説明

低温容器

本発明は、媒体(124)、とりわけ生化学製品および/または医療品を、保管および/または輸送するための超低温容器(110)に関する。この超低温容器(110)は、少なくとも1つの可とう性フィルムバッグ(120)を有する少なくとも1つの第1の容器(118)を含む。この可とう性フィルムバッグ(120)は媒体(124)を受容するように設計される。超低温容器(110)は、少なくとも部分的に第1の容器(118)を囲み、好ましくは少なくとも部分的に可とう性である少なくとも1つの第2の容器(132)をさらに含む。この第2の容器(132)は第1の容器(118)の挿入のために少なくとも1つの開口部(133)を有する。第2の容器(132)はさらに、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的に可とう性である外枠(134)を有する。この第2の容器(132)はさらに、外枠(134)と可とう性フィルムバッグ(120)との間に設けられ、少なくとも1つの流体の熱交換媒体を受容する少なくとも1つの熱交換空間(138)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ媒体を保管および/または輸送するのに適した低温容器に関する。この低温容器は、とりわけ生化学製品および/または医薬製品を保管および/または輸送するのに適している。本発明はさらに、本発明の低温容器の中で使用する第2の容器、および媒体を保管するための前処理装置に関する。また、本発明はさらに、媒体、とりわけ上記と同様に、生化学製品を保管および/または輸送する方法にも関する。これらの装置および方法は、通常、特に室温で液状であって、保管および/または輸送の際に冷凍される医薬品および/または診断薬の製造および/または供給において、特に用いられる。
【背景技術】
【0002】
媒体、とりわけ診断および/または薬物治療用の作用物質を含む媒体、すなわち、とりわけ医薬製品および/または薬剤の製造および/または供給において、媒体の適切な取り扱いは、技術的課題である。多くの場合、例えば生物工学材料の薬剤の製造において、媒体は、保管および/または輸送の際には冷凍される。クライオ容器(cryovessel)とも称される低温容器は、通常、冷凍およびその後の解凍に用いられる。これらの低温容器は、通常、ステンレス鋼製の硬質な容器であって、二重ケーシングを有する。容器中の製品は、シリコーンオイルの回路を介して冷凍および/または解凍される。しかしながら、とりわけ生物工学材料に用いられる、この種の低温容器の滅菌に関する要求は非常に高い。
【0003】
この分野における公知技術の決定的な欠点は、容器が使用された後に洗浄および滅菌が必要であるということである。これは非常に時間を要すると共に、費用がかかる。また、シリコーンオイルがシリコーンオイルの回路に供給される結合部でシリコーンオイルが漏れる恐れもある。さらには、広い保管面が必要とされるので、高額な設備投資を伴う。変化する要求を満たすために必要とされるフレキシビリティーは通常はない。
【0004】
これらの滅菌に関する要求は、通常、低温容器が循環して使用されることを必要とし、これは輸送および保管の点で莫大な経費を伴うことを余儀なくする。とりわけ、相当量の重量(場合によっては数百キログラム)を有し、場合によっては数立方メートルもの大きな容積を有する低温容器は、保管されたまま維持され、輸送されなければならない。
【0005】
これらの再利用可能な低温容器に加えて、先行技術において、媒体が使い捨てバッグに導入され、この使い捨てバッグにおいて冷凍されるような装置も公知である。例えば、特許文献1および特許文献2には、生物薬剤の材料を冷凍、保管および解凍する容器が開示され、これらの容器は支持フレームに収容されてもよい。これらのフィルム容器において、生物薬剤の材料は熱伝達面に対する接触伝熱によって冷凍される。
【0006】
しかしながら、上記した先行技術の欠点は、この種の容器は、相分離を伴わずに生物薬剤の材料を迅速に冷凍できるように、比較的薄い壁を用いてデザインされなければならないということである。一方で、薄い壁を有するこの種の容器は、機械的損傷に極めて敏感に反応するので、場合によっては、容器を無菌状態で損傷なく安全に輸送することを保証できない。さらに、複雑な輸送および保管装置は、保管されていて、また輸送される物質が冷凍状態にあることを保証する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7104074号明細書
【特許文献2】欧州特許第1441585号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、公知の装置および方法の欠点を回避した、媒体を保管および/または輸送するための装置および方法を提供することである。とりわけ、これらの装置および方法は、媒体の保管および/または輸送ロジスティックスを簡素化しつつも、通常生物工学材料の薬剤製造において課される滅菌および安全性の要件を満たすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、独立請求項の特徴を有する装置および方法によって達成される。個々または組合せて実現され得る本発明の有利な変更形態は、従属請求項に規定される。装置が提案され、とりわけ記載された装置を用いて実行され得る方法も提案されている。ゆえに、方法について実行できる実施形態に関しては、装置について記載された実施形態を参照でき、逆もまた同様である。
【0010】
本発明のコンセプトは、媒体が、好適には処理の後に完全に使い捨てできる熱交換器において、冷凍および/または解凍されることである。また、シリコーンオイルなどの公知の熱交換媒体を、例えば伝熱媒体としての液体窒素など、より安価な熱交換媒体と好適に取り替えることも本発明のコンセプトである。
【0011】
それゆえ、低温容器は、媒体、とりわけ生化学的製品および/または医薬製品を保管および/または輸送するために提案される。上述したように、媒体はとりわけ、室温で液体であってもよいが、冷凍された状態、すなわち固体の状態で保管および/または輸送され得る。とりわけ媒体は、医学診断および/または薬物治療の上述した分野のものでもよい。とりわけ、清潔性および/または滅菌性の点で厳しい要件にかなう必要のある媒体であってもよい。用いられる媒体は、好適には生物工学的な物質および/またはこのような生物工学的な物質を含む培養物の形である。しかしながら、原理上は、他の種類の媒体、特に室温で流体である媒体を用いることも可能であって、例えば液体および/または場合によっては気体の媒体などである。
【0012】
本発明に照らして、“容器”という語が繰り返し用いられる。ゆえにこの語はすでに記載した、例えば“低温容器”という語の一部である。さらに、後に詳述するが、低温容器は少なくとも1つの第1の容器と、少なくとも1つの第2の容器とを含み、すなわち特定の形状の容器を含む。本発明に照らして、容器とは通常、当業者に即座に理解され、また日常使用する用語と同様に、内側に少なくとも1つの内部またはキャビティー(以下の文章では、両語とも基本的には同義語として理解される)を有する装置として理解される。内部は特に、内部に受容される容器中の任意の内容物が、完全にまたは部分的に周囲環境から分離されることを確実にするという目的を果たす。このため容器は、とりわけ、少なくとも1つの容器壁、好ましくは実質的に密封された容器壁を有していてもよく、この壁は外部環境からの分離をもたらすとともに、容器の内容物を機械的に安定化するという目的を果たし、例えば内容物がキャビティーの外に漏出することを防ぐ。この容器は、少なくとも1つの開口部および/または少なくとも1つの入口を有し、以下により詳細に説明するが、これは閉鎖することができるように設計され、またキャビティーへのアクセスを可能にする。しかしながら、任意の開口部の大きさは、容器の機能、すなわち、とりわけ内容物の外部環境からの分離、機械的な安定化および内容物の保管という機能を損なわないようなものでなければならない。
【0013】
この点で容器は、不充分な閉鎖により内容物が簡単に漏出するような、シンプルな支持装置またはフレームとは異なっている。とりわけ、ゆえに容器は、例えば上述した米国特許第7,104,074号明細書および欧州特許第1441585号明細書に記載されているような支持フレームとは異なっている。このような支持フレームは、容器壁に囲まれ、さらに上述したような外部環境から遮断する機能および機械的な安定化を行う機能を果たす内部を有していない。
【0014】
本発明に照らして、低温容器とは通常、液体および/または固体などのものがその内部で低温、とりわけ0℃未満の温度で保管され得るように設計された容器として理解される。
【0015】
低温容器は少なくとも1つの第1容器を有し、この第1容器は少なくとも1つの可撓性フィルムバッグを有する。可撓性フィルムバッグは、媒体を受容し、好ましくは実質的に閉鎖されているような内部を少なくとも1つ有する装置として理解されたい。例えばこのフィルムバッグは、長方形のフィルムバッグとしてデザインされてもよい。
【0016】
本発明に照らして、可撓性とは、日常使用する場合と同様、本体の可変形性または可屈曲性として理解されたい。他の測定条件が特定されない限り、可撓性という語は、これも一般的な場合と同様だが、室温および通常の圧力の下で行われる測定に関するべきである。しかしながら好ましくは、可撓性はより低い温度、例えば5℃、好ましくは0℃で存在してもよく、特に好ましくは、さらに低い温度、例えば−10℃、さらには例えば−20℃などさらに低い温度でも存在する。
【0017】
フィルムバッグの可撓性とは、フィルムバッグ全体、または例えばフィルムバッグのフィルム壁などフィルムバッグの一部のみに加えられるフィルムバッグの可撓性として理解され、これらの可撓性の部分は圧力の影響下で塑性または弾性変形する。圧力とは例えば、フィルムバッグの内部空間に導入されている実際の媒体の体積膨張であって、可撓性フィルムバッグのウォールが変形するようなものである。
【0018】
第1の容器は、少なくとも部分的には使い捨てバッグとして設計されることが好ましい。例えば、バイオテクノロジーおよび薬剤の領域で通例であるような標準的なフィルムバッグが、この目的のために用いられ得る。この種のフィルムバッグは例えば、全体または部分的にプラスティックで作ることができ、1つ以上のコネクタ、例えば1つ以上のチューブを接続するためのコネクタを有し得る。以下に詳細な例を示す。
【0019】
可撓性フィルムバッグは媒体を受容するように設計され、好ましくは少なくとも実質的に密封であって、より好ましくは完全に密封である。
【0020】
低温容器はさらに少なくとも1つの第2の容器を有し、この第2の容器は少なくとも部分的に第1の容器を取り囲み、また好ましくは少なくとも部分的に可撓性である。第2の容器を可撓性に設計することは、第2の容器に導入される充填された第1の容器の形状に対して、好ましくは第2の容器が、完全にまたは部分的に適合し得るという意図と理解するべきである。このようにして第2の容器を第1の容器に適合させることにより、特に良好な伝熱を保証できる。第2の容器は、第1の容器の挿入のために少なくも1つの開口部を有する。この開口部は常時開放していてもよいが、第1の容器を第2の容器の内部に導入および/または第1の容器を第2の容器の内部から除去する間開放され、それ以外の時は好ましくは閉鎖されているように設計されてもよい。
【0021】
第2の容器は少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的に可撓性である外側スリーブ、すなわち好ましくは圧力の影響下で塑性または弾性変形する外側スリーブを有する。可撓性という用語については、概して、上記のこの用語についての記載を参照できる。「少なくとも部分的に可撓性である」という表現は、通常、本体が完全に可撓性、すなわちすべての領域で可撓性であるか、または本体が可撓性である部分または領域を少なくとも一部または一領域有し、さらに本体が可撓性でない部分または領域を少なくとも一部分または一領域有するような本体の特性として理解される。
【0022】
第2の容器はさらに少なくとも1つの伝熱空間を有し、この伝熱空間は外側スリーブと可撓性フィルムバッグとの間に設置され、少なくとも1つの流体の伝熱媒体を受容する。伝熱空間は、第1の容器と第2の容器の外側スリーブとの間の隙間として理解され、伝熱媒体はその隙間を通して流れ、および/または伝熱媒体は流れることなくその隙間にとどまる。この隙間は完全に開放されていてもよいし、一端または両端が閉鎖されていてもよい。この隙間はとりわけ、第1の容器および第2の容器の外側スリーブが流体の伝熱媒体と接触することなく、直接接触することを避けること、および好ましくは最小限の空間を確保することを意図される。
【0023】
とりわけ、上述したような第1の容器と第2の容器の外側スリーブとの接触を完全にまたは部分的に回避するために、少なくとも1つのスペーサー要素を伝熱空間に導入してもよい。このスペーサー要素は、流体の伝熱媒体がスペーサー要素を流れるように設計されてもよく、また外側スリーブと第1の容器のフィルムバッグとの空間を維持するように構成され得る。
【0024】
このスペーサー要素もまた、好ましくは完全にまたは部分的に可撓性であるべきである。さらにこのスペーサー要素は、流体の伝熱媒体が、可能な限り均等および完全に伝熱空間を充填するおよび/または流れることを可能にするべきである。スペーサー要素は、完全にまたは部分的にプラスティックで作製され、また流体の伝熱媒体が流れ得るような複数のチャネルおよび/または隙間を有することが好ましい。しかしながら、プラスティックに代えてまたはプラスティックに加えて、上記の特性を有する他の材料も原則的には可能である。例えば、充填剤を用いることも可能であって、充填された状態で充填剤の間に隙間が形成され、その隙間を伝熱媒体が流れ得る。代替的また付加的に、例えばハニカムが相互接続したハニカム構造を用いることができ、例えば、ハニカム構造もまたプラスティックで作製される。様々な構成が可能である。
【0025】
第2の容器の外側スリーブは、様々な方法で設計され得る。例えば外側スリーブは、金属フィルムおよび/または少なくとも1つの、金属材料、とりわけアルミニウムで被覆されたフィルムで構成されてもよく、例えばプラスティックフィルムおよび/またはペーパーフィルムでもよい。さらに、例えば積層フィルムを用いてもよい。
【0026】
低温容器は、第1の容器が、外側スリーブおよび適切であればスペーサー要素を備えた第2の容器に直接導入されるよう設計される。第1の容器、例えば第1の容器の可撓性フィルムバッグと外側スリーブとの間の隙間はその後、例えば以下に詳細に記すような冷凍または解凍の工程を確実にするために、少なくとも1つの伝熱媒体を充填されるか、またはその隙間を少なくとも1つの伝熱媒体が流れる。例えば伝熱空間は、気体の伝熱媒体、例えば液体ガス、とりわけ窒素で直接充填され得る。
【0027】
しかしながら、代替的または付加的に、第2の容器はより複雑なデザインを有していてもよい。例えば、第2の容器はさらに、第1の容器に面し、好ましくは少なくとも部分的に可撓性である少なくとも1つの内側スリーブを有していてもよい。同様に、この内側スリーブも、例えば完全にまたは部分的にプラスティックで作製され得る。この内側スリーブは、外側スリーブと同様に、好ましくは流体の伝熱媒体に対して実質的に不浸透性である。通常、内側スリーブは少なくとも1つのフィルム材料を有し、このフィルム材料は塗膜されていてもされていなくてもよい。また積層構造も可能である。
【0028】
低温容器はさらに、伝熱空間において受容され、および/または伝熱空間を流れる少なくとも1つの流体の伝熱媒体を有していてもよい。この伝熱媒体はとりわけ、以下の伝熱媒体、すなわち、シリコーンオイル、液状および/または気体状態にあるガス(すなわち、通常の条件下で気体であるような媒体)、とりわけ液体ガス、とりわけ窒素、特に好ましくは液体窒素の中の1つまたはそれ以上でもよい。液体窒素の使用はとりわけ、特に安価であって、媒体の単純かつ安価な冷凍を可能にする。通常使い捨て材料としても利用可能であるような市販のフィルムバッグ、例えば上記のフィルムバッグが、液体窒素の温度に耐えるものであるということが、試験によってわかった。
【0029】
特に上記の内側スリーブを用いる際には、第2の容器は少なくとも部分的に可撓性であって、少なくとも二重壁の収容バッグとして設計され得る。収容バッグとは、内部を有し、第1の容器を内部に導入するために少なくとも1つの開口部を有するバッグとして理解するべきである。この収容バッグは2つまたはそれ以上の壁を有していてもよい。これらの壁は、例えば上述したような、少なくとも1つの外側スリーブおよび少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的に可撓性であるフィルムバッグに面する内側スリーブからなる。二重壁の収容バッグはさらに、例えば上述したような、外側スリーブと内側スリーブとの間に設置される少なくとも1つの伝熱空間を含む。上述したような少なくとも1つのスペーサー要素もまた、任意にこの伝熱空間に導入され得る。
【0030】
外側スリーブおよび内側スリーブは、伝熱空間が少なくとも実質的に閉鎖されることによって、少なくとも1つの領域で互いに接続する。実質的に閉鎖されるということは、少なくとも1〜2年といった従来の保管期間の間、伝熱媒体が、誤って収容バッグの内部に漏入および/または収容バッグの外に漏出し得ないように、この伝熱媒体に対して少なくとも実質的に媒体を密封する閉鎖がなされることと理解するべきである。相当に少ない量の漏出については、しかしながら、容認され得る。
【0031】
収容バッグはさらに、伝熱媒体用に少なくとも1つの運搬装置を有していてもよい。とりわけ収容バッグは、伝熱媒体の運搬用に第1のコネクタ、特に少なくとも1つのコネクタノズルを有し、伝熱媒体の除去用に少なくとも1つの第2のコネクタ、特にコネクタノズルを有していてもよい。第1のコネクタおよび第2のコネクタは、伝熱空間に流体的に接続される。伝熱媒体が流れ得る少なくとも1つのチャネルは、第1のコネクタと第2のコネクタとの間の伝熱空間に形成される。このチャネルは平坦でも幅が広くてもよく、枝分かれしたり複数のチャネルとして設計されたりしてもよい。このチャネルは、好ましくは、収容バッグが第1の容器を囲っている領域において、第1のバッグの均一な温度制御が可能なように、設計される。
【0032】
第2の容器はさらに、伝熱空間における伝熱媒体の充填レベルを制御および/または調整する少なくとも1つの要素を有していてもよい。例えばこの要素は、センサーおよび/または弁からなっていてもよい。例えば浮動弁を設けてもよく、浮動弁は伝熱空間において伝熱媒体の充填レベルを制限したり、所定のレベルに調節したりする。
【0033】
第1の容器および第2の容器に加えて、低温容器はさらに、少なくとも1つの実質的に寸法安定性である外容器を有していてもよい。「実質的に寸法安定性である」という表現は、輸送中に生じる通常の負荷、例えば容器そのものの重量および/または内容物の重量の下で、外容器に目に見えるほどの変形がないような性質と理解されたい。外容器は、中に少なくとも1つの第1の容器を収容している少なくとも1つの第2の容器を収容し、それら容器を外部の機械的作用から保護するように設計される。保護とは、通常輸送中に生じる外力が、第2の容器および/または第1の容器に損傷を生じ得ないような性質として理解されたい。この外容器は例えば、完全にまたは部分的に剛性材料で作製される。
【0034】
この外容器は、1つの第2の容器または複数の第2の容器が挿入され得る1つ以上の内部を有していてもよい。単一の内部は、1つ以上の第1の容器を伴う1つ以上の第2の容器が収容されて設けられてもよい。代替的には、しかしながら、例えば外容器を複数の隔室に分割することによって、対応する複数の内部を設けることも可能である。1つもしくは複数の第2の容器は、これら隔室のそれぞれに収容され、それぞれ1つ以上の第1の容器を有する。
【0035】
この外容器は、さらに断熱性を有していてもよい。断熱性とは、例えば外容器の内部における水性媒体の冷凍状態が、室温であっても積極的な冷却方法なしに数分間、好ましくは数時間維持され得るように、周囲への温度の均等化が遅延するという意味に理解されたい。このような断熱性は、1つ以上の断熱材料、例えば発泡材料および/または紙または厚紙材料を用いることによって達成され得る。
【0036】
例えば外容器は、完全にまたは部分的に紙材料、とりわけ段ボールからなる紙材料で作製され得る。しかしながら、原則的には他の材料も使用できる。外容器の材料は、好ましくは、完全にまたは部分的に、容易に使い捨てできるように設計される。その結果、超低温容器は、適切であればいくつかの再利用可能な要素を例外として、好ましくは全体的に使い捨て可能な低温容器として設計できる。特に紙材料は容易に使い捨て可能であるので、環境に優しい。
【0037】
外容器は、例えば、実質的に立方体形状を有してもよい。実質的に立方体形状とは、完璧な立方体形状から少しはずれた形状も含むものとして理解される。例えば、外容器の安定性を促進するために、1つ以上の支持要素が外容器に設けられてもよい。代替的または付加的に、例えばフッキングによって複数の外容器の安定した相互接続を可能にするため、および/または複数の外容器をパレット上にゆったりと収容できるようにするために、接続要素を設けてもよい。
【0038】
外容器はさらに、実質的に密閉されたデザインを有していてもよい。このために、外容器は例えば、対応する溝およびいくつかの蓋を備えたボディを有してもよいし、他のデザインも可能である。さらに低温容器は、少なくとも1つの伝熱媒体および/または媒体そのものの導入および/または除去のために、少なくとも1つの通路を有してもよい。これらの通路は例えば、シンプルな開口部を含んでいてもよい。代替的または付加的に、より複雑な通路でもよい。例えば、適切であれば少なくとも1つの対応するコネクタを備えた管路でもよい。多様な実施形態が考えられる。
【0039】
低温容器に加えて、本発明は、上記の実施形態の1つ以上による低温容器で使用する第2の容器も提案する。第2の容器の可能な構成に関して、大部分は上記記載を参照できる。ゆえに、第2の容器は、好ましくは少なくとも部分的に可撓性であって、第1の容器を挿入するために少なくとも1つの開口部を有する。第2の容器はさらに、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的に可撓性の外側スリーブを有し、また少なくとも1つの伝熱空間も有する。この伝熱空間は、外側スリーブと可撓性の第1の容器、とりわけ第1の容器の可撓性フィルムバッグとの間に設けられ、少なくとも1つの流体の伝熱媒体を受容する。その他の実施形態については、上記記載を参照できる。
【0040】
本発明はさらに、媒体、とりわけ生化学製品および/または医薬製品の保管のための前処理装置を提案する。この媒体の記載については、大部分は上記記載を参照できる。媒体の保管用の前処置装置は、媒体が保管用に調製され、保管後に再び使用できるように準備され、輸送のために準備され、または輸送後に再び使用できるように準備されるような装置である。例えばこの前処理装置は、媒体を冷凍および/または解凍するのに適している。
【0041】
この前処置装置は、上記実施形態の1つ以上による少なくとも1つの低温装置を含む。前処理装置はさらに、伝熱媒体を低温容器に供給するための、低温容器に可逆的に結合され得る少なくとも1つの供給装置を含む。例えば、この供給装置は、伝熱媒体を冷却および/または加熱する装置を含んでいてもよい。さらにこの供給装置は、代替的または付加的に、伝熱媒体を第2の容器内に導入するためおよび/または伝熱媒体を第2の容器にポンプで通すために、少なくとも1つのポンプを含んでいてもよい。可逆的な結合とは、例えば管接続および/または同様の取り外し可能な接続を通して、伝熱媒体が、一時的に低温容器に供給され、および/または低温容器にポンプで通され得るという意味で理解されたい。低温容器の輸送および/または低温容器の保管の際には、前処理装置は、例えば伝熱媒体が第2の容器中にいくらか残った状態で、低温容器から完全にまたは部分的に切り離され得る。
【0042】
上記実施形態の1つ以上における上記の装置に加えて、本発明はさらに、媒体、とりわけ生化学製品および/または医薬製品を保管および/または輸送する方法を提案する。この方法は、とりわけ、低温容器に関する、先行する請求項の1つに記載されるような低温容器を用いる。さらに、上記実施形態の1つ以上による第2の容器および/または前処理装置も使用でき、これらについても同様に大部分は上記記載を参照できる。
【0043】
この方法は以下に記載される工程を含む。これらの工程は示される順序で実行され得るが、この順序は厳密に必然的というわけではない。例えば、以下に記載する第1の工程および第2の工程は、逆順に実行されてもよい。さらに、(示されていない)他の工程も実行され得る。また、工程は他の順序で実行されてもよく、単一のまたはいくつかの工程は、時間的に重複してまたは同時に繰り返され得る。
【0044】
第1の工程において、第1の容器は第2の容器内に導入され、ここで第1の容器は少なくとも1つの可撓性フィルムバッグを有し、第2の容器は好ましくは少なくとも部分的に可撓性であって、第1の容器を挿入するために少なくとも1つの開口部を有する。第2の容器はさらに、少なくとも1つの、好ましくは部分的に可撓性である外側スリーブおよび少なくとも1つの伝熱空間を有する。この伝熱空間は、外側スリーブと、第1の容器の可撓性フィルムバッグとの間に配置され、少なくとも1つの流体の伝熱媒体を受容する。第2の工程において、媒体は、例えばシンプルな充填、ポンピング、注入、または当業者に公知でかつ好ましくは媒体の性質に適合された他の方法によって第1の容器内に導入される。第1の容器は、媒体で充填される前または後に、第2の容器内に導入され得るということがわかる。取り扱いにより生じるリスクを減少させるという観点から、この第1の容器がすでに第2の容器内に配置されている時に第1の容器が媒体で充填される方法が、通常好ましい。
【0045】
第3の工程において、少なくとも1つの伝熱媒体は、伝熱空間の中へまたは伝熱空間を通して運ばれる。この伝熱媒体の伝熱空間への導入は、単一の充填操作によってなされ得る。代替的には、第2の容器の可能な構成に関して上に示したように、伝熱媒体は、例えばポンプにより循環されることで伝熱空間を通して運ばれてもよい。
【0046】
この方法は、多様な手段で有利に発展され得る。例えば、さらなる工程において、第2の容器は実質的に寸法安定性である外容器の中に導入されてもよく、この外容器についても上記記載を参照できる。この外容器は、中に少なくとも1つの第1の容器を収容している少なくとも1つの第2の容器を受容し、それら容器を外部の機械的作用から保護するように設計される。ここでも第2の容器は、第1の容器がすでに第2の容器内に収容されている時点で外容器の中に導入されてもよい。代替的には、しかしながら、まず充填されていない第2の容器を外容器の中に導入し、その後で第1の容器を外容器の中に導入することも可能である。
【0047】
さらなる工程において、媒体は冷凍され、その後保管および/または輸送され得る。冷凍に際して、媒体の凝固点を下回る温度の伝熱媒体を用いることができ、例えば上に示したようなシリコーンオイルおよび/または液体ガス、例えば液体窒素を用いることができる。上に示したように、伝熱媒体は一度に全て導入されてもよいし、および/またはポンプで低温容器に通されてもよい。これらを組み合わせることも可能であって、例えば一度に全て導入された伝熱媒体は、その後必要であれば注ぎ足され、すなわち補給されることも可能である。冷却回路を設けてもよく、この場合中に媒体を受容している第1の容器が1つの領域において伝熱媒体によって冷却され、他の領域において伝熱媒体が、冷却中に吸収された熱の、他の媒体および/または他の装置への伝達を確実にする。これに関連して、伝熱媒体という表現は、本発明に照らして広く理解され、熱を吸収でき、このような方法で保管および/または輸送されるべき媒体を冷却できる流体媒体をすべて含む。伝熱媒体は例えば、熱ポンプの流体媒体の一部であってもよいし、他の方法で用いられて保管および/または輸送されるべき媒体を冷却してもよい。
【0048】
保管および/または輸送された後に媒体をもう一度解凍するために、本発明の方法はさらに、媒体の凝固点を上回る温度の気体および/または液体の伝熱媒体を導入することを含む。ここでは解凍媒体として作用するこの伝熱媒体もまた、例えば、一度に導入されてもよいし、好ましくは第2の容器にポンプで通される。この場合の伝熱媒体は熱風でもよく、例えば熱風は送風機の助けにより外容器へと吹き込まれる。他の加熱された気体および/または加熱された液体も用いることができる。
【0049】
本発明の方法はさらに、第1の容器および/または第2の容器、および適切であるならば任意の外容器が、媒体が取り除かれた後に完全にまたは部分的に使い捨てされる工程を少なくとも1つ含む。この処理は、完全にまたは部分的なリサイクルおよび/または焼却によってなされ得る。
【0050】
上記実施形態の1つ以上において提案される装置および方法は、公知の装置および方法に対して多数の利点を有する。例えば、媒体の冷凍および/または解凍は、処理後に完全に使い捨てされ得る熱交換器において行われ得る。適切であれば清浄および/または滅菌が付加的に行われてもよいが、通常は必然的なものではない。
【0051】
物流管理の観点から相当な投資および費用が必要とされるステンレス鋼の低温容器に比べて、本発明で提案される低温容器および方法は1度しか使用されないので、比較的低い投資費用および/または維持費用しか必要としない。さらに、提案される低温容器および/または提案される方法は、通常、資本を固定化しない。また、容量および/または工程の条件の変更もより容易である。伝熱に際しては、安価な伝熱媒体、例えば窒素、とりわけ液体窒素を使用できる。本発明の低温容器は、例えばステンレス鋼で作製された従来の低温容器とは対照的に比較的小さな冷凍表面領域しか必要としないような、小型な形状で製造され得る。また、輸送費用も相当に減少され得る。これは、本発明で提案される低温容器が、従来の低温容器よりも相当に軽いからである。さらに、本発明の低温容器は安価であって、通常、空の低温容器を積み戻す必要がないように、使い捨ての低温容器として設計され得る。空の低温容器はそのまま使い捨てできる。
【0052】
さらに本発明で提案される低温容器は、空の場合、小さな体積しか占めずに保管され得る。とりわけ紙材料の使用は保管目的で折り畳めるので、従来のステンレス鋼の容器に比べて保管費用が減少される。また、容積の要求における変更にもフレキシブルに対応できる。
【0053】
また、扱いにくい伝熱媒体、例えばシリコーンオイルの使用を避けることが可能なので、汚染の危険性ははるかに少ない。とりわけ液体窒素の使用は、相当に低いコストとともに工程の高い安全性についての可能性を提供する。伝熱媒体の1回限りの導入、例えば1回の冷凍操作のために正確に測定された量の伝熱媒体を導入することは、特に伝熱媒体として窒素を用いる際に行いやすく、これは窒素が安価でかつ広く流通しているからである。
【0054】
使い捨ての低温容器および/または少なくとも部分的には使い捨ての低温容器として設計される低温容器を使用することにより、ステンレス鋼の低温容器の場合に生じるような清浄費用および/または設備投資が避けられ得る。また低温容器を使い捨てることは多くの場合において、例えば清浄剤および/または消毒剤を用いる複雑な清浄よりも環境にやさしい。さらに、高度の滅菌を確実にすることも可能であって、交差汚染の危険性も避けられ得る。全体的な工程の環境にやさしい性質は、低温容器は簡単かつ安価に使い捨てされるよう設計されているので、低温容器を使い捨てすることにより積戻しの必要がないという事実によってさらに向上される。
【0055】
公知の使い捨ての低温容器、例えば欧州特許第1441585号明細書および米国特許第7,104,074号明細書に記載される容器と比べて、本発明で提案されるデザインは、熱交換媒体が収納され、また第1の容器を機械的損傷から保護できる第2の容器を提供するという利点を有する。
【0056】
さらなる機械的保護を提供するために、上述の少なくとも1つの外容器が設けられてもよく、この容器は第1の容器および/または第2の容器を機械的負荷から保護できる。第2の容器は同時に、低温容器が、冷凍領域および/または冷凍容器の外での少なくとも簡単な輸送にも適するように、一体化されているが使い捨てできる熱交換器としても作用できる。同時に、しかしながらこの一体化された熱交換器は、容易に使い捨てできかつ積み戻しを必要としないように、場所をとらずかつ安価な方法で提供され得る。
【0057】
本発明のさらなる詳細および特徴は、とりわけ従属項に関連する好ましい例示的な実施形態の以下の記載に記される。それぞれの特徴は単独で設けられてもよく、または特徴のいくつかが互いに組み合わされて設けられてもよい。本発明は例示的な実施形態に制限されない。例示的な実施形態は図面において図解的に描かれる。個々の図における同一の参照符号は同一の要素を示すか、または同一の機能または機能において対応している要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】本発明による低温容器の第1の例示的な実施形態の断面図である。
【図1B】斜め上から見ると平面図である、図1Aの超低温容器の斜視図である。
【図1C】図1Aの低温容器の平面図である。
【図2】本発明による低温容器の第2の例示的な実施形態の、図1Aと同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の低温容器110の第1の例示的な実施形態は図1A〜1Cに示される。同時に、図1Aは本発明の前処理装置112の例示的な実施形態を示す。低温容器に加えて、この前処理装置112は、さらに低温容器110に可逆的に結合され得る供給装置114を有する。図1Bおよび1Cは低温容器110のみを示し、超低温容器は、図1Aでは側面からの断面図で蓋116を伴って示され、斜め上面からの斜視図で蓋116を伴わずに示され(図1B)、上面からの斜視図で蓋116を伴わずに示される(図1C)。
【0060】
低温容器110は、チューブコネクタ122を備える可撓性フィルムバッグ120の形態の第1の容器118を含む。例えば、この可撓性フィルムバッグ120は滅菌済みの使い捨てバッグ、例えばSartorius Stedim Biotech社の「Standard Flexboy(登録商標)bioprocessing bag」として設計され得る。しかしながら、原理上は他のデザインも可能である。第1の容器118は、滅菌接続として設計され得るチューブコネクタ122を通して、媒体、例えば薬剤、診断用薬または生化学物質で充填され得る。この媒体は、通常図中では参照符号124により示される。
【0061】
さらに、低温容器110は外容器126を含み、この例示的な実施形態において外容器は、シンプルな支持材料、例えば多層段ボールからなる基本的な枠組みから製造され得る。この基本的な枠組みは、同時に安定化および断熱も担う。図1A〜1Cに示されるように、外容器126は実質的に立方形状でもよく、例えば内装128が設けられ、また任意には安定性を向上させるために1つ以上の支持装置130が設けられる。
【0062】
図1Aから1Cで示される例示的な実施形態において、第2の容器132は外容器126の枠組みの中に導入される。図示される例示的な実施形態において、この第2の容器132は上端で開放しており、第1の容器118の可撓性フィルムバッグ120が第2の容器132中に導入されるような開口部133を有する。例示的な実施形態において、第2の容器132は外枠134を有し、この外枠134は可撓性である。この外枠134は例えば、上端で開放され、かつ、アルミニウムフィルムおよび/またはアルミニウム被覆されたプラスティックフィルムなどの金属被覆されたプラスティックフィルム、アルミニウム被膜のプラスティックフィルムで作製されたバッグとすることができる。スペーサー要素136はこの外枠134に取り付けられ、このスペーサー要素136は同時に硬化、および外枠134と第1の容器118の可撓性フィルムバッグ120との間の熱交換空間138の形成も担う。このスペーサー要素136は例えば、プラスティックで作成され得る。スペーサー要素136は断熱材、とりわけ第2の容器132または外枠134と、媒体124との間の分離層を確保できる。とりわけ図1Cから分かるように、図示される例示的な実施形態におけるスペーサー要素136は、可撓性フィルムバッグ120の広い方の側面にのみ設けられ、狭い方の辺には設けられない。ゆえにこれら狭い方の辺では、たとえあるとしても、外容器134と第1の容器118との間にはほんのわずかな接触しかない。
【0063】
スペーサー要素136は、熱交換媒体を受容でき、または熱交換媒体が流れるように設計される。例えば、第1の容器118が媒体124で充填された後で、例えば液体窒素(LN2)を、外枠134と可撓性フィルムバッグ120との間の熱交換空間138としての機能を果たす隙間に導入することができる。この液体窒素は自然に蒸発し、ゆえに媒体124を冷却する。この工程は、液体窒素の量によって制御され得る。例えば、図1Aに示されるように、液体窒素は配管システム140を介して供給装置114から供給されてもよい。この配管システム140は他の図には示されておらず、また低温容器110に着脱できる。媒体124の冷凍工程が、例えば−25℃で完了した後、低温容器110の使い捨て可能なシステム全体が、例えば冷凍室で保管される。
【0064】
保管期間の最後に、媒体124を解凍して使用できる状態に戻すために、例えば予め温められた空気が熱交換空間138に吹き込まれる。また、これは例えば供給装置114または同様の装置を用いてすることも可能である。例えば上記の方法などの積極的な解凍に替えて、または付加的に、消極的な解凍工程を用いることも可能である。例えば、室温における周囲環境の空気そのものが、補助的な装置および/または熱交換空間138の中への予め温められた空気の吹き込みなしで、解凍を充分に可能にする。
【0065】
この関連する工程は、示されたシステムによって非常に迅速な冷凍時間が可能になるということを意味する。この工程は、低速な冷凍および解凍工程が相分離または他の均質性の欠如を導く恐れのある、生物学的または生化学的媒体124の場合に、とりわけ有利である。使用後、安価な低温容器は、特別な清浄なしに完全にまたは部分的に処分することができる。それゆえ、従来のステンレス鋼製の低温容器の場合に通常必要とされたような、容器の往復の輸送は、好ましくは避け得る。
【0066】
市販の使い捨て商品が、例えば可撓性フィルムバッグ120として使用され得る。例えば、50リットル、さらには80リットルまでのバッグ容積が考えられる。複数のセット、すなわち、例えば1つ以上の内装128中に複数の第1の容器118を備えた低温容器110を用いることも可能である。例えば、複数の隔室が設けられ得る。例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの可撓性フィルムバッグ120が1つの低温容器110に収容され得る。例えば、いくつかの低温容器110はパレット上、例えばユーロパレット上で保管され得る。とりわけ300リットルまでは、従来の、とりわけステンレス鋼の低温容器に比べて半分の重量および容量で、1つのパレットに保管することができる。
【0067】
初期の検査において、本発明で提案される低温容器は実用に適しているということが判明した。ゆえに、例えば1リットルの水に対しておよそ30分の冷凍時間が記録された。1キログラムの液体あたり、1.5〜2リットルの液体窒素が必要であった。例えば、1回の冷凍工程に充分なだけの所定量の液体窒素が、熱交換空間138中に供給され得る。
【0068】
図1と類似しているが供給装置114および配管システム140が描かれていない図2は、低温容器110の第2の実施形態を示す。この低温容器110もまた、可撓性フィルムバッグ120を備えた第1の容器118およびチューブコネクタ122を含む。この第1の容器118に関しては、例えば図1Aから1Cの上記記載を参照できる。
【0069】
さらに低温容器110は、同様に蓋116を有する外容器126も含む。この蓋116はこの場合、熱交換媒体および/または保管および輸送されるべき媒体124が、外容器126が閉鎖されていても導入および/または除去され得るように、複数の通路142を備える。この外容器126の可能なデザインに関しては、例えば図1Aから1Cの上記記載を参照できる。
【0070】
また低温容器110は、熱交換空間138を有する第2の容器132も有する。しかしながら、図1A〜1Cによる例示的な実施形態とは対照的に、図2による例示的な実施形態における熱交換媒体は、例えばプラスティックバッグとして設計され得る可撓性フィルムバッグ120と、好ましくは直接接触しない。このため、ここで図示される例示的な実施形態における第2の容器132は、二重壁の収容バッグ144を伴って設計される。ゆえに第2の容器132は、外側スリーブ134に加えて、可撓性フィルムバッグ120に面する可撓性の内側スリーブ146も有する。外側スリーブ134および内側スリーブ146は、長く幅が狭いおよび広いチャネル状の熱交換空間138が外側スリーブ134と内側スリーブ146との間に形成されるように、互いに端(edge)が溶接(weld)されてもよく、この熱交換空間138は第1のコネクタ148から始まり第2のコネクタ150で終了する。ゆえに第1のコネクタ148は熱交換媒体の入り口となり、第2のコネクタ150はこの熱交換媒体の出口となり得る。例えば硬いスペーサー要素136で満たされ得る内側スリーブ146および外側スリーブ134の間の隙間、すなわち熱交換空間138において、熱交換媒体は第1のコネクタ148から第2のコネクタ150へと流れ得る。このスペーサー要素136は付加的に、好ましくは熱交換空間138の表面全体に沿った均一の貫流を確実にするために、完全にまたは部分的に流れを導く手段としても作用できる。
【0071】
熱交換媒体は、例えば図1Aの対応する供給装置114によって、第1のコネクタ148から第2のコネクタ150までの熱交換空間138にポンプで通され得る。熱交換媒体、すなわち伝熱媒体としては、例えばこの場合シリコーンオイルが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0072】
110 低温容器
112 前処理装置
114 供給装置
116 蓋
118 第1の容器
120 可撓性フィルムバッグ
122 チューブコネクタ
124 媒体
126 外容器
128 内装
130 支持装置
132 第2の容器
133 開口部
134 外側スリーブ
136 スペーサー要素
138 熱交換空間
140 配管システム
142 通路
144 二重壁の収容バッグ
146 内側スリーブ
148 第1のコネクタ
150 第2のコネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体(124)、とりわけ生化学製品および/または医療製品を、保管および/または輸送するための低温容器(110)であって、
該低温容器(110)は、
少なくとも1つの第1の容器(118)を含み、該第1の容器(118)は少なくとも1つの可撓性フィルムバッグ(120)を有し、該可撓性フィルムバッグ(120)は前記媒体(124)を受容するように設計され、
少なくとも部分的に前記第1の容器(118)を取り囲む少なくとも1つの第2の容器(132)をさらに含み、該第2の容器(132)は好ましくは少なくとも部分的に可撓性であって、前記第1の容器(118)の挿入のために少なくとも1つの開口部(133)を有し、前記第2の容器(132)は、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的に可撓性である外側スリーブ(134)を有し、前記第2の容器(132)はさらに、少なくとも1つの流体の熱交換媒体を受容するために、前記外側スリーブ(134)と前記可撓性フィルムバッグ(120)との間に設置される少なくとも1つの熱交換空間(138)を有する低温容器(110)。
【請求項2】
前記第1の容器(118)が使い捨てのフィルムバッグ(120)として設計される請求項1記載の低温容器(110)。
【請求項3】
前記熱交換空間(138)が、該熱交換空間(138)に設けられる少なくとも1つのスペーサー要素(136)を有し、該スペーサー要素(136)は、前記流体の熱交換媒体が該スペーサー要素中を流れるように設計され、前記スペーサー要素(136)がさらに、前記外側スリーブ(134)と前記フィルムバッグ(120)との間の間隔を維持するように設計される請求項1または2記載の低温容器(110)。
【請求項4】
前記第2の容器(132)の前記外側スリーブ(134)が、
少なくとも1つの金属フィルム並びに/または
少なくとも1つの金属材料、とりわけアルミニウムで被覆されたプラスティックフィルムおよび/若しくは紙フィルムを含んでなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の低温容器(110)。
【請求項5】
前記第2の容器(132)が、少なくとも1つの内側スリーブ(146)をさらに有し、該内側スリーブ(146)が前記第1の容器(118)に面し、好ましくは部分的に可撓性である請求項1〜4のいずれか1項に記載の低温容器。
【請求項6】
前記第2の容器(132)が、好ましくは少なくとも部分的に可撓性かつ少なくとも二重壁の収容バッグ(144)として設計され、前記少なくとも1つの外側スリーブ(134)を含み、さらに、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的に可撓性である、前記フィルムバッグ(120)に面した内側スリーブ(146)をさらに含み、前記外側スリーブ(134)と前記内側スリーブ(146)との間に設けられる前記熱交換空間(138)をさらに含む低温容器であって、
前記熱交換空間(138)が実質的に閉鎖されることによって、前記外側スリーブ(134)と前記内側スリーブ(146)とが少なくとも1つの領域において互いに接続される請求項1〜5のいずれか1項に記載の低温容器(110)。
【請求項7】
前記収容バッグ(144)が、前記熱交換媒体を運ぶための少なくとも1つの第1のコネクタ(148)、とりわけコネクタノズルと、前記熱交換媒体の除去のための少なくとも1つの第2のコネクタ(150)、とりわけコネクタノズルとをさらに有し、
前記第1のコネクタ(148)および前記第2のコネクタ(150)が前記熱交換空間(138)に流体的に接続され、前記熱交換媒体が流れ得る少なくとも1つのチャネルが、前記第1のコネクタ(148)と前記第2のコネクタ(150)との間の前記熱交換空間(138)に形成される請求項6記載の低温容器(110)。
【請求項8】
前記第2の容器(132)が、前記熱交換空間(138)における前記熱交換媒体の充填レベルを制御および/または調整する少なくとも1つの要素、とりわけ浮動弁をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の低温容器(110)。
【請求項9】
実質的に寸法安定性である外容器(126)をさらに含む低温容器であって、
前記外容器(126)が、前記少なくとも1つの第1の容器(118)が収容された前記少なくとも1つの第2の容器(132)を収容し、これらを外部の機械的作用から保護するように設計される請求項1〜8のいずれか1項に記載の超低温容器(110)。
【請求項10】
前記外容器(126)が、完全にまたは部分的に紙材料、とりわけ段ボールからなる紙材料で作製される請求項9記載の超低温容器(110)。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の低温容器(110)において用いる第2の容器(132)であって、
該第2の容器(132)は、好ましくは少なくとも部分的に可撓性であり、
前記第1の容器(118)の挿入のために少なくとも1つの開口部(133)を有し、
少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的に可撓性である外側スリーブ(134)を有し、少なくとも1つの流体の熱交換媒体を受容するために、該外側スリーブ(134)と前記第1の容器(118)、とりわけ前記可撓性フィルムバッグ(120)との間に設けられる少なくとも1つの熱交換空間(138)をさらに有する第2の容器(132)。
【請求項12】
媒体(124)、とりわけ生化学製品および/または医薬製品の保管のための前処理装置(112)であって、
該前処理装置(112)は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の少なくとも1つの低温容器(110)を含み、該低温容器(110)に熱交換媒体を供給するために該低温容器(110)に可逆的に結合され得る少なくとも1つの供給装置(114)をさらに含む前処理装置(112)。
【請求項13】
とりわけ請求項1〜10のいずれか1項に記載の低温容器(110)を用いて、媒体(124)、とりわけ生化学製品および/または医療品を、保管および/または輸送する方法であって、
第1の容器(118)が第2の容器(132)に導入される工程と、前記媒体(124)が前記第1の容器(118)中に導入される工程と、
少なくとも1つの熱交換媒体が、前記熱交換空間(138)の中へまたは該熱交換空間(138)を通して運ばれる工程と
を含み、
前記第1の容器(118)は、少なくとも1つの可撓性フィルムバッグ(120)を有し、前記第2の容器(132)は、好ましくは部分的に可撓性であって、前記第1の容器(118)の挿入のために少なくとも1つの開口部(133)を有し、少なくとも1つの、好ましくは少なくとも部分的に可撓性である外側スリーブ(134)を有し、少なくとも1つの流体の熱交換媒体を受容するために、前記外側スリーブ(134)と前記可撓性フィルムバッグ(120)との間に設けられる少なくとも1つの熱交換空間(138)をさらに有していることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記第2の容器が少なくとも1つの実質的に寸法安定性である外容器(126)に導入される工程をさらに含み、
前記外容器(126)が、前記少なくとも1つの第1の容器(118)が収容された前記少なくとも1つの第2の容器(132)を収容し、これらの容器を外部の機械的作用から保護するように設計される請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記媒体(124)が冷凍され、その後保管および/または輸送され、前記媒体(124)の凝固点を下回る温度の熱交換媒体が冷凍に用いられる請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記媒体(124)が、保管および/または輸送された後に、前記媒体(124)の凝固点を上回る温度の気体または液体の熱交換媒体の導入によって解凍される請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記第1の容器(118)および/または前記第2の容器(132)および、適切ならば前記外容器(126)が、前記媒体(124)が取り除かれた後に完全にまたは部分的に使い捨てされる請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−515688(P2012−515688A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545671(P2011−545671)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000117
【国際公開番号】WO2010/083951
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】