説明

低減された粘性を有する濃縮ポリペプチド製剤

本発明は低減された粘性を有するポリペチド製剤、及び低減された粘性を有するポリペチド製剤の製造及び使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本出願は、2009年8月4日に出願された米国仮出願第61/231,140号の優先権を主張するものであり、その内容は出典明記によりその全体を本明細書中に援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、低減された粘性を有するポリペプチド製剤及び低減された粘性を有するポリペプチド製剤の製造及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高く濃縮された状態でのポリペプチド及び溶液の挙動を調査することは、生物学的治療の安定性、安全性、及び有効性の我々の理解に極めて重要である。近年では、ポリペプチド濃度を増加することの生物学的治療の安定性及び安全性への影響が、バイオテクノロジー産業及び食品医薬品局(FDA)から高い注意を集めた。生物学的治療の物理化学的な安定性は、単にポリペチド濃度を増やすことより悪影響をうけうる。化学的不安定性は典型的には濃度に関して一次速度則に従う;しかしながら、物理的不安定性は複雑な高次の過程となりうる。ポリペチド濃度(IgG濃度等)を増やすことは、結果として非理想的な溶液特性の増加となるこれらの分子の自己会合を増加し、粘性及びレオロジー的挙動に著しく影響する。
高濃度生物学的治療の皮下投与は、著しい課題を製薬科学者に提出する。高用量用法では、必要なポリペチド濃度はしばしば100mg/mLより大きく、潜在的に非理想的溶液特性、低減された安定性及び/又は低減された製造可能性及びデリバリーとなる。このような製剤の開発の主要な課題はそれらの高い粘性である。
【発明の概要】
【0004】
ここに提供されるのは、(a)約50mg/mLより大きい量のポリペチド及び(b)製剤の約0.1%から約50%v/vの間の量のジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)を含んでなる液状製剤であり、該製剤はDMSO又はDMAの非存在下での同一の製剤と比較して低減された粘性を有する。
ここで提供されるのは、また、(a)約50mg/mLより大きい量のポリペチド及び(b)製剤の約0.1%から約50%v/vの間の量のジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)を含んでなる液状製剤を製造する方法であり、該製剤はDMSO又はDMAの非存在下での同一の製剤と比較して低減された粘性を有し、ポリペプチド及びDMSO又はDMAを組み合わせることを含んでなる。
ここに提供されるのは、(a)約50mg/mLより大きい量のポリペチド及び(b)製剤の約0.1%から約50%v/vの間の量のジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)を含んでなる液状製剤を有する容器を含んでなる製造品であり、該製剤はDMSO又はDMAの非存在下での同一の製剤と比較して低減された粘性を有する。
更に、ここに提供されるのは、(a)約50mg/mLより大きい量のポリペチド及び(b)製剤の約0.1%から約50%v/vの間の量のジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)を含んでなる液状製剤を使用する方法であって、該製剤は、DMSO又はDMAの非存在下での同一の製剤と比較して低減された粘性を有し、疾患又は障害を治療するためであり、必要とする被験体に該製剤を投与することを含んでなる。
また、ここに提供されるのは、(a)約50mg/mLより大きい量のポリペチド及び(b)製剤の約0.1%から約50%v/vの間の量のジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)を含んでなる液状製剤を送達する方法であって、該製剤はDMSO又はDMAの非存在下での同一の製剤と比較して低減された粘性を有し、必要とする被験体に該製剤を投与することを含んでなる。
【0005】
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、二次構造、三次構造及び/又は四次構造を形成することが可能である。幾つかの実施態様では、二次構造はβ-シートである。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、ポリペチドは疎水性である。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、ポリペプチドが約100アミノ酸又はそれより大きい。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、ポリペプチドは5,000ダルトンより大きい分子量を有する。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、ポリペプチドは治療的ポリペチドである。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、ポリペプチドは抗体である。幾つかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。幾つかの実施態様では、モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。幾つかの実施態様では、モノクローナル抗体はIgGモノクローナル抗体である。幾つかの実施態様では、抗体は抗原結合断片である。幾つかの実施態様では、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、Fab’断片、F(ab’)断片、scFv、Fv及び、ダイアボディからなる群から選択される。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、ポリペチドは一又は複数のこれらのパラメーターを含む。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAは、製剤の約1%から約10%v/vの間の量である。幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAは、製剤の約1%から約5%v/vの間の量である。
【0006】
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、製剤はヒスチジンを更に含む。幾つかの実施態様では、ヒスチジンは約10mMから約100mMの間の量である。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、製剤はアルギニン-HClを更に含む。幾つかの実施態様では、アルギニン-HClは約50mMから約200mMの間の量である。
【0007】
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、ポリペチドは約100mg/mL以上の量である。幾つかの実施態様では、ポリペチドは約100mg/mL及び約300mg/mLの間の量である。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、粘性は、DMSO又はDMAの非存在下での同じ製剤と比較して約1から約1000cPの間で低減される。幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAの非存在下での同じ製剤と比較して約5から約100cPの間で低減される。
【0008】
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、粘性は、DMSO又はDMAの非存在下での同じ製剤と比較して約1.2及び約10倍の間で低減される。幾つかの実施態様では、粘性はDMSO又はDMAの非存在下での同じ製剤と比較して約1.2及び約5倍の間で低減される。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、粘性は約50cP又はそれ以下である。幾つかの実施態様では、粘性は約25cP又はそれ以下である。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、pHは約5及び約8の間である。幾つかの実施態様では、pHは約5及び約6.5の間である。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAは、DMSOである。幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAは、DMAである。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、製剤は注射による投与のために処方される。幾つかの実施態様では、製剤は皮下注射による投与のために処方される。
製剤、方法、及び製造品の何れかの幾つかの実施態様では、容器は注射器である。幾つかの実施態様では、注射器は注入装置内に更に具備される。幾つかの実施態様では、注入装置は自動注入装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】様々な量のDMSO又はDMAの存在下での145mg/mL抗IFNα溶液の粘性を示す。緩衝液の種類及び濃度はヒスチジン塩化物(25、50、及び75mM)、pH5.4である。
【図2】140mg/mL抗IFNαの粘性を示す。10%v/vDMSOの存在下(赤円)及び非存在下(黒四角)での25mMヒスチジン塩化物溶液を用いpHの関数として示す。
【図3】145mg/mL抗IFNαの粘性を示す。25mMヒスチジン塩化物を用い、様々な量のアルギニン塩化物及び共溶媒の存在下及び非存在下で行われた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
I.製剤及び製剤の製造方法
ここに提供されるのは、(a)ポリペチド及び(b)ジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)を含んでなる液状製剤であって、該製剤は、DMSO又はDMAの非存在下(つまり欠如)での同一の製剤と比較して低減された粘性を有する。また、ここに提供されるのは、(a)ポリペチド及び(b)ジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)を含んでなる液状製剤の製剤を製造する方法であって、該製剤はDMSO又はDMAの非存在下(つまり欠如)での同一の製剤と比較して低減された粘性を有し、ポリペチド及びDMSO又はDMAを組み合わせることを含んでなる。
DMSOは、式(CHSOを有する化学化合物である。DMSOは無色の液体であり、極性及び非極性化合物双方を溶解する重要な極性非プロトン溶媒であり、広範囲にわたる有機溶媒並びに水において混和性である。DMAは、式CHC(O)N(CHを有する有機化合物である。DMAは、無色、水混和性、高沸点液体であり、多くの他の溶媒と混和性であるが、脂肪族炭化水素に難溶性である。幾つかの実施態様では、ポリペプチドにおけるDMSO又はDMAは、製剤の0.1%から2.5%、0.1%から5%、0.1%から7.5%、0.1%から10%、1%から2.5%、1%から5%、1%から7.5%、1%から10%、1%から15%、1%から20%、1%から25%、1%から30%、1%から40%、又は1%から50%の何れかのおよその間の量である。幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAを含んでなるポリペプチド製剤のDMSO又はDMAは、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%の何れかのおよその量である。幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAはDMSOである。幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAはDMAである。幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAは、DMSO及びDMAの組合せである。
【0011】
幾つかの実施態様では、粘性は剪断粘度である。剪断粘度は、与えられた応力が剪断応力である時の粘性係数である(非ニュートン性流体に当てはまる)。剪断粘度=剪断応力/剪断速度。
幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAを含んでなるポリペプチド製剤の剪断粘度は、DMSO又はDMAの非存在下(つまり欠如)での同一の製剤と比較して、1cPから1000cP、1cPから500cP、1cPから250cP、1cPから100cP、1cPから75cP、1cPから50cP、1cPから40cP、1cPから30cP、1cPから25cP、1cPから20cP、1cPから15cP、1cPから10cP、5cPから100cP、5cPから50cP、5cPから25cP、又は5cPから15cPの何れかのおよその間で低減される。DMSO又はDMAを含んでなるポリペプチド製剤の剪断粘度は、DMSO又はDMAの非存在下(つまり欠如)での同一の製剤と比較して、1cP、5cP、10cP、15cP、20cP、25cP、50cP、100cP、250cP、500cP、又は1000cPの何れかのおよそより大きく低減される。DMSO又はDMAを含んでなるポリペプチド製剤の剪断粘度は、幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAの非存在下(つまり欠如)での同一の製剤と比較して、1cP、5cP、10cP、15cP、20cP、25cP、50cP、100cP、250cP、500cP、又は1000cPの何れかのおよそで低減される。
【0012】
幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAを含んでなるポリペプチド製剤の粘性は、DMSO又はDMAの非存在下(つまり欠如)での同一の製剤と比較して、1.2倍及び5倍、1.2倍及び10倍、1.2倍及び20倍、2倍から5倍、2倍から10倍、又は2倍から20倍の何れかのおよそ間で低減される。DMSO又はDMAを含んでなるポリペプチド製剤の粘性は、幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAの非存在下(つまり欠如)での同一の製剤と比較して、約1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、又は50倍の何れかのおよそより大きい割合で、低減される。幾つかの実施態様では、粘性は剪断粘度である。
幾つかの実施態様では、DMSO又はDMAを含んでなるポリペプチド製剤の剪断粘度は、100cP以下、75cP以下、50cP以下、25cP以下,20cP以下、15cP以下、又は10cP以下の何れかのおよそである。DMSO又はDMAを含んでなるポリペプチド製剤の剪断粘度は、幾つかの実施態様では、5cPから30cP、10cPから30cP、10cPから25cP、又は15cPから25cPの何れかのおよその間でありうる。
【0013】
幾つかの実施態様では、製剤におけるポリペプチドは、50mg/mLより多い、75mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、250mg/mL、又は300mg/mLの何れかのおよその量である。製剤におけるポリペプチドは、約50mg/mL及び300mg/mL、50mg/mL及び200mg/mL、100mg/mL及び300mg/mL、100mg/mL及び200mg/mL、120mg/mL及び300mg/mL、140mg/mL及び300mg/mL、又は160mg/mL及び300mg/mLの間の何れかのおよその量でありうる。幾つかの実施態様では、製剤におけるポリペプチドは、約50mg/mL、75mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、250mg/mL、又は300mg/mLの何れかの量である。
【0014】
いくつかの態様においてポリペプチドは、所望される程度の純度を持つポリペプチドを凍結乾燥製剤又は水性溶液の形態で、最適な製薬上許容される担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより調製され保存される(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th 版, Osol, A. 編. [1980])。
【0015】
ここで用いられる「担体」は、製薬的に許容されうる担体、賦形剤、又は安定化剤を含み、用いられる用量及び濃度でそれらに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である。生理学的に許容されうる担体は、水性pH緩衝溶液であることが多い。
【0016】
許容される担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、酢酸、Tris、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド、ベンズエトニウムクロライド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ポリソルベート等の界面活性剤;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はトゥイーン(TWEEN)(登録商標)、プルロニクス(PLURONICS)(登録商標)、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0017】
幾つかの実施形態では、ポリペチド製剤はヒスチジンを更に含む。幾つかの実施形態では、ヒスチジンは、10mMから100mM、25mMから100mM、50mMから100mM、10mMから200mM、25mMから200mM、50mMから200mM、又は100mMから200mMの何れかのおよその量でポリペプチド製剤に存在する。幾つかの実施形態では、ポリペチド製剤はアルギニン-HClを更に含む。幾つかの実施形態では、アルギニン-HClは、10mMから100mM、25mMから100mM、50mMから100mM、10mMから200mM、25mMから200mM、50mMから200mM又は100mMから200mMの何れかのおよその量である。
幾つかの実施態様では、ポリペチド製剤のpHは、5及び8、5及び7、5及び6.5、5及び6または5.5及び6の何れかのおよその間である。
【0018】
幾つかの実施態様では、ポリペチド製剤のポリペチドは機能的活性を維持する。
インビボ投与のために使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通る濾過により容易に達成される。
本願明細書における製剤は、また、治療される特定の徴候に対して適宜、一又は複数の活性化合物を含み得、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有するものが好ましい。例えば、ポリペチドに加えて、一製剤に、更なるポリペチド(例えば抗体)を含むことが所望されうる。あるいは、または加えて、組成物は、化学療法剤、細胞傷害性薬剤、サイトカイン、増殖阻害剤、抗ホルモン剤、及び/又は心臓保護剤を更に含みうる。このような分子は、意図する目的に対して効果的である量の組み合わせで適切に存在する。
「約」への言及は、ここでの値又はパラメーターが、値又はパラメーターそれ自体を指向するバリエーションを含む(及び記載する)ことを意味する。例えば、「約X」を言及する記載は「X」の記載を含む。
【0019】
本願明細書及び添付の請求項で使用される場合、単数形「a」、「or」、及び「the」は、他に明記しない限り複数形を含む。ここに記載される本発明の態様及びバリエーションは、態様及びバリエーション「から成る」及び/又は「から基本的には成る」ことを含む。
【0020】
II.ポリペプチド
ここに提供されるのは、低減された粘性を有するポリペプチド製剤の何れかの使用のためのポリペプチド、及びここに記載される低減された粘性を有するポリペプチド製剤の製造方法である。
(A)ポリペプチドの定義
本明細書で使用する「ポリペプチド」とは、約50より多いアミノ酸を有する任意の細胞源由来のペプチド及びタンパク質を意味する。幾つか実施態様では、ポリペプチドは抗体である。「アミノ酸」なる用語は、ここで使用される場合、天然由来の及び非天然由来のものを含む。アミノ酸は、ペグ化、脂質化(lipidized)、及び/又は毒素コンジュゲート類似体等の類似体を含む。
【0021】
「精製ポリペプチド(例えば抗体)」は、ポリペプチドの純度が増加されたことを意味し、天然環境で及び/又は研究室状況下で最初に合成及び/又は増加される時に存在するより純粋である形態で存在する。純度は相対的な用語であり、絶対純度を意味する必要はない。
【0022】
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合した本発明によるポリペプチドを含んでなるキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さは融合するポリペプチドの活性を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。適切なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8〜約50のアミノ酸残基(好ましくは約10〜約20の残基)を有する。
【0023】
本発明のポリペプチドの変異体に関し、「活性な」又は「活性」という表現は、天然又は天然発生ポリペプチドの生物学的及び/又は免疫学的活性を保持する本発明のタンパク質の形態を意味し、「生物学的」活性とは、天然又は天然発生PRO92726によって生ずる(阻害性又は刺激性の)生物学的機能であって、本発明の天然又は天然発生ポリペプチドが有する抗原性エピトープに対して抗体を生成する能力以外のものを意味する。
同様に、「免疫学的」活性とは、本発明の天然又は天然発生ポリペプチドが有する抗原性エピトープに対する抗体の生成における抗原としての能力を意味する。
【0024】
「アンタゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示した本発明の天然配列ポリペプチドの生物学的活性(例えば、Th1/Th2細胞性機能の下方制御)を部分的又は完全に阻止、阻害、又は中和する任意の分子を指す。同様に「アゴニスト」なる用語は最も広い意味で用いられ、ここに開示した本発明の天然配列ポリペプチドの生物学的活性を模倣、亢進又は刺激する任意の分子を含む。好適なアゴニスト又はアンタゴニスト分子は特に、アゴニスト又はアンタゴニスト抗体又は抗体断片、本発明の天然ポリペプチドの断片又はアミノ酸配列変異体、ペプチド、有機小分子、などを含む。ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの同定方法は、ポリペプチドを候補アンタゴニスト又はアゴニストと接触させ、ポリペプチドに通常は関連している一又は複数の生物学的活性の変化を測定することを含んでもよい。
【0025】
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(例えば、ポリペプチド(例えば、抗体))分子に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
【0026】
対象の抗原、例えば腫瘍関連ポリペプチド抗原標的と「結合する」ポリペプチドは、そのポリペプチドがその抗原を発現している細胞又は組織を標的とする診断及び/又は治療剤として有用であり、他のポリペプチドと有意には交差反応しないように十分な親和性でその抗原と結合するものである。そのような実施態様では、ポリペプチドの「非標的」ポリペプチドとの結合の程度は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)分析又は放射免疫沈降(RIA)によって定量して、その特定の標的ポリペプチドとのポリペプチドの結合の約10%よりも低い。
【0027】
標的分子へのポリペプチドの結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、非特異的な相互作用とは測定して異なる結合を意味する。特異的な結合は、例えば、一般に結合活性を持たない類似した構造の分子であるコントロール分子の結合性と比較して、分子の結合性を定量することによって測定することができる。例えば、特異的な結合性は、標的、例えば過剰の非標識標的に類似したコントロール分子とも競合にとって定量することができる。この場合、プローブに対する標識標的の結合が過剰の非標識標的によって競合的に阻害されるならば、特異的結合が表示される。
ここで使用される特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープと「特異的に結合」又は「特異的に結合する」、又はそれに対して「特異的である」という用語は、例えば標的に対して少なくとも約10−4M、あるいは少なくとも約10−5M、あるいは少なくとも約10−6M、あるいは少なくとも約10−7M、あるいは少なくとも約10−8M、あるいは少なくとも約10−9M、あるいは少なくとも約10−10M、あるいは少なくとも約10−11M、あるいは少なくとも約10−12M、あるいはそれ以上のKdを持つ分子によって示されうる。一実施態様では、「特異的に結合する」という用語は、如何なる他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープへ実質的に結合することなく分子が特定のポリペプチド又は特定のエピトープに結合する結合を意味する。
【0028】
「腫瘍細胞の成長を阻害する」又は「成長阻害」ポリペプチドは、癌細胞の測定可能な程の成長阻害を引き起こすものである。一実施態様では、成長阻害は、細胞培養で約0.1から30μg/ml又は約0.5nMから200nMのポリペプチド濃度で測定することができ、ポリペプチドへの腫瘍細胞の曝露の後、成長阻害を1−10日で確かめる。インビボでの腫瘍細胞の成長阻害は、下記の実験実施例に記載しているような種々の方法で確かめることができる。約1μg/kgから約100mg/kg体重のポリペプチドの投与が、最初のポリペプチドの投与から約5日から3ヶ月内、好ましくは約5から30日内に腫瘍の大きさ又は腫瘍細胞増殖に減少を引き起こす場合、抗体はインビボで成長阻害性である。
【0029】
「アポトーシスを誘発する」ポリペプチドは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス体と呼ばれる)等により決定されるようなプログラム細胞死を誘発するものである。好ましくは、細胞は腫瘍細胞、例えば前立腺、乳房、卵巣、胃、子宮内膜、肺、腎臓、結腸、膀胱細胞である。アポトーシスに伴う細胞のイベントを評価するために種々の方法が利用できる。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転位置をアネキシン結合により測定することができ;DNA断片化はDNAラダーリングにより評価することができ;DNA断片化に伴う細胞核/クロマチン凝結は低二倍体細胞の何らかの増加により評価することができる。好ましくは、アネキシン結合アッセイにおいて、アポトーシスを誘発するポリペプチドは、未処理細胞の約2〜50倍、好ましくは約5〜50倍、最も好ましくは約10〜50倍のアネキシン結合を誘発するという結果を生じるものである。
【0030】
「細胞死を誘導する」ポリペプチドは、生細胞を生育不能にするものである。好ましくは、その細胞は癌細胞、例えば、乳房、卵巣、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸、甲状腺、膵臓又は膀胱細胞である。インビトロ細胞死は、抗体依存性細胞媒介細胞障害(ADCC)又は補体依存性障害(CDC)によって誘導される細胞死を識別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の無い状態で確かめてもよい。従って、細胞死に関するアッセイは、熱不活性化血清(すなわち、補体の無い)を用いて、免疫エフェクター細胞が無い状態でおこなってもよい。ポリペプチドが細胞死を誘導するか否かを確かめるために、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー(Moore等 Cytotechnology 17: 1-11(1995))又は7AADの取り込みによって評価した膜整合性の損失を、未処理細胞と関連して評価することができる。好ましい細胞死を誘導する抗体、オリゴペプチド又は他の有機分子は、BT474細胞でのPI取り込みアッセイで、PI取り込みを誘導するものである。
【0031】
(B)ポリペプチド
ここに提供されるのは、低減された粘性を有するポリペチド製剤の何れかでの使用のためのポリペプチド及び低減された粘性を有するポリペプチド製剤の製造方法を提供する。
幾つかの実施態様では、ポリペチドは治療的ポリペチドである。治療的ポリペチドは、腫瘍細胞の増殖を阻害、アポトーシスを誘導、及び/又は細胞死を誘導しうる。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは拮抗剤である。幾つかの実施態様では、ポリペプチドはアゴニストである。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは抗体である。
【0032】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370380、390、400、410、420、430、440、450、460、470480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600又は1、000のアミノ酸の何れかより多い。幾つかの実施態様では、ポリペプチドはその分子量が約5000ダルトン、10000ダルトン、15000ダルトン、25000ダルトン、50000ダルトン、75000ダルトン、100000ダルトン、125000ダルトン、又は150000ダルトンの何れかより大きい。ポリペプチドはその分子量が約50000ダルトンから200000ダルトン又は100000ダルトンから200000ダルトンの何れかの間である。あるいは、本明細書で用いられるポリペプチドは約120000ダルトン又は約25000ダルトンの分子量を持つ。
【0033】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは二次構造、三次構造及び/又は四次構造を形成する。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは二次構造を有し、二次構造はα-ヘリックスである。ポリペプチドは75%、50%、40%、30%、25%、20%又は10%の何れかのおよそより少ないα-ヘリックス構造を有しうる。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは二次構造を有し、二次構造はβ-シートである。ポリペプチドは25%、50%、60%、70%、75%、80%又は90%の何れかのおよそより多いβ-シート構造を有しうる。
【0034】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは低平均親水性を有する。親水性はHopp, T.P. and Woods, K.R. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78(6), 3824-382 (1981)に定義されている。親水性は、水との有利熱力学的相互作用に関する特性である。Hopp及びWoodsに決定された個々のアミノ酸親水性は、相対的親水性を定量化するために使用されうる。一般的に、正の親水性値は、荷電極性側鎖に観察され、負の値は非極性側鎖に観察される。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは、約−3から1、−3から0、−2から1、−2から0、−1から1又は−1から0の何れかのおよその間の平均親水性を有する。幾つかの実施態様では、ポリペチドは抗体であり、一又は複数のCDR領域が約0、−1、−2又は−3の何れかより小さい平均親水性を有する。幾つかの実施態様では、少なくとも1、2、3、4、5、又は6の何れかのおよそのCDR領域が、約0、−1、−2又は−3の何れかより小さい平均親水性を有する。幾つかの実施態様では、抗体の6つのCDR全体の平均親水性が、約0、−1、−2又は−3の何れかより小さい。
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは高い疎水性を有する。疎水性は、Kyte, J. and Doolittle, R.F., J. Mol. Bio. 157, 105-132 (1982)に定義されている。疎水性は、溶媒と強く相互作用しない分子を溶媒相から外へ追いやる強い溶媒-溶媒(水)相互作用がある場合に示される。疎水性は、水相及び有機相間の個々のアミノ酸の分配により測定されうる。この分配係数は、有機相のモル分率に対する水相のモル分率として定義される。一般的に、正のハイドロパシー値は非極性側鎖に観察され、また負のハイドロパシー値は極性及び荷電側鎖に観察される。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは2から−1、2から1、2から0、又は1から−1の何れかのおよその間の平均疎水性の範囲を有する。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは抗体でありCDR領域が高い平均疎水性を有する。幾つかの実施態様では、CDR領域は0、1又は2の何れかのおよそより大きい平均疎水性を有する。幾つかの実施態様では、少なくとも1、2、3、4、5、又は6の何れかのおよそのCDR領域が、約0、−1、−2又は−3の何れかより大きい平均疎水性を有する。幾つかの実施態様では、抗体の6つのCDR全体の平均親水性は約0、−1、−2又は−3の何れかより大きい。
【0035】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは少数の荷電アミノ酸側鎖基を有する。電荷の分布及び不均一性が重要であり得る。電荷の不均一性、正のハイドロパシー値が非極性側鎖に観察され、負のハイドロパシー値が極性の荷電側鎖に観察される。
【0036】
幾つかの実施態様では、ポリペプチドは40%、35%、30%、25%、20%、15%、又は10%の何れかのおよそより小さい荷電アミノ酸側鎖基を有する。幾つかの実施態様では、ポリペプチドは抗体であり、そのCDR領域はわずかの荷電アミノ酸側鎖基を有する。幾つかの実施態様では、CDR領域は40%、35%、30%、25%、20%、15%、又は10%の何れかのおよそより小さい荷電アミノ酸側鎖基を有する。
【0037】
ここでの定義範囲に含まれるタンパク質の例には、例えば、ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;因子VIIIC、因子IX、組織因子、及びフォン・ヴィレブランド因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼ又は組織型プラスミノーゲン活性化剤(t-PA、例えば、Activase(登録商標)、TNKase(登録商標)、Retevase(登録商標))等のプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;腫瘍壊死因子-α及びβ;エンケファリナーゼ;RANTES(正常T細胞で発現及び分泌され、活性化により制御される);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;DNase;インヒビン;アクチビン;;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子のレセプター;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;骨誘導神経向性因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子などの神経栄養因子;血小板誘導成長因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の繊維芽成長因子;表皮成長因子(EGF);TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含むTGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インシュリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えば、M−CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(ILs)、例えば、IL-1からIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子(DAF);ウイルス性抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部など;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;イムノアドヘシン;抗体;及び上に列挙した任意のポリペプチドの生物学的活性断片又は変異体、などの哺乳類タンパク質を含む。
【0038】
(C)抗体
低減された粘性を有するポリペプチド製剤の何れかでの使用のためのポリペプチド及び低減された粘性を有するポリペプチド製剤の製造方法は、幾つかの実施態様では抗体でありうる。
本発明に包含される抗体の典型的な分子標的は、CDタンパク質及びそれらのリガンドを含み、限定するものではないが、例えば(i)CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)及びCD79
(CD79b);(ii)ErbB受容体ファミリーのメンバー、例えばEGF受容体、HER2、HER3又はHER4受容体、(iii)細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びv/3インテグリン、それらのα又はβサブユニットを含む、(例えば抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);(iv)増殖因子、例えばVEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC、BR3、c-met、組織因子、7等;及び(v)細胞表面及び膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)、例えば米国特許第7,521,541号に記載されているもの等である。
【0039】
本発明により包含される他の例示的な抗体は、限定するものではないが、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗HER-2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl-2抗体、抗Eカドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15-3抗体、抗CA19−9抗体、抗c-erbB-2抗体、抗P糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗rasオンコプロテイン抗体、抗ルイスX抗体、抗Ki-67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c-myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパ軽鎖抗体、抗ラムダ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異性抗原抗体、抗S-100抗体、抗タウ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体及び抗Tn抗原抗体からなる群から選択されるものを含む。
【0040】
(i)抗体の定義
本明細書中の「抗体」は最も広義に用いられ、具体的にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2のインタクトな抗体から形成される多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を表す限りにおける抗体断片を包含する。「免疫グロブリン」という用語はここでの抗体と相互に置き換え可能に用いられる。
【0041】
抗体は様々構造を有する天然に生じる免疫グロブリン分子であり、全てが免疫グロブリンフォールドに基づく。例えば、IgG抗体は2つの「重」鎖及び2つの「軽」鎖を持ち、それらはジスルフィド結合され機能的抗体を形成する。各重及び軽鎖それ自体は「定常」(C)及び「可変」(V)領域を有する。V領域は抗体の抗原結合特異性を決定し、C領域は免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において構造的サポート及び機能を提供する。抗体の抗原結合特異性又は抗体の抗原結合断片は、特定の抗原に特異的に結合する抗体の能力である。
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造的特性により決定される。可変性は可変ドメインの110アミノ酸全長にわたって均等には分布していない。代わりに、V領域は、各々9-12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度な可変性のより短い領域により分けられる、15-30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変なストレッチからなる。
【0042】
天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与を示す。
【0043】
各V領域は典型的には3つの相補決定領域(「CDR」、その各々は「超可変ループ」を有する)及び4つのフレームワーク領域を有する。特定の望む抗原に対して実質的な親和性を持って結合するために必要な最小の構造単位である抗体結合部位は、従って、典型的には3つのCDR、及び適切なコンフォメーションでCDRを保持し提示するようそれら間に散在される少なくとも3つ、好ましくは4つのフレームワーク領域を含む。古典的な4鎖抗体は、VH及びVLドメインで共同して決定される抗原結合部位を有する。ラクダ及びサメ抗体等のある抗体は、軽鎖を欠き、重鎖のみによって形成される結合部位に依存する。単一ドメインの操作された免疫グロブリンは、VH及びVL間での協力がなく、結合部位が重鎖又は軽鎖のみによって形成されるように調製されることができる。
【0044】
本明細書と特許請求の範囲を通して、特に明記しない限りは、免疫グロブリン重鎖の定常ドメイン中の残基の番号付けは、ここに出典を明示して取り込まれるKabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)のEUインデックスのものである。「カバットのEUインデックス」とはヒトIgG1EU抗体の残基番号付けを意味する。配列又は他の番号付けシステムを特に示さない限りは、V領域内の残基はカバット番号付けに従って番号付けをした。
【0045】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域又は相補性決定領域と呼ばれる3つのセグメントに濃縮される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins ofImmunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, BEthesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与を示す。
【0046】
「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。高頻度可変領域は、一般に、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、Vの、概ね残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)周辺と、Vの概ね31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等、Sequences of Protein of Immunological Interest, 第5版、Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))、及び/又は「高頻度可変ループ」由来のそれらの残基(例えば、VLの残基26−32(L1)、50−51(L2)及び91−96(L3)と、VHの26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))とを含む。
【0047】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここに定義される超可変領域残基の他のそれらの可変ドメインである。
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を有し、好ましくはそれらの抗原結合領域を含んでなる。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')、及びFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残りの「Fc」断片を産生する。抗体のペプシン処理により、単一の大きな、これは2価の抗原結合部位を持つF(ab’)断片が生じ、抗原を交差結合させることができるものである。
【0048】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してV-V二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab’SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab’に対するここでの命名である。F(ab’)抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0049】
任意の脊椎動物種からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つが割り当てられる。
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスが割り当てられる。免疫グロブリンには5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
【0050】
「単鎖Fv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にするようにポリペプチドリンカーをV及びVドメイン間に更に含む。sFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol.113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp.269-315 (1994)を参照のこと。
【0051】
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を意味し、その断片は同じポリペプチド鎖(V-V)内で軽鎖可変ドメイン(V)に結合した重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖上の二つのドメイン間に対形成するには短すぎるリンカーを用いることにより、ドメインは強制的に他の鎖の相補的ドメインと対形成して、二つの抗原結合部位を生成する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に更に十分に記載されている。
【0052】
用語「モノクローナル抗体」は、ここで使用される場合、実質的に均一な抗体の集団か
ら得られる抗体を意味し、すなわち集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の製造の間に生じうるありうる変異(このような変異は一般的に少量で存在しうる)を除き、同一である及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体の調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基を指向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他のイムノグロブリンの混入がないという利点がある。
【0053】
「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作成することもできる。
【0054】
ここで言うモノクローナル抗体は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似するものである(米国特許第4816567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5693780号)。
【0055】
非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒトイムノグロブリン(免疫グロブリン)に由来する最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からの高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、ヒト免疫グロブリン配列の高頻度可変ループがFRのすべて又は実質的にすべてである少なくとも一又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0056】
ここに記載される目的に対して、「インタクトな抗体」は、重及び軽可変ドメイン並びにFc領域を含んでなるものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそれらのアミノ酸多様体でありうる。好ましくは、インタクトな抗体は、一又は複数のエフェクター機能を有する。
【0057】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0058】
「裸の抗体」は、異種性の分子、例えば細胞障害性成分又は放射標識にコンジュゲートされない抗体である。
【0059】
抗体「エフェクター機能」は抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰因するこれらの生物学的活性に関する。抗体エフェクター機能の例は、Clq結合;補体依存性細胞障害活性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介細胞障害活性(ADCC);食作用;細胞表面レセプターのダウンレギュレーション(B細胞レセプター;BCR)、等を含む。
【0060】
「抗体依存性細胞媒介細胞障害活性」及び「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)を発現する非特異性細胞障害性細胞が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介反応に関する。ADCCを媒介する第1の細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγI、FcγII及びFcγIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現はRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92(1991)の464ページの表3に要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するために、例えば米国特許第5,500,362号又は5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイが実施されうる。このアッセイで使用できるエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。他に、又はさらに対象とする分子のADCC活性は、例えばClynes等PNAS(USA)95:652-656(1998)に記載されている様な哺乳動物のモデルでインビボの評価がされうる。
【0061】
「ヒトエフェクター細胞」は、一又は複数のFcRを発現する白血球であり、エフェクター機能を果たす。幾つかの実施態様では、細胞は少なくともFCγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球を含む;PBMC類及びNK細胞が好まれる。
【0062】
「Fcレセプター」又は「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記述するために使用される。好適なFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(γレセプター)に結合し、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含むものであり、これらのレセプターの対立遺伝子変異体及び選択的スプライシング型を含む。FcγRIIレセプターは、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)を含み、それらは、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化FcγRIIAは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン-ベース活性化モチーフ(ITAM)を有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫レセプターチロシン-ベース活性化モチーフ(ITIM)を有する(Daeron, Annu. Rev. Immunol., 15:203-234(1997)に概説されている)。FcRはRavetch及びKinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994);及びde Has等, J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995)において概説されている。将来同定されるものも含む他のFcRが、ここにおける「FcR」なる用語によって包含される。また、この用語は胎児への母性IgGsの移動の原因であり(Guyer等, J. Immumol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol. 24:249 (1994))、また免疫グロブリンのホメオスタシスを調節する新生児レセプターであるFcRnも含む。
【0063】
(ii)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物に産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRにより抱合させることが有用である。
【0064】
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0065】
(iii)モノクローナル抗体
幾つかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の製造の間に生じうるありうる変異(このような変異は一般的に少量で存在する)を除き、同一である及び/又は同じエピトープに結合する。従って、修飾語句「モノクローナル」は、別々の又はポリクローナル抗体の混合ではない抗体の特性を示す。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製でき、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製することができる。
【0066】
ハイブリドーマ法においては、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを上記したようにして免疫し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。別法として、リンパ球をインビトロで免疫することもできる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁(Academic Press, 1986))。
【0067】
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、未融合の親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する一又は複数の物質を好ましくは含む適切な培養培地中に播種し成長させる。例えば、親骨髄腫細胞に酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT又はHPRT)が欠けると、ハイブリドーマ用の培養培地は典型的にはHGPRT欠乏細胞の成長を阻害する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含む。
【0068】
幾つかの実施態様では、骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベルの産生を支援し、HAT培地のような培地に感受性であるものである。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞株は、ソーク・インスティテュート細胞流通センター(the Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USA)から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍由来のもの、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(the American Type Culture Collection, Rockville, Maryland USA)から入手可能なSP-2あるいはX63-Ag8-653細胞のような、マウス骨髄腫株である。ヒトの骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株がまたヒトモノクローナル抗体の産生についても記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
【0069】
ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生のために分析する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降あるいはラジオイムノアッセイ(RIA)あるいは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイによって定量される。
【0070】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばScatchard analysis of Munson et al., Anal. Biochem. 107:220 (1980)によって決定されることができる。
【0071】
所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンが希釈手順を制限することによりサブクローン化され、標準的方法により成長させられる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp.59-103 (Academic Press, 1986))。この目的のための適切な培養培地には、例えば、D-MEMあるいはRPMI-1640培地が含まれる。また、ハイブリドーマ細胞は、動物中の腹水腫瘍としてインビボで成長させてもよい。
【0072】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析あるいはアフィニティークロマトグラフィーのような常套的な免疫グロブリン精製手順によって、培養培地、腹水流体あるいは血清から適切に分離される。好ましくは、ここに記述されるプロテインAアフィニティークロマトグラフィー法が用いられる。
【0073】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)即座に分離されて、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源となる。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を獲得することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組み換え発現に関する概説論文には、Skerra等, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130: 151-188(1992)が含まれる。
【0074】
更なる実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty等, Nature, 348:552-554 (1990)に記載された技術を使用して産生される抗体ファージライブラリーから分離することができる。Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及び Marks等, J.Mol.Biol., 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の分離を記述している。続く刊行物は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生成(Marks等, Bio/Technology, 10:779-783[1992])、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc.Acids.Res., 21:2265-2266[1993])を記述している。従って、これらの技術はモノクローナル抗体の分離に対する伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に対する実行可能な別法である。
【0075】
DNAはまた例えば相同のマウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインをコード配列に置換することにより(米国特許第4816567号; Morrisonら, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984))、あるいは非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て又は一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合で連結することによって、改変することができる。
【0076】
典型的には、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに置換されるか、あるいはそれらは、抗原に対する特異性を有する一つの抗原結合部位と、異なる抗原に対する特異性を有する他の抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体をつくるために抗体の一つの抗原結合部位の可変領域に置換される。
【0077】
(iv)ヒト化抗体
幾つかの実施態様では、抗体はヒト化抗体である。非ヒト抗体のヒト化方法は当技術分野で記載されている。幾つかの実施態様では、ヒト化抗体は非ヒトである供給源からその中に導入される一又は複数のアミノ酸残基を有している。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は本質的に齧歯動物のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりWinter及び共同研究者(Jonesら, Nature, 321:522-525 (1986);Riechmannら, Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyenら, Science, 239:1534-1536 (1988))の方法に従って本質的に実施できる。従って、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかの超可変領域残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0078】
抗原性を低減するには、ヒト化抗体を生成する際に使用するヒトの軽重両方のヒト可変ドメインの選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット法」では、齧歯動物抗体の可変ドメインの配列を、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に齧歯動物のものと最も近いヒトVドメイン配列を同定し、その中のヒトフレームワーク(FR)をヒト化抗体のために受け入れる(Sims等, J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol., 151:2623(1993))。
【0079】
更に、抗体を、抗原に対する高結合親和性や他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の分析、すなわち候補免疫グログリンの抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、例えば標的抗原に対する親和性が高まるといった、望ましい抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般的に、高頻度可変領域残基は、直接かつ最も実質的に抗原結合性に影響を及ぼしている。
(v)ヒト抗体
幾つかの実施態様では、抗体はヒト抗体である。ヒト化の別法として、ヒト抗体を生成することができる。例えば、現在では、免疫化することで、内因性免疫グロブリンの産生がなく、ヒト抗体の全レパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合体欠失によって、結果として内因性抗体産生の完全な阻害が起こることが説明されてきた。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列の、このような生殖細胞系突然変異体マウスへの転移によって、結果として抗原投与時にヒト抗体の産生がおこる。Jakobovits等, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993); Bruggeman等, Year in Immuno., 7:33 (1993);米国特許第5,591,669; 米国特許第5,589,369号; 及び米国特許第5,545,807号を参照のこと。
【0080】
別法として、ファージディスプレイ技術(McCafferty等, Nature 348:552-553[1990])を使用して、非免疫化ドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産出させることができる。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子を、フレーム単位で、繊維状バクテリオファージ、例えばM13又はfdの大きい又は小さいコートタンパク質遺伝子のどちらかでクローンし、ファージ粒子の表面で機能的抗体断片として表示させる。繊維状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能特性に基づいた選択に基づいても、結果としてこれらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択が成される。よって、このファージはB細胞のいくつかの特性を模倣している。ファージディスプレイは多様な形式で行うことができる;例えばJohnson, Kevin S. 及びChiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3:564-571(1993)を参照せよ。V-遺伝子セグメントのいくつかの供給源を、ファージディスプレイのために使用できる。Clackson等, Nature, 352:624-628(1991)は、免疫化したマウス脾臓由来のV遺伝子の小さいランダムなコンビナトリアルライブラリーから、多様で多くの抗-オキサゾロン抗体を単離した。非免疫化ヒトドナーのV遺伝子のレパートリーが構成可能であり、多様で多くの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597(1991)、又はGriffith等, EMBO J. 12:725-734(1993)に記載の技術にそのまま従うことで単離することができる。また、米国特許第5565332号及び同5573905号を参照のこと。
【0081】
上述したように、ヒト抗体はインビトロで活性化したB細胞により産生することができる(米国特許第5567610号及び同5229275号)。
(vi)抗体断片
幾つかの実施態様では、抗体は抗体抗原である。抗体断片を産生するために様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、無傷の抗体のタンパク分解性消化によって誘導された(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science, 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は、現在は組換え宿主細胞により直接産生することができる。抗体断片は、上で論じた抗体ファージライブラリーから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的に結合させてF(ab')断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接分離することができる。抗体断片を生成するのための他の方法は、当業者には明らかであろう。他の実施態様では、選択する抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照のこと。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「直鎖状抗体」であってもよい。そのような直鎖状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であってもよい。
【0082】
幾つかの実施態様では、ここに記載される抗体の断片が提供される。幾つかの実施態様では抗体断片は抗原結合断片である。
【0083】
(vii)二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、二重特異性抗体結合アーム(例えばL2特異的アーム)は、Hip-又はPtch-発現細胞に細胞防御メカニズムを集中させ局在させるように、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)等のIgG(FcγR)に対するFcレセプター、又はT細胞レセプター分子(例えばCD2又はCD3)等の白血球上のトリガー分子に結合するアームと結合しうる。二重特異性抗体は完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
【0084】
二重特異性抗体を作成する方法は当該分野において既知である。完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づき、ここで二つの鎖は異なる特異性を持っている(Millstein等, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が無作為に取り揃えられているため、これらのハイブリドーマ(四部雑種)は10個の異なる抗体分子の可能性ある混合物を産生し、そのうちただ一つが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティークロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩わしく、生成物収率は低い。同様の方法が国際公開第93/08829号及びTraunecker等、EMBO J. 10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0085】
異なったアプローチ法では、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗原-抗体結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合させる。該融合は好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2及びC3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインである。軽鎖の結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、融合の少なくとも一つに存在させることが望ましい。これにより、組立に使用される三つのポリペプチド鎖の等しくない比率が所望の二重特異性抗体の最適な収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の割合の調節に大きな融通性が与えられる。しかし、少なくとも二つのポリペプチド鎖の等しい比率での発現が高収率をもたらすとき、又はその比率が所望の鎖の結合にあまり影響がないときは、2又は3個全てのポリペプチド鎖のためのコード化配列を一つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0086】
この手法の好ましい実施態様では、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を有する一方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖と他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生する更なる詳細については、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照されたい。
【0087】
米国特許第5731168号に記載された他の手法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にすることができる。好適な界面はC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモダイマーのような不要の他の最終産物に対してヘテロダイマーの収量を増大させるメカニズムが提供される。
【0088】
二重特異性抗体は、架橋した又は「ヘテロコンジュゲート」抗体もまた含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンに結合され、他方はビオチンに結合され得る。そのような抗体は、例えば、不要の細胞に対する免疫系細胞をターゲティングするため(米国特許第4676980号)、及びHIV感染の治療のために提案された(国際公開第91/00360号、同92/200373号、及び欧州特許第03089号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、あらゆる簡便な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は当該分野において良く知られており、幾つかの架橋技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
【0089】
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennan等, Science, 229:81 (1985) は無傷の抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')2断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤、亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に変換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再変換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。作られた二重特異性抗体は酵素の選択的固定化用の薬剤として使用することができる。
【0090】
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生成されている。Kostelny等, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモダイマーをヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成する。この方法はまた抗体ホモダイマーの生成に対して使用することができる。Hollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供した。断片は、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには十分に短いリンカーにより(V)に(V)を結合してなる。従って、一つの断片の(V)及び(V)ドメインは他の断片の相補的(V)及び(V)ドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruber等, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt等 J.Immunol. 147:60(1991)。
【0091】
(viii)多価抗体
幾つかの実施態様では、抗体は多価抗体である。多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも早くインターナリゼーション(及び/又は異化)されうる。本発明の抗体は、3又はそれ以上の結合部位を有する多価抗体(IgMクラス以外のもの)であり得(例えば四価抗体)、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に生成することができる。多価抗体は二量化ドメインと3又はそれ以上の抗原結合部位を有する。好ましい二量化ドメインはFc領域又はヒンジ領域を有する(又はそれらからなる)。このシナリオにおいて、抗体はFc領域と、Fc領域のアミノ末端に3又はそれ以上の抗原結合部位を有しているであろう。ここで、好ましい多価抗体は3ないし8、好ましくは4の抗原結合部位を有する(又はそれらからなる)。多価抗体は少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは2つのポリペプチド鎖)を有し、ポリペプチド鎖(類)は2又はそれ以上の可変ドメインを有する。例えば、ポリペプチド鎖(類)はVD1-(X1)-VD2-(X2)-Fcを有し、ここでVD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域のポリペプチド鎖の一つであり、X1及びX2はアミノ酸又はポリペプチドを表し、nは0又は1である。例えば、ポリペプチド鎖(類)は:VH-CH1-柔軟なリンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;又はVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を有し得る。ここで多価抗体は、好ましくは少なくとも2つ(好ましくは4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに有する。ここで多価抗体は、例えば約2〜約8の軽鎖可変ドメインポリペプチドを有する。ここで考察される軽鎖可変ドメインポリペプチドは軽鎖可変ドメインを有し、場合によってはCLドメインを更に有する。
(ix)他の抗体修飾
本発明の抗体をエフェクター機能について改変し、例えば抗体の抗原-依存細胞媒介細胞障害性(ADCC)及び/又は補体依存細胞障害性(CDC)を向上させることは望ましい。これは、抗体のFc領域で一又は複数のアミノ酸置換を誘導することによりなされうる。あるいは又はさらに、システイン残基をFc領域に導入し、それにより、この領域に鎖間ジスルフィド結合を形成するようにしてもよい。そのようにして生成された同種二量体抗体は、向上したインターナリゼーション能力及び/又は増加した補体媒介細胞殺傷及び抗体-依存細胞性細胞障害性(ADCC)を有する可能性がある。Caron等, J. Exp. Med. 176: 1191-1195 (1992)及びShopes, B. J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。また、向上した抗腫瘍活性を持つ同種二量体抗体は、Wolff等, Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されている異種二官能性架橋を用いて調製することができる。あるいは、抗体は、2つのFc領域を有するように加工して、それにより補体溶解及びADCC能力を向上させることもできる。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
【0092】
抗体に血清半減期を増大させるために、アミノ酸変異を抗体中に作ることが可能であり、米国特許公開第2006/0067930号に記載され、出典明記によりその全体を本明細書に援用する。
【0093】
(D)ポリペプチド変異体と修飾
ここに記載される抗体を含むポリペプチドのアミノ酸配列修飾は、低減された粘性を有するポリペプチド製剤、及び低減された粘性を有するポリペプチド製剤の製造方法において使用されうる。
【0094】
(ii)変異体ポリペプチド
「ポリペプチド変異体」とは、完全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチド欠如ポリペプチド配列、ポリペプチドの細胞外ドメイン(シグナルペプチド有無)と少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有するここに規定されるポリペプチド、好ましくは活性ポリペプチドを意味する。このようなポリペプチド変異体には、例えば、完全長天然アミノ酸配列のN-又はC-末端において一つ又は複数のアミノ酸残基が付加、もしくは欠失されたポリペプチドが含まれる。通常はTATポリペプチド変異体は、完全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチド欠如ポリペプチド配列、ポリペプチドの細胞外ドメイン(シグナルペプチド有無)に対して少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の何れかのおよそのアミノ酸配列同一性を有する。場合によっては、変異体ポリペプチドは天然ポリペプチド配列と比較してただ一つの保存アミノ酸置換を有し得、あるいは天然ポリペプチド配列と比較して2、3、4、5、6、7、8、9又は10以下の保存アミノ酸置換を有しうる。
【0095】
変異体ポリペプチドは完全長天然ポリペプチドと比較したとき、N末端又はC末端で切断、又は内部残基が欠損している。特定の変異体の残基は、所望の生物学的活性に不可欠でないアミノ酸残基が欠損してもよい。これらの転移、欠損、挿入がある変異体ポリペプチドは多くの従来技術で調製してもよい。所望の変異体ポリペプチドは化学的に合成されることができる。他の適切な技術は、所望のポリペプチドをエンコードする核酸断片をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離及び増幅するもの関係する。核酸断片の所望の末端を定義するオリゴヌクレオチドはPCR中に5’及び3’位をプライマーとして使用される。好ましくは、ここに開示される天然ポリペプチドと共に変異体ポリペプチドは少なくとも1つの生物学的及び/又は免疫学的な活性を共有する。
【0096】
アミノ酸配列挿入は、長さにして一残基から、百以上の残基を有するポリペプチドの範囲にわたるアミノ酸及び/又はカルボキシル末端融合、並びに一又は多数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を有する抗体又は細胞傷害性ポリペプチドに融合された抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を増加するポリペプチド又は酵素の、抗体のN又はC末端への融合を含む。
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが所望されうる。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、抗体核酸への適切なヌクレオチド変化を導入することによって、又はペプチド合成によって調製される。このような修飾は、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内残基からの欠失、及び/又はへの挿入、及び/又はの置換を含む。欠失、挿入、及び/又は置換の何れかの組み合わせが最終的な構造を得るためになされ、最終的な構造は所望の特性を所持する。アミノ酸変化はまた、ポリペプチド(例えば抗体)の転写後プロセスを変更し得、例えばグルコシル化の数又は位置を変化する。
【0097】
どのアミノ酸残基が、所望する活性に悪影響することなく挿入、置換、欠失されうるか決定することにおける手引きは、そのポリペプチドの配列と相同の既知ポリペプチド分子の配列とを比較することによって、また高相同性領域に作られるアミノ酸配列変化の数を最小にすることによって見い出されうる。
【0098】
突然変異のための好ましい位置にあるポリペプチドの特定の残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244:1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、 Arg、Asp、His、Lys、及びGlu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリペプチドアニリン)に置換され、抗原を有するアミノ酸の相互作用に影響を及ぼす。
【0099】
次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現された抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0100】
他の型の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基によって置換された抗体分子に少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。置換突然変異について最も対象となる部位は高度可変領域を含むが、FR変化も考慮される。保存的置換は、「好ましい置換」と題して以下の表に示す。これらの置換により生物学的活性に変化が生じる場合、表1に「例示的置換」と称した又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。

ポリペプチドの生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はヘリックス配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸はその側鎖の特性の類似性に基づいて群に分けることができる (in A. L. Lehninger, Biochemistry second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Me(M)
(2)電荷なし極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gl(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。
【0101】
あるいは、天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
【0102】
抗体の適切な配置の維持に関与しない任意のシステイン残基は、一般にセリンで置換し、分子の酸化的安定性を向上させて異常な架橋を防止する。逆に、抗体にシステイン結合を付加して、その安定性を向上させてもよい(特にここでの抗体は抗体断片、例としてFv断片である)。
【0103】
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む(例えばヒト化抗体)。一般的に、さらなる発展のために選択され、得られた変異体は、それらが作製された親抗体と比較して向上した生物学的特性を有している。そのような置換変異体を作製する簡便な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異である。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ置換を生成させる。このように生成された多価抗体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物としてディスプレイされる。ファージディスプレイ変異体は、ついで、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
【0104】
抗体のアミノ酸変異の他の型は、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。このような変更とは、抗体に見い出される一又は複数の糖鎖部分の欠失、及び/又は抗体に存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加等を含む。
【0105】
例えば、ポリペプチドはグリコシル化されうる。かかるグリコシル化は、宿主細胞又は宿主生物におけるポリペプチドの発現中に自然に生じ得、又は人間の介入から生じる故意の修飾でありうる。変更するとは、ポリペプチドに見られる一又は複数の糖質部分の欠失、及び/又はポリペプチドに存在しない一又は複数の糖鎖付加部位を加えることを意味する。
【0106】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの糖類のうち一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0107】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元の抗体の配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
【0108】
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的に、或いはグルコシル化の標的として提示されたアミノ酸残基をコードするコドンの変異的置換によってなすことができる。化学的脱グリコシル化技術は、この分野で知られており、当業者によって記載されている。炭水化物部分の酵素的切断は、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを用いることにより達成される。
【0109】
他の修飾は、グルタミニル及びアスパラギニル残基の各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基への脱アミノ化、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル又はトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
【0110】
(ii)キメラポリペプチド
ここに記載されるポリペプチドはキメラ分子を形成するように修飾され得、別の異種ポリペプチド又はアミノ酸並列へ融合されたポリペプチドを含んでなる。幾つかの実施態様では、キメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチドとポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは、一般的にはポリペプチドのアミノ又はカルボキシル末端に位置する。このようなポリペプチドのエピトープタグ形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープタグの提供は、抗タグ抗体又はエピトープタグに結合する他の型の親和性マトリクスを用いたアフィニティ精製によってポリペプチドを容易に精製できるようにする。
【0111】
それに代わる実施態様では、キメラ分子は免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定領域との融合体を含んでもよい。キメラ分子の二価形態(「イムノアドヘシン」とも呼ばれる)については、そのような融合体はIgG分子のFc領域であり得る。
【0112】
ここで用いられる「イムノアドヘシン」なる用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインとを結合した抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、所望の結合特異性を持ち、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち「異種の」)アミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシン分子のアドへシン部分は、典型的には少なくともレセプター又はリガンドの結合部位を含む隣接アミノ酸配列である。イムノアドヘシンの免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG-1、IgG-2、IgG-3又はIgG-4サブタイプ、IgA(IgA-1及びIgA-2を含む)、IgE、IgD又はIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0113】
Ig融合体は、好ましくはIg分子内の少なくとも一つの可変領域に換えてポリペプチドの可溶化(膜貫通ドメイン欠失又は不活性化)形態を含む。特に好ましい実施態様では、免疫グロブリン融合体は、IgG1分子のヒンジ、CH及びCH、又はヒンジ、CH、CH及びCH領域を含む。
【0114】
(iii)ポリペプチドコンジュゲート
低減された粘性を有するポリペプチド製剤、及び低減された粘性を有するポリペプチド製剤の製造方法での使用のためのポリペプチドは、細胞障害剤、例えば化学療法剤、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、菌類、植物又は動物の起源の酵素活性毒素又はそれらの断片)、又は放射性同位元素(即ち、放射性コンジュゲート)とコンジュゲートされうる。
【0115】
このようなコンジュゲートの生成に有用な化学治療薬が使用できる。更に、用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria oficinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。ポリペプチド及び細胞障害性薬剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作製できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238:1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドのポリペプチドへの抱合のためのキレート剤の例である。
【0116】
ポリペプチドのコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
【0117】
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された。合成メイタンシノール及びその誘導体及びアナログ類が考えられている。ポリペプチドメイタンシノイドコンジュゲートを作るのに、当業者に知られた多くの連結基がある。例えば、米国特許第5208020号に開示されている。連結基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。
【0118】
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施態様において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
【0119】
対象の他のコンジュゲートには、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合したポリペプチドが含まれる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ、α、.α、N-アセチル-γ、PSAG及びθが含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
【0120】
本発明のポリペプチドと結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシンが含まれる。
【0121】
本発明は、ポリペプチドと核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成されるポリペプチドコンジュゲートをさらに考察する。
【0122】
他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)にポリペプチドをコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを患者に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から未結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0123】
また、本発明の抗体は、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤)を活性な抗癌剤へ変換するプロドラッグ活性化酵素へポリペプチドをコンジュゲートする。免疫コンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に変換するようにプロドラッグへ作用し得る任意の酵素が含まれる。
【0124】
限定するものではないが、この発明の方法に有用な酵素には、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグの変換に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に変換するのに有用なノイラミニダーゼ及びβガラクトシダーゼ;βラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に変換させるのに有用なβラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に変換するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた公知の酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを変換させるために使用することもできる
【0125】
(iv)他
本明細書において抗体の他の修飾が意図される。例えば、抗体は、様々な非タンパク質性ポリマーの一つ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのコポリマーに連結されうる。また、抗体は、例えば、コアセルベーション技術によって又は界面重合法(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタキレート)マイクロカプセル)によって調製されるマイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)に、又はマイクロエマルションに内包されうる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Oslo, A., Ed., (1980)に開示される。
【0126】
(D)製剤及び方法における使用のためのポリペチド入手
ここに記載される製剤及び方法において使用されるポリペプチドは、当技術分野で周知である方法を使用して得られること可能であり、組換え方法を含む。以下のセクションはこれらの方法に関する手引きを提供する。
【0127】
(i)ポリヌクレオチド
ここで交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、DNA及びRNAを含む。
ポリペチドをコード化しているポリヌクレオチドは、限定するものではないが、ポリペチドmRNAを有している及び検出可能なレベルでそれを発現すると考えられている組織から調製されたcDNAライブラリを含む何れかの供給源から得られうる。従って、ポリペチドをコード化しているポリヌクレオチドは、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリから便利に得られることができる。また、ポリペチドをコードする遺伝子は、ゲノムライブラリから、又は公知の合成手順(例えば自動核酸合成)によって得られうる。
例えば、ポリヌクレオチドは、L鎖又はH鎖等の全免疫グロブリン分子鎖をコードしうる。完全なH鎖は、重鎖可変領域(VH)だけでなく、典型的には3つの定常領域:CH1、CH2及びCH3;及び「ヒンジ」領域を有するH鎖定常領域(CH)も含む。幾つかの状況では、定常領域の存在が所望される。
【0128】
ポリヌクレオチドによってコード化されうる他のポリペチドには、単一ドメイン抗体(dAbs)、Fv、scFv、Fab’、及びF(ab’)及び「ミニボディ」等の抗原結合抗体断片を含む。ミニボディは、CH1及びCK又はCLドメインが取り除かれている(典型的には)二価抗体断片である。ミニボディは一般的な抗体より小さいため、臨床/診断での使用においてより良い組織透過性を成し得、二価であるため、dAbs等の一価抗体断片より高い結合親和性を保持する。従って、他に明記されない限り、用語「抗体」は、ここで使用される場合、全体抗体分子だけでなく、上で検討されたタイプの抗原結合断片も包含する。好ましくは、コード化されたポリペチドに存在する各フレームワーク領域は、対応するヒトアクセプターフレームワークと比較して、少なくとも一つのアミノ酸置換を有する。このように、例えば、フレームワーク領域は、アクセプターフレームワークと比較して全体で、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のアミノ酸置換を有しうる。
【0129】
適宜に、ここに記載されるポリヌクレオチドは単離又は精製されうる。幾つかの実施態様では、ポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。
用語「単離されたポリヌクレオチド」は、分子がその正常又は天然の環境から取り除かれた又は分離された、又は正常又は天然の環境に存在しないように製造されていることを表すことを意図する。幾つかの実施態様では、ポリヌクレオチドは、精製されたポリヌクレオチドである。用語精製は、少なくとも幾つかのコンタミ分子又は物質が取り除かれていることを表すことを意図する。
【0130】
適宜に、関連ポリヌクレオチドが、組成物に存在するドミナントな(すなわち、最も豊富な)ポリヌクレオチドを構成するようにポリヌクレオチドは実質的に精製される。
H鎖可変ドメイン及び/又はL鎖可変ドメインをコードする挿入を含んでなる組換え核酸が、ここに記載される方法において使用されうる。定義により、このような核酸は、コーディング一本鎖核酸、前記コーディング核酸及びそれらの相補的核酸から成る二本鎖核酸、又はこれらの相補的(一本鎖)核酸自体を含む。
【0131】
修飾が、抗体のH鎖可変ドメイン及び/又はL鎖可変ドメインの外部に成されることも可能である。このような変異核酸はサイレントであり得、一又は複数の核酸が同一のアミノ酸をコードする新しいコドンを有する他の核酸と置換される。このような変異配列は、退化配列(degenerate sequence)であり得る。退化配列は、遺伝コードの意味の中において退化され、ここでは、無制限の数のアミノ酸が、元々コード化されたアミノ酸配列の変化を生じることなく他の核酸に置換される。このような退化配列は、特定の宿主、特に酵母、細菌、哺乳類動物に好ましい特定のコドンの頻度及び/又はそれらの異なる制限部位のため有用であり得、H鎖可変ドメイン及び/又はL鎖可変ドメインの最適な発現を得ることができる。
【0132】
ここに記載される特定の特性を有するポリペプチド又はかかるポリペプチドをコードする何れかのヌクレオチド配列のアミノ酸配列とある程度の配列同一性又は配列相同性を有する配列は、以下「相同配列」と称する。ここでは、用語「相同体」とは、被験体アミノ酸配列及び被験体ヌクレオチド配列と特定の相同性を有する実体を意味する。ここでは、用語「相同性」は、「同一」と同等とみなすことができる。
【0133】
幾つかの実施態様では、相同アミノ酸配列及び/又はヌクレオチド配列は、抗体の機能的活性を保持する及び/又は活性を強化するポリペチドをコードする。幾つかの実施態様では、相同配列は、被験体の配列に対して少なくとも75、85又は90%同一、好ましくは少なくとも95又は98%同一でありうるアミノ酸配列を含むように成される。典型的には、相同配列は、被験体のアミノ酸配列と同一の活性部位を有するだろう。しかしながら相同性は、類似性(すなわち類似の化学的特性/機能を持つアミノ酸残基)に関して考慮されることも可能である。幾つかの実施態様では、配列同一性に関して相同性を示すことが好ましい。
【0134】
本発明に関することにおいて、相同配列は、ここに記載されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(被験体配列)と、少なくとも75、85又は90%同一、好ましくは少なくとも95又は98%同一でありうるヌクレオチド配列を含むよう選ばれる。典型的には相同体は、被験体配列と同じ、活性部位等のコードを含む。しかしながら相同性は、類似性(すなわち類似の化学的特性/機能を持つアミノ酸残基)に関して考慮されることも可能である。幾つかの実施態様では、配列同一性に関して相同性を示すことが好ましい。
【0135】
これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又はオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位特異的)突然変異による調製、PCR突然変異誘発、及び前もって調製された変異体又は抗体の非変異バージョンのカセット変異導入法を含むが、これらに限定されない。
【0136】
(ii)ポリヌクレオチドの発現
以下の説明は、主として、ポリペプチドコード化核酸を含むベクターで形質転換又は形質移入された細胞を培養することによりポリペプチドを産生させる方法に関する。勿論、当該分野においてよく知られている他の方法を用いてポリペプチドを調製することができると考えられている。例えば、適切なアミノ酸配列、又はその一部分を、固相技術を用いた直接ペプチド合成によって生成してもよい[例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., サン フランシスコ, カリフォルニア(1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)参照]。手動技術又は自動を使用することによってインビトロタンパク質合成を行ってもよい。自動合成は、例えば、アプライド・バイオシステムズ・ペプチド合成機(フォスター シティー, カリフォルニア)を用いて、製造者の指示によって実施してもよい。ポリペプチドの種々の部分を別々に化学的に合成し、化学的又は酵素的方法を用いて結合させて所望するポリペプチドを生成させてもよい。
【0137】
ここに記載されるポリヌクレオチドは、ポリペプチドの製造のために発現ベクターに挿入される。「コントロール配列」という用語は、特定の宿主生物において作用可能に結合したコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。コントロール配列は、限定しないが、プロモーター(例えば、天然に付随するか異種性のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント、及び転写終結配列を含む。
【0138】
ポリヌクレオチドは、それが別のポリヌクレオチド配列と機能的関係に配置される時に「機能的に結合」される。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーの核酸は、ポリペプチドの分泌に参画するプレタンパク質として発現されているなら、ポリペプチドの核酸に作用可能に結合している;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列に作用可能に結合している;又はリボソーム結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるなら、コード配列と作用可能に結合している。一般的に、「作用可能に結合している」とは、結合している核酸配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接していて読みフェーズにあることを意味する。しかし、エンハンサーは必ずしも近接している必要はない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、一般的な手法に従って、合成オリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
【0139】
抗体は、軽鎖及び重鎖は同じ又は異なった発現ベクター中で複製することができる。免疫グロブリン鎖をエンコードする核酸セグメントは免疫グロブリンポリペプチドの発現を確証する発現ベクター内でコントロール配列と機能的に結合する。
【0140】
選択遺伝子成分−一般に、発現ベクターは、典型的には、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にするために選択可能マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性又はネオマイシン耐性)を含む(例えば、米国特許第4704362号を参照)。ある実施態様では、選択遺伝子は、(a)例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、又はテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0141】
選択スキームの一例では、宿主細胞の増殖を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換される細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0142】
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体をコードする核酸の捕捉にコンピテントな細胞の同定を可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びIII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
【0143】
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換体の全てを培養することで最初に同定される。野生型DHFRが用いられる場合に適切な宿主細胞はDHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えばATCC CRL-9096)である。あるいは、ここに記載の抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーと共に形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーに対する選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。米国特許第4965199号を参照のこと。
【0144】
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb等, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44076号あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で増殖する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、ついでトリプトファンの不存在下における増殖による形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC20622あるいは38626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって補完される。
【0145】
また、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる。あるいは、組換え仔ウシキモシンの大規模生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株による組換え体成熟ヒト血清アルブミンの分泌のための安定した複数コピー発現ベクターもまた開示されている。Fleer 等, Bio/Technology,9:968-975 (1991)。
【0146】
シグナル配列成分−ポリペプチドは、組換え的に直接ばかりでなく、好ましくはシグナル配列又は成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種ポリペプチドとの融合体ポリペプチドとしても生産することができる。好ましく選択される異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識され、プロセシングされる(つまり、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、1pp、又は熱安定エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列と置換できる。酵母の分泌では、天然シグナル配列を、例えば、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(サッカロミセス(Saccharomyces)及びクルベロマイセス(Kluyveromyces)α因子イーダー)、又は酸ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C. albicans)グルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載のシグナルによって置換されうる。哺乳動物細胞発現では、哺乳動物シグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。
【0147】
このような前駆体領域の核酸配列は、リーディングフレームにおいてここに記載されるポリペプチドをコードする核酸配列に連結される。
【0148】
複製起点−発現ベクターとクローニングベクターは共にベクターが一又は複数の選択された宿主細胞で複製するようにする核酸配列を含んでいる。一般に、クローニングベクターでは、この配列は、ベクターを宿主染色体DNAとは独立に複製させるものであり、複製起点又は自己複製配列を含む。そのような配列は様々な細菌、酵母、及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322からの複製起点は殆どのグラム陰性細菌に適しており、2μプラスミド起点は酵母に対して適しており、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)が哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は哺乳動物発現ベクターには必要ではない(SV40起点はただそれが初期プロモーターを含んでいるので典型的に使用されうる)。
【0149】
プロモーター成分−発現及びクローニングベクターは宿主生物によって認識されヒト化AP33抗体のようなここに記載の抗体をコードする核酸に作用可能に結合しているプロモーターを通常含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターは、phoAプロモーター、βラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターを含む。しかし、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するプロモータもまた抗HCV抗体をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列を含むであろう。
【0150】
適切には、発現制御配列は、真核生物宿主細胞(例えば、COS細胞-例えばCOS7細胞-又はCHO細胞)を形質転換し又は形質移入することができるベクター中の真核生物プロモーター系である。ベクターが適切な宿主中にひとたび導入されたならば、宿主がヌクレオチド配列の高レベルの発現、及び交差反応抗体の収集と精製に適した条件下に維持される。
【0151】
真核生物に対してのプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25から30塩基上流に位置するATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70から80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルでありうるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクター中に適切に挿入される。
【0152】
酵母宿主との使用に適したプロモーター配列の例としては、3-ホスホグリセラートキナーゼ[Hitzeman 等, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980)]又は他の糖分解酵素[Hess 等, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968);Holland, Biochemistry, 17:4900(1978)]、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0153】
他の酵母プロモーターとしては、成長条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘発的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸フォスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に好適に用いられるベクターとプロモーターは欧州特許第73657号に更に記載されている。
【0154】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのポリペプチド転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り制御される。
【0155】
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製開始点をさらに含むSV40制限断片として、簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを使用する哺乳動物宿主においてDNAを発現する系は、米国特許第4419446号に開示されている。この系の修飾は米国特許第4601978号に記載されている。また、単純ヘルペスからのチミジンキナーゼプロモーターのコントロール下での、マウス細胞におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現については、Reyes等, Nature 297:598-601 (1982)を参照。また、プロモーターとして、ラウス肉腫ウイルスの長い末端リピートを使用することもできる。
【0156】
エンハンサーエレメント成分
より高等な真核生物によるこの発明の抗体をコードするDNAの転写は、しばしば、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100-270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のためのエレメントの増強については、Yaniv, Nature 297:17-18 (1982)を参照。エンハンサーは、抗体をコードする配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
【0157】
転写終結成分
また真核生物宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5'、時には3'の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。他の有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号及びここに開示の発現ベクターを参照。
【0158】
ポリヌクレオチド配列(例えば、可変重鎖及び/又は可変軽鎖コード化配列及び任意成分の発現制御配列)を含むベクターは、細胞宿主のタイプに応じて変わるよく知られた方法によって宿主細胞に移入されうる。例えば、塩化カルシウム形質移入が一般に原核生物宿主に対して利用され、リン酸カルシウム処理、電気穿孔法、リポフェクション、微粒子銃又はウイルスベースの形質移入が他の細胞宿主に対して使用されうる。一般にはSambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 2版, 1989)を参照。哺乳動物細胞を形質転換させるために使用される他の方法は、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔法、及びマイクロインジェクションの使用を含む(一般には、上掲のSambrook等を参照)。トランスジェニック動物の生産に対しては、導入遺伝子を受精した卵母細胞中に微量注入することができ、又は胚性幹細胞のゲノム中に導入することができ、かかる細胞の核を除核した卵母細胞中に移すことができる。
【0159】
重鎖及び軽鎖を別個の発現ベクターにクローニングしたとき、ベクターを同時形質移入して発現させ、インタクトな免疫グロブリンのアセンブリを得る。ひとたび発現されると、全抗体、個々の軽鎖及び重鎖、又は他の免疫グロブリン形態を、硫酸アンモニウム沈降、アフィニティカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動等(一般的にはScopes, Protein Purification (Springer- Verlag, N.Y., (1982)を参照)を含む当該分野の標準的な手順に従って精製することができる。少なくとも約90から95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98から99%又はそれ以上の均一性が、薬学的用途のため、最も好ましい。
【0160】
(iii)コンストラクト
典型的には、コンストラクトは、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの適切な宿主中における発現を可能にする発現ベクターである。コンストラクトは、例えば次のものの一又は複数を含みうる:宿主中で活性なプロモーター;一又は複数の調節配列、例えばエンハンサー;複製起点;及びマーカー、好ましくは選択可能マーカー。宿主は真核生物又は原核生物宿主でありうるが、真核生物(特に哺乳動物)宿主が好ましいであろう。適切なプロモーターの選択は明らかに使用される宿主細胞にある程度依存するが、ヒトウイルス、例えばHSV、SV40、RSV等からのプロモーターを含みうる。数多くのプロモーターが当業者に知られている。
【0161】
コンストラクトは、3つの軽鎖高頻度可変ループ又は3つの重鎖高頻度可変ループを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みうる。あるいは、ポリヌクレオチドは、3つの重鎖高頻度可変ループ及び適切な長さの適切に可動性のリンカーによって結合させられた3つの軽鎖高頻度可変ループを含むポリペプチドをコードしうる。他の可能性は、単一のコンストラクトが軽鎖ループを含むものと重鎖ループを含むものの2つの別個のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みうることである。別個のポリペプチドは独立に発現され得るか又は単一の共通のオペロンの一部を形成しうる。
【0162】
コンストラクトは、一又は複数の調節特性、例えばエンハンサー、複製起点、及び一又は複数のマーカー(選択可能又は否)を含みうる。コンストラクトは、プラスミド、酵母人工染色体、酵母ミニ染色体の形態を取り得、又はウイルス、特に弱毒ウイルス又はヒトに対して非病原性の類似物のゲノムの全て又は一部に組み込まれうる。
【0163】
コンストラクトは、哺乳動物、好ましくはヒトの患者に安全に投与するために簡便に製剤化されうる。典型的には、それらは複数のアリコートで提供され、各アリコートは少なくとも一の正常な成人ヒト患者の効果的な免疫化のために十分なコンストラクトを含む。
【0164】
コンストラクトは液体又は固形形態で提供され得、好ましくは、使用前に滅菌された水が典型的には再水和させられる凍結乾燥粉末として提供される。
【0165】
コンストラクトは、コンストラクトの投与に応じて(例えば特異的抗体力価によって測定して)患者の免疫応答を増大させる効果を有するアジュバント又は他の成分と共に製剤化されうる。
【0166】
(iv)ベクター
「ベクター」なる用語は発現ベクター及び形質転換ベクター及びシャトルベクターを含む。
【0167】
「発現ベクター」なる用語はインビボ又はインビトロ発現可能なコンストラクトを意味する。
【0168】
「形質転換ベクター」なる用語は、該種のものであり得、又は異なった種のものでありうる一実体から他の実体に移され得るコンストラクトを意味する。コンストラクトがある種から他の種へ移され得る場合、例えば大腸菌プラスミドから細菌、例えばバシラス属に移される場合、形質転換ベクターはしばしば「シャトルベクター」と呼ばれる。それは大腸菌プラスミドから植物のアグロバクテリウムへ移すことができるコンストラクトでさえありうる。
【0169】
ベクターは、本発明で包含されるポリペプチドの発現をもたらすために以下の記載の適切な宿主細胞中に形質転換されうる。様々なベクターが公的に入手可能である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子、又はファージの形態とすることができる。適切な核酸配列が、種々の手法によってベクターに挿入される。一般に、DNAはこの分野で知られている技術を用いて適当な制限エンドヌクレアーゼ部位中に挿入される。ベクター成分としては、一般に、これらに制限されるものではないが、一又は複数のシグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列を含む。これらの成分の一又は複数を含む適当なベクターの構築には、当業者に知られた標準的なライゲーション技術を用いる。
【0170】
これらの発現ベクターは、エピソームとして又は宿主染色体DNAの構成部分として、宿主生物において典型的に複製可能である。
【0171】
(v)宿主細胞
宿主細胞は、例えば細菌、酵母又は他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞でありうる。
本発明は、本発明によるポリペプチドを生産するように遺伝子的に操作されたトランスジェニック多細胞宿主生物をまた提供する。生物は例えばトランスジェニック哺乳類生物(例えばトランスジェニックヤギ又はマウス株)でありうる。
適切な原核生物は、限定するものではないが、真正細菌、グラム陰性又はグラム陽性生物等、例えば大腸菌等の腸内細菌科を含む。様々な大腸菌株が公的に入手可能であり、例えば大腸菌K12株MM294(ATCC 31,446);大腸菌X1776(ATCC 31,537);大腸菌株W3110(ATCC 27,325)及びK5 772(ATCC 53,635)である。他の適切な原核生物宿主細胞は、腸内細菌科、例えばエシェリヒア属、例えば大腸菌、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えば霊菌、及び赤痢菌、並びにバシラス綱、例えばB. subtilis及びB. licheniformis(例えばB. licheniformis 41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌、及びストレプトマイセス属を含む。
これらの例は例示的なものであり制限するものではない。組換えポリヌクレオチド生産発酵のための一般的な宿主株であるため、株W3110が一つの特に好ましい宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、W3110株は宿主に対して内在性であるポリペプチドをコードする遺伝子に遺伝的変異をもたらすよう修飾され得、このような宿主の例は、完全な遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全な遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT kan'を有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244)、完全な遺伝子型tonA ptr3 phoA E15 (argF-lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan'を有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失変異を有する株37D6である大腸菌W3110株40B4;及び変異周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株である。あるいは、例えばPCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応等のクローニングのインビボでの方法が適切である。
【0172】
これらの原核生物細胞において発現ベクターを作ることが可能であり、典型的には宿主細胞と適合性である発現制御配列(例えば複製起点)を有する。更に、任意の数の様々なよく知られたプロモーターが存在し得、例えばラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、βラクタマーゼプロモーター、又はファージλからのプロモーター系ある。典型的には、プロモーターは、場合によってはオペレーター配列と共に発現を制御し、転写及び翻訳を開始させ完了させるためのリボソーム結合部位配列等を有する。
真核微生物が発現のために使用されうる。糸状菌又は酵母等の真核微生物が、ポリペプチドコードベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロマイセス・セレビシエは、一般的に用いられる下等真核生物宿主微生物である。他は、シゾサッカロミセス・ポンベ;クリベロミセス属宿主、例えばK.ラクチス(MW98-8C、CBS683、CBS4574)、K.フラジリス(ATCC 12,424)、K.ブルガリクス(ATCC 16,045)、K.ウィッケラミイ(ATCC 24,178)、K.ワルチイ(ATCC 56,500)、K.ドロソフィラルム(ATCC 36,906)、K.サーモトレランス及びK.マルキアヌス;ヤロウウィア(yarrowia)(EP 402,226);ピチア・パストリス(Pichia pastors);カンジダ;トリコデルマ・レエシア(Trichoderma reesia);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);シュワニオミセス(Schwanniomyces)(例えばシュワニオミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis));及び、例えばニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)、及びアスペルギルス宿主(例えばA. ニデュランス及びA. ニガー)を含む。
メチロトローフ酵母が本願明細書において適切であり、限定するものではないが、ハンゼヌラ属、カンジダ属、クロエケラ属、ピチア属、サッカロマイセス属、トルロプシス属、及びロドトルラ属からなる属から選択されたメタノール上での成長が可能である酵母を含む。サッカロマイセス属が好ましい酵母宿主であり、発現制御配列(例えばプロモータ)、複製起点、終止配列等を所望に応じて有する適切なベクターを含む。典型的なプロモーターは、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及び他の解糖酵素を含む。誘導性酵母プロモーターは、とりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソチトクロムC、及びマルトース及びガラクトース利用の原因の酵素を含む。
【0173】
微生物に加えて、哺乳動物組織細胞培養をまた用いて、ここに記載のポリペプチドを発現し、生産することができ、ある場合には好ましい(Winnacker, From Genes to Clones, VCH Publishers, N.Y., N.Y. (1987)を参照)。ある実施態様に対しては、真核生物細胞(例えばCOS7細胞)が好ましいが、これは異種タンパク質(例えばインタクトな免疫グロブリン)を分泌可能な多くの適切な宿主細胞株が当該分野で開発されているためであり、CHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、好ましくはミエローマ細胞株、又は形質転換されたB細胞又はハイブリドーマを含む。
【0174】
幾つかの実施態様では、宿主細胞は脊椎動物宿主細胞である。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293細胞又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO又はCHO-DP-12株);マウスセルトリ細胞;サル腎細胞 (CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞;MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
【0175】
あるいは、ポリペプチドコード配列を導入遺伝子中に取り込み、トランスジェニック動物のゲノム内に導入し、続いてトランスジェニック動物の乳中で発現させることができる。適切な導入遺伝子は、カゼイン又はβラクトグロブリンのような乳腺特異的遺伝子由来のエンハンサー及びプロモーターに作用可能に連結した軽鎖及び/又は重鎖のコード配列を含む。
【0176】
あるいは、ここに記載の抗体はトランスジェニック植物(例えばタバコ、トウモロコシ、ダイズ及びアルファルファ)において生産することができる。改善された「植物抗体」ベクター(Hendy等(1999) J. Immunol. Methods 231:137-146)及び形質転換性作物種の増加と組み合わさった精製方策が、かかる方法を、ヒト及び動物の治療法のためばかりでなく、工業的用途(例えば触媒抗体)のために組換え体免疫グロブリンを生産する実際的で効果的な手段にした。更に、植物生産抗体は安全で効果的であることが示され、動物誘導材料の使用を回避する。更に、植物及び哺乳動物細胞生産抗体のグリコシル化パターンの差は抗原結合又は特異性に殆ど又は全く影響を持たない。また、毒性又はHAMAは、植物由来の分泌性二量体IgA抗体の局所経口投与を受ける患者には観察されなかった(Larrick等 (1998) Res. Immunol. 149:603-608を参照)。
【0177】
宿主細胞は、ここに記載される発現又はクローニングで形質移入又は形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に変性された常套的栄養培地で培養される。培養条件、例えば培地、温度、pH等々は、過度の実験をすることなく当業者が選ぶことができる。一般に、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M.Butler編 (IRL Press, 1991)及び上掲のSambrook等に見出すことができる。
【0178】
真核生物細胞形質移入及び原核生物細胞形質転換の方法、例えば、CaCl、CaPO、リポソーム媒介及びエレクトロポレーションは当業者に知られている。用いられる宿主細胞に応じて、その細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションが、一般的に原核生物に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shaw等, Gene, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開の国際公開89/05859に記載されているように、或る種の植物細胞の形質転換に用いられる。このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Graham及びvan der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈降法が用いられる。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な態様は米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母菌中への形質転換は、典型的には、Van Solingen等, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiao等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansour等, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
【0179】
細菌、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない時、例えば治療用の抗体が細胞傷害剤(例えば、毒素)と結合し、その免疫コンジュゲートそのものが腫瘍細胞の破壊において有効性を示す場合等に、抗体等のポリペプチドは細菌で産生させることができる。完全長抗体は、血液循環でより長い半減期を有する。大腸菌での産生が、より迅速でより費用効率的である。細菌でのポリペプチドの発現については、発現及び分泌を最適化するシグナル配列及び翻訳開始部位(TIR)を記載している米国特許第5840523号(Simmons等)を参照のこと。これらの特許は出典明記によりその全体を本明細書中に援用する。発現の後、抗体は、大腸菌細胞ペーストから可溶性分画へ分離し、例えば、アイソタイプによってプロテインA又はGカラムを介して精製することができる。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現させた抗体を精製するための工程と同じようにして行うことができる。
ここに記載されるグリコシル化ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物由来である。非脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞を含む。多くのバキュロウイルス株及び変異体、及びヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(幼虫(caterpillar))、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコ(カイコガ)等の宿主からの対応する許容性昆虫宿主細胞が同定されている。種々のトランスフェクション用のウィルス株、例えばオートグラファ・カルフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異株、カイコNPVのBm-5株が公に入手でき、このようなウィルスは、本発明に係るウィルスとして、特に、ヨトウガ細胞のトランスフェクションのために使用してもよい。
【0180】
本発明のポリペチドを製造するために使用される宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。商業的に入手可能な培地、例えばハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM)、シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM)、シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン、及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商品名)薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0181】
(vi)ポリペプチドの精製
組換え技術を使用する時、ポリペチドは、細胞内部で、細胞膜周辺腔において生産されるか、又は培地に直接分泌されることができる。
ポリペチドは、培地から又は宿主細胞可溶化液から回収されうる。膜結合の場合は、適切な洗浄液(例えばトリトン-X100)又は酵素的切断により膜から解かれてもよい。ポリペチドの発現に使用された細胞は、例えば凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤といった種々の物理的又は化学的手段によって破壊することができる。
組換え細胞ポリペプチドからポリペプチドを精製することが望ましい。適切な精製手順の例である次の手順により精製される:イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ又はカチオン交換樹脂、例えばDEAEによるクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;IgG等のコンタミを除くプロテインAセファロースカラム;及びポリペプチドのエピトープタグ型を結合する金属キレート化。種々のポリペプチド精製方法を用いることができ、そのような方法はこの分野で知られている。
【0182】
ポリペプチドが細胞内に生成される場合、第一工程として、粒状屑、宿主細胞又は溶菌断片を、例えば遠心分離又は超遠心分離にかけて取り除く。Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992)は、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順について記載している。簡単に述べると、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)の存在下で、30分以上かけて解凍する。細胞屑は遠心分離により除去することができる。抗体が培地へ分泌されている場合、そのような発現系からの上清は、一般的には、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pelliconの限外濾過ユニットを用いて最初に濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0183】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティークロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は抗体に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. Immunol. Meth. 62: 1-13 [1983])。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 15671575 [1986])。アフィニティリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC<SUB>H</SUB>3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム)上でのヘパリンSEPHAROSE(商品名)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などの他のタンパク質精製技術も、回収される抗体に応じて利用可能である。
任意の予備精製工程に続いて、対象とする抗体と汚染物とを含む混合物に、約2.5−4.5のpHでの溶離バッファーを用いて、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーを施してもよく、好ましくは低い塩濃度(例えば、約0−0.25M塩)で実施される。
【0184】
V.製剤の使用方法
ここに提供される製剤は、必要としている被験体にここに記載されるポリペプチド製剤を与える方法において、必要としている被験体に製剤を投与することを含んでなる方法において使用されうる。
また、必要としている被験体にここに記載される製剤を投与することを含んでなる、疾患又は障害の進行を治療、寛解、及び/又は遅延させる方法がここに提供される。
幾つかの実施態様では、疾患又は障害は癌である。幾つかの実施態様では、疾患又は障害は、炎症性疾患である。幾つかの実施態様では、疾患又は障害は、「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」である。幾つかの実施態様では、疾患又は障害は腫瘍である。幾つかの実施態様では、疾患又は障害は癌であり、ポリペチドは抗体である。
幾つかの実施態様では、ポリペチドは有効量で投与される。幾つかの実施態様では、ポリペチドは、増殖阻害性量で投与される。幾つかの実施態様では、ポリペチドは細胞傷害量で投与される。
【0185】
ここで使用される場合、「治療する」、「治療」又は「治療する」は、臨床結果を含む有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。この発明の目的では、有益な又は所望の結果は、限定するものではないが、次のものの一又は複数を含む:疾患から生じる一又は複数の症状を減少させ、疾患の程度を減少させ、疾患を安定化させ(例えば、疾患の悪化を防止又は遅延させ)、疾患の進行を遅延又は緩慢にさせ、疾患状態を寛解させ、疾患を治療するために必要とされる一又は複数の他の医薬の用量を減少させ、及び/又は生活の質を増大させる。
ここで使用される場合、進行を「遅延させる」とは、疾患の発達を延期させ、妨げ、ゆっくりにし、遅らせ、安定化させ、及び/又は延ばすことを意味する。この遅延は、疾患の病歴及び/又は治療されている個体に応じて、様々な長さの時間でありうる。
幾つかの実施態様では、ここに記載される治療の方法は、疾患の一又は複数の症状を寛解する(例えば発生を低減する、期間を低減する、重症度を低減又は和らげる)。
【0186】
ここでは「被験体」は哺乳類動物である。幾つかの実施態様では、哺乳類動物はヒトである。
「症状」とは、被験者によって経験され、MSを示している構造、機能、又は感覚における任意の病的現象又は正常からの逸脱である。
用語「有効量」は、被験体において、疾患又は傷害の進行を治療、寛解、及び/又は遅延するためのポリペチドの量に関する。癌の場合、薬剤の治療的有効量は、癌細胞の数を減らす;腫瘍サイズを低減する;末梢器官への癌細胞の浸潤を阻害する(すなわちある程度遅くし好ましくは止める);腫瘍転移を阻害する(すなわちある程度遅くし好ましくは止める);腫瘍増殖をある程度阻害する;及び/又は癌に関連する一又は複数の症状を幾らか軽減する。薬剤が、存在する癌細胞の増殖を妨げる及び/又は殺し得る範囲では、それは細胞増殖抑制性及び/又は細胞傷害性でありうる。
ポリペチドの「増殖阻害量」は、インビトロ又はインビトロの何れかにおいて、細胞、特には腫瘍、例えば癌細胞の増殖を阻害することができる量である。新生物細胞増殖を阻害する目的のためのポリペチドの「増殖阻害量」は、経験的に及び通常の方法で決定されうる。
【0187】
ポリペチドの「細胞傷害量」は、インビトロ又はインビトロの何れかにおいて、細胞、特には腫瘍、例えば癌細胞の破壊を引き起こすことができる量である。新生物細胞増殖を阻害する目的のためのポリペチドの「細胞傷害量」は、経験的に及び通常の方法で決定されうる。
用語「癌」及び「癌性」とは、調節されない細胞増殖により代表的に特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態をいうか、又は記載する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又はリンパ悪性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、肺の腺癌及び肺の鱗状癌腫が挙げられる)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、頚部癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮の癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌又は腎性癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝性癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、脳、並びに頭頸部癌、及び関連する転移を含む。
用語「細胞増殖性疾患」及び「増殖性疾患」は、ある程度の異常細胞増殖に伴う疾患を意味する。
【0188】
「腫瘍」はここで使用される場合、全ての新生物性細胞増殖を意味し、悪性又は良性、及び全ての全癌及び癌性細胞及び組織でありうる。
ポリペプチド製剤は、静脈内投与、例えばボーラス又は一定期間の継続的注入、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、口腔内、局所的、又は吸入経路などの既知の方法に従ってヒト患者に対して投与されうる。幾つかの実施態様では、ポリペプチド製剤は皮下注入によって投与される。
疾患の進行の治療、寛解、及び/又は遅延に対して、投薬量及び投与の様式は、公知の基準に従い、医師により選択されるであろう。ポリペプチドの適切な用量は、上記で規定したような治療される疾患の種類、疾患の重症度及び過程、ポリペプチド製剤が治療前に投与されるか否か、患者の臨床歴及びポリペプチド製剤の応答性、及び手当てをする医師の裁量に依存するであろう。ポリペプチド製剤は一度に又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一又は複数の別個の投与又は連続注入のいずれであれ、体重当たり約1μg/kgないし50mg/kg(例えば0.1-15mg/kg/用量)の抗体が患者への最初の投与量の候補である。上述した要因に応じて、典型的な一日の投与量は約1μg/kgから100mg/kgあるいはそれ以上の範囲である。数日間又はそれ以上の繰り返し投与の場合、状態によっては、疾患の徴候の望ましい抑制が生じるまで処置を維持する。この治療の進行状態は、医師又は他の当業者に公知の基準をベースにした通常の方法やアッセイで容易にモニターされる。
【0189】
他の治療計画をポリペプチド製剤の投与と組合せてもよい。ポリペプチド製剤は、単独で、又は例えばホルモン、免疫抑制剤、血管新生抑制、又は放射標識化合物との、又は手術、寒冷療法及び/又は放射線療法との組合せ療法で使用されることができる。ポリペチド製剤は、他の形態の通常療法と組み合わせて投与されることが可能であり、継続的か、通常療法の前又は後に投与される。
一又は複数の更なる治療薬剤「と併用した」投与は、同時(同時的)、何れかの順番での、及び経時的に何れかの順番での連続的投与を含む。
併用投与は、別個の製剤又は単一の薬学的製剤を使用する同時投与、何れかの順番での、及び経時的に何れかの順番での連続的投与を含み、好ましくは、両方の(又は全ての)活性剤が同時にその生物学的活性を作用させる期間がある。好ましくは、このような併用治療は、相乗的治療効果となる。
【0190】
VI.製造品
ここに記載されるポリペプチド製剤は製造品に収容されうる。製造品はポリペプチド製剤を収容する容器を含むうる。好ましくは製造品は:(a)容器内にここに記載されるポリペプチド製剤を含んでなる組成物を含んでなる容器;及び(b)被験体に製剤を投与するための説明を有するパッケージ挿入物を有する。
製造品は容器と容器に付与又は添付されるラベル又はパッケージ挿入物を含んでなる。適切な容器には、例えばボトル、バイアル、シリンジ等含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多様な材料から形成されてよい。容器は、癌の状態の治療に有効な組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一つの活性剤はポリペプチドである。ラベル又はパッケージ挿入物は、ポリペプチド及び提供される何れかの他の薬剤の投薬量及び投薬間隔に関する具体的な指示を有する被験体での組成物の使用を示す。製造品は更に、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。幾つかの実施態様では、容器はシリンジである。幾つかの実施態様では、シリンジは注入装置に更に収容される。幾つかの実施態様では、注入装置は自動注入装置である。
「パッケージ挿入物」なる用語は、治療製品の指示、使用、投薬量、投与、禁忌及び/又は使用に関する警告についての情報を含む、治療製品の市販パッケージ内に慣例的に含まれる指示書を指すために使用される。
【0191】
本発明の更なる詳細が以下の非制限的な実施例により示される。本願明細書中の全引用の開示は出典明記によりその全体を本明細書中に援用する。
【実施例】
【0192】
実施例は、単に本発明を例示することを意図しているので、いかなる形であれ本発明を限定するよう見なされるべきものではなく、本発明の態様及び実施態様を記載及び詳述する。前述の実施例及び詳細な説明は、図解することを目的に示されており、限定するためにではない。
【0193】
実施例1 ポリペプチド溶液粘度に対するジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドの影響
ポリペプチド溶液粘度に対するジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドの影響を調査するために、以下の実験が行われた。
【0194】
(材料及び方法)
同一のヒトフレームワークで構成されるκ-軽鎖を含む複数のIgG1完全長モノクローナル抗体がこの研究において用いられた。これらの抗体は、クローニングされ、チャイニーズハムスター卵巣細胞株において発現され、Genentech(South San Francisco, CA)で精製された。全ての試薬はACSグレードであった。
【0195】
特に明記しない限り、rhuMAb抗IFNαは出発原料として用いられた。全てのポリペプチドは、Slide-a-lyzer 10,000 MWCO透析カセット(Thermo Scientific Pierce)を用いて、2−8℃で少なくとも24時間、適切な条件にバッファー交換された。カセットから除去後、個々の溶液のpHは、Mettler Toledo SevenMultipHメーターを用いて、周囲条件下で測定された。ポリペプチド濃度は、280nm及び320nmにおいてHP8453分光光度計を用いて、重量測定法で調製された試料を用いて決定された。密度は、25.00℃でAnton Paar DMA 5000デンシトメーターを用いて測定された。
【0196】
おおよそ500μLの試料アリコートは、所望の容積-容積百分率に従って共溶媒(DMSO又はDMA)に添加することによって調製された。共溶媒を含まないが、等しいポリペプチド濃度を維持するために添加されたそれぞれの製剤バッファーの等量を含むコントロールが、比較のために測定された。
【0197】
全ての製剤の粘性は、CP25-1 24.972mmコーンにてAnton Paar Physica MCR300レオメーターを用いて測定された。測定温度は、ペルティエプレートを用いて15℃に制御された。各々の製剤の3つの分離独立した75μlの試料は、1000/秒の剪断速度で、100秒間に20回測定された。
【0198】
(結果及び考察)
複数のポリペプチド溶液の剪断粘性率は、様々な緩衝系及び極性溶媒の存在下及び非存在下で測定された。DMSO及び/又はDMAの容量パーセントへの比較的低容量の添加(1−10%)は、様々な程度にまで溶液粘度を減少させる(図1)。面白いことに、バッファー成分であるヒスチジン塩化物は高イオン強度で溶液の粘性を減少させるが、DMSO及びDMAはさらに粘性を減少させることが示される(図1)。
【0199】
極性溶媒(DMSO及びDMA)は、モノクローナル抗体抗IFNαの溶液粘度を最も大きな程度減少させる。しかしながら、同程度の効果は、他の3つのMAbについても観測された(表2)。バッファー成分及びポリペプチドの濃度は異なるポリペプチドによって変化するが、個々の溶液に対するDMSO及びDMAの粘度減少効果は明らかである。実際、溶液粘度の2−3倍の減少は、いくつかの例において観測された(表2)。
【表2】

DMSO又はDMAが添加される場合、ΔηDMSO/DMAは剪断粘性率の変化である。
DMSO/DMSOは、剪断粘性率の倍数変化、又は共溶媒を含むバッファー粘度に対する共溶媒を含まないバッファー粘度の比率である。
【0200】
さらに極性溶剤DMSO及びDMAの粘度減少特性を調査するために、溶液pHを5.2から6.5まで変化させ、剪断粘性率を測定した。溶液粘度は、試験された全ての溶液pH値で、DMSOによって減少した(図2)。明らかに、観測された効果は、極性添加物DMSOの直接的な結果である。実際、溶液pHはDMSOの非存在下で劇的に溶液粘度に影響を及ぼし、DMSOの添加はpH依存性の粘度変化を減弱させる。
【0201】
ポリペプチド溶液の溶解性増強及び粘度減少のための他の共通の賦形剤は、塩化アルギニンである。DMSO及びDMAの効果は、これらの極性溶媒がさらなる粘度減少効果を示すかどうかを決定するために、様々な量の塩化アルギニンの存在下で調査された。本願明細書は、ポリペプチド溶液へのDMSO及びDMAの添加が、塩化アルギニンの存在下において、溶液粘度をさらに減少させることを示している。
【0202】
本願明細書では、ジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドの効果が探究された。明らかに、これらの極性成分は、高濃度ポリペプチド治療剤の溶液粘度を減少させる。DMO及びDMAは、高濃度ポリペプチド製剤の製造可能性及び送達を増加させるために用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約50mg/mLより多い量のポリペチド及び(b)製剤の約0.1%から約50%の間の量のジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルアセトアミド(DMA)を含有する液体製剤であって、該製剤はDMSO又はDMA非存在下での同じ製剤と比較して低減された粘度を有する製剤。
【請求項2】
ポリペチドが、二次構造、三次構造及び/又は四次構造を形成することができる請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
ポリペチドが二次構造を形成することができる請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
二次構造がβ-シートである請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
ポリペチドが疎水性である請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
ポリペチドが約100アミノ酸又はそれ以上である請求項2に記載の製剤。
【請求項7】
ポリペチドが5,000ダルトン又はそれ以上の分子量を有する請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
ポリペチドが治療用ポリペチドである請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
ポリペチドが抗体である請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
抗体がモノクローナル抗体である請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
モノクローナル抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
モノクローナル抗体がIgGモノクローナル抗体である請求項10に記載の製剤。
【請求項13】
抗体が抗原結合断片である請求項9に記載の製剤。
【請求項14】
抗原結合断片が、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、scFv、Fv及び、ダイアボディからなる群から選択される請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
DMSO又はDMAが、製剤の約1%から約10%v/vの間の量である請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
DMSO又はDMAが、製剤の約1%から約5%v/vの間の量である請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
製剤がヒスチジンを更に含有する請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
ヒスチジンが、約10mMから約100mMの間の量である請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
製剤がアルギニン-HClを更に含有する請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
アルギニン-HClが、約50mMから約200mMの間の量である請求項19に記載の製剤
【請求項21】
ポリペチドが約100mg/mL又はそれ以上の量である請求項1に記載の製剤。
【請求項22】
ポリペチドが約100mg/mL及び約300mg/mLの間の量である請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
DMSO又はDMAの非存在下での同じ製剤と比較して、約1から約1000cPの間で粘度が低減されている請求項1に記載の製剤。
【請求項24】
DMSO又はDMAの非存在下での同じ製剤と比較して、約5から約100cPの間で粘度が低減されている請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
DMSO又はDMAの非存在下での同じ製剤と比較して、約1.2及び約10倍の間で粘度が低減されている請求項1に記載の製剤。
【請求項26】
DMSO又はDMAの非存在下での同じ製剤と比較して、約1.2及び約5倍の間で粘度が低減されている請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
粘度が約50cP又はそれ以下である請求項1に記載の製剤。
【請求項28】
粘度が約25cP又はそれ以下である請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
pHが約5及び約8の間である請求項1に記載の製剤。
【請求項30】
pHが約5及び約6.5の間である請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
DMSO又はDMAが、DMSOである請求項1に記載の製剤。
【請求項32】
DMSO又はDMAが、DMAである請求項1に記載の製剤。
【請求項33】
製剤が注入による投与のために処方される請求項1に記載の製剤。
【請求項34】
製剤が皮下注射による投与のために処方される請求項33に記載の製剤。
【請求項35】
ポリペチド及びDMSO又はDMAを組み合わせることを含んでなる請求項1に記載の製剤の製造方法。
【請求項36】
請求項1に記載の製剤を収容する容器を有する製造品。
【請求項37】
容器が注射器である請求項36に記載の製造品。
【請求項38】
注射器が注入装置に更に具備されている請求項37に記載の製造品。
【請求項39】
注入装置が自動注入器である請求項38に記載の製品。
【請求項40】
必要としている被験体に製剤を投与することを含んでなる、疾患又は障害を治療するための請求項8に記載の製剤の使用方法。
【請求項41】
製剤が注入によって投与される請求項40に記載の方法。
【請求項42】
製剤が皮下注射によって投与される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
製剤を投与することを含んでなる、必要とする被験体に請求項1に記載の製剤を送達する方法。
【請求項44】
製剤が注入によって投与される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
製剤が皮下注射によって投与される請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−501058(P2013−501058A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523701(P2012−523701)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/044258
【国際公開番号】WO2011/017330
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】