説明

住宅用壁掛け腰掛便器

【課題】住宅にて使用者が壁掛け便器に腰掛けたときに、便器本体が前方に傾きにくい住宅用壁掛け腰掛便器を提供する。
【解決手段】住宅用壁掛け腰掛便器は、便器本体と、床に固定されて設けられ、便器本体を床から浮かした状態で支持すると共に、便器本体の側方に設けられた一対の横壁に固定された支持部材とを備えている。便器本体に加わった下向きの力が、支持部材を介して横壁に対しても下向きの力として伝わり、床と横壁に分散される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅用壁掛け腰掛便器に関する。
【背景技術】
【0002】
腰掛便器を床から浮かせた状態で設置した壁掛け便器が知られている(例えば、特許文献1)。この壁掛け便器は、床の強度が十分確保されたパブリック向けによく採用されている。しかし、一般の住宅ではパブリック向けのトイレ室に比べて床の強度が不足していることが多い。このことから、住宅に壁掛け便器を設置した場合、使用者が着座すると、壁掛け便器を床上に支持するフレームが傾いて、便器本体が前方に倒れるように傾いてしまう懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−119870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、住宅にて使用者が壁掛け便器に腰掛けたときに、便器本体が前方に傾きにくい住宅用壁掛け腰掛便器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、便器本体と、床に固定されて設けられ、前記便器本体を前記床から浮かした状態で支持すると共に、前記便器本体の側方に設けられた一対の横壁に固定された支持部材と、を備え、前記便器本体に加わった下向きの力が、前記支持部材を介して前記横壁に対しても下向きの力として伝わり、前記床と前記横壁に分散されることを特徴とする住宅用壁掛け腰掛便器である。
【0006】
第1の発明によれば、床と共に横壁も便器本体に加わった下向きの力を負担し、支持部材の下の床部分にかかる下向き荷重が軽減する。これにより、床のたわみが抑制され、便器本体が前方へ倒れるように傾くことを抑制できる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記支持部材は、前記便器本体の後ろ側で床上に支持されて前記床の上方に延在して設けられ、前記便器本体が取り付けられた縦フレームと、前記縦フレームに固定されて前記縦フレームに支持されると共に、前記横壁に向けて延在する端部が前記横壁に固定された横フレームと、を有することを特徴とする。
【0008】
第2の発明によれば、簡単な構成で、便器本体に加わった下向きの力を、横壁に対しても下向きの力として伝えて横壁に分散させることができる。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、前記横フレームは、前記便器本体の上面よりも上方で前記縦フレームに支持されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明によれば、便器本体の真後ろに横フレームがないため、便器本体に対する給水管や排水管の接続作業がしやすい。
【0011】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれか1つにおいて、前記横壁は、前記便器本体が設置される室の壁とは別に、前記室内における前記便器本体の側方に設けられたことを特徴とする。
【0012】
第4の発明によれば、支持部材を固定させるのに適した横壁が躯体になくても対応できる。
【0013】
第5の発明は、第2〜第4の発明のいずれか1つにおいて、前記便器本体の後方に設けられ、前記横フレームを上下に挟んで分割されたキャビネット板をさらに備えたことを特徴とする。
【0014】
第5の発明によれば、キャビネット板を設置するにあたって横フレームの存在が障害にならず、施工性がよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、着座した使用者に不快感を感じさせない住宅用壁掛け腰掛便器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は第1実施形態の壁掛け腰掛便器の斜視図であり、(b)は同壁掛け腰掛便器の側面図。
【図2】図1(a)における後ろ側から見た壁掛け腰掛便器の斜視図。
【図3】第1実施形態の壁掛け腰掛便器における支持部材の斜視図。
【図4】第1実施形態の壁掛け腰掛便器にキャビネット板を組み合わせた状態の斜視図。
【図5】第1実施形態の支持部材が固定される横壁の変形例を表す斜視図。
【図6】(a)は第2実施形態の壁掛け腰掛便器の上面図であり、(b)は同壁掛け腰掛便器の正面図。
【図7】第2実施形態の壁掛け腰掛便器の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0018】
(第1実施形態)
図1(a)は、第1実施形態の壁掛け腰掛便器10の斜視図であり、図1(b)はその壁掛け腰掛便器10の側面図である。
図2は、図1(a)における後ろ側から見た壁掛け腰掛便器10の斜視図である。
【0019】
実施形態の壁掛け腰掛便器10は、便器本体11と、支持部材20とを備えている。
【0020】
便器本体11は、大便器やビデなどの使用者が腰掛けて使う便器である。便器本体11の後部13が、支持部材20に対して取り付けられている。
【0021】
支持部材20は、便器本体11を床100から浮かした状態で支持する。支持部材20は、床100に対して固定されている。さらに、支持部材20は、便器本体11の側方に設けられた一対の横壁200(図1において2点鎖線で表す)に対して固定されている。一対の横壁200は、便器本体11を挟んで平行に向き合っている。
【0022】
図3(a)は、支持部材20における便器本体11が取り付けられる正面側から見た斜視図であり、図3(b)は、図3(a)における後ろ側から見た支持部材20の斜視図である。
【0023】
支持部材20は、一対の載置部22と、一対の縦フレーム21と、前パネル23と、横フレーム26とを有する。
【0024】
載置部22は、図1(b)に示すように、便器本体11の後方の床面100aに載置され、例えばボルトで床100に固定される。縦フレーム21は、載置部22に対して固定され、載置部22から上方に延在している。載置部22及び縦フレーム21は一体に形成され、縦フレーム21の前面部21aから載置部22にかけてL字状になっている。
【0025】
一対の載置部22及び一対の縦フレーム21は、一対の横壁200の間で、一対の横壁200を結ぶ方向に並んで配置されている。それら一対の縦フレーム21の前面部21aの間に、前パネル23が設けられている。前パネル23は、縦フレーム21の前面部21aに対して例えばボルトで固定されている。前パネル23には、開口23aが形成されている。
【0026】
一対の縦フレーム21の上部に、横フレーム26が固定されている。横フレーム26は、一対の縦フレーム21のそれぞれに対してボルト31で固定されて、一対の縦フレーム21に対して支持されている。
【0027】
縦フレーム21は、床面100aから鉛直方向に上方に延在しており、横フレーム26は、鉛直方向に対して直交する水平方向に延在している。さらに具体的には、横フレーム26は、対向する一対の横壁200を結ぶ方向に延在し、その両端部のそれぞれが一対の横壁200に対して固定されている。
【0028】
横フレーム26は、上記水平方向に延在するフレーム本体27と、フレーム本体27の長手方向の両端部に取り付けられた一対のスライド部28とを有する。
【0029】
フレーム本体27は、一対の縦フレーム21及び前パネル23に対してボルト31で固定されている。スライド部28は、フレーム本体27の端部に、水平方向にスライド自在に取り付けられている。スライド部28の端部には、横壁200に対する取付部29が設けられている。スライド部28のスライドに伴い、取付部29も水平方向にスライドする。取付部29は、横壁200に対して平行な板状に形成されている。
【0030】
縦フレーム21は、便器本体11の後ろ側で載置部22を介して床面100a上に支持されて、上方(鉛直方向)に延在している。横フレーム26は、床面100aを上方から見た平面視で、一対の縦フレーム21の真上の位置を、水平方向であって且つ一対の横壁200を結ぶ方向に延びている。
【0031】
載置部22は床100に対してボルトで固定される、したがって、縦フレーム21も床100に対して固定される。横フレーム26の両端部に取り付けられたスライド部28の取付部29は、ボルトで横壁200に対して固定される。横壁200の強度が十分でない場合には、例えば合板などで補強した横壁200に対して横フレーム26の取付部29が固定される。
【0032】
このとき、スライド部28は、一対の横壁200間を結ぶ方向にスライド自在であるため、様々な横壁200間の距離に対応できる。すなわち、横フレーム26全体の長さは固定されておらず、壁掛け腰掛便器10を設置するトイレ室における一対の横壁200間の距離に応じてスライド部28をスライドさせて、横フレーム26の長さを調整できる。
【0033】
便器本体11は、図1(a)、(b)および図2に示すように、支持部材20の前方の空間に設けられる。支持部材20の前方の空間とは、支持部材20の縦フレーム21の前面部21aが面する空間である。
【0034】
便器本体11は、前部12と、前部12の反対側に設けられた後部13とを有し、後部13には図2に示す給水口14と排水口15が形成されている。便器本体11の後部13が、2本のボルト31によって、縦フレーム21及び横フレーム26に対して固定される。
【0035】
給水口14は便器本体11の後部13の上部に形成され、その下に排水口15が形成されている。2本のボルト31は、便器本体11の後部13における給水口14を横方向(横フレーム26の延在方向)に挟む位置を貫通する。縦フレーム21に対する横フレーム26及び便器本体11の取り付けには、同じボルト31が兼用して使われている。
【0036】
図3(a)に示すように、支持部材20の前パネル23の下部には、前方に突出した便器受け部25が設けられている。便器受け部25は、例えば円板状に形成され、図1(b)に示すように、便器本体11の後部13の下部を受ける。すなわち、便器本体11の後部13の下部は便器受け部25に当接し、便器本体11の下部の後方(支持部材20側)への移動が規制される。これにより、便器本体11の下部は、便器受け部25によって位置決めされて支えられる。
【0037】
便器本体11の後方には、図4に示すように、キャビネット板が設置される。図4は、便器本体11及び支持部材20の後方側から見た斜視図である。
【0038】
キャビネット板は、天板41と、上部前板42と、下部前板43と、一対の上部側板44と、一対の下部側板45と、一対の扉板46とを含む。これらキャビネット板によって、便器本体11側から見て、支持部材20は覆い隠される。
【0039】
上部前板42は、横フレーム26のフレーム本体27の上方に設けられている。下部前板43は、上部前板42の下方に設けられ、フレーム本体27の前面を覆い隠している。
【0040】
一対の下部側板45は、一対の縦フレーム21を、横フレーム26の延在方向に挟む位置に設けられている。それぞれの下部側板45は、逆L字状に形成されている。一対の下部側板45は、横フレーム26の下方で、下部前板43の裏面または幅方向(横フレーム26の延在方向)の縁部に取り付けられている。
【0041】
一対の下部側板45のそれぞれの上に一対の上部側板44が設けられている。上部側板44は、横フレーム26よりも上方に延在し、その部分が上部前板42の裏面または幅方向(横フレーム26の延在方向)の縁部に取り付けられている。
【0042】
上部側板44における下部の前端側には切欠き44aが形成されている。その切欠き44aの内側に、横フレーム26が位置している。すなわち、横フレーム26は、下部側板45の上であって、上部側板44の切欠き44aの内側を水平方向に貫通している。
【0043】
上部側板44と下部側板45とは、横フレーム26を上下に挟んで分割されている。したがって、便器本体11の後方の奥行き方向に延在する側板と呼ばれるキャビネット板を設置するにあたって、横フレーム26の存在が障害にならず、施工性がよい。
【0044】
上部側板44及び下部側板45には、扉板46が連結されている。扉板46は、上部側板44及び下部側板45よりも横フレーム26のスライド部28側に設けられ、そのスライド部28の前面を覆い隠している。
【0045】
上部前板42、一対の上部側板44および一対の扉板46の上端部の上に、天板41が設けられている。天板41、上部前板42および一対の上部側板44によって区画された空間には、便器本体11に給水される水を貯留する給水タンクが設けられる。給水タンクは、図示しない給水管を通じて、図2に示す便器本体11の給水口14に接続される。
【0046】
図3(a)及び(b)に示すように、横フレーム26のフレーム本体27には凹状の切欠き27aが形成され、前パネル23にも凹状の切欠き23bが形成されている。これら切欠き27a、23bは、図2に示すように、便器本体11の後部13に形成された給水口14に対応する位置に形成され、その切欠き27a、23bの内側を給水管が通されて給水口14に接続される。
【0047】
図4において、天板41、上部側板44および扉板46によって区画された空間は、収納空間として使われる。横フレーム26よりも下方における下部前板43の後方の空間には、排水管などが設けられる。排水管は、支持部材20の前パネル23に形成された開口23aおよび下部前板43に形成された開口を通じて、便器本体11の後部13に形成された排水口15(図2に示す)に接続される。
【0048】
便器本体11は、床面100aから浮いた状態で支持部材20に支持されている。したがって、便器本体11の底部と、床面100aとの間に空間があり、清掃性やメンテナンス性に優れる。
【0049】
使用者が便器本体11の便座に着座すると、図1(a)及び(b)において矢印Aで表すように便器本体11に下向きの力が加わる。この下向きの力Aは、床100と横壁200に分散されて伝わる(加わる)。すなわち、便器本体11に加わった下向きの力Aは、支持部材20の縦フレーム21を介して床100に下向きの力a1として伝わり、さらに横フレーム26を介して横壁200に対しても下向きの力a2として伝わる。したがって、便器本体11に加わった下向きの力が、縦フレーム21の下の床に集中せず、横壁200にも分散される。
【0050】
床面100aを上方から見た平面視で、横フレーム26は、縦フレーム21の真上で、一対の横壁200に向けて延び、その両端部が横壁200に固定されている。
【0051】
このため、便器本体11、縦フレーム21および横フレーム26は、縦フレーム21を支える床の部分を支点とした、てこのようには機能しない。すなわち、支点を挟んで力点と作用点とが位置しない。
【0052】
したがって、便器本体11に加わった下向きの力を、横フレーム26を介して横壁200に対しても下向きの力として伝えることができる。すなわち、便器本体11に加わった下向きの力を、横壁200も下向きの荷重を受けて負担することができる。
【0053】
横壁200も便器本体11に加わった下向きの力を負担することで、縦フレーム21の下の床部分にかかる下向き荷重が軽減する。これにより、床のたわみが抑制され、便器本体11が前方へ倒れるように傾くことを抑制できる。この結果、床の破損を防ぐことができ、また使用者に不快感や不安感を感じさせない。また、パブリック向けに比べて強度が弱いことが多い住宅用の床に特別な補強を施さなくても、壁掛け便器の設置が可能になり、コストアップをまねかない。
【0054】
また、横フレーム26を、縦フレーム21の真上に設けることで、支持部材20全体の奥行き寸法(便器本体11側からその後方への奥行き寸法)の増大を抑えることができる。
【0055】
便器本体11の後方のキャビネット設置スペースの奥行き方向の寸法は様々である。便器本体11の後ろ側で便器本体11を支持する支持部材20の奥行き方向の寸法が小さいことで、様々な奥行き方向寸法のキャビネット設置スペースに対応しやすくなる。キャビネット設置スペースの奥行き方向寸法に合わせて、支持部材20の奥行き方向寸法の設計を変更する必要性を低くできる。
【0056】
横フレーム26の両端部が固定される横壁は、壁掛け腰掛便器10が設置されるトイレ室の壁に限らない。例えば、大便器と小便器とが設けられた広いトイレ室の場合、そのトイレ室の壁とは別に、トイレ室内における便器本体11の側方に横壁を設けてもよい。
【0057】
その場合の支持部材20及び横壁50を、図5に示す。
【0058】
図5に示す例では、横フレーム26の長手方向の一方の端部は、トイレ室の横壁200(躯体の横壁)に固定され、他方の端部が、躯体の横壁200とは別に設置された横壁50に固定される。
【0059】
その横壁50は、トイレ室内における任意の位置に、後から施工することができる。したがって、その横壁50に対して固定される横フレーム26の端部にはスライド部28は設けてなくてもよい。横壁50は、躯体の対向する一対の横壁200の間に設置される。
【0060】
横壁26は、支持部材20の一方の縦フレーム21の側方に設けられた前側縦フレーム51と、前側縦フレーム51よりも支持部材20の後方に設けられた後側縦フレーム52と、それら前側縦フレーム51と後側縦フレーム52との間に設けられた側面フレーム53とを有する。前側縦フレーム51、後側縦フレーム52および側面フレーム53は、一体に形成されている。
【0061】
前側縦フレーム51の下端部には、下方に向けて延びるロッド54が設けられている。そのロッド54は、床面の下で、例えばコンクリート製の床スラブに固定される。これにより、横壁50は、床面上で強固に支えられる。
【0062】
後側縦フレーム52の下端部は、壁固定フレーム55上に固定されている。壁固定フレーム55は、後側縦フレーム52の下端部から、反対側の躯体の横壁200に向けて延びている。壁固定フレーム55は、トイレ室の後壁に対して固定される。
【0063】
支持部材20の横フレーム26における横壁50側の端部は、前側縦フレーム51と側面フレーム53とのコーナー部に固定されている。
【0064】
躯体の横壁200とは別に設けられた横壁50に対して支持部材20の横フレーム26の端部を固定させることで、躯体における対向する一対の横壁間の距離が長い広いトイレ室であっても対応できる。
【0065】
なお、横フレーム26の一方の端部に限らず、両端部を躯体の横壁とは別に設けられた横壁に固定させてもよい。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の壁掛け腰掛便器について説明する。図面において、第1実施形態と同じ要素には、同じ符号を付している。
【0067】
図6(a)は、第2実施形態の壁掛け腰掛便器の上面図であり、図6(b)は、その壁掛け腰掛便器の正面図である。
図7は、第2実施形態の壁掛け腰掛便器の側面図である。
【0068】
この第2実施形態では、支持部材60が第1実施形態と異なる。
【0069】
支持部材60は、一対の載置部62と、一対の縦フレーム61と、横フレーム63とを有する。
【0070】
載置部62は、図7に示すように、便器本体11の後方の床面100aに載置され、ボルトで床100に固定される。縦フレーム61は、載置部62に対して固定され、載置部62から上方に延在している。載置部62及び縦フレーム61は一体に形成されている。一対の載置部62及び一対の縦フレーム61は、一対の横壁200の間で、一対の横壁200を結ぶ方向に並んで配置されている。
【0071】
一対の縦フレーム61の上部に横フレーム63が設けられ、横フレーム63は一対の縦フレーム61に対して支持されている。一対の縦フレーム61及び横フレーム63は一体形成されている。
【0072】
縦フレーム61は、床面100aから鉛直方向に上方に延在しており、横フレーム63は、鉛直方向に対して直交する水平方向に延在している。さらに具体的には、横フレーム63は、対向する一対の横壁200を結ぶ方向に延在し、その両端部のそれぞれが一対の横壁200に対して固定されている。
【0073】
横フレーム63は、上記水平方向に延在するフレーム本体64と、フレーム本体64の長手方向の両端部に取り付けられた一対のスライド部65とを有する。
【0074】
フレーム本体64は、一対の縦フレーム61に対して一体に設けられている。スライド部65は、フレーム本体64の端部に、水平方向にスライド自在に取り付けられている。スライド部65の端部には、横壁200に対する取付部66が設けられている。スライド部65のスライドに伴い、取付部66も水平方向にスライドする。取付部66は、横壁200に対して平行な板状に形成されている。
【0075】
縦フレーム61は、便器本体11の後ろ側で載置部62を介して床面100a上に支持されて、上方(鉛直方向)に延在している。横フレーム63は、床面100aを上方から見た平面視で、一対の縦フレーム61の真上の位置を、水平方向であって且つ一対の横壁200を結ぶ方向に延びている。
【0076】
載置部62は床100に対してボルトで固定される、したがって、縦フレーム61も床100に対して固定される。横フレーム63の両端部に取り付けられたスライド部65の取付部66は、ボルトで横壁200に対して固定される。横壁200の強度が十分でない場合には、例えば合板などで補強した横壁200に対して横フレーム63の取付部66が固定される。
【0077】
このとき、スライド部65は、一対の横壁200間を結ぶ方向にスライド自在であるため、様々な横壁200間の距離に対応できる。すなわち、横フレーム63全体の長さは固定されておらず、壁掛け腰掛便器を設置するトイレ室における一対の横壁200間の距離に応じてスライド部65をスライドさせて、横フレーム63の長さを調整できる。
【0078】
便器本体11は、支持部材60の前方の空間に設けられる。便器本体11の後部13が、2本のボルト31によって、一対の縦フレーム61に対して固定される。
【0079】
図6(b)に示すように、一対の縦フレーム61の下部には、一対の縦フレーム61間をつなぐ補強フレーム69が設けられている。補強フレーム69は、一対の縦フレーム61に対して直交する水平方向に延在している。また、ボルト31の取付部の下にも、水平方向に延在して一対の縦フレーム61間をつなぐ補強フレーム68が設けられている。
【0080】
補強フレーム69には、図7に示すように、便器本体11側に突出した便器受け部25が設けられている。便器受け部25は、例えば円板状に形成され、便器本体11の後部13の下部を受ける。すなわち、便器本体11の後部13の下部は便器受け部25に当接し、便器本体11の下部の後方(支持部材60側)への移動が規制される。これにより、便器本体11の下部は、便器受け部25によって位置決めされて支えられる。
【0081】
本実施形態においても、便器本体11は、床面100aから浮いた状態で支持部材60に支持されている。したがって、便器本体11の底部と、床面100aとの間に空間があり、清掃性やメンテナンス性に優れる。
【0082】
使用者が便器本体11の便座に着座すると、図7に示すように便器本体11に下向きの力Aが加わる。この下向きの力Aは、床100と横壁200に分散されて伝わる(加わる)。すなわち、便器本体11に加わった下向きの力Aは、支持部材60の縦フレーム61を介して床100に下向きの力a1として伝わり、さらに横フレーム63を介して横壁200に対しても下向きの力a2として伝わる。したがって、便器本体11に加わった下向きの力が、縦フレーム61の下の床に集中せず、横壁200にも分散される。
【0083】
床面100aを上方から見た図6(a)の平面視で、横フレーム63は、縦フレーム61の真上で、一対の横壁200に向けて延び、その両端部が横壁200に固定されている。
【0084】
このため、便器本体11、縦フレーム61および横フレーム63は、縦フレーム61を支える床の部分を支点とした、てこのようには機能しない。すなわち、支点を挟んで力点と作用点とが位置しない。
【0085】
したがって、便器本体11に加わった下向きの力を、横フレーム63を介して横壁200に対しても下向きの力として伝えることができる。すなわち、便器本体11に加わった下向きの力を、横壁200も下向きの荷重を受けて負担することができる。
【0086】
横壁200も便器本体11に加わった下向きの力を負担することで、縦フレーム61の下の床部分にかかる下向き荷重が軽減する。これにより、床のたわみが抑制され、便器本体11が前方へ倒れるように傾くことを抑制できる。この結果、床の破損を防ぐことができ、また使用者に不快感や不安感を感じさせない。また、パブリック向けに比べて強度が弱いことが多い住宅用の床に特別な補強を施さなくても、壁掛け便器の設置が可能になり、コストアップをまねかない。
【0087】
横フレーム63は、図7に示すように、便器本体11がボルト31によって縦フレーム61に対して取り付けられた部分よりも上方であって、さらに便器本体11の上面よりも上方で縦フレーム61に支持されている。
【0088】
便器本体11の真後ろに横フレーム63がないため、便器本体11に対する給水管や排水管の接続作業がしやすい。
【0089】
また、横フレーム63を、縦フレーム61の真上に設けることで、支持部材60全体の奥行き寸法(便器本体11側からその後方への奥行き寸法)の増大を抑えることができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10…壁掛け腰掛便器、11…便器本体、20,60…支持部材、21,61…縦フレーム、26,63…横フレーム、22,62…載置部、200,50…横壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、
床に固定されて設けられ、前記便器本体を前記床から浮かした状態で支持すると共に、前記便器本体の側方に設けられた一対の横壁に固定された支持部材と、
を備え、
前記便器本体に加わった下向きの力が、前記支持部材を介して前記横壁に対しても下向きの力として伝わり、前記床と前記横壁に分散されることを特徴とする住宅用壁掛け腰掛便器。
【請求項2】
前記支持部材は、
前記便器本体の後ろ側で床上に支持されて前記床の上方に延在して設けられ、前記便器本体が取り付けられた縦フレームと、
前記縦フレームに固定されて前記縦フレームに支持されると共に、前記横壁に向けて延在する端部が前記横壁に固定された横フレームと、
を有することを特徴とする請求項1記載の住宅用壁掛け腰掛便器。
【請求項3】
前記横フレームは、前記便器本体の上面よりも上方で前記縦フレームに支持されていることを特徴とする請求項2記載の住宅用壁掛け腰掛便器。
【請求項4】
前記横壁は、前記便器本体が設置される室の壁とは別に、前記室内における前記便器本体の側方に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の住宅用壁掛け腰掛便器。
【請求項5】
前記便器本体の後方に設けられ、前記横フレームを上下に挟んで分割されたキャビネット板をさらに備えたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の住宅用壁掛け腰掛便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2153(P2013−2153A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134810(P2011−134810)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】