説明

低NOx燃焼装置

【課題】 NOxおよびCOの洩れを防止して安全性を高めるとともに、触媒交換によるコストを低減すること。
【解決手段】 バーナ2と、吸熱手段3と、一酸化炭素を酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する触媒成分を有する触媒4と、燃料中に含まれ燃焼によって触媒4の被毒物質となる被毒元物質を吸着して除去する吸着剤を着脱自在に備えた被毒元物質除去手段10と、触媒4一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比を調整する制御手段9とを備える低NOx燃焼装置であって、被毒元物質除去手段10の吸着剤の重量を検出する重量検出手段28を備え、重量検出手段28による増加検出重量が設定値以上となると、吸着剤の吸着量が設定値以上となったことおよび/または吸着剤の交換を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水管ボイラ,吸収式冷凍機の再生器などに適用される低NOx燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼空気により燃焼させ、燃焼により酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成するバーナと、前記ガスから吸熱する吸熱手段と、この吸熱手段を通過後の前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する触媒成分を有する触媒と、燃料供給路に設けられ、燃料中に含まれ燃焼によって触媒の被毒物質となる被毒元物質(付臭剤でトラヒドロチオフェン,t-ブチルメルカプタンなど)を吸着して除去する吸着剤を着脱自在に備えた被毒元物質除去手段と、バーナの空気比を検出するためのセンサと、このセンサの検出信号に基づきバーナの空気比を設定空気比に制御する制御手段とを備え、バーナおよび吸熱手段は、制御手段により空気比を設定空気比に調整したとき、触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比を、触媒二次側の窒素酸化物濃度が実質的に零または所定値以下に、一酸化炭素濃度が実質的に零または所定値以下となる所定濃度比に調整するように構成される低NOx燃焼装置は、特許文献1にて知られている。
【0003】
この特許文献1では、高燃焼換算の運転時間が設定時間(たとえば1700時間)となると、吸着剤の交換時期を報知器にて報知するように構成されている。この燃焼時間による交換時期の報知では、正確に吸着量を検出することができない。仮に、交換時期が遅れ、被毒元物質が洩れると、燃料の燃焼により被毒物質が生成され、触媒自体が被毒して、触媒の性能は短時間(実験機でのテストでは数十時間)で低下し、交換しなければならなくなる。
【0004】
また、特許文献1のような低NOx燃焼装置では、高濃度のNOxおよびCOが触媒の上流側に存在するので、触媒の性能が低下すると、NOxおよびCOが下流側へ洩れる虞がある。また、触媒のイニシャル自体のコストが高いとともに、交換の作業コストが高いので、触媒交換に要する費用は、例えば、蒸発量が800Kg/h程度の蒸気ボイラの場合、数十万円/台と非常に高くなる。
【特許文献1】特開2008−267767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主課題は、特許文献1のような低NOx燃焼装置において、NOxおよびCOの洩れを防止して安全性を高めるとともに、触媒交換によるコストを低減することである。また、副課題は、燃焼装置の運転を停止することなく被毒元物質除去手段の交換を行えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、燃料を燃焼空気により燃焼させ、燃焼により酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成するバーナと、前記ガスから吸熱する吸熱手段と、この吸熱手段を通過後の前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する触媒成分を有する触媒と、燃料供給路に設けられ、燃料中に含まれ燃焼によって前記触媒の被毒物質となる被毒元物質を吸着して除去する吸着剤を備えた被毒元物質除去手段と、前記バーナの空気比を検出するためのセンサと、このセンサの検出信号に基づき前記バーナの
空気比を設定空気比に制御する制御手段とを備え、前記バーナおよび前記吸熱手段は、前記制御手段により前記空気比を前記設定空気比に調整したとき、前記触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比を、前記触媒二次側の窒素酸化物濃度が実質的に零または所定値以下に、一酸化炭素濃度が実質的に零または所定値以下となる所定濃度比に調整するように構成される低NOx燃焼装置であって、前記被毒元物質除去手段は、前記吸着剤の重量を検出する重量検出手段を備え、前記制御手段は、前記重量検出手段による増加検出重量が設定値以上となると、前記吸着剤の吸着量が設定値以上となったことおよび/または前記吸着剤の交換を報知することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記吸着剤の吸着量を重量で直接的に検出しているので、前記被毒元物質除去手段の吸着剤の交換時期を正確に報知して、前記被毒元物質除去手段の吸着剤を交換することができ、NOxおよびCOの洩れを防止して安全性を高めるとともに、触媒交換によるコストを低減できるという効果を奏する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記燃料供給路に複数の前記被毒元物質除去手段が並列に設けられるとともに、前記被毒元物質除去手段へ選択的に燃料を供給する制御弁を備え、前記制御手段は、燃料が供給されている前記被毒元物質除去手段の重量検出手段による増加検出重量が設定値以上となると、前記制御弁を制御して他の前記被毒元物質除去手段へ燃料を供給することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明による効果に加えて、燃焼装置の運転を停止することなく前記被毒元物質除去手段の吸着剤の交換を行えるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、NOxおよびCOが洩れを防止して安全性を高めるとともに、触媒交換によるコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第一実施形態の低NOx燃焼装置の概略構成を説明する説明図である。
【図2】同第一実施形態の低NOx燃焼装置の縦断面の説明図である。
【図3】同第一実施形態の要部の概略構成を説明する縦断面の説明図である。
【図4】同第一実施形態の要部制御手順を説明するフローチャート図である。
【図5】この発明の第二実施形態の要部の概略構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
ついで、この発明の低NOx燃焼装置を蒸気ボイラに適用した第一実施形態を図面に従い説明する。
【0013】
(第一実施形態の前提構成の説明)
まず、第一実施形態の蒸気ボイラ1の前提構成(特許文献1にて公知)について説明する。図1を参照して、蒸気ボイラ1は、燃焼により酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成するバーナ2と、このバーナ2にて生成されるガスから吸熱する吸熱手段3と、この吸熱手段2通過後のガスと接触して、一酸化炭素を酸化させるとともに窒素酸化物を還元させる触媒4と、バーナ2へガス燃料(燃料ガス)を供給する燃料供給手段5と、バーナ2へ燃焼空気を供給する燃焼空気供給手段6と、燃料供給手段5および/または燃焼空気供給手段6を制御(この第一実施形態では燃焼空気供給手段6のみを制御)してバーナ2の空気比を設定空気比に調整する空気比調整手段7と、触媒4の下流側(二次
側)において酸素濃度を検出するセンサ8と、このセンサ8などの信号を入力して燃料供給手段5,燃焼空気供給手段6,空気比調整手段7などを制御するこの発明の制御手段としての制御器9とを主要部として備えている。
【0014】
燃料供給手段5には、ガス燃料中に含まれ、硫黄成分を含み、燃焼によって被毒物質となる被毒元物質としての付臭剤を除去する被毒元物質除去手段10を備えている。吸熱手段2通過後のガスには、酸素,窒素酸化物および一酸化炭素をそれぞれ所定濃度比Kで含むが、炭化水素を含んでいない。被毒物質とは、触媒4の触媒成分に吸着しまたは化学的に反応して、触媒作用を阻害する物質のことをいい、被毒元物質(被毒原因物質と称することができる。)とは、燃料中に含まれ燃焼によって被毒物質となる物質をいい、硫黄成分を含む付臭剤などである。なお、特許文献1のように、被毒元物質を含めて被毒物質と称することができる。
【0015】
バーナ2は、平面状の燃焼面(予混合気の噴出面)を有する完全予混合式バーナであるが、これに限定されない。このバーナ2は、特許文献1に記載のバーナと同様の構成のバーナを用いている。
【0016】
吸熱手段2は、この第一実施形態では缶体であり、上部管寄せ11および下部管寄せ12を備え、この両管寄せ間に水管群13を構成する複数の内側水管14,14,…を配置して構成されている。そして、図2に示すように、吸熱手段(缶体)2の長手方向の両側部に外側水管15,15,…を連結部材16,16,…で連結して構成した一対の水管壁17,17を設け、この両水管壁17,17と上部管寄せ11および下管寄せ12との間にバーナ2からの燃焼反応中ガスおよび燃焼完結ガスがほぼ直線的に流通する第一ガス通路18を形成している。第一ガス通路18の一端にはバーナ2が設けられ、他端の排ガス出口19には排ガスが流通する第二ガス通路(煙道)20が接続されている。この第一実施形態においては、バーナ2および缶体3は、公知のものを用いている。
【0017】
触媒4は、炭化水素(HC)非存在下で水管群13を通過後の前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸化するとともに窒素酸化物を還元する機能を有し、本第一実施形態では、触媒活性物質を白金とした触媒を用いている。
【0018】
この触媒4は、低温域で酸化活性を有し、排ガス温度が約100℃〜350℃程度の位置に配置されている。そして、この触媒4は、性能が劣化した場合に交換可能なよう第二ガス通路20に設けている。
【0019】
燃料供給手段5は、燃料供給路としてのガス燃料供給管21と、このガス燃料供給管21に設けた燃料流量の調整用の流量調整弁22とを含んで構成されている。流量調整弁22は、燃料供給量を高燃焼用流量と低燃焼用流量とに制御する機能を有する。
【0020】
燃焼空気供給手段6は、送風機23と、この送風機23からバーナ2へ燃焼用空気を供給する給気通路24を含んで構成されている。給気通路24内へは、ガス燃料供給管21の先端に設けた噴出管(符号省略)からガス燃料を噴出するように構成されている。
【0021】
空気比調整手段7は、前記給気通路24の開度(流路断面積)を調整する流量調整手段としてのダンパ25と、このダンパ25の開度位置を調整するためのダンパ位置調整装置26と、このダンパ位置調整装置26の作動を制御する制御器9とを含んで構成されている。
【0022】
バーナ2および吸熱手段2は、制御器9により空気比を設定空気比に調整したとき、触媒4一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比Kを、触媒4二次側の
窒素酸化物濃度が実質的に零または所定値以下に、一酸化炭素濃度が実質的に零または所定値以下となる所定濃度比に調整するように構成されている。
【0023】
ここで、窒素酸化物濃度が実質的に零とは、好ましくは、5ppm,さらに好ましくは、3ppm,さらに好ましくは、零である。一酸化炭素濃度が実質的に零とは、30ppm,さらに好ましくは、10ppmである。また、空気比mは、m=21/(21−[O2])と定義する。
【0024】
より、具体的には、この第一実施形態においては、制御器9により空気比mを設定空気比に調整したとき、触媒4一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比Kを調整する濃度比調整を行うように構成されている。
濃度比調整は、下記の調整0,調整1,調整2のいずれかである。
調整0:濃度比Kを触媒4二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とする基準所定濃度比K0に調整する。
調整1:濃度比Kを、触媒4二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零とするとともに一酸化炭素濃度を所定値以下とする第一所定濃度比K1に調整する。
調整2:濃度比Kを、触媒4二次側の一酸化炭素濃度を実質的に零とするとともに窒素酸化物濃度を所定値以下とする第二所定濃度比K2に調整する。
【0025】
そして、触媒4は、調整0を行うと、それぞれ触媒4二次側の窒素酸化物濃度および一酸化炭素濃度を実質的に零とし、調整1を行うと触媒4二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零とするとともに一酸化炭素濃度を所定値以下とし、調整2を行うと触媒4二次側の一酸化炭素濃度を実質的に零とするとともに窒素酸化物濃度を所定値以下とする特性を有している。
【0026】
濃度比Kとは、一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度および酸素濃度の相互の関係を意味する。調整0における基準所定濃度比K0は、好ましくは、次式(1)の判定式にて判定され、好ましくは、次式(2)を満たし、第一所定濃度比K1を基準所定濃度比K0より小さく、第二所定濃度比K2を基準所定濃度比K0より大きくするように設定される。 ([NOx]+2[O])/[CO]=K …(1)
1.0≦K=K0≦2.0 …(2)
(式(1)において、[CO]、[NOx]および[O]はそれぞれ一酸化炭素濃度、窒素酸化物濃度および酸素濃度を示し、[O]>0の条件を満たす。)
【0027】
調整0の基準所定濃度比K0および調整1の第一所定濃度比K1は、次式(3)で包含して表現される。すなわち、式(3)を満たすと、触媒4二次側の窒素酸化物濃度を実質的に零とし、一酸化炭素濃度を実質的に零とするか、低減する。一酸化炭素濃度の低減を前記所定値以下とするには、濃度比Kの値がK0よりも小さい値となるように触媒4一次側の濃度比Kを調整し、第一所定濃度比K1とする。
([NOx]+2[O2])/[CO]=K≦2.0 …(3)
(式(3)において、[CO]、[NOx]および[O2]はそれぞれCO濃度、NOx濃度およびO2濃度を示し、[O2]>0の条件を満たす。)
【0028】
制御器9は、予め記憶した空気比制御プログラムにより、センサ8の検出信号に基づき、バーナ2の空気比が設定空気比となるように(第一制御条件)、かつこの設定空気比において触媒4への流入前のガスの濃度比が次式(3)を満たすように(第二制御条件)、ダンパ位置調整装置26を制御するように構成されている。
【0029】
(第一実施形態の特徴部分の構成の説明)
つぎに、この第一実施形態の特徴部分について説明する。この特徴部分は、被毒元物質
除去手段10に吸着剤27の重量を検出する重量検出手段28を備え、制御器9が、重量検出手段28による増加検出重量が設定値以上となると、吸着剤27の吸着量が設定値以上となったことおよび吸着剤27の交換が必要なことを報知器29にて報知するように構成したところにある。
【0030】
被毒元物質除去手段10は、ガス燃料供給管21に着脱自在に設けられ、少なくともガス燃料中に含まれ、硫黄成分を含む付臭剤を吸着除去する。被毒元物質除去手段10の具体的構成を図3に示す。
【0031】
被毒元物質除去手段10は、上面開口の容器30およびこの容器30の開口を開閉する蓋31からなる本体32と、容器30内に着脱自在に設けられる吸着剤収容体33と、吸着剤収容体33の重量を検出する重量検出手段28と、手動の第一開閉弁34を有する燃料流入管35(ガス燃料供給管21の一部を構成する)と、手動の第二開閉弁36を有する燃料流出管37(ガス燃料供給管21の一部を構成する)とを含んで構成されている。
【0032】
容器30の底面には、燃料流入管35の先端部を構成する流入部38と、燃料流出管37の入口側端部を構成する流出部39とが貫通して固定されている。また、容器30の底面には、容器30を安定的に支持する適数の支持脚40を備えている。
【0033】
吸着剤収容体33は、容器30内面と燃料の流通を許容する所定流通間隔41を存して支持される上面開口の内容器42と、この内容器42内に固定され燃料が流通可能な通気性の支持板43と、この支持板43によりこの上面側にて支持される吸着剤27とを含んで構成されている。吸着剤27は、被毒元物質としての付臭剤を吸着,または被毒元物質と反応する被毒元物質除去成分を含み、ゼオライトを主成分としたペレット状のものとされる。
【0034】
内容器42は、内容器42が吸着剤27の重量変化で上下に移動可能なように、その底面の開口部44に流入部38が貫通して支持されている。開口部44における流入部38の貫通は、燃料が漏れないようにシール(図示省略)して行う。また、内容器42の底面の支持は、重量検出手段28と流入部38により行われるが、必要であれば内容器42の側面の支持を別部材により行うように構成する。そして、吸着剤収容体33は、吸着剤27の交換時に、蓋31を開いて容器30の上面開口から取り出し可能に構成されている。
【0035】
また、被毒元物質除去手段10は、第一開閉弁34および第二開閉弁36を閉止した状態で配管を外することで、全体を取り外し可能に構成している。
【0036】
重量検出手段28は、容器30の内底面と内容器42の外底面との間に設けられ、ロードセルからなる重量センサ(図示省略)により、吸着剤収容体33の重量の増加(吸着剤27の重量の増加)を検出するもので、周知のロードセルによる重量検出機構を用いる。なお、重量検出手段28は、被毒元物質除去手段10の全体の重量を検出するものとし、全体重量の増加で吸着剤収容体33の重量の増加を検出するように構成することができる。この場合、前記重量センサは、支持脚39の下に設けることができる。
【0037】
そして、制御器9は、予め記憶したメンテナンスプログラムにより、重量検出手段28による増加検出重量が設定値以上となると、吸着剤27の吸着量が設定値以上となったことと、吸着剤27の交換が必要なことを報知器29にて表示して報知するように構成している。増加検出重量の前記設定値は、吸着剤27の反応が飽和状態となる値に設定している。また、増加検出重量の設定値以上の判定は、吸着剤27交換後の検出重量を初期検出値として、この初期検出値に前記設定値を加えた重量を検出したとき、設定値以上と判定する。
【0038】
(第一実施形態の動作)
次に、第一実施形態の動作を説明する。図4を参照して、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、吸着剤交換後の重量検出手段28による検出重量を初期検出値として記憶する。
【0039】
図3を参照して、ボイラ1の燃焼運転が行われると、燃料は、燃料流入管35の流入部38から内容器42内へ流入し、吸着剤27を通過後、容器30と内容器42の間の流通間隔41を通り、流出部39から燃料流出管37を経てバーナ2へ送られる。
【0040】
そして、燃料が吸着剤27を通過する際に、吸着剤27と接触し、燃料中に含まれる被毒元物質が除去される。この除去作用により、触媒4へ流入するガス中には、燃料に起因する被毒物質が含まれないことになる。その結果、被毒物質が触媒4と吸着,または反応することによる触媒作用の低下が防止される。こうして、燃料中に含まれる被毒元物質により影響を受けることなく、触媒4は所期の触媒性能(初期の性能)を発揮することができる。
【0041】
ボイラ1の燃焼時間が長くなるに連れて、吸着剤27による被毒物質の吸着量が増加し、吸着剤27の重量が増加する。図4を参照して、S2において、前記初期検出値からの増加検出重量が設定値以上かどうかを判定する。吸着剤27の吸着量が飽和状態となると、S2でYESが判定され、S3へ移行して、報知器29にて、「吸着量が設定値以上になったこと(吸着量が飽和状態であること)」を表示(報知1)するとともに、「吸着剤の交換要」を表示(報知2)する。なお、報知1,報知2は、いずれか一方のみとすることができる。
【0042】
この報知による警告に基づき、メンテナンス員は、吸着剤27の交換を行う。この交換は、つぎのようにして行う。ボイラ1の運転を停止し、第一開閉弁34および第二開閉弁36を閉止する。ついで、蓋31を開き、吸着剤収容体33を引き上げて、被毒元物質除去手段10外へ取り出す。その後、吸着剤27のみを新しい吸着剤27と交換する。そして、吸着剤27を交換した吸着剤収容体33を図3の状態にセットし、蓋31を閉じる。なお、吸着剤収容体33そのものを新しいものと交換することもできる。
【0043】
このように、第一実施形態によれば、吸着剤27の飽和を確実に検出して報知するので、吸着剤27の交換遅れによる被毒元物質の漏れをタイマ制御によるものと比較して確実に防止することができる。その結果、被毒元物質が洩れることによる触媒4の短時間の性能低下を防止し、触媒4自体が被毒して交換しなければならなくなるといった事態を回避できる。また、触媒4の性能が低下すると、触媒4の上流側に存在する高濃度のNOxおよびCOが触媒4の二次側に洩れる虞があるが、こうした不具合をも改善できる。
【0044】
<第二実施形態>
この発明は、前記第一実施形態に限定されるものではなく、図5に示す第二実施形態を含むものである。第二実施形態は、第一実施形態の被毒元物質除去手段10を複数並列に備えている。より具体的には、ガス燃料供給管21に複数の被毒元物質除去手段10が並列に設けられるとともに、被毒元物質除去手段10,10へ選択的に燃料を供給する制御弁(第一電磁弁45,第二電磁弁46、第三電磁弁47および第四電磁弁48)を備えている。そして、制御器9は、燃料が供給されている被毒元物質除去手段10の重量検出手段28による増加検出重量が設定値以上となると、前記制御弁を制御して他の被毒元物質除去手段10へ燃料を供給するように構成している。なお、第一電磁弁45および第三電磁弁47は一つの三方電磁弁(図示省略)に代えることができ、第二電磁弁46および第四電磁弁48も、他の一つの三方電磁弁(図示省略)に代えることができる。
【0045】
この第二実施形態の動作を説明する。今、第一電磁弁45および第二電磁弁46を開き、第三電磁弁47および第四電磁弁48を閉じて、図5の上側の被毒元物質除去手段10を使用しているとする。上側の被毒元物質除去手段10が飽和したとすると、制御器9は、第一電磁弁45および第二電磁弁46を閉じ、第三電磁弁47および第四電磁弁48を開いて下側の被毒元物質除去手段10を使用することで、ボイラ1の運転を継続する。そして、ボイラ1の運転継続状態で飽和した被毒元物質除去手段10の吸着剤27を交換できる。交換する際には、安全のために、各被毒元物質除去手段10の第一開閉弁34および第二開閉弁36を閉じる。
【0046】
この第二実施形態によれば、吸着剤27の飽和により、その交換が必要となってもボイラ1の燃焼運転を停止することなく、飽和した吸着剤27を交換することができる。
【0047】
この発明は、前記第一実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能である。この発明が適用される低NOx燃焼装置は、ボイラ1に限定されないものであり、給湯器,吸収式冷凍機の再生器などの燃焼装置(熱機器,燃焼機器または燃焼システムと称しても良い。)に適用される。また、第一実施形態では、空気比調整手段7をダンパによるものとしているが、送風機モータをインバータ制御するものすることができる。また、報知器29による報知は、視覚による報知に限定されず、聴覚を利用して報知するように構成することができる。また、報知器29をボイラ1から離れた位置にある管理装置や携帯電話(いずれも図示省略)とすることができる。さらに、特許文献1のように、触媒4の上流側に被毒物質除去手段(図示省略)を備えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 蒸気ボイラ(低NOx燃焼装置)
2 バーナ
3 吸熱手段
4 触媒
8 センサ
9 制御器(制御手段)
10 被毒元物質除去手段
27 吸着剤
28 重量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼空気により燃焼させ、燃焼により酸素,窒素酸化物および一酸化炭素を含むガスを生成するバーナと、前記ガスから吸熱する吸熱手段と、この吸熱手段を通過後の前記ガスに含まれる一酸化炭素を酸化し窒素酸化物を一酸化炭素により還元する触媒成分を有する触媒と、燃料供給路に設けられ、燃料中に含まれ燃焼によって前記触媒の被毒物質となる被毒元物質を吸着して除去する吸着剤を備えた被毒元物質除去手段と、前記バーナの空気比を検出するためのセンサと、このセンサの検出信号に基づき前記バーナの空気比を設定空気比に制御する制御手段とを備え、前記バーナおよび前記吸熱手段は、前記制御手段により前記空気比を前記設定空気比に調整したとき、前記触媒一次側のガス中の酸素,窒素酸化物および一酸化炭素の濃度比を、前記触媒二次側の窒素酸化物濃度が実質的に零または所定値以下に、一酸化炭素濃度が実質的に零または所定値以下となる所定濃度比に調整するように構成される低NOx燃焼装置であって、
前記被毒元物質除去手段は、前記吸着剤の重量を検出する重量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記重量検出手段による増加検出重量が設定値以上となると、前記吸着剤の吸着量が設定値以上となったことおよび/または前記吸着剤の交換を報知することを特徴とする低NOx燃焼装置。
【請求項2】
前記燃料供給路に複数の前記被毒元物質除去手段が並列に設けられるとともに、
前記被毒元物質除去手段へ選択的に燃料を供給する制御弁を備え、
前記制御手段は、燃料が供給されている前記被毒元物質除去手段の重量検出手段による増加検出重量が設定値以上となると、前記制御弁を制御して他の前記被毒元物質除去手段へ燃料を供給することを特徴とする請求項1に記載の低NOx燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36691(P2013−36691A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173528(P2011−173528)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】