説明

低酸化ナトリウムガラス及びガラス管

【課題】物性及び化学的耐久性が向上し、透過率が波長幅313ナノメータ(nm)で制御された、ホウケイ酸ガラスの代わる、低酸化ナトリウムガラス及びガラス管を提供することである。
【解決手段】以下の化学成分:SiO55.0〜70.0%、Al2.0〜4.0%、MgO及びCaO3.0〜7.0%、SrO2.0〜5.0%、BaO9.0〜12.0%、LiO2.0〜4.0%、NaO0〜0.15%、KO12.0〜14.0%、CeO0.1〜0.6%、Fe(0.03%)、及びSO(0.15%)を含む低酸化ナトリウムガラス及びガラス管によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、低酸化ナトリウム含量のガラス及びガラス管製造についての化学の一分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品、コンピュータに接続される機器、例えば、薄型テレビ、LCD、スキャナー、ガイド機器に使用される機器の製造についての技術革新の全てにおいて、どこにでも携帯できるようなユーザーの利便性及び移動の容易性を考慮して、現代調にした企画及び開発がおこなわれている。したがって、サイズ及び重量を適切にした開発がなされる必要がある。バックライト製造用のガラス管には、小径のガラスを使用する必要がある。現在では、これらの電気製品の市場に適応したバックライト製造用ガラス管の製造業者が存在しており、その存在が多くなっている。
【0003】
電球製造用の低酸化ナトリウムガラス管は、一般的に酸化ホウ素含量が約10〜20%であるホウケイ酸ガラスから作られているバックライト製造用ガラス管の代わりに用いられる。しかしながら、ガラスを溶融させることが困難であるとともに、製造コストが高い。さらに、加熱したときにホウケイ酸ガラスの膨張係数αがかなり低いことも重要な要素である。その結果、これを電球製造業で使用するとき、ホウケイ酸ガラスのかなり低い膨張係数αに近い、膨張係数αを有する密封用金属線を選択する必要がある。価格が高めであるタングステン、モリブデン及びコバールワイヤが、現在使用されている。したがって、電球製造用低酸化ナトリウムガラス管の発明において、加熱したときのガラスの膨張係数αを、コストがもっと低いジュメット線の膨張係数に近い値に調整したものを開発した。その結果、電球製造経営者にとっても、低コスト化が実現できる。ホウケイ酸ガラスよりも低いガラス軟化点(Ts)及びホウケイ酸ガラスよりも高いワーキング温度(Tw)を考慮しながら電球製造用低酸化ナトリウムガラス管の化学成分を調合することにより、ワーキングレンジが少なくとも450℃におけるホウケイ酸ガラスよりも広くなる。このことは、極めて重要な性質の一つである。
【0004】
電球製造用低酸化ナトリウムガラス管に関する発明により、紫外線(UV)領域の光波の吸収についてのガラスの品質の向上がなされる。UV光波は危険であることが知られており、本発明では、波長を、酸化セリウム(CeO)を適用することにより、313ナノメーター(nm)に制御する。
【0005】
電球製造用低酸化ナトリウムガラス管の大きな利点は、ガラス管が耐薬品性とともに、耐久性を有することにある。ソーダ灰(酸化ナトリウム(NaO)換算)、炭酸カリウム(酸化カリウム(KO)換算)、炭酸バリウム(酸化バリウム(Bao)換算)、及び環境面から有害な重金属、例えば、鉛(Pb)、ひ素(As)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、六価クロム(CrVl)、ポリ臭素化ビフェニル(PBB)、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)等以外の他の化学成分の比についての知見を得た。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、製造コストの減少及び紫外線(UV)領域における光の吸収についての品質調整を実現できる、ホウケイ酸ガラスの代わりに用いられる低酸化ナトリウムガラス及びガラス管を提供することである。波長は、313ナノメータ(nm)で測定する。本発明は、環境に優しい化学成分を選択しながら、ガラス及びガラス管が十分な耐薬品性及び物性を有する耐久性を兼ね備えたように調整することを含む。これは、電球製造業及び他の業界用のガラス及びガラス管にとっても好適な技術である。
【発明の詳細な説明】
【0007】
本発明は、製造コストを低下でき、且つ紫外線(UV)の吸収に関する品質についての調整及び向上ができるように、ホウケイ酸ガラスの代わりに用いるためのバックライト製造用の低酸化ナトリウムを用いたガラス管について検討した結果、なされたものである。このUV光波は、薄型テレビ、LCD−TFTテレビ画面、薄型PC及びラップトップ、スキャナー及びナビゲーションシステムの組立部品にとって有害であることが知られている。電球用ソーダライムガラス及び無鉛ガラス管の両方の製造業者としてのバックグラウンドとともにこれらの研究をおこなった結果、本発明者は、酸化セリウム(CeO)を0.1〜0.6%の量で混合して光透過率を2.0%未満にすることにより、313ナノメーター(nm)波長幅で制御された光波吸収に関する紫外線(UV)透過率についての性質を調整及び向上できることを見出した。さらに、ガラスの耐久性について、下記の組成とする必要があることを見い出した。ソーダ灰(酸化ナトリウム(NaO)換算)0.15%未満(良好な耐薬品性が得られる)、炭酸カリウム(酸化カリウム(KO)換算)12〜14%、炭酸リチウム(LiCO;酸化リチウム(LiO)換算)2〜4%、炭酸バリウム(酸化バリウム(Bao)換算)9〜12%、炭酸ストロンチウム(酸化ストロンチウム(SrO)換算)2〜5%、炭酸マグネシウム(酸化マグネシウム(MgO)換算)、及び炭酸カルシウム(酸化カルシウム(CaO)換算)3〜7%。
【0008】
電球製造用低酸化ナトリウムガラス管の発明により、加熱したときのガラスの膨張係数αを向上させ、よりコストが低いジュメット線の膨張係数αに近い値とすることができた。得られるアルファ(α)値は、約(92.0〜99.0)×10−7/℃である。ホウケイ酸ガラスより低いガラスの耐屈曲性又は軟化(軟化点)(すなわち、ホウケイ酸ガラスの軟化点が>700℃であるのに対して、本発明の低酸化ナトリウムガラスの軟化点は670〜700℃であり、そのワーキングポイントTwはホウケイ酸ガラスよりも高い)を考慮してバックライトの製造用低酸化ナトリウムの化学成分を調合することにより、そのワーキングレンジは、ホウケイ酸ガラスよりも少なくとも450℃だけ広くなる。このワーキングレンジは、電球製造業にとって有利である。
【本発明の実施の形態】
【0009】
本発明の概略を説明したが、以下の具体的な実施例により、よりよく理解されるであろう。しかしながら、以下の実施例は説明のためだけに記載されており、特記のない限りは、本発明を限定するものではない。
【0010】
本発明の低酸化ナトリウムガラス及びガラス管は、以下の化学成分を含む:SiO55.0〜70.0%、Al2.0〜4.0%、MgO及びCaO3.0〜7.0%、SrO2.0〜5.0%、BaO9.0〜12.0%、LiO2.0〜4.0%、NaO0〜0.15%、KO12.0〜14.0%、CeO0.1〜0.6%、Fe(0.03%)、及びSO(0.15%)。
【実施例1】
【0011】
化学成分を準備し、原料の混合量を計算する。原料組成(重量%)は以下の通りである。
成分 %
SiO 62.80
Al 4.00
MgO/CaO 3.40
SrO 5.00
BaO 9.00
LiO 2.80
NaO 0.05
O 12.70
CeO 0.10
Fe 0.03
【0012】
上記の化学成分は、実験炉において、1450℃の温度で混合し、溶融してガラスとするのに必要な原料の割合の計算に適用する。試験片が得られたら、物性試験工程に移る。結果は以下の通りである。
物性 得られた結果
膨張係数アルファ(30〜380℃×10−7/℃) 93.1
密度(g/cc) 2.656
ガラス転移Tg(℃) 516
焼鈍点Ta(℃) 569
軟化点Ts(℃) 692
ワーキングポイントTw(℃) 1191
得られた結果から、ワーキングレンジは499℃である。
【0013】
オートクレーブを使用して、121℃で60分間、JISR3502(NaOmg)の方法により化学的耐久性試験をおこなう。濃度(ROmg/l)は、以下の通りである:
NaO <0.5
O 10.1
LiO 2.7
【実施例2】
【0014】
化学成分を準備し、原料の混合量を計算する。原料組成(重量%)は以下の通りである。
成分 %
SiO60.15
Al3.00
MgO/CaO 5.00
SrO 5.00
BaO 11.00
Li 2.20
Na 0.15
13.00
CeO0.50
【0015】
上記の化学成分は、実験炉において、1450℃の温度で混合し、溶融してガラスとするのに必要な原料の割合の計算に適用する。試験片が得られたら、物性試験工程に移る。結果は以下の通りである。
物性 得られた結果
膨張係数アルファ(30〜380℃×10−7/℃) 93.3
密度(g/cc) 2.726
ガラス転移Tg(℃) 531
焼鈍点Ta(℃) 585
軟化点Ts(℃) 703
ワーキングポイントTw(℃) 1183
得られた結果から、ワーキングレンジは480℃である。
【実施例3】
【0016】
化学成分を準備し、原料の混合量を計算する。原料組成(重量%)は以下の通りである。
成分 %
SiO61.85
Al3.00
MgO/CaO 5.00
SrO 3.00
BaO 11.00
Li 2.50
Na 0.15
13.00
CeO0.50
【0017】
上記の化学成分は、実験炉において、1450℃の温度で混合し、溶融してガラスとするのに必要な原料の割合の計算に適用する。試験片が得られたら、物性試験工程に移る。結果は以下の通りである。
物性 得られた結果
膨張係数アルファ(30〜380℃×10−7/℃) 92.3
密度(g/cc) 2.687
ガラス転移Tg(℃) 523
焼鈍点Ta(℃) 578
軟化点Ts(℃) 699
ワーキングポイントTw(℃) 1176
得られた結果から、ワーキングレンジは477℃である。
【実施例4】
【0018】
化学成分を準備し、原料の混合量を計算する。原料組成(重量%)は以下の通りである。
成分 %
SiO61.35
Al3.00
MgO/CaO 5.00
SrO 3.00
BaO 11.00
Li 3.00
Na 0.15
13.00
CeO0.50
【0019】
上記の化学成分は、実験炉において、1450℃の温度で混合し、溶融してガラスとするのに必要な原料の割合の計算に適用する。試験片が得られたら、物性試験工程に移る。結果は以下の通りである。
物性 得られた結果
膨張係数アルファ(30〜380℃×10−7/℃) 95.6
密度(g/cc) 2.703
ガラス転移Tg(℃) 511
焼鈍点Ta(℃) 559
軟化点Ts(℃) 685
ワーキングポイントTw(℃) 1150
得られた結果から、ワーキングレンジは465℃である。
【0020】
オートクレーブを使用して、121℃で60分間、JIS R3502(NaO mg)の方法により化学的耐久性試験をおこなう。濃度(RO mg/l)は、以下の通りである。
NaO <0.5
O 10.1
LiO 2.8
【実施例5】
【0021】
化学成分を準備し、原料の混合量を計算する。原料組成(重量%)は以下の通りである。
成分 %
SiO 61.35
Al 2.00
MgO/CaO 5.00
SrO 4.00
BaO 11.00
LiO 3.00
NaO 0.15
O 13.00
CeO 0.50
【0022】
上記の化学成分は、実験炉において、1450℃の温度で混合し、溶融してガラスとするのに必要な原料の割合の計算に適用する。試験片が得られたら、物性試験工程に移る。結果は以下の通りである。
物性 得られた結果
膨張係数アルファ(30〜380℃×10−7/℃) 99.1
密度(g/cc) 2.717
ガラス転移Tg(℃) 510
焼鈍点Ta(℃) 559
軟化点Ts(℃) 680
ワーキングポイントTw(℃) 1140
得られた結果から、ワーキングレンジは460℃である。
【0023】
オートクレーブを使用して、121℃で60分間、JIS R3502(NaO mg)の方法により化学的耐久性試験をおこなう。濃度(RO mg/l)は、以下の通りである。
NaO <0.7
O 12.9
LiO 3.6
【0024】
上記実施例から、化学的耐久性は、NaO濃度<1.0mg/lによって得られた。
【0025】
厚さ1.0mm以下の本発明による低酸化物ガラス及びガラス管を、光波吸収を313ナノメータ(nm)の波長幅で制御するようにして紫外線(UV)の透過率を試験した結果、透過率は、<2.0%であった。
【0026】
発明を実施するための最良の方法
上記「発明を実施するための形態」の欄で説明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸化ナトリウムガラス及びガラス管であって、
55.0〜70.0重量%のSiOと、
2.0〜4.0重量%のAlと、
9.0〜12.0重量%のBaOと、
3.0〜7.0重量%のMgO及びCaOと、
0〜0.15重量%のNaOと、
12.0〜14.0重量%のKOと、
2.0〜4.0重量%のLiOと、
0.1〜0.6重量%のCeOと、
2.0〜5.0重量%のSrOと、及び
0.03重量%のFeを含んでなる、低酸化ナトリウムガラス及びガラス管。
【請求項2】
電球の製造に好適な化学成分を含んでなり、
一般的にホウケイ酸ガラス製であるバックライト製造用ガラス管の代わりに使用することができる、請求項1に記載の低酸化ナトリウムガラス管。
【請求項3】
電球の製造に好適な化学成分を含んでなり、
軟化点が670〜700℃であり、他方、ホウケイ酸ガラスの軟化点が700℃未満であり、
ワーキングポイント(Tw)がホウケイ酸ガラスのものよりも高く、
ワーキングレンジが少なくとも450℃である、請求項1に記載の低酸化ナトリウムガラス管。
【請求項4】
電球の製造に好適な化学成分を含んでなり、
化学的耐久性を有してなり、
NaO濃度が1.0mg/l未満である、請求項1に記載の低酸化ナトリウムガラス管。
【請求項5】
厚さが1.0ミリメータ(mm)以下であり、
313ナノメータ(nm)の波長幅で制御された紫外線透過率が2.0%未満である、請求項1に記載の低酸化ナトリウムガラス管。
【請求項6】
他の分野に好適な化学成分を含んでなる、請求項1〜5の何れか一項に記載の低酸化ナトリウムガラス。

【公開番号】特開2009−227578(P2009−227578A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70344(P2009−70344)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(509081447)エル.ライティング、グラス、カンパニー、リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】L.LIGHTING GLASS COMPANY LIMITED
【Fターム(参考)】