説明

低温で液体のままである消毒剤配合物

【課題】低温性能を有する消毒剤組成物の提供。
【解決手段】(a)組成物の重量を基準にして15重量%〜49.75重量%の殺生物剤、(b)組成物の重量を基準にして15重量%〜49.75重量%の水、および(c)組成物の重量を基準にして0.5重量%〜60重量%の可溶性塩を含み、殺生物剤としてはグルタルアルデヒド、ジブロモニトリロプロピオンアミド、および2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールからなる群から選択される化合物を含む消毒剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消毒剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
殺生物剤を含む液体配合物を使用することが多くの場合望まれる。ある状況においては、低温でこのような液体配合物を使用することが望まれ、ひいては、この配合物が液体状態のままであることが望まれる。配合物中に使用される溶媒の量を最小限にすることも望ましい。ある場合においては、配合物が以下の特徴の一以上を有することも望ましい:望ましくない化学反応、例えば、殺生物剤の分解などを受けずに合理的な期間にわたる化学的安定性;比較的高い引火点;比較的低い人毒性;比較的低い腐蝕促進傾向;および殺生物剤の比較的高い濃度。
【0003】
米国特許第5,496,858号は、アルデヒド、限定された水混和性を有するアルコール、および好ましくは非イオン性界面活性剤を含む水性消毒剤濃縮物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,496,858号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改良された低温性能を有する配合物を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態においては、
(a)組成物の重量を基準にして15重量%〜49.75重量%の殺生物剤、
(b)組成物の重量を基準にして15重量%〜49.75重量%の水、および
(c)組成物の重量を基準にして0.5重量%〜60重量%の可溶性塩;
を含む消毒剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において使用される場合、「アルキル」は、線状、分岐、環式またはこれらの組み合わせであり得る飽和炭化水素である。
【0008】
本明細書において使用される場合、「引火点」は、以下のように測定される場合の引火点である。25℃〜70℃の引火点は、DIN51755に従ってエーベル−ペンスキー(Abel−Pensky)密閉引火点試験装置によって測定され、70℃を超える引火点は開放カップクリーブランド(Cleveland)方法によって測定される。
【0009】
本明細書において使用される場合、語句「X以下:1の比率」とは、Y:1の値(ここで、YはX未満であるかまたはXに等しい)を有する割合を意味する。他に示されない限り、Yがゼロの場合が含まれる。
【0010】
用語「殺微生物剤」、「殺生物剤」、「防腐剤」または「抗微生物化合物」とは、本明細書においては、微生物を殺し、微生物の成長を阻害し、または微生物の成長を制御するのに有用な化合物をいう。殺生物剤には、殺バクテリア剤、殺真菌剤および殺藻剤が挙げられる。用語「微生物」は、例えば、真菌(例えば、酵母およびカビ)、バクテリア並びに藻類を含む。
【0011】
本明細書において使用される場合、「グリコールエーテル」は下記構造(I)を有する化合物である:
【化1】

(式中、nは1以上であり;nは6未満であり;RおよびRは独立して、HもしくはC〜Cアルキルであり;nが1である場合には、RおよびRの少なくとも一方がHではない;それぞれの単位−Z−は
【化2】

であり;
独立して、各−Z−単位において、RおよびRは独立して水素またはメチルであり;各−Z−単位において、RおよびRは両方ともメチルであることはない)。
【0012】
本明細書において使用される場合、「Z1」単位は、RおよびRが両方とも水素である−Z−単位であり、「Z2」単位は、RまたはRのいずれかがメチルである−Z−単位である。
【0013】
本明細書において使用される場合、「ppm」は100万あたりの重量部を意味する。
【0014】
本明細書において使用される場合、本発明の組成物がある成分を「ほとんどまたは全く」含まないことが示される場合には、組成物中のその成分が存在しないか、またはその成分が幾分か存在する場合には、その成分の量は組成物の重量を基準にして100ppm以下であることを意味する。
【0015】
本発明の組成物は1種以上の殺生物剤を含む。ある好適な殺生物剤には、例えば、アルデヒド、ブロモ−ニトロ化合物、およびイソチアゾロンが挙げられる。ある好適なブロモ−ニトロ化合物には、例えば、ジブロモニトリロプロピオンアミド(DBNPA)および2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(ブロノポール)が挙げられる。
【0016】
ある実施形態においては、アルデヒドである1種以上の殺生物剤が使用される。ある実施形態においては、殺生物剤は、例えば、ホルムアルデヒドまたはコハク酸ジアルデヒドまたはグルタルアルデヒドの1種以上を含む。ある実施形態においては、グルタルアルデヒドが使用される。ある実施形態においては、組成物中にグルタルアルデヒド以外の殺生物剤はない。
【0017】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、アルデヒドである1種以上の殺生物剤を含み、かつアルデヒドではない1種以上の殺生物剤も含む。アルデヒドではない好適な殺生物剤には、例えば、DBNPA、ブロノポール、第四級アンモニウム殺生物剤(例えば、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムスルファート、トリブチルテトラデシルホスホニウムクロリド、および他の第四級殺生物剤など)、アルデヒド殺生物剤と適合性である他の殺生物剤、およびこれらの混合物が挙げられる。
好適な殺生物剤の混合物も好適である。
【0018】
本発明の組成物中の殺生物剤の量は、組成物の重量を基準にして15重量%〜49.75重量%である。殺生物剤の量は、組成物の重量を基準にして好ましくは45重量%以下である。
【0019】
本発明の組成物は1種以上の可溶性塩を含む。本明細書において使用される場合、等しい重量部の殺生物剤および水からなる試験組成物100グラム中に25℃で、ある塩が2グラム以上溶解されうる場合には、その塩は可溶性であるとみなされる。この試験組成物における殺生物剤は、消毒剤組成物において使用されるであろう殺生物剤と同じである。いくつかの好適な塩については、試験組成物中に10グラム以上のその塩が溶解されうる。
【0020】
本発明の組成物中に溶ける塩のそれぞれの分子は、溶液中の少なくとも1種のアニオンおよび溶液中の少なくとも1種のカチオンを生じさせる。
好適な可溶性塩には、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類のカチオンを有する可溶性塩が挙げられる。ある実施形態においては、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムのカチオンを有する1種以上の塩が使用される。
【0021】
好適な可溶性塩には、例えば、ハライド、アセタートまたはニトラートのアニオンを有する可溶性塩が挙げられる。ある実施形態においては、クロリドまたはアセタートのアニオンを有する1種以上の塩が使用される。ある実施形態においては、ハライドイオンではないアニオンを有する1種以上の塩が使用される。ある実施形態においては、アセタートであるアニオンを有する1種以上の塩が使用される。
【0022】
ハライド以外のアニオンを有する塩は、一般に、ハライドであるアニオンを有する塩よりも、金属腐食について、より低い促進傾向を有する。
【0023】
ある実施形態においては、塩化マグネシウム六水和物、塩化カルシウム六水和物、無水塩化マグネシウム、無水塩化カルシウム、酢酸カリウム、およびこれらの混合物から選択される1種以上の塩が使用される。ある実施形態においては、酢酸カリウムが使用される。ある実施形態においては、無水物塩が使用される。
【0024】
1種以上の塩が使用される実施形態においては、塩は任意の方法によって組成物の他の成分と混合されうる。塩が、組成物の1種以上の他の成分と最初に混合される場合には、その混合の直前の塩の形成は、本明細書においては、その塩が組成物に添加される形態と称される。
【0025】
ある実施形態においては、1種以上の塩が、水和した塩の形態で組成物に添加される。ある実施形態においては、1種以上の塩が、無水物塩の形態で組成物に添加される。ある実施形態においては、組成物に添加される全ての塩が、無水物塩の形態で添加される。
好適な可溶性塩の混合物も好適である。
【0026】
本発明の組成物中の全ての可溶性塩の全量は、組成物の重量を基準にして0.5重量%〜60重量%である。ある実施形態においては、その塩の量は、組成物の重量を基準にして、好ましくは30重量%以下;より好ましくは12重量%以下;より好ましくは7重量%以下である。独立して、ある実施形態においては、その塩の量は、組成物の重量を基準にして、好ましくは1重量%以上である。
【0027】
ある実施形態においては、本発明の組成物においては、可溶性塩ではない塩はほとんどまたは全く存在しない。
【0028】
ある実施形態(本明細書においては、「溶媒実施形態」と称する)においては、本発明の組成物は1種以上の溶媒を含む。本明細書において使用される場合には、溶媒は水ではなく、かつ25℃および1気圧で液体である化合物である。ある好適な溶媒は、1分子あたり1以上の酸素原子を含む。
【0029】
ある実施形態においては、本発明の組成物中の溶媒は、1種以上のグリコールエーテルを含む。ある好適なグリコールエーテルは、例えば、各−Z−単位がZ1単位である分子;各−Z−単位がZ2単位である分子;1以上のZ1単位と1以上のZ2単位との双方を含む分子;またはこれらの混合物を含む。ある溶媒実施形態においては、溶媒は全体として検討される場合には、全てのZ1単位の重量:全てのZ2単位の重量の比率は、0.66以下:1である。
【0030】
ある溶媒実施形態においては、溶媒は、構造(I)を有し、各−Z−単位においてRおよびRが両方とも水素であることはない、1種以上のグリコールエーテル(本明細書においては「GEA」と称される)を含む。あるGEAにおいては、全ての−Z−単位はその分子中の他の全ての−Z−単位と同じである。あるGEAにおいては、1以上の−Z−単位は、メチルであるRを有し、および1以上の−Z−単位は、メチルであるRを有する。
【0031】
ある溶媒実施形態においては、nが2以上である1種以上のGEAが使用される。ある溶媒実施形態においては、nが2または3である1種以上のGEAが使用される。ある溶媒実施形態においては、本発明の組成物中の全てのGEAが2または3のnを有する。ある溶媒実施形態においては、nが2である1種以上のGEAが使用される。ある溶媒実施形態においては、本発明の組成物中の全てのGEAが2のnを有する。
【0032】
ある好適なGEAには、例えば、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
ある溶媒実施形態においては、溶媒は、nが2または3である1種以上のGEAを含み、かつnが1である1種以上のGEAも含む。このような実施形態のいくつかにおいては、溶媒はジプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルを含む。
【0034】
ある溶媒実施形態においては、組成物中の全てのグリコールエーテルがGEAである。別の溶媒実施形態においては、溶媒はGEAではない1種以上のグリコールエーテルを含む。ある溶媒実施形態においては、例えば、1種以上のGEAに加えて、溶媒は1種以上の「GEB」も含み、本明細書においては、GEBは、全ての構造−Z−においてRおよびRの双方が水素である構造(I)のグリコールエーテルとして定義される。ある好適なGEBには、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジグライムおよびこれらの混合物が挙げられる。ジグライムは、アルキル基が1〜4つの炭素原子を有するジエチレングリコールジアルキルエーテルである。
【0035】
GEBが存在するある溶媒実施形態においては、全てのGEB化合物の合計重量:全てのGEA化合物の合計重量の比率は、0.66以下:1である。
本明細書においては、GEA化合物は一般的にGEB化合物よりも低い人毒性を有すると考えられる。
【0036】
ある溶媒実施形態においては、「GEAB」である1種以上のグリコールエーテルが使用され、本明細書においては、GEABは、少なくとも1つの−Z−単位がZ1単位であり、かつ同じ分子中で少なくとも1つの−Z−単位がZ2単位である、構造(I)を有するグリコールエーテルとして定義される。GEABが使用されるある溶媒実施形態においては、GEABの分子内のZ1単位の重量:同じ分子内の全てのZ2単位の重量の比率、0.66以下:1である。
好適なグリコールエーテルの混合物は好適である。
【0037】
ある溶媒実施形態においては、水可溶性である1種以上のグリコールエーテルが使用される。本明細書において使用される場合、25℃で100gの水に溶解されうる化合物の量が5g以上である場合には、その化合物は水可溶性である。ある溶媒実施形態においては、非常に水可溶性である1種以上のグリコールエーテルが使用される。本明細書において使用される場合、25℃で100gの水に溶解されうる化合物の量が50g以上である場合には、その化合物は非常に水可溶性である。ある溶媒実施形態においては、全ての比率において水と混和性である1種以上の非常に水可溶性のグリコールエーテルが使用される。ある溶媒実施形態においては、使用される全溶媒が水に可溶性である。ある溶媒実施形態においては、溶媒中の各成分が水可溶性である。ある溶媒実施形態においては、使用される全溶媒が非常に水可溶性である。ある溶媒実施形態においては、溶媒中の各成分が非常に水可溶性である。
【0038】
ある溶媒実施形態においては、本発明の組成物中の溶媒の量は、組成物の重量を基準にして0.1重量%〜70重量%である。ある溶媒実施形態においては、溶媒の量は、組成物の重量を基準にして1重量%以上;または5重量%以上;または25重量%以上;または30重量%以上である。独立して、ある溶媒実施形態においては、溶媒の量は、組成物の重量を基準にして、65重量%以下である。
【0039】
本発明のある実施形態においては、消毒剤組成物中に溶媒は使用されない。
【0040】
本明細書において使用される場合には、低級ジオール(low diol)は以下の構造(III)を有する化合物である:
【化3】

式中、nは0、1または2であり;R11、R12、R13、R14、R15のそれぞれは、独立して、水素または一価の基である。nが2である場合には、2つのR13基は同じであっても良いし、異なっていてもよい。本明細書においては、ある化合物が構造(III)を有する場合には、R11、R12、R13、R14、およびR15の種類に関係なく、その化合物は低級ジオールであるとみなされる。本明細書において使用される場合、アルキル低級ジオールは、R11、R12、R13、R14、R15のそれぞれが独立して水素または一価のアルキル基である低級ジオールである。
【0041】
ある実施形態においては、本発明の組成物はアルキル低級ジオールをほとんどまたは全く含まない。ある実施形態においては、本発明の組成物はアルキル低級ジオールを含まない。ある実施形態においては、本発明の組成物は低級ジオールをほとんどまたは全く含まない。ある実施形態においては、本発明の組成物は低級ジオールを含まない。
【0042】
ある実施形態においては、本発明の組成物は界面活性剤を含まない。他の実施形態においては、本発明の組成物は1種以上の界面活性剤を含む。好適な界面活性剤は非イオン性、アニオン性、カチオン性、両性またはこれらの混合物であり得る。
【0043】
ある実施形態においては、本発明の組成物は緩衝剤をほとんどまたは全く含まない。ある実施形態においては、本発明の組成物は緩衝剤を含まない。
【0044】
独立して、ある実施形態においては、本発明の組成物は有機リチウム塩をほとんどまたは全く含まない。ある実施形態においては、本発明の組成物は有機リチウム塩を含まない。
【0045】
ある実施形態においては、本発明の組成物の引火点は、アセトンの引火点以上である。独立して、ある実施形態においては、本発明の組成物の引火点は55℃以上である。
【0046】
ある溶媒実施形態においては、本発明の組成物の溶媒中の各成分は、55℃以上の引火点を有する。
【0047】
ある他の溶媒実施形態においては、溶媒中の1種以上の成分は、55℃未満の引火点を有する。このような実施形態においては、本発明の組成物が55℃以上の引火点を有することが望まれる場合には、55℃未満の引火点を有する各成分の特性および量は、本発明の完成した組成物が55℃以上の引火点を有するであろう様に選択されることが意図される。55℃未満の引火点を有するいくつかの好適な成分は、例えば、C〜Cアルキルアルコール、例えば、イソプロパノールなどである。他の例は、例えば、55℃未満の引火点を有するグリコールまたはグリコールエーテル、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルなどである。
【0048】
ある実施形態においては、イソプロパノールは使用されない。ある実施形態においては、55℃未満の引火点を有するアルコールは使用されない。ある実施形態においては、アルコールは使用されない。
【0049】
ある溶媒実施形態においては、塩の量は、全ての塩の重量:全ての溶媒の重量の比率が0.01:1〜10:1であるように選択される。ある実施形態においては、全ての塩の重量:全ての溶媒の重量の比率が0.1以上:1、好ましくは0.2以上:1である。独立して、ある実施形態においては、全ての塩の重量:全ての溶媒の重量の比率は3以下:1、好ましくは1以下:1である。
【0050】
ある実施形態においては、全ての塩の重量と全ての溶媒の重量との合計が、組成物の重量を基準にして10重量%〜69重量%でありうる。
【0051】
本発明の組成物は様々な目的のために様々な方法で使用されうる。例えば、本発明の組成物は、殺生物性を有する水溶液を提供するように水に添加されうる濃縮物として貯蔵および使用されうる。殺生物性を有する水は、例えば、水が金属と接触している状況(例えば、パイプまたはタンクにおけるように)において有用である、というのは、殺生物性がなければ、その水は微生物的に引き起こされる金属の腐食を促進しうるからである。例えば、地下からの油の取り出しが場合によって水攻法によって増大させられ、そしてその水を取り扱うパイプ、タンクなどは微生物的に引き起こされる腐蝕を受けやすい。多くの油田は、冬の温度が比較的低い場所にある。この低い温度にもかかわらず、この殺生物剤濃縮物を屋外で貯蔵し、次いでそれをより大きな容器に注ぎ込み、そしてこれらの操作のいくつかまたは全てを比較的低温の屋外で行うことが望ましい。
【0052】
ある状況においては、鍵となる中間体ジメチルアセタール(アセトアルデヒドのジメチルアセタール;DMAとも称される)を生産させるためのエネルギー強度を減少させ、かつ原料収率を増大させることにより、メチルビニルエーテルを生産するコストを低下させることが望ましい。この課題は、原料を回収し、それにより原料収率を最大化するためにプロセス流れの再循環を伴う蒸留塔からの廃棄物除去(副生成物および不純物取り扱い)と、反応蒸留との組み合わせを介してDMAを生産することにより取り組まれうる。このことは反応蒸留を利用するDMAの生産のためのプロセスによってなされることができ、そこでは、プロセス内の副生成物および不純物が反応蒸留カラムにおけるサイドドロー(side−draw)を介する連続的除去により管理される。反応蒸留に必要とされる触媒は不均一系であっても良いし、均一系であっても良い。サイドドローを使用する反応蒸留は、いくつかの別個の蒸留塔に対して1つの蒸留塔内で効果的な再利用プロセス流れを可能にする。蒸留塔の数の低減は、処理される物質を気化させおよび凝縮させる双方に必要なエネルギーを低減することによって、全体的なエネルギー使用を最小限にするのを助ける。
【0053】
不純物/副生成物を除去するための反応蒸留塔における最適化されたサイドドローによって可能にされた、後の処理工程からの物質の再循環と、高い原料収率を達成するための反応蒸留との組み合わせは、このプロセスを驚くべきことに、よりエネルギー集約的に、かつより効果的にする。
【0054】
反応蒸留塔内でのサイドドローの使用は、さもなければ標準的な蒸留カラムにおいては起こるにちがいないカラム内での不純物および副生成物の蓄積を妨げる。所定のプロセスおよび装置については、サイドドローの位置およびそれぞれからの除去の速度を制御するための手段は、原料収率およびプロセス操作性に基づいて最適化される。最適化は、主として、サイド流れに失われる価値ある原料の量、および、主として、反応蒸留塔を制御するのに使用される還流比に基づく。原料は、アセトアルデヒド、メタノール、DMA、および、使用される場合には、不均一系触媒を含む。このサイドドローがその位置から蒸気または液体のいずれとして取り出されるかは、反応蒸留に使用される触媒の種類およびサイドドローシステムの構成材料に主として依存する。均一系触媒が使用される場合には、ひいては蒸気サイドドローが好まれる場合があり、触媒が不揮発性である場合には、それ故に、除去される蒸気中に触媒は存在しないであろう。このことは、触媒の効率的な使用を確実にし、そして望まれる場合にはさらなるサイドドロー処理における触媒の存在についての懸念を緩和する。
【0055】
さらに、DMA中間体の後の処理からの物質を、反応蒸留塔へ戻す再循環は著しく経済的に有利である。各再循環流れの戻ってくる位置も、その組成、エネルギー入力、および使用される蒸留塔の物理的制約、すなわち、存在するトレイの数およびその操作効率に基づいて最適化されなければならない。再循環流れを導入する位置は塔の性能の最適化に重要である。
【0056】
不純物および副生成物を蒸留塔のテール流れまたはオーバーヘッド流れと共に出すことにより、サイドドローは除かれることができた。次いで、これらの流れは別の蒸留塔においてさらに処理されて、所望の物質から不純物有機物質を除くことができた。この技術は、本明細書において開示される技術を実行する前に、数十年間実施されてきた。同様に、再循環流れは、蒸留または他の分離技術によって処理されて、価値のある成分を回収することも可能である。これも、本技術の前に数十年間使用されてきた技術であった。この歴史的なプロセスは所望の分離を行うために有意により多くのエネルギーを使用した。反応器、廃棄物流れストリッパー、およびプロセス流れの再循環装置として機能する1つの塔内に全ての機能を組み込むことによるその除去は、使用エネルギーの有意な低減および原料効率の有意な増大を提供する。
【実施例】
【0057】
以下の実施例においては、これらの略語が使用される:
【表1】

【0058】
例1、C2、3−7、C8、9、C10、およびC11
配合物は以下のように製造され試験された。以下の表5に示される組成物のそれぞれは、混合され、1.2ミリリットルチューブ内に入れられ、振とうさせられた。約1ミリグラムの硫化銅粉体が核形成剤として添加された。サンプルは−50℃で少なくとも24時間保持された。サンプルは、次いで、相分離を検出するために目視で観察された。示される各配合物について、5検体のサンプルが作成され試験された。以下の表に示されたサンプルは安定であった;すなわち、各サンプルは相分離を示さなかった。比較例の配合物は「C」で始まる例番号を有する。
パーセンテージは配合物の重量を基準にした重量パーセンテージである。
【0059】
【表2】

【0060】
注(9):添加剤1:添加剤2の重量比。
注(10):配合物の重量を基準にした、重量パーセントでの、添加剤1と添加剤1との合計量。
【0061】
例12−17、C18、19−24、C25、C26および27
サンプルは、試験温度が−45℃であったこと、およびウカルサイド(Ucarcide商標)42抗微生物剤の代わりにGlut50(溶液の重量を基準にして50重量%のGAと50重量%の水との溶液)が使用されたことを除いて、実施例または比較例である例1〜11におけるように製造され試験された。示された配合物は全て−45℃で貯蔵された。
【0062】
【表3】

【0063】
例C28−C39、40、C41、42、C43、およびC44
サンプルは混合され、次いで−50℃に冷却された。透明のままであったサンプルは「合格」と分類され、相分離を示したサンプルは「不合格」と分類された。「合格」サンプルの粘度をボール落下試験によって評価した。同じバイアルを用いて、各配合物の7グラムのサンプルをバイアルに入れ、直径2.8mmの金属ボールをその表面上に配置し、そしてそのボールがサンプルの底に到達するまでの時間を記録した。バイアルの直径はこのボールの直径よりも大きかった。パーセントは、配合物の重量を基準にした重量パーセントである。比較例は「C」で始まる例番号を有している。結果は以下の通りであった。
【0064】
【表4】

【0065】
例C45、および46−49
この例は、実施例および比較例である例28−44におけるように製造され試験された。
【0066】
【表5】

【0067】
例C50、および51−54
この例は、実施例および比較例である例45−49におけるように製造され試験された。
【0068】
【表6】

【0069】
例C38、C45、49、53、および55;定常剪断粘度試験
サンプルは、コーンおよびカップジオメトリを備えたアレスレオメーター(Ares Rheometer)を用いて−50℃で、定常剪断粘度について試験された。この粘度は、10秒−1〜100秒−1の範囲の剪断速度に対する依存性をほとんどまたは全く示さず、以下に報告される粘度はその範囲の剪断速度にわたる平均粘度である。粘度はパスカル・秒(Pa・秒)の単位で報告され、これは1,000センチポイズに等しい。
実施例55は、等しい重量部のグルタルアルデヒドと水との溶液50重量%;ジグライム43重量%;およびイソプロピルアルコール7重量%である。
【0070】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)組成物の重量を基準にして15重量%〜49.75重量%の殺生物剤、
(b)組成物の重量を基準にして15重量%〜49.75重量%の水、および
(c)組成物の重量を基準にして0.5重量%〜60重量%の可溶性塩;
を含む消毒剤組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記組成物の重量を基準にして0.1重量%〜75重量%の溶媒をさらに含み;
前記溶媒が下記構造(I)を有する1種以上のグリコールエーテルを含む
【化1】

(式中、nは1以上であり;nは6未満であり;RおよびRは独立して、HもしくはC〜Cアルキルであり;nが1である場合には、RおよびRの少なくとも一方がHではない;
それぞれの前記単位−Z−は
【化2】

であり;
各−Z−単位において、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはメチルであり;
各−Z−単位において、RおよびRは両方ともメチルであることはなく;並びに、
前記溶媒におけるRおよびRの両方が水素である全ての−Z−単位の重量:前記溶媒におけるRおよびRの一方がメチルである全ての−Z−単位の重量の比率が0.66以下:1である)
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶媒が1種以上のグリコールエーテル(A)を含み、前記グリコールエーテル(A)の各分子が前記構造(I)を有し、独立して各−Z−単位においてRおよびRの一方が水素であり、かつRおよびRの他方がメチルである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、
(a)nが2以上である前記構造を有する1種以上のグリコールエーテル(A)、および
(b)nが1である前記構造を有する1種以上のグリコールエーテル(A);
を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記(b)がプロピレングリコールメチルエーテルである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶媒が、下記構造(II)を有する1種以上のグリコールエーテル(B)をさらに含む、請求項3に記載の組成物:
【化3】

(式中、mは1以上であり;mは6未満であり;RおよびRは独立して、HもしくはC〜Cアルキルであり;mが1である場合には、RおよびRの少なくとも一方がHではない;並びに
グリコールエーテル(B)の全ての合計重量:グリコールエーテル(A)の全ての合計重量の比率が0.66以下:1である)。
【請求項7】
前記殺生物剤が、グルタルアルデヒド、ジブロモニトリロプロピオンアミド、および2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールからなる群から選択される化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記殺生物剤がグルタルアルデヒドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記可溶性塩の量が、前記組成物の重量を基準にして1重量%〜12重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記可溶性塩の1種以上が無水物塩の形態で前記消毒剤組成物に添加される、請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−126867(P2011−126867A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−249591(P2010−249591)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(510295631)ダウ・イタリア・ディビジョン・コマーシャル・ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ (2)
【氏名又は名称原語表記】DOW ITALIA DIVISIONE COMMERCIALE S.r.l.
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】