説明

低粘度オリゴカーボネートポリオール

【課題】室温での粘度が 15000 mPas 未満であり、良好な(ポリ)イソシアネートとの相溶性を有するオリゴカーボネートポリオールを提供する。
【解決手段】ポリオール成分に基づいて、1〜99 mol% の式(I):


[式中、n は 1〜50 の整数であり、m は 1〜20 の整数であり、R1 及び R2 は、直鎖、環状又は分枝であってよく、場合により不飽和であってよいアルキル基であり、(X)m は炭素含有基であり、その炭素鎖はヘテロ原子によって中断されていてもよい]に相当するジオール、及び更なる脂肪族ポリオールを含み、式(I)のジオール及び更なるポリオールが合計 100 mol%になるように存在するポリオール成分から合成された脂肪族オリゴカーボネートポリオールによって上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低粘度オリゴカーボネートポリオール、並びにその製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴカーボネートポリオールは、例えば、プラスチック、塗料材料及び接着剤の製造において重要な前駆体である。オリゴカーボネートポリオールは、例えば、イソシアネート、エポキシド、(環状)エステル、酸又は酸無水物と反応させる(特許文献1)。オリゴカーボネートポリオールは、基本的に、ホスゲン(例えば、特許文献2)、ビス-クロロ炭酸エステル(例えば、特許文献3)、ジアリールカーボネート(例えば、特許文献4)、環状カーボネート(例えば、特許文献5)又はジアルキルカーボネート(例えば、特許文献6)との反応によって、脂肪族ポリオールから調製され得る。
【0003】
従来技術に記載され、500〜5000 g/mol の数平均分子量(Mn)を有するオリゴカーボネートポリオールは、室温(23 ℃)で、固体集塊状又は粘性液体集塊状で存在することを特徴とする。室温で液状のオリゴカーボネートポリオールの粘度範囲は、組成及び数平均分子量に依存して、2500〜150000 mPas である。3500 mPas 未満の粘度は、しばしば、カーボネート構造だけでなくエステル単位を含み、及び/又は 1000 g/mol 以下の数平均分子量を有する、オリゴカーボネートポリオールによって実現される。しかしながら、エステル単位が存在する場合、例えばこの種のいわゆるポリエステルカーボネートポリオールベースのポリウレタン系を、純粋なオリゴカーボネートポリオールベースの系と比較すると、加水分解安定性について不利な結果を招く。同様の考察が、エーテル含有オリゴカーボネートポリオールを用いた場合に適用され、純粋なオリゴカーボネートポリオールベースのこの種の系と比較して、紫外線耐性に劣る。
【0004】
低粘度の純粋なオリゴカーボネートポリオールを製造する別の方法は、ヒドロキシアルキル末端シリコーンを使用することである。基本的に、ジオール成分としてヒドロキシアルキル末端シリコーン化合物のみを含むこのようなオリゴカーボネートジオールの製造は、既に知られており、非特許文献1に記載されている。しかしながら、同文献で明記されたホスゲン法による製造の場合、得られるオリゴマー又はポリマーがヒドロキシ官能性末端基のみを含む兆候は認められない。また、ヒドロキシアルキル末端シリコーン化合物のみに基づく、この種のオリゴカーボネートジオールは、(ポリ)イソシアネートとの著しい不相溶性を示すので、ポリウレタン塗料の製造に不適であることが明白である。
【0005】
更に、例えば特許文献7は、ポリエステルポリオールで変性されたカーボネート基含有ポリシロキサンの製造を教示する。これらは、コポリマーを与えるようにポリエステルポリオール及び有機炭酸エステルと反応させたヒドロキシアルキル末端シリコーンである。粘度について更なる詳細は与えられていないが、この種のコポリマーは、上記したポリエステルカーボネートポリオールのように、エステル基の存在の故に同様に否定的な加水分解安定性挙動を有するので、一般に、塗料添加剤としてのみ使用される。カルボン酸エステル基を含まないカーボネートに関する記載はない。
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第 1 955 902 号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許出願公開第 1 595 446 号明細書
【特許文献3】ドイツ国特許出願公開第 857 948 号明細書
【特許文献4】ドイツ国特許出願公開第 1 01 2557 号明細書
【特許文献5】ドイツ国特許出願公開第 2 523 352 号明細書
【特許文献6】国際公開第 2003/2630 号パンフレット
【特許文献7】欧州特許出願公開第 1 035 153 号明細書
【非特許文献1】Chem. Ber.、1966 年、第 99 巻、第 2 号、第 1368〜1383 頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、DIN EN ISO 3219 に従って、かつ 500〜10000 g/mol の数平均分子量の関数として測定される、室温(23 ℃)での粘度が 15000 mPas 未満であり、上記した欠点を示さないオリゴカーボネートポリオールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
下記の式(I)のジオールから誘導された構造単位を含むオリゴカーボネートポリオールが、上記の目的を達成することが見出された:
【化1】

[式中、n は 1〜50 の整数であり、m は 1〜20 の整数であり、R1 及び R2 は、相互に独立して、直鎖、環状又は分枝であってよく、場合により不飽和であってよい C1〜C20 アルキル基であり、(X)m は 1〜20 個の炭素原子を有する炭素含有基であり、その炭素鎖は、酸素、硫黄又は窒素のようなヘテロ原子によって中断されていてもよい]。
有機カーボネートのエステル交換による、上記ジオールに基づくオリゴカーボネートポリオールの製造方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
特に記載がある場合を除いて、明細書及び特許請求の範囲で使用した数字(実施例で使用したものを含む)は全て、用語「約」が明記されていない場合でも、用語「約」を前に置いて読まれ得る。また、本明細書中に記載された数値範囲は、それに包含される小範囲の全てを含むことが意図される。
【0009】
本発明は、ポリオール成分に基づいて、1〜99 mol% の式(I)に相当するジオールを含み、更に、少なくとも 1 種の更なる脂肪族ポリオール成分を含み、式(I)のジオール及び更なるポリオールが合計 100 mol%になるように存在するポリオール成分から合成され、500〜10000 g/mol の数平均分子量(Mn)を有する脂肪族オリゴカーボネートポリオールを提供する。
【0010】
好ましくは、式(I)において、(X)m はアルキル基であり、n は 1〜20、より好ましくは 1〜10 の整数であり、m は 1〜10、より好ましくは 1〜5 の整数であり、R1 及び R2 は各々、メチル、エチル又はプロピル、より好ましくは R1=R2=メチルである。
【0011】
好ましくは、式(I)のジオールは、脂肪族ポリオール成分中に 1〜90 mol%、より好ましくは 1〜75 mol%で存在する。
【0012】
式(I)で表したヒドロキシアルキル末端シリコーン化合物の製造は、既知であり、例えば、Chemie und Technologie der Silicone、第 2 版、1968 年、Chemie、ワインハイム、ドイツに記載されている。
【0013】
本発明は更に、本発明のオリゴカーボネートポリオールの製造方法、並びに本発明のオリゴカーボネートポリオールに基づく塗料、接着剤、シーラント及びポリウレタンプレポリマーを提供する。好ましいポリウレタン含有塗料は、(ポリ)イソシアネートに対する反応性成分として、本発明のオリゴカーボネートポリオールを使用した塗料である。
【0014】
本発明のオリゴカーボネートポリオールは、ホスゲン化又はエステル交換のような従来技術に記載の方法によって製造され得る。
【0015】
本発明のオリゴカーボネートポリオールは、好ましくは、アリールカーボネート、アルキルカーボネート又はアルキレンカーボネートのような有機カーボネート(これらは、製造の容易さ及び利用し易さが知られている)を、ポリオール成分を用いてエステル交換することによって製造される。記載し得る例は、下記のものを含む:ジフェニルカーボネート(DPC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネートなど。
【0016】
式(I)のジオールに加えて、ポリオール成分には、2〜100 個の炭素原子を含み、2 以上の OH 官能価を有する脂肪族アルコールが使用される。これらのアルコールは、直鎖、環状、分枝、飽和又は不飽和であってよく、OH 官能基は、第一級、第二級又は第三級炭素原子と結合し得る。
【0017】
記載し得る例は、下記のものを含む:エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチルヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ダイマージオール、ソルビトール。
【0018】
また、エステル交換に使用されるポリオール成分において、上記した脂肪族ポリオールの所望の混合物を、式(I)の化合物と共に存在させることも可能である。
【0019】
好ましい脂肪族ポリオールは、場合により分枝であってよい飽和の脂肪族又は脂環式ポリオールであり、第一級炭素又は第二級炭素に結合した OH 基を含み、2 以上の OH 官能価を有する。
【0020】
本発明において使用される有機カーボネートとポリオールとの反応を促進するために、従来技術で既知のエステル交換触媒の全てを基本的に使用できる。これに関して可能な触媒は、可溶性触媒(均一系触媒)及び不均一系エステル交換触媒の両方を含む。
【0021】
本発明のオリゴカーボネートポリオールの製造に適当なものは、特に、水酸化物、酸化物、金属アルコキシド、カーボネート、メンデレーエフの元素周期表の主族 I、II、III 及び IV の有機金属化合物、遷移族 III 及び IV の有機金属化合物、希土類金属群の元素及び化合物、特に、チタン、ジルコニウム、鉛、錫、アンチモン、イットリウム及びイッテルビウムの化合物を含む。
【0022】
例えば、下記のものを含み得る:LiOH、Li2CO3、K2CO3、CaO、TiCl4、Ti(OiPr)4、Ti(OiBu)4、Zr(OiPr)4、オクタン酸錫、ジラウリン酸ジブチル錫、酸化ビストリブチル錫、シュウ酸錫、ステアリン酸鉛、Sb2O3、アセチルアセトン酸イットリウム(III)、アセチルアセトン酸イッテルビウム(III)。
【0023】
Ti(OiPr)4、Ti(OiBu)4、Zr(OiPr)4 のようなチタン及び/又はジルコニウムのアルコキシド化合物、ジラウリン酸ジブチル錫、酸化ビストリブチル錫、酸化ジブチル錫のような有機錫化合物、及びアセチルアセトン酸イットリウム(III)及び/又はアセチルアセトン酸イッテルビウム(III)のような希土類金属のセチルアセトン酸化合物を使用することが好ましい。アセチルアセトン酸イットリウム(III)、アセチルアセトン酸イッテルビウム(III)及び/又はチタンテトライソプロポキシドを使用することが、極めて特に好ましい。
【0024】
触媒含有量は、得られる本発明のオリゴカーボネートの量に基づいて、1〜1000 ppm、好ましくは 1〜500 ppm、より好ましくは 1〜250 ppm である。
【0025】
反応終了時に、触媒を生成物中に残すことも、除去することも、中和することも、及び/又はマスクすることもできる。好ましくは、触媒を生成物中に残す。マスクする場合、マスキング剤として、H3PO4、リン酸ジブチルなどのようなリン酸及びその誘導体を使用することが好ましい。
【0026】
本発明のオリゴカーボネートポリオールベースのポリウレタン塗料を製造するために、ヒドロキシル基に対して反応性である成分として、従来技術で既知の(ポリ)イソシアネートの全てを使用することができる。
【0027】
ヒドロキシル基に対して反応性であるポリイソシアネートは、一例として、例えば、J. Prakt. Chem.、第 336 巻、1994 年、第 185〜200 頁、ドイツ国特許出願公開第 16 70 666 号、同第 19 54 093 号、同第 24 14 413 号、同第 24 52 532 号、同第 26 41 380 号、同第 37 00 209 号、同第 39 00 053 号、同第 39 28 503 号、欧州特許出願公開第 336 205 号、同第 339 396 号及び同第 798 299 号に記載されているような、単純な脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートを変性することによって調製され、少なくとも 2 種類のジイソシアネートから合成され、ウレトジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン及び/又はオキサジアジントリオン構造を有する、所望のポリイソシアネートである。
【0028】
このようなポリイソシアネートを調製するために適当なジイソシアネートは、ホスゲン法又はホスゲンを用いない方法、例えば熱的ウレタン分解によって得られ、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的及び/又は芳香族的に結合したイソシアネート基を含む、140〜400 の範囲の分子量を有する任意の所望のジイソシアネートであり、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-及び/又は 2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-及び 1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-及び 1,4-ビス-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3-及び 1,4-ビス(2-イソシアナトプロプ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、2,4-及び 2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4'-及び 4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレン、又はこのようなジイソシアネートの任意の所望の混合物である。
【0029】
これらのポリイソシアネート又はポリイソシアネート混合物は、好ましくは、脂肪族的及び/又は脂環式的に結合したイソシアネート基のみを含む上記した種類のものである。
【0030】
HDI、IPDI 及び/又は 4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンベースのイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート及び/又はポリイソシアネート混合物が特に好ましい。
【0031】
更に、ブロックトポリイソシアネート及び/又はブロックトイソシアネート、好ましくはブロックトポリイソシアネート及び/又はブロックトイソシアネートの混合物、より好ましくはイソシアヌレート構造を有し、HDI、IPDI 及び/又は 4,4'-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンベースのブロックトポリイソシアネート及び/又はブロックトイソシアネートの混合物として知られるものを使用することも可能である。
【0032】
イソシアネート基を一時的に保護するための(ポリ)イソシアネートのブロッキングは、以前から知られている方法であり、例えば、Houben Weyl、Methoden der organischen Chemie XIV/2、第 61〜70 頁に記載されている。
【0033】
適当なブロッキング剤の例は、必要に応じて触媒の存在下で、ブロックト(ポリ)イソシアネートを加熱したときに除去され得る化合物全てを含む。適当なブロッキング剤は、例えば、立体的にかさばったアミン、例えば、ジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、N-t-ブチル-N-ベンジルアミン、カプロラクタム、ブタノンオキシム、様々な考えられる置換パターンを有するイミダゾール、ピラゾール、例えば 3,5-ジメチルピラゾール、トリアゾール及びテトラゾール、並びにアルコール、例えばイソプロパノール及びエタノールである。これに加えて、連続した反応の場合、ブロッキング剤が除去されるよりも、中間体が反応によって消費されるような方法で、イソシアネート基をブロックすることも可能である。これは特に、シクロペンタノン 2-カルボキシエチルエステルを用いた場合であり、その熱架橋反応では、反応によってシクロペンタノン 2-カルボキシエチルエステルは高分子網目構造に完全に組み込まれ、再び除去されることはない。
【0034】
本発明のオリゴカーボネートポリオールと上記(ポリ)イソシアネート成分との反応に使用される触媒は、元素であるアルミニウム、錫、亜鉛、チタン、マンガン、鉄、ビスマス又はジルコニウムの通常の市販されている有機金属化合物、例えばジラウリン酸ジブチル錫、オクタン酸亜鉛、チタンテトライソプロポキシドのような触媒であり得る。しかしながら、更に、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンのような第三級アミンも適当である。
【0035】
(ポリ)イソシアネート成分との本発明のオリゴカーボネートポリオールの反応を、20〜200 ℃、好ましくは 40〜180 ℃の温度で行うことによって、反応を更に促進することが可能である。
【0036】
本発明のオリゴカーボネートポリオール単独の使用に加えて、本発明のオリゴカーボネートポリオールと、(ポリ)イソシアネートに対して反応性である更なる化合物、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリアミン、アスパルテートなどとの混合物を使用することもできる。
【0037】
(ポリ)イソシアネート成分とイソシアネート基に対して反応性である成分との比は、遊離及び場合によりブロックされていてよい NCO 基と、イソシアネート基に対して反応性である成分との当量比が、0.3〜2、好ましくは 0.4〜1.5、より好ましくは 0.5〜1.2 になるように設定される。
【0038】
また、本発明のポリウレタン塗料は、塗料技術において一般的な助剤(例えば、有機又は無機の顔料、更なる有機光安定剤、ラジカル掃去剤)、塗料添加剤(例えば、分散剤、流れ制御剤、増粘剤、消泡剤)及び他の補助剤、接着剤、殺真菌剤、殺菌剤、安定剤又は阻害剤及び更なる触媒を含み得る。
【0039】
本発明に従う、この種の塗料組成物は、例えば、プラスチックのコーティング、車の内装及び外装のコーティング、床コーティング、バルコニーコーティング及び/又は木材/家具コーティングの分野での用途に使用され得る。
【0040】
本発明及びその好ましい実施態様は以下のとおりである。
1.ポリオール成分に基づいて、1〜99 mol% の式(I):
【化2】

[式中、n は 1〜50 の整数であり、m は 1〜20 の整数であり、R1 及び R2 は、相互に独立して、直鎖、環状又は分枝であってよく、場合により不飽和であってよい C1〜C20 アルキル基であり、(X)m は 1〜20 個の炭素原子を有する炭素含有基であり、その炭素鎖は、酸素、硫黄又は窒素のようなヘテロ原子によって中断されていてもよい]
に相当するジオールを含み、更に、少なくとも 1 種の更なる脂肪族ポリオールを含み、式(I)のジオール及び更なるポリオールが合計 100 mol%になるように存在するポリオール成分から合成され、500〜10000 g/mol の数平均分子量(Mn)を有する脂肪族オリゴカーボネートポリオール。
2.ポリオール成分が、このポリオール成分に基づいて、1〜99 mol% の式(I):
【化3】

[式中、n は 1〜50 の整数であり、m は 1〜20 の整数であり、R1 及び R2 は、相互に独立して、直鎖、環状又は分枝であってよく、場合により不飽和であってよい C1〜C20 アルキル基であり、(X)m は 1〜20 個の炭素原子を有する炭素含有基であり、その炭素鎖は、酸素、硫黄又は窒素のようなヘテロ原子によって中断されていてもよい]
に相当するジオールを含み、更に、少なくとも 1 種の更なる脂肪族ポリオールを含み、式(I)のジオール及び更なるポリオールが合計 100 mol%になるように存在する脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造方法であって、有機カーボネートをエステル交換する工程を含む方法。
3.式(I)において、(X)m がアルキル基であり、n が 1〜10 の整数であり、m が 1〜5 の整数であり、R1=R2=メチルである、前記2項に記載の方法。
4.脂肪族ポリオール成分中に、式(I)のジオールが 1〜75 mol%で存在し、更なる脂肪族ポリオールが 25〜99 mol%で存在する、前記2項に記載の方法。
5.更なる脂肪族ポリオールが、場合により分枝であってよい飽和の脂肪族又は脂環式ポリオールであり、第一級炭素又は第二級炭素に結合した OH 基を含み、2 以上の OH 官能価を有する、前記2項に記載の方法。
6.エステル交換の際に触媒を使用する、前記2項に記載の方法。
7.ジフェニルカーボネート(DPC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)及び/又はエチレンカーボネートを有機カーボネートとして使用する、前記2項に記載の方法。
8.前記1項に記載の脂肪族オリゴカーボネートポリオールを含む、塗料、接着剤、シーラント及び/又はポリウレタンプレポリマー。
【実施例】
【0041】
ヒドロキシル価(OHZ)を、DIN 53240-2 に従って測定した。
数平均分子量(Mn)を、当業者に既知の、ヒドロキシル価と理論上のヒドロキシル官能価との関係から算術的に得た。
粘度を、DIN EN ISO 3219 に従って、ドイツ在 Haake 社製 Roto Viscol 回転式粘度計を用いて測定した。
特に記載がない限り、温度に関する詳細は、下記実施例において、反応混合物の液相温度それぞれについて記載した。
【0042】
本発明の実施例 1
本発明のオリゴカーボネートポリオールの製造
撹拌機及び還流冷却器を備えた 1 リットル容の三ツ口フラスコに、窒素雰囲気中、139.5 g(75 mol%)の 1,6-ヘキサンジオール及び 223.0 g(25 mol%)の Baysilone(登録商標)OF/OH 502 6 %(ドイツ在 GE-Bayer Silicones 社製)を導入した。この初期導入物を、110 ℃で 20 mbar の圧力下、2 時間脱水した。Baysilone(登録商標)OF/OH 502 6 %は、ヒドロキシアルキル官能性(α,ω-カルビノール)ポリジメチルシロキサンである。次いで、フラスコ内の導入物を窒素雰囲気下にし、0.008 g のチタンテトライソプロポキシド及び 194.7 g のジメチルカーボネートを添加し、反応混合物を還流しながら(オイルバス温度 110 ℃)24 時間維持した。その後、還流冷却器を、クライゼンブリッジと交換し、生成したメタノール切断生成物を、残存するジメチルカーボネートと共に留去した。この目的のために、温度を 2 時間かけて 110 ℃から 150 ℃まで上昇させ、温度が 150 ℃に達した時点で 4 時間維持した。次いで、温度を 2 時間かけて 180 ℃まで上昇させ、温度が 180 ℃に達した時点で更に 4 時間維持した。続いて、反応混合物を 100 ℃まで冷却し、窒素流を反応混合物に通気した(2 リットル/時間)。加えて、圧力を徐々に 20 mbar まで低下させて、蒸留進行中の塔頂温度が 60 ℃を超えないようにした。圧力が 20 mbar に達した時点で、温度を 130 ℃まで上昇させ、6 時間維持した。通気及び冷却によって、室温で液状のオリゴカーボネートジオールが得られ、これは下記特性を有していた。
ヒドロキシル価(OHZ): 36.9 mg KOH/g
23 ℃での粘度、D:16: 1450 mPas
数平均分子量(Mn): 3035 g/mol
【0043】
比較例 1
室温で液状のオリゴカーボネートエステルポリオールの製造
撹拌機及び還流冷却器を備えた 2 リットル容の三ツ口フラスコに、窒素雰囲気中、461.4 g(50 mol%)の 1,6-ヘキサンジオールを導入した。この初期導入物を、110 ℃で 20 mbar の圧力下、2 時間脱水した。次いで、フラスコ内の導入物を窒素雰囲気下にし、60 ℃で 0.08 g のチタンテトライソプロポキシド及び 446.6 g(50 mol%)のε-カプロラクトンを添加し、混合物を 80 ℃まで加熱し、2 時間維持した。続いて、482.4 g のジメチルカーボネートを添加し、反応混合物を還流しながら(オイルバス温度 110 ℃)24 時間維持した。その後、還流冷却器を、クライゼンブリッジと交換し、生成したメタノール切断生成物を、残存するジメチルカーボネートと共に留去した。この目的のために、温度を 2 時間かけて 110 ℃から 150 ℃まで上昇させ、温度が 150 ℃に達した時点で 4 時間維持した。次いで、温度を 2 時間かけて 180 ℃まで上昇させ、温度が 180 ℃に達した時点で更に 4 時間維持した。続いて、反応混合物を 150 ℃まで冷却し、窒素流を反応混合物に通気した(2 リットル/時間)。加えて、圧力を徐々に 20 mbar まで低下させて、蒸留進行中の塔頂温度が 60 ℃を超えないようにした。圧力が 20 mbar に達した時点で、温度を 180 ℃まで上昇させ、6 時間維持した。通気及び冷却によって、室温で液状のオリゴカーボネートジオールが得られ、これは下記特性を有していた。
ヒドロキシル価(OHZ): 34.8 mg KOH/g
23 ℃での粘度、D:16: 73300 mPas
数平均分子量(Mn): 3218 g/mol
【0044】
比較例 2
室温で液状のオリゴカーボネートエーテルポリオールの製造
撹拌機及び還流冷却器を備えた 5 リットル容の三ツ口フラスコに、窒素雰囲気中、2788.6 g(100 mol%)の Poly-THF(登録商標)250(ドイツ在 BASF AG 製)を導入した。この初期導入物を、110 ℃で 20 mbar の圧力下、2 時間脱水した。次いで、フラスコ内の導入物を窒素雰囲気下にし、0.6 g のアセチルアセトン酸イッテルビウム(III)及び 1098.5 g のジメチルカーボネートを添加し、反応混合物を還流しながら(オイルバス温度 110 ℃)24 時間維持した。その後、還流冷却器を、クライゼンブリッジと交換し、生成したメタノール切断生成物を、残存するジメチルカーボネートと共に留去した。この目的のために、温度を 2 時間かけて 110 ℃から 150 ℃まで上昇させ、温度が 150 ℃に達した時点で 4 時間維持した。次いで、温度を 2 時間かけて 180 ℃まで上昇させ、温度が 180 ℃に達した時点で更に 4 時間維持した。続いて、反応混合物を 130 ℃まで冷却し、窒素流を反応混合物に通気した(2 リットル/時間)。加えて、圧力を徐々に 20 mbar まで低下させて、蒸留進行中の塔頂温度が 60 ℃を超えないようにした。圧力が 20 mbar に達した時点で、温度を 180 ℃まで上昇させ、6 時間維持した。通気及び冷却によって、室温で液状のオリゴカーボネートジオールが得られ、これは下記特性を有していた。
ヒドロキシル価(OHZ): 35.4 mg KOH/g
23 ℃での粘度、D:16: 17800 mPas
数平均分子量(Mn): 3160 g/mol
【0045】
比較例 3
純粋なオリゴカーボネートポリオールの製造
Poly-THF(登録商標)250 の代わりに 2149.6 g(100 mol%)の 1,6-ヘキサンジオールと、2340.6 g のジメチルカーボネート及び 0.52 g のアセチルアセトン酸イッテルビウム(III)を、出発物質として用いた以外は、比較例 2 と同じ製造方法であった。通気及び冷却によって、室温でワックス様のオリゴカーボネートジオールが得られ、これは下記特性を有していた。
ヒドロキシル価(OHZ): 39.8 mg KOH/g
23 ℃での粘度、D:16: 測定不能(ワックス様固体)
数平均分子量(Mn): 2800 g/mol
【0046】
比較例 4
液状の純粋なオリゴカーボネートポリオールの製造
Poly-THF(登録商標)250 の代わりに 1909.8 g(100 mol%)の 3-メチル-1,5-ペンタンジオールと、2027.8 g のジメチルカーボネート及び 0.46 g のアセチルアセトン酸イッテルビウム(III)を、出発物質として用いた以外は、比較例 2 と同じ製造方法であった。通気及び冷却によって、室温でワックス様のオリゴカーボネートジオールが得られ、これは下記特性を有していた。
ヒドロキシル価(OHZ): 56.2 mg KOH/g
23 ℃での粘度、D:16: 72000 mPas
数平均分子量(Mn): 2000 g/mol
【0047】
比較例 5
低粘度の純粋なオリゴカーボネートポリオールの製造
1 リットル容の三ツ口フラスコにおいて、Poly-THF(登録商標)250 の代わりに 251.8 g(100 mol%)の Baysilone(登録商標)OF/OH 502 6 %(ドイツ在 GE-Bayer Silicones 社製)と、42.5 g のジメチルカーボネート及び 0.05 g のアセチルアセトン酸イッテルビウム(III)を、出発物質として用いた以外は、比較例 2 と同じ製造方法であった。通気及び冷却によって、室温で液状かつ低粘度のオリゴカーボネートジオールが得られ、これは下記特性を有していた。
ヒドロキシル価(OHZ): 58.5 mg KOH/g
23 ℃での粘度、D:16: 17 mPas
数平均分子量(Mn): 1900 g/mol
【0048】
本発明の実施例 2
本発明のポリウレタン塗料の製造
本発明の実施例 1 で製造した本発明のオリゴカーボネートジオールを、Desmodur(登録商標)Z 4470(ドイツ国レーフエルクーゼン在 Bayer MaterialScience AG 製 IPDI ベースのポリイソシアネート)と 1:1.1 の当量比で、ガラスビーカー内で 50 ppm のジラウリン酸ジブチル錫を更に添加して混合した。その後、均一な混合物をガラス板にナイフコーティングによって塗布した。次いで、塗膜を 140 ℃で 30 分間硬化させた。これにより、高い透明性の澄んだポリウレタンフィルムが得られた。
【0049】
比較例 6
ポリウレタン塗料の製造
比較例 5 で製造したオリゴカーボネートジオールを用いた以外は、本発明の実施例 2 と同じ製造方法であった。得られた混合物は濁っており、相分離を示した。ポリウレタン塗膜を作成するのは不可能であった。
【0050】
本発明の実施例 1 と比較例 1〜4 との比較から明らかなように、本発明のオリゴカーボネートポリオールは、同じか又はより高い分子量の場合でさえ、エステル構造又はエーテル構造の欠点を有することなく、著しく低い粘度を有する。
【0051】
また、本発明の実施例 2 と比較例 6 との比較から、本発明のオリゴカーボネートポリオールを用いた場合のみ、ポリウレタンを製造でき、ポリウレタン塗膜を作成できることが分かる。
【0052】
本発明を、説明の目的で上に詳しく記載したが、このような詳細は、説明の目的のためだけのものであり、特許請求の範囲によって限定される以外は、本発明の意図及び範囲から外れることなく、当業者によって変更をなし得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分に基づいて、1〜99 mol% の式(I):
【化1】

[式中、n は 1〜50 の整数であり、m は 1〜20 の整数であり、R1 及び R2 は、相互に独立して、直鎖、環状又は分枝であってよく、場合により不飽和であってよい C1〜C20 アルキル基であり、(X)m は 1〜20 個の炭素原子を有する炭素含有基であり、その炭素鎖は、酸素、硫黄又は窒素のようなヘテロ原子によって中断されていてもよい]
に相当するジオールを含み、更に、少なくとも 1 種の更なる脂肪族ポリオールを含み、式(I)のジオール及び更なるポリオールが合計 100 mol%になるように存在するポリオール成分から合成され、500〜10000 g/mol の数平均分子量(Mn)を有する脂肪族オリゴカーボネートポリオール。
【請求項2】
ポリオール成分が、このポリオール成分に基づいて、1〜99 mol% の式(I):
【化2】

[式中、n は 1〜50 の整数であり、m は 1〜20 の整数であり、R1 及び R2 は、相互に独立して、直鎖、環状又は分枝であってよく、場合により不飽和であってよい C1〜C20 アルキル基であり、(X)m は 1〜20 個の炭素原子を有する炭素含有基であり、その炭素鎖は、酸素、硫黄又は窒素のようなヘテロ原子によって中断されていてもよい]
に相当するジオールを含み、更に、少なくとも 1 種の更なる脂肪族ポリオールを含み、式(I)のジオール及び更なるポリオールが合計 100 mol%になるように存在する脂肪族オリゴカーボネートポリオールの製造方法であって、有機カーボネートをエステル交換する工程を含む方法。
【請求項3】
式(I)において、(X)m がアルキル基であり、n が 1〜10 の整数であり、m が 1〜5 の整数であり、R1=R2=メチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
脂肪族ポリオール成分中に、式(I)のジオールが 1〜75 mol%で存在し、更なる脂肪族ポリオールが 25〜99 mol%で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の脂肪族オリゴカーボネートポリオールを含む、塗料、接着剤、シーラント及び/又はポリウレタンプレポリマー。

【公開番号】特開2006−299268(P2006−299268A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116764(P2006−116764)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】