体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体、およびこれを用いて体内半減期を増加させる方法
本発明は、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体、およびこれを用いて体内半減期を増加させる方法に関する。本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドをアルファ−1アンチトリプシンもしくは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体に結合させて体内持続性を維持することで血中半減期(T1/2)が固有の生理活性タンパク質もしくは生理活性ペプチドより、著しく増加して体内安定性に優れる。よって、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、タンパク質またはペプチド薬物の持続性製剤の開発に有用に使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体、およびこれを用いて体内半減期を増加させる方法に関することである。
【背景技術】
【0002】
既存のタンパク質およびペプチド医薬品は、一般化学合成医薬が提供していない治療効果を示し、優れた効能を発揮することにより、医薬治療剤分野で重要な領域を占めている。例えば、遺伝子組み換えのヒト成長ホルモン(hGH、recombinant human growth hormone)は成長ホルモン欠乏症の効果的な治療剤として唯一に使われており、遺伝子組み換えの赤血球促進因子(EPO、recombinant human erythropoietin)は腎臓異常による貧血患者の赤血球濃度を上昇させる薬として使われており、遺伝子の組み換え顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF、recombinant granulocyte colony stimulating hormone)は化学的治療を受ける癌患者の白血球を増加させる唯一の薬として使われている。この他にも、人体に存在する様々な種類のサイトカイン(cytokine)、ホルモン、ペプチドなどが、代替治療剤のない場合に唯一の治療剤として広範囲に使われている。
【0003】
ところが、これらのタンパク質またはペプチド治療剤は、体内で優れた治療効果を発揮するが、一般的に血液内の加水分解酵素によって分解されて注射後に治療効果が直ちに消失してしまうか、或いは腎臓または肝を通じて容易に体内で除去されるため、短い半減期を持っている。よって、これらのタンパク質またはペプチド治療剤は、体内で一定の血中濃度および力価を維持するためには頻繁に注射を行わなければならないという脆弱点を持っている。タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の頻繁な注射は注射の恐怖心や注射時の通症など患者の薬物順応度を減少させ、長期間の治療を要する場合には制限的に使用されるため治療効果も低下するという欠点がある。
【0004】
したがって、タンパク質/ペプチド薬物の血中安定性を増加させ、血中薬物濃度を長らく維持するための研究が引き続き行われてきた。
【0005】
このような研究の一例として、タンパク質またはペプチドを体内で自然分解させるポリマーを用いて封入した後、皮下または筋肉を注射し、体内で徐々に放出させる徐放型(sustained release)治療剤が開発された(M. Chasin & R. Langer, et al., Biodegradable polymer as drug delivery system, Marcel Dekker (1990); J. Heller, et al., Adv. Drug Del Rev., 10, 163 (1993))。生体内で分解されるポリマーとしてはPLGA(poly(lactic-co-glycolic acid))が最も多く使用され、前記徐放型治療剤の代表的な例としてはLHRH(luteinizing hormone-releasing hormone)作用剤(agonist)のペプチドを徐放性ペプチドとして製造した製品があり、この製品は1ヶ月または3ヶ月以上体内でペプチドを放出することもある。また、このような研究は分子量の大きいタンパク質にも適用された。その一例として、米国登録特許第6,500,448号には生分解性高分子と金属イオンを通してヒト成長ホルモンの徐放性微細粒子を製造する技術について記載されている。韓国登録特許第10−0236771号および同第10−0329336号には組み換えヒト成長ホルモンを体内で分解させるヒアルロン酸を用いたタンパク質薬物の徐放性微細粒子剤形について記載されている。
【0006】
しかし、生体分解性ポリマーを用いた徐放型治療剤は、アミノ酸の数が少ない分子量を有するペプチドではある程度成功を得たが、分子量の大きいタンパク質治療剤の場合は成功が制限的であった。その理由は、徐放出性封入体を作る過程でタンパク質の変性が容易に起こってアミノ酸の変形がタンパク質の力価を低下させるとともに、人体で望まない免疫反応を引き起こすためである。また、一般的にタンパク質またはペプチド徐放出性封入体の微細粒子の場合、粒子サイズが大きいため、人体に注射するときに注射針の太い注射器を使用しなければならないという欠点があり、製造過程における低い生産収率が経済性の側面で問題となることもある。
【0007】
上記のような問題点を克服するために、タンパク質またはペプチドの腎臓透過を遅延させるための方法が研究された。一般的に、分子量60,000ダルトン以下のタンパク質は、体内で腎臓の濾過体に濾されずそのまま通過する。よって、これより少ない分子量を有するペプチドまたはタンパク質治療剤の大きさを増加させて体内残留時間を増加させることで注射回数を減らそうとする方法が研究された。このような方法によれば、生理活性のあるタンパク質/ペプチドは体内で徐々に放出(sustained release)される形態ではなく、持続性(long-acting)の作用を果たすことができるものと考えられる。
【0008】
注射回数を減らす方法の中でも最も普遍的に用いられる方法としては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、以下「PEG」という)のように溶解度の高い高分子物質を、タンパク質または薬理活性を持つペプチドの表面に付着させる方法がある。PEGはタンパク質またはペプチドのアミン基を有するアミノ酸に非特異的に付着し、PEGの付着されたタンパク質は溶解度が増加し、水溶液の状態で流体力学的体積(hydrodynamic volume)が増加して人体への注射の際に体内に長らく止まるという効果がある(Sada et al., J. Ferment Bioeng 71, 137-139, 1991)。
【0009】
最近では、インターフェロンαにPEGを付着させて注射回数を減らそうとする方法が商用化された。また、Kinstler等は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)にPEGを付着させ、週1回注射しても、週3回注射する顆粒球コロニー刺激因子と同一の薬効立証した(Kinstler et al., Pharm Res 12, 1883-1888, 1995)。前記PEG−GCSFは「Neulast」という商品名で許可を受けて使用されている。
【0010】
しかし、タンパク質にPEGが付着すると、PEGのタンパク質の表面にPEGが非特異的に化学結合を成すため、PEGの付着したタンパク質の部分が受容体との結合を妨害してタンパク質の生体内力価が著しく低下するという問題がある。また、生理活性を起こす部位に非特異的に付着したPEG−タンパク質を精製過程で分離して生体内の活性低下を最小化するように結合したPEG−タンパク質を得なければならないという煩わしさがある。この過程で求めるのPEG−タンパク質結合体を得るためには生産収率が著しく低下するため経済性が低く、特定タンパク質の場合、水溶液状態における安定性が低い場合には、PEGを付着させようとする試みが失敗することもあった。
【0011】
また、糖鎖工学(glycoengineering)を用いて注射回数を減らそうとする方法が開発されて商用化された。Elliot等は、赤血球促進因子(EPO)のアミノ酸を置換する方法を用いて糖鎖を追加する方法について報告した(Nat Biotechnol 21, 414-421, 2003;米国登録特許第7,217,689号)。糖鎖工学的方法が適用された赤血球促進因子は、「Aranesp」という商品名で許可を受けて市販されており、糖鎖、シアル酸(sialic acid)および分子量の増加により血流への吸収および代謝と排泄が遅延する効果を持つものとして知られている。ところが、この技術は、生理活性物質の糖鎖付着または追加によって活性低下が誘発するおそれがあり、体内安定性の持続有無が様々なタンパク質に対して検証されておらず、生理活性タンパク質にさらに付着する糖鎖の位置が非常に制限的で、低分子ペプチドには適用させることが容易でないなど、その使用が非常に制限的である。
【0012】
遺伝工学的な方法が発達して以来、生理活性を持つタンパク質を、大きい分子量を有する他のタンパク質と融合してタンパク質の大きさを増加させる方法が研究された(Curr Opin Drug Discov Devel 12, 284-95, 2009)。例えば、生理活性を持つタンパク質の遺伝子とヒトアルブミン(human albumin)遺伝子との融合後、酵母細胞で発現させた融合タンパク質が知られている(国際出願公開WO93/15199号およびWO93/15200号)。前記アルブミンと生理活性タンパク質との融合に関する例としては、顆粒球刺激因子(Halpern et al., Pharm Res 19, 1720-1729, 2002)、ヒト成長ホルモン(Osborn et al., Eur J Pharmacol 456, 149-158, 2002)、グルカゴン様ペプチド−1(Baggio et al., Diabetes 53, 2492-2500, 2004)、インターフェロンα(Osborn et al., J Pharmacol Exp Ther 303, 540-548, 2002)などが知られている。
【0013】
遺伝子組み換え方法を用いた融合タンパク質の他の例としてはトランスフェリン(transferrin)融合タンパク質が知られている。例えば、米国登録特許第7,176,278号では、天然型トランスフェリンおよび糖化しないトランスフェリン変異体とグルカゴン様ペプチド−1などの融合体(fusion molecule)を作って体内半減期を増加させようとした。
【0014】
一方、免疫グロブリン(Immunoglobulin、Ig)のFc部分を特定のタンパク質と融合させて体内半減期を増加させる方法が開発された(米国登録特許第5,116,964号および同第5,605,690号)。TNF−α受容体断片をIgG1のFc部分と結合させた遺伝子を動物細胞(chinese hamster ovary、CHO)で発現させた物質(商品名:Enbrel)は、関節リウマチ治療剤であって、米国FDAの許可を受けて現在治療剤として使われている。また、Wang(Qinghua Wang:WO2007/012188)は、体内半減期の短い生理活性ペプチドGLP−1(t1/2<2分)またはエキセンディン−4をIgのFc部分と融合体(fusion molecule)を作って体内半減期を増加させようとした。
【0015】
このように、免疫グロブリンFcは、融合タンパク質のキャリアとして多く用いられているが、IgG Fcが有する抗体依存性細胞毒性(antibody-dependent cell cytotoxicity、ADCC)または補体依存性細胞毒性(complement dependent cytotoxicity、CDC)効果はそのまま維持する。よって、生理活性物質とFcとを融合した物質を人体に投与する場合、単純な体内半減期を維持させようとする目的の他にも複雑な免疫反応に露出されるうえ、長期反復投与の際に所望しない抗体を生成させることもある。従って、Fcの融合された前記の方法は使用が制限的になるしかない。
【0016】
また、韓国登録特許第10−0725315号には、免疫グロブリン断片を用いたタンパク質結合体およびその製造方法、すなわち生理活性を有するタンパク質とFc部分をPEGで連結させて体内半減期を増加させる方法について記載されている。前記の方法の場合、生理活性タンパク質−PEG−Fcの構造を持つ「タンパク質結合体」は、薬物動力学調査において構造が変形していない生理活性タンパク質よりさらに長い体内半減期を持つことを示した。ところが、前記の「タンパク質結合体」も2つの生理活性タンパク質とFcをPEGに化学反応によって連結させるという点で、PEG融合タンパク質の製造の際に発生しうる問題が常存する。
【0017】
免疫グロブリンを用いた他の例としては、IgG抗体全体分子と低分子化合物を化学的に連結させてペプチド薬物の体内安定性を増加させようとした(Rader et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100, 5396-5400, 2003, Doppalapudi et al., Bioorg & Med Chem 17, 501-506, 2007)。ところが、「CovX−Body」と命名されたこの技術は、生理活性タンパク質などの分子量が大きいタンパク質には使用することができず、また、前記Fc融合タンパク質とPEGタンパク質の製造の際に発生する問題点によりその使用が制限的である。
【0018】
上述のように、生理活性タンパク質治療剤またはペプチド治療剤に高分子を融合させる様々な方法が試みられてきたが、これらの方法は、特定の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドと結合させる場合、体内持続時間が医薬用として開発するのには適せず、製造過程で収率が著しく低くて経済性が欠如してしまい、長期間使用の際に体内で不要な免疫反応を引き起こしてタンパク質またはペプチド結合過程で使用される化学物質残基が体内注入の際に毒性を引き起こすなど様々な理由により全ての生理活性タンパク質または生理活性ペプチドに適用することができないという欠点がある。したがって、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドの体内活性減少を最小化しながら血中半減期を延長させることが可能な新規のタンパク質またはペプチド融合体に対する開発の必要性が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドの体内活性減少を最小化しながら血中半減期を延長させることが可能なタンパク質またはペプチド融合体について研究したところ、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドをアルファ−1アンチトリプシンもしくはアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させて新規なタンパク質またはペプチド融合体を製造し、前記のタンパク質またはペプチド融合体が体内持続性を維持することにより血中半減期(T1/2)が固有の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドより著しく増加して体内安定性に優れることを確認し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質もしくはペプチド融合体、およびこれを用いて体内半減期を増加させる方法を提供しようとする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の薬物動態グラフを示す図である。
【図2】本発明に係るヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]の薬物動態グラフを示す図である。
【図3】本発明に係る顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の薬物動態グラフを示す図である。
【図4】本発明に係るエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の薬物動態グラフを示す図である。
【図5】本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]の生体内活性(脳下垂体が除去されたラットの重量増加)分析結果を示す図である。
【図6】本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の生体内活性(白血球数の増加)分析結果を示す図である。
【図7】本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の腹腔内糖負荷検査結果を示す図である。
【図8】本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]が糖尿モデルマウスにおける血糖減少への影響を示す図である。
【図9】本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の細胞内活性分析結果を示す図である。
【図10】本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性分析結果を示す図である。
【図11】本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のトリプシン活性抑制を示す図である。
【図12】本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のヒト好中球エラスターゼ活性抑制を示す図である。
【図13】本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動遂行結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドをアルファ−1アンチトリプシンと結合させて、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体を提供する。
【0023】
また、本発明は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドを、一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させて、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体を提供する。
【0024】
また、本発明は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドを、アルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させて、体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法を提供する。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドを、アルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させ、体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させることを特徴とする。
【0026】
本発明において、「タンパク質融合(fusion protein/fusion polypeptide)」は、一つ以上の生理活性を有するタンパク質をアルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端またはC末端に結合させた新規の分子構成を持つタンパク質融合体を意味する。また、「ペプチド融合体(fusion peptide)」は、一つ以上の生理活性を有する低分子量のペプチドをアルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端またはC末端に結合させた新規の分子構成を持つペプチド融合体を意味する。
【0027】
前記の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドは、直接またはアミノ酸で構成されたリンカーを用いて、アルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体に結合できる。
【0028】
前記の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドとアルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体は、遺伝子組み換え技術を用いて結合させることが好ましいが、当業界における公知の架橋剤を用いてアルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端、C末端または遊離基に結合させることができる。
【0029】
前記の生理活性タンパク質は、ホルモン類およびその受容体、生物学的反応調節物質(biological response modifier)およびその受容体、サイトカイン類およびその受容体、酵素類、抗体類、抗体断片類などを含むことができる。具体的には、前記生理活性タンパク質は、ヒト成長ホルモン(hGH)、インスリン、卵胞 刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone、FSH)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)、赤血球促進因子(EPO)、血小板生成促進因子(TPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、組織プラスミノゲン活性体(tissue plasminogen activator)、血液凝固因子VII、VIIα、D、IX、hBMP2(human bone morphogenic protein 2)、KGF(keratinocyte growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、α−ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A)、α−L−イズロニダーゼ(α-L-iduronidase)、イズロン酸−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、ラクターゼ(lactase)、アデノシン・デアミナーゼ(adenosine deaminase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ (imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、スーパーオキシドジスムターゼ (superoxide dismutase)、ボトルリウム毒素、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、L−アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2およびFdなどを含むが、これらに限定されない。
【0030】
前記の生理活性ペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(glucagon-like peptide-1、GLP−1)およびその類似体、エキセンディンおよびその類似体、ソマトスタチン(somatostatin)およびその類似体、LHRH(luteinizing hormone-releasing hormone)作用剤および拮抗剤、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone)、成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone)、オキシトシン(oxytocin)、サイモシンアルファ−1(thymosin alpha-1)、コルチコトロピン放出因子(corticotropin-releasing factor)、カルシトニン(calcitonin)、ビバリルジン(bivalirudin)、バソプレシン類似体(vasopressin analogues)、および生理活性タンパク質の断片などを含むが、これに限定されない。
【0031】
前記のアルファ−1アンチトリプシンは分子量約50,000ダルトンの哺乳類の血液内に存在するタンパク質の中の一つであって、血液内濃度は約2mg/mLに達する主血液タンパク質の中の一つであり(Robin W.C. et al., Nature 298, 329-334, 1982)、アルファ−1プロテアーゼ抑制剤(alpha-1 protease inhibitor)とも呼ばれる。このタンパク質は、タンパク質分解酵素との試験の際に様々な種類のタンパク質分解酵素を抑制する。
【0032】
しかし、現在知られている疾患に関連した生体内の主な機能は好中球エラスターゼ(neutrophil elastase)の抑制剤として知られている(Beatty et al., J Biol Chem 255, 3931-3934, 1980)。アルファ−1アンチトリプシンが欠乏すると、肺の機能が低下し、深刻な遺伝的疾患を引き起こすこともある。よって、血液内から抽出したアルファ−1アンチトリプシンは、FDAの許可を経て、プロラスチン(Prolastin)という商品名で肺気腫(emphysema)の治療剤として販売されている。プロラスチンは、通常、60mg/kgの用量で1週間の隔で静脈注射によって人体に投与され、人体における安全性および有害性が立証されたタンパク質である。また、アルファ−1アンチトリプシンの体内の半減期は約5〜6日程度であると知られている(Weweres, MD, et al., N. Engl J med 316, 1055-1062, 1987)。従って、人体に過量投与しても安定性などが既に立証されたアルファ−1アンチトリプシンを、生成活性を持つタンパク質またはペプチドと融合して、体内半減期の増加した持続性物質に作ろうとする論理的根拠が提供される。アルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤としての役目や構造などは既によく知られている(Elliott, P. et al., JMB 275, 419-425, 1998)。アルファ−1アンチトリプシンのP1(N末端から358番目の位置)アミノ酸はメチオニン基であるが、このタンパク質はトリプシン、キモトリプシン(chymotrpsin)、トロンビンおよびエラスターゼなどの様々なプロテアーゼなどの活性を阻害するものと知られている。また、アルファ−1アンチトリプシンは、自然界に100余種以上の対立遺伝子(allele)が存在していて表現型(phenotype)はIEF(isoelectric focusing)の類型によってA-Zに区分する(Stoller et al., The Lancet, 365, 2225 - 2236, 2005)。これらの中で最も多いM対立遺伝子は、正常型でアミノ酸配列変異によってさらにM1(Val213)、M1(Ala213)、M2、M3のように様々な亜型(subtype)に区分される。よって、本発明に使用されたアルファ−1アンチトリプシンは自然界に存在する特定の亜型であり、他の亜型に対しても同一の効果を得ることができる。
【0033】
前記のアルファ−1アンチトリプシン変異体は、一つ以上のアミノ酸を変異させて特定部位の突然変異誘発(site-directed mutagenesis)方法を用いて製造される。例えば、アルファ−1アンチトリプシン変異体における一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを特徴とする。また、アルファ−1アンチトリプシン変異体における一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを含み、他の位置にある一つ以上のアミノ酸を変異させたことを含む。前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異したり或いは232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを含む。または、前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したものを含む。すなわち、アルファ−1アンチトリプシン変異体は、アルファ−1アンチトリプシン変異体[α1AT(P357N)]、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体[α1AT(P357N、S359T)]、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2[α1AT(P357N、C232S)]、アルファ−1アンチトリプシン三重変異体[α1AT(P357N、C232S、S359T)]を含む。
【0034】
前記のアルファ−1アンチトリプシン変異体[α1AT(P357N)]は、N末端からP2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン(Asn)」に変異させたことを特徴とする。このようなアルファ−1アンチトリプシン変異体はAsn−X−Serの新しいN−糖化部位が生成されてアルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤の活性を中和させると同時に、体内注入の際にアミノ酸の置換による免疫原性の可能性を最小化することができる。
【0035】
前記のアルファ−1アンチトリプシン二重変異体[α1AT(P357N、S359T)]は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させ、359番目のアミノ酸「セリン」を「トレオニン」に変異させたことを特徴とする。このようなアルファ−1アンチトリプシン変異体は、Asn−X−Thrの新しいN−糖化部位が生成されてアルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤の活性を中和させると同時に、体内注入の際にアミノ酸の置換による免疫原性の可能性を最小化することができる。
【0036】
前記のアルファ−1アンチトリプシン二重変異体2[α1AT(P357N、C232S)]は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて232番目のアミノ酸「システイン」を「セリン」に変異させたことを特徴とする。このようなアルファ−1アンチトリプシン変異体2は、Asn−X−Serの新しいN−糖化部位が生成されてアルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤の活性を中和させると同時に、体内注入の際にアミノ酸置換による免疫原性の可能性を最小化することができ、遊離システインによる二重体形成などを除去することができる。
【0037】
前記アルファ−1アンチトリプシン三重変異体[α1AT(P357N、C232S、S359T)]は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させ、232番目のアミノ酸「システイン」を「セリン」に変異させ、359番目のアミノ酸「セリン」を「トレオニン」に変異させたことを特徴とする。このようなアルファ−1アンチトリプシン変異体は、Asn−X−Thrの新しいN−糖化部位が生成されてアルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤の活性を中和させると同時に、体内注入の際にアミノ酸置換による免疫原性の可能性を最小化することができ、遊離システインによる二重体形成などを除去することができる。
【0038】
本発明のタンパク質またはペプチド融合体は、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH](配列番号1)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH](配列番号2)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH](配列番号3)、ヒトインターフェロンα/アルファ1−アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α](配列番号4)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF](配列番号5)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF](配列番号6)、およびエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)](配列番号7)を含む。
【0039】
本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシ融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]、ヒトインターフェロンα/アルファ1−アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]、およびエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の血中半減期(t1/2)は固有の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドより著しく増加して体内安定性に優れる。
【0040】
また、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]を注射した、脳下垂体の除去されたラットの場合、体重増加を示し、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]を注射したラットの場合、白血球の数が増加する。また、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]を投与した群は、エキセンディン−4を投与した群より血糖減少効果に優れるうえ、24時間後にも血糖が低く維持されて血糖減少の効果が長らく持続される。よって、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は効果的に生体内活性が長らく維持されることが分かる。
【0041】
また、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性(EC50)は、アルファ1−アンチトリプシンおよびアルファ−1アンチトリプシン変異体の種類に関係なく、大きい差なしに類似である。
【0042】
また、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]はトリプシン抑制活性およびヒト好中球エラスターゼに対する抑制活性が優位に現れるがヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]はトリプシン抑制活性およびヒト好中球エラスターゼに対する抑制活性が低く現れる。よって、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]およびヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]が体内で活性を持続的に維持することにより体内半減期が増加することはアルファ−1アンチトリプシの固有性質によるものではないことが分かる。
【0043】
上述したように、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、体内持続性を維持することにより血中半減期(T1/2)が固有の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドより著しく増加して体内安定性に優れる。よって、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体はタンパク質またはペプチド薬物の持続性製剤の開発に有用に使用できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0045】
実施例1:ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体の製造[T109wt:α1AT/hGH]
1.発現ベクターpSNATの製造
ヒト成長ホルモンをアルファ−1アンチトリプシンのC末端に融合させて発現するために、アルファ−1アンチトリプシンのみを発現するベクターpSNATを製造した。具体的には、C末端にヒト成長ホルモンを挿入するためにアルファ−1アンチトリプシンをコードするベクターhMU001448(KRIBB)を2つのプライマー「ALT21」(配列番号8)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅した。この際、使用されたプライマーALT30は融合されたタンパク質の活性を維持するために柔軟性を極大化するためのリンカーを含んでいる。前記の増幅されたニュークレオチドを末端に存在する2つの制限酵素「XhoI」と「BamHI」で切断し、母ベクターpSGHV0(GenBank Accession No.AF285183)に結合してクローニングした。これをpSNATと命名した。
2.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシンベクターの製造[T109wt、α1AT/hGH]
ヒト成長ホルモン(hGH)をエンコードするIOH45734(invitrogen)ベクターを母体として、2つのプライマーDH22(配列番号10)とALT12(配列番号11)を用いてPCRでヒト成長ホルモンを増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを末端に存在する2つの制限酵素BamHIとNotIで切断し、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATに結合して発現ベクターT109wt((配列番号1)を製造した。
3.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T102wt)の発現
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いて、前記2で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)の発現を確認した。CHO−K1は、10%FBS(Fetal Bovine Serum)と抗生剤を含むDMEM(Dulbecco's Modified Eagle Media)に5%CO2と37℃の条件で培養して維持した。ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)を導入する1日前、100mmの培養皿に細胞を1×106濃度で接種して培養した後、FBSと抗生剤のない800μLのDMEMと5μgのヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)を混合して常温で1分間維持した後、20μgのPEI(Polyethylenimine, linear, Polysciences Inc(Cat. No:23966, MW〜25000))と混合して10〜15分間常温で放置した。この際、1日前に培養した細胞をPBSで洗浄し、新しい培養液6mLのDMEMを添加した。10〜15分後、常温に放置したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)をこの培養皿に添加した。翌PBSで洗浄し、FBSのないIMDM(Cat. No12200−028、Gibco)(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)培地を添加してタンパク質の発現を確認した。
4.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)の精製
前記3によってチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)で発現したT109wtタンパク質を下記のとおり精製した。具体的には、細胞培養液で分泌されたヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)を精製するために、培養液を遠心分離して細胞を除去した後、上澄み液のみを取った。細胞上澄み液を平衡緩衝溶液(20mMリン酸ナトリウム、pH8.0)で希釈し、平衡緩衝溶液で平衡化されたQ−Sepharose(GE Healthcare、米国)カラムに注入した後、平衡緩衝溶液で十分に洗浄してから塩の濃度を増加(0〜400mM NaCl、20mMリン酸ナトリウム、pH8.0)させて溶出した。溶出された前記のタンパク質溶液に塩を加えて、平衡化されているフェニル−セファロース(Phenyl-Sepharose)(GE Healthcare、米国)カラムに注入した後、平衡緩衝溶液で十分に洗浄し、塩の濃度を減少(2〜0M NACl、20mMリン酸ナトリウム、p6.8)させて溶出した。前記の溶液をVivaspin20(GE Healthcare、米国)を用いて濃縮し、高純度で精製されたT109wtタンパク質を得た。
【0046】
実施例2:ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体の製造[T109:α1AT(P357N)/hGH]
1.アルファ−1アンチトリプシン変異体の製造(pDHT3Nクローニングベクター
タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の融合体の製造に用いられるアルファ−1アンチトリプシンの活性を減少させるために、アルファ−1アンチトリプシン変異体を製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンをコードするベクターhMU001448(KRIBB)をPCRで増幅し、yT&AベクターにクローニングしてpDHT3ベクターを製造した。その後、2つのプライマーALT1(配列番号12)およびALT2(配列番号13)と変異体生成キット(Stratagene、QuikChange II Cat No.200523−5)を用いて、アルファ−1アンチトリプシン活性に影響を与える、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて活性を減少させ、N−糖化を誘導したpDHT3Nクローニングベクターを製造した。
2.発現ベクターpSNATNの製造
ヒト成長ホルモンを、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン変異体のC末端に融合させて発現するために、pSNATNベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシン変異体のC末端にヒト成長ホルモンを挿入するために、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン変異体をコードするベクターpDHT3Nを2つのプライマー「ALT14」(配列番号14)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅し、pSNATと2つの制限酵素「EcoRV」と「BamHI」を用いてクローニングした。これをpSNATNと命名した。
3.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異体ベクターの製造[T109、α1AT(P357N)/hGH]
前記の実施例1の2と同一の方法で増幅されたヒト成長ホルモンヌクレオチドを、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNに結合し、発現ベクターT109(配列番号2)を製造した。
4.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T109)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いてヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T109)の発現を確認した。
5.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T109)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法でヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T109)を精製した。
【0047】
実施例3:ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体の製造[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]
1.アルファ−1アンチトリプシン二重変異体の製造(pDHT3NTクローニングベクター)
タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の融合体の製造に用いられるアルファ−1アンチトリプシン変異体の糖化の均質性のために、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体を製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンの活性に影響を与えるP2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて活性を減少させ、N−糖化を誘導したpDHT3Nクローニングベクターを母体として、2つのプライマーALT82(配列番号15)およびALT83(配列番号16)と変異体生成キット(Enzynomics、EZChange Cat No.EM020)を用いて359番目のアミノ酸「セリン」を「トレオニン」に変異させてpDHT3NTクローニングベクターを製造した。
2.発現ベクターpSNATNTの製造
ヒト成長ホルモンを、糖化の均質性を有しながら活性が減少したアルファ−1アンチトリプシン二重変異体のC末端に融合させて発現するために、pSNATNTベクターを製造した。
具体的には、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体のC末端にヒト成長ホルモンを挿入するために、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体をコードするベクターpDHT3NTを2つのプライマー「ALT14」(配列番号14)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅し、pSNATと2つの制限酵素「EcoRV」と「BamHI」を用いてクローニングした。これをpSNATNTと命名した。
3.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異体ベクターの製造[T109T、α1AT(P357N、S359T)/hGH]
前記実施例1の2と同一の方法で増幅されたヒト成長ホルモンヌクレオチドを、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNTに結合し、発現ベクターT109T(配列番号3)を製造した。
4.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T109T)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いてヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T109T)の発現を確認した。
5.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T109T)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法でヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T109T)を精製した。
【0048】
実施例4:ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体の製造[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]
1.ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異体ベクターの製造[T502、α1AT(P357N)/IFN−α]
ヒトインターフェロンα(IFN−α)をエンコードするMHS1010−98051913(Open biosystems)ベクターを母体とし、2つのプライマー ALT45(配列番号17)およびALT49(配列番号18)を用いてPCRでヒトインターフェロンα(IFN−α)を増幅した。前記の増幅したニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素「BamHI」と「NotI」で切断し、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNに結合して発現ベクターT502(配列番号4)を製造した。
2.ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T502)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いてヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T502)の発現を確認した。
3.ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T502)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法でヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T502)を精製した。
【0049】
実施例5:顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体の製造[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]
1.アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2の製造(pDHT3NSクローニングベクター)
タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の融合体の製造に用いられるアルファ−1アンチトリプシンの固有な活性を減少させながら、アルファ−1アンチトリプシンのシステインによる二重体形成などのタンパク質変性の可能性を除去するために、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2を製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンの活性に影響を与えるP2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて活性を減少させ、N−糖化を誘導したpDHT3Nクローニングベクターを母体として、2つのプライマーALT52(配列番号19)およびALT83(配列番号20)と変異体生成キット(Stratagene、QuikChangeII Cat No.200523−5)を用いて、アルファ−1アンチトリプシンに存在する232番目のアミノ酸「システイン」を「セリン」に変異させてpDHT3NSクローニングベクターを製造した。
2.発現ベクターpSNATNSの製造
顆粒球刺激因子を、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン二重変異体2のC末端に融合させて発現するために、pSNATNSベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2のC末端に顆粒球刺激因子を挿入するために、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2をコードするベクターpDHT3NSを2つのプライマー「ALT14」(配列番号14)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅し、pSNATと2つの制限酵素「BstEII」と「BamHI」を用いてクローニングした。これをpSNATNSと命名した。
3.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2ベクターの製造[T602S、α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]
顆粒球刺激因子(G−CSF)をエンコードするIHS1380−97652343(Open biosystems)ベクターを母体とし、2つのプライマーALT56(配列番号21)とALT7(配列番号22)を用いてPCRで顆粒球刺激因子(G−CSF)を増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素「BamHI」と「NotI」で切断し、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNSに結合して発現ベクターT602S(配列番号5)を製造した。
4.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T602S)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いて顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T602S)の発現を確認した。
5.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T602S)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法で顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T602S)を精製した。
【0050】
実施例6:顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体の製造[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]
1.アルファ−1アンチトリプシン三重変異体の製造(pDHT3NSTクローニングベクター)
タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の融合体の製造に用いられるアルファ−1アンチトリプシン二重変異体の糖化均質性のために、アルファ−1アンチトリプシン三重変異体を製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンの活性に影響を与えるP2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて活性を減少させ、N−糖化を誘導しアルファ−1アンチトリプシンのシステインによる二重体形成などのタンパク質変性の可能性を除去するために、232番目のアミノ酸「システイン」を「セリン」に変異させたアルファ−1アンチトリプシン二重変異体2のpDHT3NSクローニングベクターを母体として、2つのプライマーALT82(配列番号15)およびALT83(配列番号16)と変異体生成キット(Enzynomics、EZchange Cat No.EM020)を用いて359番目のアミノ酸「セリン」を「トレオニン」に変異させてpDHT3NSTクローニングベクターを製造した。
2.発現ベクターpSNATNSTの製造
顆粒球刺激因子を、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン三重変異体のC末端に融合させて発現するために、pSNATNSTベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシン三重変異体のC末端に顆粒球刺激因子を挿入するために、アルファ−1アンチトリプシン三重変異体をコードするベクターpDHT3NSTを2つのプライマー「ALT14」(配列番号14)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅し、pSNATと2つの制限酵素「BstEII」と「BamHI」を用いてクローニングした。これをpSNATNSTと命名した。
3.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異体ベクターの製造[T602ST、α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]
顆粒球刺激因子(G−CSF)をエンコードするIHS1380−97652343(Open biosystems)ベクターを母体とし、2つのプライマーALT56(配列番号21)とALT57(配列番号22)を用いてPCRで顆粒球刺激因子(G−CSF)を増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素「BamHI」と「NotI」で切断し、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNSTに結合して発現ベクターT602ST(配列番号6)を製造した。
4.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体(T602ST)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いて顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体(T602ST)の発現を確認した。
5.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体(T602ST)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法で顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体(T602ST)を精製した。
【0051】
実施例7:エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体の製造[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]
1.発現ベクターpSCATの製造
エキセンディン−4をアルファ−1アンチトリプシンのN末端に融合させて発現するために、pSCATベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンのN末端にエキセンディン−4を挿入するために、アルファ−1アンチトリプシンをコードするベクターhMU001448(KRIBB)を2つのプライマーALT21(配列番号8)とALT5(配列番号23)を用いてPCRで増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素XhoIとNotIで切断し、母ベクターpSGHV0(GenBank Acession No.AF285183)に結合してクローニングした。これをpSCATと命名した。
2.発現ベクターpSCATNの製造
エキセンディン−4を、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端に融合させて発現するために、pSCATNベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端にエキセネィン−4を挿入するために、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン変異体をコードするベクターpDHT3Nを2つの制限酵素EcoRVとNotIを用いてpSCATとクローニングした。これをpSCATNと命名した。
3.エキセンディン−4の製造
エキセンディン−4をエンコードするポリヌクレオチドを製造するために、DH15(sense codon、配列番号24)とDH16(antisensecodon、配列番号25)を用いてPCRで増幅した。
4.エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異体ベクターの製造[T304、Exendin−4/α1AT(P357N)]
エキセンディン−4をエンコードするポリヌクレオチドは、前記3で製造されたものを鋳型として、2つのプライマーALT44(配列番号26)とALT41(配列番号27)を用いてPCRで増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素XhoIとBamHIで切断し、XhoIとBamHI切断部を持っているpSCATNに結合してエキセンディン−4とアルファ−1アンチトリプシン変異体ベクター(T304、配列番号7)を製造した。
5.エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いてエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)の発現を確認した。
6.エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法でエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)を精製した。
【0052】
実験例1:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の酵素免疫分析法
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の分析のために、下記のとおり酵素免疫分析法を行った。
1.ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/α−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の酵素免疫分析法
ヒト成長ホルモンに対するモノクローナル抗体(Medix Biochemica、フィンランド)をリン酸塩緩衝溶液に1〜5μg/mLの濃度で希釈して100μLを96ウェルプレート(Nunc、デンマーク)に分注した後、常温で15〜18時間放置した。ウェルプレートに付着せずに残っている抗体を除去した後、1%牛血清アルブミンが溶解されたリン酸塩緩衝溶液250μLを分注して常温で2時間放置させ、洗浄溶液(0.05%ツイン20、リン酸塩緩衝溶液)で3回洗浄した後、溶液を除去した。試料は1%牛血清アルブミンの溶解されたリン酸塩緩衝液で希釈し、96ウェルプレートに添加して常温で2時間反応させた。96ウェルプレートを洗浄溶液で5回洗浄した後、sulfo−NHS−biotin(Pierce biotechnology、米国)を用いて接合させたヒト成長ホルモンモノクローナル抗体−ビオチン接合体を希釈溶液で希釈して96ウェルプレートに100μLずつ分注した。次いで、プレートを常温で2時間反応させた後、洗浄溶液で5回洗浄し、しかる後に、ストレプタビジン−HRP溶液を加えて常温で30分間反応させた。洗浄溶液で5回洗浄し、TMB(3,3',5,5'−テトラメチルベンジディン)と過酸化水素水発色溶液100μLを各ウェルに添加した後、暗所で30分間反応させた。1M硫酸100μLを各ウェルに添加して反応を終了させ、VersaMax microplate reader(Molecular Device、米国)で450nmで吸光度を測定した。各試料の定量値は標準物質に対する標準曲線を作成した後、回帰分析によって求めた。
2.ヒトインターフェロンα(IFN−α)、ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]の酵素免疫分析法
ヒトインターフェロンα(IFN−α)およびヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体の酵素免疫分析法は、Bender Medsystems(オーストリア)社のHuman IFN−α Matched Antibody Pairs for ELISAの抗体を使用した。10μg/mLのIFN−α抗体を前記1の方法によってコートおよび遮断し、試料は希釈の後に常温で2時間シェーキングして反応させ、Anti−IFN−α−HRP接合体は50μLを用いて常温で2時間シェーキングして反応させた。以後の過程は前記1の方法によって行った。
3.顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の酵素免疫分析法
前記1でヒト成長ホルモン抗体の代わりに顆粒球刺激因子(G−CSF)に対するモノクローナル抗体(RND systems、米国)をリン酸塩緩衝溶液に1〜5μg/mLの濃度で希釈して使用し、ヒト成長ホルモンモノクローナル抗体−ビオチン接合体の代わりに顆粒球刺激因子ポリクローナル抗体−ビオチン接合体(RND systems、米国)を使用したものを除外しては、前記1の方法によって行った。
4.エキセンディン−4、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の酵素免疫分析法
エキセンディン−4の場合、前記1でヒト成長ホルモンの代わりにエキセンディン−4に対するポリクローナル抗体(ペプトロン、韓国)をリン酸塩緩衝溶液に5〜10μg/mLの濃度で希釈して使用し、ヒト成長ホルモンモノクローナル抗体−ビオチン接合体の代わにエキセンディン−4モノクローナル抗体−ビオチン接合体を使用したものを除外しては、前記1と同様の過程を行った。
エキセンディン−4/α−1アンチトリプシン変異融合体(T304)の場合、前記の実施例7で製造したエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)をFreund adjuvant(Sigma、米国)と混ぜてラットに注射して抗血清を生成させた後、Protein G−Sepharose(GE Heathcare、米国)を用いて精製した。前記の精製された抗体をリン酸緩衝溶液に10〜20μL/mLの濃度で希釈して96ウェルプレートにコートし、sulfo−NHS−biotin(pierce biotechnology、米国)を用いて接合させたエキセンディン−4/アルファ−1のアンチトリプシン変異融合体(T304)ポリクローナル抗体−ビオチン接合体を用いて前記1の方法によって行った。試料反応と接合体反応はプレートをシェーキングして行った。
【0053】
実験例2:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の薬物動態実験
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の薬物動態を確認するために、下記のとおり実験を行った。
1.ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の薬物動態
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。ヒト成長ホルモン投与群には3匹を割り当て、残りの融合体投与群にはそれぞれ5匹ずつ割り当てた。各群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例1〜3で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]をそれぞれラットkg当たり720μgの投与量で皮下注射した。希釈液はリン酸塩緩衝溶液を使用した。0、1、2、4、8、12、16、24、30、48時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。対照群では、ヒト成長ホルモンScitropin(SciGen、シンガフォル)をラットkg当たり200μgの投与量で皮下注射し、希釈液としてリン酸塩緩衝溶液を使用し、0、0.33、1、2、5、8、12、18、24、30、48時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。各試料に対しては前記の実験例1の酵素免疫分析方法を用いて分析した。
本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の薬物動態グラフは図1に示した。
図1に示すように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]は、血中半減期(t1/2)が5.3時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は8時間であった。ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]は、血中半減期(t1/2)が5.4時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は12時間であった。ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]は、血中半減期(t1/2)が4.9時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は12.8時間であった。これに対し、ヒト成長ホルモン(hGH)は、血中半減期(t1/2)が0.8時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は1時間であった。よって、本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109wt:α1AT(P357N)/hGH]、およびヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]は、ヒト成長ホルモンに比べて著しく増加した体内安定性を有することを確認することができた。
2.ヒトインターフェロンα(IFN−α)、ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]の薬物動態
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。各群当たり5匹ずつ割り当てた。一つの実験群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例4で製造したヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]をラットkg当たり200μgの投与量で皮下注射し、0、0.33、1、2、5、8、12、18、24、30、48、72、96時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。対照群として、ヒトインターフェロンα(IFN−α、インターマックスアルファ、LG生命科学)を用いてラットkg当たり60μgの投与量で皮下注射し、0、0.33、1、2、5、8、12、18、24時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。各試料に対しては前記の実験例1の酵素免疫分析方法を用いて分析した。
本発明に係るヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]の薬物動態グラフは図2に示した。
図2に示すように、本発明のヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]は、血中半減期(t1/2)が18.5時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は12時間であった。ヒトインターフェロンαは、血中半減期(t1/2)が3.4時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は1.4時間であった。よって、本発明に係るヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]は、ヒトインターフェロンαに比べて著しく増加した体内安定性を有することを確認することができた。
3.顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の薬物動態
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。顆粒球刺激因子投与群には3匹を割り当て、残りの融合体投与群にはそれぞれ5匹ずつ割り当てた。各群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例5〜6で製造した顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602ST:α1AT(PP357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]をそれぞれラットkg当たり340μgの投与量で皮下注射し、0、1、2、4、8、12、16、24、30、48時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。対照群では、顆粒球刺激因子Filgrastim(Gracin、第一薬品(株))を用いてラットkg当たり100μgの投与量で皮下注射し、0、1、2、4、8、12、18、24、30、48時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。各試料に対しては前記の実験例1の酵素免疫分析方法を用いて分析した。
本発明に係る顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の薬物動態グラフは図3に示した。
図3に示すように、本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]は、血中半減期(t1/2)が5.1時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は13.6時間であった。顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]は、血中半減期(t1/2)が4.5時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は16時間であった。これに対し、顆粒球刺激因子は、血中半減期(t1/2)が1.8時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は1.8時間であった。よって、本発明に係る顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]は、顆粒球刺激因子に比べて著しく増加した体内安定性を有することを確認することができた。
4.エキセンディン−4、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の薬物動態
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。各群当たり5匹ずつ割り当てた。一つの実験群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例7で製造したエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]をラットkg当たり520μgの投与量で皮下注射し、0、1、2、4、8、12、16、24、30、48、72時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。対照群としては、エキセンディン−4を用いてラットkg当たり40μgの投与量で皮下注射し、0、10、20、30、40、60、120、180、240、300、360分の後にヘパリンの処理されたチューブに採血して遠心分離を行った後、血清を得た。各試料に対しては前記の実験例1の酵素免疫分析方法を用いて分析した。
本発明に係るエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の薬物動態グラフは図4に示した。
図4に示すように、本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]は、血中半減期(t1/2)が19.1時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は10.4時間であったが、これに対し、エキセンディン−4は、血中半減期(t1/2)が0.8時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は0.4時間であった。よって、本発明に係るエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]は、エキセンディン−4に比べて著しく増加した体内安定性を有することを確認することができた。
【0054】
実験例3:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の生体内活性実験
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の生体内活性を確認するために、下記のとおり実験を行った。
1.ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]の生体内活性
実験動物として脳下垂体の除去されたSprague−Dawleyラットを使用した。実験群を3つの群に分け、各群当たり7匹ずつ割り当てた。各群の脳下垂体の除去されたSprague−Dawleyラットに、前記の実施例2で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]をラット当たり18μg、ヒト成長ホルモン(Eutropin、LG生命科学)をラット当たり5μg、対照群としてリン酸塩緩衝溶液を用いて毎日皮下注射した。注射の後、ラットの重量を毎日測定した。
本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]の生体内活性(脳下垂体が除去されたラットの重量増加)分析結果は図5に示した。
図5に示すように、リン酸塩緩衝溶液を注射した脳下垂体の除去されたラットの場合、体重増加が殆ど起こっていないがしかし、ヒト成長ホルモンとヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]を注射した脳下垂体の除去されたラットの場合は、7日目にそれぞれ約10.2%と9.4%の体重増加を示した。したがって、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]は、ヒト成長ホルモンと同様に、脳下垂体の除去されたラットで効果的に生体内活性を示すことが分かる。
2.顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の生体内活性
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。実験群を5つの群に分け、各群当たり5匹ずつ割り当てた。各群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例5で製造した顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(PP357N、C232S)/G−CSF]をラットkg当たり340μgと1700μg、前記の実施例6で製造した顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]をラットkg当たり1700μg、および顆粒球刺激因子Filgrastim(Gracin、第一薬品(株))をラットkg当たり100μgの投与量で皮下注射し、実験の3日前、1日、2日、3日、4日、5日目に尾静脈から採血してHematology Analyzer(Pentra120)を用いて白血球数を測定した。
本発明に係る顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の生体内活性(白血球数の増加)分析結果は図6に示した。
図6に示すように、顆粒球刺激因子Filgrastim投与群では、白血球数の増加が注射後1日目に最高値に到達した後、2日目からは基底状態に止まったが、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]のラットkg当たり340μm投与群では白血球数の増加が注射後2日目に最高値に到達した後、3日目から減少した。顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]をそれぞれラットkg当たり1700μg投与群では、白血球数の増加が注射後3日目まで維持されてから4日目から減少した。よって、本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]は、顆粒球刺激因子に比べて生体内活性をさらに長らく維持するということを確認することができた。
3.エキセンディン−4、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の生体内活性
本発明に係るエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の生体内活性を確認するために、下記のとおり腹腔内糖負荷検査および糖尿モデルのマウスにおける血糖減少実験を行った。
3−1.腹腔内の糖負荷検査
8週齢のC57BL/6マウスに4週間高脂肪の飼料を食餌させて肥満を誘導した。実験開始の15時間前に絶食させた状態で腹腔内の糖負荷検査を行った。具体的には、前記の実施例7で製造したエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]とエキセンディン−4をそれぞれ10nmol/kgの投与量でマウスの腹腔内に単回投与した。試験物質投与の後それぞれ30分、12時間、24時間が経過した後、ブドウ糖を1.5g/5mL/kg腹腔投与し、0、10、20、30、60、90、120分に血糖計(allmedicus、韓国)を用いて血糖を測定した。
本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の腹腔内の糖負荷検査結果は図7に示した。
図7に示すように、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の投与群はエキセンディン−4の投与群より血糖減少の効果が長らく持続されて血糖減少効果に優れることを確認した。
3−2.糖尿モデルのマウスにおける血糖減少実験
実験動物として9週齢のdb/dbマウスを使用した。実験群を3つの群に分けて各群当たり6匹ずつ割り当てた。9週齢のdb/dbマウスに飼料制限を加えていない状態で、前記の実施例7で製造したエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]とエキセンディン−4をそれぞれ100nmol/kgの投与量で各実験群のマウスに皮下注射し、試験物質投与0、1、3、6、24、43、48、52時間経過の後に血糖計(allmedicus、韓国)を用いて血糖を測定した。
本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]が糖尿モデルのマウスにおいて血糖減少に及ぼす影響を示す結果は図8に示した。
図8に示すように、エキセンディン−4投与群は24時間以後の血糖が対照群と類似であったが、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]投与群は24時間後にも血糖が低く維持されて血糖減少の効果が長らく持続された。
【0055】
実験例4:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の細胞内活性実験
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の生体内活性を確認するために、下記のとおり実験を行った。
1.ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の細胞内活性
マウスリンパ腫細胞(NB2 cell)は、RPMI1640に10%HS(Horse serum)、10%FBS、2−メルカプトエタノールと抗生剤を含む培地を用いて5%CO2、37℃の条件で培養した。実験に使用するNB2細胞を使用する24時間前に、RPMI1640に10%HSが入っている培地に入れて培養した。培養24時間後、NB2細胞を1×DPBS(Dulbecco's Phosphate buffered Saline)で1回洗浄した。その後、5%HS組成のRPMI1640培地に細胞数が2×104/100μL/well状態になるように準備して96ウェルプレート(Corning、米国)にそれぞれ100μLずつ分注し、濃度別に希釈した試料をウェルに20μLずつ接種させ、5%CO2、37℃の条件で48時間培養させた。次いで、MTS溶液(Promega、米国)を96ウェルプレートにウェル当たり20μLずつ入れて5%CO2、37℃の培養器で3時間反応させた後、10%SDS(sodium dodecyl sulfate)を20μLずつ加えて反応を終了した。吸光度はVersaMax microplate reader(Molecular Device、米国)を用いて490nmで測定した。MTS検索法で得られた吸光度の値で50%の細胞が生き残るようにした薬物の濃度をEC50(50% effective concentration)に決定した。
本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の細胞内活性の分析結果は表1および図9に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1および図9に示すように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]のEC50値は、大きい差異がないため、お互い類似であった。よって、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の細胞内活性EC50はアルファ−1アンチトリプシンのアミノ酸変異に関係なくお互い類似であるということを確認することができた。
2.顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性
マウス骨髄亜細胞(Murine myeloblsatic NFS−60細胞)は、RPMI1640に10%FBS mouseIL−3と抗生剤を含む培地を用いて5%CO2、37℃の条件で培養した。その後、マウス骨髄亜細胞を用いて前記1の方法と同様に行って吸光度を490nmで測定し、MTS検索法で得られた吸光度の値で50%の細胞を生き残るようにした薬物の濃度をEC50に決定した。
本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性の分析結果は表2および図10に示した。
【0058】
【表2】
【0059】
表2および図10に示すように、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]のEC50値は、大きい差異がないため、お互い類似であった。よって、本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性EC50は、アルファ−1アンチトリプシンのアミノ酸変異に関係なくお互い類似であることを確認することができた。
【0060】
実験例5:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体のトリプシン活性の抑制比較実験
本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のトリプシン活性の抑制効果を確認するために、下記のとおり実験を行った。
前記の実施例1で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]と前記の実施例2で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]をそれぞれトリプシンと混ぜた。この際、トリプシンと融合体の濃度は10nMであり、1時間常温で反応させた後、基質であるN−Benzoyl−Val−Gly−Arg p−nitroanilide hydrochloride(Sigma、米国)を0.2mMとなるように加えて405nmで吸光度の変化を測定した。トリプシンの酵素unitは1分当たり吸光度0.001を変化させる基質濃度に設定し、酵素活性はunits/mgトリプシンで計算した。対照群としてはトリプシンを使用した。
結果は図11に示した。
図11に示すように、トリプシンとアルファ−1アンチトリプシンのKa(association constant)値を計算した結果、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]のKa値は約7.5×108M−1であり、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のKa値は約8.0×106M−1であった。前述したように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]はトリプシン抑制活性が優れ、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]はトリプシン抑制活性が低く現れることにより、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]およびヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]が体内で活性を持続的に維持することによって体内半減期が増加することがアルファ−1アンチトリプシンの固有性質によるものではないことが分かった。
【0061】
実験例6:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体のヒト好中球エラスターゼ活性の抑制比較実験
本発明に係る天然型ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]とヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のヒト好中球エラスターゼ活性の抑制効果を確認するために、下記のとおり実験を行った。
前記の実施例1で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]と前記の実施例2で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]をそれぞれヒト好中球エラスターゼと混ぜた。この際、エラスターゼと融合体の濃度は40nMであり、1時間常温で反応させた後、基質であるMeOSuc−AAPV−pNA(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,米国)を1mMとなるように加えて405nmで吸光度の変化を測定した。ヒト好中球エラスターゼの酵素unitは1分当たり吸光度0.001を変化させる基質濃度に設定し、酵素活性はunits/mgトリプシンで計算した。
結果は図12に示した。
図12に示すように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]は、ヒト好中球エラスターゼをほぼ100%抑制させ、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH」のKa値は約1.4×107M−1であった。前述したように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]はヒト好中球エラスターゼに対する抑制活性が優れ、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]はヒト好中球エラスターゼに対する抑制活性が低く現れることにより、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]およびヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]が体内で活性を持続的に維持することによって体内半減期が増加することはアルファ−1アンチトリプシンの固有性質によるものではないことが分かった。
【0062】
実験例7:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の電気泳動実験
本発明に係る天然型ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の糖化部位の追加による分子量の変化を調べるために、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動実験を行った。
結果は図13に示した。
図13に示すように、糖化部位の追加のない天然型ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]に比べて糖化部位(Asn−X−Ser)が追加されたヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]は、タンパク質染色帯が分子量の高い方にさらに広がって現れ、追加糖化の部位がAsn−X−Thrのアミノ酸の配列を有するヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の場合は、分子量の増加をさらに明確に確認することができた。よって、本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]とヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]から糖化部位の追加による分子量の変化を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、体内持続性を維持することによって血中半減期(T1/2)が固有の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドより著しく増加して体内安定性に優れる。よって、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、タンパク質またはペプチド薬物の持続性製剤の開発に有用に使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体、およびこれを用いて体内半減期を増加させる方法に関することである。
【背景技術】
【0002】
既存のタンパク質およびペプチド医薬品は、一般化学合成医薬が提供していない治療効果を示し、優れた効能を発揮することにより、医薬治療剤分野で重要な領域を占めている。例えば、遺伝子組み換えのヒト成長ホルモン(hGH、recombinant human growth hormone)は成長ホルモン欠乏症の効果的な治療剤として唯一に使われており、遺伝子組み換えの赤血球促進因子(EPO、recombinant human erythropoietin)は腎臓異常による貧血患者の赤血球濃度を上昇させる薬として使われており、遺伝子の組み換え顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF、recombinant granulocyte colony stimulating hormone)は化学的治療を受ける癌患者の白血球を増加させる唯一の薬として使われている。この他にも、人体に存在する様々な種類のサイトカイン(cytokine)、ホルモン、ペプチドなどが、代替治療剤のない場合に唯一の治療剤として広範囲に使われている。
【0003】
ところが、これらのタンパク質またはペプチド治療剤は、体内で優れた治療効果を発揮するが、一般的に血液内の加水分解酵素によって分解されて注射後に治療効果が直ちに消失してしまうか、或いは腎臓または肝を通じて容易に体内で除去されるため、短い半減期を持っている。よって、これらのタンパク質またはペプチド治療剤は、体内で一定の血中濃度および力価を維持するためには頻繁に注射を行わなければならないという脆弱点を持っている。タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の頻繁な注射は注射の恐怖心や注射時の通症など患者の薬物順応度を減少させ、長期間の治療を要する場合には制限的に使用されるため治療効果も低下するという欠点がある。
【0004】
したがって、タンパク質/ペプチド薬物の血中安定性を増加させ、血中薬物濃度を長らく維持するための研究が引き続き行われてきた。
【0005】
このような研究の一例として、タンパク質またはペプチドを体内で自然分解させるポリマーを用いて封入した後、皮下または筋肉を注射し、体内で徐々に放出させる徐放型(sustained release)治療剤が開発された(M. Chasin & R. Langer, et al., Biodegradable polymer as drug delivery system, Marcel Dekker (1990); J. Heller, et al., Adv. Drug Del Rev., 10, 163 (1993))。生体内で分解されるポリマーとしてはPLGA(poly(lactic-co-glycolic acid))が最も多く使用され、前記徐放型治療剤の代表的な例としてはLHRH(luteinizing hormone-releasing hormone)作用剤(agonist)のペプチドを徐放性ペプチドとして製造した製品があり、この製品は1ヶ月または3ヶ月以上体内でペプチドを放出することもある。また、このような研究は分子量の大きいタンパク質にも適用された。その一例として、米国登録特許第6,500,448号には生分解性高分子と金属イオンを通してヒト成長ホルモンの徐放性微細粒子を製造する技術について記載されている。韓国登録特許第10−0236771号および同第10−0329336号には組み換えヒト成長ホルモンを体内で分解させるヒアルロン酸を用いたタンパク質薬物の徐放性微細粒子剤形について記載されている。
【0006】
しかし、生体分解性ポリマーを用いた徐放型治療剤は、アミノ酸の数が少ない分子量を有するペプチドではある程度成功を得たが、分子量の大きいタンパク質治療剤の場合は成功が制限的であった。その理由は、徐放出性封入体を作る過程でタンパク質の変性が容易に起こってアミノ酸の変形がタンパク質の力価を低下させるとともに、人体で望まない免疫反応を引き起こすためである。また、一般的にタンパク質またはペプチド徐放出性封入体の微細粒子の場合、粒子サイズが大きいため、人体に注射するときに注射針の太い注射器を使用しなければならないという欠点があり、製造過程における低い生産収率が経済性の側面で問題となることもある。
【0007】
上記のような問題点を克服するために、タンパク質またはペプチドの腎臓透過を遅延させるための方法が研究された。一般的に、分子量60,000ダルトン以下のタンパク質は、体内で腎臓の濾過体に濾されずそのまま通過する。よって、これより少ない分子量を有するペプチドまたはタンパク質治療剤の大きさを増加させて体内残留時間を増加させることで注射回数を減らそうとする方法が研究された。このような方法によれば、生理活性のあるタンパク質/ペプチドは体内で徐々に放出(sustained release)される形態ではなく、持続性(long-acting)の作用を果たすことができるものと考えられる。
【0008】
注射回数を減らす方法の中でも最も普遍的に用いられる方法としては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、以下「PEG」という)のように溶解度の高い高分子物質を、タンパク質または薬理活性を持つペプチドの表面に付着させる方法がある。PEGはタンパク質またはペプチドのアミン基を有するアミノ酸に非特異的に付着し、PEGの付着されたタンパク質は溶解度が増加し、水溶液の状態で流体力学的体積(hydrodynamic volume)が増加して人体への注射の際に体内に長らく止まるという効果がある(Sada et al., J. Ferment Bioeng 71, 137-139, 1991)。
【0009】
最近では、インターフェロンαにPEGを付着させて注射回数を減らそうとする方法が商用化された。また、Kinstler等は、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)にPEGを付着させ、週1回注射しても、週3回注射する顆粒球コロニー刺激因子と同一の薬効立証した(Kinstler et al., Pharm Res 12, 1883-1888, 1995)。前記PEG−GCSFは「Neulast」という商品名で許可を受けて使用されている。
【0010】
しかし、タンパク質にPEGが付着すると、PEGのタンパク質の表面にPEGが非特異的に化学結合を成すため、PEGの付着したタンパク質の部分が受容体との結合を妨害してタンパク質の生体内力価が著しく低下するという問題がある。また、生理活性を起こす部位に非特異的に付着したPEG−タンパク質を精製過程で分離して生体内の活性低下を最小化するように結合したPEG−タンパク質を得なければならないという煩わしさがある。この過程で求めるのPEG−タンパク質結合体を得るためには生産収率が著しく低下するため経済性が低く、特定タンパク質の場合、水溶液状態における安定性が低い場合には、PEGを付着させようとする試みが失敗することもあった。
【0011】
また、糖鎖工学(glycoengineering)を用いて注射回数を減らそうとする方法が開発されて商用化された。Elliot等は、赤血球促進因子(EPO)のアミノ酸を置換する方法を用いて糖鎖を追加する方法について報告した(Nat Biotechnol 21, 414-421, 2003;米国登録特許第7,217,689号)。糖鎖工学的方法が適用された赤血球促進因子は、「Aranesp」という商品名で許可を受けて市販されており、糖鎖、シアル酸(sialic acid)および分子量の増加により血流への吸収および代謝と排泄が遅延する効果を持つものとして知られている。ところが、この技術は、生理活性物質の糖鎖付着または追加によって活性低下が誘発するおそれがあり、体内安定性の持続有無が様々なタンパク質に対して検証されておらず、生理活性タンパク質にさらに付着する糖鎖の位置が非常に制限的で、低分子ペプチドには適用させることが容易でないなど、その使用が非常に制限的である。
【0012】
遺伝工学的な方法が発達して以来、生理活性を持つタンパク質を、大きい分子量を有する他のタンパク質と融合してタンパク質の大きさを増加させる方法が研究された(Curr Opin Drug Discov Devel 12, 284-95, 2009)。例えば、生理活性を持つタンパク質の遺伝子とヒトアルブミン(human albumin)遺伝子との融合後、酵母細胞で発現させた融合タンパク質が知られている(国際出願公開WO93/15199号およびWO93/15200号)。前記アルブミンと生理活性タンパク質との融合に関する例としては、顆粒球刺激因子(Halpern et al., Pharm Res 19, 1720-1729, 2002)、ヒト成長ホルモン(Osborn et al., Eur J Pharmacol 456, 149-158, 2002)、グルカゴン様ペプチド−1(Baggio et al., Diabetes 53, 2492-2500, 2004)、インターフェロンα(Osborn et al., J Pharmacol Exp Ther 303, 540-548, 2002)などが知られている。
【0013】
遺伝子組み換え方法を用いた融合タンパク質の他の例としてはトランスフェリン(transferrin)融合タンパク質が知られている。例えば、米国登録特許第7,176,278号では、天然型トランスフェリンおよび糖化しないトランスフェリン変異体とグルカゴン様ペプチド−1などの融合体(fusion molecule)を作って体内半減期を増加させようとした。
【0014】
一方、免疫グロブリン(Immunoglobulin、Ig)のFc部分を特定のタンパク質と融合させて体内半減期を増加させる方法が開発された(米国登録特許第5,116,964号および同第5,605,690号)。TNF−α受容体断片をIgG1のFc部分と結合させた遺伝子を動物細胞(chinese hamster ovary、CHO)で発現させた物質(商品名:Enbrel)は、関節リウマチ治療剤であって、米国FDAの許可を受けて現在治療剤として使われている。また、Wang(Qinghua Wang:WO2007/012188)は、体内半減期の短い生理活性ペプチドGLP−1(t1/2<2分)またはエキセンディン−4をIgのFc部分と融合体(fusion molecule)を作って体内半減期を増加させようとした。
【0015】
このように、免疫グロブリンFcは、融合タンパク質のキャリアとして多く用いられているが、IgG Fcが有する抗体依存性細胞毒性(antibody-dependent cell cytotoxicity、ADCC)または補体依存性細胞毒性(complement dependent cytotoxicity、CDC)効果はそのまま維持する。よって、生理活性物質とFcとを融合した物質を人体に投与する場合、単純な体内半減期を維持させようとする目的の他にも複雑な免疫反応に露出されるうえ、長期反復投与の際に所望しない抗体を生成させることもある。従って、Fcの融合された前記の方法は使用が制限的になるしかない。
【0016】
また、韓国登録特許第10−0725315号には、免疫グロブリン断片を用いたタンパク質結合体およびその製造方法、すなわち生理活性を有するタンパク質とFc部分をPEGで連結させて体内半減期を増加させる方法について記載されている。前記の方法の場合、生理活性タンパク質−PEG−Fcの構造を持つ「タンパク質結合体」は、薬物動力学調査において構造が変形していない生理活性タンパク質よりさらに長い体内半減期を持つことを示した。ところが、前記の「タンパク質結合体」も2つの生理活性タンパク質とFcをPEGに化学反応によって連結させるという点で、PEG融合タンパク質の製造の際に発生しうる問題が常存する。
【0017】
免疫グロブリンを用いた他の例としては、IgG抗体全体分子と低分子化合物を化学的に連結させてペプチド薬物の体内安定性を増加させようとした(Rader et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100, 5396-5400, 2003, Doppalapudi et al., Bioorg & Med Chem 17, 501-506, 2007)。ところが、「CovX−Body」と命名されたこの技術は、生理活性タンパク質などの分子量が大きいタンパク質には使用することができず、また、前記Fc融合タンパク質とPEGタンパク質の製造の際に発生する問題点によりその使用が制限的である。
【0018】
上述のように、生理活性タンパク質治療剤またはペプチド治療剤に高分子を融合させる様々な方法が試みられてきたが、これらの方法は、特定の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドと結合させる場合、体内持続時間が医薬用として開発するのには適せず、製造過程で収率が著しく低くて経済性が欠如してしまい、長期間使用の際に体内で不要な免疫反応を引き起こしてタンパク質またはペプチド結合過程で使用される化学物質残基が体内注入の際に毒性を引き起こすなど様々な理由により全ての生理活性タンパク質または生理活性ペプチドに適用することができないという欠点がある。したがって、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドの体内活性減少を最小化しながら血中半減期を延長させることが可能な新規のタンパク質またはペプチド融合体に対する開発の必要性が要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明者は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドの体内活性減少を最小化しながら血中半減期を延長させることが可能なタンパク質またはペプチド融合体について研究したところ、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドをアルファ−1アンチトリプシンもしくはアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させて新規なタンパク質またはペプチド融合体を製造し、前記のタンパク質またはペプチド融合体が体内持続性を維持することにより血中半減期(T1/2)が固有の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドより著しく増加して体内安定性に優れることを確認し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質もしくはペプチド融合体、およびこれを用いて体内半減期を増加させる方法を提供しようとする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の薬物動態グラフを示す図である。
【図2】本発明に係るヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]の薬物動態グラフを示す図である。
【図3】本発明に係る顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の薬物動態グラフを示す図である。
【図4】本発明に係るエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の薬物動態グラフを示す図である。
【図5】本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]の生体内活性(脳下垂体が除去されたラットの重量増加)分析結果を示す図である。
【図6】本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の生体内活性(白血球数の増加)分析結果を示す図である。
【図7】本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の腹腔内糖負荷検査結果を示す図である。
【図8】本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]が糖尿モデルマウスにおける血糖減少への影響を示す図である。
【図9】本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の細胞内活性分析結果を示す図である。
【図10】本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性分析結果を示す図である。
【図11】本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のトリプシン活性抑制を示す図である。
【図12】本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のヒト好中球エラスターゼ活性抑制を示す図である。
【図13】本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動遂行結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドをアルファ−1アンチトリプシンと結合させて、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体を提供する。
【0023】
また、本発明は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドを、一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させて、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体を提供する。
【0024】
また、本発明は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドを、アルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させて、体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法を提供する。
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドを、アルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させ、体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させることを特徴とする。
【0026】
本発明において、「タンパク質融合(fusion protein/fusion polypeptide)」は、一つ以上の生理活性を有するタンパク質をアルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端またはC末端に結合させた新規の分子構成を持つタンパク質融合体を意味する。また、「ペプチド融合体(fusion peptide)」は、一つ以上の生理活性を有する低分子量のペプチドをアルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端またはC末端に結合させた新規の分子構成を持つペプチド融合体を意味する。
【0027】
前記の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドは、直接またはアミノ酸で構成されたリンカーを用いて、アルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体に結合できる。
【0028】
前記の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドとアルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体は、遺伝子組み換え技術を用いて結合させることが好ましいが、当業界における公知の架橋剤を用いてアルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端、C末端または遊離基に結合させることができる。
【0029】
前記の生理活性タンパク質は、ホルモン類およびその受容体、生物学的反応調節物質(biological response modifier)およびその受容体、サイトカイン類およびその受容体、酵素類、抗体類、抗体断片類などを含むことができる。具体的には、前記生理活性タンパク質は、ヒト成長ホルモン(hGH)、インスリン、卵胞 刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone、FSH)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)、赤血球促進因子(EPO)、血小板生成促進因子(TPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、組織プラスミノゲン活性体(tissue plasminogen activator)、血液凝固因子VII、VIIα、D、IX、hBMP2(human bone morphogenic protein 2)、KGF(keratinocyte growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、α−ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A)、α−L−イズロニダーゼ(α-L-iduronidase)、イズロン酸−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、ラクターゼ(lactase)、アデノシン・デアミナーゼ(adenosine deaminase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ (imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、スーパーオキシドジスムターゼ (superoxide dismutase)、ボトルリウム毒素、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、L−アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2およびFdなどを含むが、これらに限定されない。
【0030】
前記の生理活性ペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(glucagon-like peptide-1、GLP−1)およびその類似体、エキセンディンおよびその類似体、ソマトスタチン(somatostatin)およびその類似体、LHRH(luteinizing hormone-releasing hormone)作用剤および拮抗剤、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone)、成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone)、オキシトシン(oxytocin)、サイモシンアルファ−1(thymosin alpha-1)、コルチコトロピン放出因子(corticotropin-releasing factor)、カルシトニン(calcitonin)、ビバリルジン(bivalirudin)、バソプレシン類似体(vasopressin analogues)、および生理活性タンパク質の断片などを含むが、これに限定されない。
【0031】
前記のアルファ−1アンチトリプシンは分子量約50,000ダルトンの哺乳類の血液内に存在するタンパク質の中の一つであって、血液内濃度は約2mg/mLに達する主血液タンパク質の中の一つであり(Robin W.C. et al., Nature 298, 329-334, 1982)、アルファ−1プロテアーゼ抑制剤(alpha-1 protease inhibitor)とも呼ばれる。このタンパク質は、タンパク質分解酵素との試験の際に様々な種類のタンパク質分解酵素を抑制する。
【0032】
しかし、現在知られている疾患に関連した生体内の主な機能は好中球エラスターゼ(neutrophil elastase)の抑制剤として知られている(Beatty et al., J Biol Chem 255, 3931-3934, 1980)。アルファ−1アンチトリプシンが欠乏すると、肺の機能が低下し、深刻な遺伝的疾患を引き起こすこともある。よって、血液内から抽出したアルファ−1アンチトリプシンは、FDAの許可を経て、プロラスチン(Prolastin)という商品名で肺気腫(emphysema)の治療剤として販売されている。プロラスチンは、通常、60mg/kgの用量で1週間の隔で静脈注射によって人体に投与され、人体における安全性および有害性が立証されたタンパク質である。また、アルファ−1アンチトリプシンの体内の半減期は約5〜6日程度であると知られている(Weweres, MD, et al., N. Engl J med 316, 1055-1062, 1987)。従って、人体に過量投与しても安定性などが既に立証されたアルファ−1アンチトリプシンを、生成活性を持つタンパク質またはペプチドと融合して、体内半減期の増加した持続性物質に作ろうとする論理的根拠が提供される。アルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤としての役目や構造などは既によく知られている(Elliott, P. et al., JMB 275, 419-425, 1998)。アルファ−1アンチトリプシンのP1(N末端から358番目の位置)アミノ酸はメチオニン基であるが、このタンパク質はトリプシン、キモトリプシン(chymotrpsin)、トロンビンおよびエラスターゼなどの様々なプロテアーゼなどの活性を阻害するものと知られている。また、アルファ−1アンチトリプシンは、自然界に100余種以上の対立遺伝子(allele)が存在していて表現型(phenotype)はIEF(isoelectric focusing)の類型によってA-Zに区分する(Stoller et al., The Lancet, 365, 2225 - 2236, 2005)。これらの中で最も多いM対立遺伝子は、正常型でアミノ酸配列変異によってさらにM1(Val213)、M1(Ala213)、M2、M3のように様々な亜型(subtype)に区分される。よって、本発明に使用されたアルファ−1アンチトリプシンは自然界に存在する特定の亜型であり、他の亜型に対しても同一の効果を得ることができる。
【0033】
前記のアルファ−1アンチトリプシン変異体は、一つ以上のアミノ酸を変異させて特定部位の突然変異誘発(site-directed mutagenesis)方法を用いて製造される。例えば、アルファ−1アンチトリプシン変異体における一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを特徴とする。また、アルファ−1アンチトリプシン変異体における一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを含み、他の位置にある一つ以上のアミノ酸を変異させたことを含む。前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異したり或いは232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを含む。または、前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したものを含む。すなわち、アルファ−1アンチトリプシン変異体は、アルファ−1アンチトリプシン変異体[α1AT(P357N)]、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体[α1AT(P357N、S359T)]、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2[α1AT(P357N、C232S)]、アルファ−1アンチトリプシン三重変異体[α1AT(P357N、C232S、S359T)]を含む。
【0034】
前記のアルファ−1アンチトリプシン変異体[α1AT(P357N)]は、N末端からP2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン(Asn)」に変異させたことを特徴とする。このようなアルファ−1アンチトリプシン変異体はAsn−X−Serの新しいN−糖化部位が生成されてアルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤の活性を中和させると同時に、体内注入の際にアミノ酸の置換による免疫原性の可能性を最小化することができる。
【0035】
前記のアルファ−1アンチトリプシン二重変異体[α1AT(P357N、S359T)]は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させ、359番目のアミノ酸「セリン」を「トレオニン」に変異させたことを特徴とする。このようなアルファ−1アンチトリプシン変異体は、Asn−X−Thrの新しいN−糖化部位が生成されてアルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤の活性を中和させると同時に、体内注入の際にアミノ酸の置換による免疫原性の可能性を最小化することができる。
【0036】
前記のアルファ−1アンチトリプシン二重変異体2[α1AT(P357N、C232S)]は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて232番目のアミノ酸「システイン」を「セリン」に変異させたことを特徴とする。このようなアルファ−1アンチトリプシン変異体2は、Asn−X−Serの新しいN−糖化部位が生成されてアルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤の活性を中和させると同時に、体内注入の際にアミノ酸置換による免疫原性の可能性を最小化することができ、遊離システインによる二重体形成などを除去することができる。
【0037】
前記アルファ−1アンチトリプシン三重変異体[α1AT(P357N、C232S、S359T)]は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させ、232番目のアミノ酸「システイン」を「セリン」に変異させ、359番目のアミノ酸「セリン」を「トレオニン」に変異させたことを特徴とする。このようなアルファ−1アンチトリプシン変異体は、Asn−X−Thrの新しいN−糖化部位が生成されてアルファ−1アンチトリプシンのプロテアーゼ抑制剤の活性を中和させると同時に、体内注入の際にアミノ酸置換による免疫原性の可能性を最小化することができ、遊離システインによる二重体形成などを除去することができる。
【0038】
本発明のタンパク質またはペプチド融合体は、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH](配列番号1)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH](配列番号2)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH](配列番号3)、ヒトインターフェロンα/アルファ1−アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α](配列番号4)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF](配列番号5)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF](配列番号6)、およびエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)](配列番号7)を含む。
【0039】
本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシ融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]、ヒトインターフェロンα/アルファ1−アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]、およびエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の血中半減期(t1/2)は固有の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドより著しく増加して体内安定性に優れる。
【0040】
また、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]を注射した、脳下垂体の除去されたラットの場合、体重増加を示し、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]を注射したラットの場合、白血球の数が増加する。また、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]を投与した群は、エキセンディン−4を投与した群より血糖減少効果に優れるうえ、24時間後にも血糖が低く維持されて血糖減少の効果が長らく持続される。よって、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は効果的に生体内活性が長らく維持されることが分かる。
【0041】
また、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性(EC50)は、アルファ1−アンチトリプシンおよびアルファ−1アンチトリプシン変異体の種類に関係なく、大きい差なしに類似である。
【0042】
また、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]はトリプシン抑制活性およびヒト好中球エラスターゼに対する抑制活性が優位に現れるがヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]はトリプシン抑制活性およびヒト好中球エラスターゼに対する抑制活性が低く現れる。よって、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]およびヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]が体内で活性を持続的に維持することにより体内半減期が増加することはアルファ−1アンチトリプシの固有性質によるものではないことが分かる。
【0043】
上述したように、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、体内持続性を維持することにより血中半減期(T1/2)が固有の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドより著しく増加して体内安定性に優れる。よって、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体はタンパク質またはペプチド薬物の持続性製剤の開発に有用に使用できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0045】
実施例1:ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体の製造[T109wt:α1AT/hGH]
1.発現ベクターpSNATの製造
ヒト成長ホルモンをアルファ−1アンチトリプシンのC末端に融合させて発現するために、アルファ−1アンチトリプシンのみを発現するベクターpSNATを製造した。具体的には、C末端にヒト成長ホルモンを挿入するためにアルファ−1アンチトリプシンをコードするベクターhMU001448(KRIBB)を2つのプライマー「ALT21」(配列番号8)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅した。この際、使用されたプライマーALT30は融合されたタンパク質の活性を維持するために柔軟性を極大化するためのリンカーを含んでいる。前記の増幅されたニュークレオチドを末端に存在する2つの制限酵素「XhoI」と「BamHI」で切断し、母ベクターpSGHV0(GenBank Accession No.AF285183)に結合してクローニングした。これをpSNATと命名した。
2.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシンベクターの製造[T109wt、α1AT/hGH]
ヒト成長ホルモン(hGH)をエンコードするIOH45734(invitrogen)ベクターを母体として、2つのプライマーDH22(配列番号10)とALT12(配列番号11)を用いてPCRでヒト成長ホルモンを増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを末端に存在する2つの制限酵素BamHIとNotIで切断し、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATに結合して発現ベクターT109wt((配列番号1)を製造した。
3.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T102wt)の発現
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いて、前記2で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)の発現を確認した。CHO−K1は、10%FBS(Fetal Bovine Serum)と抗生剤を含むDMEM(Dulbecco's Modified Eagle Media)に5%CO2と37℃の条件で培養して維持した。ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)を導入する1日前、100mmの培養皿に細胞を1×106濃度で接種して培養した後、FBSと抗生剤のない800μLのDMEMと5μgのヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)を混合して常温で1分間維持した後、20μgのPEI(Polyethylenimine, linear, Polysciences Inc(Cat. No:23966, MW〜25000))と混合して10〜15分間常温で放置した。この際、1日前に培養した細胞をPBSで洗浄し、新しい培養液6mLのDMEMを添加した。10〜15分後、常温に放置したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)をこの培養皿に添加した。翌PBSで洗浄し、FBSのないIMDM(Cat. No12200−028、Gibco)(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)培地を添加してタンパク質の発現を確認した。
4.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)の精製
前記3によってチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)で発現したT109wtタンパク質を下記のとおり精製した。具体的には、細胞培養液で分泌されたヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体(T109wt)を精製するために、培養液を遠心分離して細胞を除去した後、上澄み液のみを取った。細胞上澄み液を平衡緩衝溶液(20mMリン酸ナトリウム、pH8.0)で希釈し、平衡緩衝溶液で平衡化されたQ−Sepharose(GE Healthcare、米国)カラムに注入した後、平衡緩衝溶液で十分に洗浄してから塩の濃度を増加(0〜400mM NaCl、20mMリン酸ナトリウム、pH8.0)させて溶出した。溶出された前記のタンパク質溶液に塩を加えて、平衡化されているフェニル−セファロース(Phenyl-Sepharose)(GE Healthcare、米国)カラムに注入した後、平衡緩衝溶液で十分に洗浄し、塩の濃度を減少(2〜0M NACl、20mMリン酸ナトリウム、p6.8)させて溶出した。前記の溶液をVivaspin20(GE Healthcare、米国)を用いて濃縮し、高純度で精製されたT109wtタンパク質を得た。
【0046】
実施例2:ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体の製造[T109:α1AT(P357N)/hGH]
1.アルファ−1アンチトリプシン変異体の製造(pDHT3Nクローニングベクター
タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の融合体の製造に用いられるアルファ−1アンチトリプシンの活性を減少させるために、アルファ−1アンチトリプシン変異体を製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンをコードするベクターhMU001448(KRIBB)をPCRで増幅し、yT&AベクターにクローニングしてpDHT3ベクターを製造した。その後、2つのプライマーALT1(配列番号12)およびALT2(配列番号13)と変異体生成キット(Stratagene、QuikChange II Cat No.200523−5)を用いて、アルファ−1アンチトリプシン活性に影響を与える、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて活性を減少させ、N−糖化を誘導したpDHT3Nクローニングベクターを製造した。
2.発現ベクターpSNATNの製造
ヒト成長ホルモンを、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン変異体のC末端に融合させて発現するために、pSNATNベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシン変異体のC末端にヒト成長ホルモンを挿入するために、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン変異体をコードするベクターpDHT3Nを2つのプライマー「ALT14」(配列番号14)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅し、pSNATと2つの制限酵素「EcoRV」と「BamHI」を用いてクローニングした。これをpSNATNと命名した。
3.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異体ベクターの製造[T109、α1AT(P357N)/hGH]
前記の実施例1の2と同一の方法で増幅されたヒト成長ホルモンヌクレオチドを、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNに結合し、発現ベクターT109(配列番号2)を製造した。
4.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T109)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いてヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T109)の発現を確認した。
5.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T109)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法でヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T109)を精製した。
【0047】
実施例3:ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体の製造[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]
1.アルファ−1アンチトリプシン二重変異体の製造(pDHT3NTクローニングベクター)
タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の融合体の製造に用いられるアルファ−1アンチトリプシン変異体の糖化の均質性のために、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体を製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンの活性に影響を与えるP2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて活性を減少させ、N−糖化を誘導したpDHT3Nクローニングベクターを母体として、2つのプライマーALT82(配列番号15)およびALT83(配列番号16)と変異体生成キット(Enzynomics、EZChange Cat No.EM020)を用いて359番目のアミノ酸「セリン」を「トレオニン」に変異させてpDHT3NTクローニングベクターを製造した。
2.発現ベクターpSNATNTの製造
ヒト成長ホルモンを、糖化の均質性を有しながら活性が減少したアルファ−1アンチトリプシン二重変異体のC末端に融合させて発現するために、pSNATNTベクターを製造した。
具体的には、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体のC末端にヒト成長ホルモンを挿入するために、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体をコードするベクターpDHT3NTを2つのプライマー「ALT14」(配列番号14)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅し、pSNATと2つの制限酵素「EcoRV」と「BamHI」を用いてクローニングした。これをpSNATNTと命名した。
3.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異体ベクターの製造[T109T、α1AT(P357N、S359T)/hGH]
前記実施例1の2と同一の方法で増幅されたヒト成長ホルモンヌクレオチドを、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNTに結合し、発現ベクターT109T(配列番号3)を製造した。
4.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T109T)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いてヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T109T)の発現を確認した。
5.ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T109T)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法でヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T109T)を精製した。
【0048】
実施例4:ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体の製造[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]
1.ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異体ベクターの製造[T502、α1AT(P357N)/IFN−α]
ヒトインターフェロンα(IFN−α)をエンコードするMHS1010−98051913(Open biosystems)ベクターを母体とし、2つのプライマー ALT45(配列番号17)およびALT49(配列番号18)を用いてPCRでヒトインターフェロンα(IFN−α)を増幅した。前記の増幅したニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素「BamHI」と「NotI」で切断し、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNに結合して発現ベクターT502(配列番号4)を製造した。
2.ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T502)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いてヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T502)の発現を確認した。
3.ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T502)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法でヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T502)を精製した。
【0049】
実施例5:顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体の製造[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]
1.アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2の製造(pDHT3NSクローニングベクター)
タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の融合体の製造に用いられるアルファ−1アンチトリプシンの固有な活性を減少させながら、アルファ−1アンチトリプシンのシステインによる二重体形成などのタンパク質変性の可能性を除去するために、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2を製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンの活性に影響を与えるP2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて活性を減少させ、N−糖化を誘導したpDHT3Nクローニングベクターを母体として、2つのプライマーALT52(配列番号19)およびALT83(配列番号20)と変異体生成キット(Stratagene、QuikChangeII Cat No.200523−5)を用いて、アルファ−1アンチトリプシンに存在する232番目のアミノ酸「システイン」を「セリン」に変異させてpDHT3NSクローニングベクターを製造した。
2.発現ベクターpSNATNSの製造
顆粒球刺激因子を、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン二重変異体2のC末端に融合させて発現するために、pSNATNSベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2のC末端に顆粒球刺激因子を挿入するために、アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2をコードするベクターpDHT3NSを2つのプライマー「ALT14」(配列番号14)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅し、pSNATと2つの制限酵素「BstEII」と「BamHI」を用いてクローニングした。これをpSNATNSと命名した。
3.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異体2ベクターの製造[T602S、α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]
顆粒球刺激因子(G−CSF)をエンコードするIHS1380−97652343(Open biosystems)ベクターを母体とし、2つのプライマーALT56(配列番号21)とALT7(配列番号22)を用いてPCRで顆粒球刺激因子(G−CSF)を増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素「BamHI」と「NotI」で切断し、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNSに結合して発現ベクターT602S(配列番号5)を製造した。
4.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T602S)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いて顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T602S)の発現を確認した。
5.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T602S)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法で顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体(T602S)を精製した。
【0050】
実施例6:顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体の製造[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]
1.アルファ−1アンチトリプシン三重変異体の製造(pDHT3NSTクローニングベクター)
タンパク質治療剤またはペプチド治療剤の融合体の製造に用いられるアルファ−1アンチトリプシン二重変異体の糖化均質性のために、アルファ−1アンチトリプシン三重変異体を製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンの活性に影響を与えるP2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」を「アスパラギン」に変異させて活性を減少させ、N−糖化を誘導しアルファ−1アンチトリプシンのシステインによる二重体形成などのタンパク質変性の可能性を除去するために、232番目のアミノ酸「システイン」を「セリン」に変異させたアルファ−1アンチトリプシン二重変異体2のpDHT3NSクローニングベクターを母体として、2つのプライマーALT82(配列番号15)およびALT83(配列番号16)と変異体生成キット(Enzynomics、EZchange Cat No.EM020)を用いて359番目のアミノ酸「セリン」を「トレオニン」に変異させてpDHT3NSTクローニングベクターを製造した。
2.発現ベクターpSNATNSTの製造
顆粒球刺激因子を、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン三重変異体のC末端に融合させて発現するために、pSNATNSTベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシン三重変異体のC末端に顆粒球刺激因子を挿入するために、アルファ−1アンチトリプシン三重変異体をコードするベクターpDHT3NSTを2つのプライマー「ALT14」(配列番号14)とALT30(配列番号9)を用いてPCRで増幅し、pSNATと2つの制限酵素「BstEII」と「BamHI」を用いてクローニングした。これをpSNATNSTと命名した。
3.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異体ベクターの製造[T602ST、α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]
顆粒球刺激因子(G−CSF)をエンコードするIHS1380−97652343(Open biosystems)ベクターを母体とし、2つのプライマーALT56(配列番号21)とALT57(配列番号22)を用いてPCRで顆粒球刺激因子(G−CSF)を増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素「BamHI」と「NotI」で切断し、BamHI/NotI切断部を持っているpSNATNSTに結合して発現ベクターT602ST(配列番号6)を製造した。
4.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体(T602ST)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いて顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体(T602ST)の発現を確認した。
5.顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体(T602ST)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法で顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体(T602ST)を精製した。
【0051】
実施例7:エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体の製造[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]
1.発現ベクターpSCATの製造
エキセンディン−4をアルファ−1アンチトリプシンのN末端に融合させて発現するために、pSCATベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシンのN末端にエキセンディン−4を挿入するために、アルファ−1アンチトリプシンをコードするベクターhMU001448(KRIBB)を2つのプライマーALT21(配列番号8)とALT5(配列番号23)を用いてPCRで増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素XhoIとNotIで切断し、母ベクターpSGHV0(GenBank Acession No.AF285183)に結合してクローニングした。これをpSCATと命名した。
2.発現ベクターpSCATNの製造
エキセンディン−4を、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端に融合させて発現するために、pSCATNベクターを製造した。具体的には、アルファ−1アンチトリプシン変異体のN末端にエキセネィン−4を挿入するために、活性の減少したアルファ−1アンチトリプシン変異体をコードするベクターpDHT3Nを2つの制限酵素EcoRVとNotIを用いてpSCATとクローニングした。これをpSCATNと命名した。
3.エキセンディン−4の製造
エキセンディン−4をエンコードするポリヌクレオチドを製造するために、DH15(sense codon、配列番号24)とDH16(antisensecodon、配列番号25)を用いてPCRで増幅した。
4.エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異体ベクターの製造[T304、Exendin−4/α1AT(P357N)]
エキセンディン−4をエンコードするポリヌクレオチドは、前記3で製造されたものを鋳型として、2つのプライマーALT44(配列番号26)とALT41(配列番号27)を用いてPCRで増幅した。前記の増幅されたニュークレオチドを、末端に存在する2つの制限酵素XhoIとBamHIで切断し、XhoIとBamHI切断部を持っているpSCATNに結合してエキセンディン−4とアルファ−1アンチトリプシン変異体ベクター(T304、配列番号7)を製造した。
5.エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)の発現
前記の実施例1の3と同一の方法でチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1)を用いてエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)の発現を確認した。
6.エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)の精製
前記の実施例1の4と同一の方法でエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)を精製した。
【0052】
実験例1:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の酵素免疫分析法
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の分析のために、下記のとおり酵素免疫分析法を行った。
1.ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/α−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の酵素免疫分析法
ヒト成長ホルモンに対するモノクローナル抗体(Medix Biochemica、フィンランド)をリン酸塩緩衝溶液に1〜5μg/mLの濃度で希釈して100μLを96ウェルプレート(Nunc、デンマーク)に分注した後、常温で15〜18時間放置した。ウェルプレートに付着せずに残っている抗体を除去した後、1%牛血清アルブミンが溶解されたリン酸塩緩衝溶液250μLを分注して常温で2時間放置させ、洗浄溶液(0.05%ツイン20、リン酸塩緩衝溶液)で3回洗浄した後、溶液を除去した。試料は1%牛血清アルブミンの溶解されたリン酸塩緩衝液で希釈し、96ウェルプレートに添加して常温で2時間反応させた。96ウェルプレートを洗浄溶液で5回洗浄した後、sulfo−NHS−biotin(Pierce biotechnology、米国)を用いて接合させたヒト成長ホルモンモノクローナル抗体−ビオチン接合体を希釈溶液で希釈して96ウェルプレートに100μLずつ分注した。次いで、プレートを常温で2時間反応させた後、洗浄溶液で5回洗浄し、しかる後に、ストレプタビジン−HRP溶液を加えて常温で30分間反応させた。洗浄溶液で5回洗浄し、TMB(3,3',5,5'−テトラメチルベンジディン)と過酸化水素水発色溶液100μLを各ウェルに添加した後、暗所で30分間反応させた。1M硫酸100μLを各ウェルに添加して反応を終了させ、VersaMax microplate reader(Molecular Device、米国)で450nmで吸光度を測定した。各試料の定量値は標準物質に対する標準曲線を作成した後、回帰分析によって求めた。
2.ヒトインターフェロンα(IFN−α)、ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]の酵素免疫分析法
ヒトインターフェロンα(IFN−α)およびヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体の酵素免疫分析法は、Bender Medsystems(オーストリア)社のHuman IFN−α Matched Antibody Pairs for ELISAの抗体を使用した。10μg/mLのIFN−α抗体を前記1の方法によってコートおよび遮断し、試料は希釈の後に常温で2時間シェーキングして反応させ、Anti−IFN−α−HRP接合体は50μLを用いて常温で2時間シェーキングして反応させた。以後の過程は前記1の方法によって行った。
3.顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の酵素免疫分析法
前記1でヒト成長ホルモン抗体の代わりに顆粒球刺激因子(G−CSF)に対するモノクローナル抗体(RND systems、米国)をリン酸塩緩衝溶液に1〜5μg/mLの濃度で希釈して使用し、ヒト成長ホルモンモノクローナル抗体−ビオチン接合体の代わりに顆粒球刺激因子ポリクローナル抗体−ビオチン接合体(RND systems、米国)を使用したものを除外しては、前記1の方法によって行った。
4.エキセンディン−4、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の酵素免疫分析法
エキセンディン−4の場合、前記1でヒト成長ホルモンの代わりにエキセンディン−4に対するポリクローナル抗体(ペプトロン、韓国)をリン酸塩緩衝溶液に5〜10μg/mLの濃度で希釈して使用し、ヒト成長ホルモンモノクローナル抗体−ビオチン接合体の代わにエキセンディン−4モノクローナル抗体−ビオチン接合体を使用したものを除外しては、前記1と同様の過程を行った。
エキセンディン−4/α−1アンチトリプシン変異融合体(T304)の場合、前記の実施例7で製造したエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体(T304)をFreund adjuvant(Sigma、米国)と混ぜてラットに注射して抗血清を生成させた後、Protein G−Sepharose(GE Heathcare、米国)を用いて精製した。前記の精製された抗体をリン酸緩衝溶液に10〜20μL/mLの濃度で希釈して96ウェルプレートにコートし、sulfo−NHS−biotin(pierce biotechnology、米国)を用いて接合させたエキセンディン−4/アルファ−1のアンチトリプシン変異融合体(T304)ポリクローナル抗体−ビオチン接合体を用いて前記1の方法によって行った。試料反応と接合体反応はプレートをシェーキングして行った。
【0053】
実験例2:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の薬物動態実験
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の薬物動態を確認するために、下記のとおり実験を行った。
1.ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の薬物動態
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。ヒト成長ホルモン投与群には3匹を割り当て、残りの融合体投与群にはそれぞれ5匹ずつ割り当てた。各群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例1〜3で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]をそれぞれラットkg当たり720μgの投与量で皮下注射した。希釈液はリン酸塩緩衝溶液を使用した。0、1、2、4、8、12、16、24、30、48時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。対照群では、ヒト成長ホルモンScitropin(SciGen、シンガフォル)をラットkg当たり200μgの投与量で皮下注射し、希釈液としてリン酸塩緩衝溶液を使用し、0、0.33、1、2、5、8、12、18、24、30、48時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。各試料に対しては前記の実験例1の酵素免疫分析方法を用いて分析した。
本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の薬物動態グラフは図1に示した。
図1に示すように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]は、血中半減期(t1/2)が5.3時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は8時間であった。ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]は、血中半減期(t1/2)が5.4時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は12時間であった。ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]は、血中半減期(t1/2)が4.9時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は12.8時間であった。これに対し、ヒト成長ホルモン(hGH)は、血中半減期(t1/2)が0.8時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は1時間であった。よって、本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109wt:α1AT(P357N)/hGH]、およびヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]は、ヒト成長ホルモンに比べて著しく増加した体内安定性を有することを確認することができた。
2.ヒトインターフェロンα(IFN−α)、ヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]の薬物動態
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。各群当たり5匹ずつ割り当てた。一つの実験群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例4で製造したヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]をラットkg当たり200μgの投与量で皮下注射し、0、0.33、1、2、5、8、12、18、24、30、48、72、96時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。対照群として、ヒトインターフェロンα(IFN−α、インターマックスアルファ、LG生命科学)を用いてラットkg当たり60μgの投与量で皮下注射し、0、0.33、1、2、5、8、12、18、24時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。各試料に対しては前記の実験例1の酵素免疫分析方法を用いて分析した。
本発明に係るヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]の薬物動態グラフは図2に示した。
図2に示すように、本発明のヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]は、血中半減期(t1/2)が18.5時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は12時間であった。ヒトインターフェロンαは、血中半減期(t1/2)が3.4時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は1.4時間であった。よって、本発明に係るヒトインターフェロンα/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α]は、ヒトインターフェロンαに比べて著しく増加した体内安定性を有することを確認することができた。
3.顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の薬物動態
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。顆粒球刺激因子投与群には3匹を割り当て、残りの融合体投与群にはそれぞれ5匹ずつ割り当てた。各群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例5〜6で製造した顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602ST:α1AT(PP357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]をそれぞれラットkg当たり340μgの投与量で皮下注射し、0、1、2、4、8、12、16、24、30、48時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。対照群では、顆粒球刺激因子Filgrastim(Gracin、第一薬品(株))を用いてラットkg当たり100μgの投与量で皮下注射し、0、1、2、4、8、12、18、24、30、48時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。各試料に対しては前記の実験例1の酵素免疫分析方法を用いて分析した。
本発明に係る顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の薬物動態グラフは図3に示した。
図3に示すように、本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]は、血中半減期(t1/2)が5.1時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は13.6時間であった。顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]は、血中半減期(t1/2)が4.5時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は16時間であった。これに対し、顆粒球刺激因子は、血中半減期(t1/2)が1.8時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は1.8時間であった。よって、本発明に係る顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]は、顆粒球刺激因子に比べて著しく増加した体内安定性を有することを確認することができた。
4.エキセンディン−4、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の薬物動態
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。各群当たり5匹ずつ割り当てた。一つの実験群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例7で製造したエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]をラットkg当たり520μgの投与量で皮下注射し、0、1、2、4、8、12、16、24、30、48、72時間の後に採血して遠心分離した後、血清を得た。対照群としては、エキセンディン−4を用いてラットkg当たり40μgの投与量で皮下注射し、0、10、20、30、40、60、120、180、240、300、360分の後にヘパリンの処理されたチューブに採血して遠心分離を行った後、血清を得た。各試料に対しては前記の実験例1の酵素免疫分析方法を用いて分析した。
本発明に係るエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の薬物動態グラフは図4に示した。
図4に示すように、本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]は、血中半減期(t1/2)が19.1時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は10.4時間であったが、これに対し、エキセンディン−4は、血中半減期(t1/2)が0.8時間であり、その血中最高濃度到達時間(Tmax)は0.4時間であった。よって、本発明に係るエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]は、エキセンディン−4に比べて著しく増加した体内安定性を有することを確認することができた。
【0054】
実験例3:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の生体内活性実験
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の生体内活性を確認するために、下記のとおり実験を行った。
1.ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]の生体内活性
実験動物として脳下垂体の除去されたSprague−Dawleyラットを使用した。実験群を3つの群に分け、各群当たり7匹ずつ割り当てた。各群の脳下垂体の除去されたSprague−Dawleyラットに、前記の実施例2で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]をラット当たり18μg、ヒト成長ホルモン(Eutropin、LG生命科学)をラット当たり5μg、対照群としてリン酸塩緩衝溶液を用いて毎日皮下注射した。注射の後、ラットの重量を毎日測定した。
本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]の生体内活性(脳下垂体が除去されたラットの重量増加)分析結果は図5に示した。
図5に示すように、リン酸塩緩衝溶液を注射した脳下垂体の除去されたラットの場合、体重増加が殆ど起こっていないがしかし、ヒト成長ホルモンとヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]を注射した脳下垂体の除去されたラットの場合は、7日目にそれぞれ約10.2%と9.4%の体重増加を示した。したがって、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]は、ヒト成長ホルモンと同様に、脳下垂体の除去されたラットで効果的に生体内活性を示すことが分かる。
2.顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の生体内活性
実験動物としてSprague−Dawleyラットを使用した。実験群を5つの群に分け、各群当たり5匹ずつ割り当てた。各群のSprague−Dawleyラットに、前記の実施例5で製造した顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(PP357N、C232S)/G−CSF]をラットkg当たり340μgと1700μg、前記の実施例6で製造した顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]をラットkg当たり1700μg、および顆粒球刺激因子Filgrastim(Gracin、第一薬品(株))をラットkg当たり100μgの投与量で皮下注射し、実験の3日前、1日、2日、3日、4日、5日目に尾静脈から採血してHematology Analyzer(Pentra120)を用いて白血球数を測定した。
本発明に係る顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の生体内活性(白血球数の増加)分析結果は図6に示した。
図6に示すように、顆粒球刺激因子Filgrastim投与群では、白血球数の増加が注射後1日目に最高値に到達した後、2日目からは基底状態に止まったが、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]のラットkg当たり340μm投与群では白血球数の増加が注射後2日目に最高値に到達した後、3日目から減少した。顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]をそれぞれラットkg当たり1700μg投与群では、白血球数の増加が注射後3日目まで維持されてから4日目から減少した。よって、本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]は、顆粒球刺激因子に比べて生体内活性をさらに長らく維持するということを確認することができた。
3.エキセンディン−4、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の生体内活性
本発明に係るエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の生体内活性を確認するために、下記のとおり腹腔内糖負荷検査および糖尿モデルのマウスにおける血糖減少実験を行った。
3−1.腹腔内の糖負荷検査
8週齢のC57BL/6マウスに4週間高脂肪の飼料を食餌させて肥満を誘導した。実験開始の15時間前に絶食させた状態で腹腔内の糖負荷検査を行った。具体的には、前記の実施例7で製造したエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]とエキセンディン−4をそれぞれ10nmol/kgの投与量でマウスの腹腔内に単回投与した。試験物質投与の後それぞれ30分、12時間、24時間が経過した後、ブドウ糖を1.5g/5mL/kg腹腔投与し、0、10、20、30、60、90、120分に血糖計(allmedicus、韓国)を用いて血糖を測定した。
本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の腹腔内の糖負荷検査結果は図7に示した。
図7に示すように、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]の投与群はエキセンディン−4の投与群より血糖減少の効果が長らく持続されて血糖減少効果に優れることを確認した。
3−2.糖尿モデルのマウスにおける血糖減少実験
実験動物として9週齢のdb/dbマウスを使用した。実験群を3つの群に分けて各群当たり6匹ずつ割り当てた。9週齢のdb/dbマウスに飼料制限を加えていない状態で、前記の実施例7で製造したエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]とエキセンディン−4をそれぞれ100nmol/kgの投与量で各実験群のマウスに皮下注射し、試験物質投与0、1、3、6、24、43、48、52時間経過の後に血糖計(allmedicus、韓国)を用いて血糖を測定した。
本発明のエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]が糖尿モデルのマウスにおいて血糖減少に及ぼす影響を示す結果は図8に示した。
図8に示すように、エキセンディン−4投与群は24時間以後の血糖が対照群と類似であったが、エキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)]投与群は24時間後にも血糖が低く維持されて血糖減少の効果が長らく持続された。
【0055】
実験例4:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の細胞内活性実験
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の生体内活性を確認するために、下記のとおり実験を行った。
1.ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の細胞内活性
マウスリンパ腫細胞(NB2 cell)は、RPMI1640に10%HS(Horse serum)、10%FBS、2−メルカプトエタノールと抗生剤を含む培地を用いて5%CO2、37℃の条件で培養した。実験に使用するNB2細胞を使用する24時間前に、RPMI1640に10%HSが入っている培地に入れて培養した。培養24時間後、NB2細胞を1×DPBS(Dulbecco's Phosphate buffered Saline)で1回洗浄した。その後、5%HS組成のRPMI1640培地に細胞数が2×104/100μL/well状態になるように準備して96ウェルプレート(Corning、米国)にそれぞれ100μLずつ分注し、濃度別に希釈した試料をウェルに20μLずつ接種させ、5%CO2、37℃の条件で48時間培養させた。次いで、MTS溶液(Promega、米国)を96ウェルプレートにウェル当たり20μLずつ入れて5%CO2、37℃の培養器で3時間反応させた後、10%SDS(sodium dodecyl sulfate)を20μLずつ加えて反応を終了した。吸光度はVersaMax microplate reader(Molecular Device、米国)を用いて490nmで測定した。MTS検索法で得られた吸光度の値で50%の細胞が生き残るようにした薬物の濃度をEC50(50% effective concentration)に決定した。
本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の細胞内活性の分析結果は表1および図9に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1および図9に示すように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]のEC50値は、大きい差異がないため、お互い類似であった。よって、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の細胞内活性EC50はアルファ−1アンチトリプシンのアミノ酸変異に関係なくお互い類似であるということを確認することができた。
2.顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性
マウス骨髄亜細胞(Murine myeloblsatic NFS−60細胞)は、RPMI1640に10%FBS mouseIL−3と抗生剤を含む培地を用いて5%CO2、37℃の条件で培養した。その後、マウス骨髄亜細胞を用いて前記1の方法と同様に行って吸光度を490nmで測定し、MTS検索法で得られた吸光度の値で50%の細胞を生き残るようにした薬物の濃度をEC50に決定した。
本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性の分析結果は表2および図10に示した。
【0058】
【表2】
【0059】
表2および図10に示すように、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、および顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]のEC50値は、大きい差異がないため、お互い類似であった。よって、本発明の顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF]、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF]の細胞内活性EC50は、アルファ−1アンチトリプシンのアミノ酸変異に関係なくお互い類似であることを確認することができた。
【0060】
実験例5:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体のトリプシン活性の抑制比較実験
本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のトリプシン活性の抑制効果を確認するために、下記のとおり実験を行った。
前記の実施例1で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]と前記の実施例2で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]をそれぞれトリプシンと混ぜた。この際、トリプシンと融合体の濃度は10nMであり、1時間常温で反応させた後、基質であるN−Benzoyl−Val−Gly−Arg p−nitroanilide hydrochloride(Sigma、米国)を0.2mMとなるように加えて405nmで吸光度の変化を測定した。トリプシンの酵素unitは1分当たり吸光度0.001を変化させる基質濃度に設定し、酵素活性はunits/mgトリプシンで計算した。対照群としてはトリプシンを使用した。
結果は図11に示した。
図11に示すように、トリプシンとアルファ−1アンチトリプシンのKa(association constant)値を計算した結果、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]のKa値は約7.5×108M−1であり、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のKa値は約8.0×106M−1であった。前述したように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]はトリプシン抑制活性が優れ、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]はトリプシン抑制活性が低く現れることにより、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]およびヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]が体内で活性を持続的に維持することによって体内半減期が増加することがアルファ−1アンチトリプシンの固有性質によるものではないことが分かった。
【0061】
実験例6:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体のヒト好中球エラスターゼ活性の抑制比較実験
本発明に係る天然型ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]とヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]のヒト好中球エラスターゼ活性の抑制効果を確認するために、下記のとおり実験を行った。
前記の実施例1で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]と前記の実施例2で製造したヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]をそれぞれヒト好中球エラスターゼと混ぜた。この際、エラスターゼと融合体の濃度は40nMであり、1時間常温で反応させた後、基質であるMeOSuc−AAPV−pNA(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,米国)を1mMとなるように加えて405nmで吸光度の変化を測定した。ヒト好中球エラスターゼの酵素unitは1分当たり吸光度0.001を変化させる基質濃度に設定し、酵素活性はunits/mgトリプシンで計算した。
結果は図12に示した。
図12に示すように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]は、ヒト好中球エラスターゼをほぼ100%抑制させ、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH」のKa値は約1.4×107M−1であった。前述したように、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]はヒト好中球エラスターゼに対する抑制活性が優れ、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]はヒト好中球エラスターゼに対する抑制活性が低く現れることにより、本発明のヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]およびヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]が体内で活性を持続的に維持することによって体内半減期が増加することはアルファ−1アンチトリプシンの固有性質によるものではないことが分かった。
【0062】
実験例7:本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体の電気泳動実験
本発明に係る天然型ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の糖化部位の追加による分子量の変化を調べるために、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動実験を行った。
結果は図13に示した。
図13に示すように、糖化部位の追加のない天然型ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]に比べて糖化部位(Asn−X−Ser)が追加されたヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]は、タンパク質染色帯が分子量の高い方にさらに広がって現れ、追加糖化の部位がAsn−X−Thrのアミノ酸の配列を有するヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]の場合は、分子量の増加をさらに明確に確認することができた。よって、本発明に係るヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH]とヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH]から糖化部位の追加による分子量の変化を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、体内持続性を維持することによって血中半減期(T1/2)が固有の生理活性タンパク質または生理活性ペプチドより著しく増加して体内安定性に優れる。よって、本発明に係るタンパク質またはペプチド融合体は、タンパク質またはペプチド薬物の持続性製剤の開発に有用に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性タンパク質または生理活性ペプチドをアルファ−1アンチトリプシンと結合させ、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項2】
前記の融合体は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドが、直接またはアミノ酸からなるリンカーを用いて、アルファ−1アンチトリプシンに結合したことを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項3】
前記の生理活性タンパク質は、ホルモン類およびその受容体、生物学的反応調節物質(biological response modifier)そしてその受容体、サイトカイン類それからその受容体、酵素類、抗体類および抗体断片類よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項4】
前記の生理活性タンパク質は、ヒト成長ホルモン(hGH)、インスリン、卵胞 刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone、FSH)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)、赤血球促進因子(EPO)、血小板生成促進因子(TPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、組織プラスミノゲン活性体(tissue plasminogen activator)、血液凝固因子VII、VIIα、D、IX、hBMP2(human bone morphogenic protein 2)、KGF(keratinocyte growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、α−ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A)、α−L−イズロニダーゼ(α-L-iduronidase)、イズロン酸−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、ラクターゼ(lactase)、アデノシン・デアミナーゼ(adenosine deaminase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ (imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、スーパーオキシドジスムターゼ (superoxide dismutase)、ボトルリウム毒素、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、L−アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2およびFdよりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項3に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項5】
前記の生理活性ペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(glucagon-like peptide-1、GLP−1)およびその類似体、エキセンディンそしてその類似体、ソマトスタチン(somatostatin)それからその類似体、LHRH(luteinizing hormone-releasing hormone)作用剤および拮抗剤、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone)、成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone)、オキシトシン(oxytocin)、サイモシンアルファ−1(thymosin alpha-1)、コルチコトロピン放出因子(corticotropin-releasing factor)、カルシトニン(calcitonin)、ビバリルジン(bivalirudin)、バソプレシン類似体(vasopressin analogues)、および生理活性タンパク質の断片よりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項6】
前記の融合体は、配列番号1で表されるヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項7】
生理活性タンパク質または生理活性ペプチドを、一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させ、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項8】
前記の融合体は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドが、直接またはアミノ酸からなるリンカーを用いて、一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体に結合したことを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項9】
前記の生理活性タンパク質は、ホルモン類およびその受容体、生物学的反応調節物質そしてその受容体、サイトカイン類それからその受容体、酵素類、抗体類および抗体断片類よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項10】
前記の生理活性タンパク質は、ヒト成長ホルモン(hGH)、インスリン、卵胞 刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone、FSH)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)、赤血球促進因子(EPO)、血小板生成促進因子(TPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、組織プラスミノゲン活性体(tissue plasminogen activator)、血液凝固因子VII、VIIα、D、IX、hBMP2(human bone morphogenic protein 2)、KGF(keratinocyte growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、α−ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A)、α−L−イズロニダーゼ(α-L-iduronidase)、イズロン酸−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、ラクターゼ(lactase)、アデノシン・デアミナーゼ(adenosine deaminase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ (imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、スーパーオキシドジスムターゼ (superoxide dismutase)、ボトルリウム毒素、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、L−アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2およびFdよりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項9に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項11】
前記の生理活性ペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(glucagon-like peptide-1、GLP−1)およびその類似体、エキセンディンそしてその類似体、ソマトスタチン(somatostatin)それからその類似体、LHRH(luteinizing hormone-releasing hormone)作用剤および拮抗剤、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone)、成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone)、オキシトシン(oxytocin)、サイモシンアルファ−1(thymosin alpha-1)、コルチコトロピン放出因子(corticotropin-releasing factor)、カルシトニン(calcitonin)、ビバリルジン(bivalirudin)、バソプレシン類似体(vasopressin analogues)、および生理活性タンパク質の断片よりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項12】
前記の一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項13】
前記の一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを含み、他の位置にある一つ以上のアミノ酸を変異させたことを含むことを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項14】
前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、或いは232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを特徴とする、請求項13に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項15】
前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを特徴とする、請求項13に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項16】
前記の融合体は、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH](配列番号2)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH](配列番号3)、ヒトインターフェロンα/アルファ1−アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α](配列番号4)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF](配列番号5)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF](配列番号6)、およびエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)](配列番号7)よりなる群から選ばれた1種であることを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項17】
生理活性タンパク質/生理活性ペプチドを、アルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させ、体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項18】
前記の一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを特徴とする、請求項17に記載の体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項19】
前記の一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを含み、他の位置にある一つ以上のアミノ酸を変異させたことを含むことを特徴とする、請求項17に記載の体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項20】
前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、或いは232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを特徴とする、請求項19に記載の体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項21】
前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを特徴とする、請求項19に記載の体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項1】
生理活性タンパク質または生理活性ペプチドをアルファ−1アンチトリプシンと結合させ、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項2】
前記の融合体は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドが、直接またはアミノ酸からなるリンカーを用いて、アルファ−1アンチトリプシンに結合したことを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項3】
前記の生理活性タンパク質は、ホルモン類およびその受容体、生物学的反応調節物質(biological response modifier)そしてその受容体、サイトカイン類それからその受容体、酵素類、抗体類および抗体断片類よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項4】
前記の生理活性タンパク質は、ヒト成長ホルモン(hGH)、インスリン、卵胞 刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone、FSH)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)、赤血球促進因子(EPO)、血小板生成促進因子(TPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、組織プラスミノゲン活性体(tissue plasminogen activator)、血液凝固因子VII、VIIα、D、IX、hBMP2(human bone morphogenic protein 2)、KGF(keratinocyte growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、α−ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A)、α−L−イズロニダーゼ(α-L-iduronidase)、イズロン酸−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、ラクターゼ(lactase)、アデノシン・デアミナーゼ(adenosine deaminase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ (imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、スーパーオキシドジスムターゼ (superoxide dismutase)、ボトルリウム毒素、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、L−アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2およびFdよりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項3に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項5】
前記の生理活性ペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(glucagon-like peptide-1、GLP−1)およびその類似体、エキセンディンそしてその類似体、ソマトスタチン(somatostatin)それからその類似体、LHRH(luteinizing hormone-releasing hormone)作用剤および拮抗剤、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone)、成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone)、オキシトシン(oxytocin)、サイモシンアルファ−1(thymosin alpha-1)、コルチコトロピン放出因子(corticotropin-releasing factor)、カルシトニン(calcitonin)、ビバリルジン(bivalirudin)、バソプレシン類似体(vasopressin analogues)、および生理活性タンパク質の断片よりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項6】
前記の融合体は、配列番号1で表されるヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン融合体[T109wt:α1AT/hGH]であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項7】
生理活性タンパク質または生理活性ペプチドを、一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させ、体内持続性を維持することにより体内半減期が増加したタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項8】
前記の融合体は、生理活性タンパク質または生理活性ペプチドが、直接またはアミノ酸からなるリンカーを用いて、一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体に結合したことを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項9】
前記の生理活性タンパク質は、ホルモン類およびその受容体、生物学的反応調節物質そしてその受容体、サイトカイン類それからその受容体、酵素類、抗体類および抗体断片類よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項10】
前記の生理活性タンパク質は、ヒト成長ホルモン(hGH)、インスリン、卵胞 刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone、FSH)、ヒト絨毛性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone、PTH)、赤血球促進因子(EPO)、血小板生成促進因子(TPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、組織プラスミノゲン活性体(tissue plasminogen activator)、血液凝固因子VII、VIIα、D、IX、hBMP2(human bone morphogenic protein 2)、KGF(keratinocyte growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、グルコセレブロシダーゼ(glucocerebrosidase)、α−ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A)、α−L−イズロニダーゼ(α-L-iduronidase)、イズロン酸−2−スルファターゼ(iduronate-2-sulfatase)、ラクターゼ(lactase)、アデノシン・デアミナーゼ(adenosine deaminase)、ブチリルコリンエステラーゼ(butyrylcholinesterase)、キチナーゼ(chitinase)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(glutamate decarboxylase)、イミグルセラーゼ (imiglucerase)、リパーゼ(lipase)、ウリカーゼ(uricase)、血小板活性因子アセチルヒドロラーゼ(platelet-activating factor acetylhydrolase)、中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、スーパーオキシドジスムターゼ (superoxide dismutase)、ボトルリウム毒素、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ(hyaluronidase)、L−アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2およびFdよりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項9に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項11】
前記の生理活性ペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(glucagon-like peptide-1、GLP−1)およびその類似体、エキセンディンそしてその類似体、ソマトスタチン(somatostatin)それからその類似体、LHRH(luteinizing hormone-releasing hormone)作用剤および拮抗剤、副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone)、成長ホルモン放出ホルモン(growth hormone-releasing hormone)、オキシトシン(oxytocin)、サイモシンアルファ−1(thymosin alpha-1)、コルチコトロピン放出因子(corticotropin-releasing factor)、カルシトニン(calcitonin)、ビバリルジン(bivalirudin)、バソプレシン類似体(vasopressin analogues)、および生理活性タンパク質の断片よりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項12】
前記の一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項13】
前記の一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを含み、他の位置にある一つ以上のアミノ酸を変異させたことを含むことを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項14】
前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、或いは232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを特徴とする、請求項13に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項15】
前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを特徴とする、請求項13に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項16】
前記の融合体は、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T109:α1AT(P357N)/hGH](配列番号2)、ヒト成長ホルモン/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T109T:α1AT(P357N、S359T)/hGH](配列番号3)、ヒトインターフェロンα/アルファ1−アンチトリプシン変異融合体[T502:α1AT(P357N)/IFN−α](配列番号4)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン二重変異融合体[T602S:α1AT(P357N、C232S)/G−CSF](配列番号5)、顆粒球刺激因子/アルファ−1アンチトリプシン三重変異融合体[T602ST:α1AT(P357N、C232S、S359T)/G−CSF](配列番号6)、およびエキセンディン−4/アルファ−1アンチトリプシン変異融合体[T304:Exendin−4/α1AT(P357N)](配列番号7)よりなる群から選ばれた1種であることを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質またはペプチド融合体。
【請求項17】
生理活性タンパク質/生理活性ペプチドを、アルファ−1アンチトリプシンまたは一つ以上のアミノ酸を変異させたアルファ−1アンチトリプシン変異体と結合させ、体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項18】
前記の一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを特徴とする、請求項17に記載の体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項19】
前記の一つ以上のアミノ酸の変異は、P2位置である357番目のアミノ酸「プロリン」が「アスパラギン」に変異したことを含み、他の位置にある一つ以上のアミノ酸を変異させたことを含むことを特徴とする、請求項17に記載の体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項20】
前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、或いは232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを特徴とする、請求項19に記載の体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【請求項21】
前記の他の位置にある一つ以上のアミノ酸の変異は、359番目のアミノ酸「セリン」が「トレオニン」に変異し、232番目のアミノ酸「システイン」が「セリン」に変異したことを特徴とする、請求項19に記載の体内持続性を維持することにより体内半減期を増加させる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−524062(P2012−524062A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505833(P2012−505833)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002520
【国際公開番号】WO2010/123290
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511251766)アルテオゼン, インク (1)
【氏名又は名称原語表記】ALTEOGEN, INC
【住所又は居所原語表記】2nd Floor Gyeongbidong, Expo Science Park, 3−1 Doryong−dong, Yuseong−gu, Daejeon 305−340 Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/KR2010/002520
【国際公開番号】WO2010/123290
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511251766)アルテオゼン, インク (1)
【氏名又は名称原語表記】ALTEOGEN, INC
【住所又は居所原語表記】2nd Floor Gyeongbidong, Expo Science Park, 3−1 Doryong−dong, Yuseong−gu, Daejeon 305−340 Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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