説明

低炭水化物麺

【課題】 大豆粉を比較的多量に含む低炭水化物、高蛋白質の麺の提供
【解決手段】 小麦粉100重量部、大豆粉60〜500重量部、大豆粉100重量部当り活性グルテン15〜60重量部及び大豆粉100重量部当りこんにゃく粉1〜10重量部を含む混合原料を製麺してなる麺。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麺に関し、更に詳しくは多量の大豆粉を配合した低炭水化物含量の麺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の麺類の主原料は小麦粉やそば粉がほとんどであり、中には、小麦粉に大麦粉、米粉、芋粉などを少量加えアレンジ加工した麺もあるが、栄養的には炭水化物含量が高い食品である。
【0003】
然るに、近年、アメリカなどにおいて、低炭水化物ダイエットが注目されている。これは、従来のダイエットが、カロリー摂取量の制限をベースにした低脂肪ダイエットが主体であったからである。この従来法では、脂肪の摂取カロリー比は確かに低下するが肥満の増加を抑えることはできなかった。これは低脂肪食は高炭水化物食であるため、すでに肥満のある人がインシュリン分泌を高める高炭水化物食にするとインシュリンが余計な炭水化物を脂肪へと変換するのを助けることになり、結果としてダイエットの成果が得られないためである。
【0004】
大豆は、栄養成分、機能性に優れた食品素材としてさまざまな食品に活用されているが、麺類への積極的活用の例は少ない。例えば特許文献1には小麦粉に全粒豆腐を混入して麺を製造する方法が記載されているが、豆腐の水分含量は85%程度と高水分なので、小麦粉と同程度の水分になるように換算すると、大豆としての配合量は小麦粉100重量部に対し7重量部となり、本発明に比べて明らかに大豆配合量は低い。また特許文献2には、大豆粉に黄麹菌を接種培養したものを麺状に成形することによる大豆を主原料とした麺状食品の製造法が記載されているが、製法が特殊であるために産業上の利用可能性が著しく狭ばめられているという欠点を有する。
【0005】
【特許文献1】特開平5−91847号公報
【特許文献2】特開平5−168428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、通常の麺に比べて、その炭水化物量含有量を50%以上減らした低炭水化物、高たんぱく質の麺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従えば、小麦粉100重量部、大豆粉60〜500重量部、大豆粉100重量部当り活性グルテン15〜60重量部及び大豆粉100重量部当りこんにゃく粉1〜10重量部を含んでなる麺が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小麦粉に比較的多量の大豆粉を配合して炭水化物含量を減らした上で、特定量の活性グルテン及びこんにゃく粉を配合することにより、ロールによる圧延方式で製造可能で、適度な硬さと弾力性に富んだ食感に優れた麺を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による大豆を主原料とする麺は、スパゲティ等の製造に用いられるエクストルーダによる押出し製法ではなく、一般にうどんや素麺類等の製造に用いられるロールによる圧延方式で製麺可能である。即ち本発明では所定比率で配合した小麦粉、大豆粉、活性グルテン及びこんにゃく粉、更に必要に応じ添加されるオリーブ油及び食塩、更にはほうれん草等の乾燥野菜粉末及びオニオン、ガーリック等のフレーバーに適量の水を加え、製麺用ミキサーにて混練してできあがった製麺用生地を、製麺用ロールにて麺帯とよばれる帯状の生地成形物と成し、この麺帯を所定の麺厚になるよう、例えば5〜6段の複数の製麺ロールにて圧延する。適度な麺厚に整えられた麺帯は、所定番手の切刃ロールにて麺状に切出した後、所定速度で移行するチェーン上に両端を懸架された麺棒に簾状に掛け取り、所定の温度及び湿度(好ましくは温度25〜90℃及び相対湿度30〜90%)に調整された乾燥室内で所定の水分(例えば12.5〜25重量部)になるまで乾燥する。
【0010】
本発明で用いる小麦粉は従来からパンや中華麺などに使用されている任意の小麦粉、例えば製パン用強力小麦粉又は準強力小麦粉を用いることができる。
【0011】
本発明において使用する大豆粉としては、生大豆粉(好ましくはリポキシゲナーゼ酵素欠失大豆粉)、脱脂大豆粉のいずれも使用することができ、これら市販品として利用可能であり、従来から醤油、豆腐、きなこなどに使用されている。脱脂大豆粉を使用する場合には、製麺加工工程における生地の張り付きを防止するため、植物性油脂(例えばオリーブ油や綿実油など)を添加するのが好ましい。本植物性油脂を使用する場合の添加量には特に限定はないが、例えば大豆粉重量の1〜3重量%、好ましくは2〜2.5重量%配合する。
【0012】
大豆粉の配合量は、小麦粉100重量部に対し、60〜500重量部、好ましくは85〜400重量部である。この配合量が少な過ぎると目的とする炭水化物の50%減量が達成できないので好ましくなく、逆に多過ぎると製麺加工において生地が硬くなりロールでの圧延が困難となるので好ましくない。
【0013】
製麺工程において、小麦粉に大豆粉を添加するとグルテンが減少するために、生地の結着力が劣り、つながり性の悪い生地となるため、大豆粉の配合に応じて適当量の活性グルテンの添加が必要となる。即ち小麦粉配合量の減少により製麺性が劣るようになるが、これを活性グルテンを添加することによって生地の形成力及び生地の伸展性を高めることができる。かかる視点から、本発明によれば、大豆粉100重量部に対して、活性グルテンを15〜60重量部、好ましくは20〜50重量部を配合する。
【0014】
しかし、この配合の状態では、通常の麺に比べて、大豆粉及び活性グルテン由来の蛋白含量の著しい増加により、出来上がった麺は、硬く、弾力感に乏しく、麺としては好ましくない食感となってしまう。そこで、本発明では増粘多糖類の一種である、こんにゃく粉を使用することによって適度な硬さと弾力感の良好な麺を得ることに成功した。このように、本発明では、こんにゃく粉を、大豆粉100重量部に対して1〜10重量部、好ましくは2〜7.5重量部配合する。この配合量が少な過ぎると麺の食感が硬く、粘弾性が低下するので好ましくなく、逆に多過ぎると弾力が強くなりすぎ、噛み砕きにくい食感となるので好ましくない。こんにゃく粉は加水前の粉体の状態で他の原料粉と一緒に配合しても良いし、予めこんにゃく粉を加水する水に溶いてゲル状にして、他の粉体混合に添加しても良い。
【0015】
こんにゃく粉の添加によって、以下の実施例に示すように、そして図1に示したように、ビスコグラフ測定結果から最高糊化粘度値の増加、最高糊化粘度に達する温度の低下及びブレークダウンBD(最高粘度値−最低粘度値)の増加が起こり、麺用適性が改善される。
【0016】
以上の通り、本発明によれば、茹で麺のレオメータ試験結果から、硬さHの減少、付着性の減少、凝集性の増加が生じ、麺としての適正な硬さとこしを備え、滑らかな口当たりの良好な麺が得られる。
【0017】
本発明によれば前記した小麦粉、大豆粉、活性グルテン、こんにゃく粉及びその他の従来の任意的な副原料(例えば食塩、ほうれん草等の乾燥野菜粉末及びオニオン、ガーリック等のフレーバー)などの原料粉100重量部に対し、好ましくは35〜55重量部、更に好ましくは38〜50重量部の水を配合して、常法に従って、製麺することができる。
【実施例】
【0018】
以下、具体例をあげて本発明の乾麺、半生麺及びそれらの製造方法を説明するが、本発明をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
実施例1
表Iに示す配合の原料粉を製麺用横軸ミキサーにて混合し、これに表Iに示す量の水を加えて混錬し、そぼろ状の生地とする。ここで出来上がった生地を製麺用ロール機により複数回の圧延を行ない、1.4〜1.5mmの麺厚に調整した後、16番丸の切刃ロールを用いて、スパゲティ様の麺とし、温度25〜80℃、相対温度50〜90%の温湿度を適宜組合わせた乾燥条件の下で水分13.0〜13.5%の乾麺を製造した。この乾麺は縦割れもなく良質で、茹で時間6〜7分にて適度な硬さと好ましい粘弾性を持ちなめらかさのある、優れた食感の麺であった。
【0019】
【表1】

【0020】
実施例2
表IIに示す配合の原料粉を製麺用横軸ミキサーにて混合し、これに表Iに示す量の水を加えて混錬しそぼろ状の生地とする。ここで出来上がった生地を製麺用ロール機により複数回の圧延を行ない、1.2〜1.3mmの麺厚に調整した後、8番角の切刃ロールを用いてフェトティーネ様の麺とし、温度25〜80℃及び相対温度50〜90%の温湿度条件を適宜組合わせた乾燥条件の下で水分19〜20%の半生麺を製造した。この半生麺は縦割れもなく良質で、茹で時間8〜9分にて適度な硬さと、好ましい粘弾性を持ち、なめらかさのある優れた食感の麺であり、とくに茹後フライパンにて焼きうどんのように油で炒めても、通常のうどんよりもフライパンへの麺のはりつきや麺線同士の結着がおこらず、良好であった。
【0021】
【表2】

【0022】
実施例3〜4及び比較例1〜2
表III に示す配合の原料粉を配合して粉体組成物を得、これらのビスコグラムをブラベンダー社製ビスコグラフによって求めた。ビスコグラムの典型例は図1に示す通りである。
【0023】
【表3】

【0024】
表III に示すビスコグラムの結果から明らかなように、比較例1のように、こんにゃく粉を配合しないと、ビスコグラムの最高粘度が上がらず、低いままであり、ブレークダウンもない状態である。一般的な小麦粉の用途では、最高粘度が極端に低いものは好ましくないとされている(「小麦粉−その原料と加工品/日本麦類研究会」より)。一方、実施例3及び4に示すようにこんにゃく粉を添加すると最高粘度が高く、ブレークダウンが大きくなってくる。麺への適性には、ビスコグラムの最高粘度が高く、ブレークダウンが大きい方が良いとされている(「食品分析法/日本食品工業学会」より)。
なお、ここでブレークダウン=最高粘度−最低粘度
コンシステンシー=最終粘度−最低粘度
BD./Con.=ブレークダウン/コンシステンシー
【0025】
実施例5〜6
表IVに示す配合に従って乾麺を製造した。予め、こんにゃく粉と水とを混合し、ゲルを作り加水として他の原料粉と製麺用横軸ミキサーにて混合した。ここで出来上がった生地を製麺用ロール機により複数回の圧延を行ない、1.5mmの麺厚に調製した後、型抜きで直径27mmの円形に成形し、6分間ゆで、水洗いして、品温15℃で以下の条件で測定を行なった。
1、レンジ200g
2、アダプター 球状(直径2cm)
3、試料台:ガラス板
4、測定項目は、アダプター面積を78.5平方センチメートルとし計算
【0026】
【表4】

【0027】
なお、物性測定は(株)レオテック社製FUDOHレオメータにて、2回のそしゃく測定を行なった。得られる基本波形を図2に示したが、各々の物理学的特性項目は以下の通りである。結果は表IVに示す。
硬さ:H
付着性:A3(面積)
粘着力:C
凝集性:A2/A1(面積の比)
そしゃく性:H×(A2/A1)/(B2/B1)
【0028】
表IVの結果から明らかなように、こんにゃく粉無添加の麺が硬く、コシが弱い食感(硬さが高く、凝集性が低い)だったものが、こんにゃく粉を加えることにより、噛み砕きやすくコシのあるもちもちとした食感(硬さが低くなっている一方で凝集性が高い)になっていることが分かる。また、付着性が高く、麺肌の荒れているものが、こんにゃくを添加することにより、付着性の低い、なめらかな麺になっていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上の通り、本発明に従えば、多量の大豆粉を小麦粉に配合した硬さ及び弾力性の良好な麺を製造することができ、低炭水化物、高蛋白質の麺を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の麺用原料粉のビスコグラムの典型例を示す図面である。
【図2】本発明の実施例5及び6の物性測定値を示す基本波形である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉100重量部、大豆粉60〜500重量部、大豆粉100重量部当り活性グルテン15〜60重量部及び大豆粉100重量部当りこんにゃく粉1〜10重量部を含む混合原料粉を製麺してなる麺。
【請求項2】
請求項1に記載の麺を製造するに当り、小麦粉、大豆粉及び活性グルテンを含む原料粉にこんにゃく粉を配合し、これに水を加えて製麺する麺の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の麺を製造するに当り、予めこんにゃく粉に水を加えてゲル状とし、これを、こんにゃく粉を除く成分を配合した原料粉に添加して製麺する麺の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−109708(P2006−109708A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297820(P2004−297820)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(592211688)株式会社はくばく (9)
【出願人】(302042298)パウダーテクノコーポレーション有限会社 (5)
【Fターム(参考)】