説明

体動バランス検出装置、体動バランス検出プログラム、体動バランス検出方法、および体動バランス診断方法

【課題】圧力センサが設置されておらずとも体動バランスを検出することができる体動測定装置1を提供する。
【解決手段】体動測定装置1に、歩行による加速度の変化を検知する加速度検知部12と、該加速度検知部12で検知した加速度信号から歩行バランスを検出する演算部14と、検出した歩行バランスに基づく出力を行う表示部13とを備えた。前記歩行バランスを検出する演算部14は、前記加速度信号から歩行一歩単位を認識して足別情報であるPPodd、PPeven、Todd、およびTevenを取得するステップS8およびステップS12と、この足別情報に基づいて歩行バランスを検出するステップS9,S13,S16とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば歩行や走行といった前進運動、あるいは足踏みやもも上げといったその場運動など、運動における体動バランスを検出するような体動バランス検出装置、体動バランス検出プログラム、体動バランス検出方法、および体動バランス診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、姿勢の美しさを評価する際に、バランスと対称性が重要な要素となることが知られている。このため、バランスを評価することは、ウォーキングの美しさや、リハビリテーションの進捗管理に役立つと考えられる。
【0003】
一方、歩行時の姿勢を評価する従来の技術として、ウォーキング判定装置が提案されている(特許文献1参照)。このウォーキング判定装置は、床に設置された圧力センサ上を歩かせることで、歩行者の足圧分布を測定して歩行の美しさや健康度を評価するものである。
【0004】
しかし、このウォーキング判定装置は、日常生活での歩行など、圧力センサが設置されていない場所で利用することができず、利便性に欠けるものであった。
【特許文献1】特開2001−218754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述の問題に鑑み、圧力センサが設置されておらずとも足別の運動の偏りによる体動バランスを検出することができる体動バランス検出装置、体動バランス検出プログラム、体動バランス検出方法、および体動バランス診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、生体に携帯されて該生体の体動による変化を検知した体動関連信号を取得する体動関連信号取得手段と、該体動関連信号取得手段で取得した体動関連信号から体動バランスを検出する体動バランス検出手段と、検出した体動バランスに基づく出力を行う出力手段とを備えた体動バランス検出装置であることを特徴とする。
【0007】
前記体動関連信号取得手段は、体動による加速度の変化を検知した加速度信号を取得する加速度信号取得手段、あるいは体動による他の変化を検知した信号を取得する手段、若しくはこれらによって取得した体動関連信号を有線または無線により受信する受信手段など、体動に関連する信号を取得する手段により構成することができる。前記加速度信号取得手段は、加速度の変化を検知する加速度センサ、または、加速度の変化が検知された加速度信号を有線または無線により受信する受信手段により構成することができる。前記加速度センサは、一方向の加速度を検知する一次元加速度センサ、直交する二方向の加速度を検知する二次元加速度センサ、または、直交する三方向の加速度を検知する三次元加速度センサで構成することができる。
【0008】
前記体動バランスは、歩行や走行などの前進運動、または、足踏みやもも上げなどのその場運動といった運動での足別の運動の偏りによる体動バランスとすることができる。具体的には、二足生体における右足と左足の体動バランス、四足生体における右前足と左前足と右後ろ足と左後ろ足の体動バランスとすることができる。
【0009】
前記出力手段は、表示を行う表示手段、点灯または点滅を行う照明手段、音声出力を行う音声出力手段、振動を行う振動手段、または情報を送信する通信手段など、出力を行う適宜の手段で構成することができる。
【0010】
前記出力手段による出力は、体動バランスの良否の出力、体動バランスが左傾斜か右傾斜か正常かの出力、足別のステップ間隔が均一か偏っているかの出力、体動バランスの不良レベルの出力、あるいはこれらの複数など、適宜の出力とすることができる。
例えば、表示手段に表示する場合は、図柄、マーク、文字などにより表す、あるいは、例えば異常のある場合だけ表示するといったように表示するか否かにより表すなど、適宜の表示方法により出力することができる。
【0011】
照明手段により出力する場合は、例えば異常のある場合とない場合で、点灯と消灯を切り替える、点滅と消灯を切り替える、点灯する色を切り替えるなど、適宜の照明の切替により出力することができる。
【0012】
音声出力手段により出力する場合は、良否や状態などを音声により報知する、あるいは異常のある場合にアラーム音または異常の旨を報知するなど、適宜の音声により報知することができる。
【0013】
振動手段により出力する場合は、異常のある場合にのみ振動する、異常の程度によって振動量を異ならせるなど、適宜の方法によって出力することができる。
【0014】
通信手段により出力する場合は、良否データを出力する、あるいは数値データを出力するなど、受信側(体動バランス検出装置から直接または間接にデータを受け取る情報処理端末)が上記表示手段、照明手段、音声出力手段、あるいは振動手段によって体動バランスの良否等を出力できる適宜のデータを送信することができる。
【0015】
前記体動バランス検出装置は、体動を測定する体動測定装置、または体動測定装置からデータ取得する適宜の情報処理装置とすることができる。体動測定装置は、歩数を計数する歩数計、あるいは活動量を測定する活動量計とすることができる。また、情報処理装置は、携帯電話機やPDAやノート型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置、デスクトップ型パーソナルコンピュータやサーバコンピュータなどの設置型情報処理装置とすることができる。
【0016】
この発明により、圧力センサが設置されておらずとも足別の運動の偏りによる体動バランスを検出することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記体動バランス検出手段は、前記体動関連信号から一歩単位を認識して足別に分離した各足に関する足別情報を取得する足別情報取得処理と、前記足別情報に基づいて体動バランスを検出する体動バランス検出処理とを実行する構成とすることができる。
【0018】
前記足別に分離した各足に関する足別情報は、二足生体における奇数歩と偶数歩または左足と右足、四足生体における第1〜第4歩または右前足と左前足と右後ろ足と左後ろ足または奇数歩と偶数歩など、運動において順番にあるいは交互に繰り出すそれぞれの足に関する情報とすることができる。
この態様により、それぞれの足の関係における体動バランスを検出することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記足別情報は、各歩における体動関連信号の振幅、または、各歩における体動関連信号から取得する一歩分の時間である一歩時間、のうち少なくとも一方が含まれ、前記体動バランス検出処理は、それぞれの前記足別情報の振幅を比較する振幅比較処理、または、それぞれの前記足別情報の一歩時間を比較する一歩時間比較処理のうち少なくとも一方の処理により体動バランスを検出する構成とすることができる。
【0020】
これにより、それぞれの足で運動時に振幅や一歩時間の差があるかといったことを検出することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記体動バランス検出手段は、前記体動関連信号から前記足別情報となる一歩毎の情報を続けて取得できる体動か否か判定する連続性判定処理を実行し、所定歩数分続けて取得できれば前記足別情報取得処理、および体動バランス検出処理を実行し、所定歩数分続けて取得できなければ体動バランスの検出を行わない構成とすることができる。
【0022】
これにより、続けて運動している場合に体動バランスを検出することができ、検出する体動バランスの精度を向上させることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、体動バランスの良否を判定する判定基準のユーザによる指定を許容する判定基準指定受付手段を備え、前記体動バランス検出処理は、前記足別情報が前記判定基準を満たすか否か判定する構成とすることができる。
【0024】
前記ユーザは、体動バランス検出装置を装着する運動生体自身、あるいは体動バランス検出装置を装着する運動生体の運動を評価または診断するインストラクターや医者や介護者など、体動バランス検出装置を用いる者とすることができる。
【0025】
この態様より、ユーザが自分で体動バランスの判定基準を定めることができる。従って、初期は判定基準をゆるく設定しておき、最終的には判定基準をきつく設定することができ、運動訓練の進捗状況に合わせて判定基準を変更するといったことが可能になる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記体動関連信号は、運動生体の鉛直方向の加速度信号、または運動生体の左右方向の加速度信号の少なくとも一方を含む構成とすることができる。
これにより、体動バランスの検出に役立つ加速度信号を取得することができる。
【0027】
またこの発明は、生体に携帯されて該生体の体動による変化を検知する携帯型体動検知センサと、前記携帯型体動検知センサで検知した体動関連信号から歩数をカウントする歩数カウント手段と、前記携帯型体動検知センサで検知した体動関連信号から体動バランスを検出する体動バランス検出手段と、前記歩数カウント手段によりカウントしたカウント歩数の歩数表示と、前記体動バランス検出手段により検出した体動バランスに基づく体動バランス表示とを行う表示手段と、少なくとも前記カウント歩数を記憶する記憶手段と、前記各手段に電力供給を行う電源手段とを備えた体動測定装置とすることができる。
【0028】
前記運動量測定手段は、歩行や走行の歩数をカウントする歩数カウント手段、あるいは、歩行や掃除などの活動量を測定する活動量測定手段で構成することができる。
この態様により、圧力センサが設置されておらずとも足別の運動の偏りによる体動バランスを検出することができる体動測定装置を提供することができる。
【0029】
またこの発明は、コンピュータを、生体に携帯されて該生体の体動による変化を検知した体動関連信号を取得する体動関連信号取得手段と、該体動関連信号から体動バランスを検出する体動バランス検出手段と、検出した体動バランスに基づく出力を行う出力手段として機能させる体動バランス検出プログラムとすることができる。
【0030】
これにより、適宜のコンピュータに体動バランス検出プログラムをインストールして体動バランス検出装置を作成することができる。
【0031】
またこの発明は、生体に携帯されて該生体の体動による変化を検知した体動関連信号から体動バランスを検出し、検出した体動バランスに基づく出力を行う体動バランス検出方法とすることができる。
これにより、体動のバランスを検出することができる。
【0032】
またこの発明は、体動による変化を検知した体動関連信号を取得する体動関連信号取得手段と、該体動関連信号取得手段で取得した体動関連信号から体動バランスを検出する体動バランス検出手段と、検出した体動バランスに基づく出力を行う出力手段とを備えた体動バランス検出装置を運動生体の正中線上に装着し、前記出力手段からの前記体動バランスに基づく出力に基づいて体動バランスの診断を行う体動バランス診断方法とすることができる。
【0033】
これにより、例えばインストラクターや医者などが運動生体の体動バランスを診断することができる。従って、例えば運動時の姿勢の矯正やリハビリテーションによる運動能力回復の把握などに役立てることができる。
【発明の効果】
【0034】
この発明により、圧力センサが設置されておらずとも足別の運動の偏りによる体動バランスを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
この発明の一実施形態として、体動バランスの1つである歩行バランスを検出する体動測定装置の例について、以下図面と共に説明する。
図1は、体動測定装置1の構成を示すブロック図である。
【0036】
体動測定装置1は、通信部11、加速度検知部12、表示部13、演算部14、電源接続部15、記憶部16、操作部17、および電源部18を有しており、携帯型とするべく普通人の手のひらに納まる程度の大きさに形成されている。この体動測定装置は、歩数をカウントする歩数計、あるいは掃除や雑巾がけといった家事などによる活動量を測定する活動量測定装置として用いられるものである。
【0037】
通信部11は、有線接続するUSB(Universal Serial Bus)や無線通信するBluetooth(登録商標)など、適宜の通信インターフェースで構成することができる。これにより、パーソナルコンピュータや携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)などの情報処理装置との通信を実現する。
【0038】
加速度検知部12は、体動測定装置1を装着した装着ユーザの歩行等によって生じる振動の加速度を検知するセンサであり、検知信号を演算部14に伝達する。この加速度検知部12は、一方向の加速度を検知する一次元加速度センサ、直交する二方向の加速度を検知する二次元加速度センサ、または、直交する三方向の加速度を検知する三次元加速度センサで構成することができ、情報量の多い三次元加速度センサが最も好ましい。
【0039】
なお、この加速度検知部12により歩行バランスを正しく検出するために、携帯型の体動測定装置1は、歩行者の正中線上に装着されることが好ましく、例えばベルトのバックル部またはベルトの背中側中央部に装着されることが好ましく、ベルトのバックル部に装着されることがより好ましい。
【0040】
これにより、良好なバランスで歩行した際に、加速度検知部12で検知する加速度の変動に右足と左足で差が出ることを防止できる。すなわち、例えば体動測定装置1を右足につければ、右足の接地時に強い加速度の変化が現れて、左足の接地時の加速度の変化がそれより少なくなり得るが、このようなことを防止できる。
【0041】
このように体動測定装置1を正中線上に装着した場合、加速度検知部12を三次元加速度センサで構成すれば、加速度信号の進行方向成分、鉛直方向成分、および左右方向成分をそれぞれ容易に取り出すことができる。
【0042】
表示部13は、液晶などの表示機器で構成されており、演算部14からの表示制御信号に従って情報を表示する。この表示する情報は、歩数や歩行バランスなど歩行に関する情報とすることができる。
【0043】
演算部14は、電源部18から電源接続部15を介して受け取る電力によって駆動し、加速度検知部12および操作部17から伝達される検知信号の受け取り(検出)、通信部11、表示部13、および記憶部16に対する電力供給(電源)と動作制御(表示制御)を実行する。また、加速度検知部12から伝達された検知信号に基づいて、記憶部16に記憶している歩行判定基準データや一歩判定基準データ等を参照して演算する処理も実行する。
【0044】
記憶部16は、加速度検知部12で検知した検知信号である加速度データ、該検知信号のうち一歩を検出するための一歩判定基準データ、および、歩行バランスを検出するための体動バランス検出プログラム等を記憶している。
【0045】
操作部17は、体重や歩幅などのユーザ情報の入力操作、時計を合わせる日時入力操作、表示内容を歩数・消費カロリー・歩行距離といった各種内容に切り替える表示内容切替操作、および、通信部11に接続された別途の情報処理端末へデータ送信するデータ送信操作など、適宜の操作入力を受け付け、この操作入力信号を演算部14に伝達する。
また、操作部17は、歩行バランスの良否を判定するための判定基準(第1〜第4バランス判定基準値)の操作入力も受け付ける。この判定基準の操作入力は、予め用意した複数の判定基準から選択式に指定させる、デジタル式に所定段階ずつ変更するように指定させる、あるいはアナログ式に任意に変更するように指定させるなど、適宜の入力とすることができる。
電源部18は、充電可能なバッテリーや充電不可の電池など、携帯可能な適宜の電源により構成されている。
【0046】
図2は、体動測定装置1の演算部14が体動バランス検出プログラムに従って実行する動作のフローチャートである。
演算部14は、加速度検知部12から加速度データを取得し(ステップS1)、この加速度データから一歩の検出を行う(ステップS2)。この一歩の検出は、例えば極大値から極小値までの振幅と一歩時間が所定の範囲にあるデータがあれば一歩と検出するなど、適宜の一歩判定基準データに基づいて実行すると良い。
【0047】
一歩を検出できなかった場合(ステップS2:No)、演算部14は、変数であるバランス用歩数BSに値0を代入してステップS1に戻る(ステップS3)。
【0048】
一歩を検出できた場合(ステップS2:Yes)、演算部14は、ノイズの有無を判定し(ステップS4)、ノイズが有った場合(ステップS4:No)、前述したステップS3を実行する。
【0049】
ノイズが無かった場合(ステップS4:Yes)、演算部14は、歩行未検出が所定時間(歩行が中断されていないか判定する歩行中断判定時間、例えば1秒)以内か否か判定し(ステップS5)、所定時間を超えていれば(ステップS5:No)、前述したステップS3を実行する。また、ステップS4にてノイズが無かった場合、演算部14は、検出した一歩を歩数としてカウントし、このカウント歩数を図3(A)の画面イメージ図に示すように表示部13に表示するとともに記憶部16に記憶する。図3(A)の例では、表示部13に歩数64と時刻63が表示されている。
【0050】
歩行未検出が所定時間以内であれば(ステップS5:Yes)、演算部14は、バランス用歩数BSに1を加算し、一歩の加速度波形のPP値(一歩の極大値から極小値までの振幅)および一歩時間T(一歩の加速度波形の時間長さ)を算出する(ステップS6)。
【0051】
演算部14は、バランス用歩数BSが所定値(所定歩数の連続性を判定する値、この実施例では10歩分を示す10)になるまで(ステップS7:No)、前述したステップS1〜S6を繰り返す。
【0052】
バランス用歩数BSが所定値になると(ステップS7:Yes)、演算部14は、振幅による歩行バランス検出処理(ステップS8〜S11)と、一歩時間による歩行バランス検出処理(ステップS12〜S15)を実行する。
【0053】
振幅による歩行バランス検出処理を行う演算部14は、ステップS7の所定値の半分(この例では5歩分)の奇数歩目のPP値の平均値(PPodd)、該半分の偶数歩目のPP値(PPeven)を算出する(ステップS8)。
【0054】
演算部14は、偶数歩PP値(PPodd)/奇数歩PP値(PPeven)が第1バランス判定基準値(この例では1.10)以上か、または、偶数歩PP値(PPodd)/奇数歩PP値(PPeven)が第2バランス判定基準値(この例では0.90)以下か否かを判定する(ステップS9)。
【0055】
偶数歩PP値(PPodd)/奇数歩PP値(PPeven)が第1バランス判定基準値以上かまたは第2バランス判定基準値以下であれば(ステップS9:Yes)、演算部14は、歩行バランスが悪いと判定し、変数である「歩行バランスPP」に歩行バランス不良を示す“Unbalanced”を代入する(ステップS10)。
【0056】
偶数歩PP値(PPodd)/奇数歩PP値(PPeven)が第1バランス判定基準値から第2バランス判定基準値までの範囲内であれば(ステップS9:No)、演算部14は、歩行バランスが良いと判定し、変数である「歩行バランスPP」に歩行バランス良を示す“Balanced”を代入する(ステップS11)。
【0057】
前述したステップS7の後、一歩時間による歩行バランス検出処理を行う演算部14は、ステップS7の所定値の半分(この例では5歩分)の奇数歩目の一歩時間Tの平均値(Todd)、該半分の偶数歩目の一歩時間T(Teven)を算出する(ステップS12)。
なお、このToddや前述のPPoddといった奇数歩の情報を一方足情報とし、TevevやPPevenといった偶数歩の情報を他方足情報とすることができ、これによって一方足情報と他方足情報の比較が可能となっている。
【0058】
演算部14は、偶数歩一歩時間T(Todd)/奇数歩一歩時間T(Teven)が第3バランス判定基準値(この例では1.20)以上か、または、偶数歩一歩時間T(Todd)/奇数歩一歩時間T(Teven)が第4バランス判定基準値(この例では0.80)以下か否かを判定する(ステップS13)。
【0059】
偶数歩一歩時間T(Todd)/奇数歩一歩時間T(Teven)が第3バランス判定基準値以上かまたは第4バランス判定基準値以下であれば(ステップS13:Yes)、演算部14は、歩行バランスが悪いと判定し、変数である「歩行バランスT」に歩行バランス不良を示す“Unbalanced”を代入する(ステップS14)。
【0060】
偶数歩一歩時間T(Todd)/奇数歩一歩時間T(Teven)が第3バランス判定基準値から第4バランス判定基準値までの範囲内であれば(ステップS13:No)、演算部14は、歩行バランスが良いと判定し、変数である「歩行バランスT」に歩行バランス良を示す“Balanced”を代入する(ステップS15)。
【0061】
演算部14は、歩行バランスPPと歩行バランスTの値を確認し、いずれか一方にでも“Unbalanced”が代入されていれば(ステップS16:Yes)、ユーザにバランス異常を報知する(ステップS17)。ここでのユーザへの報知方法は、種々の方法を採用できる。たとえば、図3(B)に示すように、表示部13にバランス異常を示す警告マーク61やバランス異常表示62を表示する、図3(D)や図3(E)に示すように表示部13に人が右または左に傾いている人絵図65や「良好」「右傾斜」「左傾斜」を示す状態説明文字66を表示する、別途備えたLED等を赤色などで発光あるいは点滅させる、別途備えた音声出力装置で音声案内を行う、別途備えた振動装置(バイブレーション装置)を振動させる、あるいはこれらの複数を行うことができる。
【0062】
なお、右傾斜や左傾斜を表示する場合、例えば傾き判定モードなどの特殊モードをユーザに選択させ、この特殊モードで一歩目が左足と右足のどちらであるかを指定してまたは選択させてから測定を行うとよい。これにより、演算部14は、偶数歩PP値(PPodd)および奇数歩PP値(PPeven)を、それぞれ右足および左足と対応付けをすることができ、偶数歩PP値(PPodd)と奇数歩PP値(PPeven)の比較から右傾斜か左傾斜かを判定することができ、上述した図3(D)や図3(E)のように傾斜方向を出力することができる。
【0063】
また、上述のバランス異常の報知は、歩行中にリアルタイムまたはリアルタイムになるべく近いタイミングで実行することが好ましい。この場合、音声や振動により報知すれば、歩行中の利用者は体動測定装置1を見ずともバランス異常を知ることができる。このため、ユーザは、バランス異常の報知を受けてその場でバランス良い歩行に正し、バランス異常の報知が無くなることで歩行を矯正できたことを認識できる。
【0064】
演算部14は、歩行バランスPPと歩行バランスTのいずれにも
“Unbalanced”が代入されていなければ(ステップS16:No)、ユーザにバランス正常を報知する(ステップS18)。
ここでのユーザへの報知方法は、種々の方法を採用できる。たとえば、図3(C)に示すように、表示部13にバランス正常の旨を示す「良好」の状態説明文字66を表示する、表示部13に人が真っ直ぐ立っている人絵図65あるいは歩いている図を表示する、別途備えたLED等を青色などで発光あるいは点滅させる、別途備えた振動装置(バイブレーション装置)を振動させる、あるいはこれらの複数を行うことができる。なお、このようにバランス正常の場合、ユーザに対する報知を行わない構成とすることもできる。この場合は、バランス異常の場合のみ報知が行われ、ユーザに常時バランス良否を確認させる手間を省略できる。
【0065】
以上の構成および動作により、歩行バランスの良否を検出し、出力することができる。特に、奇数歩と偶数歩とに分離して検出することで、歩行時の装着ユーザの左右方向のバランスである左右バランスを検出することができる。
【0066】
詳述すると、図4(A)や図5(A)に示すように、バランスの良い通常歩行であれば、PP値(PP1〜PP6)、および一歩時間T(T1〜T6)は、右足ステップ(奇数歩)と左足ステップ(偶数歩)との差が殆どない状態である。従って、偶数歩PP値(PPodd)/奇数歩PP値(PPeven)および偶数歩一歩時間T(Todd)/奇数歩一歩時間T(Teven)が1に近い値(基準範囲内)となり、バランス良と判定することができる。
【0067】
一方、左足をかばって歩行した場合であれば、図4(B)に示すように、PP値(PP1〜PP6)、および一歩時間T(T1〜T6)は、右足ステップ(奇数歩)と左足ステップ(偶数歩)との差が大きくなる。従って、偶数歩PP値(PPodd)/奇数歩PP値(PPeven)または偶数歩一歩時間T(Todd)/奇数歩一歩時間T(Teven)が1から遠い値(基準範囲外)となり、バランス不良と判定することができる。
【0068】
また、右足を引きずって歩行した場合であれば、図5(B)に示すように、左足ステップと右足ステップとで一歩時間および振幅に偏りが出る。従って、偶数歩PP値(PPodd)/奇数歩PP値(PPeven)または偶数歩一歩時間T(Todd)/奇数歩一歩時間T(Teven)が1から遠い値(基準範囲外)となり、バランス不良と判定することができる。
【0069】
また、図6(A)に示すように上半身を右に傾けた場合や、図6(B)に示すように上半身を左に傾けた場合も、左足ステップと右足ステップとで一歩時間および振幅に偏りが出る。従って、偶数歩PP値(PPodd)/奇数歩PP値(PPeven)または偶数歩一歩時間T(Todd)/奇数歩一歩時間T(Teven)が1から遠い値(基準範囲外)となり、バランス不良と判定することができる。
【0070】
このように、様々な歩行バランスの不良を検出することができ、ユーザに報知することができる。従って、歩行バランスを検出する体動測定装置1は、例えばファッションモデルのように美しく歩くための訓練に使用する、歩行バランスの良い健康的な歩行の訓練に使用する、あるいは歩行訓練のリハビリテーションの進捗管理に使用するといったことができる。
【0071】
また、体動測定装置1のみで歩行バランスを検出できるため、床に圧力センサを敷き詰めるといったことが不要であり、日常生活のあらゆる場所の歩行で歩行バランスを検出できる非常に利便性の良い体動測定装置1をユーザに提供することができる。
【0072】
また、歩行バランスの不良を種々の方法でユーザに報知することができるため、ユーザは歩行バランスの不良に気づいて良好な歩行バランスの歩行をするように意識付けすることができる。
【0073】
また、偶数歩の値(一歩時間または振幅)と奇数歩の値(一歩時間または振幅)の一方から他方を除算した値(つまり絶対値ではなく偶数歩と奇数歩の相対値)を用いるため、個々人の歩幅や歩行時上下動の大きさ等の個人差に関係なく歩行バランスの良否を判定することができる。
【0074】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の体動バランス検出装置およびコンピュータは、実施形態の体動測定装置1に対応し、
以下同様に、
加速度センサは、加速度検知部12に対応し、
体動関連信号および加速度信号は、加速度検知部12の検知信号に対応し、
出力手段および表示手段は、表示部13に対応し、
体動バランス表示は、表示部13に表示するバランス異常の旨や図、LEDの発光や点滅、音声出力装置の音声案内、または振動装置の振動に対応し、
体動バランス検出手段は、ステップS9、ステップS13、またはステップS9,S13,S16を実行する演算部14に対応し、
歩数カウント手段は、ステップS4の後にカウント歩数を記憶する演算部14に対応し、
歩数表示は、ステップS4の後にカウント歩数を表示する演算部14に対応し、
記憶手段は、記憶部16に対応し、
電源手段は、電源部18に対応し、
足別情報は、PPodd、Todd、PPeven、およびTevenに対応し、
加速度信号の振幅は、PPoddおよびPPevenに対応し、
加速度信号の一歩時間は、ToddおよびTevenに対応し、
連続性判定処理は、ステップS7に対応し、
振幅比較処理は、ステップS8に対応し、
足別情報取得処理は、ステップS8、およびステップS12に対応し、
体動バランス検出処理は、ステップS9、ステップS13、またはステップS9,S13,S16に対応し、
一歩時間比較処理は、ステップS13に対応し、
所定歩数は、10歩に対応し、
判定基準は、第1〜第4バランス判定基準値に対応し、
判定基準指定受付手段は、操作部17に対応し、
運動生体の鉛直方向の加速度信号は、加速度信号の鉛直成分に対応し、
運動生体の左右方向の加速度信号は、加速度信号の左右成分に対応し、
体動バランスは、歩行における右足と左足の一歩時間および振幅の偏りに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0075】
例えば、体動測定装置1は、歩行バランスに限らず、走行バランス、足踏みバランス、もも上げバランスなどの体動バランスを検出する構成としてもよい。この場合、様々な運動における装着ユーザの体動バランス、若しくは装着ユーザの足運動(歩行、走行、足踏み、もも上げ)に関する足運動バランス、若しくは装着ユーザの左右方向の左右バランスを検出することができる。
【0076】
また、体動測定装置1は、第1〜第4バランス判定基準値をより細かく設定し、正常と判定する範囲を狭くする、あるいは、PPodd/PPevenやTodd/Tevenの値をそのまま出力する構成にすることができる。これにより、体動バランスの僅かな差を検出でき、スポーツ選手の体動バランスの診断や、リハビリテーションにおける運動能力回復の診断に役立てることができる。またこの場合、第1〜第4バランス判定基準値を操作部17の操作によって詳細に設定できるようにすれば、体動バランスの向上に応じて適正範囲(体動バランスが良好であると判定する範囲)を狭く設定することができる。
【0077】
また、図7に示すように、体動測定装置1と通信部11を介して通信できるユーザ端末4、およびインターネット3を介してユーザ端末4と通信できる管理装置2とを備えて体動バランス検出システム10として利用してもよい。
【0078】
この場合、管理装置2は、例えばサーバ装置として利用されるような適宜のコンピュータであり、制御部20、記憶部21、操作部22、表示部23、および通信部24等を有している。通信部24は、有線接続するLANボードや無線通信する無線LANボードなど、適宜の通信機器で構成することができる。
【0079】
この管理装置2は、係員による操作部22の操作により、ユーザ端末4を介して体動測定装置1からデータを受信し、このデータに基づく出力画面を表示部23に表示する。この出力画面には、歩数、バランスの正常/異常などを表示する。
【0080】
ユーザ端末4は、例えばパーソナルコンピュータで構成され、制御部40、通信部41、操作部42、表示部43、および通信部44を有している。通信部41は、有線接続するLANボードや無線通信する無線LANボードなど、適宜の通信機器で構成することができる。通信部44は、有線接続するUSB(Universal Serial Bus)や無線通信するBluetooth(登録商標)など、適宜の通信インターフェースで構成することができる。
【0081】
このユーザ端末4は、通信部44を介して体動測定装置1からデータを取得し、このデータに基づくグラフや表を表示部43に表示する機能、このデータを管理装置2に送信する機能を有している。表示部43に表示する画面には、歩数、バランスの正常/異常などを表示する。
【0082】
なお、このユーザ端末4は、パーソナルコンピュータに限らず、PDA(Personal Digital Assistants)や携帯電話といった携帯型情報処理装置で構成するなど、適宜の装置で構成することができる。
【0083】
このように構成した場合、情報処理端末(ユーザ端末4や管理装置2)の表示手段(表示部43や表示部23)に体動バランスの検出結果や判定結果を表示する構成とすることで、インストラクターや医者などが体動バランスをリアルタイムに確認することができ、指導や診断を良好に行うことができる。また、情報処理端末(ユーザ端末4や管理装置2)の操作手段(操作部42や操作部22)で第1〜第4バランス判定基準値を入力する構成とすれば、インストラクターや医者などがリアルタイムに基準を変更することができる。またこの場合、第1〜第4バランス判定基準値や体動バランス検出プログラムを情報処理端末(ユーザ端末4や管理装置2)に記憶させ、体動測定装置1から加速度信号を受け取って情報処理端末(ユーザ端末4や管理装置2)により演算する構成にしてもよい。
【0084】
また、人間のように二足歩行する場合に限らず、ペットや飼育動物など四足歩行あるいは二足歩行する動物の体動バランスの検出に利用してもよい。この場合、ペットや飼育動物が足をかばって歩いていないか診断するなど、症状を話すことができないペットや飼育動物の健康診断に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】体動測定装置の構成を示すブロック図。
【図2】体動測定装置の演算部が実行する動作のフローチャート。
【図3】表示部の画面イメージの説明図。
【図4】歩行時の加速度検知部の出力波形の説明図。
【図5】歩行時の加速度検知部の出力波形の説明図。
【図6】歩行時の加速度検知部の出力波形の説明図。
【図7】体動バランス検出システムの構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0086】
1…体動測定装置、12…加速度検知
部、13…表示部、14…演算部、16…記憶部、17…操作部、18…電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に携帯されて該生体の体動による変化を検知した体動関連信号を取得する体動関連信号取得手段と、
該体動関連信号取得手段で取得した体動関連信号から体動バランスを検出する体動バランス検出手段と、
検出した体動バランスに基づく出力を行う出力手段とを備えた
体動バランス検出装置。
【請求項2】
前記体動バランス検出手段は、
前記体動関連信号から一歩単位を認識して足別に分離した各足に関する足別情報を取得する足別情報取得処理と、
前記足別情報に基づいて体動バランスを検出する体動バランス検出処理とを実行する
請求項1記載の体動バランス検出装置。
【請求項3】
前記足別情報は、
各歩における体動関連信号の振幅、または、
各歩における体動関連信号から取得する一歩分の時間である一歩時間、
のうち少なくとも一方が含まれ、
前記体動バランス検出処理は、
それぞれの前記足別情報の振幅を比較する振幅比較処理、または、
それぞれの前記足別情報の一歩時間を比較する一歩時間比較処理
のうち少なくとも一方の処理により体動バランスを検出する
請求項2記載の体動バランス検出装置。
【請求項4】
前記体動バランス検出手段は、
前記体動関連信号から前記足別情報となる一歩毎の情報を続けて取得できる体動か否か判定する連続性判定処理を実行し、
所定歩数分続けて取得できれば前記足別情報取得処理、および体動バランス検出処理を実行し、
所定歩数分続けて取得できなければ体動バランスの検出を行わない構成とした
請求項2または3記載の体動バランス検出装置。
【請求項5】
体動バランスの良否を判定する判定基準のユーザによる指定を許容する判定基準指定受付手段を備え、
前記体動バランス検出処理は、
前記足別情報が前記判定基準を満たすか否か判定する構成である
請求項2、3または4記載の体動バランス検出装置。
【請求項6】
前記体動関連信号は、
運動生体の鉛直方向の加速度信号、または
運動生体の左右方向の加速度信号
の少なくとも一方を含む構成である
請求項1から5のいずれか1つに記載の体動バランス検出装置。
【請求項7】
生体に携帯されて該生体の体動による変化を検知する携帯型体動検知センサと、
前記携帯型体動検知センサで検知した体動関連信号から歩数をカウントする歩数カウント手段と、
前記携帯型体動検知センサで検知した体動関連信号から体動バランスを検出する体動バランス検出手段と、
前記歩数カウント手段によりカウントしたカウント歩数の歩数表示と、前記体動バランス検出手段により検出した体動バランスに基づく体動バランス表示とを行う表示手段と、
少なくとも前記カウント歩数を記憶する記憶手段と、
前記各手段に電力供給を行う電源手段とを備えた
体動測定装置。
【請求項8】
コンピュータを、
生体に携帯されて該生体の体動による変化を検知した体動関連信号を取得する体動関連信号取得手段と、
該体動関連信号から体動バランスを検出する体動バランス検出手段と、
検出した体動バランスに基づく出力を行う出力手段として機能させる
体動バランス検出プログラム。
【請求項9】
生体に携帯されて該生体の体動による変化を検知した体動関連信号から体動バランスを検出し、
検出した体動バランスに基づく出力を行う
体動バランス検出方法。
【請求項10】
体動による変化を検知した体動関連信号を取得する体動関連信号取得手段と、該体動関連信号取得手段で取得した体動関連信号から体動バランスを検出する体動バランス検出手段と、検出した体動バランスに基づく出力を行う出力手段とを備えた体動バランス検出装置を運動生体の正中線上に装着し、
前記出力手段からの前記体動バランスに基づく出力に基づいて体動バランスの診断を行う
体動バランス診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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