説明

低温特性の良い潤滑油用清浄剤およびその製造方法

【課題】低温特性の良い潤滑油清浄剤およびその製造方法を提供する。
【解決手段】次の工程を含む方法により製造されたカルボキシレート清浄剤:(a)ヒドロキシ芳香族化合物を、C−C20アルファオレフィンから誘導した少なくとも一種のアルファオレフィンオリゴマーでアルキル化し、それによりアルキルヒドロキシ芳香族化合物を生成させる工程、ただし、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の分子のうちの少なくとも90%はアルキル基が、アルキル基の最も長い鎖の末端から4位又はそれより高位の位置で結合していて、かつアルキル基は炭素数が少なくとも7の炭化水素尾部を少なくとも1つ含んでいる、(b)得られたアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物をアルカリ金属塩基で中和する工程、(c)工程(b)からのアルカリ金属塩を二酸化炭素で炭酸化する工程、(d)工程(c)で生成した塩を酸性にする工程、そして(e)得られたアルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸を過塩基化する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温特性の良い潤滑油用清浄剤およびその製造方法に関するものである。これらの清浄剤は、低温で非常に優れた性能を示す。
【背景技術】
【0002】
過塩基性清浄剤が潤滑性能をもたらすことについては良く知られている。往々にしてそのような清浄添加剤は、他の潤滑油添加剤と組み合わされて、何らかの所望の潤滑性能を示す潤滑油組成物を与える。
【0003】
アルカリ土類金属ヒドロキシベンゾエート類もまた、エンジン潤滑油用添加剤として知られている。
【0004】
特許文献1には、炭素原子数16乃至36のカルボン酸を含む芳香族カルボキシルヒドロキシ酸のアルカリ土類金属塩を含有する潤滑油添加剤が記載されている。
【0005】
特許文献2には、過塩基性アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートの製造方法であって、アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエート、またはアルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエートと、アルキルヒドロキシベンゾエートとアルキルフェノールの全混合物に基づき50モル%までのアルキルフェノールとの混合物を、モル過剰のアルカリ土類金属塩基および少なくとも一種の酸性過塩基化物質を用いて、炭素原子数1乃至4の少なくとも一種のカルボン酸、および芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、モノアルコール類およびそれらの混合物からなる群より選ばれた溶媒の存在下で、過塩基化することを含む方法が記載されている。
【0006】
特許文献3には、油、耐摩耗性添加剤、および炭化水素残部で置換されたカルシウムサリチレートのような、芳香族カルボキシレートを含む唯一の油溶性過塩基性清浄剤を含有する潤滑油組成物が記載されている。
【0007】
特許文献4には、潤滑剤として、多価金属塩、特にはカルシウム、およびアルキル基に炭素原子を12個より多く、好ましくは14乃至18個含むアルキルサリチル酸を含有する潤滑油組成物が記載されている。これら塩は、合成中間体としてそれに対応するナトリウム塩から製造することができる。
【0008】
特許文献5には、スルホン酸炭化水素、ナフテン酸またはアルキルヒドロキシ安息香酸、特には炭素原子数22までのアルキル基を持つアルキルサリチル酸など、油溶性有機酸の多価金属塩が記載されている。アルキルサリチル酸は、特許文献6、特許文献7及び特許文献8に記載された方法に従って、アルキルサリチル酸ナトリウムから製造することができる。これらの特許文献に記載されたナトリウムアルキルサリチレートは、アルカリ土類アルキルサリチレートの製造のための合成中間体として有用であり、後者も潤滑油用添加剤として有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5895777号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0027044号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1154012号明細書
【特許文献4】英国特許第1146925号明細書
【特許文献5】英国特許第786167号明細書
【特許文献6】英国特許第734598号明細書
【特許文献7】英国特許第734622号明細書
【特許文献8】英国特許第738359号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般的に云うと、上記の参照文献には、芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその塩の方法が記載されていて、それらは、フェノール誘導体、例えばフェノール自体、クレゾール、モノ及びジアルキルフェノール(アルキル基の炭素原子数約8乃至18)、ハロゲン化フェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、1−ナフトール、2−ナフトールおよびハロゲン化ナフトール等のアルカリ塩から誘導される。しかしながら、上記の方法では、TBNが高くかつ沈降物含量が多い副生物が生成し、これにより生成物収量が低下し、かつ追加の廃棄費用がかかるようになる。このため、そのような方法から生じる沈降物を最少にすることにより、生成物収量を高める方法を得ることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一つの態様では、本発明は、下記の工程を含む方法により製造されたカルボキシレート清浄剤に関する:
(a)ヒドロキシ芳香族化合物を、C−C20アルファオレフィンから誘導した少なくとも一種のアルファオレフィンオリゴマーでアルキル化し、それによりアルキルヒドロキシ芳香族化合物を生成させる工程、ただし、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の分子のうちの少なくとも90%はアルキル基が、アルキル基の最も長い鎖の末端から4位又はそれより高位の位置で結合していて、かつアルキル基は、炭素数少なくとも7の炭化水素尾部を少なくとも1つ含んでいる、
(b)得られたアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物をアルカリ金属塩基で中和して、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩にする工程、
(c)工程(b)からのアルカリ金属塩を二酸化炭素で炭酸化し、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸アルカリ金属塩を生成させる工程、
(d)工程(c)で生成した塩を酸で酸性にして、アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸を生成させる工程、そして
(e)アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸を、二酸化炭素の存在下で石灰で過塩基化し、それにより過塩基性アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボキシレート清浄剤を生成させる工程。
【0012】
別の態様では、本発明は、下記の構造を有するカルボキシレート清浄剤に関する。
【0013】
【化1】

【0014】
ただし、Rは、C−C20アルファオレフィンの実質的に直鎖のオリゴマー類から誘導された、炭素原子数約16乃至40の実質的に直鎖のアルキル基であって、実質的に直鎖のアルキル基のうちの少なくとも90%がアルキル基の最も長い鎖の末端から4位又はそれ以上の位置で結合し、かつ炭素数少なくとも7の炭化水素尾を少なくとも1つ含んでいるアルキル基であり、そしてyおよびzは独立に、整数または部分整数(partial integer)である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の清浄剤は、低温で非常に優れた性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明には様々な変更や代替形態が可能であるが、本明細書では本発明の特定の態様について詳しく記載する。だが、本明細書における特定の態様の記載は、本発明を開示する特定の形態に限定しようとするものではなく、むしろ反対に、本発明は、添付した特許請求の範囲で規定した本発明の真意および範囲内に含まれる全ての変更形、等価形および代替形を包含することになると理解されたい。
【0017】
[定義]
金属:「金属」との用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を意味する。
【0018】
アルカリ金属塩基:「アルカリ金属塩基」との用語は、カリウム、ナトリウム、リチウム、またはそれらの混合物を意味する。
【0019】
オレフィン:「オレフィン」との用語は、数多くの方法によって得られた、炭素−炭素二重結合を1つ以上持つ不飽和脂肪族炭化水素を意味する。二重結合を1つ含むものはモノアルケンと呼ばれ、二重結合が2つあるものはジエン、アルキルジエンまたはジオレフィンと呼ばれる。アルファオレフィンはとりわけ反応し易い。というのは、二重結合が第一炭素と第二炭素の間にあるからである。例としては1−オクテンおよび1−オクタデセンがあり、これらは中程度の生分解性を示す界面活性剤の出発原料として使用される。線状オレフィンも分枝オレフィンもオレフィンの定義に含まれる。
【0020】
線状オレフィン:「線状オレフィン」との用語は、鎖に炭素−炭素二重結合が少なくとも1つ存在する、直鎖であって分岐していない炭化水素であるオレフィン類を意味する。その例としては、ノルマルアルファオレフィンおよび線状アルファオレフィンが挙げられる。
【0021】
「アルファオレフィン」又は「単純アルファオレフィン」との用語は、本明細書で使用するときは一般に、二重結合がアルキル鎖の末端位にある1−オレフィンを意味する。アルファオレフィンは、ほぼ常に異性体の混合物であり、しばしば炭素数の変動幅がある化合物の混合物でもある。C、C、C10、C12及びC14アルファオレフィンのような低分子量アルファオレフィンは、ほぼ常に1−オレフィンである。C1618またはC2024のような高分子量オレフィン留分は、二重結合が高い割合で内部又はビニリデン位に異性化しているが、それでもなおこれら高分子量留分も本明細書ではアルファオレフィンと呼ばれる。
【0022】
「アルファオレフィンオリゴマー(類)」(AOO)は、本明細書で使用するとき、C−C20アルファオレフィンから製造又は誘導されたオレフィン二量体、三量体、四量体及び五量体およびそれらの混合物を意味する。これらの「AOO」のオレフィン二重結合は一般に、最も長い炭素鎖の末端から炭素原子少なくともn−4個目の位置にある、ここで、nは出発アルファオレフィンの炭素原子の数である。
【0023】
「実質的に直鎖」との用語は、アルキル基を表すことを意図して用いられている。
【0024】
「ヒドロキシ芳香族化合物」との用語は、アルキルフェノール(類)と置き換えて使用できる。
【0025】
[カルボキシレート清浄剤]
本発明の一態様は、下記の構造を有するカルボキシレート清浄剤に関する。
【0026】
【化2】

【0027】
ただし、Rは、C−C20アルファオレフィンの実質的に直鎖のオリゴマー類から誘導された、炭素原子数約16乃至40の実質的に直鎖のアルキル基であって、アルキル基の最も長い鎖の末端から炭素原子少なくとも4個目でフェノール環に結合し、かつ炭素数少なくとも7の炭化水素尾を少なくとも1つ含んでいるアルキル基であり、そしてyおよびzは独立に、整数または部分整数である。
【0028】
[カルボキシレートの製造方法]
本発明は、本明細書に記載する方法により製造したカルボキシレート清浄剤に関する。
【0029】
ある態様では、上記のカルボキシレート清浄剤は、(1)アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物をアルカリ金属塩基で中和し、それにより中和したアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を生成させ、次いで(2)出発アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のうちの少なくとも50%が、アルキルヒドロキシ安息香酸に変換されるまで、中和したアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物に二酸化炭素(CO)を吹き込むことによりカルボキシル化し、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸アルカリ金属塩が生じ、次に(3)アルカリ金属塩をアルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸に変換できる少なくとも一種の酸と接触させ、そして(4)過塩基化して、過塩基性アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボキシレート清浄剤を生成させることによって製造される。
【0030】
以下に、本発明の特定の製法の工程の概要を述べる。
【0031】
(ヒドロキシ芳香族化合物)
本発明においてアルキル化反応には、少なくとも一種のヒドロキシ芳香族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の混合物を使用することができる。少なくとも一種のヒドロキシ芳香族化合物又はヒドロキシ芳香族化合物混合物は、単環ヒドロキシ芳香族炭化水素のうちの少なくとも一種、例えばフェノール、クレゾールまたはそれらの混合物を含んでいることが好ましい。また、少なくとも一種のヒドロキシ芳香族化合物又はヒドロキシ芳香族化合物混合物は、2−ナフトールのような二環及び多環ヒドロキシ芳香族化合物も含んでいてもよい。より好ましくは、少なくとも一種のヒドロキシ芳香族化合物又はヒドロキシ芳香族化合物混合物はフェノールであり、異性体も全て含まれる。
【0032】
(アルファオレフィンオリゴマー)
−C20アルファオレフィンから誘導された少なくとも一種のアルファオレフィンオリゴマーを、少なくとも一種のヒドロキシ芳香族化合物と反応させて、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を生成させる。さらに、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の分子のうちの少なくとも90%はアルキル基が、アルキル基の最も長い鎖の末端から4位かそれ以上の位置(すなわち、4位もしくはそれより高位の位置)で結合していて、そしてアルキル基は、炭素数が少なくとも7の炭化水素尾を少なくとも1つ含んでいる。好ましくは、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物の分子のうちの少なくとも95%はアルキル基が、アルキル基の最も長い鎖の末端から4位かそれより高位の位置で結合していて、そしてアルキル基は、炭素数が少なくとも7の炭化水素尾部(tail)を少なくとも1つ含んでいる。
【0033】
デセン三量体またはオクテン四量体のようなアルファオレフィンオリゴマーによるアルキル化は、「風車(pinwheel)」構造を持つアルキルフェノール類をもたらす。「風車」構造とは、アルキル基が例えば芳香環に、アルキル基の最も長い鎖の末端から相当程度離れた位置で結合していることを意味する。この結果、結合箇所近くから伸びる、少なくとも2つの炭化水素尾部、又は風車の車輪が生じる。「末端から相当程度離れた」とは、アルキル基の最も長い鎖の末端から炭素原子少なくとも4個目、好ましくはアルキル基の最も長い鎖の末端から炭素原子少なくとも6個目、より好ましくは鎖の中心に向かって炭素原子少なくとも8個目の位置を意味する。従って、「風車」のアルキルフェノールのアルキル基は、炭素原子数少なくとも6、好ましくは炭素原子数少なくとも7の尾部を少なくとも2つ含んでいる。
【0034】
本発明に使用できる好ましい「風車」化合物は、アルキル置換基が実質的に直鎖の炭化水素基である尾部を持つものである。
【0035】
そのような風車構造は、下記に示すように、デセン二量体誘導アルキルヒドロキシ芳香族化合物の例としては、下記構造C、およびデセン三量体誘導アルキルヒドロキシ芳香族化合物の例としては下記構造Dによって表すことができる。これらの構造では、中括弧で、アルキル基のフェノールへの様々な結合の様式を表示しようとしている。
【0036】
【化3】

【0037】
本発明に用いられるアルファオレフィンオリゴマーは、当該分野でよく知られている方法により製造される。これらオリゴマーの好ましい一製造方法は、例えば米国特許第4238343号及び第4045507号明細書、およびオノプチェンコ(Onopchenko)、外著、「アルケン類のBF触媒によるオリゴマー化(構造、機構及び特性)」、第183回ACSナショナル・ミーティング(ACS Natl.Meet)(ラスベガス、1982年3月)、Ind.Eng.Chem.,Prod.Res.Dev.、1983年6月、第22(2)巻、p.182−191に記載されているように、オリゴマー化触媒としてBFを使用することである。
【0038】
これらアルファオレフィンオリゴマー類は75%以上が、オレフィン箇所で二または三置換されている。例えばアルファオレフィン三量体は、下記で表すことができる構造を有する。
【0039】
【化4】

【0040】
ただし、R=n−2であり、そしてnは出発アルファオレフィンの炭素数である。
【0041】
アルファオレフィンオリゴマーは実質的に直鎖である。
【0042】
好ましいアルファオレフィンオリゴマー(AOO)は、C−C20アルファオレフィンから誘導され、より好ましくはC10−C14アルファオレフィンから誘導される。好ましい「AOO」は二量体、三量体、四量体および五量体、またはそれらの混合物である。好ましくは、本発明のカルボキシレート類のアルキル基は、C10二量体およびC12二量体からなる群より選ばれたアルファオレフィンオリゴマーから誘導される。
【0043】
本発明に用いられるカルボキシレートの好ましいアルキルヒドロキシ芳香族基は、対応する下記(I)式のアルキルヒドロキシ芳香族から誘導される。
【0044】
【化5】

【0045】
式中、Rは、炭素原子数16乃至40の実質的に直鎖のアルキル基である。好ましくはRは、炭素原子数20乃至28の実質的に直鎖のアルキル基である。
【0046】
(I)式のアルキルフェノール類は、適切なオレフィン又はオレフィン混合物をアルキル化触媒の存在下で、約60℃乃至200℃、好ましくは125℃乃至180℃の温度で、無溶媒または基本的に不活性な溶媒中で、大気圧下にてフェノールと反応させることにより製造される。好ましいアルキル化触媒は、ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア)より入手できるアンバリスト(Amberlyst)15(商標)又はアンバリスト36(商標)などのスルホン酸触媒である。反応原料は適当なモル比の混合物として用いることもできる。混合物を用いるなら、反応により、ジアルキルヒドロキシ芳香族化合物とモノアルキルヒドロキシ芳香族化合物と未反応ヒドロキシ芳香族化合物の混合物が生じる。上記のように、ジアルキルヒドロキシ芳香族化合物とモノアルキルヒドロキシ芳香族化合物は、本発明の組成物に使用される添加剤を製造するのに使用することができるが、未反応ヒドロキシ芳香族化合物は反応後の混合物から従来技術により取り除くことが好ましい。フェノールはモル過剰で用いることができる。すなわち、未反応ヒドロキシ芳香族化合物を再循環させながら、各当量のオレフィンに対して2乃至2.5当量のフェノールを用いることができる。後者の方法では、モノアルキルヒドロキシ芳香族化合物が最大になる。不活性溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、および芳香族炭化水素とパラフィン類とナフテン類の混合物である250シンナーが挙げられる。
【0047】
使用できるAOO誘導アルキルヒドロキシ芳香族化合物の平均分子量は、350乃至790の範囲にあり、平均アルキル炭素数は16乃至50、好ましくは20乃至40の範囲にある。
【0048】
AOO類から誘導されたアルキルヒドロキシ芳香族化合物は、環境温度で実質的に液体である。
【0049】
本発明に用いられるアルキルヒドロキシ芳香族化合物の別の製造方法も考えられる。「風車」アルキルフェノール類は多数の方法で合成することができる。これらの方法は一般に、フェノールのアルキル化前にアルキル部全体を処理するか、あるいはその後に、アルキル基が風車アルキルフェノールへの更なる展開に必要な官能基を有する予備生成アルキルフェノールを作るかのどちらかによって行なわれる。こうして、風車オレフィンまたはそれに対応したアルコールまたは塩化又は臭化アルキルなどのハロゲン化アルキルで、フェノールをアルキル化することが可能になる。
【0050】
(酸触媒)
ある態様では、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は、強酸触媒(ブレンステッド酸又はルイス酸)を用いて製造することができる。「強酸」は、pKaが約4より低い酸を意味する。また、「強酸」には、塩酸より強い鉱酸、並びに本明細書に記載した発明に照らして用いられる同じ条件で、ハメット酸度値が少なくともマイナス10又はそれ以下、好ましくは少なくともマイナス12又はそれ以下である有機酸が含まれることも意図している。ハメット酸度関数は、次のように定義される。
【0051】

= pKBH+ − log(BH/B)
【0052】
ただし、Bは塩基であり、BHはそのプロトン化した形であり、pKBH+は共役酸の解離定数であり、そしてBH/Bはイオン化率であり、Hの負の値が低いほど酸の強度が強いことに相当する。
【0053】
ある態様では、強酸触媒は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸および硝酸からなる群より選ばれる。最も好ましい強酸触媒はフッ化水素酸である。
【0054】
アルキル化法はバッチ法でも連続法でも実施することができる。強酸触媒は、連続法で使用したときは再循環させることができる。バッチ法で用いても連続法で用いても、強酸触媒を再循環又は再生させることができる。
【0055】
強酸触媒は、失活した(すなわち、その触媒活性の全部又は一部を失った)のち、再生させることができる。当該分野でよく知られている方法を使用して、失活したフッ化水素酸触媒を再生させることができる。
【0056】
その他の好適な酸触媒としては、スルホン酸イオン交換樹脂、例えば、ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas Corporation)より入手することができるアンバリスト(Amberlyst、商標)と、同一であるとみなされる物質の部類を挙げることができる。他のスルホン酸イオン交換樹脂も適している。用いることができる他の固体酸触媒としては少なくとも一種の金属酸化物が挙げられ、天然ゼオライト類、合成ゼオライト類、合成分子ふるいおよび粘土類からなる群より選ばれる。好ましくは第二の固体酸性触媒は、酸性粘土の酸形、または酸性分子ふるい、または平均孔径が少なくとも6.0オングストロームのゼオライトを含んでいる。そのようなゼオライト類としては、ゼオライトY、ベータ、SSZ−25、SSZ−26およびSSZ−33が挙げられる。他の可能な触媒としては、Lゼオライト、モルデナイト、ボッグサイト、クロヴェライト、VPI−5、MCM−41、MCM−36、SAPO−8、SAPO−5、MAPO−36、SAPO−40、SAPO−41、MAPSO−46、CoAPO−50、六方晶フォージャサイト(EMC−2)、グメリナイト、マザイト(オメガゼオライト)、オフレタイト、ZSM−18およびZSM−12を挙げることができる。これらの触媒は、ローズマリー・ゾスタク(Rosemarie Szostak)著、「分子篩便覧(Handbook of Molecular Sieves)」(ニューヨーク、ヴァン・ノストランド・ラインホルド(Van Nostrand Reinhold)、1992年)に記述されている。
【0057】
アルキル化法はバッチ法でも連続法でも実施することができる。強酸触媒は、連続法で使用したときは再循環させることができる。
【0058】
(アルキル化芳香族化合物の製造方法)
本発明の一態様では、少なくとも一種のヒドロキシ芳香族化合物又はヒドロキシ芳香族化合物の混合物の最初の量を、撹拌下にある反応器内でフッ化水素酸などの強酸触媒の存在下で、アルファオレフィンオリゴマーの混合物と反応させ、それにより反応生成物を生成させることによって、アルキル化法を実施する。強酸触媒を閉ループサイクルで一以上の反応器に再循環させてもよい。反応生成物を更に処理して、余分な未反応ヒドロキシ芳香族化合物と任意にオレフィン化合物を、所望のアルキレート生成物から取り除く。余分なヒドロキシ芳香族化合物も1以上の反応器に再循環させてもよい。
【0059】
フッ化水素酸とオレフィン化合物の混合物との全充填モル比は、約1.0対1である。
【0060】
芳香族化合物とオレフィン化合物の混合物との全充填モル比は、約7.5対1である。
【0061】
アルキル化法は、約0℃乃至約100℃の温度で実施することができる。供給成分の実質部分が液相に留るほど充分な圧力の下でこの方法を実施する。一般に、供給物および生成物を液相で維持するには0乃至150psigの圧力で充分である。
【0062】
連続式アルキル化法では、固体酸触媒を含む固定床を用いてアルキル化を行うことができる。連続法は、摂氏40乃至180度で行うことができ、一般に大気圧下で実施する。
【0063】
アルキル化法のための炭化水素供給物は、ヒドロキシ芳香族化合物の混合物とアルファオレフィンオリゴマーの混合物とからなり、ヒドロキシ芳香族化合物とアルファオレフィンオリゴマー類のモル比は、約0.5:1乃至約50:1又はそれ以上である。ヒドロキシ芳香族化合物とアルファオレフィンオリゴマー類のモル比が>1.0対1である場合には、過剰量のヒドロキシ芳香族化合物が存在する。過剰なヒドロキシ芳香族化合物を使用して反応速度を上げ、生成物選択性を高めることが好ましい。過剰なヒドロキシ芳香族化合物を使用したときには、反応器流出液中の余分な未反応ヒドロキシ芳香族を例えば蒸留により分離して、反応器に再循環させることができる。
【0064】
[中和工程]
アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を、上述したようにアルカリ金属塩基を用いて中和する。塩基としてはこれらに限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム又はカリウムの酸化物又は水酸化物が挙げられる。水酸化カリウムが好ましい。また、水酸化ナトリウムも好ましい。好ましくは軽質溶媒、例えばトルエン、キシレン異性体類または軽質アルキルベンゼン等を存在させて、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物の中和を行ない、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩にする。ある態様では、溶媒は水と共沸混合物を形成する。別の態様では、溶媒は、2−エチルヘキサノールのようなモノアルコールであってもよい。この場合に2−エチルヘキサノールは、カルボキシル化の前に蒸留によって取り除く。溶媒を用いる目的は、水の除去を容易にすることにある。
【0065】
この工程は、水を除去するのに充分な高い温度で実施する。ある態様では低い反応温度を必要とするために、生成物を若干の減圧下に置く。
【0066】
ある態様では溶媒としてキシレンを使用して、130℃から155℃の間の温度で、800mbar(8×10Pa)の絶対圧で反応を行う。
【0067】
別の態様では溶媒として2−エチルヘキサノールを使用する。2−エチルヘキサノールの沸点(184℃)がキシレン(140℃)よりも非常に高いので、少なくとも摂氏150度の温度で反応を行う。
【0068】
反応水の蒸留を完全にするために、圧力を徐々に大気圧より低くする。好ましくは、圧力を70mbar(7×10Pa)以下まで下げる。
【0069】
充分に高い温度で操作を実施し、反応器の圧力を徐々に大気圧より低くするならば、溶媒を加えて反応中に生じた水との共沸混合物を形成する必要も無く、中和反応を実施できる。この場合に、温度を200℃まで上げ、次いで圧力を徐々に大気圧より低くする。好ましくは、圧力を70mbar(7×10Pa)以下まで下げる。
【0070】
水の除去は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3時間かけて行う。
【0071】
使用する試薬の量は、次のようなモル比に対応しているべきである:アルカリ金属塩基:アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物、約0.5:1乃至1.2:1、好ましくは約0.9:1乃至1.05:1、溶媒:アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物(容量:容量)、約0.1:1乃至5:1、好ましくは約0.3:1乃至3:1。
【0072】
[カルボキシル化]
カルボキシル化工程は、前述の中和工程で生じた反応媒体に単に二酸化炭素(CO)を吹き込むことにより行い、そして出発アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のうちの少なくとも50%が、アルキルヒドロキシ安息香酸(電位差定量によりヒドロキシ安息香酸として測定)に変換されるまで続ける。
【0073】
二酸化炭素を用いて、約110℃から200℃の間の温度で、ほぼ大気圧乃至15bar(15×10Pa)、好ましくは1bar(1×10Pa)乃至5bar(5×10Pa)の範囲内の圧力で、約1から8時間の時間をかけて、出発アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のうちの少なくとも50モル%、好ましくは75モル%、より好ましくは85モル%を、アルキルヒドロキシベンゾエートに変換させる。
【0074】
カリウム塩を用いる一変形では、温度は約125℃から165℃の間にあることが好ましく、より好ましくは130℃から155℃の間にあり、そして圧力はほぼ大気圧乃至15bar(15×10Pa)であり、好ましくはほぼ大気圧乃至4bar(4×10Pa)である。
【0075】
ナトリウム塩を用いる別の変形では、温度は低い傾向にあって、好ましくは約110℃から155℃の間にあり、より好ましくは約120℃乃至140℃の間にあり、そして圧力は約1bar乃至20bar(1×10乃至20×10Pa)であり、好ましくは3bar乃至15bar(3×10乃至15×10Pa)である。
【0076】
カルボキシル化は通常、炭化水素またはアルキレート、例えばベンゼン、トルエンおよびキシレン等のような溶媒に希釈して実施する。この場合に、溶媒:ヒドロキシベンゾエート(すなわち、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩)の質量比は、約0.1:1乃至5:1であり、好ましくは約0.3:1乃至3:1である。
【0077】
別の変形では、溶媒を使用しない。この場合に、物質の粘性が高過ぎるのを避けるために希釈油を存在させてカルボキシル化を行う。
【0078】
希釈油:アルキルヒドロキシベンゾエートの質量比は、約0.1:1乃至2:1であり、好ましくは約0.2:1乃至1:1、より好ましくは約0.2:1乃至0.5:1である。
【0079】
[酸性化]
上記で生成したアルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩を次に、アルカリ金属塩をアルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸に変換することが可能な少なくとも一種の酸と接触させる。上記のアルカリ金属塩を酸性にするような酸も当該分野ではよく知られている。
【0080】
[過塩基化]
アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸の過塩基化は、当該分野の熟練者であれば知悉している任意の方法で実施することができて、過塩基性アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボキシレート清浄剤が生成する。
【0081】
本発明の一態様では、アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸を、二酸化炭素の存在下で、芳香族溶媒(キシレン)を存在させて、かつメタノールのような炭化水素アルコールを存在させて、石灰(アルカリ土類金属水酸化物)と反応させることにより、反応器内で過塩基化反応を実施する。
【0082】
過塩基化の程度は、アルカリ土類金属水酸化物や二酸化炭素、反応混合物に添加する反応体の量、および炭酸化工程で用いる反応条件によって制御することができる。
【0083】
使用する試薬(メタノール、キシレン、消石灰およびCO)の質量比は、次のような質量比に相当する:キシレン:消石灰、約1.5:1乃至7:1、好ましくは約2:1乃至4:1。メタノール:消石灰、約0.25:1乃至4:1、好ましくは約0.4:1乃至1.2:1。二酸化炭素:消石灰、モル比で約0.5:1乃至1.3:1、好ましくは約0.7:1乃至1.0:1。C−Cカルボン酸:アルカリ金属塩基アルキルヒドロキシベンゾエート、モル比で約0.02:1乃至1.5:1、好ましくは約0.1:1乃至0.7:1。
【0084】
石灰は、スラリーとして(すなわち、石灰、メタノール、キシレンの予備混合物として)添加し、そしてCOは、約20℃から65℃の間の温度で1時間乃至4時間かけて導入する。
【0085】
高過塩基性物質(TBN>250)では、性能を少しも劣化させないで、粗沈降物を0.4容量%乃至3容量%の範囲で、好ましくは0.6容量%乃至1.8容量%の範囲で得るように、石灰とCOの量を調整する。
【0086】
中過塩基性物質(TBN100乃至250)では、粗沈降物を0.2容量%乃至1容量%の範囲で得るように石灰とCOの量を調整する。C−Cカルボン酸を使用しないと、粗沈降物は約0.8容量%乃至3容量%の範囲になる。
【0087】
上述した工程の各々において、任意に、溶媒や粗沈降物を除去するために予備蒸留や遠心分離、蒸留を利用することができる。110℃から134℃の間で加熱することにより、水、メタノールおよび一部のキシレンを除去することができる。この後で、遠心分離により未反応石灰を除去することができる。最後に、ASTM D93に記載されているペンスキー・マルテンス密閉カップ(PMCC)試験機で測定して、少なくとも約160℃の引火点に達するように減圧下で加熱することにより、キシレンを除去することができる。
【0088】
[潤滑油組成物]
本発明は、本発明の過塩基性アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボキシレート清浄剤を含む潤滑油組成物にも関する。そのような潤滑油組成物は、主要量の潤滑粘度の基油、および少量の本発明の過塩基性アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボキシレート清浄剤を含有している。
【0089】
基油は、本明細書で使用するとき、単一の製造者により同一の仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様を満たし、かつ独特の処方、製造物確認番号またはその両方によって識別される潤滑剤成分である、基材油または基材油のブレンドと定義される。基材油は各種の異なる方法を用いて製造することができ、その例としては、これらに限定されるものではないが、蒸留、溶剤精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を挙げることができる。再精製基材油には、製造、汚染もしくは以前の使用によって混入した物質が実質的に含まれない。本発明の基油は、任意の天然又は合成の潤滑油基油留分であってよく、特には、動粘度が100℃で約4センチストークス(cSt)乃至約20cStのものである。炭化水素合成油としては例えば、エチレンの重合により製造された油、ポリアルファオレフィン又はPAO、あるいはフィッシャー・トロプシュ法のような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いた炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。好ましい基油は、重質留分を含む場合でもその量が僅かである、例えば粘度が約100℃で約20cSt以上の潤滑油留分を殆ど含むことのない油である。基油として使用される油は、所望の最終用途および完成油の添加剤に応じて選択またはブレンドされて、所望のグレードのエンジン油、例えばSAE粘度グレードが0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30又は15W−40の潤滑油組成物を与える。
【0090】
基油は、天然の潤滑油、合成の潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、合成ろうおよび粗ろうの異性化により得られた基材油、並びに粗原料の芳香族及び極性成分を(溶剤抽出というよりはむしろ)水素化分解することにより生成した水素化分解基材油を挙げることができる。好適な基油としては、API公報1509、第14版、補遺I、1998年12月に規定された全API分類I、II、III、IV及びVに含まれるものが挙げられる。第1表に、I、II及びIII種基油の飽和度レベルおよび粘度指数を記載する。IV種基油はポリアルファオレフィン(PAO)類である。V種基油には、I、II、III又はIV種に含まれなかったその他全ての基油が含まれる。III種基油が好ましい。
【0091】
第 1 表

I、II、III、IV及びV種基材油の飽和度、硫黄分及び粘度指数


種 飽和度 粘度指数 硫黄分
(ASTM (ASTM D4294、
D2007で決定) D2270、4297
又は3120で決定)

I 飽和度90%未満 80以上、120未満 硫黄0.03%より上
II 飽和度90%以上 80以上、120未満 硫黄0.03%以下
III 飽和度90%以上 120以上 硫黄0.03%以下
IV −−−−−−−全ポリアルファオレフィン類(PAO)−−−−−−−−
V −−I、II、III又はIV種に含まれないその他全ての基材油−−

【0092】
天然の潤滑油としては、動物油、植物油(例えば、ナタネ油、ヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、および石炭またはシェールから誘導された油を挙げることができる。
【0093】
合成油としては、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば重合及び共重合オレフィン類、アルキルベンゼン類、ポリフェニル類、アルキル化ジフェニルエーテル類、アルキル化ジフェニルスルフィド類、並びにそれらの誘導体、それらの類似物および同族体等を挙げることができる。また、合成潤滑油としては、アルキレンオキシド重合体、真の共重合体、共重合体、および末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって変性したそれらの誘導体も挙げることができる。合成潤滑油の別の好適な部類には、ジカルボン酸と各種アルコールのエステル類が含まれる。また、合成油として使用できるエステル類としては、C−C12のモノカルボン酸とポリオールとポリオールエーテルから製造されたものも挙げられる。トリアルキルリン酸エステル油、例えばトリ−n−ブチルホスフェートおよびトリ−イソ−ブチルホスフェートで例示されるものも、基油として使用するのに適している。
【0094】
ケイ素系の油(例えば、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油)は、合成潤滑油の別の有用な部類を構成する。その他の合成潤滑油としては、リン含有酸の液体エステル類、高分子量テトラヒドロフラン類、およびポリアルファオレフィン類等が挙げられる。
【0095】
基油は、未精製、精製、再精製の油またはそれらの混合物から誘導してもよい。未精製油は、天然原料または合成原料(例えば、石炭、シェールまたはタール・サンド・ビチューメン)から直接、それ以上の精製や処理無しに得られる。未精製油の例としては、レトルト操作により直接得られたシェール油、蒸留により直接得られた石油、またはエステル化処理により直接得られたエステル油が挙げられ、その後各々それ以上の処理無しに使用することができる。精製油は、一以上の特性を改善するために一以上の精製工程で処理されていることを除いては、未精製油と同様である。好適な精製技術としては、蒸留、水素化分解、水素化処理、脱ろう、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、ろ過、およびパーコレートが挙げられ、それらは全て当該分野の熟練者であれば知っている。再精製油は、使用済の油を精製油を得るために用いたのと同様の方法で処理することにより得られる。これらの再精製油は、再生又は再処理油としても知られていて、しばしば使用された添加剤や油分解生成物の除去を目的とする技術により更に処理される。
【0096】
ろうの水素異性化から誘導された基油も、単独で、あるいは前記天然及び/又は合成基油と組み合わせて使用することができる。そのようなろう異性体油は、天然又は合成ろうまたはそれらの混合物を水素異性化触媒で水素異性化することにより製造される。
【0097】
本発明の潤滑油組成物には主要量の基油を使用することが好ましい。主要量の基油とは、本明細書で定義するとき、40質量%かそれ以上を占める。好ましい基油の量は、潤滑油組成物のうちの約40質量%乃至97質量%を占め、好ましくは約50質量%より多く97質量%まで、より好ましくは約60質量%乃至97質量%、そして最も好ましくは約80質量%乃至95質量%を占める。(質量パーセントは、本明細書で使用するとき、特に明記しない限り潤滑油のうちの質量パーセントを意味する。)
【0098】
本発明の方法により製造された過塩基性アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボキシレート(すなわち、過塩基性アルカリ金属アルキルヒドロキシベンゾエート)は、潤滑油組成物においては潤滑粘度の基油に比べて少量である。一般に、潤滑油組成物の全質量に基づき約1質量%乃至25質量%の量であり、好ましくは約2質量%乃至12質量%、より好ましくは約3質量%乃至8質量%の量である。
【0099】
[その他の添加剤成分]
下記の添加剤成分は、本発明の潤滑油添加剤と組み合わせて好ましく用いることができる成分の例である。本発明を説明するためにこれら添加剤の例を提示するが、これらは本発明を限定しようとするものではない。
【0100】
(A)無灰分散剤
アルケニルコハク酸イミド類、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド類、およびホウ酸で変性したアルケニルコハク酸イミド類、アルケニルコハク酸エステル。
【0101】
(B)酸化防止剤
1)フェノール型(フェノール系)酸化防止剤:4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−アルファ−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)。
【0102】
2)ジフェニルアミン型酸化防止剤:アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化アルファ−ナフチルアミン。
【0103】
3)その他の型:金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、およびメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)。
【0104】
(C)さび止め添加剤(さび止め剤)
1)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
【0105】
2)その他の化合物:ステアリン酸および他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸類、脂肪酸アミン塩類、重質スルホン酸の金属塩類、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0106】
(D)抗乳化剤
アルキルフェノールとエチレンオキシドの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0107】
(E)極圧剤(EP剤)
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(Zn−DTP、第一級アルキル型及び第二級アルキル型)、硫化油、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛。
【0108】
(F)摩擦調整剤
脂肪アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ酸化エステル、および他のエステル類。
【0109】
(G)多機能添加剤
硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン・モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0110】
(H)粘度指数向上剤
ポリメタクリレート型重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水素化スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤。
【0111】
(I)流動点降下剤
ポリメチルメタクリレート。
【0112】
(J)消泡剤
アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【0113】
(K)金属清浄剤
硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート類、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート類、カルシウムスルホネート類、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩類、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート類、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート類、アルカノール酸の金属塩類、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩類、およびそれらの化学的及び物理的混合物。
【0114】
その他の態様が可能なことも当該分野の熟練者には明らかであろう。
【0115】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明するために提示するのであって、決して本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0116】
[実施例1] 自動車用エンジン油配合物におけるC20−24カルボキシレート類の低温性能
第1.1表は、下記の自動車エンジン油用添加剤パッケージと基油ブレンドを用いて製造した完全配合自動車用エンジン油にて、ASTM D4684(−35℃、MRV)試験で測定したときの五種類のカルボキシレート清浄剤の低温性能を示す。
【0117】
第1表 自動車エンジン油用添加剤パッケージ


添加剤 処理比率


ホウ酸化ビスコハク酸イミド 3.0質量%
後処理(エチレンカーボネート)ビスコハク酸イミド 5.0質量%
非炭酸化カルシウムスルホネート 8mmolCa/kg
完成油中
後処理(フタル酸)ビスコハク酸イミド 0.4質量%
ジチオリン酸亜鉛 12.5mmolP/
kg完成油中
モリブデン・コハク酸イミド錯体 0.4質量%
アミン系酸化防止剤 0.5質量%
フェノール系酸化防止剤 0.5質量%
消泡剤 30ppm完成油中
カルボキシレート清浄剤 56mmolCa/
kg完成油中

【0118】
このパッケージを15.2質量%で下記の基油ブレンドにブレンドして、5W40マルチグレード完成油とした。
【0119】
第1.1表 基油ブレンド


成分 %


III種基材油1 52.2
III種基材油2 20.3
流動点降下剤 0.3
粘度指数向上剤 12.0

【0120】
第1.1表のデータは、カルボキシレート清浄剤を製造するのに使用したアルキルフェノールへのアルキル鎖の結合がアルキル鎖の中心に向かうほど、すなわち4位以上でのアルキル鎖結合の量が多いほど、MRV性能が向上することを示している。
【0121】
第1.2表


カルボキシレート

比較
I カルボキシレートA


カルボキシレートのTBN 350 357
カルボキシレートの製造に 風車I A
用いたアルキルフェノール (実施例3) (実施例4)
アルキルフェノールの
アルキル尾の炭素数 20−24 20−24
アルキルフェノールの芳香環への
4位以上でのアルキル鎖結合% 96.8 38.6
アルキルフェノールの製造に
用いたオレフィンの分枝% 82.1 6.8

MRV結果
降伏応力(Pa) 0<Y≦35 Y>350
粘度(cP、−35℃) 31905 凍結

【0122】
[実施例2] C10−12二量体オレフィン
シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(Chevron Phillips Chemical Company)より、非水素化C10−12ノルマルアルファオレフィン(NAO)二量体の試料を入手した。GLPCによる分析は、およそC10二量体オレフィン84%とC12二量体オレフィン16%から構成されることを示した。
【0123】
[実施例3] 風車アルキルフェノールIの製造
機械的撹拌器と還流冷却器と熱電対を取り付けた10リットル四つ口ガラスフラスコに、乾燥窒素雰囲気中で、融解フェノール2500グラム(26.6モル)を充填した後、実施例2のC10−12二量体オレフィン1490グラム(5.2モル)を充填した。この穏やかに撹拌している混合物に、ローム・アンド・ハース社より入手したアンバリスト36(商標)酸性イオン交換樹脂(110℃の炉でおよそ25時間乾燥)490グラムを加えた。反応温度を120℃に上げて約87.5時間保持したが、その時点で変換は81.0%(超臨界流体クロマトグラフィによると)であった。追加のアンバリスト36触媒100グラムを反応フラスコに加え、そして反応物を120℃で約29.5時間保持し、その時点で変換は83.7%(超臨界流体クロマトグラフィによると)であった。生成物をブフナー漏斗で減圧によってろ過し、ろ液を以前の反応のろ液と一緒にして生成物およそ1.3kgを得た。この生成物を98乃至108℃、50Torr減圧で、次に94℃、30Torr減圧で、最後に94−204℃、1.0Torr減圧で減圧蒸留して、次のような性状のアルキルフェノールIを8638グラム得た:超臨界流体クロマトグラフィによるとパラフィン12.8%、ジ−アルキレート6.0%;IRによるとパラ−アルキル異性体58%;HPLCによるとエーテル1.1%、ジ−アルキレート3.7%、パラ−アルキル異性体54.2%、遊離フェノール0.03%、およびMn=343;GCMSによるとアルカン類12.7%。
【0124】
[実施例4] アルキルフェノールAの製造
シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニーより入手した非異性化C20−24NAOを用いて実施例3のようにして、アルキルフェノールAを製造した。アルキルフェノールAは次のような性状であった:SFCによると未反応オレフィン/パラフィン2.7%、ジ−アルキレート7.1%;IRによるとパラ−アルキル異性体40%;HPLCによるとエーテル2.2%、ジ−アルキレート4.9%、パラ−アルキル異性体36.9%、遊離フェノール0.5%、およびMn=394。
【0125】
[実施例5] アルキルフェニル基の性質の決定
質量分析検出法を用いたGLPC(GCMS)を使用して、実施例3及び4のアルキルフェノールのアルキルフェノール置換基の性質を測定した。アルキルフェノールは質量分析中に、ベンジル位にあるアルキル鎖のうちの大きい方が取り除かれてフェノールイオン種になり、その後分解してよく知られたトロピリウムイオンになるような仕方で、分解する傾向にある。
【0126】
実施例3の風車アルキルフェノールのGCMS分析は、ピークの基本分解ができないような一群のピークからなる複雑なクロマトグラムを示している。だが、一群全体にわたるピークのMSスキャンを平均すると、たった約3.2%のアルキルフェニル基だけがアルキル尾に沿った2及び3位で結合しているフェノールイオン種の生成を示した。よって、およそ96.8%のアルキル基は、炭化水素主鎖に沿った4位かそれより以上(高い位置)で結合している。
【0127】
実施例4のアルキルフェノールのGCMS分析では、ガスクロマトグラムに分解能の高いピークが現れている。これらピークのMSフラグメンテーションパターン分析は、およそ61.4%のアルキルフェニル基がアルキル尾に沿った2及び3位で結合していることを示した。よって、およそ38.6%のアルキル基だけが、炭化水素主鎖に沿った4位かそれ以上で結合している。
【0128】
[実施例6] 風車アルキルフェノールIの中和によるそれに対応したカリウム塩の製造
実施例3の風車アルキルフェノールI(1500グラム、3.48モル)を、ディーン・スターク・トラップと冷却器を備えた4リットル四つ口丸底フラスコに充填した後、混合キシレン750gおよび消泡剤0.2gを充填した。混合物を撹拌しながら15分かけて60℃に加熱した後、KOH50質量%水溶液507.2グラム(純度の補正をして4.53モル)を10分かけて加えた。次いで、この混合物を150分かけて135℃まで加熱した。この135℃までの温度上昇の始めに、圧力を450mmHgまで下げた。得られた還流キシレンを更に3時間還流し続けたが、その時点でディーン・スターク・トラップから水358.5mlを回収した。次に、反応物を室温まで冷却し、乾燥窒素雰囲気中で保持した。この液体の分析は、水=106ppmの存在、および全塩基価=89.8を示した。
【0129】
[実施例7] 風車アルキルフェノールIのカリウム塩のカルボキシル化
実施例6で得られたアルキルフェノールカリウム塩のキシレン溶液を80℃に加熱して、4リットルステンレス鋼圧力反応器に移した。反応器の内容物を140℃に加熱し、そして反応器が圧力3barに達するまで生成物にCOを吹き込んだ。反応物を140℃、CO3barの一定圧力で4時間保持した。反応器の内容物をおよそ100℃まで冷却して、次のような性状のカリウムカルボキシレートのキシレン溶液を得た:物質収支によるとキシレン29.5%;滴定によるとカルボン酸=62.8mgKOH/グラム試料。
【0130】
[実施例8] 風車アルキルフェノールIから誘導したカリウムカルボキシレートの酸性化
実施例7で得られたカリウムカルボキシレートのキシレン溶液(1100グラム)を、機械式撹拌器と還流冷却器と温度計を取り付けた4リットル四つ口丸底フラスコに、乾燥窒素雰囲気中で室温で注入した後、混合キシレン622グラムを注いだ。この混合物に、HSO10質量%水溶液1209グラムを撹拌しながら30分かけて加えた。この間に反応物を60℃に加熱し、そして60℃で30分間保持した。生成物を分液漏斗に移し、およそ2時間静置して相分離させ、この時点で次のような性状の有機相1619.3グラムを得た:滴定によるとカルボン酸=38.3mgKOH/グラム試料;物質収支によるとキシレン59.2%;水=2600ppm、K=94ppm。
【0131】
[実施例9] 風車アルキルフェノールIから誘導したカルボン酸の過塩基化によるカルボキシレートIの製造
カルボン酸の過塩基化を二段階で遂行する:中和および炭酸化に続いて、予備蒸留、遠心分離および最終蒸留。
【0132】
(中和および炭酸化)
石灰(272.9グラム)とメタノール(226.7グラム)と混合キシレン(370グラム)のスラリーを、機械的撹拌器とガス送込管と還流冷却器を取り付けたジャケット付き4リットル四つ口ガラス反応器内で室温で調製した。この混合物に、実施例8で得られたカルボン酸のキシレン溶液1325.3グラムを、撹拌しながら混合物を28℃に加熱しながら15分かけて加えた。次に、反応物の温度を15分かけて40℃に加熱した後、ギ酸/酢酸混合物(質量比50:50)13.9グラムをフラスコに加えた。反応物の温度が43℃に上がり、5分間かき混ぜた。次に、反応混合物を20分かけて30℃まで冷却した後、COガス(9.8グラム)を11分かけて反応物に加えたが、この時点で温度は32℃に上がった。CO(81.6グラム)を75分かけて反応物に加えたが、反応温度は48℃に上がった。二回目の石灰(51.9グラム)とメタノール(42.9グラム)と混合キシレン(260グラム)のスラリーを、フラスコに加えた。CO2(61.1グラム)を57分かけて反応物に加えたが、この時点で反応温度は60℃に上がった。
【0133】
(予備蒸留、遠心分離および最終蒸留)
蒸留によりメタノール、水、およびキシレンの一部を取り除いた。蒸留頭部に還流冷却器を取り付け、そして110分かけて反応温度を128℃に上げた。反応物が128℃に達したときに、油(100ニュートラル)422.5グラムを撹拌しながら加えた。反応物の試料は、粗沈降物=2.5容量%を示した。この生成物を遠心分離にかけて(アルファ・ラバル・ジャイロテスター)、存在する固形物を取り除き、そして得られた溶液を減圧蒸留して(204℃、60mbar)、残留キシレンを取り除いて、次のような性状のカルボキシレートIを得た:Ca%=12.40%、粘度(100℃)=49.4cSt、滴定によるとカルボン酸=38.8mgKOH/グラム試料、およびカリウム=108ppm、全塩基価=350。
【0134】
[実施例10(比較例)] アルキルフェノールAから比較例BカルボキシレートAの製造
実施例6、7、8及び9の方法に従って、実施例4のアルキルフェノールAから出発して比較カルボキシレートAを製造して、次のような性状の比較カルボキシレートAを得た:Ca%=12.66%、粘度(100℃)=52.5cSt、滴定によるとカルボン酸=35.7mgKOH/グラム試料、およびカリウム=136ppm、全塩基価=357。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む方法により製造されたカルボキシレートを含有する潤滑油用清浄添加剤:
(a)ヒドロキシ芳香族化合物を、C−C20アルファオレフィンから誘導した少なくとも一種のアルファオレフィンオリゴマーでアルキル化し、それによりアルキルヒドロキシ芳香族化合物を生成させる工程、ただし、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の分子のうちの少なくとも90%は、アルキル基が、アルキル基の最も長い鎖の末端から4位又はそれより高位の位置で結合していて、かつアルキル基は、炭素数が少なくとも7の炭化水素尾部を少なくとも1つ含んでいる、
(b)得られたアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物をアルカリ金属塩基で中和して、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩にする工程、
(c)工程(b)からのアルカリ金属塩を二酸化炭素で炭酸化し、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸アルカリ金属塩を生成させる工程、
(d)工程(c)で生成した塩を酸で酸性にして、アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸を生成させる工程、そして
(e)アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボン酸を、二酸化炭素の存在下で石灰で過塩基化し、それにより過塩基性アルキル化ヒドロキシ芳香族カルボキシレート清浄剤を生成させる工程。
【請求項2】
アルファオレフィンオリゴマーが、C−C20アルファオレフィン類から誘導した二量体を含んでいる請求項1に記載のカルボキシレート清浄剤。
【請求項3】
アルファオレフィンオリゴマーが、C10−C16アルファオレフィン類から誘導した二量体を含んでいる請求項1に記載のカルボキシレート清浄剤。
【請求項4】
アルカリ金属塩基が水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムである請求項1に記載のカルボキシレート清浄剤。
【請求項5】
工程(c)において、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のうちの少なくとも50%がアルキルヒドロキシ安息香酸に変換されるまで、二酸化炭素を反応物に加える請求項1に記載のカルボキシレート清浄剤。
【請求項6】
潤滑粘度の油、および請求項1に記載の方法により製造されたカルボキシレート清浄剤を含む潤滑油組成物。
【請求項7】
アルキルヒドロキシ芳香族化合物の分子のうちの少なくとも95%は、アルキル基が、アルキル基の最も長い鎖の末端から4位又はそれより高位の位置で結合していて、かつアルキル基は、炭素数が少なくとも7の炭化水素尾部を少なくとも1つ含んでいる請求項1に記載のカルボキシレート清浄剤。
【請求項8】
下記の構造を有するカルボキシレート清浄剤。
【化1】




(ただし、Rは、C−C20アルファオレフィンの実質的に直鎖のオリゴマー類から誘導された、炭素原子数16乃至40の実質的に直鎖のアルキル基であって、実質的に直鎖のアルキル基のうちの少なくとも90%がアルキル基の最も長い鎖の末端から4位又はそれより高位の位置で結合し、かつ炭素数が少なくとも7の炭化水素尾部を少なくとも1つ含んでいるアルキル基であり、そしてyおよびzは独立に、整数または部分整数である)
【請求項9】
アルキル基が、アルキル基の最も長い鎖の末端から少なくとも6個目の炭素原子でフェノール環に結合している請求項8に記載のカルボキシレート。
【請求項10】
Rが、C10−C14アルファオレフィン類から誘導された、炭素原子数20乃至28の実質的に直鎖のアルキル基である請求項8に記載のカルボキシレート。
【請求項11】
Rが、C10二量体から誘導された、炭素原子数20の実質的に直鎖のアルキル基である請求項10に記載のカルボキシレート。

【公表番号】特表2013−512993(P2013−512993A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542104(P2012−542104)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/058000
【国際公開番号】WO2011/068733
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【出願人】(598066514)シェブロン・オロナイト・エス.アー.エス. (20)
【Fターム(参考)】