性の非水系液体、例えばアセトン、酢酸エチル、およびそれらのあらゆる混合物を利用してもよい。そのような非水系液体のあらゆる混合物もそのような共沈ステップのために利用してよい。一般に共沈させた生成物は固体−液体分離装置を通して処理されるため、アルコール可溶性成分の除去を可能とし、所望のバクテリアセルロース含有製剤が残される。
【0024】
そこから湿ったケークの形の生成物を集め、その後乾燥装置に移し、続いて適当な粒度の生成物に粉砕する。さらなる特性および/または利点を提供するため、沈澱、または湿った-ケーク、または乾燥した材料、の前にさらなる補助剤(co-agent)を加えてもよい。そのような補助剤は、低分子量炭水化物、例えばショ糖、グルコース、マルトデキストリン、等と共に、植物、藻、およびバクテリア多糖、ならびにそれらの誘導体を含む。バクテリアセルロース含有製剤内に存在してよいその他の添加物は、非限定的に、親水コロイド、ポリアクリルアミド(および相同体)、ポリアクリル酸(および相同体)、ポリエチレングリコール、ポリ(エキレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スターチ(および糖を基本とした分子のようなもの)、修飾されたスターチ、動物由来ゼラチン、乳タンパク質、大豆タンパク質、その他の動物または植物由来のタンパク質、ならびに非荷電セルロースエーテル(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)を含む。
【0025】
次に本発明のバクテリアセルロース含有製剤を、目標の発明の十分に低いpHのタンパク質を基本とする飲料中に導入してよい。そのような飲料組成物は、そのようなバクテリアセルロース含有製剤を、飲料組成物の総重量の約0.01〜約1重量%、好ましくは約0.03〜約0.5重量%の量で、そしてタンパク質を基本とする材料(好ましくは、必ずしもそうでなくてもよいが、天然の牛乳および/または大豆)を、飲料組成物の総重量の約0.1〜約20%の量で含んでよい。そのようなタンパク質を基本とする材料は、やはり非限定的に、牛乳、ヤギ乳、豆乳、乳固形分、ホエータンパク質、カゼイン、大豆タンパク質濃縮物、大豆タンパク質単離体、およびそれらのあらゆる混合物を含む。この低pH飲料内に含まれてよいその他の可能性ある添加物には、特に調味料、保存剤、着色剤、安定剤、甘味剤(例えば砂糖、サッカリンなど)、果実果肉、食物繊維、ビタミンおよびミネラルが含まれる。
【0026】
発明の好ましい態様
以下の非限定的実施例は、本発明の範囲内に包括的に含まれる様々な本発明の飲料の教示、ならびに比較例を提供する。
【0027】
懸濁助剤の生成
[実施例1]
BCは、1200ガロンの発酵器において、最終収率1.93重量%で生成した。ブロスを350ppmの次亜塩素酸塩で処理し、続いて70ppmのリゾチーム、および194ppmのプロテアーゼで処理した。処理したBCブロスを少量ずつ、所定の量のキサンタンガムブロス、およびCMC溶液(BC/XG/CMC=3/1/1、乾燥重量に基づいて)と共に混合した後、得られた混合物を、IPA(85%)を用いて沈澱させ、圧縮ケークを形成した。その後圧縮ケークを、実施例1におけるように乾燥および粉砕した。その後粉末にした製剤を、STWサンプル中にその重量の約0.36%の量で導入した後、組成物をSilverson 撹拌機にて8000rpmで5分間混合した。生成物の粘性および降伏応力は、各々1057cPおよび3.65ダイン/cmであった。
【0028】
[実施例2]
BCは、1200ガロンの発酵器において、最終収率1.93重量%で生成した。ブロスを350ppmの次亜塩素酸塩で処理し、続いて70ppmのリゾチーム、および194ppmのプロテアーゼで処理した。処理したBCブロスを少量ずつ、所定の量のペクチン溶液(BC/ペクチン=6/1、乾燥重量に基づいて)と共に混合した後、得られた混合物を、IPA(85%)を用いて沈澱させ、圧縮ケークを形成した。圧縮ケークを、実施例1におけるように乾燥および粉砕した。その後粉末にした製剤を、STWサンプル中にその重量の約0.36%の量で加え、同時に20%CMCを加え、その後組成物をSilverson 撹拌機にて8000rpmで5分間混合した。生成物の粘性および降伏応力は、各々377cPおよび1.06ダイン/cmであった。
【0029】
[実施例3]
BCは、1200ガロンの発酵器において、最終収率1.93重量%で生成した。ブロスを350ppmの次亜塩素酸塩で処理し、続いて70ppmのリゾチーム、および194ppmのプロテアーゼで処理した。処理したBCブロスを少量ずつ、所定の量のCMC溶液(BC/CMC=3/1、乾燥重量に基づいて)と共に混合した後、得られた混合物を、IPA(85%)を用いて沈澱させ、圧縮ケークを形成した。圧縮ケークを、実施例1におけるように乾燥および粉砕した。その後粉末にした製剤を、STWサンプル中にその重量の約0.36%の量で導入した後、組成物をSilverson 撹拌機にて8000rpmで5分間混合した。生成物の粘性および降伏応力は、各々432cPおよび1.39ダイン/cmであった。
【0030】
[実施例4]
BCは、1200ガロンの発酵器において、最終収率1.93重量%で生成した。ブロスを350ppmの次亜塩素酸塩で処理し、続いて70ppmのリゾチーム、および194ppmのプロテアーゼで処理した。処理したBCブロスを少量ずつ、所定の量のペクチンおよびCMC溶液(BC/ペクチン/CMC=6/1/2、乾燥重量に基づいて)と共に混合した後、得られた混合物を、IPA(85%)を用いて沈澱させ、圧縮ケークを形成した。圧縮ケークを、実施例1におけるように乾燥および粉砕した。その後粉末にした製剤を、STWサンプル中にその重量の約0.36%の量で導入した後、組成物をSilverson 撹拌機にて8000rpmで5分間混合した。生成物の粘性および降伏応力は、各々552cPおよび1.74ダイン/cmであった。
【0031】
[実施例5]
BCは、1200ガロンの発酵器において、最終収率1.4重量%で生成した。ブロスを350ppmの次亜塩素酸塩で処理し、続いて70ppmのリゾチーム、および350ppmのプロテアーゼ、続いてもう一度350ppmの次亜塩素酸塩で処理した。処理したBCブロスを少量ずつ、所定の量のキサンタンガムブロスおよび予め水和したCMC溶液(BC/XG/CMC=6/3/1、乾燥重量に基づいて)と共に混合した後、IPA(85%)を用いて沈澱させ、実施例1におけるように乾燥および粉砕した。その後粉末にした製剤を、STW溶液および0.25%CaCl溶液中に、各々その重量の約0.2%の量で導入した後、組成物をextensionalホモジェナイザーを用いて1500psi、2パスにて活性化した。生成物の6rpmでの粘性は、STWおよび0.25%CaCl溶液中で、各々343cPおよび334cPであった。約20個の3.2mm直径のナイロンビーズ(1.14g/mL)を各溶液中(STWおよび0.25%CaCl溶液中)に落とし、溶液を24時間室温で放置した。24時間の後、ビーカーの底に沈下したビーズは1つもなかった。
【0032】
[実施例6]
BCは、1200ガロンの発酵器において、最終収率1.6重量%で生成した。ブロスを350ppmの次亜塩素酸塩で処理し、続いて70ppmのリゾチーム、および350ppmのプロテアーゼ、続いてもう一度350ppmの次亜塩素酸塩で処理した。処理したBCブロスを少量ずつ、所定の量の予め水和したペクチンおよびCMC溶液(BC/ペクチン/CMC=6/3/1、乾燥重量に基づいて)と共に混合した後、IPA(85%)を用いて沈澱させ、実施例1におけるように乾燥および粉砕した。その後粉末にした製剤を、STW溶液および0.25%CaCl溶液中に、各々その重量の約0.2%の量で導入した後、組成物をextensionalホモジェナイザーを用いて1500psi、2パスにて活性化した。生成物の6rpmでの粘性は、STWおよび0.25%CaCl溶液中で、各々306cPおよび293cPであった。約20個の3.2mm直径のナイロンビーズ(1.14g/mL)を各溶液中(STWおよび0.25%CaCl溶液中)に落とし、溶液を24時間室温で放置した。24時間の後、ビーカーの底に沈下したビーズは1つもなかった。
【0033】
[実施例7]
BCは、1200ガロンの発酵器において、最終収率1.6重量%で生成した。ブロスを350ppmの次亜塩素酸塩で処理し、続いて70ppmのリゾチーム、および350ppmのプロテアーゼ、続いてもう一度350ppmの次亜塩素酸塩で処理した。処理したBCブロスを少量ずつ、所定の量の予め水和したCMC溶液(BC/CMC=3/1、乾燥重量に基づいて)と共に混合した後、IPA(85%)を用いて沈澱させ、実施例1におけるように乾燥および粉砕した。その後粉末にした製剤を、STW溶液および0.25%CaCl溶液中に、各々その重量の約0.2%の量で導入した後、組成物をextensionalホモジェナイザーを用いて1500psi、2パスにて活性化した。生成物の6rpmでの粘性は、STWおよび0.25%CaCl溶液中で、各々206cPおよび202cPであった。約20個の3.2mm直径のナイロンビーズ(1.14g/mL)を各溶液中(STWおよび0.25%CaCl溶液中)に落とし、溶液を24時間室温で放置した。24時間の後、ビーカーの底に沈下したビーズは1つもなかった。
【0034】
各サンプルは、優れたそして高レベルの所望の粘性の修飾および降伏応力という結果を示した。バクテリアセルロース産物に関して、そのような結果は、バクテリアセルロース材料単独では、および/または本明細書に従ったようなあまり複雑でない方法では、これまで達成することはできなかった。
【0035】
低いpHレベルのタンパク質を基本とする飲料の製造および分析
ペクチンを含有する大豆を基本とする飲料のいくつかの最初の比較の実施例を、そのような高メトキシ(HM)ペクチン単独で使用する酸性大豆飲料の安定性を実証するために最初に行った。これらの製剤を、以下に列記する加工条件と共に、以下の表1に示す。大豆タンパク質は、商標名XT34N IPの下にSolaeより入手可能な単離体とした。
【0036】
【表1】

【0037】
大豆タンパク質単離体は、フラスコ内の25℃脱イオン(DI)水中に、高速撹拌機(Caframo Stirrer)を使用して分散させた。その後得られた混合物を70℃に加熱し、5分間維持した後、周囲温度(約20〜25℃)に冷却した。別のフラスコ内で、HMペクチンを50℃ DI水中に、同じタイプの高速撹拌機を使用して5分間分散させ、放置して周囲温度まで冷却した。その後HMペクチン溶液を、大豆単離体溶液に加え、温度が約〜25℃になるまで約3分間、手で撹拌した。その後オレンジジュース(The Coca-Cola Companyからの果肉を含まないMINUTE MAID(登録商標))を、得られた溶液に加えた。上の表1に記した量のクエン酸ナトリウムの乾燥ブレンドを、別に調製し、その後得られたブレンドをタンパク質/ペクチン/ジュース溶液内に入れた。その後pHを、50%(w/v)クエン酸溶液を用いて撹拌しながら4.0に調整した。その後超高温(UHT)工程を140.5℃に4.5秒間保持して実施し、さらに2000psi(第1のステージ 1500、第2のステージ 500)でホモジェナイズし、最終的に30℃に冷却した。その後サンプルを分析のため、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルNalgeneボトル内に、30℃で、無菌的に導入した。その後そのようなサンプルを室温で7日間貯蔵し、安定性および沈降について評価した。
【0038】
次に発明のサンプルを、ある種のバクテリアセルロース含有製剤、例えばBC:キサンタン:CMC(上の実施例1の安定剤A)、およびBC:ペクチン:CMC(上の実施例6の安定剤B)を含めて調製した。表2は、これにより作製された組成物を示す。これらの調製の工程は、上に概説したものと同じである。
【0039】
【表2】

【0040】
表1および表2のコントロール、比較の実施例、および本発明の実施例は各々、7日間室温で貯蔵し、評価した。ネガティブコントロールは、容器の50%の透明な上層、および下半分の沈降物の高密度の下層に、完全に相分離した。0.20%ペクチンの添加では飲料はまだ底部に濃厚な沈降を形成し、飲料の90%を構成する濁った上層を伴い、酸性化ステップの間タンパク質をコーティグするペクチンの量が不十分であったことを示した。0.35%および0.50%ペクチンのサンプルもまた、容器の底部に目視できるペレットの発達により不安定であったが、これらの飲料の口当たりは異なっていた。コントロールおよび0.20%ペクチンのサンプルは、不快な粒状の舌ざわりを有したが、一方0.35%および0.50%ペクチンのサンプルはそれらの不安定性にもかかわらず滑らかであった。
【0041】
本発明のBCを基本とした安定剤1〜4を用いて生成した飲料は、ペクチンにより安定化された酸性大豆飲料を上回る、安定性の顕著な改善を示した。安定剤Aは、コントロールの50%の相分離と比較して、0.10%使用レベルで、わずか35%の相分離しか示ない、コントロールを上回る改善された安定性を示した。安定剤Aの濃度を0.20%に増加することにより、相分離はわずか20%にさらに低減した。安定剤Bで安定化した飲料は、相分離の兆候を示さなかった。これらのBCのみを基本とする飲料の知覚的特徴は、粒状の舌ざわりであった。これらの飲料の実施例の結果を、以下の表3に提供する。
【0042】
【表3】

【0043】
次に、ペクチンのみの製剤の安定性を改善し、BCを基本とする安定剤のみの製剤の不利な舌ざわりを克服するという双方の目的のため、本発明の安定剤およびHMペクチンの双方を含む、さらなる製剤を調製した。これらの新規の本発明の製剤は、以下のように、そして上の表1の後に概説した工程のステップに従って、加工した。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
7日後の目視による検査は、安定剤Bと0.20%ペクチンとのこれらの本発明の各組み合わせが、BCを基本とする安定剤を含まない0.20%ペクチン飲料の安定性を、大きく改善することを示した。0.05%安定剤B/0.20%ペクチンを組み合わせることで、相分離は、ペクチンのみの飲料で示された90%からまさに40%に減少した。この低減は、0.075%安定剤B/0.20%ペクチンを使用することにより、25%の相分離にさらに低減されたが、一方0.10%安定剤B/0.20%ペクチンを組み合わせたシステムにおいては、わずか10%の不安定性しか観察されなかった。すべてのサンプルの口当たりは、ペクチンの存在により滑らかであった。
【0047】
上に表の形で示さなかったが、0.35%と安定剤Aとの組み合わせもまた、ペクチンのみの飲料を上回る安定性の改善を示した。7日後、0.05%および0.075%の安定剤B/0.35%ペクチンによる安定化飲料の双方において、サンプルは10%の相分離を示した。完全な安定性は0.10%安定剤B/0.35%ペクチンを用いて達成された。加えてこれらの安定なサンプルの知覚評価は、粒状物質のない滑らかな口当たりを示した。これらのデータは、0.35%ペクチンと組み合わせた0.10%安定剤Bが、この投与に関して、最適な安定性および口当たりを提供することを示唆する。これらの結果を下の表6に示す。
【0048】
【表6】

【0049】
本発明のシステムを用いてさらに興味深いのは、酸性化したタンパク質を基本とする(非限定的選択として、本実施例においては、大豆)飲料中に、不溶性カルシウムを懸濁することにおける、BCを基本とする安定剤の機能を実証する能力である。0.35%ペクチンに加えて使用したときに、安定剤BおよびC(BC:CMC)(上の実施例3)を加えて、カルシウムを懸濁した。製剤は以下のように、そして上の表1の下に記載した工程に従って調製した。
【0050】
【表7】

【0051】
室温で7日後、コントロールサンプルは、大きな沈降物の形成による最悪の安定性を有した。飲料の中間部および低部の組成を、固形物およびカルシウムの含有量について、安定なおよび不安定な領域において各々分析した。サンプルの底部には、中心部と比較してより多量の固形物が認められた(15.16% 対 11.80%)。これらの不安定な固形物は、飲料の安定な部分の0.68%と比較して、2.15%の不安定なカルシウムを含有しており、これらの沈降物中のカルシウムおよび固形物の差異は、タンパク質および砂糖で構成された。
【0052】
BCを基本とする安定剤の双方のタイプとも、コントロールを上回ってカルシウムの懸濁を改善した。安定剤BおよびCのサンプルの中心部および底部間の固形物の差異は、カルシウム濃度における差異としては、無視することができ、BCを基本とする双方の安定剤が、酸性化した大豆飲料においてタンパク質を懸濁する能力があることを示唆する。結果を下の表8にまとめる。
【0053】
【表8】

【0054】
このように本発明により安定化された飲料は、潜在的に凝集するタンパク質固体を含む溶液中における場合でさえも、コントロールに対して、優れたカルシウムの安定化および懸濁を示した。
【0055】
次に、低いpHの酸性(pH5)大豆タンパク質ジュース飲料を安定化する上で、ペクチンと共に合わせて加工した(co-processed)本発明のBCを基本とする安定剤の機能性を検討するため、さらなる実験を行った。製剤の試験を下の表9に列記する。
【0056】
【表9】

【0057】
これらの製剤は以下の様に調製した。大豆タンパク質の単離体を、最初にフラスコ内で高速撹拌機を使用して、25℃のDI水中に分散させた。その後溶液を70℃に加熱し、5分間その温度で維持した後、周囲温度に冷却した。次にこの豆乳にジュースを撹拌しながら加えた。その後クエン酸ナトリウム、砂糖、および本発明の安定剤を上に列記した量で乾燥ブレンドし、既に混合してある溶液中に加えた。その後pHを、50%(w/v)クエン酸溶液を用いて撹拌しながら5.0に調整した。その後UHT工程を140.5℃に4.5秒間保持して実施し、2000psi(第1のステージ 1500、第2のステージ 500)でホモジェナイズし、続いて30℃に冷却した。その後貯蔵および評価のため、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルNalgeneのボトルに、30℃で、無菌的に(上のように)充填した。
【0058】
7日間室温での貯蔵後、コントロールサンプルは容器底部にタンパク質の沈降を形成し、80%の相分離を示した。0.075%安定剤Bを加えることで、まさに35%の相分離に安定性を改善した。0.10%への濃度の増加は、さらに10%の相分離にまで安定性を改善した。完全な安定性は0.15%安定剤Bを用いて安定化させたサンプル中で観察された。加えて、すべてのサンプルは口を通して評価し、あらゆるサンプル中に粒状物は認められなかった。これらのデータは、BCを基本とする安定剤が、5.0付近のpH範囲で大豆タンパク質を懸濁する能力があることを実証した。結果を以下の表10にまとめる。
【0059】
【表10】

【0060】
さらに、軽度に酸性化した牛乳を基本とするジュース飲料内の、熱変性した乳タンパク質を懸濁することにおける、本発明のBCを基本とする安定剤の機能性を調べるため、次に実験を行った。2つの濃度の安定剤B(BC:ペクチン:CMC)(上の実施例6)を飲料に加え、コントロールサンプルと比較した。この分析用に加工した製剤は、以下の用に表11に従って、そして以下の概略において調製した。
【0061】
【表11】

【0062】
これらの飲料を調製するため、DI水、牛乳、砂糖、およびバニラを、高速撹拌機を使用して合わせて混合した。この得られた混合物にオレンジジュースをゆっくり加えた後、得られた組成物のpHを、50%(w/v)クエン酸溶液を用いて撹拌しながら5.0に調整した。その後UHT工程を140.5℃に4.5秒間保持して実施し、2000psi(第1のステージ 1500、第2のステージ 500)でホモジェナイズし、続いて30℃に冷却した。その後上の様に、ポリエチレンテレフタレートコポリエステルNalgeneボトルに、30℃で無菌的に(上のように)充填し、評価のため室温に貯蔵した。
【0063】
そのような貯蔵の7日後、コントロールサンプルは容器底部に高密度の沈降物を形成し、完全に失敗した。安定剤Bを使用した双方のサンプルは、ドリンク中に完全に均一なタンパク質の懸濁を有した。サンプルの口を通しての評価は、コントロールサンプルにおいては顕著な粒状の舌ざわりを示したが、一方0.15%安定剤Bおよび0.20%安定剤Bは、滑らかであった。口当たりは、安定剤Bの濃度が0.15%から0.20%に増加するにしたがって、濃厚さを増した。
【0064】
このようにすべての場合において、BCを伴う懸濁助剤を含めることで、特にコントロール、およびその他の比較の懸濁助剤システムと比較して、優れた低い相分離、安定な視覚的外観、および優れた口当たりを与えた。
【0065】
本発明を、ある種の好ましい態様及び実践と関連して記載および開示するが、本発明をそれらの特定の態様に限定する意図は全くなく、むしろ、添付の請求項およびその均等な内容の範囲により定義されてよいような、均等な構造、ならびにすべてのこれに代わる態様および修飾をカバーすることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのタンパク質を基本とする材料、ならびに少なくとも1つのバクテリアセルロース材料および少なくとも1つのポリマー性増粘剤を含む少なくとも1つのバクテリアセルロース含有製剤を包含する液体組成物であって、前記増粘剤は、少なくとも1つの荷電セルロースエーテル、ならびにキサンタン産物、ペクチン、アルギネート、ジェランガム、ウェランガム、ジウタンガム、ランザンガム、カラギーナン、グァーガム、寒天、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガカントガム、タマリンドガム、イナゴマメガムなどから成る群より選択される少なくとも1つの沈澱剤、およびそれらの混合物から成る群より選択され、前期液体組成物のpHレベルが高くても5.5である、前期液体組成物。
【請求項2】
前記ポリマー性増粘剤が荷電セルロースエーテルである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記荷電セルロースエーテルが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カチオン性ヒドロキシエチルセルロース、およびそれらの混合物から成る群より選択される、請求項2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記ポリマー性増粘剤が沈澱剤である、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記沈澱剤が、キサンタン産物、ペクチン、アルギネート、ジェランガム、ウェランガム、ジウタンガム、ランザンガム、カラギーナン、グァーガム、寒天、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガカントガム、タマリンドガム、イナゴマメガム、およびそれらの混合物から成る群より選択される、請求項4に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記沈澱剤がペクチンである、請求項5に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記ポリマー性増粘剤が、沈澱剤と荷電セルロースエーテルとの組み合わせである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記ポリマー性増粘剤が、カルボキシメチルセルロースナトリウムとペクチンとの組み合わせである、請求項7に記載の液体組成物。
【請求項9】
前記バクテリアセルロース産物がミクロフィブリル化セルロースである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項10】
前記バクテリアセルロース産物がミクロフィブリル化セルロースである、請求項2に記載の液体組成物。
【請求項11】
前記バクテリアセルロース産物がミクロフィブリル化セルロースである、請求項3に記載の液体組成物。
【請求項12】
前記バクテリアセルロース産物がミクロフィブリル化セルロースである、請求項4に記載の液体組成物。
【請求項13】
前記バクテリアセルロース産物がミクロフィブリル化セルロースである、請求項5に記載の液体組成物。
【請求項14】
前記バクテリアセルロース産物がミクロフィブリル化セルロースである、請求項6に記載の液体組成物。
【請求項15】
前記バクテリアセルロース産物がミクロフィブリル化セルロースである、請求項7に記載の液体組成物。
【請求項16】
前記バクテリアセルロース産物がミクロフィブリル化セルロースである、請求項8に記載の液体組成物。
【請求項17】
不溶性カルシウム構成成分をさらに包含する、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項18】
不溶性カルシウム構成成分をさらに包含する、請求項7に記載の液体組成物。
【請求項19】
不溶性カルシウム構成成分をさらに包含する、請求項8に記載の液体組成物。
【請求項20】
不溶性カルシウム構成成分をさらに包含する、請求項16に記載の液体組成物。
【請求項21】
少なくとも1つのタンパク質を基本とする材料を0.1〜20重量%の量で包含し、pHレベルが高くても5.5である液体組成物であって、22℃の温度で24時間貯蔵後のタンパク質沈降レベルが高くても10%である、前記液体組成物。
【請求項22】
前記タンパク質を基本とする材料が、豆乳、牛乳、およびそれらの混合物から成る群より選択される、請求項21に記載の液体組成物。
【請求項23】
前記タンパク質を基本とする材料が豆乳である、請求項22に記載の液体組成物。
【請求項24】
pHレベルが高くても4.5である、請求項23に記載の液体組成物。
【請求項25】
前記タンパク質を基本とする材料が牛乳である、請求項22に記載の液体組成物。
【請求項26】
少なくとも1つのタンパク質を基本とする材料を0.1〜20重量%の量で、および不溶性カルシウムの原料を0.05〜5重量%の量で包含し、pHレベルが高くても5.5である液体組成物であって、22℃の温度で24時間貯蔵後のタンパク質沈降レベルが高くても10%でかつ不溶性カルシウムの沈降レベルが高くても10%である、前記液体組成物。
【請求項27】
前記タンパク質を基本とする材料が、豆乳、牛乳、およびそれらの混合物から成る群より選択され、前記不溶性カルシウムの原料が、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、およびクエン酸カルシウムから成る群より選択される材料である、請求項26に記載の液体組成物。
【請求項28】
前記タンパク質を基本とする材料が豆乳であり、前記不溶性カルシウムの原料がリン酸三カルシウムである、請求項27に記載の液体組成物。
【請求項29】
pHレベルが高くても4.5である、請求項28に記載の液体組成物。
【請求項30】
前記タンパク質を基本とする材料が牛乳である、請求項27に記載の液体組成物。

【公表番号】特表2009−502200(P2009−502200A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525106(P2008−525106)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/029888
【国際公開番号】WO2007/016547
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(506128352)シーピー・ケルコ・ユーエス・インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】