説明

低粘性ポリウレタンアクリレート分散体

本発明は、ポリウレタンアクリレートに基づく低粘性の放射線硬化性水性分散体(UV−PUD)の製造方法であって、ウレタン化、即ちOH官能化化合物によるNCO官能化化合物の転化の大部分を、酸含有化合物の不存在下で初期に実施し、可能な限り遅れて酸含有化合物をそのヒドロキシル官能基によって組み込む場合に、ヒドロキシ官能化カルボン酸により親水化されたUV−PUDがより低い初期粘度を有する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、放射線硬化性ポリウレタンアクリレート(以下、UV−PUDと称する)をポリウレタンアクリレート水性分散体に変換するために、かなりの努力がなされている。通常の溶媒含有または100%ポリウレタンアクリレートと比べたUV−PUDの利点は、揮発性有機化合物(VOC)の含量が少ないことと同時にバインダーの粘度が低いことである。水性UV−PUDでは、粘度のポリウレタンアクリレート分子量依存性は解消される。全ての放射線硬化性バインダータイプのうち、低粘度のものが、噴霧して使用する際、水性UV−PUDに明白な利点をもたらす。
【背景技術】
【0002】
一般に、UV−PUDは、潜在イオン性基(即ち、中和によってイオン性基に転化できる基)により、またはイオン性基により、または親水性ポリエーテル基の存在下でイオン性基により親水化される。UV−PUDの常套の製造方法は、プレポリマー混合法および溶媒法である。
【0003】
プレポリマー混合法では、溶融物中で、または高沸点溶媒(好ましくは3,5−ジメチルピラゾール)の存在下でポリマーを調製し、潜在イオン性基の組み込みおよび場合により中和の後に、水の添加によって分散する。溶融物の粘度を低く維持するため、この方法は実質的に低分子量のものに限定される。高沸点溶媒の使用は、法的理由から望ましくない。
【0004】
溶媒法では、ポリマーは低沸点溶媒(しばしばアセトン)中で製造する(アセトン法)。潜在イオン性基のポリマーへの組み込みおよび場合により中和の後、水を添加することによって分散を実施し、まだ実施していない場合はアミンによって連鎖延長を実施する。次いで、溶媒を、蒸留によってポリマーから除去し、再び工程にフィードバックしてよい。この方法の利点は、分子量の高いポリマーも製造できることである。
【0005】
ポリウレタン分散体の合成方法は一般に知られている(例えば、Methoden der Organischen Chemie, Houben-Weyl, 第4版、第E20巻/第2部、第1659頁以下、Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1987参照)。
【0006】
最も広く使用されている合成的に組み込み可能なUV−PUD用親水化剤は、ヒドロキシカルボン酸、例えば、ジメチロールプロピオン酸およびヒドロキシピバリン酸である。
【0007】
既知の非放射線硬化性ポリウレタン分散体用親水化剤は、ヒドロキシカルボン酸に加えて、アミノカルボン酸およびアミノスルホン酸、例えばエチレンジアミンのアクリル酸へのマイケル付加物のナトリウム塩(PUD塩)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸および(シクロヘキシルアミノ)プロパン−1−スルホン酸である(Methoden der Organischen Chemie, Houben-Weyl, 第4版、第E20巻/第2部、第1662頁以下、Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1987)。アミン官能基のため、それらを、連鎖延長において使用したジアミンと同様に、合成の終点で使用することが好ましい。この文献は、アミノカルボン酸またはアミノスルホン酸を使用した放射線硬化性ポリウレタン分散体の例を幾つかではあるが記載している。本明細書の比較例7)および8)は明らかに、放射線硬化性ポリウレタン分散体においてアミノカルボン酸またはアミノスルホン酸を使用した際に起こり得る問題を示している。このように親水化されたUV−PUDはしばしば、不可逆的に高粘性であったり、分散直後に沈降したりする。
【0008】
使用する方法にかかわらず、ヒドロキシカルボン酸により(即ち潜在イオン性基により)親水化されたUV−PUDが合成直後に高い粘度を有することがしばしば見られる。分散体の初期粘度が高いほど、合成してから数日〜数週間にわたる粘度の低下は著しくなる。従って、例えばラッカーの製造方法では、UV−PUDの粘度を所定の値に調整する増粘剤を使用するので、一定で好ましくは低い粘度を有する放射線硬化性ポリウレタンアクリレート水性分散体の提供に対する一般的な要求が存在する。分散体の品質の測定だけでなく、高温貯蔵試験も実施する。とりわけ、高温貯蔵試験によるUV−PUDの粘度低下の程度は、大きすぎてはならない。
【0009】
EP−A 753531は、ヒドロキシル基を有するポリエステルアクリレートおよびポリエポキシアクリレートに基づくウレタンアクリレート分散体を記載している。記載されている多くの方法の中で、アセトン法が好ましい。分散作用を有する化合物(成分B)、とりわけヒドロキシカルボン酸の反応は、ウレタン化初期から実施している。
【0010】
EP−A 942022は、ポリエポキシアクリレートと組み合わせた、ヒドロキシル基を有するポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートまたはポリウレタンアクリレートに基づくウレタンアクリレート分散体を記載している。分散体の調製方法として、多くの方法が挙げられている。分散作用を有する化合物(成分B)、とりわけヒドロキシカルボン酸の反応は、ウレタン化初期から実施している。
【0011】
EP−A 872502は、ヒドロキシル基を有するポリエステルアクリレートまたはポリエーテルアクリレートに基づく放射線硬化性ポリウレタン水性分散体を記載している。分散作用を有する化合物(成分g)、とりわけヒドロキシカルボン酸の配合は、ウレタン化初期から実施している。
【0012】
WO−A 2006/089935は、ヒドロキシル基含有アクリレートモノマーおよび/またはヒドロキシル基を有するポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリウレタンアクリレートまたはポリカーボネートアクリレートと組み合わせたNCO含有アロファネートアクリレートに基づくウレタンアクリレート分散体を記載している。記載されている実施例の全てにおいて、分散作用を有する化合物(成分d)、とりわけヒドロキシカルボン酸の反応は、ウレタン化初期から実施している。
【0013】
WO−A 2006/138557は、ヒドロキシアルキルアクリレートと組み合わせた、ヒドロキシル基を有するポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートまたはポリウレタンアクリレートに基づくウレタンアクリレート分散体を記載している。分散体の調製方法として、多くの方法が挙げられている。記載されている実施例において、分散作用を有する化合物(成分c)、とりわけヒドロキシカルボン酸の反応は、ウレタン化初期から実施している。
【0014】
EP−A 1845143は、モノヒドロキシ官能性アクリレートと組み合わせたジヒドロキシ官能性アクリレートに基づくウレタンアクリレート分散体を記載している。親水性化合物(成分(iii))、とりわけヒドロキシカルボン酸の反応は、ウレタン化初期から実施している。
【0015】
EP−A 2113523は、高分子量ポリウレタン水性分散体に基づく耐ブロッキング性放射線硬化性被覆系を記載している。記載されている実施例において、分散作用を有する成分(A)、とりわけヒドロキシカルボン酸の反応は、ウレタン化初期から実施している。
【0016】
WO−A 01/42329は、ブロックトイソシアネート基含有ポリウレタン水性分散体であって、ポリウレタンが、脂肪族ポリイソシアネート、イソシアネート反応性官能基と化学線により活性化できる結合とを有する化合物、イソシアネート反応性官能基を有する低分子量脂肪族化合物、イソシアネート反応性官能基と分散官能基とを有する化合物、および分散官能基のための中和剤からなる分散体を記載している。実施例では、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび2−ヒドロキシアクリレートから調製され、第二段階でチオグリコール酸と反応して種々のイソシアネート末端プレポリマーを生成する、イソシアネート末端ポリウレタンアクリレート(NCOプレポリマー)が記載されている。ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリレート、アリルエーテル構成単位含有不飽和ポリエステルまたはポリエポキシ(メタ)アクリレートのようなポリマー化合物は開示されていない。
【0017】
WO−A 2005/118689は、放射線硬化性多層シートまたはフィルムを記載している。同特許文献の実施例5は、ポリエステルオール、アクリレートモノマー、イソシアネートおよびウレタン化触媒を反応させる、水性分散体の調製方法を記載している。後に、グリコール酸を添加している。少なくとも1個の共重合性不飽和基を有する化合物のうち、モノマー化合物のみが挙げられており、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリレート、アリルエーテル構成単位含有不飽和ポリエステルまたはポリエポキシ(メタ)アクリレートのようなポリマー化合物は挙げられていない。
【0018】
EP−A 704469では、有機ポリイソシアネートを、一反応段階で、ポリエステルポリオール、並びに少なくとも1個のイソシアネート反応性基および少なくとも1個の共重合性不飽和基を有する化合物と反応させている。少なくとも1個のイソシアネート反応性基および少なくとも1個の共重合性不飽和基を有する化合物のうち、モノマー化合物のみが挙げられており、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリレート、アリルエーテル構成単位含有不飽和ポリエステルまたはポリエポキシ(メタ)アクリレートのようなポリマー化合物は挙げられていない。少なくとも1個のイソシアネート反応性基および少なくとも1個のカルボキシル基またはカルボキシレート基を有する化合物との反応は、終点で実施することが好ましい。少なくとも1個のイソシアネート反応性基および少なくとも1個のカルボキシル基またはカルボキシレート基を有する化合物として、好ましくはアミノカルボン酸、特に好ましくはPUD塩(アクリル酸とエチレンジアミンのマイケル付加物)が記載されており、これらは、連鎖延長反応におけるジアミンと同様に、通常、反応の終点で添加する。アミノカルボン酸の使用は一般に、高粘性UV−PUDをもたらす(本明細書の比較例7およびEP−A 704469の実施例1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】EP−A 753531
【特許文献2】EP−A 942022
【特許文献3】EP−A 872502
【特許文献4】WO−A 2006/089935
【特許文献5】WO−A 2006/138557
【特許文献6】EP−A 1845143
【特許文献7】EP−A 2113523
【特許文献8】WO−A 01/42329
【特許文献9】WO−A 2005/118689
【特許文献10】EP−A 704469
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Methoden der Organischen Chemie, Houben-Weyl, 第4版、第E20巻/第2部、第1659頁以下、Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1987
【非特許文献2】Methoden der Organischen Chemie, Houben-Weyl, 第4版、第E20巻/第2部、第1662頁以下、Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、UV−PUDの合成方法であって、合成直後にこれまで知られてきた方法より低い粘度を有する、バインダーとしての放射線硬化性ポリウレタン水性分散体を生成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
意外なことに、ウレタン化、即ちOH官能化化合物とのNCO官能化化合物の反応の大部分を、酸含有化合物の不存在下で初期に実施し、可能な限り遅れて酸含有化合物をそのヒドロキシル官能基によって組み込む場合に、ヒドロキシ官能化カルボン酸により親水化されたUV−PUDがより低い初期粘度を有することが見出された。そのような分散体は製造後、酸官能化成分をウレタン化の初期に添加した分散体より、著しく低い粘度を示す。別の利点は、平均粒径の増大を伴わずに酸の量を低減できることである。酸の不存在の結果として、ウレタン化終了までの反応時間は著しく短くなる。従って、反応器がふさがれている時間は短くなり、製造コストを下げることができる。
【0023】
本発明は、構成成分として
A)15〜300mgKOH/gの範囲のOH価を有する、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリレート、アリルエーテル構成単位含有不飽和ポリエステルおよびポリエポキシ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上のポリマー化合物、
B)任意に、ヒドロキシ官能基および少なくとも1個の(メタ)アクリレート基を有する、成分A)以外の1種以上のモノマー化合物、
C)少なくとも1個のイソシアネート反応性基を有する、成分A)またはB)以外の1種以上の化合物、
D)1種以上の有機ポリイソシアネート、
E)ポリウレタン分散体に対する分散作用を有し、少なくとも1個のヒドロキシ官能基に加えてカルボン酸官能基またはカルボキシレート官能基の少なくとも1個を有する1種以上の化合物、
F)少なくとも1個のイソシアネート反応性基を有する、成分A)〜E)以外の化合物
を含有するポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法であって、
第一反応段階において、成分A)〜D)を反応させて、イオン性基も潜在イオン性基も有さないポリウレタンアクリレートを生成し、NCO含量を測定した後に、NCO値は、理論NCO含量と1.5重量%NCO(絶対値)まで、好ましくは1.0重量%NCO(絶対値)まで、特に好ましくは0.7重量%NCO(絶対値)まで異なってよい値に達し、
第二反応段階において、成分E)を、成分A)〜D)の反応生成物の遊離NCO基と反応させ、NCO含量を再び測定した後に、NCO値は、理論NCO値と1.5重量%NCO(絶対値)まで、特に好ましくは1.0重量%NCO(絶対値)まで異なってよい値に達し、
第三反応段階において、成分F)を遊離NCO基と反応させる
ことを特徴とする方法に関する。
【0024】
分散に必要なイオン性基を形成するために、成分A)〜E)の反応生成物の調製前、調製中または調製後、場合により、成分A)〜E)から得たウレタンアクリレートに中和剤を添加してよい。その後、水をウレタンアクリレートに添加するかまたはウレタンアクリレートを水性初期導入物に転化することによる分散工程が続き、分散前、分散中または分散後に第三反応段階において、成分F)による連鎖延長を実施する。
【0025】
本発明はまた、成分ii)として、少なくとも1個のラジカル重合性基を有する1種以上の反応性希釈剤を添加する、前記方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の範囲において、「(メタ)アクリレート」とは、相応のアクリレート官能基または(メタ)アクリレート官能基或いはそれらの混合物を意味する。
【0027】
理論NCO値とは、OH反応性化合物の全てがNCO含有化合物の全てと完全に反応した後に達するNCO含量を意味し、このとき、過剰のNCO含有化合物を使用する。反応をモニターするために、滴定、赤外線分光法または近赤外線分光法によってNCO含量を一定間隔で測定する。従って、NCO反応性化合物を添加することにより、各反応段階後に制御して、理論NCO値前後の所望の範囲のNCO含量にすることができる。測定NCO含量は、理論NCO含量と1.5重量%NCO(絶対値)まで異なってよい。即ち、理論NCO値が1.7重量%の場合、測定NCO含量は、3.2重量%〜0.2重量%の範囲であってよい。より反応性の低い基(例えばウレタン基)が遊離NCOと反応する場合、測定NCO含量が理論値を下回ることがある。このことは一般に、より反応性のOH基含有、NH基含有および/またはSH基含有化合物が完全に反応した場合にのみ起こる。
【0028】
本発明の方法によって分散体を製造するために、先行技術から既知の方法、例えば、乳化機剪断力法、アセトン法、プレポリマー混合法、溶融乳化法、ケチミン法および固体自然分散法またはこれらから誘導した方法を使用してよい。これらの方法は当業者に知られている(例えば、Methoden der Organischen Chemie, Houben-Weyl, 第4版、第E20巻/第2部、1659頁、Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1987参照)。溶融乳化法およびアセトン法が好ましい。アセトン法が特に好ましい。
【0029】
本発明の方法によって反応生成物を調製するため、第一反応段階で成分A)〜C)を反応器に導入し、場合によりアセトンで希釈する。場合により、成分(ii)を成分A)〜C)に添加してもよい。ポリイソシアネートD)との反応を実施する前に、ウレタン化触媒を添加することも可能である。次いで、ポリイソシアネートD)を計量添加し、反応を開始するために混合物を加熱する。反応には一般に、30〜60℃の温度が必要である。逆の変法も可能であり、その場合は、ポリイソシアネートD)を反応器に導入し、イソシアネート反応性成分A)〜C)を添加する。成分A)〜C)は、順次、任意の順で添加してよい。概して成分A)〜D)は、第一反応段階において、1.5重量%NCO(絶対値)まで、好ましくは1.0重量%NCO(絶対値)まで、特に好ましくは0.7重量%NCO(絶対値)まで逸脱してよい理論NCO値に達するまで反応する。このようにして得た付加生成物は、イオン性基も潜在イオン性基も有さない。第二反応段階において、成分E)を添加し、1.5重量%NCO(絶対値)まで、好ましくは1.0重量%NCO(絶対値)まで逸脱してよい理論NCO値に再び達するまで反応を継続する。その後、場合により、第三反応段階において、成分F)を遊離NCO基と反応させる。
【0030】
イソシアネートへの付加を促進するために、イソシアネート付加反応触媒、例えば、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]−オクタン、ジオクタン酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズまたはオクタン酸ビスマスを添加し、反応を開始するために、混合物を加熱する。反応には一般に、30〜60℃の温度が必要である。
【0031】
成分D)のイソシアネート基と、成分A)〜C)のイソシアネート反応性基のモル比は、1.2:1.0〜4.0:1.0、好ましくは1.5:1.0〜3.0:1.0である。
【0032】
成分D)のイソシアネート基と、成分A)、B)、C)およびE)のイソシアネート反応性基のモル比は、1.05:1.0〜2.5:1.0、好ましくは1.2:1.0〜1.5:1.0である。
【0033】
本発明の方法によって成分A)〜E)から放射線硬化性水性ポリウレタンアクリレート(i)を調製した後、出発分子において塩形成を実施していなければ、化合物E)のイオン分散作用部位の塩形成を実施する。本発明の方法に従う成分E)は酸性基を有するので、塩基、例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエタノールアミン、アンモニア、N−エチルモルホリン、LiOH、NaOHおよび/またはKOHを使用することが好ましい。
【0034】
次いで、場合により、反応性希釈剤(ii)または反応性希釈剤(ii)混合物を添加してよい。成分(ii)の添加は、30〜45℃で実施することが好ましい。成分(ii)が溶解するとすぐに、最終の反応段階が起こる。この段階では、成分F)により水性媒体において分子量が増大し、本発明の被覆系に必要とされる分散体が生成する。場合によりアセトンに溶解されていてよい成分A)〜E)および任意に反応性希釈剤(ii)から合成されたポリウレタンアクリレート(i)を、アミンF)含有分散用水に導入するか、または逆に、分散用水/アミン混合物をポリウレタン溶液(i)に添加して撹拌する。また、本発明の被覆系において存在する分散体が生じる。使用するアミンF)の量は、なお存在する未反応イソシアネート基に依存する。遊離イソシアネート基とアミンF)との反応は、35%〜150%の範囲で起こり得る。不足量のアミンF)を使用する場合、遊離イソシアネート基は水と緩慢に反応する。過剰量のアミンF)を使用するならば、遊離イソシアネート基は存在せず、アミン官能性ポリウレタンアクリレート(i)が得られる。好ましくは80%〜110%、特に好ましくは90%〜100%の遊離イソシアネート基を、アミンF)と反応させる。
【0035】
別の変法では、アセトン溶液において、即ち、分散前、場合により反応性希釈剤(ii)の添加前または添加後、アミンF)により分子量を増大することができる。
【0036】
所望により、存在するならば有機溶媒を蒸留により除去してよい。その後、分散体は20〜60重量%、特に30〜58重量%の固形分を有する。
【0037】
分散工程と蒸留工程を並行して、即ち同時にまたは少なくとも部分的に同時に実施することもできる。
【0038】
本発明の方法の別の利点は、イソシアネート付加触媒を使用し、成分E)の組み込み、即ち第二反応段階の実施を遅らせると、UV−PUDの成分A)〜D)からポリウレタンを合成するための反応時間をかなり短縮できることである。
【0039】
構成成分A)、B)および任意に成分(ii)は、共重合性二重結合の含量が分散体の非水成分1kgあたり0.5〜6.0mol、好ましくは1.0〜5.5mol、特に好ましくは1.5〜5.0molとなるような量で使用する。
【0040】
成分(ii)は、0〜65重量%、好ましくは0〜40重量%、特に好ましくは0〜35重量%の量で使用し、成分(i)と(ii)との和は100重量%である。
【0041】
成分A)は、15〜300mgKOH/gの範囲のOH価を有する、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリレート、アリルエーテル構成単位含有不飽和ポリエステルおよびポリエポキシ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の化合物を含有する。
【0042】
ポリエステル(メタ)アクリレートのうち、成分A)として、15〜300mgKOH/g、好ましくは60〜200mgKOH/gの範囲のOH価を有するヒドロキシル基含有ポリエステル(メタ)アクリレートを使用する。成分A)としてのヒドロキシ官能性ポリエステル(メタ)アクリレートの調製では、合計7グループのモノマー成分を使用してよい。
【0043】
第一グループ(a)は、アルカンジオールまたはジオールまたはそれらの混合物を包含する。アルカンジオールは、62〜286g/molの分子量を有する。エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールからなる群から選択されるアルカンジオールが好ましい。好ましいジオールは、エーテル酸素含有ジオール、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、200〜4000g/mol、好ましくは300〜2000g/mol、特に好ましくは450〜1200g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールである。前記ジオールとε−カプロラクトンまたは他のラクトンとの反応生成物もまた、ジオールとして使用してよい。
【0044】
第二グループ(b)は、92〜254g/molの範囲の分子量を有する三価アルコールおよび多価アルコール、および/またはそのようなアルコール出発のポリエーテルを包含する。特に好ましい三価アルコールおよび多価アルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびソルビトールである。とりわけ好ましいポリエーテルは、1molのトリメチロールプロパンと4molのエチレンオキシドとの反応生成物である。
【0045】
第三グループ(c)は、モノアルコールを包含する。特に好ましいモノアルコールは、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノール、1−ブタノールおよび2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−エチレンヘキサノール、シクロヘキサノールおよびベンジルアルコールからなる群から選択される。
【0046】
第四グループ(d)は、104〜600g/molの範囲の分子量を有するジカルボン酸、および/またはそれらの無水物を包含する。好ましいジカルボン酸およびそれらの無水物は、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、第六グループ(f)に挙げるような脂肪酸の水素化二量体を包含する。
【0047】
第五グループ(e)は、トリメリット酸および無水トリメリット酸を包含する。
【0048】
第六グループ(f)は、モノカルボン酸、例えば、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、並びに天然脂肪酸および合成脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イコセン酸、リノール酸、リノレン酸およびアラキドン酸を包含する。
【0049】
第七グループ(g)は、アクリル酸、メタクリル酸および/または二量体アクリル酸を包含する。
【0050】
適当なヒドロキシル基含有ポリエステル(メタ)アクリレートA)は、グループ(a)または(b)の少なくとも1種の構成要素と、グループ(d)または(e)の少なくとも1種の構成要素およびグループ(g)の少なくとも1種の構成要素との反応生成物を包含する。
【0051】
グループ(a)の特に好ましい構成要素は、エタンジオール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、並びにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールからなる群から選択されるエーテル酸素含有ジオールからなる群から選択される。グループ(b)の好ましい構成要素は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、および1molのトリメチロールプロパンと4molのエチレンオキシドとの反応生成物からなる群から選択される。グループ(d)および(e)の特に好ましい構成要素は、無水フタル酸、イソフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、第六グループ(f)に挙げたような脂肪酸の水素化二量体、および無水トリメリット酸からなる群から選択される。グループ(g)の好ましい構成要素は、アクリル酸である。
【0052】
先行技術から一般に知られている分散作用を有する基を、場合により、ポリエステル(メタ)アクリレートに組み込むこともできる。従って、ポリエチレングリコールおよび/またはメトキシポリエチレングリコールをアルコール成分としてある割合で使用してよい。化合物として、アルコール出発ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびそれらのブロックコポリマー、並びにこれらポリグリコールのモノメチルエーテルを使用してよい。500〜1500g/molの範囲の数平均分子量Mnを有するポリエチレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
【0053】
エステル化後更に、未エステル化遊離カルボキシル基、特に(メタ)アクリル酸の未エステル化遊離カルボキシル基の一部を、モノエポキシド、ジエポキシドまたはポリエポキシドと反応させてよい。好ましいエポキシドは、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのビスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールのグリシジルエーテル、或いはそれらのエトキシル化誘導体および/またはプロポキシル化誘導体である。エポキシド−酸反応において各々の場合にOH基が生じるので、この反応は特に、ポリエステル(メタ)アクリレートのOH価を上昇させるために使用してよい。得られた生成物の酸価は、0〜20mgKOH/g、好ましくは0〜10mgKOH/g、特に好ましくは0〜5mgKOH/gである。反応は、好ましくは、触媒(例えば、トリフェニルホスフィン、チオジグリコール、ハロゲン化アンモニウムおよび/またはハロゲン化ホスホニウムおよび/またはジルコニウム化合物またはスズ化合物、例えばエチルヘキサン酸スズ(II))によって触媒される。
【0054】
ポリエステル(メタ)アクリレートの調製方法は、DE−A 4 040 290の第3頁第25行〜第6頁第24行、DE−A 3 316 592の第5頁第14行〜第11頁第30行、およびP. K. T. Oldring編、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings, Inks & Paints, 第2巻、1991, SITA Technology, Londonの第123〜135頁に記載されている。
【0055】
アクリル酸および/またはメタクリル酸とポリエーテルとの反応において生じるヒドロキシル基含有ポリエーテル(メタ)アクリレートも、成分A)として適しており、その例は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはテトラヒドロフランと所望のヒドロキシ官能性および/またはアミン官能性スターター分子(例えば、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオールおよびヘキサンジオール)との、ホモポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0056】
また、以下も成分A)として適している:20〜300mgKOH/g、好ましくは100〜280mgKOH/g、特に好ましくは150〜250mgKOH/gの範囲のOH価を有する自体既知のヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート、または20〜300mgKOH/g、好ましくは40〜150mgKOH/g、特に好ましくは50〜140mgKOH/gの範囲のOH価を有するヒドロキシル基含有ポリウレタン(メタ)アクリレート。そのような化合物もまた、P. K. T. Oldring編、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings, Inks & Paints, 第2巻、1991, SITA Technology、Londonの第37〜56頁に記載されている。ヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートは、特に、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのビスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールのエポキシド(グリシジル化合物)、或いはそれらのエトキシル化誘導体および/またはプロポキシル化誘導体との反応生成物に基づく。ヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートはまた、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、不飽和脂肪のエポキシド(脂肪酸トリグリセリド)との付加生成物、例えばPhotomer(登録商標) 3005 F(Cognis(ドイツ国ドュッセルドルフ))も包含する。
【0057】
好ましい不飽和基含有化合物は、不飽和基に加えてヒドロキシル基も含有する、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリレートおよびポリエポキシ(メタ)アクリレートからなる群から選択される化合物である。
【0058】
成分A)として挙げた化合物は、単独でまたは混合物として使用してよい。
【0059】
成分B)は、モノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコールを包含する。そのようなモノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコールは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン伸長変性物、例えばPemcure(登録商標) 12A(Cognis(ドイツ国))、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、平均してモノヒドロキシ官能性である、多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化された、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール)またはそれらの工業用混合物のジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレートまたはペンタ(メタ)アクリレートである。
【0060】
また、二重結合含有酸と任意に二重結合を有してよいエポキシド化合物との反応から得ることができるアルコールを、モノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコールとして使用してもよい。好ましい反応生成物は、グリシジル(メタ)アクリレート含有(メタ)アクリル酸、または第三級飽和モノカルボン酸のグリシジルエステルからなる群から選択される。第三級飽和モノカルボン酸は、例えば、2,2−ジメチル酪酸、エチルメチル酪酸、エチルメチル吉草酸、エチルメチルヘキサン酸、エチルメチルヘプタン酸および/またはエチルメチルオクタン酸である。
【0061】
特に好ましいモノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコールは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびエチルメチルヘプタン酸グリシジルエステルの(メタ)アクリル酸による付加生成物、並びにそれらの工業用混合物である。
【0062】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0063】
モノヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート基含有アルコールB)は、単独でまたは混合物として使用してよい。
【0064】
成分C)は、各々の場合に32〜240g/molの分子量を有するモノマーのモノオール、ジオールおよび/またはトリオールを包含し、その例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、二量体脂肪酸由来ジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルエステル)、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、および/またはひまし油である。ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンが好ましい。
【0065】
成分C)は、更に、オリゴマーおよび/またはポリマーのヒドロキシ官能性化合物を包含する。これらオリゴマーおよび/またはポリマーのヒドロキシ官能性化合物は、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルカーボネートポリオール、C2ポリエーテル、C3ポリエーテルおよび/またはC4ポリエーテル、ポリエーテルエステル、1.0〜3.0の官能価を有するポリカーボネートポリエステルであって、各々の場合に、300〜4000g/mol、好ましくは500〜2500g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有する。
【0066】
ヒドロキシ官能性ポリエステルアルコールは、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびトリカルボン酸と、成分B)として先に挙げたようなモノマーのジオールおよびトリオールとに基づくもの、並びにラクトン系ポリエステルアルコールである。カルボン酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、脂肪酸の水素化二量体、並びに飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、およびそれらの工業用混合物である。ジカルボン酸およびトリカルボン酸の類似無水物を使用してもよい。
【0067】
ヒドロキシ官能性ポリエーテルオールは、例えば、環状エーテルの重合によって、またはアルキレンオキシドとスターター分子との反応によって、得ることができる。
【0068】
ヒドロキシ官能性ポリカーボネートは、ヒドロキシル末端ポリカーボネートであり、ジオール、ラクトン変性ジオールまたはビスフェノール(例えばビスフェノールA)とホスゲンまたは炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネートまたはジメチルカーボネート)との反応により得ることができる。ヒドロキシ官能性ポリエーテルカーボネートポリオールは、DE−A 10 2008 000 478においてポリウレタン分散体の合成のために記載されているようなヒドロキシ官能性ポリエーテルカーボネートポリオールである。
【0069】
成分D)は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式のポリイソシアネート、或いはそのようなポリイソシアネートの混合物からなる群から選択されるポリイソシアネートを包含する。適当なポリイソシアネートは、例えば、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−メチル−2,6−ジイソシアナトシクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネートまたはα,α,α’,α’−テトラメチル−p−キシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、即ちIPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN)(EP−A 928 799)、および列挙したこれらポリイソシアネートの、ビウレット基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基および/またはウレトジオン基を有する同族体またはオリゴマー、並びにそれらの混合物である。
【0070】
成分D)として同様に適しているものは、WO 2006/089935 A1の成分a)として記載されているような、少なくとも2個の遊離イソシアネート基、少なくとも1個のアロファネート基、およびアロファネート基を介した少なくとも1個の放射線重合性C=C二重結合を有する化合物である。
【0071】
成分D)として以下のものが好ましい:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、即ちIPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、即ちIPDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンの、ビウレット基、カルボジイミド基、イソシアヌレート基、アロファネート基、イミノオキサジアジンジオン基および/またはウレトジオン基を有する同族体またはオリゴマー、並びにそれらの混合物。4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンが特に好ましい。
【0072】
成分E)は、UV−PUDに対する分散作用を有し、少なくとも1個のヒドロキシ官能基を有するカルボン酸含有またはカルボキシレート含有化合物を包含する。成分E)がカルボン酸含有化合物(潜在アニオン性基)であるならば、それらは、塩形成の過程において、カルボキシレート含有化合物(イオン性基)に転化する。成分D)は、ヒドロキシ官能基によりポリウレタンに組み込まれる。
【0073】
成分E)として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸および乳酸からなる群から選択されるモノヒドロキシカルボン酸およびジヒドロキシカルボン酸が好ましい。成分E)として、ヒドロキシピバリン酸およびジメチロールプロピオン酸が特に好ましい。
【0074】
成分E)として挙げた酸は、中和剤(例えば、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエタノールアミン、アンモニア、N−エチルモルホリン、LiOH、NaOHおよび/またはKOH)との反応により対応する塩に転化する。中和度は好ましくは50〜125%である。中和度は以下のように定義される:酸官能化ポリマーの場合は塩基と酸の商、塩基官能化ポリマーの場合は酸と塩基の商。中和度を100%より大きくするならば、酸官能化ポリマーの場合は、ポリマー中の酸基より多い塩基を添加し、塩基官能化ポリマーの場合は、ポリマー中の塩基より多い酸を添加する。
【0075】
成分E)として上げた化合物は混合物として使用してもよい。
【0076】
本発明のポリウレタンアクリレート(i)の分子量を増大するために、成分F)として、モノアミンおよびジアミンおよび/または単官能性アミノアルコールまたは二官能性アミノアルコールを使用する。ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートの延長は場合により水性媒体中で実施するので、好ましいジアミンは、水に対してよりイソシアネート基に対して、より反応性であるジアミンである。特に好ましくは、ジアミンは、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、ピペラジン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、アミノ官能性ポリエチレンオキシド、アミノ官能性ポリプロピレンオキシド(Jeffamin(登録商標) Dシリーズ(Huntsman Corp. Europe(ベルギー国ザベンテム))の名称で知られている)、およびヒドラジンからなる群から選択される。エチレンジアミンが最も好ましい。
【0077】
好ましいモノアミンは、ブチルアミン、エチルアミン、およびJeffamin(登録商標) Mシリーズのアミン(Huntsman Corp. Europe(ベルギー国ザベンテム))、アミノ官能性ポリエチレンオキシド、アミノ官能性ポリプロピレンオキシド、および/またはアミノアルコールからなる群から選択される。
【0078】
成分(ii)は、少なくとも1個のラジカル重合性基(好ましくはアクリレート基およびメタクリレート基)を有し、好ましくはイソシアネート基またはヒドロキシル基に対して反応性である基を有さない化合物であると理解される反応性希釈剤を包含する。
【0079】
好ましい化合物(ii)は、2〜6個、好ましくは4〜6個の(メタ)アクリレート基を有する。
【0080】
特に好ましい化合物(ii)は、常圧で200℃より高い沸点を有する。
【0081】
反応性希釈剤は、概して、P. K. T. Oldring編、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints, 第II巻、第III章:Reactive Diluents for UV & EB Curable Formulations, Wiley and SITA Technology, London, 1997に記載されている。
【0082】
反応性希釈剤は、例えば、(メタ)アクリル酸で完全にエステル化されたアルコール(メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ジヒドロジシクロペンタジエノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、3,3,5−トリメチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール)およびこれらアルコールのエトキシル化誘導体および/またはプロポキシル化誘導体、並びに前記化合物の(メタ)アクリル化において生成した工業用混合物である。
【0083】
成分(ii)は、好ましくは、テトラオールおよびヘキサオールの(メタ)アクリレート、例えば、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化された、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、および前記アルコールのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体の、(メタ)アクリレート、並びに前記化合物の(メタ)アクリル化において得られた工業用混合物からなる群から選択される。
【0084】
本発明はまた、本発明の方法によって製造したポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体も提供する。
【0085】
本発明はまた、本発明の方法によって調製した放射線硬化性水性分散体の、被覆剤、特にラッカーおよび接着剤の製造における使用も提供する。
【0086】
常套法(例えば、熱、熱放射、場合により乾燥されていてよい空気の移動、および/またはマイクロ波)による水の除去後、本発明の分散体は透明なフィルムを生じる。続く放射線誘起架橋および/またはラジカル誘起架橋によってフィルムを硬化し、特に高品質の耐薬品性ラッカー被膜を得る。
【0087】
場合により適当な光開始剤の添加を伴った、エネルギーが(メタ)アクリレート二重結合のラジカル重合をもたらすのに十分である電磁放射が、放射線誘起重合に適している。
【0088】
放射線誘起重合は、好ましくは、400nm未満の波長を有する放射線(例えば、紫外線、電子放射線、X線またはガンマ線)によって実施する。紫外線放射が特に好ましい。紫外線放射による硬化は、光開始剤の存在下で開始する。光開始剤は基本的に、2つのタイプの光開始剤、単分子(タイプI)と二分子(タイプII)とに分類される。適当な(タイプI)系は、芳香族ケトン化合物、例えば、第三級アミンと組み合わせたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロン、ハロゲン化ベンゾフェノン、または前記タイプの混合物である。(タイプII)開始剤、例えば、ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチル−ベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、およびα−ヒドロキシアルキルフェノンもまた適している。水性被覆組成物に容易に配合できる光開始剤が好ましい。そのような製品は例えば、Irgacure(登録商標) 500(ベンゾフェノンと(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトンとの混合物、Ciba(ドイツ国ラムペルトハイム))、Irgacure(登録商標) 819 DW(フェニルビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド、Ciba(ドイツ国ラムペルトハイム))、Esacure(登録商標) KIP EM(オリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)−フェニル]−プロパノン]、Lamberti(イタリア国アルビッツァーテ))である。これら化合物の混合物を使用することもできる。
【0089】
極性溶媒、例えばアセトンおよびイソプロパノールを、光開始剤の配合に使用することもできる。
【0090】
(メタ)アクリレート基の転化率が、より高い温度で上昇する傾向にあるので、紫外線硬化は、有利には30〜70℃で実施する。これによって、より良好な耐性が得られる。しかしながら、当業者が、個々の被覆組成物/基材組み合わせについての最適な硬化条件を簡単な予備試験で決定できるように、紫外線硬化において、基材の見込まれる熱感度を考慮しなければならない。
【0091】
ラジカル重合を開始する放射器は固定してよく、被覆した基材を、適当な常套のデバイスにより放射器に通過させる。または、被覆した基材を硬化中固定できるように、放射器を常套のデバイスにより動かすことができる。例えばチャンバー内での放射を実施することもでき、この場合は、被覆した基材をチャンバーに導入し、次いで放射線のスイッチを一定期間入れ、放射後再び基材をチャンバーから取り出す。
【0092】
酸素によるラジカル架橋の阻害を防ぐため、硬化は場合により不活性ガス雰囲気中、即ち酸素を除外して実施してよい。
【0093】
熱ラジカル架橋を実施する場合、水溶性ペルオキシド、または非水溶性開始剤の水性エマルションが適当である。これらのラジカル形成体は、既知の方法で、促進剤と組み合わせてよい。
【0094】
本発明のUV−PUDは、常套の技術によって、好ましくは、噴霧、ロール塗布、流し塗り、印刷、ナイフ塗布、流し込み、引き塗りおよび浸漬によって、多種多様な基材に適用してよい。
【0095】
基本的に、任意の基材を、本発明のUV−PUDでラッカー塗りまたは被覆してよい。好ましい基材は、無機基材、木材、木工製品、家具、寄木張りの床、ドア、窓枠、金属体、プラスチック、紙、ボール紙、コルク、無機基材、布地および皮革からなる群から選択される。本発明のUV−PUDは、下塗および/または仕上塗として適している。また、本発明の被覆系は、接着剤(例えば、触圧接着剤、熱活性化接着剤または貼り合わせ用接着剤)において或いは接着剤として使用してもよい。
【0096】
本発明のUV−PUDは、単独で、または別の分散体とのバインダー混合物として使用してよい。別の分散体は、同様に不飽和基を有する分散体、例えば、不飽和重合性基を有する、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエポキシ(メタ)アクリレート系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリシロキサン系、ポリカーボネート系、エポキシアクリレート系、ポリマー系、ポリエステルアクリレート系、ポリウレタンポリアクリレート系および/またはポリアクリレート系の分散体であってよい。
【0097】
本発明の被覆系は、官能基(例えば、アルコキシシラン基、ヒドロキシ基および/または場合によりブロック状態のイソシアネート基)を有する、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリビニルエステル系、ポリビニルエーテル系、ポリシロキサン系、ポリカーボネート系、ポリマー系および/またはポリアクリレート系の分散体を含有してもよい。このようにして、2つの異なったメカニズムで硬化できる二重硬化系を製造することができる。
【0098】
二重硬化系についても同様に、本発明のUV−PUDに、いわゆる架橋剤を更に添加してよい。好ましくは、非ブロックトポリイソシアネートおよび/またはブロックトポリイソシアネート、ポリアジリジン、ポリカルボジイミドおよびメラミン樹脂が適当である。水性被覆組成物には、非ブロックト親水化ポリイソシアネートおよび/またはブロックト親水化ポリイソシアネートが特に好ましい。被覆組成物の固形分に基づいて、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下の固体架橋剤を添加する。
【0099】
本発明の被覆系は、官能基を有さない、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリシロキサン系、ポリビニルエーテル系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系、塩化ゴム系、ポリカーボネート系、ポリビニルエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリマー系、ポリアクリレート系、ポリウレタンポリアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、アルキド系、ポリカーボネート系、ポリエポキシ系、エポキシ(メタ)アクリレート系の分散体を含有してもよい。それによって、架橋密度を低下でき、物理的乾燥に影響を与えることができ(例えば促進でき)、または接着の弾性化または適合をもたらすことができる。
【0100】
メラミンまたはウレアに基づくアミノ架橋剤樹脂、および/またはウレタン構造、ウレトジオン構造、イミノオキサジアジンジオン構造、イソシアヌレート構造、ビウレット構造および/またはアロファネート構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび/またはトルイリデンジイソシアネートの(任意に親水化基を有してよい)ポリイソシアネートに基づく遊離ポリイソシアネート基またはブロックトポリイソシアネート基含有ポリイソシアネートを、本発明のUV−PUDを含有する被覆組成物に添加してもよい。更なる架橋剤として、カルボジイミドまたはポリアジリジンも可能である。
【0101】
ラッカー技術で既知のバインダー、助剤および添加剤、例えば、顔料、着色料または艶消剤を、本発明の被覆組成物に添加または配合してよい。そのようなバインダー、助剤および添加剤は、均展剤および湿潤剤、スリップ剤、金属効果顔料を包含する顔料、充填材、ナノ粒子、光安定化粒子、青味剤、増粘剤、表面張力低下剤である。
【0102】
本発明の被覆組成物は、フィルムの被覆に適しており、被覆したフィルムの付形は、物理的乾燥と紫外線硬化の間に実施する。
【0103】
本発明の被覆組成物は、物理的乾燥後の耐ブロッキング性および放射線硬化後の良好な耐薬品性が重要である、木製基材およびプラスチック製基材へのクリヤラッカーとしての使用に特に適している。
【0104】
組成物全体に基づいて10重量%以上の顔料含有量を有する木材用途およびプラスチック用途にも、本発明の被覆組成物は特に適している。高い顔料含有量の故に、放射線硬化の際の被覆系における放射線硬化性基の反応が完全ではなくても、耐ブロッキング性被膜が得られる。
【0105】
本発明はまた、ポリウレタンアクリレートに基づく本発明の放射線硬化性水性分散体、アミノ樹脂系架橋剤、ブロックトポリイソシアネート、非ブロックトポリイソシアネート、ポリアジリジンおよび/またはポリカルボジイミド、および/または1種以上の更なる分散体を含有する被覆組成物も提供する。
【0106】
本発明は更に、本発明の被覆組成物で被覆した基材も提供する。
【実施例】
【0107】
方法
NCO含量は、いずれの場合も、滴定測定により、DIN 53185に従って測定した。
固形分は、蒸発後に不揮発性成分の全てを重量測定することにより、DIN 53216に従って測定した。
平均粒径は、光子相関分光法によって測定した。
流出時間は、4mmDINビーカーを用いて、DIN 53211に従って測定した。
【0108】
1)紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体(比較)の調製
339.9部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)、成分A)、10.8部の1,4−ブタンジオール(成分C)、30.3部のジメチロールプロピオン酸(成分E)、199.7部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分D)、および0.6部のジラウリン酸ジブチルスズを、185部のアセトンに溶解し、2.1重量%(理論値1.72重量%)のNCO含量に達するまで、撹拌しながら60℃で反応させた。次いで、19.4部のトリエチルアミンを添加して撹拌することにより中和した。この透明な溶液を、900部の水に撹拌しながら添加した。続いて、この分散体に、10.8部のエチレンジアミン(成分F)と24.0部の水との混合物を撹拌しながら添加した。その後、僅かに減圧しながら、この分散体から蒸留によってアセトンを除去した。固形分40重量%、平均粒径90nm、pH値8.7および流出時間39秒を有する紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体1)を得た。ポリウレタンアクリレートの酸価は17.5であった。中和のための反応時間は15時間であった。
【0109】
2)本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
339.9部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)、成分A)、10.8部の1,4−ブタンジオール(成分C)、199.7部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分D)、および0.6部のジラウリン酸ジブチルスズを、185部のアセトンに溶解し、4.7重量%(理論値4.37重量%)のNCO含量に達するまで、撹拌しながら60℃で反応させた。次いで、30.3部のジメチロールプロピオン酸(成分E)を添加し、2.1重量%(理論値1.72重量%)のNCO値に達するまで、60℃で更に反応させた。続いて、19.4部のトリエチルアミンを添加して撹拌することにより中和した。この透明な溶液を、900部の水に撹拌しながら添加した。その後、この分散体に、10.8部のエチレンジアミン(成分F)と24.0部の水との混合物を撹拌しながら添加した。次いで、僅かに減圧しながら、この分散体から蒸留によってアセトンを除去した。固形分40重量%、平均粒径53nm、pH値8.5および流出時間79秒を有する本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体2)を得た。ポリウレタンアクリレートの酸価は17.5であった。中和のための反応時間は5時間であった。
【0110】
3)本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
339.9部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)、成分A)、13.2部の1,4−ブタンジオール(成分C)、199.7部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分D)、および0.6部のジラウリン酸ジブチルスズを、185部のアセトンに溶解し、4.3重量%(理論値4.04重量%)のNCO含量に達するまで、撹拌しながら60℃で反応させた。次いで、26.7部のジメチロールプロピオン酸(成分E)を添加し、2.1重量%(理論値1.72重量%)のNCO値に達するまで、60℃で更に反応させた。続いて、19.4部のトリエチルアミンを添加して撹拌することにより中和した。この透明な溶液を、900部の水に撹拌しながら添加した。その後、この分散体に、10.8部のエチレンジアミン(成分F)と24.0部の水との混合物を撹拌しながら添加した。次いで、僅かに減圧しながら、この分散体から蒸留によってアセトンを除去した。固形分40重量%、平均粒径76nm、pH値8.8および流出時間18秒を有する本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体3)を得た。ポリウレタンアクリレートの酸価は15.5であった。中和のための反応時間は5.5時間であった。
【0111】
4)本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
339.9部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)、成分A)、15.0部の1,4−ブタンジオール(成分C)、199.7部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分D)、および0.6部のジラウリン酸ジブチルスズを、185部のアセトンに溶解し、4.1重量%(理論値3.81重量%)のNCO含量に達するまで、撹拌しながら60℃で反応させた。次いで、24.0部のジメチロールプロピオン酸(成分E)を添加し、2.1重量%(理論値1.72重量%)のNCO値に達するまで、60℃で更に反応させた。続いて、19.4部のトリエチルアミンを添加して撹拌することにより中和した。この透明な溶液を、900部の水に撹拌しながら添加した。その後、この分散体に、10.8部のエチレンジアミン(成分F)と24.0部の水との混合物を撹拌しながら添加した。次いで、僅かに減圧しながら、この分散体から蒸留によってアセトンを除去した。固形分38重量%、平均粒径84nm、pH値8.2および流出時間13秒を有する本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体4)を得た。ポリウレタンアクリレートの酸価は14.0であった。中和のための反応時間は5時間であった。
【0112】
5)紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体(比較)の調製
339.9部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)、成分A)、10.8部の1,4−ブタンジオール(成分C)、30.3部のジメチロールプロピオン酸(成分E)、199.7部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分D)、および0.6部のジラウリン酸ジブチルスズを、185部のアセトンに溶解し、2.1重量%(理論値1.72重量%)のNCO含量に達するまで、撹拌しながら60℃で反応させた。次いで、19.4部のトリエチルアミンを添加して撹拌することにより中和し、115.0部のエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートMiramer(登録商標) 4004(Rahn AG(スイス国チューリッヒ)、成分(ii))を添加した。この透明な溶液を、1035部の水に撹拌しながら添加した。続いて、この分散体に、10.8部のエチレンジアミン(成分F)と24.0部の水との混合物を撹拌しながら添加した。その後、僅かに減圧しながら、この分散体から蒸留によってアセトンを除去した。固形分39重量%、平均粒径97nm、pH値8.7および流出時間42秒を有する紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体5)を得た。ポリウレタンアクリレートの酸価は17.5であった。中和のための反応時間は16時間であった。
【0113】
6)本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体の調製
339.9部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)、成分A)、13.2部の1,4−ブタンジオール(成分C)、199.7部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分D)、および0.6部のジラウリン酸ジブチルスズを、185部のアセトンに溶解し、4.3重量%(理論値4.04重量%)のNCO含量に達するまで、撹拌しながら60℃で反応させた。次いで、26.7部のジメチロールプロピオン酸(成分E)を添加し、2.1重量%(理論値1.72重量%)のNCO値に達するまで、60℃で更に反応させた。続いて、19.4部のトリエチルアミンを添加して撹拌することにより中和し、115.0部のエトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートMiramer(登録商標) 4004(Rahn AG(スイス国チューリッヒ)、成分(ii))を添加した。この透明な溶液を、1035部の水に撹拌しながら添加した。その後、この分散体に、10.8部のエチレンジアミン(成分F)と24.0部の水との混合物を撹拌しながら添加した。次いで、僅かに減圧しながら、この分散体から蒸留によってアセトンを除去した。固形分39重量%、平均粒径86nm、pH値8.3および流出時間20秒を有する本発明の紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体6)を得た。ポリウレタンアクリレートの酸価は15.5であった。中和のための反応時間は5.5時間であった。
【0114】
7)紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体(比較)の調製
396部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)、成分A)、18.0部の1,4−ブタンジオール(成分C)、199.7部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分D)、および0.6部のジラウリン酸ジブチルスズを、180部のアセトンに溶解し、2.8重量%(理論値2.75重量%)のNCO含量に達するまで、撹拌しながら60℃で反応させた。次いで、このプレポリマーを、450部のアセトンで更に希釈し、78部のPUD塩(アクリル酸およびエチレンジアミンのマイケル付加物、ナトリウム塩)40%水溶液を撹拌しながら添加した。発熱反応が沈静化した後、この透明な溶液に撹拌しながら900部の水を添加した。分散体は極めて粘性であり、蒸留することはできなかった。分散体の粘度は一晩経っても低下しなかった。
【0115】
8)紫外線硬化性ポリウレタン水性分散体(比較)の調製
396部のポリエステルアクリレートLaromer(登録商標) PE 44 F(BASF AG(ドイツ国ルートヴィヒスハーフェン)、成分A)、18.0部の1,4−ブタンジオール(成分C)、199.7部の4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(成分D)、および0.6部のジラウリン酸ジブチルスズを、180部のアセトンに溶解し、2.8重量%(理論値2.75重量%)のNCO含量に達するまで、撹拌しながら60℃で反応させた。次いで、このプレポリマーを、450部のアセトンで更に希釈し、86部のAAS塩(2−(2−アミノエチルアミノ)−エタンスルホン酸ナトリウム塩)45%水溶液を撹拌しながら添加した。発熱反応が沈静化した後、この透明な溶液に撹拌しながら900部の水を添加した。分散体は直ちに完全に沈降した。
【0116】
本発明の実施例2)は、同じ酸価のものを用いて、即ち同じ親水化を実施して、UV−PUDが、比較例1)より微細に分散したことを示している。実施例2)では非常に小さい平均粒径に従って、粘度が非常に高かった。本発明の実施例3)および4)では、実施例2)と同様にジメチロールプロピオン酸(成分E)を遅れて添加したが、成分E)の量は実施例2)と比べて半分に減らした。得られたUV−PUDはやはり、実施例1より微細に分散したが、粘度は酸価の低下に伴って大幅に低下した。本発明の実施例6)は、ジメチロールプロピオン酸(成分E)の遅れた添加およびジメチロールプロピオン酸の量の低減により、実施例5)と比べて、より微細に分散したより低粘性のUV−PUDが生成したことを示している。
【0117】
実施例2)、3)、4)および6)は、実施例1)および5)と比べて、著しく短い反応時間を示した。
【0118】
実施例7)および8)は、アミン官能化カルボン酸またはスルホン酸による親水化が、本発明の親水化UV−PUDに適していないことを示している。親水化剤の量を変えても、同様の結果が得られた。そのような親水化剤は、UV−PUDにとっての有用性が低いことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分として
A)15〜300mgKOH/gの範囲のOH価を有する、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル(メタ)アクリレート、アリルエーテル構成単位含有不飽和ポリエステルおよびポリエポキシ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上のポリマー化合物、
B)任意に、ヒドロキシ官能基および少なくとも1個の(メタ)アクリレート基を有する、成分A)以外の1種以上のモノマー化合物、
C)少なくとも1個のイソシアネート反応性基を有する、成分A)またはB)以外の1種以上の化合物、
D)1種以上の有機ポリイソシアネート、
E)ポリウレタン分散体に対する分散作用を有し、少なくとも1個のヒドロキシ官能基に加えてカルボン酸官能基またはカルボキシレート官能基の少なくとも1個を有する1種以上の化合物、
F)少なくとも1個のイソシアネート反応性基を有する、成分A)〜E)以外の化合物
を含有するポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法であって、
第一反応段階において、成分A)〜D)を反応させて、イオン性基も潜在イオン性基も有さないポリウレタンアクリレートを生成し、NCO含量を測定した後に、NCO値は、理論NCO含量と1.5重量%NCO(絶対値)まで異なってよい値に達し、
第二反応段階において、成分E)を、成分A)〜D)の反応生成物の遊離NCO基と反応させ、NCO含量を再び測定した後に、NCO値は、理論NCO値と1.5重量%NCO(絶対値)まで異なってよい値に達し、
第三反応段階において、成分F)を遊離NCO基と反応させる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
成分ii)として、少なくとも1個のラジカル重合性基を有する1種以上の反応性希釈剤を添加することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法。
【請求項3】
成分E)が、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸および乳酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法。
【請求項4】
成分D)のイソシアネート基と成分A)〜C)のイソシアネート反応性基のモル比が1.2:1.0〜4.0:1.0であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法。
【請求項5】
成分D)のイソシアネート基と成分A)、B)、C)およびE)のイソシアネート反応性基のモル比が1.05:1.0〜2.5:1.0であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法。
【請求項6】
第一反応段階後、NCO含量測定後に、NCO値が、理論NCO値と1.0重量%NCO(絶対値)まで異なってよい値に達し、第二反応段階後、NCO含量測定後に、NCO値が、理論NCO値と1.0重量%NCO(絶対値)まで異なってよい値に達することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって製造された、ポリウレタンアクリレート(i)に基づく放射線硬化性水性分散体。
【請求項8】
被覆剤、ラッカーおよび接着剤の製造における、請求項6に記載のポリウレタンアクリレートに基づく放射線硬化性水性分散体の使用。

【公表番号】特表2013−515088(P2013−515088A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543641(P2012−543641)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069453
【国際公開番号】WO2011/073116
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】