説明

低用量で事前充填式の薬剤送達デバイスおよび方法

低用量の薬物を投与する薬剤送達デバイス(100)は、筐体(111)と、筐体(111)内に配置された薬剤リザーバ(101)とを含む。薬剤リザーバ(101)には、針(135)が接続される。筐体(111)には圧力を印加する部材(113)が可動式に接続され、第1の位置と第2の位置との間を動くことができる。圧力を印加する部材(113)は、第1の位置では薬剤リザーバ(101)に圧力を印加しないが、第2の位置では薬剤リザーバ(101)に圧力を印加して、薬剤リザーバ(101)内に貯蔵された薬物を分注する。低用量のインスリンを投与して膵臓の第1相インスリン応答を刺激する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事前充填式の薬剤送達デバイスに関する。より詳細には、本発明は全体として、皮内または皮下注射を容易にすることができる事前充填式の薬剤送達デバイスに関する。さらにより詳細には、本発明は、正常な人間の膵臓の第1相インスリン応答を補充するためにわずかなインスリン用量のみを送達する事前充填式のインスリン送達デバイスを提供する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2010年2月1日に出願した米国仮出願第61/300,373号の利益を主張するものである。
【0003】
正常な人間の膵臓が血糖値の上昇に応答してインスリンを分泌することは、2つの相からなることが知られている。第1相は、血漿インスリン値の急速な増大からなり、高血糖刺激から数分以内で最大に到達する。第1相インスリン分泌後、血漿インスリン値は急激に低下し、数時間後、血漿インスリン値のより段階的な第2のピーク(第2相)が観察される。膵臓による第1相インスリン分泌の低減は、2型糖尿病に発展することになる患者において最も早く検出可能な異常である。全体が参照により本明細書に組み込まれている、非特許文献1。したがって、第1相インスリン分泌が減った患者に、不足している第1相インスリンを供給する薬剤送達デバイスが必要とされている。
【0004】
インスリンは、皮内層における血管分布度が高いため、皮内に注射するとより容易に吸収されると考えられる。注射されたインスリンが身体によってそのように迅速に吸収されることは、減った第1相インスリン分泌を食事時間に補償するときに有益である。したがって、第1相インスリンの補充を皮内に供給する薬剤送達デバイスも必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,955,871号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.E. Gerich, Diabetes, 51巻, 補遣1, 2002年2月, S117-S121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の薬剤送達デバイスには、第1相インスリン用量だけを提供するものはない。したがって、使用者は、注射を行う前に用量を設定しなければならず、これは用量の間違いを招く可能性がある。したがって、用量を設定する必要なく第1相インスリンだけを供給する薬剤送達デバイスも必要とされている。
【0008】
1990年9月11日に発行されたThomasの特許文献1に開示されているものなど、既存の1回しか使えない事前充填式の使い捨ての薬剤送達デバイスは、皮内注射に伴う高圧を生成することができない。使用者は、既存の1回しか使えない使い捨ての事前充填式の薬剤送達デバイスでは、約20〜30psiの注射圧力を生成することができる。しかし、皮内注射は、少なくとも200psiの注射圧力を必要とする。したがって、皮内注射にとって十分な注射圧力を生成する事前充填式の薬剤送達デバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、薬剤送達デバイスは、わずかな用量の急速に吸収されるインスリンを患者に供給して、低減した第1相インスリン分泌を補償する。薬剤送達デバイスは、第1相の補充インスリン用量を皮内に供給することが好ましい。
【0010】
薬剤送達デバイスは、薬剤リザーバと、薬剤リザーバに接続された、針を含むハブアセンブリと、皮内注射に伴う後方圧を克服するのに十分な圧力を注射中に薬剤リザーバに印加する機械デバイスとを含む。薬剤リザーバは、包括的に1から15単位(10から150マイクロリットル)の最大容量のインスリンを有し、それによって、食事の直前に投与されると、速効性でわずかな用量のインスリンを提供して第1相インスリン応答を刺激することが好ましい。この第1相インスリン応答は、肝臓内のグルコース産生の減衰を担い、またそれだけに限定されるものではないが、血糖制御の改善および高インスリン血症の実質上の回避を含む他の利点を有することができる。
【0011】
より一般には、上記の目的は、低用量の薬物を投与し、筐体と、筐体内に配置された薬剤リザーバとを含む薬剤送達デバイスによって達成される。薬剤リザーバには、針が接続される。筐体には圧力を印加する部材が可動式に接続され、第1の位置と第2の位置との間を動くことができる。圧力を印加する部材は、第1の位置では薬剤リザーバに圧力を印加しないが、第2の位置では薬剤リザーバに圧力を印加して、薬剤リザーバ内に貯蔵された薬物を分注する。
【0012】
上記の目的はまた、低用量の薬物を投与し、剛性部材と剛性部材に接続された第1の可撓性部分および第2の可撓性部分とを含む薬剤送達デバイスによって達成される。第1の可撓性部分内には、薬物を収納する薬剤リザーバが配置される。薬剤リザーバには、針が接続される。第2の可撓性部分に第1の圧力を印加して真空を作ってから、第2の可撓性部分を患者の皮膚に接触させる。第2の可撓性部分を患者の皮膚に接触させ、第2の可撓性部分にかかっている第1の圧力を解放した後、第1の可撓性部分に第2の圧力を印加して薬物を分注する。
【0013】
上記の目的はまた、低インスリン用量を投与する方法によって達成される。事前充填式の薬剤送達デバイスの針を注射部位に通す。事前充填式の薬剤送達デバイスに圧力を印加して第1相インスリン用量を投与し、膵臓の第1相インスリン応答を刺激する。
【0014】
本発明の目的、利点、および顕著な特徴は、添付の図面と併せて本発明の例示的な実施形態を開示する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0015】
本発明の様々な実施形態の上記の利益および他の利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明および添付の図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】低用量の薬物を投与する薬剤送達デバイス内の事前充填式の薬剤送達リザーバの横断立面図である。
【図2】図1の薬剤送達デバイスの上面図である。
【図3】低用量の薬物を投与する事前充填式の薬剤送達リザーバを有するシリンジの横断立面図である。
【図4】低用量の薬物を投与するサイドヒンジ型の薬剤送達デバイス内の事前充填式の薬剤送達リザーバの立面図である。
【図5】ピストンに力が印加される軸に対して針軸が実質上平行である、低用量の薬物を投与する薬剤送達デバイス内の事前充填式の薬剤送達リザーバの横断立面図である。
【図6】図5の薬剤送達デバイスの上面図である。
【図7】針軸に対して実質上平行の方向でリザーバに力が印加される、低用量の薬物を投与するサイドヒンジ型の薬剤送達デバイス内の事前充填式の薬剤送達リザーバの立面図である。
【図8】はさみ作動式の注射機構を有する、低用量の薬物を投与する薬剤送達デバイス内の事前充填式の薬剤送達リザーバの部分横断立面図である。
【図9】低用量の薬物を投与する薬剤送達デバイスの筐体の斜視図である。
【図10】複数の事前充填式の薬剤送達リザーバを有する薬物アセンブリの上面図である。
【図11】図10の薬物アセンブリが挿入された、図9の筐体の部分横断立面図である。
【図12】低用量の薬物を投与する薬剤送達デバイスの筐体アセンブリの斜視図である。
【図13】図10の薬物アセンブリが挿入された、図12の筐体の部分横断立面図である。
【図14】図12の筐体アセンブリのカバーの斜視図である。
【図15】図12の筐体アセンブリの基礎の斜視図である。
【図16】図12の筐体アセンブリに接続されたハブアセンブリの拡大立面図である。
【図17】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの横断立面図である。
【図18】図17の薬剤送達デバイスの連結アセンブリの拡大上面図である。
【図19】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの斜視図である。
【図20】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの斜視図である。
【図21】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの斜視図である。
【図22】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの斜視図である。
【図23】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの斜視図である。
【図24】図23の薬剤送達デバイスのための製造プロセスの図である。
【図25】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの部分横断立面図である。
【図26】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの部分横断立面図である。
【図27】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの部分横断立面図である。
【図28】本発明の別の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスの部分横断立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面全体にわたって、同じ参照番号は、同じ部分、構成要素、および構造を指すことが理解されるであろう。
【0018】
本発明の例示的な実施形態による低用量で事前充填式の薬剤送達デバイスは、薬物を収納する薬剤リザーバと、針を含むハブアセンブリと、薬物を注射できるように薬剤リザーバに圧力を印加する機械デバイス(圧力を印加する部材)とを含む。薬物がインスリンであり、食事の直前に薬剤送達デバイスを使用してインスリンを注射し、第1相インスリン応答を刺激することが好ましい。食事の直前とは、食事前5分以内と定義する。小型の薬剤リザーバおよび機械デバイスを提供することによって、薬剤送達デバイスは、高圧のわずかな用量の薬物を送達するように適合される。薬剤送達デバイスの構成要素の数を低減させることで、薬剤送達デバイスのコストおよび複雑さを低減させる。投与寸法がわずかであることもまた、用量の正確さの重要性を低減させ、ならびに使用者が自身の血糖値を監視しなければならない頻度を低減させる。薬剤送達デバイスは、薬物を皮下または皮内のどちらにも送達するように設計することができる。薬物は、体内でより速い応答を得るために、皮内に注射されることが好ましい。皮内に注射することで、薬物の皮下または経口投与に比べて、注射された薬物の生物学的利用能を増大させる。
【0019】
誤って針を刺さないように、薬剤送達デバイスは、シールドなどの針安全機能を備えることができる。本発明の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスは、皮下および皮内注射に使用することができる。針の注射長さを制御するために、薬剤送達デバイスは、注射長さを制限するデバイスを含むことができ、それによって皮内注射を確実にする。皮内針にとって好ましい注射長さは、始めと終わりを含む(inclusive)約0.5〜3mmであり、好ましくは始めと終わりを含む約1.5〜2mmである。
【0020】
図1〜28に示すように、様々な機械デバイス(圧力を印加する部材)を使用して、皮内注射に必要な高圧を起こすことができる。機械デバイスのいくつかは、それだけに限定されるものではないが、その間の空間内で薬剤送達リザーバを圧縮する1対のギアまたはローラと、注射または呼び水に必要な圧力を供給するデバイス内の第2の加圧チャンバと、電圧下で偏向する圧電膜と、機械力増強器の一部であるプレテンションばねとを含む。あるいは、バイナリガス発生器、低級の爆発物、または浸透圧勾配などの化学反応を使用して、皮内注射に必要な高圧を起こすこともできる。投与されている薬剤がインスリンである場合、開示する実施形態のそれぞれの薬剤送達リザーバは、第1相の補充インスリン用量を提供するために、包括的に1から15単位の最大容量のU−100インスリン(10から150マイクロリットル)を有することが好ましい。
【0021】
図1および2に示すように、薬剤送達デバイス100は、プラスチックの筐体アセンブリ111内に配置された薬剤リザーバ101を含む。筐体アセンブリは、上部筐体113および下部筐体115を含む。薬剤リザーバ101は、下部筐体115内に配置されたピストン117上に配置される。上部筐体113内には、対応するピストン119が配置される。筐体アセンブリ111には、ハブ133および針135を含むハブアセンブリ131が接続される。図2に示すように、ハブアセンブリ131は、薬剤リザーバ内の封止141が破断されると針135が薬剤リザーバ101と流動的に連通するように、筐体アセンブリ111に接続される。封止141は、薄いプラスチック層であることが好ましい。上部筐体113を下方へ押すことで、薬剤リザーバ101に高圧を作用させ、それによって薬剤リザーバ101内の封止141を破断し、薬剤リザーバ内に貯蔵された薬物を、針135を通じて高圧で患者に投与する。
【0022】
図3に示すように、薬剤送達デバイス200は、シリンジタイプの薬剤送達デバイスである。筐体アセンブリ205のチャネル203内には、プランジャ201が可動式に配置される。チャネル203内には、薬物を収納する薬剤リザーバ211が配置される。筐体アセンブリ205には、ハブ223およびダブルエンド針225を含むハブアセンブリ221が接続される。ハブアセンブリ221は、薬剤リザーバが破断されると針225が薬剤リザーバ211と流動的に連通するように、筐体アセンブリに接続される。筐体アセンブリ205から外側に指グリップ207が延び、それによって使用者は注射中、薬剤リザーバ211に高圧を生成することができる。プランジャ201を下方へ押すことで、薬剤リザーバ211を破壊し、それによって薬剤リザーバ内に貯蔵された薬物を、針225を通じて高圧で患者に投与する。
【0023】
図4に示すように、薬剤送達デバイス300は筐体アセンブリ301を含み、第1の筐体303がヒンジ307によって第2の筐体305に接続される。ヒンジ307は、リビングヒンジであることが好ましい。第1の筐体303内には、第2の筐体305内に配置された薬剤リザーバ311と係合するように、ピストン309が配置される。筐体アセンブリ301には、ハブ323および針325を含むハブアセンブリ321が接続される。ハブアセンブリ321は、薬剤リザーバが破断されると針325が薬剤リザーバ311と流動的に連通するように、筐体アセンブリ301に接続される。第2の筐体305上で第1の筐体303を閉じることで、ヒンジ307による機械的利点が生じ、薬剤リザーバ311を圧縮および破断して針325を通じて薬物を投与する。ピストン309は、小さい直径の円筒であることが好ましい。ピストン309の直径が小さいことに加えて、ヒンジ307により、レバーアーム(第1の筐体303)は圧力を増大させて、皮内注射に必要な高圧を作ることができる。針325の長手方向軸は、注射中に使用者によって薬剤リザーバ311に力が印加される方向に対して実質上垂直である。
【0024】
図5および6に示すように、薬剤送達デバイス400は、注射中に使用者によって力403が印加される方向に対して実質上平行である針軸401を有する。筐体アセンブリ411は、上部筐体413および下部筐体415を含む。上部筐体413の下面上にはピストン417が配置され、下部筐体415を通って動くことができる。ピストン417は、直径が小さいことが好ましい。下部筐体415内には、薬剤リザーバ421が配置される。筐体アセンブリ411には、ハブ433および針435を含むハブアセンブリ431が接続される。ハブアセンブリ431は、薬剤リザーバが圧縮されると針435が薬剤リザーバ421と流動的に連通するように、筐体アセンブリ411に接続される。使用者は上部筐体413を下方へ押し、それによって上部筐体を下部筐体415内へ動かし、その結果ピストン417が薬剤リザーバ421を圧縮して封止を破断し、それによって針435を通じて薬物を投与する。皮内注射にとって十分な高圧が生成される。薬剤送達デバイス400は、上部筐体413が完全に押下されて薬剤リザーバ421の全用量が送達されたことを確認するために、ロックタブを含むことができる。
【0025】
図7に示すように、薬剤送達デバイス500は、図5および6の薬剤送達デバイス400に類似しているが、高圧はヒンジ507によって生成される。薬剤送達デバイス500は、注射中に薬剤リザーバ511に使用者によって力が印加される方向に対して実質上平行である針軸502を有する。筐体アセンブリ501は、上部筐体503および下部筐体505を含む。上部筐体503の下面上にはピストン508が配置され、下部筐体505に対して動くことができるようにヒンジ507によって接続される。ピストン508は、直径が小さいことが好ましい。下部筐体505内には、薬剤リザーバ511が配置される。筐体アセンブリ501には、ハブ523および針525を含むハブアセンブリ521が接続される。ハブアセンブリ521は、針525が薬剤リザーバ511と流動的に連通するように、筐体アセンブリ501に接続される。使用者はヒンジ507の周りで上部筐体503を回転させ、それによって上部筐体を下部筐体505の方へ動かし、その結果ピストン508が薬剤リザーバ511を圧縮して皮内注射にとって十分な高圧を生成する。薬剤送達デバイス500は、上部筐体503が完全に押下されて薬剤リザーバ511の全用量が送達されたことを確認するために、ロックタブ509を含むことができる。さらに、ロックタブ509は、上部筐体503が開いて薬剤送達デバイス500が再び使用されないようにする。
【0026】
図8に示すように、薬剤送達デバイス600は、薬剤リザーバ611内に貯蔵された薬物を投与するために、はさみ作動式の注射機構601を含む。はさみ作動式の注射機構は、ピン631によって可動式に接続された第1の脚部603および第2の脚部605を含む。薬剤リザーバ611は、筐体アセンブリ621内で第1の脚部603の端部と第2の脚部605の端部との間に配置される。筐体アセンブリ621には、安全シールド623が接続される。安全シールド623と筐体アセンブリ621との間には、ばね625が配置される。薬剤リザーバ611には、薬剤リザーバの封止が破断されると針627が薬剤リザーバ611と流動的に連通するように、ハブ629が接続される。薬剤送達デバイス600を注射部位に配置し、筐体を下方へ押してばね625を克服し、それによって安全シールド内の開口633を通じて針627を露出させ、その結果患者の皮膚内に針627を挿入することができる。安全シールド623の肩部624が、針627の挿入深さを制限する。次いで、はさみ作動式の注射機構601を握り、それによって脚部603および605の端部を閉じ、薬剤リザーバ611を圧縮してその封止を破断し、それによって高圧で針627を通じて薬物を投与する。
【0027】
薬剤送達デバイスまたは薬剤を分注するキット701を図9に示す。筐体アセンブリ703では、第1の筐体705がヒンジ707によって第2の筐体709に接続される。筐体アセンブリ703は、ヒンジ型のクラムシェルであることが好ましい。筐体アセンブリ703には、アクチュエータ711が一体形成される。筐体アセンブリ703内には開口708が形成され、注射の際には開口708を通って針が突出する。アクチュエータ711を押すことで、筐体アセンブリ703内に配置された薬剤リザーバに圧力を印加し、薬剤リザーバを圧縮して流体経路内の封止を破断し、それによって針を通じて薬物を使用者に投与する。
【0028】
図10および11に示すように、図9の薬剤を分注するキット701内に用量または薬物ホイール721を配置することができる。ホイール721は複数の薬剤リザーバ723を含み、薬剤リザーバ723はそれぞれハブ725を含み、薬剤リザーバの封止が破断されると薬剤リザーバ723と流動的に連通するように、ハブ725を通じて針727が接続される。ハブ725は、用量ホイール721の表面731と薬剤リザーバ723の間に配置されたばね726を含むことが好ましい。用量ホイール721の外面733には安全シールド729が係合し、それによって針727が動かないようにする。安全シールド729が取り外されると、ばねは拡大し、注射部位で針727を注射する。破線730は、安全シールド729が取り外されたときに薬剤を分注するキット701内の開口735を通って針727が動く位置を示す。次いでアクチュエータ711を押下し、それによって薬剤リザーバを圧縮して薬剤リザーバの封止を破断し、それによって針727を通じて高圧で薬物を投与する。次いで安全シールド729をハブ725に再び接続し、それによって針727を後退させる。次いで次の注射のために、用量ホイール721を回転させる。すべての薬剤リザーバ723が空になった後、用量ホイール721は適切に処分され、薬剤を分注するキット701内には新しい用量ホイール721が配置される。投与されている薬物がインスリンであるとき、薬剤リザーバ723はそれぞれ、第1相の補充インスリン用量を提供するために、包括的に1から15単位の最大容量のU−100インスリン(約10から150マイクロリットル)を有することが好ましい。
【0029】
図12〜16に示すように、薬剤送達デバイス800は、カバー803および基礎805を有する筐体アセンブリ801を含む。基礎805内の開口806は、ハブアセンブリ811を受け取るように適合される。ハブアセンブリ811はハブ813を含み、ハブ813には薬剤リザーバ815および針817が接続される。薬剤リザーバ815はハブ813内に配置され、ハブ813は、基礎805に接続されるルアーロックを有することが好ましい。ハブ813には安全シールド819が接続され、針817の患者側端部を覆い、誤って針を刺さないようにする。針817は、基礎805の下面807より下まで、皮内注射にとって好ましい約1.5mmの深さを有することが好ましい。
【0030】
カバー803は、ばね809によって基礎805に回転可能に接続される。カバー803は、カムリリース821が留まるまで、基礎805に対して回転する。この回転によってデバイス800にプレチャージし、ばね809内にエネルギーを蓄積する。図13および14に示すように、カバー803内にカム831が形成される。注射を行うときは、安全シールド819を取り外し、露出された針817を患者内で所望の注射部位に挿入する。カムリリース821は切り離されてカバー803を回転させ、その結果カム831の増大する傾斜が可動式の部材833に係合し、部材833はカムによって下方へ動かされ、それによって薬剤リザーバ815を圧縮して流体経路内の封止を破断する。次いで、針817を通じて薬物が投与される。処分の際には、安全シールド819をハブ813に再び接続し、ハブアセンブリ811を取り外す。次いで、別の注射を実行するために、基礎805に新しいハブアセンブリ811を接続することができる。したがって、薬剤送達デバイス800は、新しいハブアセンブリ811とともに使用する準備ができる。
【0031】
薬剤送達デバイス900を図17および18に示す。薬剤送達デバイス900は、図12の筐体アセンブリ801に実質上類似の筐体アセンブリ901内に配置することができる。薬剤送達デバイス900は、作動機構または圧力を印加する部材としてプランジャ911を有する。使用者がアクセスする際には、プランジャ911はカバー905内の開口903を貫通して延びる。カバー903には、ピン931および933などによって、2つの伸縮型のリンク913および915が固定される。
【0032】
薬剤送達デバイス900をプレチャージするには、使用者は基礎907を保持してプランジャ911を後退させ、それによってチャージ位置にプランジャをロックする。リンク913とリンク915はそれぞれ、チャージ位置にプランジャ911をロックするために、ばね917および919を有する。ハブアセンブリ921は、基礎907内の凹部909内に配置されたハブ923、薬剤リザーバ925、針927、および安全シールド929を含む。薬剤リザーバ925は、ハブ923内に受け取られる。針927はハブに固定され、薬剤リザーバ内の封止が破断されると患者側ではない端部が薬剤リザーバ925と流動的に連通するように配置される。針927の患者側の端部は、外部に、好ましくは皮内注射に適した深さのところに配置される。薬剤送達デバイス900を注射部位に配置し、安全シールド929を取り外し、針927を患者の皮膚内に挿入する。プランジャ911には、ロックばね917および919を克服する圧力が印加され、それによってプランジャ911を下方へ動かす。プランジャ911が下方へ動くことで、薬剤リザーバ925を圧縮して薬剤リザーバ925の封止を破断し、それによって針927を通じて高圧で薬物を投与する。処分の際には、安全シールド929をハブ923に再び接続し、ハブアセンブリ921を取り外す。次いで、別の注射を実行するために、基礎907に新しいハブアセンブリ921を接続することができる。したがって、薬剤送達デバイス900は、新しいハブアセンブリ921とともに使用する準備ができる。
【0033】
図19〜22に示すように、薬剤送達デバイス1000は皮下注射に使用される。安全シールド1001が針を覆い、針は皮下注射に適合された長さを有する。筐体アセンブリ1011は、上部筐体1013および下部筐体1015を含む。下部筐体1015内の空胴1017内に、薬剤リザーバが配置される。薬剤リザーバの封止が破断されると、ハブ1021によって下部筐体1015に接続された針が薬剤リザーバと流動的に連通する。上部筐体1013を下部筐体上へ閉じ、それによって薬剤リザーバを圧縮して流体経路内の封止を破断する。薬剤リザーバ内に貯蔵された薬物は、針を通じて高圧で押し出される。
【0034】
図23および24に示すように、薬剤送達デバイス1100は、積層されたシートから作られる。第1の積層ロール1101が薬剤送達デバイス1100の底部を形成し、第2の積層ロール1102が薬剤送達デバイスの上部を形成する。図24に示すように、熱形成によって底部積層ロールと上部積層ロールの両方に凹部が形成される。底部積層ロールと上部積層ロールの両方にノッチ1104および1105が形成され、各薬剤送達デバイスに対して別個のレバー1106および1107を形成する。第1の積層ロール1101と第2の積層ロール1102はともに一体化され、凹部は薬剤リザーバ1121を形成するように位置合わせされる。次いで、積層体をともに結合して、薬剤送達デバイス1100を形成する。次いで、薬剤リザーバ封止が破断されると針が薬剤リザーバ1121と流動的に連通するように、ハブアセンブリ1131を注射チャネル1123に接続することができる。上部レバー1106と下部レバー1107を互いから離して折り畳む。次いで任意の適した方法で、薬剤送達デバイス1100を、結合された積層シートから分離することができる。薬剤送達デバイス1100内には、薬物を薬剤リザーバ1121に充填できるように、充填チャネル1103が形成される。薬物がリザーバに充填された後、充填チャネル1103が封止される。安全シールド1125を取り外して針を露出させる。上部レバー1106と下部レバー1107をともに握り、薬剤リザーバ1121を圧縮して薬剤リザーバ1121の封止を破断し、それによって高圧で薬物を排出する。
【0035】
図25〜28の薬剤送達デバイス1200は、実質上ボール状の第1の部分1201と、実質上ベル状の第2の部分1202とを有する。第1の部分1201内には、薬物を受け取るために薬剤リザーバ1203が形成される。第2の部分1202の空胴1205を貫通して、突起1204が延びる。薬剤リザーバ1203から、突起1204全体を貫通してチャネル1206が延びる。チャネル1206の開放端部には、針1207が固定される。第1の部分1201および第2の部分1202は、柔らかい弾性材料から形成される。第1の部分と第2の部分は、円板などの剛性の壁1211が分離する。第2の部分1202の端部1221は、突起1204の端部1223より下まで延びることが好ましい。
【0036】
注射を行うときは、図26に示すように、デバイスを皮膚1221上に配置する前に、使用者は薬剤送達デバイス1200の第2の部分1202を握る。次いで、デバイス1200を皮膚1221上に配置し、第2の部分1202を解放し、第2の部分1202の弾性によってデバイスの元のベル形状を再び確立し、それによって、図27に示すように空胴1205内に真空を作る。真空により、注射部位の皮膚1221を上方へ空胴1205内に吸引し、それによって針1207で皮膚に孔をあける。次いで、図28に示すように、第1の部分1201を握ることによって患者に薬物を投与し、それによってチャネル1206および針1207を通って注射部位内へ薬物を放出する。次いで、薬剤送達デバイス1200を注射部位から取り外し、適正に処分する。
【0037】
本発明の例示的な実施形態による薬剤送達デバイスは、自己呼び水機能を含むことができる。薬剤リザーバは、リザーバに薬物をわずかに過剰に充填できるように、弾性を有する材料から作ることができる。作動(ハブアセンブリと薬剤リザーバの接続)の際、リザーバ内部の圧力により、針を通じてわずかな量の薬物を分注し、それによって薬剤送達デバイスに呼び水をする。
【0038】
薬剤送達デバイスは、ペンまたは他の適した包装内部に収納されたカートリッジ状のデバイス内で複数の用量を投与することが可能であろう。そのような薬剤送達デバイスは、図10に示すような単一の使い捨てのプラスチックホイール内、または回転カートリッジもしくはタレット構成内にカプセル化された複数の用量を有することができる。あるいは、薬剤送達デバイスは、1つの再利用可能な針と、積層膜内にカプセル化された3つ以上の薬剤リザーバ(食事ごとに1つ)とを有することもできる。
【0039】
さらに、薬剤送達デバイスは、図19〜22に示すように、皮下注射に適したより長い針を有することができる。
【0040】
さらに、薬剤送達デバイスは、2つの針(皮下点滴用および皮内注射用)を有するインスリンポンプまたは薬剤点滴セットとともに使用されるように適合することができる。皮内針は、健康な膵臓によって産生される第1相インスリンを複製するために使用され、皮下針は、基礎投与および正常な食事時間のボーラス用量のインスリンのために使用される。
【0041】
さらに、薬剤送達デバイスは、固定の寸法の複数の第1相の補充インスリン用量を送達する使い捨てのペン状のデバイスとすることができる。
【0042】
上記のように、薬剤リザーバ内には、封止141(図1および2)を配置することができる。あるいは、針キャップ内部には、消毒障壁として働くように半剛性の発泡体が配置される。
【0043】
全体として参照により本明細書に組み込まれている、前述のThomasの特許文献1に開示されているものなど、既存のタイプの1回しか使えない使い捨てのシリンジを利用し、約1から15単位のU−100インスリン(10から150マイクロリットル)の範囲内で制限された数量のインスリンで第1相の補充インスリン用量を事前充填して、力を増強し、または力を増強することなく、第1相の補充インスリン用量を皮下または皮内に投与することによって、第1相の補充インスリン用量を提供することは、本発明の範囲内である。速効性のインスリンなど、任意の適したタイプのインスリンまたはインスリン類似物を使用することができる。
【0044】
上記の実施形態および利点は、例示のみを目的としており、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態の説明は、説明を目的としており、本発明の範囲を限定するものではない。様々な修正形態、代替形態、および変更形態が当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲および均等物で定義される本発明の範囲内に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低用量の薬物を投与する薬剤送達デバイスであって、
筐体と、
薬物を収納する前記筐体内に配置された薬剤リザーバと、
前記薬剤リザーバに接続された針と、
前記筐体に可動式に接続され、第1の位置と第2の位置との間を動くことができる圧力を印加する部材であって、前記第1の位置では前記薬剤リザーバに圧力を印加しないが、前記第2の位置では前記薬剤リザーバに圧力を印加して、前記薬剤リザーバ内に貯蔵された前記薬物を分注する圧力を印加する部材と
を備えることを特徴とする薬剤送達デバイス。
【請求項2】
前記薬剤リザーバは包括的に1から15単位の体積を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項3】
前記薬物はインスリンである
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
前記圧力を印加する部材は、前記針の長手方向軸に対して実質上垂直の方向に動く
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
前記圧力を印加する部材は、前記針の長手方向軸に対して実質上平行の方向に動く
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
ヒンジが、前記圧力を印加する部材を前記筐体に接続する
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項7】
前記圧力を印加する部材はプランジャを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
前記圧力を印加する部材は第1の脚部および第2の脚部を含み、前記薬剤リザーバは前記第1の脚部と前記第2の脚部との間に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項9】
安全シールドが前記針を覆う
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項10】
前記安全シールドが前記針を覆う位置と前記針を露出させる位置との間を動くことができるように、前記安全シールドと前記筐体との間にばね部材が配置される
ことを特徴とする請求項9に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項11】
複数の前記薬剤リザーバおよび複数の前記針を含む用量ホイールが、前記筐体内に回転可能に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項12】
前記用量ホイールを新しい用量ホイールに交換可能である
ことを特徴とする請求項11に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項13】
前記圧力を印加する部材はカム部材によって作動される
ことを特徴とする請求項12に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項14】
低用量の薬物を投与する薬剤送達デバイスであって、
剛性部材と、
前記剛性部材に接続された第1の可撓性部分と、
前記第1の可撓性部分内に配置された薬物を収納する薬剤リザーバと、
前記剛性部材に接続された第2の可撓性部分と、
前記薬剤リザーバに接続された針と
を備え、
前記第2の可撓性部分に第1の圧力を印加して真空を作ってから、前記第2の可撓性部分を患者の皮膚に接触させ、前記第2の可撓性部分を患者の皮膚に接触させ、前記第2の可撓性部分にかかっている第1の圧力を解放した後、前記第1の可撓性部分に第2の圧力を印加して前記薬物を分注することを特徴とする薬剤送達デバイス。
【請求項15】
前記第2の可撓性部分内に突起が配置され、前記針を受け取る
ことを特徴とする請求項14に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項16】
前記第2の可撓性部分の第1の端部は、前記突起の第2の端部を越えて延びる
ことを特徴とする請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項17】
低用量のインスリンを投与する方法であって、
低用量のインスリンが事前に充填された薬剤送達デバイスの針を注射部位に通すステップと、
前記事前充填式の薬剤送達デバイスに圧力を印加して前記インスリン用量を投与し、膵臓の第1相インスリン応答を刺激するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記投与された第1相インスリン用量は包括的に1から15単位である
ことを特徴とする請求項17に記載の第1相インスリン用量を投与する方法。
【請求項19】
前記圧力は、前記薬剤送達デバイスに接続された圧力を印加する部材によって印加される
ことを特徴とする請求項17に記載の第1相インスリン用量を投与する方法。
【請求項20】
前記第1相インスリン用量は食事前5分以内に投与される
ことを特徴とする請求項17に記載の第1相インスリン用量を投与する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2013−518664(P2013−518664A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551974(P2012−551974)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2011/000174
【国際公開番号】WO2011/094025
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】