説明

住宅の床着脱構造及び住宅の改装方法

【課題】 吹き抜け状態から床を設けた2層状態に容易に変更できるだけでなく、2層状態から吹き抜け状態にも極めて容易に変更することができるとともに、吹き抜け状態において、十分に開放的な吹き抜けとすることができる住宅の床着脱構造及び住宅の改装方法を提供する。
【解決手段】 上階と下階との間の開閉領域4を開放した吹き抜け状態と、開閉領域4を閉鎖した2層状態と、を相互に改装可能な住宅の床着脱構造1であって、住宅2の躯体に支持されて、開閉領域4の縁部に沿って配置された縁梁6と、2層状態のときに、両端が前記縁梁6に着脱可能に固定されて開閉領域4に架設される中間梁14と、2層状態のときに、端部が開閉領域4の縁部と中間梁14とに着脱自在に載置される複数の床材5と、吹き抜け状態のときに、開閉領域4の縁部に沿って縁部に着脱自在に固定する手すり7又は間仕切壁8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と、上階の床を取付けて前記開閉領域を閉じた2層状態と、を相互に改装可能な住宅の床着脱構造及び住宅の改装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数階層からなる住宅においては、上階及び下階の一部を吹き抜けとして形成することで、居住性や採光性を高めた住宅が多数提案されている。このような吹き抜けを設けることで、床面積は狭くなるものの、開放的で居住性に優れた住宅とすることができる。
【0003】
一方、建設当初は住宅に吹き抜けを設けたが、ライフスタイルや家族構成の変化等によっては、吹き抜け部分に床を設けて住宅を増床したい場合もある。このような場合に十分な強度を持った床を設置するために、住宅の建設当初から吹き抜け部分に梁を架設しておき、増床したいときに後施工床を梁に支持させる住宅の増床方法が提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−307509号公報
【特許文献2】特開平9−302953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような住宅の増床方法であっても、たとえ大掛かりな工事を行ったとしても増床した後の床を高い強度のものとすることができるか否かは、施工作業者が個別的に評価する必要がある。
【0005】
また、上述とは逆に建設当初は住宅に吹き抜けを設けなかったが、後に吹き抜けを設けたい場合には、建物の強度に応じて梁や上階の床及び下階の天井を新たに加工して、吹き抜けを設ける大掛かりな改装工事が必要となる。
【0006】
そこで本発明は、吹き抜け状態から床を設けた2層状態に容易に変更できるだけでなく、2層状態から吹き抜け状態にも極めて容易に変更することができ、いずれの状態とするかを任意に選択できる可逆性を有する住宅の床着脱構造及び住宅の改装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の住宅の床着脱構造は、複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と、前記開閉領域に床材を取付けて閉鎖させた2層状態と、を相互に改装可能な住宅の床着脱構造であって、前記住宅の躯体に支持されて、前記開閉領域の縁部に沿って配置された縁梁と、前記2層状態のときに、両端が前記縁梁に着脱可能に固定されて前記開閉領域に架設される中間梁と、前記2層状態のときに、端部が前記縁梁と前記中間梁とに着脱自在に固定される複数の床材と、前記吹き抜け状態のときに、前記開閉領域の縁部に沿って前記縁梁に着脱自在に固定される手すり又は間仕切壁と、を備えることことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の住宅の床着脱構造は、前記床材は、その下面に長手方向に沿って設けられるトラス構造の補強体を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の住宅の改装方法は、請求項1又は請求項2に記載の住宅の床着脱構造を用いて、前記吹き抜け状態と前記2層状態とを相互に変更する住宅の改装方法であって、前記吹き抜け状態から前記2層状態に改装する場合には、前記手すり又は前記間仕切壁を前記開閉領域の縁部から取外し、前記縁梁に前記中間梁を固定して、当該中間梁と前記開閉領域の縁部とに前記複数の床材を載置して床を形成するとともに、前記2層状態から前記吹き抜け状態に改装する場合には、前記床材及び前記中間梁を取り外して、前記手すり又は前記間仕切壁を前記開閉領域の縁部に固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の住宅の床着脱構造によると、開閉領域に床を取付けて閉鎖した2層状態のときには、開閉領域に架設される中間梁はその両端を住宅の躯体に支持される縁梁に固定されるので、中間梁は強固に支持される。そして、この中間梁と縁梁とに架け渡すように床材が載置されて着脱自在に固定される。したがって、床材は縁梁及び中間梁を介して住宅の躯体に支持されることとなり、2層状態のときに十分に強固で安全な床とすることができる。
【0011】
また、上階と下階との間の開閉領域を開放した吹き抜け状態のときには、開閉領域の縁部に沿って縁梁に固定される手すり又は間仕切壁が設置されるので、居住者が吹き抜けから落下するといった危険を抑制できる安全な吹き抜けにすることができる。特に、手すり又は間仕切壁は住宅の躯体に支持される縁梁に固定されるので、十分な強度で、安全に固定される。
【0012】
そして、縁梁、床材、手すり、及び間仕切壁はそれぞれ着脱自在に構成されているので、上階と下階との間の開閉領域を開放させた開放感のある吹き抜け状態と、開閉領域を閉じた床面積を広くすることができる2層状態と、に極めて簡単に且つ安全に改装することができる。すなわち、吹き抜け状態と2層状態とを任意に選択することができる。
【0013】
請求項2に記載の住宅の床着脱構造によると、床材は、その下面に長手方向に沿って設けられるトラス構造の補強体を備えるので、床材が撓むことや破損することを抑制することができ、2層状態のときに、より安全な床とすることができる。
【0014】
請求項3に記載の住宅の改装方法によると、吹き抜け状態から2層状態に改装する場合には、手すり又は間仕切壁を開閉領域の縁部から取外し、中間梁の両端それぞれを縁梁に固定して、中間梁と開閉領域の縁部とに複数の床材を載置して床を形成することで、極めて簡単に2層状態に改装することができ、2層状態から吹き抜け状態に改装する場合には、床材及び中間梁を取り外して、手すり又は間仕切壁を開閉領域の縁部に固定することで極めて簡単に吹き抜け状態に改装することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明における住宅の床着脱構造1及び住宅の改装方法の最良の実施形態について、図1から図7を参照しつつ説明する。まず本実施形態の住宅の床着脱構造1の概略構成について説明する。住宅の床着脱構造1は、図1に示すように、複数階層からなる住宅2の上階の床3の一部である所定の開閉領域4を開放した吹き抜け状態と、図2に示すように、床材5を開閉領域4に取付けて上階及び下階を遮断した2層状態と、のそれぞれの状態に改装可能に構成されている。なお、図1及び図2においては、図示の都合上、右手前側に配置される外壁9の記載を省略している。
【0016】
吹き抜け状態のときには、図1に示すように、開閉領域4の縁部22に沿って、手すり7又は間仕切壁8が設置されている。この手すり7及び間仕切壁8のいずれを設置するかは、住宅2における開閉領域4の位置や住宅2全体のレイアウトに合致するように任意に選択することができる。手すり7は、例えば金属製の棒材を組み合わせて形成された矩形フレーム10に下側に突出する脚部11を設けており、矩形フレーム10の内側には例えば強化プラスチック製などの強度の高い平板12が固定されている。なお、手すり7の材質及び形状は、これに限定されるものではなく、安全を確保できる強度を有する種々のものを用いることができる。
【0017】
図3に示すように、開閉領域4の縁部22の天井懐には、住宅2の図示しない構造躯体によって支持されるH型鋼製の縁梁6が、縁部22に沿って配置されている。この縁梁6の所定位置には取付金具13が例えばボルトなどの固定具20により固定されている。そして、手すり7を開閉領域4の縁部22に設置するときには、手すり7の脚部11は、この取付金具13に嵌合されて、ボルトにより締結される。このように構成されることで、手すり7はその脚部11が建物の構造躯体に支持される縁梁6に固定されるので、十分に安全な強度で開閉領域4の縁部22に配置される。また、手すり7は、ボルトを緩めることで簡単に取り外すことができ、開閉領域4を閉鎖させて2層状態とするときにも改装作業を簡単にすることができる。なお、吹き抜け状態のときには、開閉領域4の縁部22には、縁梁6及び取付金具13を覆い隠すカバー21が設けられている。
【0018】
間仕切壁8は、図示しないが、上端が上階の天井側に架設された梁にボルトなどにより着脱自在に固定されるとともに、下端が縁梁6に着脱自在に固定される例えば石膏ボード製の壁である。なお、間仕切壁8の材質は、石膏ボードに限定されるものではなく、木製、金属製、その他の種々の間仕切壁8を用いることができる。このように間仕切壁8の上端及び下端がそれぞれ梁に固定されることで、間仕切壁に十分な強度を持たせることができる。また、この間仕切壁8の上下端をそれぞれ梁から取り外すことで、間仕切壁8を簡単に取り外すことができ、簡単に住宅2の間取りの変更などを行うこともできる。
【0019】
2層状態のときには、図2及び図4に示すように、H型鋼により形成された中間梁14の両端が、それぞれ連結部材15を介して縁梁6に例えばボルトにより着脱自在に固定されて、開閉領域4に架設される。架設された中間梁14の上面には、所定間隔を開けて複数の束16がボルト固定されており、この束16の上面には例えば木製角材の床下地材17aが、ビスなどにより固定されている。また、図6に示すように、縁梁6に固定された取付金具13の上面にも例えば木製角材の床下地材17bが、ビスなどにより固定されている。
【0020】
そして、これら床下地材17a、17bに架け渡されるように平板上の床材5が載置されており、上階の床3と面一に配置されている。床材5は床下地材17a、17bにビスなどで着脱可能に固定されている。そして、この床材5の上面には、床面の装飾に用いる床仕上げシート18が貼着されている。床材5は矩形の平板であって、その長手方向が中間梁14に対して直行するように配置されており、開閉領域4の一方の縁部22から中間梁14までの距離とほぼ等しい長さに形成されており、複数の床材5を架け渡すことで開閉領域4を完全に覆うことができる。
【0021】
床材5の下面には、図5によく示されるように、その長手方向に沿って金属のパイプで形成されたトラス構造の補強体19が固定されており、床材5を鉛直方向の荷重に対して補強している。このように、床材5は、一端が中間梁14、束16、床下地材17aを介して、住宅2の構造躯体に支持される縁梁6によって支持されており、他端が取付金具13、床下地材17bを介して縁梁6によって支持されているので、十分な安全性を確保できる高い強度を有する床とすることができる。特に、補強体19が下面に固定されているので、より高い強度を有する床とすることができる。
【0022】
次に、以上のように構成される住宅の床着脱構造1を用いて吹き抜け状態と2層状態とを相互に変更する住宅の改装方法について説明する。まず2層状態から吹き抜け状態に改装する場合には、図7(a)に示すように、まず、複数の床材5を開閉領域4から取り外す。次に、床材5を支持していた床下地材17a及び束16を中間梁14から取外し、その後、縁梁6に固定された中間梁7を取り外す。このようにすると上階と下階との間を隔てる部材が全くなくなるので、開放感の高い吹き抜けとすることができる。そして、図7(b)に示すように、手すり7又は間仕切壁8を開閉領域4の縁部22に沿って配置し吹き抜け状態を完成させる。このように、床材5のみならず、中間梁14まで開閉領域4から取り外すことで、極めて開放感の高い吹き抜けとすることができる。
【0023】
一方、吹き抜け状態から2層状態に改装する場合には、図7(b)に示すように、手すり7又は間仕切壁8を開閉領域4の縁部22から取り外す。そして、図7(a)に示すように、中間梁14の端部を縁梁6に固定して、開閉領域4に架設する。次に、中間梁14の上部の所定位置に複数の束16の下端側をボルトなどで固定し、束16の上面に床下地材17aを固定する。そして、この床下地材17aと、縁梁6に固定された取付金具13の上面に固定されている床下地材17bと、に床材5を載置してビス固定し、床材の上面に床仕上シート18を貼着させて、2層状態を完成させる。
【0024】
このように、本実施形態の住宅の床着脱構造1及び住宅の改装方法を用いると、極めて簡単に住宅の一部を吹き抜け状態と2層状態とに改装することができ、家族構成の変化や生活スタイルが変化したような場合でも居住性の高い住宅とすることができる。
【0025】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る住宅の床着脱構造1及び住宅の改装方法は、将来的に吹き抜け部分を増床する住宅、又は、将来的に吹き抜け部分を設ける住宅に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】外壁の記載を省略した住宅の床着脱構造の吹き抜け状態を示す一部省略斜視図。
【図2】外壁の記載の省略した住宅の床着脱構造の2層状態を示す一部省略斜視図。
【図3】手すりを縁梁に固定する構造を示す図。
【図4】図2のA−A断面を説明する一部省略断面図。
【図5】図2のB−B断面を説明する、外壁を記載した一部省略断面図。
【図6】床材を床下地材に固定する構造を示す図。
【図7】吹き抜け状態と2層状態とを相互に改装する住宅の改装方法を説明する住宅の概略説明図。
【符号の説明】
【0028】
1 住宅の床着脱構造
2 住宅
4 開閉領域
5 床材
6 縁梁
7 手すり
8 間仕切壁
14 中間梁
19 補強体
22 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と、前記開閉領域に床材を取付けて閉鎖させた2層状態と、を相互に改装可能な住宅の床着脱構造であって、
前記住宅の躯体に支持されて、前記開閉領域の縁部に沿って配置された縁梁と、
前記2層状態のときに、両端が前記縁梁に着脱可能に固定されて前記開閉領域に架設される中間梁と、
前記2層状態のときに、端部が前記縁梁と前記中間梁とに着脱自在に固定される複数の床材と、
前記吹き抜け状態のときに、前記開閉領域の縁部に沿って前記縁梁に着脱自在に固定される手すり又は間仕切壁と、を備えることを特徴とする住宅の床着脱構造。
【請求項2】
前記床材は、その下面に長手方向に沿って設けられるトラス構造の補強体を備えることを特徴とする請求項1に記載の住宅の床着脱構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の住宅の床着脱構造を用いて、前記吹き抜け状態と前記2層状態とを相互に変更する住宅の改装方法であって、
前記吹き抜け状態から前記2層状態に改装する場合には、前記手すり又は前記間仕切壁を前記開閉領域の縁部から取外し、前記縁梁に前記中間梁を固定して、当該中間梁と前記開閉領域の縁部とに前記複数の床材を載置して床を形成するとともに、
前記2層状態から前記吹き抜け状態に改装する場合には、前記床材及び前記中間梁を取り外して、前記手すり又は前記間仕切壁を前記開閉領域の縁部に固定することを特徴とする住宅の改装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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