説明

低温で開環メタセシス重合により硬化可能な組成物及び歯科分野におけるそれらの用途

本発明は、開環メタセシス重合(ROMP)により重合可能な組成物であり、ROMPにより重合可能な少なくとも1つのモノマーと、ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型の反応開始剤と、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する4つ以下の他の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーと、を含む組成物に関する。更に本発明は、ROMPにより重合可能な組成物の調製方法、本発明に従う組成物を重合することにより得られる歯科材料、及び少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される物質又は2つ以上のこうした物質の混合物の、ROMPにおけるリターダーとしての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、開環メタセシス重合(ROMP)により重合可能な組成物に関し、組成物は、ROMPにより重合可能な少なくとも1つのモノマーと、ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型の反応開始剤と、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーとを含む。更に、本発明は、ROMPにより重合可能な組成物の調製方法、本発明に従う組成物を重合することにより得られる歯科材料、並びに少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される物質、又は2つ以上のこうした物質の混合物のROMPにおけるリターダーとしての使用に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
この出願は、欧州特許出願第06026426.4号(2006年12月20日出願)の優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
付加重合反応は、歯科用途の分野において広く使用されてきた。ほとんどのケイ素樹脂は、多くの場合、ヒドロシリル化反応を経由する2部系として、利用されてきており、硬化されてきた。こうした系の利点は、それらの柔軟性のある作用時間であり、これは、必要に応じて、約1分間未満から数時間までの範囲内で広く調節できる。一般に、作用時間は、重合されるべき組成物に存在する構成要素によって、又はリターダー若しくは阻害物質を触媒構成要素に特に添加することによって、制御できる。
【0004】
例えば、先行技術(例えば、米国特許第6,844,409 B2号参照)に述べられてきた理由に起因して、付加重合可能な系は、多くの欠点を有する。それらの欠点のいくつかを改善するために、硬化が開環メタセシス重合(ROMP)により達成される別の種類の重合系が開発されてきた。
【0005】
米国特許第6,844,409 B2号に与えられた定義に従うと、メタセシスは、炭素−炭素二重結合の再分配に触媒作用を及ぼす金属を意味すると理解されることが多い。一般に、ROMP重合可能な組成物は、ルテニウムカルベン錯体のようなメタセシス触媒と共に、ROMPにより硬化可能な官能基又は基を包含する樹脂系を含むことができる。
【0006】
米国特許第6,844,409 B2号は、オレフィン含有樹脂系及びメタセシス触媒を含むメタセシス反応により硬化可能な組成物に関する。メタセシスは、活性増強配位子によって、又は記載された樹脂製剤への触媒促進剤の組み込みによって、活性が増加するルテニウムカルベン錯体触媒によって開始される。触媒促進剤として、スルホコハク酸塩が記載されている。ROMP反応の遅延は、この文書において述べられていない。
【0007】
スルゴブク(Slugovc)、デメル(Demel)及びステルザー(Stelzer)は、ChemCommun、2002年、2572〜2573頁に、いわゆるスーパー・グラブス(super-Grubbs)触媒によるROMP重合へのN−置換化合物の影響を記載している。官能基を持つ添加剤の多量の使用、及びこうした添加剤の重合挙動への影響が、記載されている。一般に、重合を遅くする効果及びポリマー特性への大きな影響が記載される一方で、重合反応の状況に応じた遅延又は得られたポリマーの機械的特性への有意な影響の欠如は、この文書に記載されていない。
【0008】
分子触媒Aのマトスとリマ−ネト雑誌(Matos and Lima-Neto Journal of molecular catalysis A):化学222(2004年)81〜85頁、室温にて1分間未満でROMPによりノルボルネンを定量的に重合するルテニウム錯体の形成を記載している。エチルジアゾアセテートの添加の際、触媒活性の低下が観察されるので、遅延の現象、一般的な重合機構を基本的に不変のままにすることは、この文書に記載されていない。
【0009】
米国公開特許出願第2004/0225073 A1号は、その構成要素の混合の際、メタセシス反応により硬化可能な組成物を記載しており、これは、メタセシス反応を進行させるために、オレフィン含有基質、メタセシス触媒及び反応制御剤を含む。反応制御剤は、炭素−炭素二重及び/又は三重結合並びに1つ以上の14族原子を含有する有機化合物であり、メタセシス反応の進行を減速するのに有効な量で存在する。また、この文書は、比較リターダーとしてピリジン、トリエチルアミン及びベンゾトリアゾールの使用を記載している。
【0010】
これらの化合物の遅延特性の比較の際、この文書は、それらが硬化方法を加速する(トリエチルアミン)、硬化反応を抑制する(ベンゾトリアゾール)又は全く影響を持たない(ピリジン)という結論に達する。
【0011】
米国公開特許出願第2002/0153096 A1号は、少なくとも1つのメタセシス活性物質二重結合を有する少なくとも1つのオレフィン化合物を含む接着剤組成物に関し、ここでオレフィンは、置換されている又は置換されておらず、基質表面と相互作用するために少なくとも1つの官能基と相溶する。ポリマーの部分にならないリターダーは、この文書で述べられていない。
【0012】
米国特許第6,001,909号は、少なくとも1つの密なシクロオレフィン、開環メタセシス重合のための触媒、充填剤及びシランを含む組成物に関する。ROMP重合系の強靱性、熱安定性及び誘電損失因子を増加するために、シランが添加される。シランは、置換基を運ぶことができ、組成物の重量に関連して、0.01〜20重量%の量で使用される。試料を80℃で2時間、100℃で4時間、及び150℃で1時間加熱することにより、硬化は達成される。
【0013】
ヤコブ(Yakov)S.ビゴドスキー(Vygodskii)らは、イオン性液体(マクロモレキュルズ(Macromolecules)2006年、39巻、7821〜7830頁)において、開環メタセシス重合(ROMP)の範囲及び制限を扱っている。
【0014】
米国公開特許出願第2006/0241257 A1号は、反応制御剤を持つメタセシス硬化性組成物を記載している。実施例では、テトラアリルシラン(TAS)が反応制御剤として使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先行技術に記載の系の欠点に起因して、ROMPにより硬化可能な改善された組成物、特に歯科分野において使用することができる組成物の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、開環メタセシス重合(ROMP)により重合可能な組成物を提供し、組成物は、ROMPにより重合可能な少なくとも1つのモノマーと、少なくとも1つのROMPを開始するためのホベイダ−グラブス型反応開始剤と、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーとを含む。ある場合には、リターダーがルテニウムと錯体を形成することができることが、有利であることがわかっている。
【0017】
本発明の別の態様に従うと、少なくとも1つのROMPにより重合可能なモノマーと、ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤と、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の他の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーとが混合される、開環メタセシス重合(ROMP)により重合可能な組成物の調製方法が記載される。特定の状況下では、本発明に従って記載された組成物が、ベース構成要素及び触媒構成要素として存在し、ベース構成要素が、ROMPにより重合可能な1つ以上のモノマーを少なくとも含み、触媒構成要素が、ROMPを開始するためのホベイダ−グラブス型の少なくとも1つの反応開始剤を少なくとも含み、リターダーが、ベース構成要素、又は触媒構成要素、又は両方に存在することが有利であることが見出された。
【0018】
本発明の更なる態様においては、本発明に従う組成物を重合することにより、又は本発明に従って記載されるような方法に従って得られる組成物を重合することにより得られる歯科材料が記載される。
【0019】
更に、本発明は、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される物質、又は2つ以上のこうした物質の混合物のROMPにおけるリターダーとしての使用に関する。
【0020】
更に、一時的な又は永続的なインレイ、オンレイ、ベニアシェル、クラウン、又はブリッジ、又は充填材を調製するために、本発明に従う組成物を重合することにより、又は本発明に従って記載されるような方法に従って得られる組成物を重合することにより得られる物質の使用が記載される。
【0021】
本発明の文章に記載されるリターダーを使用して、これらのリターダーは、硬化性組成物の硬化プロセスの遅れを促進するだけでなく、組成物に歯の色の外観又は組成を提供することを許容し、その色は、着色剤又は顔料の添加により、歯の色の外観に調節することができることが見出された。
【0022】
更に、ある実施形態に関して、本発明の文章に記載されるリターダーを含有するROMP硬化性組成物は、硬化後、曲げ強度のような物理的特性の改善を示すことが見出された。
【0023】
この理論又は別の理論に束縛されることを望まないが、硬化プロセスにおける遅延に起因して、組成物中の硬化性モノマーは、互いに反応するためにより多くの時間を有し、硬化又は架橋反応がより効果的であるという結果を有すると考えられている。これは、物理的特性の改善を導く可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】クロメータで測定されたペースト1R(以下の実施例の節に記載されている)の硬化挙動の関連フラグメントを示している。x軸は時間を示し、y軸は粘度を示し、下端で高粘度、上端で低粘度である。グラフの上部平坦域が少なくとも2つの正方形にて下がっているとき、硬化反応が開始したと見なされる。2つの正方形の長さは1分間を表し、正方形の1/10が3秒間に等しいことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1態様に従うと、本発明は、開環メタセシス重合(ROMP)により重合可能な組成物に関し、
a)ROMPにより重合可能な少なくとも1つのモノマーと、
b)ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型の反応開始剤と、
c)少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5、4又はそれ未満の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーと、を含む。
【0026】
好ましくは、重合可能な組成物は、少なくとも約1重量%の部分のROMPにより重合可能な少なくとも1つのモノマーを含むことができる。ROMPによって重合可能な2つ以上の部分を有するモノマーの量は、より多くすることができ、例えば、組成物中に少なくとも約10重量%、約20重量%、約30重量%、約40重量%、約50重量%、若しくは約60重量%のモノマー、又は更に高い、例えば、約70重量%以上、約80重量%以上、又は更には約90重量%以上であることができる。
【0027】
別の実施形態においては、本発明に従う組成物は、ROMPにより重合可能なモノマーを含有し、環状構造内に少なくとも1つのC−C二重結合を含む。
【0028】
一般に、全ての種類のモノマーは、ROMPによって重合可能な1つの部分、又は好ましくは2つ以上の部分を有する組成物の一部であることができる。
【0029】
一般に、好適なモノマーは、一般式B−Aに従うことができ、式中、AはROMPによって重合可能な部分、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル、又は多くの場合好ましい、ノルボルネニル及び7−オキサ−ノルボルネニル基のような二環式環系であり、BはROMPにより重合可能な1〜約100、例えば、1〜約10、又は1〜約5、又は1〜約4の部分を持つ有機又はケイ素−有機主鎖であり、例えば、ROMPにより重合可能な1、2又は3つの部分が結合しており、nは約1〜約100である。本発明による組成物は、一般式B−Aに従う、1種類のみのモノマーを含有することができる。本発明による組成物が、一般式B−Aに従う、2つ以上の異なる種類のモノマーを含有することも可能である。本発明による組成物は、好ましくは、一般式B−Aに従う、少なくとも1つのモノマーを含有し、これはROMPによって硬化可能な、1つ又は好ましくは2つのオレフィン系不飽和二重結合を有する。
【0030】
更なる実施形態では、本発明に従って使用できる二環式環系は、(メタ)アクリレート基のような環外C−C二重結合を有しておらず、それにより組成物の硬化は、少なくとも主として開環メタセシス重合(ROMP)によって生じる。更に、場合によっては、しばしばROMPの間、連鎖停止剤として機能する可能性があるため、組成物、特に二環式環系は、末端不飽和、特にビニル又はアリル基も含有しないことが有利であってもよい。しかし、それにもかかわらず、重合を調節するための連鎖停止剤の添加が好ましくあり得る。
【0031】
本発明に従う組成物は、1つの環内二重結合を持つ二環式系を含有することができる。酸素置換環系と同様に、炭素環式環系が特に好ましい。
【0032】
顕著な環ひずみを持つ炭素環式及び複素環式ビシクロ[x.y.z.]炭化水素は、多くの場合、x、y及びzが1〜6の値を有する場合に特に好適であってもよい。xは、約2に等しく、yは、約2に等しく、Zは1に等しい。
【0033】
この組成物の部類の好ましい代表例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン又は7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプテンの誘導体、特に、環の5位が不飽和であるもの及び環の2−又は2,3−位が置換されているようなものである。環の2−又は2,3−位における置換基は、好ましくは炭素官能性、ケイ素官能性、又は酸素官能性であり、2、3、4又はそれ以上のROMP重合性基の間を架橋する、非反応性残基若しくは有機又は有機金属スペーサーに結合する。
【0034】
この組成物の部類の好ましい代表例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン誘導体、及び7−オキサ−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン誘導体、特に次式に従うものである。
【化1】


式中、n、A、B、R、R、R及びRは、互いに独立して、次の意味を有する。
A=−CH−又は−O−、
=−H、C〜C12アルキル、アリール、又はベンジル、好ましくはC〜C12アルキル、フェニル、又はベンジル、特にメチル、エチル、プロピルブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、フェニル、ベンジル、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−R、−CH−O−C(=O)−R、Rは−H、C〜C12アルキル、アリール、又はベンジル、好ましくはC〜C12アルキル、フェニル、又はベンジル、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、フェニル、ベンジルを表す、
B=−O−、−CH−、−CH−O−、−CH−O−(CH−CH−O)−(m=1,2,3,4又は5)、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=)O−(CHCH−O)−又は存在しない、
n=1〜6、好ましくは1〜4、特には1〜3の整数、
=O、N及びSi原子を含有できるC〜C50のn回置換有機又は金属有機残基、好ましくはC〜C12アルキレン、C〜C24アリーレン、好ましくはビスフェノール型若しくはトリシクロデカン型主鎖、ビフェニレン、フェニレン、若しくはナフチレン、分離性のシロキサン又はカルボシラン、n=2のとき、Rは、単結合であることもでき、
、R=単結合、又はC〜C20アルキレン、好ましくはC〜C12アルキレン、特にC〜Cアルキレン、化学結合、−O−若しくはR及びR4’は一緒に>CH−CH−CH<ラジカルを形成し、
並びに立体異性化合物及びこれらの物質のいずれかの混合物。
【0035】
ラジカルB、R、R、R及びRは、環内又は環外の位置に結合することができる。典型的に、上記の式に従う二環式化合物は、立体異性混合物の形態で、特にラセミ化合物として、存在する。
【0036】
したがって、好ましい化合物は、多くの場合、式の変数の少なくとも1つが上述のような好ましい定義を有する化合物である。変数のいくつか又は全てが好ましい定義に対応する化合物も好ましくなり得る。
【0037】
非常に特に好ましい二環式環系は、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネン)、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(7−オキサ−ノルボルネン)及びこれら由来の置換された誘導体、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸のエステル若しくはビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸のエステル(共にモノ−、ジ−、若しくは多官能性アルコールとのエステル)、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−オル若しくはビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−メタノール若しくはビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−(メチロキシ−(2−ヒドロキシ)エタンと、モノ−、ジ−及びマルチカルボン酸とのエステル、又は上述の二環式アルコールとモノ−若しくはジイソシアネートとの反応生成物である。
【0038】
好適な二環式環系のそれぞれの構造式は、以下に示される。式は、置換基R、R及びRと、−R−=−(CH−(式中、nは1に等しく、環はO及びNを含有してよい)との交換に由来する対応する位置異性体も表す。
【0039】
有用なモノマーは、以下のリストに与えられる:
モノマーリスト1
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


n=0、1、2、3、4、5又は6。
【0040】
先行する式において任意のノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル)基を持つ、対応する7−オキサ−ノルボルネン(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エニル)誘導体も同様に含まれる。簡略化のため、ノルボルネン部分での立体異性体は一般に、式に明示されていない。しかし、ノルボルネン環の内部又は外部のいずれかの全ての異性体及び両方の混合物が含まれることが理解されるべきである。二次元式は、
【化7】

【0041】
したがって、以下の異性体のいずれか又は考えられる他のもの及びこれら全ての混合物を表す。
【化8】

【0042】
それ故に、いかなる場合も、1つの鏡像異性のノルボルネニル異性体を示すことは、他の鏡像異性体又はそれらの混合物を意味する。
【化9】

【0043】
列記された二環構造は、例えば付加環化、特にディールスアルダー反応のような既知の環化反応を通じて容易に到達できる。これらは一般に安定であり、室温で及び従来の歯科用充填剤の存在下で感湿性ではない。
【0044】
好ましい実施形態においては、本発明に従う組成物は、ROMPにより重合可能な少なくとも2つの部分を含むモノマーからなる群から選択されるモノマー、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル、ノルボルネニル及びオキサ−ノルボルネニルからなる群から選択される少なくとも1つの部分を持つモノマー、少なくとも1つのSi原子を持つモノマー、一般式
B(−A)
(式中、Bは、モノマー、オリゴマー、又はポリマーの有機又はケイ素−有機構造要素であり、Aは、ROMPにより重合可能な少なくとも1つの官能基を有する構造要素であり、nは1〜約10,000、又は5〜約1,000、又は10〜約100である)に従うモノマーを含有できる。
【0045】
本発明の別の実施形態では、重合可能なマトリックス組成物は、1つ以上のオリゴマー又はプレポリマー構造、例えばROMP反応を起こして硬化物品を形成できる基で拘束された及び/若しくは末端保護されたポリエーテル、ポリエステル又はポリシロキサン又はコポリマー化合物(PDMS)を含む。
【0046】
他の有用なオリゴマー及びポリマーのモノマーを、以下のリストに記載する。
モノマーリスト2:
【化10】


式中、n=1〜約1,000、例えば2〜約100
【化11】


式中、n=1〜約1,000、例えば2〜約100、o/n=0.001〜1
【化12】


式中、n=1〜約1,000、例えば2〜約100、o/n=0.001〜1
【化13】


式中、n=1〜約1,000、例えば2〜約100、及びm+o=0〜約1,000、例えば、0〜約100
【化14】


式中、n=1〜約1,000、例えば、2〜約100、及びm+o=0〜約1,000、例えば、0〜約100
【化15】


式中、n=1〜約100、例えば2〜約60及びm/n=1〜約10、例えば1〜5
【化16】


式中、n=1〜約100、例えば2〜約60
【0047】
本発明の組成物に使用してもよい更に別のオリゴマー及び/又はポリマーの分類としては、シクロアルケニル基のようなメタセシス反応によって硬化可能なオレフィン基、例えばノルボルネニル又はノルボルネニルエチル基で、末端官能化又は末端保護されたシロキサン主鎖を有する3若しくは4官能オリゴマー、又はポリマーが挙げられる。このようなポリマーの1つの例は、ノルボルネニル(NBE)基で末端保護された4官能ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0048】
上記のオリゴマー及びポリマーの分類に加えて、樹脂系は、ROMP機構を介して重合してもよい他の任意の重合可能なシクロアルケニル官能化シロキサン系オリゴマー又はポリマーも含んでもよい。
【0049】
モノマーリスト1からのモノマーは、有益な結果を与えることができる。
【0050】
組成物が、ROMPにより重合可能な2つの部分を持ち、分子量が約180以上、特に約200以上、又は約250以上、又は約300以上少なくとも1つのモノマーを含有する場合も同様に、有利となり得る。分子量の上限は、特に制限されないが、組成物の取扱いがその成形性に関してまだ可能であり(組成物が固体でなく、成形するには粘稠すぎる)、硬化組成物の材料特性が所望の範囲内にある範囲であるべきである。
【0051】
開環メタセシス重合(ROMP)によって硬化可能なモノマーの量は、多くの場合、約10〜約90重量%の間で変動できる。ある場合には、約15〜約50、又は約20〜約40重量%の量で、良好な結果が得られる。
【0052】
また、本発明に従う組成物は、ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤も含有する。本発明の関連では、ホベイダ−グラブス型反応開始剤は、オルト−アルキル−エーテルがベンジリデン残基にあるルテニウムカルベン錯体と定義され、このエーテル部分は、ルテニウム中心原子に配位する。好ましいホベイダ−グラブス型反応開始剤化合物は、例えばCAS番号[301224−40−8]、[203714−71−1]で列記され、それらの置換された誘導体である。
【0053】
一般に、全てのホベイダ−グラブス型の反応開始剤を、本発明に従う組成物において使用することができる。したがって、ホベイダ−グラブスI型又はホベイダ−グラブスII型のいずれかの反応開始剤を使用することができる。また、2つ以上のホベイダ−グラブスI反応開始剤若しくはホベイダ−グラブスII反応開始剤の混合物を使用すること、又は1つ以上のホベイダ−グラブスI反応開始剤と本発明に従う1つ以上のホベイダ−グラブスII反応開始剤とを混合することも可能である。約60℃未満、好ましくは約55℃未満又は約50℃未満の組成物の硬化温度を可能にする反応開始剤又は反応開始剤の組み合わせを使用することが好ましくあり得る。硬化温度が約45℃未満、又は約40℃未満でさえある場合も、有利であることができる。本発明に従って使用される可能な反応開始剤は、下式に従う反応開始剤である。
【化17】


ここで、1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−(イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o−イソプロポキシビニルメチレン)ルテニウムは、本発明に従う組成物における反応開始剤として好ましくあり得る。
【0054】
ROMPを開始するためのホベイダ−グラブス型の反応開始剤は、総組成物の重量に対して、約5〜約10,000重量ppm、又は約50〜約6,000重量ppm、又は約70〜約3,000重量ppm、又は約100〜約1,000重量ppm、又は約200〜約600重量ppmの量で存在できる。本発明の組成物は、1つの反応開始剤又は2つ以上の反応開始剤の混合物を含むことができる。
【0055】
組成物が2つ以上の反応開始剤の混合物を含む場合、混合物は、種類Iのホベイダ−グラブス反応開始剤の群から選択される反応開始剤のみ、又は種類IIのホベイダ−グラブス反応開始剤からなる群から選択される反応開始剤のみからなることができる。
【0056】
しかし、組成物は、1つ以上のホベイダ−グラブス型Iの反応開始剤と、1つ以上のホベイダ−グラブス型IIの反応開始剤との混合物を含むことも可能である。組成物が、1つ、2つ又は3つの異なる反応開始剤分子、特に1つ又は2つの異なる反応開始剤分子を含むことが好ましくあり得る。
【0057】
好適なホベイダ−グラブス型の反応開始剤は、米国公開特許出願第2003/220512 A号(S.ブレチャート(Blechert))、PCT国際公開特許WO 2005/053843 A(ベーリンガー・インゲルハイム社(Boehringer Ingelheim GmbH))、PCT国際公開特許WO 200214376 A、(ホベイダ(Hoveyda)ら)、米国公開特許出願第2004/254320 A号(Kerr Corp.)、PCT国際公開特許WO 2004/035596 A(ベーリンガー・インゲルハイム社)又は独国特許出願公開第10 335 417 A号(アルト(Arlt))にも開示されており、これらの開示は、本発明に関する情報源として明示的に言及され、この開示は、本文章の開示の一部分であると見なされる。
【0058】
上述のモノマー及び反応開始剤(単数又は複数)に加えて、本発明に従う組成物は、リターダーも含む。一般に、本発明に従うリターダーは、存在する場合、基本的に同一の状況下で、リターダーを含まない組成物と比較して、開環メタセシス重合をもたらす少なくとも1つの反応の反応速度を低下する化合物として定義される。より狭く定義された定義においては、本発明に従うリターダーは、ROMPにより組成物を重合するとき、リターダーを含む組成物の硬化挙動を遅くする化合物である。また、リターダーが重合中に組成物のピーク反応温度、約60℃の値未満、特に約50℃の値未満を維持するのを助けることも、有利であることがわかった。
【0059】
また、重合の開始が粘度上昇の測定を通して検出され得るまで、測定される時間が、同一条件下で、リターダーなしの組成物と比較して遅れるように、リターダーが選択されることも望ましくあり得る。両組成物が硬化するまでの時間が基本的に同一であることが好ましくあり得る。
【0060】
本発明に従って使用することができるリターダーは、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5、4又はそれ未満の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される。この特有の構造要素を示す化合物は、好ましくはピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ポルフィン、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾリン、オキサゾリジン、ベンズチアゾール、1,2,3−及び1,2,4−トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール及びそれらの誘導体からなる群から選択される。
本発明の更なる実施形態においては、リターダーは、環を構成する5つ以下の原子又は7つ以上の原子を持つ環内に1、2、3又は4つのN原子を持つ複素環式アミンからなる群から選択される。
【0061】
本発明の更なる実施形態においては、リターダーは、ピロール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール及びトリアゾールからなる群から選択される。
【0062】
リターダーは通常、電荷が中性である、すなわち、リターダーは通常、イオン性質ではない。
【0063】
本発明に従う組成物が1種類以上のリターダーを含むことも、場合によっては、有利であることがわかった。したがって、本発明に従う組成物は、2つ以上の異なる種類のリターダー、例えば、2、3又は4つの異なる種類のリターダー分子を含むことができる。しかし、多くの場合、1種類のみのリターダーを使用するときに、功を奏することがわかった。
【0064】
本発明の別の実施形態においては、リターダーは、ルテニウムと錯体を形成できるように選択される。化合物がこうした錯体を形成可能であるかどうかは、例えば、NMR測定値により決定できる。
【0065】
本発明に従う組成物が2つ以上の異なる種類のリターダーを含む場合、たった1つのリターダーがルテニウムと錯体を形成可能であれば、そうしたリターダーが望ましければ、十分であり得る。
【0066】
上述の複素環式化合物をリターダー自体として使用することが可能である一方で、本発明に従う組成物が、好ましくはN位に約1〜約24、特に約8〜約18のC原子を持つ少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖脂肪族飽和置換基を有するリターダーを含むことも有利であり得る。しかし、他の環位置も可能である。したがって、本文書に記載のように2、3又は4置換基を有するリターダーもまた、包含される。
【0067】
それぞれの置換基として好適なラジカルは、例えば、カプロニル、カプリリル、カプリニル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、マルガリル、ステアリル、アラキル、ベヘニル又はリグノセリル、並びにそれらの分枝状異性体からなる群から選択できる。本発明の更なる実施形態においては、N−カプリニルイミダゾール、N−ラウリルイミダゾール、N−ミリスチルイミダゾール、又はN−パルミチニルイミダゾールの使用が好ましくあり得る。
【0068】
また、周囲条件、すなわち、約101.3kPa(1013ミリバール)の圧力において約60℃以上、特に約100℃以上、又は約150℃以上、又は約200℃以上の沸点を有するリターダーを使用することが、好ましくあり得る。
【0069】
一般に上記の条件を満たす全ての種類のリターダーを使用することができ、液体又は可溶性固体であるリターダーを使用することが有利であり得る。リターダーが可溶性固体であるならば、必須の構成要素の1つに可溶性であることにより、又は意図的に添加され得る溶媒に可溶性であることにより、リターダーが組成物に可溶性であるように、組成物を選択すべきである。
【0070】
本発明の更なる実施形態においては、ホベイダ−グラブス反応開始剤におけるリターダー又は2つ以上のリターダーの混合物と金属原子のモル量のモル比が、約10:1〜約1:15又は約5:1〜約1:6であるように、リターダーを選択できる。
【0071】
ホベイダ−グラブス反応開始剤におけるリターダー又は2つ以上のリターダーの混合物と金属原子のモル量のモル比に関しては、硬化挙動の測定により検知できる重合の開始が、約30〜約500s(秒)又は約50s〜約300s、特に約60s〜約240sの範囲内であるように、モル比を選択することが有利であり得る。
【0072】
ペーストの硬化挙動は、下記のようにウォリス−シャウバーグ(Wallace-Shawburg)クロメータを使用して確定できる。図1は、こうした装置により測定された本発明の組成物の実施例の硬化挙動を示している。
【0073】
重合開始と重合終了との間の時間が、約3分(分間)〜約7分、特に約4分〜約6分の範囲内であることが、更に功を奏することがわかった。
【0074】
本発明に従う組成物は、総組成物の重量を基準として、約25〜約60,000ppmの量で、リターダーを含有することができる。場合によっては、リターダーの量が、それぞれ総組成物の重量を基準として約100〜約30,000ppm、又は約200〜約25,000ppm、又は約300〜約6,000ppmであることが功を奏することがわかった。
【0075】
本発明の更なる実施形態においては、その重合状態の組成物は、約70℃よりも高い又は約90℃よりも高い又は約110℃よりも高いガラス転移温度を有する。
【0076】
本発明の更なる実施形態においては、組成物は、充填剤、安定剤、不透明度変性剤、柔軟剤、相溶剤、溶媒、レオロジー変性剤、着色顔料、又は繊維からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む。
【0077】
したがって、硬化される組成物は、充填剤又は2つ以上の充填剤の混合物、例えば、有機又は無機充填剤、好ましくは無機充填剤も含有できる。充填剤は、固体材料、例えば、SiOの全ての変態(例えば、石英、クリストバライト)、若しくはガラスのような粉砕された無機材料、又は沈殿した材料、又は有機若しくは無機繊維の「化学的セラミックス」のようなゾル−ゲル法によって得られる材料、フェルト又はビーズ、並びに高度に分散された燻蒸又は沈殿した充填剤(SiO、ZrO若しくは他の金属酸化物)、又は好ましくは硬化組成物の機械的特性を増強できるナノ形状の球形又はクラスター金属酸化物であることができる。使用される充填剤の寸法は、(これらに限定されるものではないが)数μmから、数nmまでの範囲であることが多い。
【0078】
好ましい粒子状充填剤は、例えば独国特許出願公開第40 29 230 A1号に記載のようなSiO、ZrO及び/又はTiOを含む混合オキシド、発熱性ケイ酸又は沈殿ケイ酸のような超微粒充填剤、平均粒子サイズが約0.01〜約5μmである石英、ガラスセラミック又はガラス粉末のようなマクロ又はミニ充填剤、並びに三フッ化イッテルビウムのようなX線不透明充填剤に基づいた非晶質物質であることができる。更に、ガラス繊維、ポリアミド又は炭素繊維を充填剤として使用できる。
【0079】
好ましい充填剤は、(a)二酸化ケイ素、及び約20モル%以下の屈折率が約1.45〜約1.58、平均1次粒子径が約10nm〜約10μmである周期系のI、II、III及びIV族の少なくとも1つの要素のオキシドを含む非晶質球状粒子と、(b)屈折率が約1.45〜約1.58、平均粒子サイズが約0.5〜約5μmである石英、ガラスセラミック若しくはガラス粉末、又はそれらの混合物と、の混合物である。
【0080】
本発明に従って硬化される組成物は、例えば、1種類のみの充填剤を含有できる。硬化される組成物は、2つ以上の異なる種類の充填剤を含有することも可能であり、好まれ得る。異なる種類の充填剤は、化学組成、形状、寸法、粒度分布、若しくは他の特徴、又は上記特徴の2つ以上の組み合わせが異なることができる。
【0081】
充填剤は、界面化合物によって修飾されることができる。界面化合物は、例えば、縮合によって、充填剤の表面に化学的に結合した物質であり、ROMPによって作られるポリマー網状組織に組み込むことができる。通常、これらは2つの異なる官能基を含む。1つの官能基は充填材の表面に化学的に結合することができ、第2の官能基は、通常はROMP反応を通じて、モノマーマトリックスと架橋することができる。好ましい物質は、一般式XSiR(4−a−b)で記載されるシランであり、式中、Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アシロキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、又は−NR”、好ましくはメトキシ若しくはエトキシであり、Rは、アルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルであり、R”は、水素、アルキル又はアリールであり、Rは、ROMPにより得られるポリマー網状組織に組み込むことが可能な不飽和の歪んだシクロ脂肪族基を含む有機基、好ましくはノルボルネニル、7−オキサ−ノルボルネニル、シクロブテニル、シクロペンテニル又はシクロオクテニルであり、aは1、2又は3であり、bは0、1又は2であり、(a+b<4)である。好ましい例は、
【化18】

【0082】
また界面化合物も、例えば、縮合によって充填剤の表面に化学的に連結するような界面化合物として、混合物中で使用することができ、界面化合物は、ROMPにより製造されるポリマー網状組織に組み込まれることができない。具体例としては、MeSi(OMe)又はCSi(OMe)が挙げられる。
【0083】
硬化される組成物は、約10〜約90重量%の量、好ましくは約40〜約85又は約60〜約80重量%の量で充填剤を含有できる。充填剤が、その寸法に関して異なる化合物、例えば構造充填剤及びミクロ充填剤を含有すると好ましくなることができる。ミクロ充填剤の量は0〜約50重量%であることができる。
【0084】
本発明に従う組成物の任意の部分である安定剤は、一般に、本発明に従う組成物に悪影響を与えない全ての安定剤であることができる。好適な安定剤は、リン酸(亜リン酸塩)若しくはアルキルあるいはアリールホスホネートの有機エステル、又はマーティン(Martin)デクスター(Dexter)、リチャード(Richard)W.トーマス(Thomas)及びロスウェル(Roswell)E.キング(King)III、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)によるポリマー科学及び技術著作権(Encyclopedia of Polymer Science and Technology Copyright)(著作権)2002年、5巻、164〜183頁にて述べられたものであることができる。
【0085】
本発明に従って硬化される組成物は、1つ以上の不透明度変性剤を更に含有することができる。マトリックス内で光を錯乱する高い能力を有する不透明度変性物質が使用でき、好ましくは製剤の残りと十分に異なる屈性率を示す物質、例えばTiO、Al、YF又はYbFである。
【0086】
使用することができる好適な溶媒として、水、エタノール、アセトン若しくはDMSOのようなアルコール、又は2つ以上のそれらの溶媒の混合物が挙げられる。イオン性液体は、通常包含されない。
【0087】
また、組成物は、柔軟剤を含有することもできる。好適な柔軟剤は、炭化水素又は酸素で置換され得るモノマー、オリゴマー及びポリマーの性質の脂肪族又は分枝状アルカン、例えばポリTHF、PEG、又はカルボニル又はエステル、特に以下の構造であることができる。
【化19】


n=2〜30又は5〜20、及びm=2〜30又は5〜20
【化20】


n=2〜60又は5〜50又は10〜40
【化21】


n=2〜60又は5〜50又は10〜40
【化22】

【0088】
本発明に従う組成物は、
約5〜約85重量%の充填剤と、
約10〜約85重量%の1つ以上のROMPにより重合可能なモノマーと、
約0〜約80重量%の1つ以上の溶媒と、
ROMPを開始するための約50〜約6,000重量ppmの少なくとも1つのホベイダ−グラブス型の反応開始剤と、
約10重量ppm〜約1重量%の少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーと、
約0〜約70重量%の1つ以上の添加剤と、を(ただし、組成物の構成要素の量が合計で100重量%である)含むことができる。
【0089】
特定の本発明に従う組成物は、以下の特徴のうち1つ以上を有することができる。
硬化開始が、少なくとも約0.5分、又は少なくとも約1分、又は少なくとも約1.5分である、
硬化生成物の曲げ強度が、少なくとも約50MPa、又は少なくとも約60MPa、又は少なくとも約70MPaである(DIN EN ISO 4049に従って測定)、
硬化生成物のヤング弾性率が、少なくとも約900MPa、又は少なくとも約1200MPa、又は少なくとも約1500MPa、又は少なくとも約1700MPaである(DIN EN ISO 4049に従って測定)、
組成物の硬化温度が、約60℃未満である。
【0090】
ROMPにより硬化可能な組成物を調製できることが、本発明に従って可能であることが示されてきており、これは状況に応じた重合挙動をいまだ許容しながら、歯様色を示すことができる。
【0091】
歯科分野において広く使用される着色分類系は、ビタ(Vita)(商標)デンタルシェードガイドである。歯の色の決定のより詳しい記載は、Quintessenz Zahntechnik、30巻、7号、726〜740頁(2004年)においてアンドレス・バルザー(Andres Baltzer)及びバニク・カーフマン−ジノイアン(Vanik Kaufmann-Jinoian)によって与えられる。
【0092】
硬化された本発明の組成物−顔料又は他の着色剤を含有しない−は、歯様色の外観を有し得ることが見出されてきた。測定したLb値に基づいて、組成物の色は、前述のビタ(Vita)(商標)色系に整列させることができる。これは、例えば本発明の組成物のL値が特異的な範囲内であるならば、可能である。
【0093】
「L」に有用な値としては、約55又は60又は65以上の値が挙げられる。「a」に有用な値としては、約10又は5又は0以下の値が挙げられる。「b」に有用な値としては、約32又は28又は25以下の値が挙げられる。不透明度に有用な値としては、約98又は96又は95以下の値が挙げられる。
【0094】
これらの範囲内のL値を有する組成物は、例えばカーボンブラック又はTiOのような有機着色剤又は顔料を添加することにより、ビタ(Vita)(商標)色系の歯の色に調整することができる。
【0095】
本発明に従う組成物は、ベース構成要素及び触媒構成要素を含む二構成要素系として提供できる。ベース構成要素は、1つ以上のROMPにより重合可能なモノマーを少なくとも含み、触媒構成要素は、ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤を少なくとも含む。リターダーは、ベース構成要素、又は触媒構成要素、又は両方に存在する。
【0096】
一般に、本発明に従う二構成要素系は、ベース構成要素と触媒構成要素の間で任意の分布にて、必要な構成要素を含むことができるが、好ましい実施形態においては、分布は、上述の基準が満たされ得るようなものである。
【0097】
しかし、本発明に従う組成物において、ベース構成要素が、
約5〜約85又は約10〜約80重量%の1つ以上の充填剤と、
約10〜約90又は約15〜約80重量%の1つ以上のROMPにより重合可能なモノマーと、を少なくとも含み、
触媒構成要素が、
約10〜約80又は約15〜約70重量%の1つ以上の充填剤と、
約10〜約80又は約15〜約70重量%の1つ以上の溶媒と、
ROMPを開始するための約100〜約2,000重量ppmの少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤と、を少なくとも含むことが好ましくあり得て、
リターダーは、ベース構成要素、又は触媒構成要素、又は両方に存在する(ただし、ベース又は触媒ペーストのいずれかに関して、組成物の構成要素の量は合計で100重量%である)。
【0098】
また本発明は、ベース構成要素及び触媒構成要素を混合することにより得られる組成物にも関し、ベース構成要素、又は触媒構成要素、又は両方は、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーを含有する。
【0099】
ベース構成要素及び触媒構成要素は、一般に、所望の任意の比で混合することができる。触媒構成要素及びベース構成要素が、約1:20〜約1:1、又は約1:10〜約1:2、又は1:5〜約1:4の重量比で混合されるならば、実際的な理由に起因して、例えば、混合組成物における構成要素の分布の理由に起因して、又は機械的混合装置の使用に起因して、好ましくあり得る。
【0100】
また本発明は、開環メタセシス重合(ROMP)により重合可能な組成物の調製方法にも関し、
a)少なくとも1つのROMPにより重合可能なモノマーと、
b)ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤と、
c)少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーと、
が混合される。
【0101】
本発明に従う方法の更なる実施形態においては、ROMPにより重合可能な少なくとも1つのモノマーと、ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤と、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーとが、混合前にベース構成要素及び触媒構成要素に存在し、ベース構成要素は、ROMPにより重合可能な1つ以上のモノマーを少なくとも含み、触媒構成要素は、ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤を少なくとも含み、リターダーは、ベース構成要素、又は触媒構成要素、又は両方に存在する。
【0102】
本発明に従う方法においては、ベース構成要素は、
約5〜約85又は約10〜約80重量%の1つ以上の充填剤と、
約10〜約90又は約15〜約80重量%の1つ以上のROMPにより重合可能なモノマーと、を少なくとも含むことができ、
触媒構成要素は、
約10〜約80又は約15〜約70重量%の1つ以上の充填剤と、
約10〜約80又は約15〜約70重量%の1つ以上の溶媒と、
ROMPを開始するための約100〜約2,000重量ppmの少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤と、
を少なくとも含むことができ、リターダーは、ベース構成要素、又は触媒構成要素のいずれか、又は両方に存在する(ただし、ベース又は触媒ペーストのいずれかに関して、組成物の構成要素の量は合計で100重量%である)。
【0103】
更に本発明は、本発明に従う組成物を重合することにより、又は本発明に従う方法に従って得られる組成物を重合することにより得られる歯科材料に関する。
【0104】
また本発明は、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される物質又は2つ以上のこうした物質の混合物の、ROMPにおけるリターダーとしての使用にも関する。
【0105】
また本発明は、一時的な又は永続的なインレイ、オンレイ、ベニアシェル、クラウン、又はブリッジ、又は印象材充填材を調製するために、本発明に従う組成物を重合することにより、又は本発明に従う方法に従って得られる組成物を重合することにより、得られる物質の使用にも関する。
【0106】
特に歯科用途には、使用されるリターダーは、濃色及び/又は悪臭を持つ組成物をもたらすべきではない。できる限り、組成物は、毒物学的に無害であるべきである(例えば、ネガティブ・エイムス・テスト(negative Ames test)を参照)。
【0107】
特定の本発明の実施形態に関して、硬化性組成物は、ピリジン又はピリジン構造含有分子を含有しない。典型的に、本発明の特定の実施形態に関して、テトラアリルシラン(TAS)又はテトラアリルオキシシラン(TAOS)の存在への絶対的な必要性もない。
【0108】
したがって、本発明の特定の実施形態に関して、硬化性組成物は、本質的にピリジン又はピリジン構造含有分子及び/又はTAS及び/又はTAOSが含まれないことがあり得る。
【0109】
本開示は、実施例によって更に実証され、その内容は、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0110】
測定

値は、Lab走査(ハンターラボ(Hunter Lab)、米国)を使用して決定された。測定は、白色又は黒色の背景のいずれかに対して、0°/45°測定角及び10°決定角を使用して行われた。
【0111】
曲げ強度
曲げ強度及びヤング弾性率は、DIN EN ISO 4049に従って、ズウィック・ユニバーサル試験機(Zwick Universal Testing Machine)(ズウィック社(Zwick Company)、ウルム(Ulm)、ドイツ)を使用して決定された。
【0112】
硬化挙動
実施例における硬化反応の開始時間(t)を測定するために使用されるクロメータは、ウォリス−シューベルグ(Wallace-Shawburg)クロメータ(英国、クロイドン(Croydon))であった。
【0113】
クロメータは、ゴム及び他の架橋ポリマーの硬化時間を測定する。また、これは、樹脂、セメント、及び歯科印象材及び充填材の硬化時間も測定できる。在庫製剤への初期研究のために、また品質管理のための硬化の迅速評価のために、クロメータを使用することができる。
【0114】
用語「硬化」又は「加硫」は、通常、網状分子構造における変化を指す。クロメータは、硬化の開始及び硬化の終了までの時間を測定する。クロメータ曲線の形態は、「遅延期間」及び硬化速度を見ることができる硬化特徴の図を提供する。
【0115】
硬化挙動の測定のために、1gのベースペースト及び0.1gの触媒ペーストを混合し、1分以内にクロメータの測定領域に設置した。クロメータランタイムは、混合の開始と共に始まる。測定は、周囲条件(23℃)にて行われた。測定の精度は約+/−0.2分である。
【0116】
略語:
使用される個々の構成要素の化学構造及び名称:
【化23】


クオーツ、シル.(Quarz,sil.):D50が<1μmに粉砕され、5重量%の
【化24】


が存在し、80℃で2時間熱処理された石英
【化25】

【0117】
以下の実施例のために、所与の構成要素を均質のペーストに混合することにより、ベース及び触媒ペーストを調合した。周囲条件(室温、23℃)にて約1時間の保存後、ベース及び触媒ペーストを使用した。
【0118】
ベース及び触媒ペーストを、10:1(ベース:触媒)の比で混合し、物理的パラメーター硬化挙動、曲げ強度、ヤング弾性率及びLb値を決定した。測定値は、以下の表1及び2に示される。
【0119】
ペーストの組成物は、以下に示される通りである。
【0120】
ペースト1−リターダーなし(ペースト1):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz, sil.)、2.250gのT−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセテート、0.120gのHDK H−2000
【0121】
ペースト1−リターダーあり(ペースト1R):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz, sil.)、2.250gのT−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)、0.001gのN−ラウリルイミダゾール(0.01mmolに相当)
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセテート、0.120gのHDK H−2000
【0122】
ペースト1−TASあり(ペースト1TAS):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz, sil.)、2.250gのT−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)、0.002gのテトラアリルシラン(TAS)(0.01mmolに相当)
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセテート、0.120gのHDK H−2000
【0123】
ペースト2−リターダーなし(ペースト2):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz,sil.)、2.250gのZ−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセテート、0.120gのHDK H−2000
【0124】
ペースト2−リターダーあり(ペースト2R):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz, sil.)、2.250gのZ−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)、0.001gのN−ラウリルイミダゾール
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセテート、0.120gのHDK H−2000
【0125】
ペースト3−リターダーなし(ペースト3):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz, sil.)、2.250gのZ−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセテート、0.120gのHDK H−2000
【0126】
ペースト3−リターダーあり(ペースト3R):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz, sil.)、2.250gのZ−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)、0.016gのノルボルネン−2−イル−メチル−イミダゾール
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセテート、0.120gのHDK H−2000
【0127】
ペースト4−リターダーなし(ペースト4):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz, sil.)、2.250gのZ−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセテート、0.120gのHDK H−2000
【0128】
ペースト4−非遅延アミンあり(ペースト4R):
ベース−ペースト:5.000gのクオーツ、シル.(Quartz, sil.)、2.250gのZ−ノルボルネン、2.250gのベンゾエート、0.500gのHDK H−2000(ワッカー社(Wacker Company)、ドイツ)、0.009gのトリエチルアミン
触媒−ペースト:0.003gのホベイダ−グラブス2、0.880gのZ−アセタート、0.120gのHDK H−2000
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】

【0129】
実施例4の組成物は、tの測定値が測定の精度内であり、関連のある遅延効果を示さない。
【0130】
実施例1に従う組成物は、既に歯様色外観を有する。ビタ(Vita)(商標)色調系に従う特異的な色への更なる調整は、有機着色剤又は顔料の添加により行うことができる。
【0131】
これは、下表5に示される値で更に説明できる。例として、黒背景に対して測定されるビタ(Vita)(商標)色調系の色調A3についてのLb値は、表5に示される。
【表5】

【0132】
測定されたLb値が特定の範囲内であるならば、特異的な色調への調整は、通常可能である。例えば、ペーストのa及びb値が、A3色調について測定されたa及びb値未満であるという事実から鑑みて、前述の製剤(ペースト1R及び2R)をA3色調に調整することができる。新しい製剤のL値が、ビタ(Vita)(商標)色調系の特異的な色調の1つよりも高い場合、同様に行うことができる。この場合、L値を低くするカーボンブラックのような顔料を添加できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開環メタセシス重合(ROMP)により重合可能な組成物あって、
a)ROMPにより重合可能な少なくとも1つのモノマーと、
b)ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型の反応開始剤と、
c)少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する4つ以下の他の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーとを含む、組成物。
【請求項2】
前記リターダーが、Ruと錯体を形成できる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リターダーが、5つ以下の原子を持つ環内に1、2、3又は4つのN原子を持つ複素環式アミンからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記リターダーが、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ポルフィン、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾリン、オキサゾリジン、ベンゾチアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、アミノトリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール及びそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記リターダーが、好ましくはN位に、1〜24個のC原子を持つ少なくとも1つの直鎖又は分枝鎖脂肪族飽和置換基を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ホベイダ−グラブス反応開始剤中の、前記リターダー又は2つ以上のリターダーの混合物と金属原子とのモル比が、約10:1〜約1:15である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記リターダーが、組成物の重量を基準として約10〜約30,000ppmの量で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ROMPにより重合可能なモノマーが、環状構造中に少なくとも1つのC−C二重結合を備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ROMPにより重合可能な少なくとも2つの部分を含むモノマー、
シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル、ノルボルネニル及びオキサ−ノルボルネニルからなる群から選択される少なくとも1つの部分を持つモノマー、
少なくとも1つのSi原子を持つモノマー、
一般式
B(−A)
(式中、Bは、モノマー、オリゴマー、又はポリマーの有機又はケイ素−有機構造要素であり、AはROMPにより重合可能な少なくとも1つの官能基を有する構造要素であり、nは1〜約10000である)に従うモノマー、
からなる群から選択されるモノマーを含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記硬化組成物が、約60℃よりも高いガラス転移温度を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、充填剤、安定剤、不透明度変性剤、柔軟剤、相溶剤、溶媒、レオロジー変性剤、着色顔料、又は繊維からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、
約5〜約85重量%の充填剤と、
約10〜約85重量%のROMPにより重合可能な1つ以上のモノマーと、
約0〜約80重量%の1つ以上の溶媒と、
約50〜約6,000重量ppmのROMPを開始するためのホベイダ−グラブス型の少なくとも1つの反応開始剤と、
約10重量ppm〜約1重量%の1〜28個のC原子を持つ一級直鎖若しくは分枝鎖脂肪族アミン、5〜28個のC原子を持つ一級シクロ脂肪族若しくは一級芳香族アミン、又は少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーと、
約0〜約70重量%の1つ以上の添加剤と、
を含む(ただし、組成物の構成要素の量は合計で100重量%である)、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
以下の特徴:
少なくとも約30秒の硬化開始時間と、
少なくとも約50MPaの硬化組成物の曲げ強度と、
少なくとも約900MPaの硬化組成物のヤング弾性率と、
約60℃以下の組成物の硬化温度と、
のうち1つ以上を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物のL値が、
「L」:約55以上、
「a」:約10以下、
「b」:約32以下、
不透明度:98未満、
の要件のうち少なくとも1つを満たす、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ベース構成要素及び触媒構成要素として存在し、
ベース構成要素が、ROMPにより重合可能な1つ以上のモノマーを少なくとも含み、
触媒構成要素が、ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型の反応開始剤を少なくとも含み、
前記リターダーが、ベース構成要素又は触媒構成要素又はそれらの両方に存在する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ベース構成要素が、
約10〜約90重量%の1つ以上の充填剤と、
約10〜約90重量%のROMPにより重合可能な1つ以上のモノマーと、を少なくとも含み、
前記触媒構成要素が、
約10〜約80重量%の1つ以上の充填剤と、
約20〜約80重量%の1つ以上の溶媒と、
ROMPを開始するための約300〜約3000重量ppmの少なくとも1つのホベイダ−グラブス型の反応開始剤と、
を少なくとも含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ベース構成要素と請求項15又は請求項16に記載の触媒構成要素とを混合することにより得られる組成物であって、該ベース構成要素又は該触媒構成要素又はそれらの両方が、少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーを含有する組成物。
【請求項18】
前記ベース構成要素及び前記触媒構成要素が約1:30〜約2:1の重量比で混合される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
開環メタセシス重合(ROMP)により重合可能な組成物の調製方法であって、
a)ROMPにより重合可能な少なくとも1つのモノマーと、
b)ROMPを開始するための少なくとも1つのホベイダ−グラブス型の反応開始剤と、
c)少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される少なくとも1つのリターダーと、
が混合される、調製方法。
【請求項20】
前記ベース構成要素が、
約5〜約85重量%の1つ以上の充填剤と、
約10〜約90重量%のROMPにより重合可能な1つ以上のモノマーと、を少なくとも含み、
前記触媒が、
約10〜約80重量%の1つ以上の充填剤と、
約10〜約80重量%の1つ以上の溶媒と、
ROMPを開始するための約100〜約2,000重量ppmの少なくとも1つのホベイダ−グラブス型反応開始剤と、を少なくとも含み、
前記リターダーが、前記ベース構成要素、又は前記触媒構成要素、又はそれらの両方のうちのいずれかに存在する(ただし、ベース又は触媒ペーストのいずれかに関して、組成物の構成要素の量は合計で100重量%である)、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜18に記載の組成物を重合することにより、又は請求項19〜20に記載の方法によって得られる組成物を重合することにより得られる歯科材料。
【請求項22】
少なくとも1つのN原子及び少なくとも1つのN原子を持つ環を構成する5つ以下の原子を持つ環を有する複素環式アミンからなる群から選択される物質、又は2つ以上のこうした物質の混合物をROMPにおけるリターダーとして使用する方法。
【請求項23】
請求項1〜18に記載の組成物を重合することにより、又は請求項19〜20に記載の方法によって得られる組成物を重合することにより得られる材料を、一時的な又は永続的なインレイ、オンレイ、ベニアシェル、クラウン、又はブリッジ、印象材又は充填材の調製のために使用する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−514678(P2010−514678A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543123(P2009−543123)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/087841
【国際公開番号】WO2008/077001
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】