説明

低温安定溶液

【課題】凍結温度未満での結晶化もしくは凍結に対して安定な4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン)(DCOIT)の液体濃厚物を提供する。
【解決手段】a.4〜40重量パーセントの4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン);およびb.60〜96重量パーセントの安息香酸エステル可塑剤;の均質な溶液を含む液体濃厚物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結温度未満での結晶化もしくは凍結に対して安定な4,5−ジクロロ−2−(n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン)(DCOIT)の液体濃厚物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂組成物(すなわちプラスチック)、コーキング材、シーラントおよび他の物品を微生物分解から保護するために、殺生物剤をこれら物品に添加することが周知である。処理の理由のせいで、殺生物剤を濃厚物、例えば、液体濃厚物として提供することが知られている。多くの殺生物剤が示唆されてきたが、イソチアゾロン、特にDCOITはこのような用途、特に物品の屋外耐候性に関連する用途において期待されてきた。しかし、室温では、DCOITをはじめとする多くのイソチアゾロンは固体形態であり、よって取り扱うのが困難である。これらイソチアゾロンは、液体キャリア、特に、最終使用組成物において通常の可塑化機能を果たす可塑剤に溶解される場合に、より容易に取り扱われる。しかし、室温(すなわち、20〜25℃)で安定であるとしても、イソチアゾロン、特にDCOITの可塑剤溶液は、冬季気候での輸送および貯蔵の際に遭遇しうるであろうように、その溶液の温度が冷たくなる場合に凍結することが知られている。凍結した濃厚物を受け取る可能性がある製造者がその濃厚物を融解させなければならないだけでなく、そのイソチアゾロンが完全に再溶解させられ、かつその濃厚物が均質であることを確実にする工程を採用しなければならないので、このことは非常に望ましくない。
【0003】
欧州特許出願公開第0910953号はこの凍結の問題を論じ、かつイソチアゾロン化合物を4〜25重量パーセント、イソチアゾロン化合物が可溶性である1種以上の可塑剤を25〜88重量パーセント、並びにベンジルアルコールを8〜50重量パーセント含む溶液濃厚物が凍結温度未満の条件下での結晶化および/または凍結に対して安定であろうことを開示する。好ましくはこの濃厚物は少なくとも10重量パーセントのDCOITおよび少なくとも15重量パーセントのベンジルアルコールを含み、特定の状況下では好ましくは少なくとも15重量パーセントのDCOITおよび少なくとも40重量パーセントのベンジルアルコールを含む。DCOITは、特に屋外条件において、他のイソチアゾロン化合物と比較して向上した安定性(すなわち、耐候性)を示すので、DCOITは好ましい化合物である。米国特許第5,554,635号は、少なくとも4重量パーセントの補助殺生物剤であるトリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル)の添加による、0℃未満の温度での結晶化もしくは凍結に対して安定なイソチアゾロンおよび可塑剤の濃厚物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0910953号明細書
【特許文献2】米国特許第5,554,635号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は特定の限定された種類の可塑剤との組み合わせにおいて、イソチアゾロン、好ましくはDCOITが安定性のために補助溶媒、ベンジルアルコールもしくはトリクロサンの存在を必要としないことを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、よって、4〜40重量パーセントのイソチアゾロンおよび60〜96重量パーセントの安息香酸エステル可塑剤(単一種もしくは複数種の安息香酸エステル)の均質な溶液を含む液体濃厚物であって、この濃厚物は補助溶媒を実質的に含まない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の目的のためには、補助溶媒はイソチアゾロンおよび安息香酸エステル可塑剤(これに限定されないが、ベンジルアルコールおよびモノアルキルフェノールを含む)を溶解することができ、および/またはイソチアゾロンおよび安息香酸エステル可塑剤(これに限定されないが、ベンジルアルコールおよびモノアルキルフェノールを含む)中に可溶性である有機溶媒を意味する。用語「実質的に含まない」とは4重量パーセント未満、好ましくは3重量パーセント未満、好ましくは2重量パーセント未満、好ましくは1重量パーセント未満、好ましくは0重量パーセントを意味する。用語「凍結での結晶化、もしくは凍結未満の温度での凍結に対して安定」とは、0℃以下の温度で組成物が透明なままであり、または組成物が0℃以下の温度で濁る場合には、その組成物が室温に加熱されたときに透明になることを意味する。
【0008】
本発明において有用なイソチアゾロンには、これに限定されないが、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、4−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、およびDCOIT、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましいイソチアゾロンはn−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、およびDCOITであり、より好ましいのはDCOITである。組成物は好ましくは30重量パーセント以下のイソチアゾロン、より好ましくは20重量パーセント以下のイソチアゾロン、より好ましくは15重量パーセント以下のイソチアゾロン、好ましくは12重量パーセント以下のイソチアゾロンを含む。組成物は好ましくは5重量パーセント以上のイソチアゾロン、より好ましくは8重量パーセント以上のイソチアゾロンを含む。
【0009】
本発明の液体濃厚物は実質的に補助溶媒を含まない。
本発明の液体濃厚物は実質的にベンジルアルコールを含まない。
本発明の液体濃厚物は実質的にトリクロサンを含まない。
【0010】
好ましい安息香酸エステルは安息香酸(C−C22)アルキル、安息香酸グリコール、およびこれらの混合物である。最も好ましいのは安息香酸グリコールおよびその混合物である。これらの安息香酸エステルの多くがイーストマンケミカルカンパニーから商品名「ベンゾフレックス(Benzoflex(商標))」の下で入手可能である。
【実施例】
【0011】
表1は実施例において使用された安息香酸エステル可塑剤の組成を示す。それぞれの試験においては、ビーカー内で12.5gのDCOITが112.5gの安息香酸エステル可塑剤に添加され、54℃に加熱され、そして全てのDCOITが溶解したと思われた後で1〜2分間保持された。この組成物はこの加熱プロセスの際ずっと混合されていた。各組成物は−10℃および60℃で30日間の溶液安定性試験のために透明ガラスバイアルに移された。表2はこの溶液の30日間の貯蔵後の観察結果を示す。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
対応するベンゾフレックス(商標)材料と同じジベンゾアートを含むジベンゾアートがシグマアルドリッチから購入された。安息香酸エステル中の10%DCOITの溶液は、三角フラスコ内で、攪拌下室温で固体DCOITを安息香酸エステルに添加し、そして50℃に暖めることにより製造された。得られたわずかに黄色の溶液はスナップキャップフラスコに移され、所定の温度で貯蔵された。DIN ISO935の試験方法に従って低温環境(曇り点)での結晶形成が測定された。この溶液は、高温(55℃)安定性についても評価された。表3は試験された溶液についての安定性観察結果を示す。
【0015】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.4〜40重量パーセントのイソチアゾロン;および
b.60〜96重量パーセントの安息香酸エステル可塑剤;
の均質な溶液を含む液体濃厚物であって、
補助溶媒およびトリクロサンを実質的に含まない液体濃厚物。
【請求項2】
イソチアゾロンが4,5−ジクロロ−2(n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン)もしくはn−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンである請求項1に記載の液体濃厚物。
【請求項3】
イソチアゾロンがDCOITである請求項1に記載の液体濃厚物。
【請求項4】
30重量パーセント以下のイソチアゾロンを含む請求項1に記載の液体濃厚物。
【請求項5】
15重量パーセント以下のイソチアゾロンを含む請求項1に記載の液体濃厚物。
【請求項6】
8重量パーセントより多くのイソチアゾロンを含む請求項1に記載の液体濃厚物。
【請求項7】
安息香酸エステル可塑剤が安息香酸(C−C22)アルキル、安息香酸グリコールもしくはこれらの混合物である請求項1に記載の液体濃厚物。
【請求項8】
安息香酸エステル可塑剤が安息香酸グリコールの混合物である請求項1に記載の液体濃厚物。
【請求項9】
イソチアゾロンがイソチアゾロンの混合物である請求項1に記載の液体濃厚物。
【請求項10】
組成物が、凍結温度以下で結晶化もしくは凍結に対して安定である請求項1に記載の液体濃厚物。

【公開番号】特開2012−140409(P2012−140409A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−269507(P2011−269507)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】