説明

低温貯蔵庫

【課題】貯蔵物の容積に応じて貯蔵庫内における保冷室の容積の変更が可能な低温貯蔵庫を提供する。
【解決手段】冷却ユニット6と、貯蔵庫3と、貯蔵庫3内を冷却ユニット6からの冷気が導入される保冷室3Aと冷気が導入されない非保冷室3Bとに区分可能な仕切り板14と、を備え、保冷室3Aの容積を増減できるよう仕切り板14の位置を変更可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米、麦、野菜等の貯蔵物を低温状態で保存するために用いられる低温貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を低温状態で保存する貯蔵庫として冷蔵庫が存在する。しかしながら、冷蔵庫は内部が複数の小部屋に仕切られており、保冷室の各容積が小さいため、袋詰めされた玄米等を多量に保冷することはできない。こうした不具合を解消するために、一区画の保冷容積が大きい米飯用の貯蔵庫が存在する(特許文献1参照)。米飯用の貯蔵庫には、例えば、30kgの玄米袋が多数積み重ねられて貯蔵される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−63272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温貯蔵庫に収穫した玄米を貯蔵する場合、収穫後の時期には貯蔵庫内に袋詰めされた玄米が満杯状態となる。その後、貯蔵庫内の玄米が消費されていくにつれ、貯蔵庫内には空きスペースが増加していく。このように貯蔵物が少なくなった場合であっても、貯蔵庫内において貯蔵物の保冷時には、この空きスペースも同時に保冷されている。
【0005】
つまり、貯蔵庫内の玄米が消費されることで生まれる空きスペースについては、保冷の必要がないにも関わらず、玄米(貯蔵物)とともに保冷され続ける。したがって、貯蔵庫内の貯蔵物を保冷状態にするために、必要以上の電力が消費されている。
【0006】
本発明の目的は、貯蔵物の容積に応じて貯蔵庫内における保冷室の容積の変更が可能な低温貯蔵庫を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る低温貯蔵庫の第1特徴構成は、冷却ユニットと、貯蔵庫と、前記貯蔵庫内を前記冷却ユニットからの冷気が導入される保冷室と前記冷気が導入されない非保冷室とに区分可能な仕切り板と、を備え、前記保冷室の容積を増減できるよう前記仕切り板の位置を変更可能に構成した点にある。
【0008】
〔作用〕本構成により、貯蔵庫内の仕切り板の位置を変更することで保冷室の容積を増加させたり減少させたりすることができる。例えば、保冷室において保冷している貯蔵物を消費すると、保冷室に消費した貯蔵物の空きスペースが生まれる。このときは、仕切り板の位置を移動して、この空きスペースを小さくすべく、保冷室の容積を減少させる。反対に、保冷が必要な貯蔵物が現在の保冷室の容積に収まりきらない場合には、仕切り板の位置を保冷室の容積が増加する位置に移動する。このように、保冷室の容積が保冷の必要な貯蔵物の量に応じた適正な容積となることで、保冷室内の貯蔵物を効率よく保冷することができる。
【0009】
〔効果〕貯蔵庫内において不要な冷却空間が減り、適正な容積の保冷室が保冷されることで、消費電力量を減らすことができる。また、保冷されない非保冷室は貯蔵庫として利用することができる。
【0010】
本発明に係る低温貯蔵庫の第2特徴構成は、前記冷却ユニットの冷気を前記保冷室に導入する冷気供給口と前記保冷室の空気を前記冷却ユニットに導入する吸気口とを前記保冷室に配置した点にある。
【0011】
〔作用〕本構成により、冷却ユニットの冷気は保冷室の冷気供給口から保冷室に導入され、保冷室の空気は保冷室の吸気口から冷却ユニットに導入される。このため、冷却ユニットからの冷気の循環によって保冷室の室温が全体的に低温となって安定すると、冷却ユニットと保冷室との間で冷気が循環するようになり、外気を冷却ユニットで冷やしてから保冷室に導入する構成に比べて冷却ユニットの負荷を軽減することができる。
【0012】
〔効果〕冷却ユニットの負荷が軽減される結果、冷却ユニットの消費電力量を減らすことができる。
【0013】
本発明に係る低温貯蔵庫の第3特徴構成は、前記冷却ユニットを前記貯蔵庫の上部に配置するとともに、前記仕切り板によって前記保冷室と前記非保冷室とを左右に仕切るよう構成した点にある。
【0014】
〔作用〕冷却ユニットを貯蔵庫の上部に配置するとともに、仕切り板によって保冷室と非保冷室とを左右に仕切るよう構成すると、低温貯蔵庫が横幅方向に大きくならないだけでなく、冷気の供給口を冷却ユニットの近傍の保冷室の上面に容易に配置でき、仕切り板の位置を左右に変更しても、これに関係なく冷却ユニットからの冷気の通路を短くすることができる。
【0015】
〔効果〕低温貯蔵庫の構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】低温貯蔵庫の全体構成を示す斜視図である。
【図2】開閉ドアを取り外した状態の低温貯蔵庫の正面図である。
【図3】低温貯蔵庫の平断面図である。
【図4A】扉を閉じた状態の低温貯蔵庫の正面断面図であって、貯蔵物で満杯の状態を示す。
【図4B】扉を閉じた状態の低温貯蔵庫の正面断面図であって、満杯状態の貯蔵物のうち左側1列の貯蔵物が消費された状態示す。
【図4C】扉を閉じた状態の低温貯蔵庫の正面断面図であって、満杯状態の貯蔵物のうち左側2列の貯蔵物が消費された状態を示す。
【図5A】第2実施形態における扉を閉じた状態の低温貯蔵庫の正面断面図であって、貯蔵物で満杯の状態を示す。
【図5B】第2実施形態における扉を閉じた状態の低温貯蔵庫の正面断面図であって、満杯状態の貯蔵物のうち、上方側の貯蔵物が消費された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、低温貯蔵庫1は略箱状の筐体2を有し、筐体2内に貯蔵庫3が設けられている。筐体2の前面には前面開口部2aが形成されており、前面開口部2aには左右開きの開閉ドア4,5が備えられている。筐体2の上面には開口が形成されており、この開口を覆う形で冷却ユニット6が取り付けられている。図2に示すように、筐体2の上面の開口には、冷却ユニット6の下方から貯蔵庫3内に向けて冷気を吹出すための冷気供給口21と、貯蔵庫3内の空気を冷却ユニット6に取り入れるための吸気口22とが形成されている。冷気供給口21及び吸気口22は、右側内壁面3aの側に寄った位置に配置されている。
【0018】
開閉ドア4,5は、ヒンジによって筐体2の前面開口部2aにそれぞれ開閉可能に取り付けられ、幅方向の内側上部の表面に取手部4a,5aがそれぞれ設けられている。
【0019】
冷却ユニット6は、貯蔵庫3に冷気を送り込んで貯蔵庫3を低温維持するためのものであり、貯蔵庫3の湿度調整も可能に構成されている。冷却ユニット6は、ケース7内に凝縮器、圧縮器等を内装した作動室と、蒸発器、送風ファン等を内装する冷却室とを備える。
【0020】
筐体2の下面の隅部にはキャスター輪8及び脚部9が設けられている。低温貯蔵庫1を移動させる際には、キャスター輪8が用いられる。低温貯蔵庫1の移動後の据え付けの際には、低温貯蔵庫1を持ち上げ可能なジャッキ式の脚部9によりキャスター輪8を床から浮かせる。こうして、低温貯蔵庫1を安定した据え付け状態にする。
【0021】
図1及び図2に示すように、貯蔵庫3には、右側内壁面3aと後述する仕切り板14で構成される左側内壁面3bに上下方向の荷摺り柱11が1つずつ固定され、さらに後壁面3cに同じく上下方向の荷摺り柱12が3つ固定されている。これら荷摺り柱11,12の存在により、貯蔵物Sが内壁面3a,3b,3cに当接したとしても、貯蔵物Sと内壁面3a,3b,3cとの間に一定の空間が形成され、この空間によって冷気が循環できるよう構成されている。また、貯蔵庫3内の底部にはスノコ13が敷設されている。
【0022】
貯蔵庫3は、断熱性を有する仕切り板14によって左右2室に仕切ることが可能な構成となっている。貯蔵庫3の上壁面3dには、仕切り板14の端部と係合可能な上部レール16が貯蔵庫3の開口部側から後面側に向けて配設されている。貯蔵庫3の底部3eには、仕切り板14の端部と係合可能な下部レール17が貯蔵庫3の開口部側から後面側に向けて配設されている。本実施形態では、上部レール16として、貯蔵庫3の上壁面3dの左右方向に3本の上部レール16A,16B,16Cを備えている。貯蔵庫3の底部3eには、上部レール16A,16B,16Cに対向する位置に下部レール17として3本の下部レール17A,17B,17Cが配置されている。
【0023】
仕切り板14は矩形状であって、貯蔵庫3において保冷室3Aと非保冷室3Bを左右に仕切るために用いられる。冷却ユニット6の冷気は、筐体2の上面の冷気供給口21から保冷室3Aに導入され、保冷室3A内の貯蔵物Sの周囲を通過した後、筐体2の上面の吸気口22から保冷室3A内の空気が冷却ユニット6に導入される。したがって、保冷室3Aの室温が全体的に低温になると、冷気が冷却ユニット6を介して保冷室3A内を循環することになる。
【0024】
仕切り板14には、上端側に上部レール16に係合離脱可能な凹状の係合部14Aが設けられ、下端側に下部レール17に係合離脱可能な凹状の係合部14Bが設けられている。また、仕切り板14の保冷室3Aに面する側には、荷摺り柱11が貯蔵庫3の上下方向に設けられている。上部レール16A、下部レール17Aは共に貯蔵庫3の左端に配置され、上部レール16A、下部レール17Aの右側に所定間隔を空け、上部レール16B,16C及び下部レール17B,17Cが順に配置されている。
【0025】
例えば、低温貯蔵庫1において貯蔵庫3全体を保冷する場合(例えば、保冷を必要とする貯蔵物Sで貯蔵庫3が満杯となる場合)には、図4Aに示されるように、仕切り板14は、上部レー16Aと下部レール17Aに差し込まれて保持される。このとき、貯蔵庫3は全容積が保冷室3Aである。
【0026】
図4Aの状態から、保冷貯蔵された玄米が消費され、図4Bに示すように、例えば当初3列あった玄米袋の列のうち左端の列に貯蔵物Sが全く存在しない状態になった場合には、仕切り板14の位置を上部レール16Bと下部レール17Bに差し込まれる位置に変更する。こうすると、貯蔵庫3の左側の領域に非保冷室3Bが形成され、保冷室3Aは貯蔵庫3の全容積の約2/3となる。
【0027】
図4Bの状態から、さらに保冷貯蔵された玄米が消費され、図4Cに示すように、当初3列あった玄米袋の列のうち左側の2列に貯蔵物Sが全く存在しない状態になった場合には、仕切り板14の位置を上部レール16Cと下部レール17Cに差し込まれる位置に変更する。こうすると、保冷室3Aは貯蔵庫3の全容積の約1/3となる。
【0028】
上述のように、上部レール16及び下部レール17と係合する仕切り板14の位置を移動させると、保冷室3Aの容積を増減させることができる。冷気は保冷室3A内において循環する。したがって、貯蔵庫3内において保冷すべき貯蔵物Sが少ない場合に、保冷室3Aの容積を減らすことで消費電力を抑制することができる。また、仕切り板14が上部レール16B及び下部レール17Bや、上部レール16C及び下部レール17Cと係合する位置にあると、保冷室3Aとは別に非保冷室3Bが形成される。非保冷室3Bには、冷却ユニット6からの冷気は導入されないため保冷室としては利用できないが、保冷を必要としない貯蔵物(例えば常温での貯蔵が可能な貯蔵物)を貯蔵するスペースとして利用することができる。
【0029】
また、冷却ユニット6の吸気口22を貯蔵庫3の保冷室3Aに配置してあるので、冷却ユニット6の冷気が冷気供給口21から保冷室3Aが導入され、保冷室3Aを循環した空気が保冷室3Aの吸気口22から冷却ユニット6に導入される。このため、冷却ユニット6からの冷気の循環により保冷室3A内の室温が低温になって安定すると、冷却ユニット6と保冷室3Aとの間で冷気が循環するようになり、外気を冷却ユニット6で冷やして保冷室3Aに導入する構成に比べて冷却ユニット6の負荷を軽減することができる。その結果、冷却ユニット6の消費電力量を減らすことができる。
【0030】
また、冷却ユニット6を貯蔵庫3の上部に配置し、冷気供給口21を保冷室3Aの上面に設けたので、冷気供給口21を冷却ユニット6の近傍の保冷室3Aの上面に容易に配置でき、冷却ユニット6からの冷気の通路を短くすることができた。
【0031】
[第2実施形態]
本実施形態では、仕切り板14によって貯蔵庫3内を上下に仕切ることが可能な構成となっている。図5Aに示すように、貯蔵庫3の下方に冷気供給口21及び吸気口22を形成し、筐体2の側面側には冷却ユニット6から延設される冷気供給管21aと、吸気取込管22aとをそれぞれ冷気供給口21及び吸気口22に接続してある。こうして、上下に仕切られた貯蔵庫3の下側が保冷室3A、貯蔵庫3の上側が非保冷室3Bとするよう構成されている。
【0032】
図5Aに示すように、貯蔵庫3内の左側内壁面3bに仕切り板14の係合部14Aと係合する左側レール18(18A〜18G)が設けられ、貯蔵庫3内の右側内壁面3aに仕切り板14の係合部14Bと係合する右側レール19(19A〜19G)が設けられている。図5Aは貯蔵庫3内に貯蔵物Sが満杯の状態を示す。このときは、仕切り板14は、貯蔵庫3の最上部にある左側レール18A、右側レール19Aに係合し保持されている。
【0033】
図5Aの状態から、保冷貯蔵された玄米が消費され、図5Bに示すように、例えば保冷室3Aの上方側の貯蔵物Sが全く存在しない状態になると、仕切り板14の位置を左側レール18Eと右側レール19Eに差し込まれる位置に変更する。こうすると、貯蔵庫3の上方の領域に非保冷室3Bが形成され、保冷室3Aの容積を貯蔵庫3の全容積より小さくすることができる。
【0034】
[他の実施形態]
(1)保冷室3Aに冷却ユニット6による冷気供給口21のみを配置し、冷却ユニット6への吸気口22については保冷室3Aに配置しない構成であってもよい。
【0035】
(2)冷却ユニット6を貯蔵庫3の上面ではなく、貯蔵庫3の側部に配置してもよい。
ただし、冷却ユニット6を貯蔵庫3の側部に配置すると、貯蔵庫3の上面に配置した場合に比べて低温貯蔵庫1の設置面積は大きくなる。
【0036】
(3)仕切り板14の端面と貯蔵庫3の内面とは、両者の係合により仕切り板14の位置が保持される状態と、両者の係合状態が解除されて仕切り板14の位置が変更可能な状態とに切換が可能な構成であればよい。したがって、仕切り板14の端面と係合する、貯蔵庫3の内面のレールは必ずしも連続する形状でなく、例えば複数の凸部を所定間隔毎に設けるようにして構成してもよい。また、仕切り板14の端面に凸部を設け、貯蔵庫3の内面に凹部を設けて両者を係合部と非係合部としてもよい。
【0037】
(4)貯蔵庫3内を仕切る仕切り板14は、貯蔵庫3内に位置したままの状態で移動できるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る低温貯蔵庫は、家庭用及び業務用の食材等の貯蔵庫に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 低温貯蔵庫
2 筐体
3 貯蔵庫
3A 保冷室
3B 非保冷室
6 冷却ユニット
14 仕切り板
14A,14B 係合部
16 上部レール
17 下部レール
18 左側レール
19 右側レール
21 冷気供給口
22 吸気口
S 玄米袋(貯蔵物)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ユニットと、貯蔵庫と、前記貯蔵庫内を前記冷却ユニットからの冷気が導入される保冷室と前記冷気が導入されない非保冷室とに区分可能な仕切り板と、を備え、
前記保冷室の容積を増減できるよう前記仕切り板の位置を変更可能に構成した低温貯蔵庫。
【請求項2】
前記冷却ユニットの冷気を前記保冷室に導入する冷気供給口と、前記保冷室の空気を前記冷却ユニットに導入する吸気口とを前記保冷室に配置した請求項1記載の低温貯蔵庫。
【請求項3】
前記冷却ユニットを前記貯蔵庫の上部に配置するとともに、前記仕切り板によって前記保冷室と前記非保冷室とを左右に仕切るよう構成した請求項1又は2記載の低温貯蔵庫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate


【公開番号】特開2013−19655(P2013−19655A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155802(P2011−155802)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】