説明

体内開口部へアクセスする装置、器具及び方法

体内の穴へアクセスするための医療装置、医療器具、医療方法が提供されている。該医療装置、器具、及び方法は、とりわけ、医療装置の操作を、安全且つ信頼性高いものとし且つ医療器具の操作を容易にする。該医療アクセス器具は、概ね、細長い可撓性シースと、該可撓性シースの遠位端に結合された拡張可能なフレームと、を備えている。該シースと拡張可能なフレームとは、拡張形状と圧潰形状との間を作動して本来存在している穴から体内の穴への経路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、内視鏡及び/又はその他の医療器具を配備するために、体内管腔例えば胃腸管の壁に形成された穴を介して体内開口部へアクセスする医療装置、器具、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接する体内構造へのアクセスを得るために体内壁に穴が形成される。このような技術は一般的に経腔処置と称されている。例えば、クルドスコピー(膣式腹腔鏡処置)は、70年以上前に開発され、盲管に穴を形成することによる腹腔への経膣アクセスを含んでいる。この腹腔ヘのアクセスによって、医療専門家は、多くの解剖学的構造を目で検査すると共に、生検、卵管結紮、又はその他の手術のような種々の処置を、全て最少侵襲方法で行なうことができる。他の体内管腔を使用して種々の体腔へのアクセスを得るための多くの経腔処置も開発されて来た。例えば、胃腸管の体内管腔は、内視鏡によって診査され且つ腹腔或いはその他の体腔へのアクセスを提供するために利用することができる。2008年2月5日に出願された米国特許出願第12/025,985号にはこのような処置が開示されており、該米国特許出願は、これに言及することによりその全体が参考として本明細書に組み込まれている。
【0003】
管腔内の処置は、侵襲性が最少であるけれども多くの危険性も含まれている。例えば、開口が胃又は腸のような胃腸管の体壁に形成されるときに、胃の内容物、腸の内容物、又はその他の体液が隣接の体腔内へ洩れることが起こり得る。胃腸管の外側の細菌を含んでいる流体の移動は、時々は望まない死に至る感染を惹き起こすかも知れない。伝統的なオーバーチューブは、内視鏡を胃へ送り込む際に口及び食道を保護するために使用されて来た。しかしながら、これらのオーバーチューブは、胃壁に対してシールされない。更に、伝統的なオーバーチューブは、かなり剛性があり且つ内視鏡を所望通りに操作する機能を制限する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、体内の開口へアクセスするための医療装置、器具、及び方法を提供し、とりわけ、安全で信頼性が高く、他の医療器具の内視鏡の操作を補助する医療装置、器具及び方法を提供する。体の外部の穴から体内管腔組織によって形成されている体内の穴への経路を形成する医療器具の一つの実施形態が本発明の教示に従って提供され、該医療器具は、概ね、拡張可能なフレームと可撓性のシースとを備えている。該可撓性のシースは、前記の経路を形成するのに適した長さを有しており且つ圧潰可能な遠位部分を備えている。前記の拡張可能なフレームは、シースの遠位部分に結合されている。該拡張可能なフレームは、圧潰形状と拡張形状との間を作動可能であり、該圧潰形状から拡張形状へと径方向に拡張する。該拡張可能なフレームは第一のケージを備えており、該第一のケージは、中間のヒンジによって相互に結合されている近位区分と遠位区分とを備えている。近位区分は可撓性のシースに結合されており、一方、遠位区分は可撓性のシースの遠位部分を越えて遠位方向に突出している。
【0005】
更に詳細な特徴によると、第一のケージは、近位端と遠位端を有している複数の突っ張り部材(strut)によって形成されており、近位区分の突っ張り部材は、それらの近位端同士が近位のヒンジによって相互に結合されており、遠位区分の突っ張り部材は、それらの遠位端同士が遠位のヒンジによって相互に結合されている。これらの複数の突っ張り部材は、前記の近位及び遠位のヒンジを中心として相対的に回動して、第一のケージの近位区分と遠位区分とが前記の圧潰形状から拡張形状ヘと径方向に拡張できるようにしている。該複数の突っ張り部材は、それらの近位端と遠位端との間で曲げられて中間ヒンジを形成するのが好ましい。第一のケージの遠位部分は、前記拡張形状においては、第一のケージの近位区分に対して約45度〜約90度最も好ましくは約70度の角度が付けられているのが好ましい。突っ張り部材の対は、それらの遠位端が相互に結合されてアームを形成している。一つの実施例においては、突っ張り部材の各対は、中間ヒンジの近くで交差している。第一のケージと複数の突っ張り部材とは、単一のワイヤを曲げることによって、近位区分、遠位区分、及び中間ヒンジを規定する形状にされているのが好ましい。単一のワイヤの端部同士は相互に結合され、連続した経路を形成している。
【0006】
更に別の特徴によると、複数の突っ張り部材の遠位端は、複数のループを規定している。該医療器具はまた、複数のループ内を通され且つ可撓性のシース内を近位方向に通されている縫合糸を備えている。該縫合糸は、複数のループ間に配置されている縫合糸のループを形成している遠位端と、複数のループに通され且つ前記縫合糸ループに通され次いで可撓性のシース内を近位方向に通される近位端とを備えている。該医療器具はまた、可撓性のシース内を伸長し且つ縫合糸を摺動可能形態で収容する細長い管状の部材をも備えている。該細長い管状部材の長さは、前記可撓性シースの長さよりも長いのが好ましい。
【0007】
本発明の教示に従って、外部の穴を介して体内管腔の組織によって形成されている体内の穴へアクセスする方法もまた提供されている。該方法は、拡張可能な部材と、上で概説し且つここに記載するもののような可撓性シースとを準備するステップを含んでいる。該シースの遠位端と拡張可能な部材の一部分とは、ステントがその圧潰状態にある間に、穿孔内へ送り込まれる。該拡張可能な部材は、シースの遠位端が体内壁に形成されている穿孔の内部と接触し、第一のケージの遠位区分が近位区分に対して径方向外方へ回転するようにしてその拡張形状へと作動せしめられる。第一のケージの遠位区分は、前記の穿孔及び体内壁を越えて遠位方向に配置されて、前記穿孔内での前記可撓性シースの位置が維持される補助となる。更に詳細な特徴によると、該医療器具を取り外すためには、細長い管状部材が、可撓性シース内を、該細長い管状部材の遠位端が第一のケージの遠位区分を越えて遠位方向に配置される位置まで導入される。前記の遠位区分の遠位端に結合されている縫合糸が後退せしめられて、該遠位区分が近位区分に対して径方向内方へ回転せしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1は、本発明の教示に従って作られた医療器具の平面図である。
【0009】
図2は、図1に示されている医療器具の断面図である。
【0010】
図3は、図1における線3−3に沿って断面された断面図である。
【0011】
図4は、図1に示されている医療器具のもう一つの別の実施形態の断面図である。
【0012】
図5は、図1に示されている医療器具のもう一つの別の実施形態の断面図である。
【0013】
図6Aは、図1〜5に示されている医療器具の一部分のための拡張可能なフレームの代替的な実施形態の平面図である。
図6Bは、図1〜5に示されている医療器具の一部分のための拡張可能なフレームの代替的な実施形態の平面図である。
図6Cは、図1〜5に示されている医療器具の一部分のための拡張可能なフレームの代替的な実施形態の平面図である。
【0014】
図7は、図1に示されている医療器具の圧潰状態の一つの実施形態を示している断面図である。
【0015】
図8は、図1に示されている医療器具の圧潰状態のもう一つ別の実施形態を示している断面図である。
【0016】
図9は、本発明の教示に従って作られた図1〜5に示されている医療器具を配備させるための医療装置の分解図である。
【0017】
図10は、図9に示されている医療装置の断面図である。
【0018】
図11は、図1〜図10に示されている医療装置及び器具を採用している方法を示している図である。
図12は、図1〜図10に示されている医療器具装置及び器具を採用している方法を示している図である。
図13は、図1〜図10に示されている医療器具装置及び器具を採用している方法を示している図である。
図14は、図1〜図10に示されている医療器具装置及び器具を採用している方法を示している図である。
図15は、図1〜図10に示されている医療器具装置及び器具を採用している方法を示している図である。
【0019】
図16は、本発明の教示に従って作られた医療器具のもう一つ別の実施形態を示している、図2に類似している断面図である。
【0020】
図17は、本発明の教示に従って作られた医療器具の更に別の実施形態を示している断面図である。
図18は、本発明の教示に従って作られた医療器具の更に別の実施形態を示している断面図である。
【0021】
図19は、本発明の教示に従って作られた医療器具の実施形態の変形例を示している図3に類似している断面図である。
【0022】
図20は、本発明の教示に従って作られた医療器具の更に別の実施形態を示している側面図である。
【0023】
図21は、図20に示されている医療器具の一部分を形成している第一のケージの前面図である。
【0024】
図22は、圧潰状態で示されている図20の医療器具の側面図である。
【0025】
図23は、図21に示されている第一のケージの代替的な実施形態の前面図である。
【0026】
図24は、本発明の教示に従って作られた医療器具のもう一つ別の代替的な実施形態を示している部分断面側面図である。
【0027】
図25は、図24に示されている医療器具の前面図である。
【0028】
図26は、図24に示されている医療器具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願において、“近位の”及び“近位方向に”という用語は、医療処置中に概ね医師に近づく位置、方向、又は向きを示しており、一方、“遠位の”及び“遠位方向に”という用語は、医療処置中において概ね医師から離れ且つ患者の解剖学的構造内の目標部位に近づく位置、方向、又は向きを示している。従って、器具又は体内領域の“近位”部分及び“遠位”部分は、処置のための入口部分(例えば、経皮的、腹腔鏡的、又は内視鏡的)によって変わる。
【0030】
図面を参照すると、図1〜3は、本発明の教示に従って作られた、外側の穴から体内管腔組織によって形成されている体内開口への経路を形成するための医療器具20を示している。当該技術において知られているように、外側の穴は、典型的には、口、肛門、腔、耳、鼻等のような本来存在している穴であるが、当業者は、医療器具20は腹腔鏡処置又はその他の処置中に形成される穴のような意図的に形成された穴を使用しても良いことがわかるであろう。同様に、体内管腔の組成によって形成された体内開口は意図的に形式されたものでも良く、又は自然に生じたものでも良く、この体内管腔は、当業者がわかるように、胃腸管の一部分又はその他の何らかの体内管腔からなる。
【0031】
医療器具20は、概ね、拡張可能なフレーム22と可撓性のシース24とからなる。可撓性のシース24は、概ね、近位部分26から遠位部分28まで延びており、前記経路を形成するのに適した長さを有している。すなわち、その長さは通り抜ける特定の穴及び体内管腔に応じた大きさとされている。シース24は、内視鏡100(図11)又はその他の医療器具が体内の穴へアクセスするために通り抜けるシースの管腔30を形成している。同様に、拡張可能なフレーム22は、内視鏡100又はその他の医療器具がその中を通過することができるフレームの管腔32を形成している。
【0032】
拡張可能なフレーム22は、図示されているように、シース24の遠位部分28、更に特定すると、シースの管腔30内に結合されているけれども、拡張可能なフレーム22は、シースの外面上に位置決めされても良い。一つの方法においては、複数の縫合糸34が、シース24及び拡張可能なフレーム22の突っ張り部材(strut)42に通され、縫合糸34の端部同士が結び付けられて拡張可能なフレーム22とシース24とが相互に結合される。図4に示されている別の方法においては、シース24の遠位部分28は、拡張可能なフレーム22の遠位端36の周りを包み込み且つ拡張可能なフレーム22の近位端38を越えた位置まで近位方向に伸長し、その位置で、熱接着、機械的結合、接着剤による接着、締結具による結合、縫合等のような一般的な方法を使用してシース24に結合される。従って、シース24の遠位部分28は、拡張可能なフレーム22を収容し且つ該フレームをその内部に封入する大きさのポケット40を形成している。
【0033】
図5に示されている更に別の方法においては、拡張可能なフレーム22及びその突っ張り部材42はコーティング44(例えば、重合体コーティング)を備えている。該コーティング44は、拡張可能なフレーム22の近位端38を越えた位置まで伸長して唇状部45を形成するように形成されている。この構造においては、シース24の遠位部分28は、上記したような一般的な方法によって、唇状部45(又は、コーティング44の何らかの他の部分)に取り付けられている。コーティング44は、例えば(シース24と似た又は似ていない材料からなる)別個の管状シートによって形成された連続した外側層を形成するか又は(例えば、浸漬コーティング方法において)間に空間を残すように個々の突っ張り部材42に適用しても良く、従って、唇状部45の表面は連続していても不連続であっても良い。
【0034】
図16に示されている更に別の方法においては、医療器具120は、4つのケージ(籠)122a,122b,122c,122dを備えた拡張可能なフレーム122を備えており、このうち2つだけ(122c,122d)が可能性のシース24によって覆われている。2つの遠位のケージ122a,122bは、それらの外面が露出せしめられていて開口18(例えば、図15を参照)内の胃壁16の組織に直に係合して壁16に対するフレーム122の摩擦及び把持を改良している。拡張可能なフレーム122の覆われた部分(図示された実施例においては、ケージ122c,122d)もまたシース24を押して壁16と係合状態にさせることもできるけれども、設計及び/又は使用状態では、拡張可能なフレーム122の覆われていない部分のみが胃壁16と接触している。フレーム内のケージの全てが、シースの遠位端をフレームの近位端に取り付けることによって(完全に又は部分的に)露出せしめられても良い(例えば、図15を参照のこと)。
【0035】
拡張可能なフレーム122の覆われている部分と覆われていない部分とのうちのどちらか又は両方はまた、胃壁16の組織と係合しこれを把持する更なる補助となる小さな棘状部123をも備えている。棘状部123は、ケージから突出しており且つ尖った端縁又は先端を備えているのが好ましい。棘状部123は、ワイヤ、金属、又はプラスチックによって形成することができ且つフレーム122の材料によって一体として形成されても良いし又は別個に形成されても良い。棘状部123はまた、フレーム122の外面の摩擦を改良するために、材料を除去することによって形成しても良い。大きな空隙と微小サイズの空隙との両方を形成することができる。同様に、シース24自体の遠位部分はまた、器具20の摩擦、把持、及び保持を改良するために、一体として又は別個に形成された棘状部又は粗い材料/表面を備えていても良い。上記の実施例に鑑みた更に別の変更が当業者によって理解されるであろう。
【0036】
拡張可能なフレーム22は多くの形態及び構造を採り得ることがわかるであろう。拡張可能なフレーム22は、拡張可能なステントであるのが好ましく、米国特許第4,580,508号に記載されているGianturcoタイプのジグザグ型金属ワイヤ製のステントのような自己拡張型ステントであるのが最も好ましい。該米国特許の開示内容は、これに言及することにより、その全体が本明細書に参考として組み入れられている。拡張可能なフレーム22はまたバルーン型の拡張可能なステントであっても良い。拡張可能なフレーム22は、多くのタイプの幾何学的構造、例えば、コイル型の設計、開放セル型の設計、多セルからなる独立セル型設計、及び織物型の設計を有することができる。拡張可能なフレーム22の幾何学的形状はまた、種々の構造、例えば、二三例を挙げると、筒形(図2)、(図6Aに示されている相互に結合された2つのテーパーが付けられたケージ22a,22bによって作られた)バタフライ形状、又は蝶ネクタイ形状(例えば、図6Bに示されている筒形ケージ22cによって連結された2つのテーパーが付けられているケージ22a及び22b)、又は裾広がり(例えば、図6Cに示されている近位端と遠位端とに第二のテーパーが付けれたケージ22cを備えている第一の筒形ケージ22)とすることができる。当該技術において知られているように、多数のケージを結合するために、外側又は内側シース技術、コーティング技術、縫合技術、接合技術、又は溶着技術を使用することができる。フレーム22及びその拡張可能な突っ張り部材42は、シース24よりも剛性が高い材料、例えば、ニチノ―ルのような金属若しくは合金又は十分な剛性と撓み強度とを有するプラスチックによって作られるのが好ましい。
【0037】
拡張可能なフレーム22は、概ね、圧潰形状(例えば、図9及び10を参照)と拡張形状(例えば、図1〜3,14を参照)との間を作動可能である。同様に、シース24は圧潰形状(例えば、図7及び8を参照)と拡張形状(例えば、図1〜3,14を参照)との間を作動可能である。可撓性のシース24は、その長さの実質的な部分に亘って圧潰可能であるように、重合体のような可撓性材料によって作られるのが好ましい。すなわち、シース24は、少なくとも体内に配置されることを意図されている部分に亘って圧潰可能であるべきであり、この部分は、遠位部分を含み且つ概ねシース24の全長の少なくとも半分である。従って、シース24は、伝統的な外被チューブ及び套管針スリーブよりも剛性が低い。シース24は、圧潰形状においては概ねそれ自体が折り畳まれる。図7に示されているように、シース24の一つの圧潰形状は、1以上の大きな折り目50を含んでおり、該折り目によってシース24の外径が小さくなる。図8に示されているように、シース24は、アコーディオン形状のシースの折り曲げのような一連の小さな折り目52を備えていて、圧潰形状における外径が小さくされる。
【0038】
シース24の可撓性及び圧潰性は、図示されたもののような圧潰形状を呈するばかりでなく、シースの管腔30内を通過する内視鏡又はその他の医療器具の作動を制限しないように設計されなければならない。これは、例えばそのデュロメータ及び厚みに基づいてプラスチック材料を選択することによって制御することができる。シース24は、厚みが約0.001インチ〜約0.1インチ(0.0254ミリメートル〜2.54ミリメートル)の範囲内であり且つシートのような特性(実際には、シートは、巻き上げられ且つその端縁同士が結合されてシース24が形成される)を有しているのが好ましい。適切な材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)若しくはテフロン(登録商標)のようなフッ素樹脂、ポリエチレン(高、中、低密度)、ポリエチレン・エーテル・ケトン(PEEK)、ポリウレタン、シリコーン、又はナイロン(登録商標)のようなポリアミドがある。シース24は、低密度のポリウレタンによって形成されるのが最も好ましい。可撓性シース24の構造としては、補強用ワイヤ、コイル、又はフィラメントを備えているか備えていない多層構造又は単一層構造がある。同様に、シース24を堅牢にさせ過ぎることなく高い耐久性を得るためには、ポリ塩化ビニル(PVC)コーティングをも採用することができる。
【0039】
可撓性ポリマー又はエラストマを採用することによって、内視鏡100又はその他の医療器具の操作性及び動作が犠牲にされない。従って、医療器具20は、医療器具の動作を補助するばかりでなく、本来存在する体の穴を介する胃腸管内へのより深い誘導も可能である。これと同時に、医療器具20は、配備が容易で且つ組織内の体内開口との確実な係合及び流体シールを提供し、これは、細菌を含む流体の不所望な移動を防止することができる。シース24は、(食道12のような)体内管腔の推定直径にほぼ等しいか又はこれより大きい直径を有しており且つ予測される体内管腔からの径方向の力よりも小さい径方向の力によって圧潰するのが好ましい。このような構造においては、シース24は、それ自体が食道12又はその他の体内管腔の拡張又は膨張を生じさせない。
【0040】
図9及び10を参照すると、外部の穴から体内の開口までの経路を形成するための医療器具60が、本発明の教示に従って提供されている。医療装置60は、概ね、既に説明したもののような医療器具20を備えているけれども、医療装置60は、細長いシースと該シースの遠位端に取り付けられた径方向に拡張可能な部材とを備えた他の医療器具20と共に使用することもできることがわかるであろう。医療装置60は、外側カテーテルの管腔64を規定している外側カテーテル62を備えており、該外側カテーテルの管腔64は、(図19において実線で示されている)圧潰形状にある医療器具20を収容できる大きさとされている。内側カテーテル70は、シースの管腔30とステントの管腔32内に収容される大きさとされている。内側カテーテル70は内側カテーテルの管腔72を規定している。複数の把持部材74が、内側カテーテル70の外側に位置決めされており且つ長手方向に隔置されている。把持部材74は、各々、O−リング、ガスケット、又はその他の弾性材料を備えているのが好ましく、これらは、接着、接合、又は簡単な締まり嵌めによって、内側カテーテル70の外側に嵌合されている。把持部材74は、円形断面形状、非円形断面形状、例えば正方形、矩形、三角形、卵形、又は長円形等の断面形状を有している。以下において更に詳しく説明するように、把持部材74は、医療器具20、特に可撓性のシース24を把持し、外側カテーテル62がステント22及び医療器具20を配備させるために後退せしめられている間、シース24を定位置に保持するように機能する。
【0041】
医療装置60は、任意であるが、ガイドカテーテル80を備えており、ガイドカテーテル80は、ガイドワイヤ90を収容できる大きさとされているガイド管腔82を規定している。ガイドカテーテル80はガラス球状の遠位端84を備えており、該ガラス球状の遠位端84は、医療装置60を装填し且つ配備する補助となり且つ医療装置60をガイドワイヤ90の外周に沿って体内の開口ヘと送り込む補助となる。図9にはまた、漏斗部材92も示されており、漏斗状部材92は、以下に説明するように、医療装置60を装填(装填された状態が図10に示されている)するために使用される溝94を備えている。一般的には、ガイドカテーテル80は、内側カテーテル70の内側カテーテル管腔72内に装填される。次いで、内側カテーテル70とガイドカテーテル80とは、拡張状態(図9において点線で示されている)にある医療器具20の管腔30,32内に装填される。漏斗状部材92は、外側カテーテル62の遠位端66と医療器具20の近位端(すなわち、シース24の近位部分26)とに取り付けられており、内側カテーテル70とガイドカテーテル80とは、外側カテーテルの管腔64内をその近位端に向かって動かされる。シース24は、その可撓性及び圧潰性により、外側カテーテルの管腔64内に位置決めされるときに自然にその圧潰形状となるけれども、シースは、外側カテーテル62内に装填されるときに手動によって折り畳まれるか別の操作をされて何らかの好ましい圧潰形状を有する。外側カテーテル62は、医療器具20、内側カテーテル70、及びガイドカテーテル80よりも短くて、それらの近位端が把持され且つ近位方向に引っ張ることができるようになされている。これによって、医療器具20のステント22が漏斗状部材92内を通過せしめられて圧潰形状となり且つ外側カテーテル62の外側カテーテル管腔64内に収容される。医療器具20と内側カテーテル70(及び、任意であるが、ガイドカテーテル80)とが、ひとたび例えば図10に示されているように外側カテーテル62内に装填されると、漏斗状部材92は外側カテーテル62から取り外される。
【0042】
以下、医療装置60を利用し且つ医療器具20を配備する一つの好ましい方法を、図11〜15を参照して説明する。図11に示されているように、胃腸管10の上方部分例えば食道12及び胃14は、口(図示せず)からアクセスされる。内視鏡100が胃14内に導入され、切り込み器具102が、内視鏡100の作動チャネルを介して使用されて、胃の組織又は胃壁16に穴18が開けられる。図12に示されているように、ガイドワイヤ90が穴18の中に配置され、拡張器104がガイドワイヤ90の外周に沿って導入される。一般的には、拡張器104は、胃壁16に形成された穴18を広げる膨張バルーン106又はその他の径方向に拡張可能な部材を備えている。
【0043】
図13に示されているように、内視鏡100と拡張器104とが取り外される一方で、ガイドワイヤ90は定位置に残され、医療装置60は、ガイドワイヤ90の外周に沿って穴18の近くの位置まで遠位方向に進入せしめられる。更に特定すると、医療装置60は、医療器具20の拡張可能なフレーム22の一部分が穴18内に位置決めされるように配置されるのが好ましい。このことを達成するために、蛍光又は超音波監視技術が採用され、これによって、拡張可能なフレーム22は視認可能な部材として機能するけれども、外側カテーテル、シース24の遠位部分28、又は内側カテーテル70さえもが、視認を補助する放射線不透過性帯等のような標識を備えている。これと同様にして、医療装置60の直接的な視認のために、カテーテルによる光ファイバ視認装置又は比較的小型の内視鏡(例えば、小児用内視鏡)が(医療器具60と平行に)口及び食道12を介して胃14内に配置される。
【0044】
図14に示されているように、外側カテーテル62は、内側カテーテル70に対して近位方向へ後退せしめられ、内側カテーテル70は定位置に保持されるのが好ましい。外側カテーテル70の把持部材74は、医療器具20特にシース24と係合してこれをその位置に保ち且つ内側カテーテル62が後退せしめられる間にその撓み特性によりシース24が滑ったり折れ曲がったり又は捩れたりするのを防止する。拡張可能なフレーム22が外側カテーテル62の遠位端66を越えて露出せしめられた状態になると、該拡張可能なフレーム22は、その拡張形状となり且つ穴18を形成している組織16に押し付けられる。拡張可能なフレーム22の適切なサイズにより、医療器具20は、胃壁16及び穴18内にしっかりと固定され、その結果、口から体内の穴18まで続くポート及び通路が形成される。拡張可能なフレーム22は、可撓性のシース24及び胃壁組織16に、穴18を開け且つ開口した状態に維持すると共に可撓性のシース24及び医療器具20を胃壁16に固定するのに十分な径方向外方への力をかける。拡張可能なフレーム22とシース24とを結合させておく縫合糸34を視認化することによって、拡張可能なフレーム22の完全な配備を確保することが容易になる。
【0045】
医療器具20が定位置に配置された状態で、外側カテーテル62と内側カテーテル70とガイドカテーテル80とは、近位方向に後退せしめられ且つ廃棄される。次いで、内視鏡100又は新しい内視鏡が、医療器具20の可撓性シース24及び胃壁16に形成されている穴18を介して遠位方向に進入せしめられて管腔内処置が行われる。当業者は、内視鏡の他に又は内視鏡と組み合わせて、多くの他の器具を医療器具20の通路を介して使用しても良いことがわかるであろう。医療器具24を取り外すことが望ましいときには、縫合糸35(図2及び15を参照)が近位方向に引っ張られて拡張可能なフレーム22のケージが圧潰され、拡張可能なフレーム22及び器具20を胃壁16の穴18から取り外すことができようにされる。
【0046】
本発明の教示に従って作られた医療器具220のもう一つ別の実施形態が図17〜18に示されている。以前の実施形態と同様に、器具220は、上記したような可撓性シース224に結合された拡張可能なフレーム222を備えている。この実施形態においては、拡張可能なフレーム222は、4つのケージ222a,222b,222c,222dを備えている。第一、第二、第四のケージ222a、222b、222dは、突っ張り部材例えば上記したジグザグ形状の突っ張り部材として形成されている。第三のケージ222cは、単に、2以上のストランド223(図18〜19には3本のストランドが示されている)によって形成されている。ストランド223は、第二のケージ222bと第四のケージ222dとの間を長手方向に伸長していてこれらのケージを互いに隔置させた状態で結合している。ストランド223は、直線状に伸長していても湾曲していても良く、金属ワイヤ又はプラスチック製のストリップ等によって形成することができる。ケージ222a,222b,222dはシース224によって覆われたものとして示されており、第三のケージは別個のコーティング224dを備えているが、ケージ222a,222b,222dは、上記したように露出された状態のままであっても良い。従って、ストランド223は、ケージ222b,222dの突っ張り部材か又はシース/コーティング224,224dに結合していても良い。
【0047】
図18に最も詳しく示されているように、ストランド223は、露呈されていて穴18内の胃壁16の組織に直接係合している。壁16の本来の弾力性が穴18を閉じる傾向があるのに対して他のケージ222a,222b,222dが拡張していることによって、ケージ222cのストランドが壁16内へ押し込まれて医療器具220がしっかりと固定される。ストランド223は、何らかの可撓性及び本来の弾力性によって作られており、従って、他のケージ222a,222b,222dは、それらの拡張形状において、穴18よりも大きい直径を有する傾向がある。ストランド223は、胃壁16の厚みよりも大きい距離だけ長手方向に延びているのが好ましい。これと同時に、ストランド223同士の間の大きな空間により、胃壁16の組織は、ケージ222cの外側を通って拡張フレーム222の内部空間内へと伸長する傾向がある。壁16の本来の弾力性により、組織は、(壁16の穴を規定している)組織の端縁17同士が相互に接するまで内方へ伸長する。従って、壁16の組織は、拡張可能なフレーム222及びシース224の内部を通る流体等の流れを制限する弁を規定する。例えば内視鏡のような細長い医療器具がシース224及びフレーム222内を遠位方向へ動かされると、該器具は、壁16及び器具220を越えて遠位方向に伸長するときに組織を分離させ且つ同様に第三のケージ222cの領域において端縁17にシールされる。
【0048】
同様に、当業者はまた、これらの実施形態のいずれかにおいては、器具20,120,220の内部好ましくはその遠位端に別個の弁部材を使用することができることもわかるであろう。例えば、図19に示されているように、フラップ弁333が、拡張可能なフレーム322及びシース324の穴332内を伸長しており、該フラップ弁は、相互に接している1以上の可撓性のフラップ335と器具320の内壁とを備えている。フラップ335(図19には3つのフラップが示されている)は、十分な長手方向の力(例えば、内視鏡による力であるが流体圧力により力ではない)に応答して曲がり又は回転し、従って、器具320内を流れる流体等の動きを制限するシールとして機能する。
【0049】
本発明の教示に従って作られた医療器具のもう一つ別の実施形態420が図20〜22に示されている。以前の実施形態と同様に、器具420は、上記したもののような可撓性のシース424に結合されている拡張可能なフレーム422を備えている。以前の実施形態と同様に、拡張可能なフレーム422は、長さが可撓性のシース424よりも実質的に短く且つシース424の遠位部分428にのみ結合されている。この実施形態においては、拡張可能なフレーム422は2つのケージ422a及び422bを備えている。第一のケージ422aは、第二のケージ422bの遠位側に配置されている。第二のケージ422bは、例えば上記したジグザグ形状の突っ張り部材によって円筒形状のステントとして形成されている。この実施形態における第一のケージ422aは、近位区分432と遠位区分434とによって独特に形成されている。
【0050】
第一のケージ422aの近位区分432は、概ね、可撓性のシース424内に位置決めされ且つ該シース424に結合されている。遠位区分434は、可撓性のシース424の遠位部分428を越えて遠位方向に突出している。注目すべき点は、近位区分432と遠位区分434とは、中間のヒンジ446によって相互に結合されている点である。中間のヒンジ446は、拡張可能なフレーム422が圧潰形状から拡張形状ヘと径方向に拡張したときに、遠位の区分が近位の区分432に対して径方向の外方へ回転するのを許容する。図20においては、第一のケージ422aを備えている拡張可能なフレーム422は拡張状態で示されており、一方、図22は、圧潰形状にある拡張可能なフレーム422とその第一のケージ422aとを示している。
【0051】
拡張形状においては、遠位の区分434は近位の区分に対して約45°〜約90°好ましくは約75°である角度βだけ回転されるのが好ましい。遠位区分434が可撓性のシース424の遠位部分428を越えて突出している第一のケージ422aを使用し、更に、遠位区分434が近位区分432に対して径方向外方へ回転するのを許容することによって、遠位区分434は、組織16の周囲を覆い且つ該組織と係合して組織16の穴18に対するシース424の係合を容易にすることがわかるであろう(本明細書において以下に説明する図24〜26を参照のこと)。
【0052】
図20及び21において最も良くわかるように、第一のケージ422aは複数の突っ張り部材によって形成されており、該複数の突っ張り部材は、図示されている実施形態においては単一のワイヤストランド440によって形成されている。すなわち、ワイヤストランド440は、曲げられるか又は別の場合には成形されて、近位の区分432、遠位の区分434、及びヒンジの突っ張り部材を規定する構造とされている。単一のワイヤストランド440の端部は、図21において最も良くわかるように、相互に結合されて連続した経路を形成するのが好ましい。この経路は、近位区分432と遠位区分434との間で互い違いになっている。特に、近位の区分432の互に隣接している突っ張り部材はそれらの近位端同士が結合されていて近位のヒンジ442を形成している。同様に、遠位区分434の互に隣接している突っ張り部材は、それらの遠位端のヒンジ同士が結合されて遠位のヒンジ444を規定している。遠位区分434の互いに隣接している突っ張り部材の対は、回転アーム448を形成しており、該回転アームは、穴18内を伸長し且つ反り返って組織16と係合する。
【0053】
一般的に、近位のヒンジ442及び遠位のヒンジ444は、拡張可能なフレーム422の径方向の拡張を可能にし、一方、中間のヒンジ446は、遠位区分434が近位部分432に対して回転するのを可能にしている。図21に示されているように、遠位のヒンジ444は、径方向の軸線Rに対する互に隣接している突っ張り部材間の回転を可能にしており、近位のヒンジ442は、径方向の軸線Rに対する互に隣接している突っ張り部材間の回転を可能にしている。これと同時に、中間ヒンジ446は、接線方向の軸線Tに対する近位の区分432と遠位の区分434との間の相対的な回転を可能にしている。図22に示されているように、シース424と拡張可能なフレーム422とは、裾広がりの遠位端463を備えている給送カテーテル462に対して並進せしめられて、フレーム422とシース424とが給送カテーテル462内でそれらの圧潰形状となるのを可能にしている。
【0054】
本発明の教示に従って作られた第一のケージ522aのもう一つ別の実施形態が図23に示されている。図20〜22の実施形態と同様に、第一のケージ522aは、中間ヒンジ546によって連結されている近位区分532と遠位区分534とを備えている。以前の実施形態の場合と同様に、第一のケージ522aを規定している複数の突っ張り部材は単一のワイヤストランド540によって作られており、該第一のストランド540は、近位区分532、遠位区分534、及びヒンジを規定する形状に曲げられている。特に、近位区分532の互いに隣接している突っ張り部材同士は互いに結合されて近位のヒンジ542を形成しており、一方、遠位区分534の互いに隣接している突っ張り部材同士は互いに結合されて遠位のヒンジ544とアーム548とを形成している。しかしながら、この実施形態においては、遠位のヒンジ544は、ワイヤストランド540を少なくとも完全に1回巻いてその中にループを形成することによって形成されている。近位のヒンジ542もまた、類似の方法で形成してループを規定することができる。図23の実施形態においては、遠位区分534の互に隣接している突っ張り部材の対は3つのアーム548を形成しており、一方、図20〜22の実施形態においては4つのアーム448が示されていることも注記すべき点である。
【0055】
本発明の教示に従って作られた医療器具620の更に別の実施形態が図24〜26に示されている。図20〜22及び23の実施形態と同様に、器具620は、例えば上記したもののような可撓性のシース624の遠位部分628に結合されている拡張可能なフレーム622を備えている。この実施形態においては、拡張可能なフレーム622は、2つのケージ622a及び622bを備えている。第二のケージ622bは第一のケージ622aの近位側に配置されており、第二のケージ622bは上記したもののような筒状のステントとして形成されている。図24においては、医療器具620は、拡張形状で且つ組織16に形成されている穴18内に位置決めされている。
【0056】
注目すべき点として、ケージ622aは、中間のヒンジ646によって連結されている近位区分632と遠位区分634とを備えている。第一のケージ622aは、複数の突っ張り部材によって形成されており、更に特定すると、単一のワイヤストランド640が曲げられて、近位区分632、遠位区分634、及びヒンジを規定している形状とされている。特に、近位区分632の突っ張り部材は、それらの近位端同士が結合されて近位のヒンジ642を形成しており、遠位区分の突っ張り部材は、それらの遠位端同士が結合されて遠位のヒンジ644を形成している。この実施形態においても同じく、遠位のヒンジ644は、ワイヤストランド640内のコイルによって形成されてループを規定している。中間のヒンジ646は、遠位区分634と近位区分632とを結合させており且つそれらの間の相対的な回転を提供できるように設けられている。中間のヒンジ646は、2つの区分632と634との間に配置されているワイヤストランド640内の曲がり部分によって形成されている。
【0057】
図25において最も良くわかるように、単一のワイヤストランド640は、同様に、連続した経路を形成する形状に曲げられている。この経路は、近位区分632の一部を形成している一対の突っ張り部材間で互い違いになっていて、遠位区分634のアーム648を形成している一対の突っ張り部材にされている。この形状が繰り返されて、遠位区分634の3つのアーム648が形成されている。注目すべき点として、ワイヤストランド640の突っ張り部材同士は、中間ヒンジ646の近くの位置で交差している。このことにより、遠位のヒンジ部分644における最小長さのワイヤストランド640によってコイル状に巻かれたループの形成が容易になる一方で所望の位置での中間のヒンジ646の形成も用意になる。
【0058】
図25及び26においては、縫合糸625が遠位のヒンジ644のループに通されていることもわかる。特に、縫合糸625の遠位部分625dは縫合糸のループに形成されており、縫合糸625の近位部分625pは、遠位のヒンジ644のループの各々に通され、次いで、縫合糸の遠位端625dにおいて縫合糸のループに通されている。縫合糸625の近位部分625pは、次いで、可撓性のシース624内を近位方向に延びている。縫合糸625の近位部分625pは例えばカテーテル660のような細長い管状部材内を伸長しているのが好ましい。カテーテル660は、図26において、内視鏡662の作動チャネル内を伸長した状態で示されている。
【0059】
第一のケージ622aの遠位部分634特に3つのアーム648を圧潰するためには、カテーテル660が、遠位区分634特に中間ヒンジ646を越えるように遠位方向に配置される。これによって、図26において点線で示されているように、アーム648を径方向内方に(及び遠位方向前方へ)引っ張るための遠位方向の力がアーム648に形成される。このようにして、可撓性のシース624及び拡張可能なフレーム622を備えている医療器具620は、患者から取り外すことができる。従って、カテーテル660又はその他の細長い管状部材の長さは、可撓性のシース624の長さよりも長くされている。
【0060】
該医療器具、装置、及び方法の種々の実施例についての上記の説明を参酌すると、医療器具の形成に可撓性シースを使用することによって、内視鏡又はその他の医療器具の操作及び動作が犠牲にならないことがわかるであろう。従って、該医療器具は、医療装置の作動を補助することができるだけでなく、本来存在している体の穴を介する胃腸管内より深くまでの誘導をも補助する。これと同時に、該医療器具は、配備が容易であり且つ組織内の体内の穴との確実な係合及び液体シールを提供し、これは、細菌を含む流体の不所望な移動を阻止することができる。該医療器具、装置、及び方法は、体の外部の穴例えば本来存在する穴を介する体内の穴ヘの信頼性が高くかつ安全なアクセスを提供する。
【0061】
上記した方法は、概ね、該医療用アクセス器具を体内管腔を介して組織内に配置するステップを含んでいるけれども、該装置、器具、及び方法は、人間又は動物の体及び体内管腔に関連するか又は関連しない物質(例えば、繊維、布、高分子、エラストマ、プラスチック、及びゴム)からなる何らかの層に対して使用することができることもわかるであろう。例えば、該装置、器具、及び方法は、人間又は動物の体に対する用途を見つけることができるか又は見つけることができない1以上の物質の層を介して器具を配置するための、及び同様な方法で体の組織ではない物質の層内の穴又は穿孔を介して器具を配置するための、研究所における用途及び工業的調整における用途を見つけることができる。幾つかの例としては、ビルの壁を介するアクセス、配管工事、空気導管(加熱/通気/冷却)、汚染物質、合成組織による作業、高分子シートの結合若しくは修復、動物の研究、獣医学的用途、及び死体解剖作業がある。従って、該方法は、アクセス器具を物体又は物体の層内の穴に対して作動させることを含んでいる。
【0062】
本発明の種々の実施形態の上記の説明は、例示及び説明のために提供されたものである。本発明は、排他的なものとし且つここに開示された実施形態そのものに限定されることは意図されていない。上記の教示を参考にして多くの改造又は変更が可能である。ここに説明されている実施形態は、本発明の原理及びその実際的な用途の最良の例示を提供して、当業者が、本発明を種々の実施形態で且つ想定される特別な使用方法に適した種々の改造と共に利用できるようにするために選択され且つ説明されたものである。このような改造及び変更の全てが本発明の範囲に含まれるが、該発明の範囲は、公正に法律的に且つ公正に付与される広さに従って解釈される添付の特許請求の範囲によって決定される。
【符号の説明】
【0063】
20 医療器具、 10 胃腸管、 12 食道、
14 胃、 16 胃壁、 18 穴、
22 拡張可能なフレーム、 22a,22b,22c ケージ、
24 可撓性のシース、 26 近位部分、
28 遠位部分、 30 シースの管腔、
32 フレームの管腔、 34 縫合糸、
35 縫合糸、 36 フレームの遠位端、
38 近位端、 40 ポケット、
42 突っ張り部材、 44 コーティング、
45 唇状部、 50 折り目、
52 折り目、 60 医療装置、
62 外側カテーテル、 64 外側カテーテルの管腔、
70 内側カテーテル、 72 内側カテーテルの管腔、
74 把持部材、 80 ガイドカテーテル、
82 ガイド管腔、 84 カテーテルの遠位端、
90 ガイドワイヤ、 92 漏斗状部材、
94 溝、 100 内視鏡、
102 切り込み器具、 104 拡張器、
106 膨張バルーン、 120 医療器具、
122a,122b,122c,122d ケージ、
123 棘状部、 220 医療器具、
222 フレーム、 222a 第一のケージ、
222b 第二のケージ、 222c 第三のケージ、
222d 第四のケージ、 223 ストランド、
224 シース、 224d コーティング、
320 医療器具、 322 フレーム、
324 シース、 333 フラップ弁、
335 フラップ、 420 医療器具、
422 フレーム、 422a 第一のケージ、
422b 第二のケージ、 424 シース、
428 シースの遠位部分、 432 第一のケージの近位部分、
434 第一のケージの遠位区分、 440 ワイヤストランド、
444 遠位のケージ、 446 中間のヒンジ、
448 回転アーム、 462 給送カテーテル、
463 裾広がりの遠位端、 532 近位区分、
540 ワイヤストランド、 542 近位のヒンジ、
544 遠位のヒンジ、 546 中間のヒンジ、
548 アーム、 522a 第一のケージ、
620 医療器具、 622 フレーム、
622a 第一のケージ、 622b 第二のケージ、
624 可撓性のシース、 625 縫合糸、
625d 縫合糸の遠位部分、 625p 縫合糸の近位部分、
632 近位区分、 634 遠位区分、
640 ワイヤストランド、 644 遠位のヒンジ、
646 中間のヒンジ、 648 アーム、
660 カテーテル、 662 内視鏡
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外部の穴から体内管腔組織によって形成されている体内の穴への通路を形成する医療器具であり、
前記通路の形成に適した長さを有しており且つ圧潰可能な遠位部分を備えている可撓性のシースと、
前記シースの前記遠位部分に結合され、圧潰形状と拡張形状との間を作動可能であり、前記圧潰形状から前記拡張形状へと径方向に拡張する拡張可能なフレームと、を備えており、
前記拡張可能なフレームが、中間ヒンジによって相互に結合されている近位区分と遠位区分とを備えている第一のケージを備えており、前記近位区分は前記可撓性のシースに結合されており、前記遠位区分は前記可撓性シースの遠位部分より遠位方向に突出しており、
前記遠位区分は、前記拡張可能なフレームが前記圧潰形状から前記拡張形状へと径方向に拡張するときに、前記中間ヒンジを中心として前記近位区分に対して径方向外方へ回転するようになされている、ことを特徴とする医療器具。
【請求項2】
前記第一のケージが、近位端と遠位端とを有している複数の突っ張り部材(strut)によって規定されており、前記近位区分において突っ張り部材同士は、それらの近位端が近位のヒンジによって互いに結合されており、前記遠位区分において突っ張り部材同士は、それらの遠位端が遠位のヒンジによって互いに結合されており、前記複数の突っ張り部材が前記近位のヒンジと遠位のヒンジとを中心に相対的に回転して、前記第一のケージの近位区分と遠位区分とが前記圧潰形状から前記拡張形状に向かって径方向に拡張することができるようになされている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記複数の突っ張り部材が、それらの近位端と遠位端との間で曲げて前記中間ヒンジが形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記突っ張り部材の対が、それらの遠位端同士を結合されて前記アームが形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の医療器具。
【請求項5】
前記突っ張り部材の各対が前記中間ヒンジを近くで交差している、ことを特徴とする請求項4に記載の医療器具。
【請求項6】
前記第一のケージと前記複数の突っ張り部材とが、前記近位区分、前記遠位区分、及び前記中間ヒンジを規定する形状に曲げられた単一のワイヤによって形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の医療器具。
【請求項7】
前記単一のワイヤの端部同士が結合されて連続した経路が形成されている、ことを特徴とする請求項6に記載の医療器具。
【請求項8】
前記複数の突っ張り部材の遠位端が複数のループを形成している、ことを特徴とする請求項2に記載の医療器具。
【請求項9】
前記複数のループ内を通され且つ前記可撓性のシース内を近位方向に通されている縫合糸を更に備えている、ことを特徴とする請求項8に記載の医療器具。
【請求項10】
前記縫合糸が、前記複数のループ間に配置された縫合糸ループを形成している遠位端を備えており、該縫合糸の近位端は、前記複数のループ内を通され且つ前記縫合糸のループ内を通され次いで前記可撓性のシース内を近位方向に通されている、ことを特徴とする請求項9に記載の医療器具。
【請求項11】
前記可撓性のシース内を伸長している細長い管状部材を更に備えており、該細長い管状部材は、前記縫合糸を摺動可能形態で収容し、該細長い管状部材の長さは前記可撓性のシースの長さより長くされている、ことを特徴とする請求項9に記載の医療器具。
【請求項12】
前記第一のケージの遠位区分が、前記拡張形状において、該第一のケージの近位区分に対して約45°〜約90°の角度が付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項13】
前記第一のケージの遠位区分が、前記拡張形状において、前記第一のケージの近位区分に対して約75°の角度が付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項14】
前記拡張可能なフレームの長さが、概ね、前記可撓性のシースの長さよりも実質的に短い、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項15】
前記可撓性のシースの遠位部分に結合されており且つ前記第一のケージの近位側に配置されている第二のケージを更に備えており、該第二のケージは、前記拡張形状において筒形状を有している、ことを特徴とする請求項1の記載の医療器具。
【請求項16】
前記拡張可能な部材が、各々の拡張形状において、前記シースに径方向外向きの力をかけるようになされている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項17】
前記径方向外向きの力が、前記シースの遠位端を前記組織に固定するのに十分な大きさである、ことを特徴とする請求項1に記載の医療器具。
【請求項18】
物体の開口内へのアクセス器具を作動させる方法であり、
拡張可能な部材と可撓性のシースとを備えたアクセス器具を準備するステップであって、前記可撓性のシースは圧潰可能な遠位部分を備えており、拡張可能なフレームが前記シースの前記遠位部分に結合されており、該拡張可能なフレームは圧潰形状と拡張形状との間を作動可能であり、前記拡張可能なフレームは前記圧潰形状から前記拡張形状へ径方向に拡張し、前記拡張可能なフレームは、中間のヒンジによって相互に結合された近位区分と遠位区分とを備えている第一のケージを備えており、前記近位区分は前記可撓性のシースに結合されており、前記遠位区分は前記可撓性のシースの遠位部分を越えて遠位方向に突出しており、前記遠位区分は、前記拡張可能なフレームが前記圧潰形状から拡張形状へと径方向に拡張したときに前記中間のヒンジを中心として前記近位区分に対して径方向外方と回転するようになされている、前記アクセス器具を準備するステップと、
前記拡張可能な部材がその圧潰形状にある間に、前記シースの遠位端と前記拡張可能な部材の一部分とを前記開口内へと送り込むステップと、
前記拡張可能な部材をその拡張形状へと作動させて、前記シースの遠位端が前記開口の内側と接触する状態に配置され、前記第一のケージの遠位区分が前記近位区分に対して径方向外方に向かって回転し、前記遠位区分が前記物体を越えて遠位方向に配置されるようにするステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記アクセス器具が、前記第一のケージの前記遠位区分の遠位端に取り付けられた縫合糸を更に備えており、
細長い管状部材を、前記可撓性のシース内に、該細長い管状部材の遠位端が前記遠位区分を越えた遠位位置に位置決めされるまで導入するステップと、
前記縫合糸を近位方向に後退させて、前記遠位区分が前記近位区分に対して径方向内方へ回転させて前記遠位区分が前記近位区分の遠位側に位置するようにさせるステップと、
を更に備えている、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記シースが、前記開口の内側に押し付けられて流体シールを形成するようにさせる、ことを特徴とする請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2013−511336(P2013−511336A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539962(P2012−539962)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/056721
【国際公開番号】WO2011/062870
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】