説明

低粘度イオン液体

【化1】


式(I)のイオン液体が開示される:式中、nは1または2であり;RはHおよび(C−C)アルキルから選択され;Rは−(CHO[(CHO(CH(CHCHから選択され、ここでwは1から6であり,xは1から6であり,yは0から6であり,zは0から6であり,mは0から3であり、そして[w+m(x+y)+z]は12以下であり;そしてRはHおよびメチルから選択され、ここでnが1ならばRはメチルであり、そしてnが2ならばRはHである。また、電気化学デバイスおよびそのような電気化学デバイスをエネルギー源として使用するデバイスが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、英国において2010年2月12日に出願された特許文献1の利益を主張し、これは引用により全部、本明細書に編入する。
【0002】
本発明は、イオン液体(ionic liquid)として有用な複素環式化合物の一クラス、およびこれらイオン液体の使用に関する。より詳細には本発明は、液体を広範な用途に適するようにする特に低い粘度、低い融点および広い電気化学ウインドウ(electrochemical window)のような特定の好ましい物理的特性を有するイオン液体に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン液体は、本質的にイオンのみ、すなわち溶融塩を含む液体であるが、イオン液体の中には力学的平衡にあるものもあり、ここでは液体の大部分が分子種よりはむしろイオン種から構成されている。本明細書で使用する用語「イオン液体」はイオンを含んでなる液体を指す。一つの態様では、用語「イオン液体」は約100℃以下で液体であるイオンから構成されている液体を指す。
【0004】
イオン液体は一般に有機カチオンの塩からなる。この有機カチオンは一般に、N−メチル−N−アルキルピロリジニウム、N−アルキルピリジニウム、1−アルキル−3−アルキルイミダゾリウムおよびテトラアルキルアンモニウムイオンのように嵩高で、しかも非対称である。ハロゲン化物から、ヘキサフルオロリン酸塩およびテトラフルオロホウ酸塩のような無機アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロ酢酸塩またはトルエン−4−スルホン酸塩のような大きい有機アニオンに至るまで多くの様々なアニオンを使用することができる。例えば、特許文献2は、可変長のアルキルスペーサーによりピロリドン環から分離されるペンダントアンモニウムカチオンを有するN−置換ピロリジノンに基づく組成物を教示する。特許文献3は、アルキル硫酸ピラゾリウムおよびそれらの製造法を教示する。
【0005】
イオン液体におけるより最近の開発が特許文献4に記載され、これはカチオンを含む複素環式窒素を含んでなる広いクラスのイオン液体について検討している。しかしこの広いクラスのイオン液体の物理的特性については詳細に調査されず、したがって特定の応用におけるこの液体の適性は考えられていない。
【0006】
非特許文献1は、非対称電気化学二重層炭素スーパーキャパシタ(asymmetric electrochemical double−layer carbon supercapacitor:AEDLC)の電解質として、単一のイオン液体N−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの使用を検討する。非特許文献1の開示は、N−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドに基づくAEDLCの動力およびエネルギー性能の研究に特化され、他の種類のイオン液体またはそれらの物理的特性または使用について検討していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許2400出願第1002456.0号明細書
【特許文献2】米国特許第7,157,588 B2号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/136529号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/150842号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lazzari et al.,Journal of The Electrochemical Society,156(8)A661−A666,2009
【発明の概要】
【0009】
本発明者は、広い範囲の応用の用途にイオン液体を適するようにする特定の好ましい特性を有する特別なクラスのイオン液体を同定した。本発明のイオン液体は当該技術分野の既知のイオン液体と比べた場合に、1もしくは複数の以下の有利な特性;低粘度、広い電気化学ウインドウ、および低い融点を有する。したがって本発明はこのような好ましい特性を活用することができる広い範囲の応用にこれらのイオン液体の使用を提供することができる。
【0010】
本発明に従い、
式(I);
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、
nは1または2であり;
はHおよび(C−C)アルキルから選択され;
は−(CHO[(CHO(CH(CHCH
よび
【0013】
【化2】

【0014】
から選択され、ここでwは1から6であり,xは1から6であり,yは0から6で
あり,zは0から6であり,mは0から3であり、そして
[w+m(x+y)+z]は12以下であり;そして
はHおよびメチルから選択され、ここで
nが1ならばRはメチルであり、そして
nが2ならばRはHである]
に従うカチオンを含んでなるイオン液体が提供される。
【0015】
また、式中、
nが1または2であり;
がメチルであり;
が−(CHO[(CHO(CH(CHCH
あり、ここでwが1または2であり,xが1または2であり,yが0から2であり
,zが0から2であり、そしてmが0または1であり;
がHおよびメチルから選択され、ここで;
nが1ならばRはメチルであり;そして
nが2ならばRはHである、
式(I)のカチオンのサブセットを含んでなるイオン液体が提供される。
【0016】
さらなるサブセットでは、式中
nが2であり;
がメチルであり;
が−(CHO[(CHO(CH(CHCH
あり、ここでwが1または2であり,xが1または2であり,yが0から2であり
,zが0から2であり、そしてmが0または1であり;そして
がHである、
式(I)のカチオンを含んでなるイオン液体が提供される。
【0017】
また本発明は以下の観点およびその組み合わせを含んでなる。
【0018】
一つの観点では本発明は、式中、Rが−(CHO[(CHO(CH(CHCHであり、ここでwが1または2であり、xが1または2であり,yが0から2であり,zが0から2であり、そしてmが0または1である式(I)のカチオンを含んでなるイオン液体を提供する。
【0019】
別の観点では、本発明は式中、Rが−(CHOCHまたは−(CHO(CHOCHから選択される式(I)のカチオンを含んでなるイオン液体を提供する。
【0020】
一つの観点では、本発明は式中、Rがメチルである式(I)のカチオンを含んでなるイオン液体を提供する。
【0021】
一つの観点では、本発明は式中、nが1であり、そしてRがメチルである式(I)のカチオンを含んでなるイオン液体を提供する。
【0022】
別の観点では、本発明は式中、nが2であり、そしてRがHである式(I)のカチオンを含んでなるイオン液体を提供する。
【0023】
一つの観点では、本発明はカチオンが1−(2−メトキシエチル)−1−メチルアゼパニウム;1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルアゼパニウム;1−(2−メトキシエチル)−1,3−ジメチルピペリジニウム;および1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1,3−ジメチルピペリジニウムから選択される式(I)のカチオンを含んでなるイオン液体を提供する。
【0024】
本発明のイオン液体は好ましい粘度を有し、そしてそれがそれらの広い範囲の用途を可
能とし、特に低温潤滑剤として、もしくは電気化学デバイスの電解質としての用途を可能にする。
【0025】
このように一つの観点では、本発明は液体の粘度が25℃で300cP未満である式(I)のカチオンを含んでなるイオン液体を提供する。好ましくはこの液体の粘度は25℃で150cP未満である。
【0026】
また本発明のイオン液体は、驚くほど大きな「液状(liquidous)」範囲を有し、すなわち物質が液状である温度範囲が広く、これは特に液体の低融点の結果である。これにより液体が比較的高い、および低い温度の条件で使用することが可能となる一方、それらの特定の特性(例えばそれらの伝導性)が維持されるために特に有利である。一つの観点では、本発明のイオン液体は0℃以下の融点を有する。一般イオン液体は−50℃以下の融点を持ち、そして一つの態様ではイオン液体は−70℃以下の融点を持つ。
【0027】
一つの観点では、本発明は式(I)のカチオンを含んでなり、およびさらに、好ましくはビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;ジシアンアミド;ヘキサハロリン酸塩;テトラハロホウ酸塩;ハライド;硝酸塩;硫酸塩;リン酸塩;炭酸塩;スルホン酸塩(トリフルオロメチルスルホン酸塩のような置換スルホン酸塩を含む);カルボン酸塩(トリフルオロ酢酸塩のような置換カルボン酸塩を含む)およびケイ酸塩から選択されるアニオンXを含んでなるイオン液体を提供する。別の観点ではスルホン酸塩およびカルボン酸塩が、それぞれアルキルスルホン酸塩(メチルスルホン酸塩のような)およびアルキルカルボン酸塩(酢酸塩のような)である。一つの態様では、Xがビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド,ジシアンアミド,トリフルオロメチルスルホン酸塩およびトリフルオロ酢酸塩から選択される。一つの態様ではXがビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
【0028】
一つの観点では、本発明は式(I)のカチオン、および1−(2−メトキシエチル)−1−メチル−アゼパニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチル−アゼパニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;1−(2−メトキシエチル)−1,3−ジメチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;および1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1,3−ジメチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドから選択されるアニオンXを含んでなるイオン液体を提供する。
【0029】
本発明のイオン液体は、それらの特に好ましい特性により電気化学デバイスにおける用途を有する。例えば、本発明のイオン液体は驚くほど広い電気化学ウインドウを有する。一つの観点では、本発明は5V以上、好ましくは5.5V以上、そしてより好ましくは6V以上の電気化学ウインドウを有するイオン液体を提供する。
【0030】
一つの観点では、本発明はこれまでに記載したイオン液体を含んでなる電気化学デバイスを提供する。
【0031】
本明細書で使用する「電気化学デバイス」は、本発明のイオン液体が電解質または溶媒として使用される任意のデバイスを意味する。本発明の電気化学デバイスの例には、バッテリー、電気化学二重層キャパシタ(EDLC)および非対称電気化学二重層キャパシタ(AEDLC)のような電気化学的エネルギー変換システムを含む。
【0032】
本発明の電気化学デバイスは,例えばハイブリッド電気自動車(HEV)に使用することができる。すなわち一つの観点では、本発明はこれまでに記載したイオン液体を含んでなる電気化学デバイス(特にAEDLC)を含むHEVを提供する。
【0033】
一つの観点では、本発明は電気化学デバイスの電解質としてこれまでに記載したイオン液体の使用を提供する。例えば本発明は例えばHEV用の電気化学デバイス(特にAEDLC)の電解質として、これまでに記載したイオン液体の使用を提供する。
【0034】
一つの観点では、本発明は式(I)のイオン液体の調製法を提供し、ここでこの方法は以下の式(II):
【0035】
【化3】

【0036】
[式中、
nは1または2であり,
はHおよびメチルから選択され、ここで;
nが1ならばRはメチルであり、そして
nが2ならばRはHである]
の化合物の少なくとも1回のN−置換を含んでなる。
【0037】
別の観点では、本発明は式(I)のイオン液体の調製法を提供し、ここでこの方法は上に表す式(II)の化合物(式中、nは2であり、そしてRはHである)の少なくとも1回のN−置換を含んでなる。
【0038】
本明細書で使用するN−置換の工程は、N−アルキル化工程であり、そしてN−置換剤(すなわちN−アルキル化剤)を式(II)化合物と接触させることを含んでなる。そのような合成手順は当該技術分野では周知であり、そして当業者に知られている任意の方法を使用して行うことができる。本発明の観点では、N−置換工程はN−アルキル化である。アゼパンのN−アルキル化の非限定的例は、Journal of Organic Chemistry,Vol.60,No.26,1995,8371−8374に記載されている。本明細書で使用する用語「N−アルキル化」は、1もしくは複数のエーテル酸素原子により中断されたアルキル基、例えば上記式(I)のRで定義した基による窒素上の置換を指すものと認められるので、したがって本明細書で使用する「N−アルキル化剤」は、1もしくは複数のエーテル酸素原子により中断されたアルキル基、例えば上記式(I)のRで定義した基を含む物質を指す。
【0039】
N−アルキル化工程または各N−アルキル化工程(1もしくは複数)は、式(II)アミン窒素を四級化することができる任意のC−C12アルキル化試薬(1もしくは複数)を用いて行うことができる。場合によりN−アルキル化工程または各N−アルキル化工程は、C−C12アルキル化剤(1もしくは複数)(例えばハロゲン化アルキル、アルキルスルホン酸塩またはアルキル硫酸塩)を使用して行われる。例えばC−C12アルキル化剤は1−ブロモ−2−メトキシエタンである。
【0040】
場合によりN−置換または各N−置換反応(1もしくは複数)は、アセトニトリル、アセトン、メタノールまたはジクロロメタンのような不活性溶媒中で行うことができる。
【0041】
一つの観点では、単回のN−置換工程が行われる。この態様の方法を使用して生産されたイオン液体は、式(I)(式中、Rは水素である)により記載される式を有する。
【0042】
さらなる観点では、2回のN−置換工程が行われる。この方法を使用して生産されたイオン液体は、式(I)(式中、Rは水素ではない)により記載される式を有する。
【0043】
2回のN−置換工程は連続的に、または同時に行うことができ、そして連続的に行うことが好都合である。
【0044】
場合により2回のN−置換工程は連続的に行われる。1回目のN−置換工程をC−C12アルキル化剤(例えばハロゲン化アルキル、アルキルスルホン酸塩またはアルキル硫酸塩)を用いて行うことが都合がよい。例えばC−C12アルキル化剤は1−ブロモ−2−メトキシエタンである。場合により2回目のN−置換工程はN−アルキル化剤であるヨウ化メチルを用いて行われる。
【0045】
場合により単回または1回目のN−置換工程は、約100℃未満の温度、場合により約75℃未満、場合により約50℃未満、場合により約20℃未満で行われる。
【0046】
2回のN−置換工程が存在する観点では、場合により2回のN−置換工程を連続して行う。2回目のN−置換工程は、約100℃未満の温度、場合により約75℃未満、場合により約50℃未満、場合により約20℃未満で行われる。有利には、試薬を加えた後、反応混合物を約0℃から約100℃に、場合により約0℃から約75℃に、場合により約0℃から50℃に、場合により室温に温める。
【0047】
単回または2回目のN−置換工程のアニオン成分は、イオン液体アニオンのXを形成することができる。有利には、単回または2回目のN−置換のアニオン成分は、ハライド、スルホン酸塩および硫酸塩からなる群から選択される。
【0048】
別の観点では、この方法はさらにN−置換塩生成物のアニオン交換工程を含んでなることができる。アニオン交換の前に、余分なN−置換剤は、例えば蒸発により除去することができる。さらにN−置換塩生成物はアニオン交換工程前に溶媒で洗浄することができる。
【0049】
アニオン交換工程は、N−置換された溶液の生成物をイオン交換剤と、場合によっては不活性な雰囲気中で接触させることを含んでなる。有利には、アニオン交換工程は約0℃から約100℃の温度、場合により約0℃から約75℃、場合により約0℃から約50℃、場合によりおよそ室温で行われる。有利にはN−置換溶液の生成物およびイオン交換剤を接触させ、そして数時間(例えば約0.5時間から約24時間、場合により約1時間から約15時間、場合により約4時間から約12時間)攪拌する。イオン交換剤は、上記定義の通りであるが、単回または2回目のN−置換工程から得られる生成物中に存在する単回または2回目のN−置換工程のアニオン成分とは異なるXアニオンを含んでなる。
【0050】
場合により、イオン交換剤は前に定義したアニオンXの金属塩である。場合により金属はアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。
【0051】
任意選択のアニオン交換工程は、一般に溶液中で行われる。アニオン交換反応に使用される溶媒は、反応物および生成物に対して不活性であるべきで、そしてメタノール、エタ
ノール、アセトン、アセトニトリルおよび水、そして好ましくは水を含む。所望のアニオンを含んでなる組成物は、次いで反応溶媒の蒸発、デカンテーション、再結晶および/または濾過のような適切な技術を使用して回収することができる。
【0052】
別の観点ではアニオン交換剤をN−置換された塩生成物と接触させ、そして溶媒中で一定時間、すなわち約5時間超混合することができる。次いで所望のアニオンを含んでなる組成物は、反応溶媒の蒸発、デカンテーション、再結晶および/または濾過のような適切な技術を使用して回収することができる。
【0053】
一つの観点では、式(II)はアゼパンを表す。式(II)により表されるアゼパンは、1,6−ヘキサンジアミンの製造の副産物でよい。さらなる観点では、式(II)は3−メチルピペリジンを表すことができる。式(II)により表される3−メチルピペリジンは、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンの製造の副産物でよい。このような副産物の観点では、1,6−ヘキサンジアミンがヘキサンジニトリルの水素化により生成でき、そして2−メチル−1,5−ペンタンジアミンが2−メチルペンタンジニトリルの水素化により生成することができる。
【0054】
この観点では、水素化反応は場合により水素ガスおよび触媒、例えば鉄触媒またはラネーコバルト触媒の存在下で行われる。水素化反応は場合により高められた温度(例えば約30℃から約500℃、場合により約50℃から約350℃、場合により約80℃から約200℃、場合により約80℃から約150℃)で行われる。水素化反応は場合により高められた圧力(例えば約400psigから約8000psig、場合により約1000psigから約6000psig、場合により約1500psigから約5000psig、場合により約3000psigから約5000psig)で行われる。有利に鉄触媒を使用する場合、水素化反応は80℃から約200℃、場合により約140℃の温度、および/または約1500psigから約5000psig、場合により約4500psigの圧で行われる。ラネーコバルト触媒を使用する場合、水素化反応を80℃から約150℃、場合により約115℃の温度、および/または約400psigから約2500psig、場合により約800psigの圧で行うことが有利である。場合により式(II)の化合物は、生成物の混合物、すなわち粗製1,6−ヘキサンジアミンまた2−メチル−1,5−ペンタンジアミンから減圧および高温での蒸留により分離される。
【0055】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、置換されても置換されなくてもよい、分岐もしくは非分岐の飽和もしくは不飽和(すなわちアルケニルもしくはアルキニル)炭化水素基を意味する。アルキル基は場合によりCからC10、場合によりCからC、場合によりメチル,エチル,プロピル(n−プロピルもしくはイソプロピル),ブチル(n−ブチル,イソブチルもしくは三級−ブチル)またはペンチル(n−ペンチルおよびイソ−ペンチルを含む)、場合によりメチルである。したがって本明細書で使用する用語「アルキル」は、アルキル(分岐もしくは非分岐)、アルケニル(分岐もしくは非分岐)およびアルキニル(分岐もしくは非分岐)を含むと認識される。一つの観点では、用語「アルキル」は、分岐もしくは非分岐の飽和炭化水素基を意味する。
【0056】
アルキル基は1もしくは複数の置換基で置換されてもよく、ここで可能な置換基にはアルキル;アリール;アリールアルキル(例えばアルキルベンジルを含む置換および非置換ベンジル);ハロゲン原子およびハロゲン含有基、例えばハロアルキル(例えばトリフルオロメチル)またはハロアリール(例えばクロロフェニル);ヒドロキシル;カルボキシル(例えばカルボキシアルデヒド、アルキル−またはアリール−カルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキルまたはカルボキシアリール)、アミドおよびニトリルを含む。
【0057】
本明細書で使用する用語「アリール」は、フェニルまたはナフチル(場合によりフェニ
ル)のような炭素環式芳香族基を意味する。
【0058】
アリール基は1もしくは複数の置換基で置換されてもよく、ここで可能な置換基にはアルキル;アリール;アリールアルキル(例えばアルキルベンジルを含む置換および非置換ベンジル);ハロゲン原子およびハロゲン含有基、例えばハロアルキル(例えばトリフルオロメチル)またはハロアリール(例えばクロロフェニル);ヒドロキシル;カルボキシル(例えばカルボキシアルデヒド、アルキル−またはアリール−カルボニル、カルボキシ、カルボキシアルキルまたはカルボキシアリール)、アミドおよびニトリルを含む。場合によりアリール基は非置換である。
【0059】
一つの観点では、Rの基、−(CHO[(CHO(CH(CHCHおよび
【0060】
【化4】

【0061】
はそれぞれ場合により1もしくは複数の炭素原子上で、アルキルまたはアリールから選択される1もしくは複数の基で置換される。
【0062】
−(CHO[(CHO(CH(CHCHおよび
【0063】
【化5】

【0064】
のような基では、“−”は分子の残りへの基の結合点を表す。
【0065】
本明細書で使用する用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素基を意味する。一般的に「ハロゲン」はフッ素基を意味する。
【0066】
式Iのイオン液体は、場合によりビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;ジシアンアミド;ヘキサハロリン酸塩類(都合よくヘキサフルオロリン酸塩またはヘキサクロロリン酸塩);テトラハロホウ酸塩類(場合によりテトラフルオロホウ酸塩またはテトラクロロホウ酸塩);ハライド類;硝酸塩類;硫酸塩類;リン酸塩類;炭酸塩類;スルホン酸塩類;カルボン酸塩類およびケイ酸塩類から選択されるアニオンXを含んでなる。
【0067】
硫酸塩類およびスルホン酸塩類は、硫酸塩、硫酸水素、アルキルまたはアリール硫酸塩類、アルキルまたはアリールスルホン酸塩類、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩およびトルエン−4−スルホン酸塩、アルキルまたはアリールオキソアニオン硫酸塩類からなる群から選択することができる。都合よくオキソアニオン硫酸塩類は、過硫酸塩(SO2−)、亜硫酸塩(SO2−)、チオ硫酸塩(SO2−)、ペルオキソニ硫酸塩(S2−)から選択される。
【0068】
リン酸塩類は:リン酸塩;リン酸水素;リン酸ニ水素;アルキルまたはアリールリン酸塩、アルキルまたはアリールホスホン酸塩類、アルキルまたはアリールホスフィン酸塩、
他のオキソアニオンリン酸塩類およびメタリン酸塩からなる群から選択される。
【0069】
炭酸塩類は、炭酸塩および炭酸水素、アルキルまたはアリール炭酸塩類、および他のオキソアニオン炭酸塩類からなる群から選択される。
【0070】
カルボン酸塩類は、アルキルカルボン酸塩類;アリールカルボン酸塩類およびエチレンジアミン四酢酸塩からなる群から選択される。
【0071】
本明細書で使用する用語「アルキルカルボン酸塩類」とは、1もしくは複数のカルボキシレート基、都合よくは1,2もしくは3個のカルボキシレート基を持つアルキル化合物を指す。アルキルカルボン酸塩類には、ギ酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩、ブタン酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、ノナン酸塩、デカン酸塩、蓚酸塩、コハク酸塩、クロトン酸塩、フマル酸塩を含む。本明細書で使用する用語「アルキルカルボン酸塩類」にはさらに、アルキル基が本明細書で言う置換基で置換されているカルボン酸塩類を含み、したがってさらにグリコール酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素、リンゴ酸塩、クエン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ペンタフルオロプロパン酸塩、ヘプタフルオロブタン酸塩、マンデル酸塩および酢酸フェニルを含む。
【0072】
本明細書で使用する用語「アリールカルボン酸塩類」とは、1もしくは複数のペンダントカルボキシレート基、都合よく1,2もしくは3個のカルボキシレート基を持つアリール化合物を指す。アリールカルボン酸塩類には、安息香酸塩、ベンゼンジカルボン酸塩、ベンゼントリカルボン酸塩、ベンゼンテトラカルボン酸塩、クロロ安息香酸塩、フルオロ安息香酸塩、ペンタクロロ安息香酸塩、ペンタフルオロ安息香酸塩およびサリチル酸塩を含む。
【0073】
はジシアンアミドまたはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好都合である。
【0074】
電気化学ウインドウ
物質の電気化学ウインドウは、掛けた電圧の範囲におけるその物質の安定性の尺度である。電気化学ウインドウは物質が酸化も還元もされない電位(すなわち電圧)範囲として、あるいは還元電位と酸化電位との間の電位差として算出される個別の値として表わすことができる。
【0075】
電気化学ウインドウは、当該技術分野で確立された技術に従いサイクリックボルタンメトリー法および直線走査ボルタンメトリー法を使用して測定することができる(Electrochemical Aspects of Ionic Liquids;Chapter 4:Electrochemical Windows of Room Temperature Ionic Liquids;Matsumoto,ISBN 0−471−64851−5)。
【0076】
本発明ではイオン液体の電気化学ウインドウを以下に記載するサイクリックボルタンメトリー法を使用して算出した。
【0077】
ボルタンメトリー実験は、3gのイオン液体を含む10cmのガラスセルで行った。サイクリックボルタモグラム実験はPC制御型microAutolab Type III ポテンシオスタットで記録し、そしてガラス質炭素(3mm直径)を用いた3電極配置で、ブライト(bright)白金コイルを対電極として行い、そしてすべての電位を0.01M Ag/Ag参照に対して測定し、AgNOは[Cmim][NO]に溶解し、そしてバルク溶液からガラスフリットを介して分離した。アセトニトリル溶
液に関しては、アセトニトリル中、0.1M[N4444][ClO]の溶液に溶解したAgNOで同様の参照を使用した。IR−降下は補正しなかった。ガラス質炭素(GC)電極は、ソフトラッピングパッド(soft lapping pads)上で粒子サイズを下げながら(6−/0.1μm)ダイヤモンドペースト(Kemet,UK)を使用して磨いた。すべての実験前に、すべての溶液はアルゴンを少なくとも10分間通気することによりパージした(4Aのモレキュラーシーブのカラムを通すことにより乾燥したアルゴンガス)。実験を通して不活性ガスの陽圧を上記の電極表面に維持した。アセトニトリルは再還流し、そしてCaH上で蒸留した。
【0078】
アセトニトリル/IL溶液については、関連するILの0.1M溶液を使用した。純粋なILの場合には、物質移動(mass transfer)は数分の一の大きさまで減少する。これは非水性溶媒中の同等な希釈溶液と比べた場合、急激な溶媒の酸化/還元プロセスが一層少なくなり、電気化学ウインドウの延長をもたらす。したがって、この走査の導関数(derivative)を使用し、そして電気化学ウインドウをILの酸化または還元として観察される勾配中の急激な変化の中点と定めた。これらの電気化学ウインドウは、非水性溶媒中の溶液を使用して典型的に得られるウインドウよりも保守的(conservative)である(そして恐らく実際の応用により関連性が高い)。
【0079】
フェロセンのような内部標準は使用しなかった。使用したAg/Ag参照電極は、フェロセン/フェロセニウムに対して約−0.1Vの電位を有した。種々のILの電気化学ウインドウを表1に表す。アセトニトリル中(a)およびそのまま(b)の0.1M溶液として[MeO(CH−mHMINTf]に関するサイクリックボルタモグラム(CV)の例を図1に示す。特に言及しない限り、測定は25℃で行った。
【0080】
粘度
粘度の測定はBrookfield DV−II+PROデジタル粘度計を使用して行った。使用前にすべてのイオン液体の水の最大限除去を促進するために、60℃の加熱油浴を使用すると同時に真空に供し、そして一晩静置して乾燥した。粘度測定の温度は水浴を使用して制御でき(GRANT LTD6G)、そして25℃に設定した。温度平衡により生じる不確実性を最小にするために、すべての測定は3回、または10分間隔で読み取ることにより、一定の読み取りが得られるまで行った。粘度測定の再現性は±0.2%であった。
【0081】
種々のイオン液体の粘度を表1に示す。
【0082】
融点
融点は示差走査熱量計により測定した(液体窒素低温保持冷却系または冷蔵冷却系のいずれかを備えたTA DSC Q2000、5−20mgのサンプル、二窒素(dinitrogen)下で5Cmin−1の加熱および冷却速度、−100から+120℃の間の走査)。
【0083】
融点(T、吸熱ピークの始まり)は、各塩について2回目の加熱/冷却サイクルの加熱について記録した。
【0084】
種々のイオン液体の融点を表1に示す。比較のイオン液体に関するDSC追跡の例は図2に示す。
【0085】
純粋な材料(すなわち急な融点を持つ)に適用したDSC法は、当業者に知られている。このDSC装置は、インジウム金属の純粋なサンプルを使用して算出される。純粋な材料の融点の測定では、吸熱に関連する特徴的温度が記録される。これらの温度は吸熱の開
始およびピーク温度である。純粋な材料の場合、どちらの温度を融点として採用するかの選択は、吸熱が大変急なので重要ではない。
【0086】
電気化学二重層キャパシタ(EDLC)
スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタとしても知られている電気化学二重層キャパシタは、通例のキャパシタと比較した場合、著しく高いエネルギー密度、一般的には高容量の電解コンデンサよりも約1000倍高い密度を有する電気化学キャパシタである。それらは一般的に2つの電極(正極(positive electrode)および負極(negative electrode))を含む。
【0087】
電気二重層キャパシタは様々な工業的応用を有し、その最も早い使用の幾つかは大型エンジン用の発動機始動キャパシタであった。さらに最近では、それらはグリーンエネルギー社会で興味を引く話題となり、ここではそれらのエネルギーを素早く蓄える能力により、特に回生ブレーキの応用に適するようになるが、バッテリーの応用には充電速度が遅いので難しい。EDLCが素早く充電され、しかも温度安定性を現す時、十分に高いエネルギー密度を有するEDLCは、開発における新技術ですべての電気自動車およびプラグインハイブリッドのバッテリーの潜在的な交換物となることができるだろう。
【0088】
EDLCの性能はとりわけ、デバイス内の電解質として使用される物質に依存する。本発明のイオン液体はそれらの好ましい特性により特にこの応用に適している。
【0089】
非対称電気化学二重層キャパシタ(AEDLC)
通常のEDLC(“対称”電気化学二重層キャパシタと呼ばれることもある)は、両電極にかけた電圧に対してほぼ同じレベルの応答を有する材料を使用するが、非対称電気化学二重層キャパシタは、電極に2種類の材料を使用し、それぞれがかけた電圧に対して異なる大きさの応答を有する。あるいは“対称”電気化学二重層キャパシタは、両電極で同じエネルギー貯蔵メカニズムを使用するものとして説明することができ、そして非対称電気化学二重層キャパシタは、各電極で異なるエネルギー貯蔵メカニズムを使用しているものと説明することができる。エネルギー貯蔵のメカニズムには、荷電分離および電気化学反応(faradaic processes)(電子移動)がある。
【0090】
EDLCのようにAEDLCの性能はとりわけデバイス内で電解質として使用される物質に依存する。本発明のイオン液体はそれらの好ましい特性によりこの応用に特に適している。
【0091】
ハイブリッド電気自動車(HEV)
より環境に優しいエネルギー生産法を提供することが、特に自動車産業で必要とされ続けている。近年、ハイブリッド電気自動車、すなわち従来の内燃機関推進系と電気推進系を組み合わせた自動車の生産に注目が向けられた。HEVによるクリーンな輸送が市場で成功するには、高い効率、安全性および低コストの電気化学的エネルギー変換システムが必要である。これらのシステムの性能の必要条件は、マイルドからフル(mild to
full)そしてプラグインHEVに増大するパワー−トレインのハイブリッド化のレベル、および走行サイクルの種類に依存する。パワー−アシストHEV(すなわちハイブリッド化が最高レベルのフルHEV)には、リチウムイオンバッテリーが最高の候補と考えられる。現在、市販されているEDLCはフルHEVで使用するための最少のエネルギー要件を満たしていないので、それらの高い安全性および耐性にもかかわらず、フルHEVでの使用に好適な候補ではない。EDLCのエネルギー出力が改善できるならば、これらのデバイスはより高い安定性および耐性の利点からパワー−アシストHEVのリチウムイオンバッテリーと競合できるだろう。
【0092】
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明する。実施例は具体的説明を目的とするだけであり、上記の本発明を限定することを意図していないと認識されるだろう。詳細な修飾は、本発明の範囲を逸脱せずに行うことができる。
【実施例】
【0093】
エレクトロスプレー質量分析は、クイーンズ大学ベルファストのThe Analytical Services and Environmental Projects
Unitにより行った。
【0094】
Hおよび13C NMRスペクトルはBuker Avance DRX 500およびDPX 300質量分析器でCDCl中で記録した。
【0095】
融点およびガラス転移温度は示差走査熱量計により上記のように行った。
【0096】
比較実施例1a
1−ブチル−1−メチルアゼパニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド
【0097】
手順1a−アゼパンの1回目のN−置換は、臭化ブチルをN−アルキル化剤として使用して行い、1−ブチルアゼパンを形成した。氷水浴中で冷却したアゼパンの攪拌溶液(49.97g,503.8ミリモル、220cmのメタノール中)に、1−ブロモブタン(57cm,530ミリモル)を滴下し、次いで炭酸カリウム(72.5g,524ミリモル)を滴下した。混合物を室温で24時間、激しく攪拌した。生じた懸濁液を焼結ガラスフリットを通して濾過し、そして溶液を減圧下45℃でロータリーエバポレーター中で濃縮した。このようにして黄色がかった懸濁液が得られ、そして真空で蒸留し(45−47℃,5.5mmHg)、1−ブチルアゼパンを無色の液体として得た(50.30g,64.3%).δ(500.13MHz,CDCl)2.62(4H,t,J(H,H)=5.5Hz),2.45(2H,m),1.64(4H,brm),1.59(4H,br m),1.45(2H,m),1.30(2H,六重項,J(H,H)=7.4Hz),0.90(3H,t,J(H,H)=7.4Hz);δ(125.76MHz,CDCl)58.2,55.7,29.8,28.0,27.1,20.9,14.1.ESI−MS:m/z=156[M+H](100).C1022Nの理論値:156.1752;測定値:156.1755。
【0098】
手順1b−これに続いて、2回目のN−置換を1−ブチルアゼパンについてヨウ化メチルをN−アルキル化剤として使用して行って、1−ブチル−1−メチルアゼパニウムヨージドを形成した。水浴により温度を20℃未満に維持しながら、わずかに過剰なヨウ化メチルを、ジクロロメタン中の1−ブチルアゼパンに滴下した。次いで反応混合物を室温に温め、そしてアミンが完全に転換するまで攪拌した(H NMRを使用して決定したように)。次いでジエチルエーテルを反応混合物に加え、そして白色沈殿物(1−ブチル−1−メチル−アゼパニウムヨージド)を濾過し、エーテルで洗浄し、そして風乾した。δ(300MHz,CDCl)3.40(4H,m),3.30(2H,m),3.02(3H,s),1.90(4H,m),1.78(6H,m),1.40(2H,m),1.00(3H,t)。
【0099】
手順1c−水に溶解したわずかに過剰なリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを、1−ブチル−1−メチル−アゼパニウムヨージドの水溶液に加え、そして室温で約5時間攪拌した。反応混合物を分液漏斗に移し、そして重層を水で数回洗浄した。少量のジクロロメタンを添加して水性層および有機層の分離を補助した。次いで重い有機層を蒸発乾固して淡黄色の液体、1−ブチル−1−メチルアゼパニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.42
(2H,m),3.36(2H,m),3.22(2H,m),3.02(3H,s),1.88(4H,m),1.73(6H,m),1.40(2H,六重項),1.00(3H,t).δ(125.76MHz,CDCl)120(q,CF),65.56,64.84,50.55,27.46,24.49,21.80,19.54,13.37.ESI−MS:m/z=170[M](100).C1124Nの理論値:170.1909;測定値:170.1912,m/z=280[M](100).CNOの理論値:279.9173;測定値:279.9163;T=−80℃。
【0100】
比較実施例2
1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム ビストリフルイミド
【0101】
N−メチルピロリジン(9.11g,0.1モル),1−ブロモ−2−メトキシエタン(15.0g,0.107モル)および無水アセトン(40cm)の混合物を24時間還流した。減圧下で蒸発させた後、黄色い固体をジエチルエーテルで洗浄した。1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウムブロミドを白色固体として約70%の収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.95(2H,m),3.85(6H,m),3.40(3H,s),3.23(3H,s),2.29(4H,m)。
【0102】
手順1cに従い、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウムビストリフルイミドを、淡黄色の液体としてほぼ定量的収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.78(2H,m),3.59(6H,m),3.38(3H,s),3.10(3H,s),2.24(4H,m).δ(125.76MHz,CDCl)122.37(q,CF),66.75,66.06,63.85,59.46,49.32,21.79.ESI−MS:m/z=144[M](100).C18NOの理論値:144.1388;測定値:144.1380,m/z=280[M](100).CNOの理論値:279.9173;測定値:279.9182;T=−72℃。
【0103】
比較実施例3
1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルピロリジニウム ビストリフルイミド
【0104】
N−メチルピロリジン(9.11g,0.1モル),1−ブロモ−2−(2−メトキシエトキシ)エタン(10.0g,0.103モル)および無水アセトン(40cm)を24時間還流した。減圧下で蒸発させた後、黄色い固体をジエチルエーテルで洗浄した。1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルピロリジニウムブロミドを白色固体として約68%の収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.98(2H,m),3.87(6H,m),3.68(2H,m),3.53(2H,m),3.40(3H,s),3.33(3H,s),2.29(4H,m)。
【0105】
手順1cに従い、1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルピロリジニウムビストリフルイミドを、淡黄色の液体としてほぼ定量的収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.90(2H,m),3.65(6H,m),3.56(2H,m),3.53(2H,m),3.35(3H,s),3.10(3H,s),2.24(4H,m).δ(125.76MHz,CDCl)122.33(q,CF),71.86,70.79,65.99,65.39,63.80,59.19,49.20,21.71.ESI−MS:m/z=188[M](100).C1022NOの理論値:188.1651;測定値:188.1645,m/z=280[M](100).CNOの理論値:279.9173;測定値:279.9
182;T=−91℃。
【0106】
実施例1a
1−(2−メトキシエチル)−1−メチル−アゼパニウム ビストリフルイミド
【0107】
1−メトキシエチルアゼパンは手順1aを使用して、メタノール(50cm)中のアゼパン(10.7g,0.107モル)、1−ブロモ−2−メトキシエタン(15.0g,0.107モル)および炭酸カリウム(15.0g)から得た。真空内で蒸留後(42−44℃,1.0mmHg)、1−メトキシエチルアゼパンを無色の液体として約72%の収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.6(6H,m),3.38(3H,s),2.68(2H,t),1.59(8H,brm).ESI−MS:m/z=158[M+H](100).C19NOの理論値:158.1545;測定値:158.1535。
【0108】
手順1bに従い、1−(2−メトキシエチル)−1−メチル−アゼパニウムヨージドを白色固体としてほぼ定量的収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.8(2H,brm),3.62(2H,m),3.49(2H,m),3.39(2H,m),3.36(3H,s),3.09(3H,s),1.88(4H,m),1.72(4H,m).ESI−MS:m/z=172[M](100).C1022NOの理論値:172.1701;測定値:172.1699,m/z=126.9[M](100).Iの理論値:126.9045;測定値:126.9039。
【0109】
手順1cに従い、1−(2−メトキシエチル)−1−メチル−アゼパニウムビストリフルイミドを、淡黄色の液体として得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.90(2H,m),3.63(2H,m),3.52(2H,m),3.41(2H,m),3.32(3H,s),3.12(3H,s),1.89(4H,brm),1.71(4H,m).δ(125.76MHz,CDCl)122.37(q,CF),66.09,65.08,64.62,58.99,51.81,27.62,21.74.ESI−MS:m/z=172[M](100).C1022NO:の理論値 172.1701;測定値:172.1686,m/z=280[M](100).CNOの理論値:279.9173;測定値:279.9180;T=−75℃。
【0110】
実施例2a
1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルアゼパニウムビストリフルイミド
【0111】
[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アゼパンは、手順1aを使用して50cmのメタノール中のアゼパン(10.3g,0.103モル)、1−ブロモ−2−(2−メトキシ−エトキシ)エタン(10.0g,0.103モル)および炭酸カリウム(16.0g)から得た。真空内で蒸留(66−68℃,1.0mmHg)後、[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アゼパンを無色の液体として約65%の収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.59(6H,m),3.38(3H,s),2.73(2H,t),2.68(4H,m),1.59(8H,br m).ESI−MS:m/z=202[M+H](100).C1123NOの理論値:202.1807;測定値:202.1802。
【0112】
手順1bに従い、1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルアゼパニウムヨージドを、白色固体としてほぼ定量的収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)4.03(2H,br m),3.91(4H,m),3.68(4H,m)
,3.52(2H,m),3.40(3H,s),3.36(3H,s),2.0(4H,br m),1.79(4H,m).ESI−MS:m/z=216[M](100).C1226NOの理論値:216.1964;測定値:216.1947,m/z=126.9[M](100).Iの理論値:126.9045;測定値:126.9036。
【0113】
手順1cに従い、1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルアゼパニウムビストリフルイミドを淡黄色の液体としてほぼ定量的収率で得た。δ(500.13MHz,CDCl)3.94(2H,br m),3.65(4H,m),3.52(4H,m),3.42(2H,m),3.36(3H,s),3.17(3H,s),1.91(4H,m),1.72(4H,m).δ(125.76MHz,CDCl)122.37(q,CF),71.84,70.64,65.88,65.20,64.69,59.18,52.12,27.96,22.13.ESI−MS:m/z=216[M](100).C1226NOの:理論値 216.1964;測定値:216.1953,m/z=280[M](100).CNOの理論値:279.9173;測定値:279.9181;T=−82℃。
【0114】
比較実施例4および実施例3および4
1−ブチル−1,3−ジメチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(比較実施例4);
1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1,3−ジメチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(実施例3)
1−(2−メトキシエチル)−1,3−ジメチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(実施例4)
【0115】
以下の表1に示すこれら実施例は、比較実施例1−3および実施例1および2について上に示す手順(手順1a,1bおよび1c)に類似する方法を使用して合成した。
【0116】
比較実施例1bおよび1cおよび実施例1b、1c、2bおよび2c
1−ブチル−1−メチルアゼパニウム トリフラート(比較実施例1b);
1−ブチル−1−メチルアゼパニウム トリフルオロアセテート(比較実施例1c);
1−(2−メトキシエチル)−1−メチルアゼパニウム トリフラート(実施例1b);1−(2−メトキシエチル)−1−メチルアゼパニウム トリフルオロアセテート(実施例1c);
1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルアゼパニウム トリフラート(実施例2b);
1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルアゼパニウム トリフルオロアセテート(実施例2c)。
【0117】
以下の表1に示すこれら実施例は、比較実施例1−3および実施例1および2について上に示す手順(手順1a,1bおよび1c)に類似する方法を使用して合成した。アニオン交換工程(上記手順1c)の場合は、アニオン交換工程に関連して上で検討したように、手順を修飾して関連するアニオンを得るためにイオン交換剤を使用した。
【0118】
実験データ
測定は上に概略したように、本発明の特定の実施例を比較実施例と一緒に行った。これらのイオン液体に関する電気化学ウインドウ、粘度および融点データを以下の表1に与える。
【0119】
【表1】

【0120】
上記表において、HMI=ヘキサメチレンイミン(アゼパンとしても知られている);3MP=3−メチルピペリジン;m=メチル。
【0121】
実施例に関して、およびMeO(CHO(CH−mHMIおよびは1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチル−アゼパニウム、すなわち以下に示すカチオンである;
【0122】
【化6】

【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1A】100mV/秒でGS対Ptワイヤでの1NVIL27/ACNの電気化学ウインドウ
【図1B】30℃、100mV/秒でGS対Ptワイヤでの1NVIL27/ACNの電気化学ウインドウ
【図2】[CmHMI][CFCOO]に関するDSC追跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I);
【化1】

[式中、
nは1または2であり;
はHおよび(C−C)アルキルから選択され;
は−(CHO[(CHO(CH(CHCH
よび
【化2】

から選択され、ここでwは1から6であり,xは1から6であり,yは0から6で
あり,zは0から6であり,mは0から3であり、そして
[w+m(x+y)+z]は12以下であり;そして
はHおよびメチルから選択され、ここで
nが1ならばRはメチルであり、そして
nが2ならばRはHである]
に従うカチオンを含んでなるイオン液体。
【請求項2】
式中、Rが−(CHO[(CHO(CH(CHCHであり、そしてwが1または2であり、xが1または2であり,yが0から2であり,zが0から2であり、そしてmが0または1である請求項1に記載のイオン液体。
【請求項3】
式中、Rが−(CHOMeまたは−(CHO(CHOMeから選択される請求項2に記載のイオン液体。
【請求項4】
式中、Rがメチルである請求項1に記載のイオン液体。
【請求項5】
式中、n=2、そしてRがHである請求項4に記載のイオン液体。
【請求項6】
カチオンが;
1−(2−メトキシエチル)−1−メチルアゼパニウム;
1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチルアゼパニウム;
1−(2−メトキシエチル)−1,3−ジメチルピペリジニウム;および
1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1,3−ジメチルピペリジニウム
から選択される請求項1に記載のイオン液体。
【請求項7】
液体の粘度が25℃で300cP未満である請求項6に記載のイオン液体。
【請求項8】
液体の粘度が25℃で150cP未満である請求項7に記載のイオン液体。
【請求項9】
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;ジシアンアミド;ヘキサハロリン酸塩;テトラハロホウ酸塩;ハライド;硝酸塩;硫酸塩;リン酸塩;炭酸塩;スルホン酸塩;カルボン酸塩およびケイ酸塩から選択されるアニオンXをさらに含んでなる請求項8に記載のイオン液体。
【請求項10】
がビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド,ジシアンアミド,トリフルオロメチルスルホン酸塩およびトリフルオロ酢酸塩から選択される請求項9に記載のイオン液体。
【請求項11】
がビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである請求項10に記載のイオン液体。
【請求項12】
1−(2−メトキシエチル)−1−メチル−アゼパニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1−メチル−アゼパニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;1−(2−メトキシエチル)−1,3−ジメチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド;および1−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−1,3−ジメチルピペリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドから選択される請求項11に記載のイオン液体。
【請求項13】
請求項1に記載のイオン液体を含んでなる電気化学デバイス。
【請求項14】
上記デバイスが電気化学二重層キャパシタ(EDLC)である請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項15】
上記EDLCが非対称電気化学二重層キャパシタ(AEDLC)である請求項14に記載の電気化学デバイス。
【請求項16】
請求項15に記載の電気化学デバイスを含んでなるハイブリッド電気自動車(HEV)。
【請求項17】
電気化学デバイス中の電解質としての請求項1に記載のイオン液体の使用。
【請求項18】
上記デバイスがハイブリッド電気自動車(HEV)の非対称電気化学二重層キャパシタ(AEDLC)である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
請求項1に記載のイオン液体の調製法であって、該方法が式(II):
【化3】

[式中、
nは1または2であり,
はHおよびメチルから選択され、ここで;
nが1ならばRはメチルであり、そして
nが2ならばRはHである]
の化合物の少なくとも1回のN−置換を含んでなる、上記方法。
【請求項20】
式(II)の化合物が1,6−ヘキサンジアミンの製造の副産物である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式(II)の化合物が2−メチル−1,5−ペンタンジアミンの製造の副産物である請求項19に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−519672(P2013−519672A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552921(P2012−552921)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2011/024026
【国際公開番号】WO2011/100232
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】