説明

低溶解性薬剤及びポロキサマーの固体組成物

使用水性環境中に投与したときに濃度上昇を与える、低溶解性薬剤及びポロキサマーの固体組成物が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用水性環境に投与したときに、溶解した薬剤の物理的安定性及び濃度上昇を維持する、低溶解性薬剤及びポロキサマーの固体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
時には、非晶性薬剤及びポリマーの組成物を形成することが望ましい。このような組成物を形成する一つの理由は、このような技術によって難溶性薬剤の水中濃度を改善できることである。例えば、Curatolo等への EP 0 901 786 A2 は、難溶性薬剤及びポリマーであるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートの噴霧乾燥医薬分散物の形成を開示しており、この場合、薬剤は非晶性であり、そしてポリマー中に分散されている。Curatolo等に開示された噴霧乾燥分散物は、他の方法から形成された分散物に比べて、また結晶性薬剤単独に比べて、優れた水中濃度を与える。
同様に、他の者は、ポリマー中の薬剤組成物の形成によって水中濃度の上昇が与えられることを認めている。Nakamichi等への米国特許第5,456,923号は、難溶性薬剤及び種々のポリマーの二軸スクリュー押し出しによって形成された固体分散物を開示している。
【0003】
ポロキサマー(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー)は、医薬分野において種々の用途のために、主として静脈内脂肪エマルジョンにおける乳化剤として、またエリキシル及びシロップの透明性を維持するための可溶化及び安定剤として日常的に使用される。ポロキサマーはまた、軟膏、坐剤基剤及びゲルにおける湿潤剤として;また錠剤結合剤及びコーティングとして使用される。
ポロキサマー及び薬剤の組成物を形成することは公知である。Chen等への米国特許第6,368,622号は、薬剤とポロキサマーとの混合物を開示している。特別の実施形態において、72〜82℃の融点及び約−19℃のガラス転位温度(Tg)を有する薬剤フェノフィブレートを、ポロキサマーと共に溶融する。データは、組成物中の薬剤が市販の製剤よりも速い溶解速度を有することを示しているが、濃度上昇は実証されなかった。
【0004】
Gabel等への米国特許出願公開第US2001/0036959A1号は、113〜116℃の融点及び約39℃のTgを有する薬剤カルベジロールを5質量%より高い濃度で含む組成物を開示している。この調製物はポロキサマーを含むことが好ましい。この組成物は、溶融法を用いるか又は噴霧乾燥によって形成することができる。
Clancy等への欧州特許明細書第 EP 0836475B1 号は、親水性ポロキサマーポリマー中の活性成分の固体組成物を開示している。この組成物は、ポロキサマーを溶融し、そして活性成分をそれに分散させること、又は活性成分及びポロキサマーを有機溶剤(1種又は数種)に溶解し;溶剤を蒸発させ、そして溶融ポロキサマーを冷却及び粉砕して製剤を得ることの何れかによって形成される。
【0005】
しかしながら、非晶性薬剤及び実質的な量のポロキサマーを含有する固体組成物の形成に関連する問題は、薬剤が経時的に結晶化することがあり、劣った性能をもたらすことである。従って、低溶解性薬剤の濃度を上昇させる一方で、物理的安定性を与える方法及び製剤を提供することが、依然として必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様において、本発明は、複数の粒子を含む固体組成物を含む。粒子は低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む。薬剤は粒子中でポロキサマーと密接に接触している。合計で、薬剤及びポロキサマーは粒子の少なくとも50質量%を占める。組成物中の薬剤の少なくとも実質的な部分は非晶性である。薬剤のTgは少なくとも50℃である。別に述べない限り、本明細書で用いられるように、Tgは、10%RH未満で測定したTgを指す。組成物は、使用インビトロ又はインビボ水性環境に投与したときに、低溶解性薬剤の濃度上昇を与える。
【0007】
第二の態様において、本発明は、複数の粒子を含む固体組成物を含む。粒子は低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む。薬剤は粒子中でポロキサマーと密接に接触している。合計で、薬剤及びポロキサマーは粒子の少なくとも50質量%を占める。組成物中の薬剤の少なくとも実質的な部分は非晶性である。薬剤は約6.5より大きいLog P値を有する。組成物は、使用インビトロ又はインビボ水性環境に投与したときに、低溶解性薬剤の濃度上昇を与える。
【0008】
第三の態様において、本発明は、(1)低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む粒子、及び(2)濃度上昇ポリマーを含む。濃度上昇ポリマーは、医薬組成物が、使用インビトロ又はインビボ水性環境への投与後に、薬剤及びポロキサマーを含む粒子から本質的に構成される対照組成物に比べて濃度上昇を与えるような十分な量で存在する。
【0009】
第四の態様において、本発明は、次の工程を含む固体組成物の製造方法を提供する、(1)低溶解性薬剤、ポロキサマー及び溶剤から本質的に構成される溶液を形成する;及び(2)溶液から溶剤を除去して、低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む固体粒子を形成する、ここで、粒子中の薬剤の実質的な部分は非晶性であり、そして薬剤のTgは少なくとも50℃である。固体組成物は、使用インビトロ又はインビボ水性環境に投与したときに、低溶解性薬剤の濃度上昇を与える。好ましい実施形態において、溶剤は溶液から、噴霧乾燥、スプレーコーティング、回転蒸発又は蒸発によって除去される。
【0010】
本発明の種々の態様は、良好な物理的安定性並びに使用環境中の溶解した薬剤の改善された濃度の両者を与える、ポロキサマーを含む固体組成物を提供する。ポロキサマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)セグメント及びポリプロピレンオキシド(PPO)セグメントから構成されるブロックコポリマーである。ポロキサマーは約45〜約60℃の融点を有する。理論によって拘束されたいとは思わないが、周囲温度、典型的には10〜30℃において、PEOセグメントは最終的に凝集し、そして半結晶性PEO領域を形成する一方で、PPOセグメントは非晶性領域のままであると信じられる。これらのPPO領域は約−65℃の比較的低いTgを有する。結果として、非晶性PPO領域中に分散した何れの溶質も5〜40℃の通常の貯蔵温度で高い移動度を有するだろう。薬剤がポロキサマー中に分散され、そして後でポロキサマーがその融点未満の温度にされると、PEOセグメントは一般的に結晶化し、そして薬剤は主として非晶性PPOセグメント中に存在し、そこで薬剤は一般的に高い移動度を有するだろう。薬剤/PPO領域のTgは、一般的に純粋なPPO領域のそれと純粋な非晶性薬剤のそれの間にある。このような領域のTgの正確な値はまた、領域中の薬剤及びPPOの相対的量に依存し、そしてより少ない程度で薬剤とPPOとの相互作用に依存するだろう。本発明者らは、薬剤/PPO領域のTgが貯蔵温度未満であり、そしてPPO領域中の薬剤濃度がPPO領域中の薬剤の溶解度より高い場合には、薬剤が経時的に結晶化する傾向を有し、従って非晶性組成物が不安定になることを見出した。
【0011】
この不安定性を減少させるために、本発明者らは、薬剤が(1)少なくとも約50℃のTg、又は(2)約6.5より大きいLog P値の何れか又は両方を有するように選択することによって、低溶解性薬剤及びポロキサマーの固体組成物の物理的安定性を改善できることを発見した。これらの特性の少なくとも一つを有する低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む固体組成物は、これらの特性を有しない薬剤で作った固体組成物よりも高い薬剤負荷量(すなわち、固体組成物中の薬剤の画分がより高くてよい)、及び/又は貯蔵条件において改善された物理的安定性を有することができる。固体組成物はまた、使用水性環境中の濃度上昇を与える。
【0012】
本発明の上記及び他の対象、特色及び利点は、下記の本発明の詳細な説明を考慮すれば、より容易に理解されるだろう。
【0013】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明は、低溶解性薬剤及びポロキサマーの固体組成物に関する。本発明の固体組成物は、使用インビトロ又はインビボ環境中の溶解した薬剤の高い濃度を達成することができる。固体組成物は良好な物理的安定性を与え、これは、固体組成物中の薬剤が、周囲貯蔵条件において長期にわたり非晶性形態に留まる傾向を有することを意味する。固体組成物の性質、好適なポロキサマー及び低溶解性薬剤、組成物の製造方法及び濃度上昇の決定方法を、以下にさらに詳細に論じる。
【0014】
ポロキサマー
本発明の固体組成物は、医薬分野で「ポロキサマー」としても知られているポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む。ポロキサマーは、一般的に約2,000〜約15,000ダルトンの範囲の分子量を有し、そして一般式:
HO(C24O)a(C36O)b(C24O)a
を有する結晶性又は半結晶性材料である。
式中、特定の銘柄に応じて、aは、約10〜約150であり、ポリエチレンオキシド又はポリオキシエチレンの繰り返し単位(本明細書においてPEOセグメントと言う)のブロックを示し、そしてbは、約20〜約60であり、ポリプロピレンオキシド又はポリオキシプロピレンの繰り返し単位(本明細書においてPPOセグメントと言う)のブロックを示す。好適なポロキサマーは PLURONIC 及び LUTROL の商品名で販売されており、両者は Mt.Olive,New Jersey の BASF Corporation から入手できる。好ましいポロキサマーは、少なくとも約4,700ダルトンの分子量及び乾燥時に少なくとも約45℃の融点を有し、従って周囲温度で固体である。
ポロキサマーの好ましい銘柄は、ポロキサマー188(PLURONIC F68)ポロキサマー237(PLURONIC F87)、ポロキサマー338(PLURONIC F108)、ポロキサマー407(PLURONIC F127)及びこれらのポロキサマーの混合物を包含し、それらの明細を表Aに示す。
【表1】

【0015】
薬剤及びポロキサマーの固体粒子
薬剤及びポロキサマーの粒子は、30℃までの温度及び10%未満の相対湿度(RH)で固体である。組成物の全質量を小さく保つために、粒子は少なくとも約5質量%の薬剤を含む。より好ましくは、粒子は少なくとも約10質量%の薬剤、より好ましくは少なくとも約20質量%の薬剤を含む。一つの実施形態において、粒子は高い薬剤負荷量を有する。薬剤負荷量は、固体組成物中の薬剤の重量画分を指す。この実施形態において、薬剤は、粒子の少なくとも約40質量%、少なくとも約45質量%の量で存在してよく、又は少なくとも約50質量%であってもよい。薬剤のこのような高い負荷量は、医薬組成物の全質量を低い値に保つために望ましい。高い薬剤負荷量は、以下にさらに十分に説明するように、高いTg(>50℃)を有する物理的に安定な組成物又は高いLog Pを有する薬剤の何れにとっても可能である。
【0016】
粒子中の薬剤の少なくとも実質的な部分は非晶性である。「非晶性」とは、薬剤が非結晶状態にあることを意味する。本明細書で用いられるように、薬剤の「実質的な部分」という用語は、粒子中の薬剤の少なくとも75質量%が、結晶形態にあるよりは非晶性形態にあることを意味する。使用環境における薬剤の水中濃度は、非晶性状態で存在する薬剤の画分が増加するにつれて改善する傾向があることを見出した。従って、粒子中の薬剤の「実質的な部分」は非晶性であり、そして好ましくは薬剤は「ほとんど完全に非晶性」であり、これは、結晶形態にある薬剤の量が10質量%を超えないことを意味する。結晶性薬剤の量は、粉末X線回折(PXRD)、走査電子顕微鏡(SEM)分析、示差走査熱量測定法(DSC)又は任意の他の標準的定量測定法によって測定することができる。最も好ましくは、分散物は結晶性薬剤を実質的に含まないことである。
【0017】
粒子中の非晶性薬剤は、ポロキサマーと密接に接触している。粒子中の非晶性薬剤は、純粋な相として、ポロキサマー全体に均質に分布された薬剤の固溶体として、又はこれらの状態若しくはそれらの中間にある状態の任意の組み合わせとして存在することができる。如何なる理論によっても拘束されようとは思わないが、ポロキサマーの二つの異なるブロック部分、例えばポロキサマーのPEO及びPPOセグメントは、それぞれの粒子の中に異なる相として存在すると信じられる。上記のように、PEO部分は半結晶性、例えばラメラシートの形態であってよく、それ自体としては、たとえあったとしても薬剤をほとんど含有しない。他方の相は非晶性PPOから構成され、薬剤の全部又は一部はPPOに均質に溶解している。若干の場合、特に高い薬剤負荷量では、非晶性薬剤から主として構成される第三の相が粒子内部に存在することができる。従って、薬剤は主としてPPO部分中に存在することができ、そしてPPO全体に均質に分布することができるか、又は薬剤は粒子全体に散在する薬剤に富んだ領域として存在できるか、又はこれら二つの状態若しくはそれらの中間にある状態の任意の組み合わせであることができる。薬剤に富んだ非晶性領域が存在する場合、これらの領域は一般的にきわめて小さく;すなわち、約1μm未満のサイズである。好ましくは、このような領域は約100nm未満のサイズである。粒子は、薬剤がポロキサマー全体に均質に分散していることを示す単一のTgを有することができるか、又は薬剤に富んだ相及び薬剤の少ない非晶性相に相当する二つのTgを有することができる。従って、粒子中の薬剤は非晶性である一方で、粒子中のポロキサマーの部分は、結晶又は半結晶状態にあることができる。PXRD又は材料の結晶化度を決定するための他の定量方法による本発明の粒子の分析は、結晶性又は半結晶性ポロキサマーに関連するピークを典型的に示すだろう。
【0018】
本発明の固体組成物は良好な物理的安定性を与える。本明細書で用いられるように、「物理的に安定な」又は「物理的安定性」は、粒子中に存在する非晶性薬剤が25℃及び10%RH未満の周囲貯蔵条件において結晶化する傾向を意味する。従って、別のものよりも物理的に安定である固体組成物は、固体組成物中でより遅い薬剤結晶化速度を有するだろう。具体的には、本発明の組成物は、25℃及び10%RHで3週間の貯蔵中に、薬剤の約10%未満が結晶化する十分な安定性を有する。好ましくは、25℃及び10%RHで3週間の貯蔵中に、より好ましくは、25℃及び10%RHで3ヵ月間の貯蔵後に、薬剤の約5質量%未満が結晶化する。
【0019】
如何なる特定の理論又は作用機序によっても拘束されようとは思わないが、薬剤及びポロキサマーの両者を含有する物理的に安定な粒子は、通常次の二つのカテゴリーに分類することができると信じられる:(1)熱力学的に安定であるもの(この場合、非晶性薬剤が結晶化する原動力はほとんど又は全く存在しない)、及び(2)動力学的に安定又は準安定であるもの(この場合、非晶性薬剤が結晶化する原動力は存在するが、低い薬剤移動度は許容されるレベルまでの結晶化速度を防止するか又は遅らせる)。
【0020】
熱力学的に安定な固体組成物を得るために、ポロキサマー中の非晶性薬剤の溶解度は、薬剤負荷量にほぼ等しいか又はそれより大きくあるべきである。薬剤負荷量とは、固体粒子中の薬剤の重量画分を意味する。粒子は、溶解度よりも僅かに高い薬剤負荷量を有することができ、それでも依然として物理的に安定であることができる。なぜならば、その場合の結晶核形成への原動力が極めて低いからである。「僅かに高い」とは、ポロキサマー中の薬剤の溶解度よりも10〜20%高い薬剤負荷量を意味する。ポロキサマー中の非晶性形態の薬剤の溶解度は、薬剤の疎水性が増加するにつれて一般的に増加する。疎水性の普通の尺度はLog Pであり、オクタノール中の薬剤溶解度と水中の薬剤溶解度との比の基礎10対数と定義される。Log Pは、当技術分野で公知の方法を用いて、実験により測定又は計算することができる。計算Log P値は、計算方法によって、例えばClog P、Alog P及びMlog Pとしばしば呼ばれる。本発明者らは、薬剤のLog Pが高いほどポロキサマー中のその溶解度が高く、そして次に、固体粒子中の薬剤負荷量が高くてよく、それでも依然として物理的に安定であると信じる。具体的には、低溶解性薬剤のLog Pが約4.5より大きい場合、組成物中の薬剤負荷量は約30質量%以下であってよく;Log Pが約5.5より大きい場合、薬剤負荷量は約40質量%以下であってよく、そしてLog Pが約6.5より大きい場合、薬剤負荷量は約50質量%以下であってよい。
【0021】
薬剤が比較的高いLog P値を有する低溶解性薬剤及びポロキサマーの固体組成物は、より高い薬剤負荷量を有することができ、それでも依然として物理的に安定であることができる。なぜならば、ポロキサマー中の薬剤の溶解度は、より低いLog P値を有する薬剤を含有する組成物に比べてより高いからである。従って、組成物が有することができ、且つ依然として熱力学的に安定である最高薬剤負荷量は、薬剤のLog Pが増加するにつれて増加する。ポロキサマー中の薬剤の溶解度は、薬剤のLog Pの関数であることに加えて、薬剤の融点(Tm)の関数でもある。一般的に、所定のLog P値に関して、ポロキサマー中の薬剤の溶解度は、薬剤の融点が貯蔵温度より高くなるにつれて低下する。従って、Log Pが6.5に等しく、一方の薬剤が約80℃のTmを有し、そして他方が約120℃のTmを有する二つの薬剤を含む組成物に関して、ポロキサマー中の第一薬剤の溶解度は、第二薬剤よりも一般的に高く、それ故に第一薬剤の非晶性組成物は、より高い薬剤負荷量を有することができ、それでも依然として許容される物理的安定性を有することができる。
【0022】
粒子中の薬剤負荷量がポロキサマー中の薬剤の溶解度よりも10〜20%大きい(すなわち、固体組成物が非晶性薬剤中に過飽和している)場合には、粒子は熱力学的に安定でなく、そして非晶性薬剤が薬剤に富んだ相に相分離する原動力が存在する。このような薬剤に富んだ相は、性質が、非晶性及び顕微鏡的(約1μm未満のサイズ)であってよく、又は非晶性及び比較的大きく(約1μmより大きいサイズ)あってよく、又は結晶性であってよい。従って、相分離した後に、組成物は次の二つ又は三つの相から構成されることができる:(1)主として薬剤を含む薬剤に富んだ相;(2)ポロキサマー中に分散した非晶性薬剤を含む相;及び(3)ポロキサマーの半結晶性PEOセグメントを含む任意相。薬剤に富んだ相中の非晶性薬剤は、経時的に、非晶性形態から低エネルギー結晶形態に変換することができる。このような粒子の物理的安定性は、所定の薬剤負荷量に関して、(1)非晶性薬剤の分子移動度が低いほど、そして(2)非晶性薬剤が薬剤に富んだ相から結晶化する傾向が低いほど、一般的に大きいだろう。
【0023】
高いTg値を有する薬剤から構成される粒子に関して、一般的に分子移動度はより低く、そして物理的安定性はより大きい。薬剤含有相(一つ又はそれ以上)のTg値は、粒子中の薬剤の分子移動度の尺度である。薬剤含有相のTgが高いほど、薬剤の移動度は低い。従って、薬剤含有相のTgと粒子の薬剤含有相の貯蔵温度(Tstorage)(単位K)との比は、所定の貯蔵温度における相対的薬剤移動度の正確な指標である。相分離を最小限にするために、粒子中の非晶性薬剤の移動度は低いことが望ましい。これは、約1より大きい粒子のTg/Tstorage比を維持することによって行われる。典型的な貯蔵温度は40℃ほどに高いことがあるので、粒子のTgが少なくとも約40℃、より好ましくは少なくとも約45℃、最も好ましくは少なくとも約50℃であることが好ましい。Tgは粒子の含水量の関数であり、含水量は次に、粒子が暴露される相対湿度の関数であるので、これらのTg値は、低い相対湿度、すなわち、飽和の約10%未満(又は約10%又はそれ以下のRH)を有する雰囲気で平衡化した粒子のTgを指す。
【0024】
上記のように、ポロキサマーの一部は、組成物中で結晶性又は半結晶性であってよい。ポロキサマーの好適な医薬品銘柄は、約45〜60℃の融点を有する。組成物中のポロキサマーはこの範囲の融点を有することができるので、標準的な熱的方法、例えばDSCの使用によって、粒子のTgもこの同じ範囲内にあると証明するのは困難な場合がある。なぜならば、ポロキサマーの半結晶性部分の溶融発熱が、Tgと同じ温度付近で生じるからである。
【0025】
本発明者らは、薬剤単独のTgを、ポロキサマー中の薬剤の溶解度を実質的に超える薬剤負荷量を有する粒子の物理的安定性の良好な指標として使用できることを見出した。このことは、薬剤含有相のTgがポロキサマーの融点付近である(これは薬剤含有相のTgの測定を困難にする)粒子にとって特に真実である。具体的には、本発明者らは、少なくとも約50℃のTgを有する低溶解性薬剤が物理的に安定な組成物を一般的に生じることを見出した。如何なる特定の理論によっても拘束されようとは思わないが、薬剤のTgが高いほど、固体組成物の非晶性薬剤含有相のTgは高く、そして固体組成物中の非晶性薬剤の分子移動度は低いと信じられる。結果として、高いTg値を有する低溶解性薬剤及びポロキサマーで形成された固体組成物は、それら自体が高いTg値を、そして結果として改善された物理的安定性を有する傾向がある。このようなTg値は、ポロキサマーの非晶性部分中に分散した薬剤のTg又は薬剤に富んだ相又は領域のTgを表すことができる。薬剤に富んだ領域の場合、Tgは、一般的に薬剤単独のTgの付近である。ポロキサマー中に分散した薬剤の場合、Tgは、一般的に薬剤単独及びポロキサマー単独のTgの中間にある。従って、薬剤のTgが高いほど、固体組成物のTgは高く、それ故に固体組成物の物理的安定性は大きい。薬剤のTgは、少なくとも約60℃、少なくとも約70℃、又はさらに少なくとも約80℃であってよい。薬剤のTgは、動的機械分析機(DMA)、膨張計、誘電分析機及び示差走査熱量測定法(DSC)を包含する当技術分野で周知の標準的分析技術を用いて測定することができる。
【0026】
加えて、薬剤の融点、Tmもまた、固体組成物の物理的安定性の指標として用いることができる。一般的に、より高い融点を有する薬剤は、同様により高いガラス転位温度を有する傾向があり、それ故に改善された動的安定性を有することができる。従って、一つの実施形態において、薬剤は、少なくとも130℃、少なくとも140℃又はさらに少なくとも150℃の融点を有することができる。Tmは、当技術分野で周知の標準的分析技術、例えばTgの測定について上記したものを用いて決定することができる。
【0027】
しかしながら、物理的安定性はまた、薬剤のTgとTmとの相対的差異に関係がある。薬剤負荷量がポロキサマー中の非晶性薬剤の溶解度より実質的に過剰量である非晶性薬剤−ポロキサマー組成物の物理的安定性の主要な指標は、薬剤のTgであるが、薬剤が結晶化する傾向はまた、このような組成物の物理的安定性に影響を与える。如何なる特定の理論によっても拘束されようとは思わないが、薬剤に富んだ相が形成される場合に非晶性薬剤が結晶化する傾向は、薬剤のTmと薬剤のTg(両者とも°K単位)との比によって特徴付けられる。結晶化の原動力はTmによって支配され、そして結晶化の動的バリアは主としてTgによって制御される。Tm/Tg比は、薬剤が結晶化する相対的傾向を示す。従って、約60℃の同等のTg値を有する一連の仮想上の薬剤に関して、約1.30のTm/Tg値を有する薬剤の非晶性組成物は、約1.35のTgを有する薬剤の同等な組成物よりも物理的に安定であり、これは次に、約1.40のTm/Tg値を有する同等な組成物よりも安定であろう。
【0028】
粒子中の非晶性薬剤が結晶状態に変換することは、(1)粒子のTg、(2)Tstorage及び(3)相対湿度の相対的値に関係があるので、粒子中の薬剤は、周囲温度(40℃未満)及び低い相対湿度(10%RH未満)において貯蔵した場合に、より長期間非晶性状態に留まる傾向を示すことができる。加えて、吸水を防止するようにこのような組成物を包装すること、又は吸水を同様に防止若しくは遅らせるために乾燥剤のような吸水材料を含めることは、貯蔵中の粒子について高いTgを維持することができ、これによって非晶性状態の保持を助ける。同様に、より低い温度における貯蔵はまた、非晶性状態の保持を改善することができる。
【0029】
粒子の主成分は、低溶解性薬剤及びポロキサマーである。薬剤及びポロキサマーは一緒に、粒子の少なくとも50質量%を占める。薬剤及びポロキサマーは組成物のさらに大きな量を占めてもよく、そして粒子の少なくとも60質量%、少なくとも70質量%、少なくとも80質量%又はさらに少なくとも90質量%を占めてもよい。一つの実施形態において、粒子は低溶解性薬剤及びポロキサマーから本質的に構成される。
【0030】
本発明の粒子中に存在するポロキサマーの量に対する薬剤の量は、薬剤及びポロキサマーの特性に依存し、そして約0.01〜約100の薬剤対ポロキサマー重量比(例えば、1質量%の薬剤〜約99質量%の薬剤)で広く変動することができる。好ましくは、薬剤対ポロキサマー重量比は、約0.05〜約49(5質量%の薬剤〜約98質量%の薬剤)の範囲にある。粒子中のポロキサマーの量は、薬剤の用量、生成した粒子の安定性及び粒子によって与えられる濃度上昇の程度に依存するだろう。一つの実施形態において、ポロキサマーは、任意の他の非薬剤賦形剤より多い量で粒子中に存在する。典型的には、ポロキサマーは、粒子の少なくとも40質量%〜99質量%以下で存在する。
【0031】
低溶解性薬剤
「薬剤」という用語は慣用的であり、動物、特にヒトに投与したときに有益な予防的及び/又は治療的特性を有する化合物を示す。好ましくは、薬剤は「低溶解性薬剤」であり、薬剤が生理学的に適切なpH(すなわち、pH1〜8)において約0.5mg/mL又はそれ以下の最低水中溶解度を有することを意味する。本発明は、薬剤の水中溶解度が減少するにつれて、より大きな実用性を見出す。従って、本発明の組成物は、約0.1mg/mL未満、より好ましくは約0.05mg/mL未満、もっとも好ましくは約0.01mg/mL未満の水中溶解度を有する低溶解性薬剤にとって好ましい。一般的に、水中溶解度(mg/mL)がUSP擬似胃及び腸緩衝液を包含する任意の生理的に適切な水溶液(すなわち、pH1〜8)の中で観察した最低値であり、そして用量がmg単位である場合に、薬剤は、約10mLより大きい、より典型的には約100mLより大きい用量対水中溶解度比を有すると言うことができる。従って、用量対水中溶解度比は、用量(mg単位)を水中溶解度(mg/mL単位)で除することによって計算することができる。
【0032】
薬剤の好ましいクラスは、降圧剤、抗不安剤、抗凝固剤、抗痙攣剤、血糖低下剤、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、抗新生物剤、ベータ遮断剤、抗炎症剤、抗精神病剤、認識促進剤、コレステロール低下剤、抗アテローム性動脈硬化剤、抗肥満剤、自己免疫疾患剤、性的不能治療剤、抗細菌及び抗真菌剤、催眠剤、抗パーキンソン剤、催眠剤、抗アルツハイマー病治療剤、抗生物質、抗うつ剤、抗ウイルス剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤及びコレステリルエステル輸送タンパク質阻害剤を包含するが、これらに限定されるものではない。
上記のように、一つの態様において、薬剤は少なくとも約50℃のTgを有する。少なくとも約50℃のTgを有する模範的な薬剤を、下記の表Bに示す。
【0033】
【表2】

【0034】
別の実施形態において、薬剤は約6.5より大きいLog Pを有する。約6.5より大きいLog P値を有する模範的な薬剤を、下記の表Cに示す。
【0035】
【表3】

【0036】
薬剤及びポロキサマーの粒子の製造方法
薬剤及びポロキサマーの本発明の粒子は、薬剤の少なくとも実質的な部分、すなわち、少なくとも75質量%が非晶性状態になるようにする任意の公知方法によって製造することができる。このような方法は、溶剤及び熱方法を包含する。熱方法において、低溶解性薬剤及びポロキサマーの溶融混合物を、溶融混合物が急速に固化するように急速に冷却する。溶剤方法において、低溶解性薬剤及びポロキサマーを共通溶剤に溶解し、その後に蒸発又は非溶剤との混合によって溶剤を除去する。
【0037】
薬剤及びポロキサマーの粒子は、溶剤方法による形成によく適している。本発明の固体組成物の高いTgは、ポロキサマーから薬剤の最小の相分離で固体材料の形成に導く処理条件の選択を可能にする。「相分離」とは、組成物中の薬剤の著しい量が分離して非晶性薬剤に富んだ領域になることを意味する。相分離が生じ、そして薬剤に富んだ領域が形成される場合、溶剤を急速に除去する条件の選択は、領域を極めて小さく、一般的に約1μm未満のサイズ、好ましくは約200nm未満のサイズにする。Tm/Tg,drug比が約1.4未満である実施形態に関して、薬剤が結晶化する傾向の減少は溶剤方法によって、粒子中の薬剤の少なくとも実質的な部分が非晶性である粒子の形成を可能にする。熱方法を本発明の粒子の製造に使用できるが、低溶解性薬剤のTmが高い場合、高温での処理は、薬剤、ポロキサマー又は両者の変性が生じやすいので、一般的にあまり望ましくない。従って、溶剤方法による粒子の形成が好ましい。
【0038】
溶剤方法において、低溶解性薬剤及びポロキサマーを共通溶剤に溶解する。「共通」は、化合物の混合物であってもよい溶剤が薬剤及びポリマーの両者を溶解することを意味する。薬剤及びポリマーの両者を溶解した後、溶剤を蒸発又は非溶剤との混合によって除去する。模範的な方法は、噴霧乾燥、スプレーコーティング(パンコーティング、流動床コーティング、その他)、回転蒸発、並びにポリマー及び薬剤溶液とCO2、水又は何らかの他の非溶剤との急速混合による沈殿である。好ましくは、溶剤の除去は、ポロキサマーのPPO部分中の非晶性薬剤の実質的に均質な相の形成を生じる。
【0039】
溶剤方法に適する溶剤は、好ましくは揮発性であり、150℃又はそれ以下の沸点を有する。加えて、溶剤は比較的低い毒性を有するべきであり、そして調和に関する国際委員会(ICH)ガイドラインにより許容されるレベルまで粒子から除去されるべきである。このレベルまでの溶剤の除去は、後続の処理段階、例えばトレー乾燥を必要とすることがある。好適な溶剤は、水;アルコール、例えばメタノール及びエタノール;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン;並びに種々の他の溶剤、例えばアセトニトリル、塩化メチレン及びテトラヒドロフランである。低揮発性溶剤、例えばジメチルアセトアミド又はジメチルスルホキシドもまた、揮発性溶剤と混合して少量で使用することができる。水との混合物のように、溶剤の混合物、例えば50%のメタノール及び50%のアセトンもまた、ポリマー及び薬剤が方法を実施可能にするのに十分に可溶性である限り使用できる。一般的に、低溶解性薬剤は疎水性の性質を有するために、非水性溶剤が好ましく、溶剤は約30質量%未満の水を含むことを意味する。
【0040】
溶剤は噴霧乾燥によって除去することができる。「噴霧乾燥」という用語は、慣用的に用いられ、そして液体混合物を小さい液滴に離散させ(霧吹き作用)、そして溶剤が液滴から蒸発する強い原動力が存在する噴霧乾燥装置中で混合物から溶剤を急速除去することを伴う方法を広く指す。噴霧乾燥方法及び噴霧乾燥装置は、Perry's Chemical Engineers' Handbook, pages 20-54 及び 20-57 (Sixth Edition 1984) に一般的に記載されている。噴霧乾燥方法及び噴霧乾燥装置に関するさらなる詳細は、Marshall, “Atomization and Spray-Drying,”50 Chem. Eng. Prog. Monogr. Series 2 (1954) 及び Masters, Spray Drying Handbook (Fourth Edition (1985) で概説されている。溶剤蒸発の強い原動力は、噴霧乾燥装置中の溶剤の分圧を、乾燥する液滴の温度における溶剤の蒸気圧より十分低く維持することによって一般的に与えられる。これは、(1)噴霧乾燥装置中の圧力を部分真空(例えば、0.01〜0.50atm)に維持すること;又は(2)液滴を熱乾燥ガスと混合すること;又は(3)(1)及び(2)の両者によって行われる。加えて、溶剤の蒸発に必要な熱の少なくとも一部を、噴霧溶液の加熱によって与えることもできる。
【0041】
薬剤及びポロキサマーを含む溶剤含有供給物は、多種多様な条件下で噴霧乾燥することができ、それでも依然として許容される特性を有する粒子を生じる。例えば、種々な種類のノズルを噴霧溶液の霧吹きのために使用することができ、これによって噴霧溶液を小さい液滴の集まりとして噴霧乾燥室内に導入する。形成された液滴が乾燥室壁に付着しないか又はそれを被覆しないほど十分に乾燥する(溶剤の蒸発による)のに十分小さい限り、本質的に任意の種類のノズルを溶液の噴霧のために使用することができる。
【0042】
最大液滴サイズは、噴霧乾燥機内部のサイズ、形状及び流動パターンの関数として広範囲で変動するが、一般的に、液滴がノズルを出るとときに、それらは約500μm未満の直径であるべきである。固体組成物の形成に使用できるノズルの種類の例は、二流体ノズル、噴水型ノズル、フラットファン型ノズル、圧力ノズル及び回転アトマイザーを包含する。好ましい実施形態において、同一出願人による同時係属米国出願第10/351,568号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に詳細に開示されているように、圧力ノズルが用いられる。
【0043】
噴霧溶液は、広範囲の温度及び流速で1個又は数個の噴霧ノズルに送出することができる。一般的に、噴霧溶液温度は、溶剤の凝固点のちょうど上からその周囲圧沸点(溶液の加圧による)より約20℃上までの何れの範囲にあってもよく、そして若干の場合にはさらに高くてもよい。噴霧ノズルへの噴霧溶液の流速は、ノズルの種類、噴霧乾燥機のサイズ及び噴霧乾燥条件、例えば乾燥ガスの入り口温度及び流速に応じて、広い範囲にわたって変動することができる。一般的に、噴霧乾燥方法において噴霧溶液から溶剤が蒸発するためのエネルギーは、主として乾燥ガスから来る。
【0044】
乾燥ガスは、原則として、本質的に何れのガスであってもよいが、安全性の理由で、また固体組成物中の薬剤又は他の材料の望ましくない酸化を最小限にするために、不活性ガス、例えば窒素、窒素富化空気又はアルゴンが利用される。乾燥ガスは、約60〜300
℃、好ましくは約80〜240℃の温度で乾燥室内に導入される。
【0045】
液滴の大きい表面積対体積比及び溶剤の大きい蒸発原動力は、液滴のための急速な固化時間に導く。固化時間は、約20秒未満、好ましくは約10秒未満、より好ましくは1秒未満であるべきである。この急速固化は、非晶性薬剤及びPPO部分の一様な均質相を維持する粒子にとって多くの場合に決定的である。好ましい実施形態において、同一出願人による同時係属米国出願第10/353,746号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されているように、液滴が噴霧乾燥機の内部表面上に衝突する前に乾燥するのに十分な時間を与えるように、噴霧乾燥機の高さ及び体積を調節する。
【0046】
固化の後、固体粉末は典型的には噴霧乾燥室内に約5〜60秒間滞留し、溶剤が固体粉末からさらに蒸発する。粒子が乾燥機を出るときの粒子の最終溶剤含有量は低くあるべきである。なぜならば、これは粒子中の薬剤分子の移動度を減少させ、これによってその安定性を改善するからである。一般的に、粒子が噴霧乾燥室を立ち去るときの粒子の溶剤含有量は、10質量%未満、好ましくは2質量%未満であるべきである。形成の後、残留溶剤を除去するために、好適な乾燥方法、例えばトレー乾燥、流動床乾燥、マイクロ波乾燥、ベルト乾燥、回転乾燥、真空乾燥及び当技術分野で公知の他の乾燥方法によって、粒子を乾燥することができる。
【0047】
別の実施形態において、粒子は回転蒸発方法によって形成される。この方法において、薬剤及びポロキサマーを上記のように共通溶剤に溶解する。次いで溶剤を回転蒸発によって除去して、固体組成物を形成する。次いで、生成した濃厚なシロップ又は固体を、高真空ライン上で乾燥することができる。生成した固体は、好ましくは、例えば乳鉢及び乳棒又は当技術分野で公知の他の粉砕方法の使用によって、小さい粒子に形成される。必要に応じて所望の特性を有する材料を得るために、粒子を篩い分け及び乾燥することができる。
【0048】
別の実施形態において、粒子は、薬剤及びポロキサマーのコーティング溶液を種コア上に噴霧することによって形成される。種コアは、任意の好適な材料、例えば澱粉、微結晶セルロース、糖又はワックスから、任意の公知方法、例えば溶融−及び噴霧−コーティング、押し出し/球形化、造粒、噴霧乾燥、その他によって製造することができる。
【0049】
コーティング溶液は、このような種コア上に、医薬分野で公知のコーティング装置、例えばパンコーター(例えば、Tokyo,Japan の Freund Corp. から入手できる Hi-Coater、Liverpool, U.K の Manesty から入手できる Accela-Cota)、流動床コーター(例えば、Ramsey, New Jersey の Glatt Air Technologies 及び Bubendorf, Switzerland の Niro Pharma Systems から入手できる Wuester 又はトップ−散布機)、及び回転造粒機(例えば、Freund Corp. から入手できる CF-Granulator)を用いて噴霧することができる。
【0050】
溶剤方法は本発明の粒子の形成にとって好ましいが、熱方法、例えば溶融凝固又は溶融押し出し方法も使用できる。このような方法において、低溶解性薬剤及びポロキサマーの溶融混合物を、溶融混合物が急速に固化するように急速冷却する。「溶融混合物」とは、低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む混合物が1種又はそれ以上の力、例えば圧力、剪断力及び遠心力に付されたときに流動するという意味で液体である、該混合物を意味する。これは一般的に、薬剤が溶融ポロキサマー中に溶融するか又は溶解する何れかの温度に混合物を加熱することを必要とする。低溶解性薬剤は溶融混合物中に、純粋な相として、溶融混合物全体に均質に分布した低溶解性薬剤の溶液として、又はこれらの状態若しくはそれらの中間にある状態の任意の組み合わせとして存在することができる。溶融混合物は、好ましくは実質的に均質であり、従って低溶解性薬剤が溶融混合物全体にできるだけ均質に分散している。好ましくは、溶融混合物は押し出し機、例えば一軸スクリュー又は二軸スクリュー押し出し機(両者は当技術分野で周知である)を用いて形成される。
【0051】
一般的に、処理温度は、低溶解性薬剤及びポロキサマーの融点に応じて、約50〜200℃又はそれ以上まで変動することができる。しかしながら、処理温度は、薬剤及びポロキサマーの分解が許容されない高レベルで生じるほど高くてはならない。若干の場合、溶融混合物は、処理温度における薬剤及び/又はポロキサマーの分解を防止するために、不活性雰囲気下で形成すべきである。比較的高い温度を用いる場合には、分解を最小限にするために、混合物が高められた温度にある時間を最小限にすることがしばしば好ましい。
【0052】
溶融混合物はまた、溶融混合物の溶融温度を低下させる賦形剤を含むことができ、低温での処理を可能にする。例えば、薬剤を溶解するか又はその融点を低下させる揮発性物質を溶融混合物に含めることができる。模範的な揮発性賦形剤は、アセトン、水、メタノール及び酢酸エチルを包含する。このような揮発性賦形剤を添加する場合、賦形剤は、その進行中又は溶融混合物が固体混合物に変換した後に、粒子から揮発するか又は別に除去される。このような場合、方法は、溶剤方法及び溶融凝固又は溶融押し出しの組み合わせと考えることができる。このような溶融混合物からの揮発性賦形剤の除去は、溶融混合物を小さい液滴に離散させるか又は霧化し、そして液滴が冷却すると共に揮発性賦形剤の全部又は一部を失うように液滴を流体と接触させることによって行われる。
【0053】
低溶解性薬剤及びポロキサマーの溶融混合物が形成されたならば、混合物を急速に固化させて粒子を形成すべきである。「急速に固化させる」とは、薬剤及びポリマーの実質的な相分離が起こらないように十分速く溶融混合物を固化させることを意味する。典型的には、これは、混合物を約10分未満、より好ましくは約5分未満、最も好ましくは約1分未満で固化させるべきであることを意味する。混合物を急速に固化させないと、相分離が起きることがあり、1ミクロンより大きいサイズの大きな領域を有する低溶解性薬剤に富んだ相及びポロキサマーに富んだ相の形成をもたらす。経時的に、低溶解性薬剤に富んだ相中の薬剤は結晶化することがある。このような組成物は、急速に固化させた組成物のようには機能しない傾向がある。固化は多くの場合に、溶融混合物をその融点より少なくとも約10℃、好ましくは少なくとも約30℃低い温度に冷却することによって主として行われる。上記のように、固化は、1種又はそれ以上の揮発性賦形剤又は溶剤の全部又は一部の蒸発によってさらに促進することができる。揮発性賦形剤の急速な冷却及び蒸発を促進するために、溶融混合物は多くの場合に高い表面積の形状、例えばロッド若しくは繊維又は液滴に形成される。例えば、溶融混合物を1個又はそれ以上の小さい穴に強制的に通して細長い繊維若しくはロッドにすることができるか、又は溶融混合物を直径1μm〜1cmの液滴に離散させることができる。次いで液滴を相対的に冷たい流体、例えば空気又は窒素と接触させて冷却及び蒸発を促進する。
【0054】
粒子の平均粒径は、直径500μm未満又は直径100μm未満、直径50μm未満又は直径25μm未満であってよい。粒子を噴霧乾燥によって形成する場合、生成した粒子は大きさ1μm〜100μmの範囲にあってよい。固体組成物を他の方法、例えばスプレーコーティング、回転蒸発、蒸発、溶融凝固又は押し出し方法によって形成する場合、生成した粒子を篩い分け、粉砕又は別に処理して複数の小さい粒子を得ることができる。
薬剤及びポロキサマーを含む粒子が形成されたならば、投与形態への粒子の組み込みを容易にするために、幾つかの処理作業を用いることができる。これらの処理作業は、乾燥、造粒及びミリングを包含する。
【0055】
粒子を造粒してそれらのサイズを増大させ、そして好適な投与形態を形成する間の粒子の取り扱い性を改善することができる。好ましくは、粒状物の平均サイズは、50〜1000μmの範囲にあるだろう。このような造粒方法は、上記のように組成物を乾燥する前又はその後に行うことができる。乾式又は湿式造粒方法をこの目的に使用することができる。乾式造粒方法の例は、ローラー圧縮である。湿式造粒方法は、いわゆる低剪断及び高剪断造粒並びに流動床造粒を包含することができる。これらの方法において、粒状組成物の形成に役立てるために、乾燥成分をブレンドした後に造粒液体を組成物と混合する。造粒液体の例は、水、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノールの種々の異性体及びそれらの混合物を包含する。粒子の造粒に役立てるために、ポリマーを造粒液体と共に添加することができる。好適なポリマーの例は、より多量のポロキサマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含する。
【0056】
湿式造粒方法を用いる場合、粒状組成物はさらに加工する前にしばしば乾燥される。湿式造粒に関連して使用するのに好適な乾燥方法の例は、上記のものと同じである。固体組成物を溶剤方法によって製造した場合には、残留溶剤を除去する前に組成物を造粒することができる。乾燥工程中に、残留溶剤及び造粒液体は組成物から同時に除去される。
【0057】
組成物を造粒したならば、次いで所望の粒子サイズを得るために組成物を粉砕することができる。組成物の粉砕に適する方法の例は、ハンマーミリング、ボールミリング、流体−エネルギーミリング、ローラーミリング、切断ミリング及び当技術分野で公知の他のミリング方法を包含する。
【0058】
粒子及び濃度上昇ポリマーの混合物
本発明の別の実施形態は、(1)低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む粒子、及び(2)濃度上昇ポリマーの組み合わせを含む。「濃度上昇ポリマー」とは、薬剤及びポロキサマーと組み合わせ、そして使用水性環境に投与したときに、使用環境中の低溶解性薬剤の濃度又は薬剤のバイオアベイラビリティーを粒子単独に比べて上昇させるポリマーを意味する。薬剤、ポロキサマー及び濃度上昇ポリマーに関して「組み合わせ」は、粒子及び濃度上昇ポリマーが互いに物理的に接触又は密接に隣接していてよいが、分子レベルで物理的に混合された(すなわち、分散の)状態ではないことを意味する。粒子及び濃度上昇ポリマーは、組成物の異なる領域内にあってよい。例えば、粒子は当技術分野で公知のように多層錠剤の形態にあってよく、ここで、一つ又はそれ以上の層は非晶性薬剤及びポロキサマーを含み、そして一つ又はそれ以上の異なる層は濃度上昇ポリマーを含む。さらに別の例は、被覆錠剤を構成することができ、ここで、粒子及び濃度上昇ポリマーの何れか又は両者は錠剤コア中に存在することができ、そしてコーティングは濃度上昇ポリマーを含むことができる。別法として、組み合わせは、単純な物理的乾燥混合物の形態にあってよく、ここで、粒子及び濃度上昇ポリマーの両者は粒状形態で混合されており、そしてそれぞれの粒子は、サイズとは無関係に、それらがそのものだけで存在するときに示す各自の同じ物理的特性を保持している。粒子及び濃度上昇ポリマーを分子分散物に変換しない、粒子及び濃度上昇ポリマーを一緒に混合するために用いられる任意の慣用方法、例えば物理的混合及び乾式又は湿式造粒を使用することができる。その例は、V形ブレンダー、遊星形ミキサー、渦流式ブレンダー、ミル、押し出し機、例えば二軸スクリュー押し出し機、及び粉砕方法を包含する。成分は、機械的エネルギーを利用する造粒方法、例えばボールミル又はローラー圧縮機において組み合わせることができる。それらはまた、湿式造粒方法を用いて、高剪断造粒機又は流動床造粒機において組み合わせることができ、ここで、溶剤及び湿潤剤が造粒工程中に成分に添加される。
【0059】
別法として、粒子及び濃度上昇ポリマーを共投与することができ、これは、粒子を濃度上昇ポリマーとは別個に、しかし同じ一般的時間枠内で投与することを意味する。従って、粒子を、例えば、それら自体の投与形態で投与することができ、この投与形態は別の投与形態にある濃度上昇ポリマーとほぼ同時に服用される。別個に投与する場合、粒子及び濃度上昇ポリマーの両者を互いに60分以内に投与することが一般的に好ましく、従って両者は一緒に使用環境中に存在する。ほぼ同時(互いに1〜2分以内)に投与しない場合には、濃度上昇ポリマーを好ましくは粒子の前に投与する。
【0060】
組成物中に存在する濃度上昇ポリマーの量は、以下に記載するように、濃度上昇を与えるのに十分な量である。一般的に、粒子中の薬剤と濃度上昇ポリマーとの比は、0.01(薬剤1部対ポリマー100部)〜100の範囲にあってよい。好ましくは、薬剤と濃度上昇ポリマーとの比は、約0.66〜約49、より好ましくは約3〜約19、よりいっそう好ましくは約5〜約15の範囲にある。
【0061】
本発明における使用に適する濃度上昇ポリマーは、製薬上許容されるべきであり、そして生理学的に適切なpH(例えば1〜8)で水溶液中の少なくとも若干の溶解度を有するべきである。1〜8のpH範囲の少なくとも一部にわたり、少なくとも0.1mg/mLの水中溶解度を有するほとんど全ての中性又はイオン化性ポリマーが好適でありうる。好ましい実施形態において、濃度上昇ポリマーは性質が「両親媒性」であり、これは、ポリマーが疎水性及び親水性部分を有することを意味する。両親媒性ポリマーは、このようなポリマーが薬剤と比較的強い相互作用を有する傾向があり、そして溶液中で様々な種類のポリマー/薬剤アセンブリーの形成を促進できるので、好ましい。
【0062】
本発明による使用に適するポリマーの一つのクラスは、非イオン化性(又は中性)の非セルロースポリマーを含む。模範的なポリマーは:ヒドロキシル、アルキルアシルオキシ又は環状アミドの置換基を有するビニルポリマー又はコポリマー;ポリビニルアルコール(これらは、その繰り返し単位の少なくとも一部を加水分解されていない(酢酸ビニルの)形態で有する);ポリビニルアルコールポリ酢酸ビニルコポリマー;ポリビニルピロリドン;ポロキサマーとしても知られているポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー;及びポリエチレンポリビニルアルコールコポリマーを包含する。模範的な中性の非セルロースポリマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルヒドロキシエチルエーテル及びポリエチレングリコールを包含する。
【0063】
本発明による使用に適するポリマーの別のクラスは、イオン化性の非セルロースポリマーを含む。模範的なポリマーは:カルボン酸で官能化したビニルポリマー、例えばカルボン酸で官能化したポリメタクリレート及びカルボン酸で官能化したポリアクリレート、例えば Malden, Massachusetts の Rohm Tech Inc. により製造された EUDRAGITS(登録商標);アミンで官能化したポリアクリレート及びポリメタクリレート;タンパク質;及びカルボン酸で官能化した澱粉、例えばグリコール酸澱粉を包含する。
【0064】
本発明による使用に適するポリマーの別のクラスは、少なくとも1個のエステル−及び/又はエーテル−結合した置換基を有するイオン化性及び中性のセルロースポリマーポリマーを含み、ここで、ポリマーは各置換基について少なくとも0.1の置換度を有する。模範的な非イオン化性セルロースポリマーは:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースアセテート及びヒドロキシエチルセルロースを包含する。模範的なイオン化性セルロースポリマーは:ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルローススクシネート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、エチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースブチレートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、メチルセルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートトリメリテートスクシネート、セルロースプロピオネートトリメリテート、セルロースブチレートトリメリテート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、セルロースアセテートピリジンジカルボキシレート、サリチル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルサリチル酸セルロースアセテート、エチル安息香酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチル安息香酸セルロースアセテート、エチルフタル酸セルロースアセテート、エチルニコチン酸セルロースアセテート及びエチルピコリン酸セルロースアセテートを包含する。
【0065】
特定のポリマーを本発明の組成物における使用に適するとして論じてきたが、このようなポリマーのブレンドもまた適している。従って、「ポリマー」という用語は、単一種のポリマーに加えてポリマーのブレンドを包含することを意図している。
好ましくは、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0066】
濃度上昇
本発明の固体組成物は濃度上昇性である。「濃度上昇性」という用語は、使用環境中の薬剤の濃度を対照組成物に比べて改善するように十分な量で、ポロキサマーが組成物中に存在することを意味する。本明細書で用いられるように、「使用環境」は、動物、例えば哺乳類、特にヒトのGI管、皮下、鼻内、頬側、鞘内、眼、耳内、皮下空隙、膣道、動脈及び静脈血管、肺道若しくは筋肉内組織のインビボ環境、又は試験溶液、例えばリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)若しくはモデル絶食十二指腸(MFD)液のインビトロ環境の何れであってもよい。濃度上昇は、インビトロ溶解試験又はインビボ試験の何れによっても決定することができる。モデル絶食十二指腸(MFD)液又はリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中のインビトロ溶解試験において上昇した薬剤濃度は、インビボ性能及びバイオアベイラビリティーの良好な指標であることが確認された。適切なPBS液は、リン酸ナトリウム(Na2HPO4) 20mM、リン酸カリウム(KH2PO4) 47mM、NaCl 87mM及びKCl 0.2mMを含み、NaOHでpH6.5に調節した水溶液である。適切なMFD液は、タウロコール酸ナトリウム 7.3mM及び1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン 1.4mMがさらに存在する同じPBS液である。特に、本発明の組成物は、それをMFD又はPBS液に添加し、そして攪拌して溶解を促進することによって溶解試験することができる。
【0067】
一つの態様において、本発明の組成物は、水性使用環境に投与したときに、対照組成物によって与えられる最大薬剤濃度(MDC)の少なくとも1.25倍であるMDCを与える。換言すれば、対照組成物によって与えられるMDCが100μg/mLであるならば、ポロキサマーを含有する本発明の組成物は、少なくとも125μg/mLのMDCを与える。好ましくは、本発明の組成物によって与えられる薬剤のMDCは、対照組成物のそれの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、よりいっそう好ましくは少なくとも5倍である。
【0068】
組成物が低溶解性薬剤及びポロキサマーの粒子を含む場合、対照組成物は、分散していない薬剤単独(例えば、熱力学的に最も安定なその結晶形態にある結晶性薬剤単独、又は薬剤の結晶形態が未知である場合には、対照は非晶性薬剤単独)であるか、又は試験組成物中のポロキサマーの重量に等しい不活性希釈剤の重量を薬剤に加えたものである。「不活性」とは、希釈剤が濃度上昇性でないことを意味する。
組成物が、(1)低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む粒子、及び(2)濃度上昇ポリマーの組み合わせを含む場合には、対照組成物は粒子単独であるか、又は粒子に、試験組成物中の濃度上昇ポリマーの重量に等しい不活性希釈剤の重量を加えたものである。
【0069】
別法として、本発明の組成物は、使用水性環境中で、使用環境中に導入した時点と使用環境への導入後の約270分との間の少なくとも90分の任意の期間中の濃度対時間曲線下の面積(AUC)が、対照組成物のそれの少なくとも1.25倍であるAUCを与える。より好ましくは、本発明の組成物によって達成される使用水性環境中のAUCは、対照組成物のそれの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも5倍である。
【0070】
別法として、本発明の組成物は、ヒト又は他の動物に経口投与したときに、血漿又は血清中の薬剤濃度のAUCが、適切な対照組成物を投与したときに観察されるそれの少なくとも1.25倍であるAUCを与える。好ましくは、血中AUCは、対照組成物のそれの少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約3倍、よりいっそう好ましくは少なくとも約4倍、さらに好ましくは約6倍、さらによりいっそう好ましくは約10倍、最も好ましくは少なくとも約20倍である。このような組成物はまた、対照組成物の約1.25倍〜約20倍の相対的バイオアベイラビリティーを有すると言うことができる。従って、評価したときにインビトロ若しくはインビボ又は両者の何れかの性能基準を満たす組成物は、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0071】
別法として、本発明の組成物は、ヒト又は他の動物に経口投与したときに、血漿又は血清中の最大薬剤濃度(Cmax)が、適切な対照組成物を投与したときに観察されるそれの少なくとも1.25倍であるCmaxを与える。好ましくは、血中Cmaxは、対照組成物のそれの少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約3倍、よりいっそう好ましくは少なくとも約4倍、さらに好ましくは少なくとも約6倍、さらによりいっそう好ましくは少なくとも約10倍、最も好ましくは少なくとも約20倍である。
【0072】
上昇した薬剤濃度を評価するための典型的なインビトロ試験は、(1)薬剤の全部が溶解したならば、薬剤の理論的濃度が薬剤の平衡濃度を少なくとも2倍だけ超えるように、十分な量の試験組成物(すなわち、低溶解性薬剤及びポロキサマーの粒子)を試験媒質に攪拌しながら導入し;(2)別の試験において、適切な量の対照組成物を同等な量の試験媒質に添加し;そして(3)試験媒質中の試験組成物の測定MDC及び/又はAUCが対照組成物によって与えられるそれの少なくとも1.25倍であるかどうかを決定することによって行うことができる。このような溶解試験を行う際に、使用される試験組成物又は対照組成物の量は、好ましくは、薬剤の全部が溶解したならば、薬剤濃度が薬剤の溶解度(すなわち、平衡濃度)のそれの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも100倍であるような量である。極低溶解性薬剤及びポロキサマーの若干の試験組成物については、MDCの決定のためにさらに多量の試験組成物を投与することが必要な場合がある。
【0073】
溶解した薬剤の濃度は、典型的には、試験媒質をサンプリングし、そしてMDC及び/又はAUCを確定できるように試験媒質中の薬剤濃度を時間に対してプロットすることによって、時間の関数として測定される。MDCは、試験の期間にわたって測定された溶解した薬剤の最大値と理解される。水溶液AUCは、使用水性環境中に組成物を導入した時点(ゼロに等しい時点)と使用環境への導入後の約270分(270分に等しい時点)との間の任意の90分の期間にわたる濃度対時間曲線を積分することによって計算される。典型的には、組成物がそのMDCに急速に、例えば約30分未満で達する場合には、AUCの計算に用いられる時間間隔は、ゼロに等しい時点から90分に等しい時点までである。しかしながら、上記の任意の90分にわたる組成物のAUCが本発明の基準を満たすならば、形成された組成物は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0074】
間違った決定を与える薬剤微粒子を避けるために、試験溶液を濾過又は遠心分離する。「溶解した薬剤」は、0.45μmシリンジフィルターを通過する材料、又はその代わりに遠心分離後の上澄み液中に残留する材料と考えられる。濾過は、Scientific Resources から TITAN(登録商標)の商品名で販売されている13mm、0.45μmポリビニリデンジフルオリド製シリンジフィルターを用いて行うことができる。遠心分離は、ポリプロピレン製微小遠心管中で、13,000Gで60秒間遠心分離することによって典型的に行われる。他の同様の濾過又は遠心分離方法を採用することができ、そして有用な結果が得られる。例えば、他の種類のマイクロフィルターの使用は、上記のフィルターを用いて得られた値よりも幾分高いか又は低い値(±10〜40%)を生じることがあるが、それでも好ましい分散物の同定を可能にするだろう。「溶解した薬剤」のこの定義は、モノマー溶媒和薬剤分子だけでなく、広範囲の種、例えばサブミクロンの寸法を有するポリマー/薬剤アセンブリー、例えば薬剤凝集体、ポリマー及び薬剤の混合物の凝集体、ミセル、高分子ミセル、コロイド粒子又はナノ結晶、ポリマー/薬剤複合体、及び上記の溶解試験の濾液又は上澄み液に存在する他のこのような薬剤含有種をも包含すると認められる。
【0075】
別法として、本発明の組成物は、ヒト又は他の動物に経口投与したときに、改善されたバイオアベイラビリティー又は上昇したCmaxをもたらす。組成物中の薬剤の相対的バイオアベイラビリティー及びCmaxは、このような決定を行うための慣用方法を用いて、動物又はヒトにおいてインビボで試験することができる。インビボ試験、例えばクロスオーバー研究は、薬剤及びポロキサマーの組成物が上記のように対照組成物と比較して上昇した相対的バイオアベイラビリティー又はCmaxを与えるかどうかを決定するために使用することができる。インビボクロスオーバー研究において、低溶解性薬剤及びポロキサマーを含む試験組成物を、試験被験者のグループの半分に投与し、そして適切なウォッシュアウト期間(例えば、1週間)の後、同じ被験者に、試験組成物と同等の量の結晶性薬剤から構成される対照組成物(しかしポロキサマーは存在しない)を投与する。グループの他の半分には、最初に対照組成物、次いで試験組成物を投与する。相対的バイオアベイラビリティーは、試験グループについて決定された血液(血清又は血漿)中の薬剤濃度対時間曲線下の面積(AUC)を、対照組成物によって与えられる血液中のAUCで除すことにより測定される。好ましくは、この試験/対照比を各被験者について測定し、次いでこれらの比を研究の全被験者にわたって平均する。同様に、Cmaxは、試験グループに関する血液中の薬剤濃度対時間から、対照組成物によって与えられるそれで除して決定することができる。Cmax及びAUCのインビボ決定は、横座標(x軸)に沿った時間に対して縦座標(y軸)に沿った薬剤の血清又は血漿濃度をプロットすることによって行うことができる。投与を容易にするために、投与媒体を用いて投与量を投与することができる。投与媒体は、好ましくは水であるが、試験又は対照組成物を懸濁させるための材料を、これらの材料が組成物を溶解しないか又は薬剤溶解度をインビボで変化させない限り含有することもできる。Cmax及びAUCの決定は周知の手順であり、そして例えば、Welling,“Pharmacokinetics Processes and Mathematics,”ACS Monograph 185 (1986) に記載されている。
【0076】
賦形剤及び投与形態
例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.,2000) に記載されたような当技術分野で周知の賦形剤を包含する他の従来の製剤賦形剤を、本発明の組成物に採用することができる。一般的に、賦形剤、例えば充填剤、崩壊剤、顔料、結合剤
、潤滑剤、滑剤、矯味矯臭剤、その他を、組成物の特性に悪影響を与えることなく通常の目的及び典型的な量で使用することができる。これらの賦形剤は、組成物を錠剤、カプセル、坐剤、懸濁剤、懸濁用粉末、クリーム、経皮パッチ、デポー剤、その他に製剤化するために、薬剤/ポリマー組成物を形成した後に利用することができる。
【0077】
本発明の組成物は、経口、鼻、直腸、膣、皮下、静脈内及び肺による経路を包含する多種多様な経路(しかし、これらに限定されない)により送出することができる。一般的に、経口送出が好ましい。
本発明の組成物は、それらが液体媒質中の粒子の懸濁液として送出されるように、種々の形態に製剤化することができる。このような懸濁液は製造時に液体又はペーストとして製剤化することができるか、又はそれらは乾燥粉末として製剤化することができ、液体、典型的には水は後の時点で、しかし経口投与の前に添加される。懸濁液を構成するこのような粉末は、しばしば小袋(sachet)又は構成用経口粉末(OPC)製剤と呼ばれる。このような投与形態は、任意の公知の手順により製剤化し、そして再構成することができる。最も簡単なアプローチは、乾燥粉末として投与形態を製剤化することであり、これは単に水の添加及び攪拌によって再構成される。別法として、投与形態を液体及び乾燥粉末として製剤化することができ、これらを一緒にし、そして攪拌して経口懸濁液を形成する。さらに別の実施形態において、投与形態は二つの粉末として製剤化することができ、これらは、最初に一方の粉末に水を添加して溶液を形成し、これに第二の粉末を攪拌しながら一緒にして懸濁液を形成することによって再構成される。
【0078】
一般的に、薬剤の分散物を長期貯蔵のために乾燥状態で製剤化することは、これが薬剤の化学的及び物理的安定性を促進するので好ましい。
本発明の他の特色及び実施形態は、本発明の意図する範囲を限定するためではなく、本発明を説明するために与えられる下記の実施例から明らかになるだろう。
【実施例】
【0079】
〔実施例1〜2〕
グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤5−クロロ−1H−インドール−2−カルボン酸[(1S)−ベンジル−(2R)−ヒドロキシ−3−((3R,4S)−ジヒドロキシ−ピロリジン−1−イル−)−3−オキシプロピル]アミド(「薬剤1」)を用いて固体組成物を形成した。この化合物は、約2.3のLog P値;周囲RHで113℃のTg,drug、及び216℃のTmを有し;従って、この薬剤のTm/Tg,drug比(K/K単位)は1.27である。薬剤1の水中溶解度は約80μg/mLである。実施例1は30質量%の薬剤1及び70質量%のポロキサマー407(PLURONIC F127、BASF Corporation, Mount Olive, New Jersey から入手可能)を含有し、そして実施例2は30質量%の薬剤1及び70質量%のポロキサマー338(PLURONIC F108、BASF Corporation から入手可能)を含有した。
【0080】
固体組成物を形成するために回転蒸発方法を下記のように使用した。最初に、薬剤1 0.3g及びポロキサマー 0.7gを丸底フラスコ中のメタノール 15mLに加え、室温で透明溶液が得られるまで攪拌した。次に、フラスコを40℃の浴中で回転しながら、真空下(約0.1atm未満)で溶液からメタノールを除去した。生成した固体組成物を真空下で約3時間室温で乾燥した。次いで乾燥した材料をフラスコから取り出し、液体窒素中で冷却し、乳鉢及び乳棒で粉砕した。
【0081】
薬剤の結晶化度を評価するために実施例1〜2の固体組成物を調査した。Bruker AXS D8 Advance 回折計を備えたPXRDを用いてサンプルを調査した。バックグラウンドシグナルを与えないようにカップ底としてSi(511)プレート張りのルーサイト製サンプルカップに、サンプル(約100mg)を詰めた。結晶方位効果を最小限にするために、サンプルを30rpmの速度でパイ平面内で回転させた。X線源(KCuα、λ=1.54Å)を45kVの電圧及び40mAの電流で操作した。連続的検出器走査モードで、1.8秒/ステップのスキャンスピード及び0.04o/ステップの刻み幅で、各サンプルのデータを27分の期間にわたって集めた。回折図を4o〜30oの2θ範囲にわたって集めたところ、結晶性薬剤の徴候を示さなかった―すなわち、結晶形態の薬剤の量は分析の検出限界(約5質量%)未満であった。従って、組成物中の薬剤は「ほとんど完全に非晶性」であった。
【0082】
薬剤1の濃度上昇を確定するために、実施例1〜2の固体組成物をインビトロ溶解試験で評価した。薬剤の全部が溶解したならば薬剤1の総濃度が2000μg/mLとなるように、各固体組成物の12.0mgのサンプルを二重反復試験で微小遠心管に加えた。37℃に温度制御した室内に管を入れ、そして0.5質量%のタウロコール酸ナトリウム及び1−パルミトイル−2−オレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(NaTC/POPC、重量比4/1)を含有するpH6.5及び290mOsm/kgのPBS(モデル絶食十二支腸液をシミュレート)1.8mLをそれぞれ各自の管に加えた。渦流式ミキサーを用いてサンプルを約60秒間急速に混合した。サンプルを13,000Gで1分間37℃で遠心分離した。次いで生成した上澄み液をサンプリングし、メタノールで1:6(体積)に希釈した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。それぞれ各自の管の内容物を渦流式ミキサー上で混合し、次のサンプルを採取するまで37℃でそのまま放置した。サンプルは、4、10、20、40、90及び1200分で集めた。
対照(C1)として、結晶性薬剤1単独のサンプルを同じ方法で、薬剤の全部が溶解したならばMFD液中の薬剤1の濃度が2000μg/mLとなるように試験した。実施例1〜2及びC1の溶解試験からの結果を表1に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
最初の90分間中の最大薬剤濃度(「MDC90」)及び濃度対時間曲線下の面積(「AUC90」)を決定するために、これらのサンプルで得られた薬剤の濃度を用いた。結果を
表2に示す。
【表5】

データから明らかなように、本発明の固体組成物は、結晶性薬剤単独に比べて濃度上昇を与えた。実施例1は、結晶性対照の7.8倍のMDC90及び結晶性対照の7.9倍のAUC90を与えた。実施例2は、結晶性対照の8.0倍のMDC90及び結晶性対照の8.2倍のAUC90を与えた。
【0085】
〔実施例3〜4〕
グルココルチコイド受容体拮抗剤2−フェナントレンカルボキシアミド,4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロ−7−ヒドロキシ−N−[(2−メチル−3−ピリジニル)メチル]−4b−(フェニルメチル)−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−,(4bS,7S,8aR)−(「薬剤2」)を用いて、固体組成物を形成した。この薬剤は、約6.2のLog P値;0%RHで99℃のTg,drug、及び225℃のTmを有し;従って、薬剤2のTm/Tg,drug比(K/K単位)は1.34である。薬剤2は1μg/mL未満の水中溶解度を有する。実施例1〜2について記載した回転蒸発手順を用いて、固体組成物を製造した。実施例3は、30質量%の薬剤2及び70質量%のポロキサマー407(PLURONIC F127、BASF Corporation)を含有し、そして実施例4は、30質量%の薬剤2及び70質量%のポロキサマー338(PLURONIC F108、BASF Corporation)を含有した。
【0086】
薬剤の結晶化度を評価するために、実施例3〜4の固体組成物を実施例1〜2に記載したようにPXRDを用いて調査した。結果は、実施例3〜4の固体組成物中の薬剤2がほとんど完全に非晶性であることを示し、結晶性薬剤2の検出可能な量が存在しなかった。 薬剤の全部が溶解したならば200μg/mLの薬剤濃度を得るのに十分な量の材料をモデル絶食十二指腸液に加えた以外は、薬剤2の濃度上昇を確認するために、実施例3〜4を実施例1〜2に記載したようにインビトロ溶解試験で試験した。対照(C2)として、結晶性薬剤2単独を用いた。これらの試験からの結果を表3に示す。
【0087】
【表6】

【0088】
最初の90分間中のMDC90及びAUC90を決定するために、これらのサンプルで得られた薬剤の濃度を用いた。結果を表4に示す。
【表7】

データから明らかなように、本発明の固体組成物は、結晶性薬剤を超える濃度上昇を与えた。実施例3の固体組成物は、結晶性対照の113倍のMDC90及び結晶性対照の72倍のAUC90を与えた。実施例4の固体組成物は、結晶性対照の110倍のMDC90及び結晶性対照の81倍のAUC90を与えた。
【0089】
〔実施例5〜8〕
ネルフィナビルメシレート又はVIRACEPT(登録商標)としても知られているレトロウイルスプロテアーゼ阻害剤N−(1,1−ジメチルエチル)デカヒドロ−2−[(2R,3R)−2−ヒドロキシ−3−[(3−ヒドロキシ−2−メチルベンゾイル)アミノ]−4−(フェニルチオ)ブチル]−3−イソキノリンカルボキシアミド(3s,4aS,8aS)−モノメタンスルホネート(「薬剤3」)を用いて、固体組成物を形成した。この薬剤は、約4.1のLog P値;0%RHで119℃のTg,drug、及び190℃のTmを有し;従って、Tm/Tg,drug比(K/K単位)は1.18である。薬剤3の水中溶解度は約6μg/mLである。50質量%の薬剤3及び種々のポロキサマーを含有する固体組成物を、実施例1〜2のように製造した。固体組成物の製造に用いた材料を表5にまとめて示す。
【表8】

薬剤の結晶化度を評価するために、実施例5の固体組成物を実施例1〜2に記載したようにPXRDを用いて調査した。結果は、実施例5の固体組成物中の薬剤3がほとんど完全に非晶性であることを示し、結晶性薬剤3の認めうるピークはなかった。実施例5の固体組成物を40℃の温度及び75%RHに制御した雰囲気に3週間貯蔵したところ、薬剤が結晶化した証拠を示さなかった。
【0090】
溶解媒質はPBSであり、そして薬剤の全部が溶解したならば薬剤3の濃度が1000μg/mLとなるのに十分な量の固体組成物を加えた以外は、薬剤3の濃度上昇を確認するために、実施例5〜8を実施例1〜2のようにインビトロ溶解試験で試験した。結晶性薬剤3単独(C3)も対照として試験した。結果を表6に示す。
【0091】
【表9】

【0092】
最初の90分間中のMDC90及びAUC90を決定するために、これらのサンプルで得られた薬剤の濃度を用いた。結果を表7に示す。
【表10】

データから明らかなように、本発明の固体組成物は、結晶性薬剤を超える濃度上昇を与えた。実施例5〜8の固体組成物は、結晶性対照の16.0〜51.3倍のMDC90値及び結晶性対照の15.3〜65.8倍のAUC90値を与えた。
【0093】
〔実施例9〕
50質量%の薬剤3及び50質量%のポロキサマー407(PLURONIC F127)の固体組成物を噴霧乾燥方法によって製造した。薬剤3 500.1mg及び PLURONIC F127 499.8mgをアセトン 35mL中に溶解することによって、噴霧溶液を形成した。Cole Parmer
74900 シリーズ速度制御シリンジポンプから、溶液を30mL/hrの速度で「ミニ」噴霧乾燥装置にポンプ供給した。加熱窒素流(80℃)を用いて、噴霧溶液を Spraying Systems Co. の二流体ノズル、Module No.SU1A に通して霧化した。噴霧溶液を、直径11cmステンレススチール製室内に噴霧した。生成した固体組成物を濾紙上に集め、真空乾燥し、デシケーター中で貯蔵した。分散物を上記のようにPXRDによって分析したところ、結晶性薬剤3に相当するピークは観察されなかった。
【0094】
薬剤3の濃度上昇を示すために、実施例9の固体組成物を実施例5〜8のようにインビトロ溶解試験で試験した。結果を表8に示す。
【表11】

【0095】
最初の90分間中のMDC90及びAUC90を決定するために、これらのサンプルで得られた薬剤の濃度を用いた。結果を、比較のための結晶性薬剤3の結果と一緒に表9に示す。
【表12】

データから明らかなように、実施例9の固体組成物は、結晶性薬剤を超える濃度上昇を与えた。MDC90値は結晶性対照の37.5倍であり、そしてそのAUC90値は結晶性対照の41.7倍であった。
【0096】
〔比較例C4及びC5〕
これらの例は、低いTg及び高いTm/Tg,drug比を有する低溶解性薬剤及びポロキサマーの粒子の形成が固体組成物中の結晶性薬剤を生じることを示す。薬剤ニフェジピンを用いて製剤を製造した。ニフェジピンは、約2.4のLog P値、周囲RHで46℃のTg,drug、及び175℃のTmを有し;従って、ニフェジピンのTm/Tg比(°K/°K単位)は1.40である。比較例C4は、50質量%のニフェジピン及び50質量%のポロキサマー407(PLURONIC F127、BASF Corporation)を含有し、そして比較例C5は、25質量%のニフェジピン及び75質量%のポロキサマー407(PLURONIC F127、BASF Corporation)を含有した。
【0097】
欧州特許第 EP0836475B1 号に概説された手順を用いて、製剤を下記のように製造した。所望量のポロキサマー407をガラス製バイアル中に秤量し、次いで攪拌し、ポロキサマーが溶融するまで80℃に加熱した。次に、適切な量のニフェジピンを徐々に加え、混合物を80℃で2時間攪拌した。生成した混合物を室温に冷却し、バイアルから取り出し、液体窒素中で冷却し、乳鉢及び乳棒で粉砕した。生成した材料をPXRDによって上記の手順を用いて分析した。比較例C4及びC5両者の回折図は、結晶性薬剤に相当する鋭いピークを示し、薬剤の少なくとも約50質量%が結晶形態であったことを示した。
【0098】
〔実施例10〜13〕
トルセトラピブとしても知られている[2R,4S]4−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−メトキシカルボニル−アミノ]−2−エチル−6−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル(「薬剤4」)及びポロキサマー PLURONIC F-127 及び PLURONIC F-108(両者とも BASF から供給される)の固体組成物を、溶融凝固方法によって下記の手順を用いて形成した。薬剤4は、約7.5のLog P値;周囲相対湿度で約28℃のTg、及び約95℃のTmを有し;従って、Tm/Tg比(°K/°K単位)は1.2である。各例について、表10に示す薬剤4及びポロキサマーの量を正確に秤量し、容器に入れた。次いで容器を105℃に維持した熱油浴中に入れた。約15分後に混合物は溶融しており、磁気攪拌器を用いて約15分間攪拌した。溶融混合物は透明であり、明らかな色はついていなかった。次に、溶融混合物を含有する容器を熱油浴から取り出し、液体窒素中に入れ、溶融混合物の固化を数秒以内に生じさせた。容器を約60秒後に液体窒素から取り出し、周囲温度に温まらせた。次いで生成した不透明な固体非晶性組成物を容器からスパチュラを用いて取り出し、約1mm厚さの小片に破壊した。次いで小片を少量の液体窒素と共に乳鉢に入れ、乳棒で粉砕して白色粉末にした。
【表13】

【0099】
溶解媒質はPBSであった以外は、実施例1〜2のように実施例10〜13の固体組成物をインビトロ溶解試験で評価した。微小遠心管に加えた各組成物の量を、薬剤の全部が溶解したならば溶液中の薬剤4の濃度が1000μg/mLとなるように調節した。これらの試験の結果を表11に示す。
【0100】
【表14】

【0101】
結果を表12にまとめて示すが、この表は、同じ条件下で試験した結晶性薬剤4単独(対照C6)のデータも含んでいる。結果は、実施例10〜13の組成物のCmax,90値が結晶性薬剤単独の262倍〜930倍大きく、そしてAUC90値が結晶性薬剤単独の218倍〜804倍大きかったことを示す。
【表15】

【0102】
〔実施例14〜15〕
薬剤4及びポロキサマー PLURONIC F-127 及び PLURONIC F-108 の噴霧乾燥固体組成物を、下記の手順によって製造した。薬剤及びポリマーを最初にアセトンに加え、混合して溶液を形成した。各溶液をシリンジポンプから0.7mL/分の速度で「ミニ」噴霧乾燥装置にポンプ供給した。90℃に加熱した窒素流を用いてポリマー溶液を噴霧ノズルに通して霧化した。生成した固体噴霧乾燥組成物を濾紙上に集め、真空デシケーター中で乾燥した。表13に製造パラメーターをまとめて示す。
【表16】

【0103】
実施例14〜15の噴霧乾燥組成物を、実施例10〜13のようにインビトロ溶解試験で評価した。薬剤の全部が溶解したならば薬剤4の濃度が1000μg/mLとなるように、微小遠心管に加えた各組成物の量を調節した。これらの試験の結果を表14に示す。
【表17】

【0104】
結果を表15にまとめて示すが、この表は同じ条件下で試験した対照C6のデータも含んでいる。結果は、実施例14〜15の組成物の溶解結果が結晶性薬剤単独(対照C6)よりもはるかに良好であり、結晶性薬剤単独のそれぞれ267倍及び508倍大きいCmax,90値、そして結晶性薬剤単独のそれぞれ193倍及び365倍大きいAUC90値を与えた。
【表18】

【0105】
〔実施例16〕
表16に記載した以外は、ポロキサマー407(PLURONIC F-127)中に25質量%の薬剤4を含む非晶性固体組成物を実施例10〜13のように溶融凝固方法によって製造した。
【表19】

【0106】
この組成物を実施例10〜13のようにインビトロ溶解試験で評価した。これらの試験の結果を表17に示す。
【表20】

【0107】
結果を表18にまとめて示すが、この表は同じ条件下で試験した対照C6のデータも含んでいる。結果は、実施例16の組成物の溶解結果が結晶性薬剤単独よりもはるかに良好であることを示し、結晶性薬剤単独の789倍大きいCmax,90値、そしてが結晶性薬剤単独の665倍大きいAUC90値を与えた。
【表21】

【0108】
雄ビーグル犬を用いてインビボ試験で組成物の性能を評価するために、実施例16の組成物を構成用経口粉末(OPC)として使用した。OPCを、0.5質量%のヒドロキシプロピルセルロース METHOCEL(登録商標)(Dow Chemical Co. から)を含有する溶液中の懸濁液として投与し、下記のように製造した。最初に、METHOCEL(登録商標)7.5gを秤量し、水 約490mLに90〜100℃で徐々に加えてMETHOCEL(登録商標)懸濁液を形成した。全てのMETHOCEL(登録商標)を加えた後、冷/室温の水 1000mLを懸濁液に加え、次いでこれを氷水浴中に入れた。全てのMETHOCEL(登録商標)が溶解したとき、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノオレエート(TWEEN 80)2.55gを加え、TWEEN 80 が溶解するまで混合物を攪拌し、こうしてストック懸濁溶液を形成した。
【0109】
OPCを形成するために、薬剤4 90mgA量を生じるのに十分な量の試験組成物を秤量し、乳鉢に入れた。(「mgA」は、活性薬剤のmgを指す。)ストック懸濁溶液20mL量を乳鉢に加え、試験組成物を乳棒で混合した。追加のMETHOCEL(登録商標)懸濁液を、合計400mLのストック懸濁溶液が乳鉢に加えられるまで攪拌しながら徐々に加えた。次いで懸濁液をフラスコに移し、こうしてOPCを形成した。さらに、90mgAの薬剤4を含有するOPC(対照C7)を、同じ手順を用いて製造した。
【0110】
6頭の雄ビーグル犬にそれぞれOPCを投与した。研究の当日に、絶食状態の犬にガバージュ管及びシリンジを用いてOPCを投与した。全血液サンプルを頸静脈から採取し、下記の手順を用いて薬剤4の濃度について分析した。各血漿サンプル 100μLに、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE) 5mL及び500mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9) 1mLを加え;サンプルを1分間渦流させ、次いで5分間遠心分離した。サンプルの水性部分をドライアイス/アセトン浴中で凍結させ、MTBE層をデカントし、渦流蒸発器で蒸発させた。乾燥サンプルを移動相(33%のアセトニトリル及び67%の水中0.1%ギ酸)100μL中で再構成した。HPLCによって分析を行った。これらの試験の結果を表19に示す。結果は、本発明の組成物が非晶性薬剤4対照(対照C7)と比較して上昇した薬剤濃度及び上昇した相対的バイオアベイラビリティーを与えたことを示す。
【表22】

実施例16の組成物は、非晶性対照の5440倍より大きいCmax値、及び10より大
きい相対的バイオアベイラビリティーを与えた。
【0111】
〔比較例C8〕
この例は、高い薬剤負荷量での低いTgを有する低溶解性薬剤を用いて製造した固体組成物が物理的に安定でないことを示す。50質量%の薬剤4及び50質量%のポロキサマー407(PLURONIC F127)から構成される固体組成物を、熱方法を用いて製造した。この方法において、PLURONIC 4.9gをガラス製バイアルに入れ、110℃の油浴中で溶融した。次に、薬剤4 4.9gを溶融ポロキサマーに加え、透明溶液を形成した。次に、溶融混合物を含有する容器を熱油浴から取り出し、液体窒素中に入れ、数秒間以内で溶融混合物の固化を生じさせた。容器を約60秒後に液体窒素から取り出し、周囲温度に温まらせた。次いで生成した不透明な固体組成物を容器からスパチュラを用いて取り出し、約1mm厚さの小片に破壊した。次いで小片を少量の液体窒素と共に乳鉢に入れ、乳棒を用いて粉砕して白色粉末にした。PXRDによる固体組成物の分析は、組成物中の薬剤の実質的な部分が非晶性であったことを示した。
上記の組成物を40℃の温度及び25%のRHの雰囲気に制御して3週間貯蔵した。PXRDによるサンプルの分析は、組成物中の薬剤の約50質量%が結晶化しいたことを示し、物理的に不安定であることを明確に示した。
【0112】
〔実施例17〕
粒子を、(2R)−3−[[3−(4−クロロ−3−エチルフェノキシ)フェニル][[3−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]メチル]アミノ]−1,1,1−トリフルオロ−2−プロパノール(「薬剤5」)を用いて形成した。この薬剤は、約10.0のLog P値、約−15℃のTg,drug、約10℃のTmを有し;従って、Tm/Tg比(°K/°K単位)は1.1であった。固体を形成するために、薬剤5 125mg及び PLURONIC F127 500mgを秤量してシンチレーションバイアルに入れた。攪拌棒を加え、バイアルを80℃の油浴中に入れた。混合物を加熱し、PLURONICが溶融して透明溶液が得られるまで攪拌した。混合物を液体窒素中で冷却し、乳鉢及び乳棒を用いて粉砕して粒子にした。
こうして形成された粒子を、薬剤5の濃度上昇を確定するために実施例1〜2のように、120μg/mLの用量でインビトロで試験した。対照C9は、非晶性薬剤5単独から構成した。実施例17及び対照C9の粒子に関するこれらの溶解試験からの結果を表20に示す。
【0113】
【表23】

【0114】
これらのサンプルで得られた薬剤の濃度を、最初の90分間中のCmax90及びAUC90を決定するために用いた。結果を表21に示す。
【表24】

【0115】
データから明らかなように、実施例17の組成物は、そのCmax90が非晶性対照の4.5倍であり、そしてそのAUC90が非晶性対照の7.9倍であったという点で、非晶性薬剤を超える濃度上昇を与えた。
【0116】
明細書で採用してきた用語及び表現は、限定用語ではなくて記述用語として用いられており、このような用語及び表現の使用には、提示及び記載した特色又はそれらの一部と同等なものを除外する意図はなく、本発明の範囲は後に続く請求項によってのみ定義及び限定されるものと認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子を含み、該粒子が低溶解性薬剤及びポロキサマーを含み、該粒子中の該薬剤の少なくとも実質的な部分が非晶性であり、該非晶性薬剤が粒子中でポロキサマーと密接に接触しており、そして該薬剤及びポロキサマーが一緒に該粒子の少なくとも50質量%を占め、ここで、該薬剤は少なくとも50℃のガラス転位温度を有する、固体組成物。
【請求項2】
複数の粒子を含み、該粒子が低溶解性薬剤及びポロキサマーを含み、該粒子中の該薬剤の少なくとも実質的な部分が非晶性であり、該非晶性薬剤が粒子中でポロキサマーと密接に接触しており、そして該薬剤及びポロキサマーが一緒に該粒子の少なくとも50質量%を占め、ここで、該薬剤は約6.5より大きいLog P値を有する、固体組成物。
【請求項3】
薬剤が少なくとも50℃のガラス転位温度を有する、請求項2に記載の固体組成物。
【請求項4】
薬剤が約6.5より大きいLog P値を有する、請求項1に記載の固体組成物。
【請求項5】
薬剤のガラス転位温度が少なくとも60℃である、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項6】
薬剤のガラス転位温度が少なくとも70℃である、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項7】
薬剤のLog P値が少なくとも7.0である、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項8】
薬剤のLog P値が少なくとも8である、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項9】
薬剤が°KでTmの融点を有し、そして°KでTg,drugのガラス転位温度を有し、ここで、Tm/Tg,drug比は約1.4未満である、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項10】
m/Tg,drug比が約1.35未満である、請求項8に記載の固体組成物。
【請求項11】
m/Tg,drug比が約1.3未満である、請求項9に記載の固体組成物。
【請求項12】
薬剤がほとんど完全に非晶性である、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項13】
薬剤が粒子の少なくとも約40質量%を占める、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項14】
薬剤が粒子の少なくとも約45質量%を占める、請求項13に記載の固体組成物。
【請求項15】
薬剤が粒子の少なくとも約50質量%を占める、請求項14に記載の固体組成物。
【請求項16】
25℃及び10%相対湿度での3週間の貯蔵中に、組成物中の薬剤の10質量%未満が結晶化する、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項17】
分散物が、使用インビトロ又はインビボ水性環境への投与後に、薬剤単独から本質的に構成される対照組成物に比べて濃度上昇を与え、ここで、該濃度上昇は、
(a)該使用水性環境中の最高薬剤濃度が、該対照組成物によって与えられる濃度の少なくとも1.25倍であること;及び
(b)該分散物を該使用水性環境中に導入した時点と該使用水性環境への導入後の約270分との間の少なくとも90分の任意の期間中の、該使用水性環境中の濃度対時間曲線下の面積が、該対照組成物によって与えられる面積の少なくとも1.25倍であること
の少なくとも一つを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項18】
分散物が、使用インビボ環境への投与後に、薬剤単独から本質的に構成される対照組成物に比べて濃度上昇を与え、ここで、該濃度上昇は、
(a)血液中の最高濃度が、該対照組成物によって与えられる濃度の少なくとも1.25倍であること;及び
(b)相対的バイオアベイラビリティが、該対照組成物に比べて少なくとも1.25倍であること
の少なくとも一つを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物。
【請求項19】
下記:
(1)請求項1〜4の何れかに記載の固体組成物、及び
(2)濃度上昇ポリマー
を含む医薬組成物であって、ここで、該濃度上昇ポリマーは、該医薬組成物が、使用インビトロ又はインビボ水性環境への投与後に、上記固体組成物から本質的に構成される対照組成物に比べて濃度上昇を与えるのに十分な量で存在する、上記医薬組成物。
【請求項20】
濃度上昇ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
濃度上昇ポリマーが、
(a)使用水性環境中の最高薬剤濃度が、対照組成物によって与えられる濃度の少なくとも1.25倍であること;及び
(b)分散物を該使用水性環境中に導入した時点と該使用水性環境への導入後の約270分との間の少なくとも90分の任意の期間中の、該使用水性環境中の濃度対時間曲線下の面積が、該対照組成物によって与えられる面積の少なくとも1.25倍であること
の少なくとも一つを特徴とする、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
使用環境がインビボであり、そして濃度上昇が、
(a)血液中の最高濃度が、対照組成物によって与えられる濃度に比べて少なくとも1.25倍であること;及び
(b)相対的バイオアベイラビリティが、該対照組成物に比べて少なくとも1.25倍であること
の少なくとも一つを特徴とする、請求項19に記載の固体組成物。
【請求項23】
下記の工程:
(1)低溶解性薬剤、ポロキサマー及び溶剤から本質的に構成される溶液を形成すること;及び
(2)該溶液から該溶剤を除去して、該低溶解性薬剤及びポロキサマーから本質的に構成される固体組成物を形成し、該組成物中の該薬剤の実質的な部分は非晶性であること;を含む固体組成物の製造方法であって、ここで、該薬剤は少なくとも50℃のガラス転位温度を有する、上記製造方法。
【請求項24】
下記の工程:
(1)低溶解性薬剤、ポロキサマー及び溶剤から本質的に構成される溶液を形成すること;及び
(2)該溶液から該溶剤を除去して、該低溶解性薬剤及びポロキサマーから本質的に構成される固体組成物を形成し、該組成物中の該薬剤の少なくとも実質的な部分は非晶性であること;
を含む固体組成物の製造方法であって、ここで、該薬剤は約6.5より大きいLog P値を有する、上記製造方法。
【請求項25】
工程(2)が噴霧乾燥、スプレーコーティング、回転蒸発及び蒸発からなる群から選択される、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
請求項23又は24に記載の方法で製造した生成物。

【公表番号】特表2007−517016(P2007−517016A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546397(P2006−546397)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004287
【国際公開番号】WO2005/065657
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】