体外手術において使用されるように設計された拍動型医療デバイス
本発明は、血流の循環を可能にする拍動型医療デバイス101、201、301、401、501に関する。本発明によれば、このデバイスは、内側壁5と、外側壁4と、2つの端部6、7とを有する外部チューブ2であって、1つの端部6はECCタイプの機械又は補助人工心臓又は患者の身体に接続されるように設計され、1つの端部7は患者の身体に接続されるように設計された外部チューブ2と、前記外部チューブ2に挿入され、内側壁109と、外側壁108と、周囲全体が外部チューブ2の周囲全体のまわりに固定された2つの端部110、111とを有する内側チューブ103であって、血流が前記内側チューブ103を介して循環する、内側チューブ103とを備え、内側チューブ103の外側壁108及び外部チューブ2の内側壁5は、流体で充填されるように設計された空間12を画定し、前記空間12は、血流の1つ又は複数のパルスを生成するように前記空間12の1回又は複数回の拡張/収縮を生成できる装置にコネクタ・ポート13を介して取り付けられることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外手術において、及び空気ポンプ又は電気ポンプを供給源として使用する他の補助人工心臓(cardiac assistance system)において使用するための拍動型医療デバイス(pulsatile medical device)に関する。例を挙げると、このデバイスを使用することにより、開心術を受ける患者又は心不全患者の生体において定期的な拍動灌流が得られる。
【背景技術】
【0002】
心血管系は、内皮細胞で内面を覆われた(internally lined with)、圧力下にある閉流体回路である。内皮は、窒化酸化物合成(NOS)、血液凝固、炎症反応、動脈硬化、血管新生、及びアポトーシスによる血管緊張を含む内皮機能を維持するために不可欠な接線方向に働く(tangential)ずり応力に絶えずさらされる。
【0003】
体外循環(ECC)は、手術区画(operating block)、心臓カテーテル・ラボ、又は集中治療室において、小児患者又は成人患者の心臓及び肺の代理をするために使用される医療デバイスである。
【0004】
エネルギー源として、ECCコンソールは、閉回路内の流体の運動を支配する物理学の法則に基づいて設計された数学的モデルである。具体的には、回路は、チューブ、動脈カニューレ及び静脈カニューレ、静脈血貯血槽、人工肺、動脈フィルタなどの生体適合性機器と共に、ポンプと、熱交換器と、流量計と、ガス及び血中電解質の分析器と、圧力記録計とから構成される。
【0005】
通常、遠心ポンプ又は蠕動ポンプが動脈の水頭ポンプ(arterial head pump)として使用され、他の4つの蠕動ポンプは、開心術時の吸引、心室循環、心筋保護液の投与、及び緊急ポンプに使用される。
【0006】
ECCは、手術時の心筋保護中に器官の灌流及び代謝機能を維持するため、又は心筋が回復するまで衰えた心筋を補助するため、又は移植前の中継として必要である。
【0007】
ECCが1950年代初期に登場してから、この分野で進歩が見られたにもかかわらず、ECCには今なお、術後の血行動態疾患を引き起こすという欠点がある。
【0008】
ECCの人工表面は、凝集及び血小板を活性化し、血餅が回路内部に形成される確率を大きく上昇させ、それにより術後出血、生化学的異常、電解質異常などの困難な状況をきたすことがある。
【0009】
従来のECCにおける層流は、内皮から、接線方向に働くずり応力の刺激を取り除き、特に新生児及び小児に関して補体カスケード、炎症反応、アポトーシス、及び血行動態疾患を活性化する原因となる内皮機能不全症候群に進展する。
【0010】
閉流体回路における流体の循環(摩擦による損失水頭を用いたエネルギー伝達)は、エネルギー源、チューブの形状、並びに流体の粘度及び密度に左右される。
【0011】
この機構に関係する3つの主な物理学の法則は、せん断力に関するニュートンの法則(1668)、エネルギー損失に関するベルヌーイの第3方程式(1738)、並びに液体の密度及び運動の特性を定義するレイノルズ数(1880)である。
【0012】
ECCは、チューブの形状が変わらない閉回路を一定の粘度で進むニュートン流体に依拠する理論に基づいている。
【0013】
心血管循環は非ニュートン流体を含み、これは形状が可変の血管内を移動する。
【0014】
従って、2つの異なる種類の流体回路の間に対立(confrontation)があり、これらの流体回路を機能的に互いに適合させ、調和して協働させるのは難しい。
【0015】
心血管循環に対する血管抵抗は一酸化窒素(NO)を分泌することによって主に制御され、それはせん断力による内皮刺激に左右される。対照的に、ECCでは、抵抗は、チューブのタイプ、人工肺、大動脈カニューレ、粘度、及び層流又は乱流に対する関連がより高い。
【0016】
実際には、これは、循環駆動力が自然(心臓)であれ人工(ECC)であれ、それを定量化することが必要であることを意味する。この循環駆動力は、低抵抗で血液を移動させ、従って血管緊張及び内皮機能をずり応力によって維持するその能力によって決まり、生理的な脈圧を含む定期的な拍動流を使用する。
【0017】
従来のECCのこれらの短所を克服するために、以下の種々の理論的戦略が適用される。
・抗凝固薬、変力薬、血管拡張薬、ホルモン、電解質、血液、血小板、又は他の代用品などの薬物の使用。これは、特定の望ましくない影響を引き起こす一方、血行動態の問題を完全には解決しない。
・常温でのECC。これは、ますます普及しており、低温ECCに取って代わりつつある。常温では、血液は事実上ニュートン流体であり、それによって、特にECC回路内部で損失水頭及び炎症反応を制限する。それにもかかわらず、これが心臓及び血管に及ぼす作用には疑問がある。その理由は、心筋が心筋保護液の注入によって保護され、微小循環は血液希釈(ファーレウス−リンドクヴィスト)効果によって促進されるからである。
・ECCを使用しない心拍動下手術。術後の血行動態に対する有益な効果に加えて、このような技術は難しく、複雑な要求がほとんどない患者に対してのみ使用することができる。この技術は、手術が実施される部分を静止して保持するための特別な機器を必要とし、このため、この方法は高価である。
・拍動ECC。手術中にずり応力刺激を一定に保ち、内皮機能を保持するために、過去30年にわたって灌流の拍動モードがさまざまなグループによって使用されてきた。現在、新世代の拍動ECC機器は、拍動流灌流を生成するために改変された蠕動ポンプ又は遠心ポンプを使用する。これは、通常、その妨害による影響を制限するために、動脈の2つの揚程を、人工肺の上流に1つと下流に1つ必要とする。従って、これは、コストが高く、普通の誘起圧力曲線を有する、先端技術を用いた特別な機器を必要とする。そのため、このような機器はあまり普及していない。
【0018】
事実上すべての拍動機械(machine)がベルヌーイのエネルギー損失式を使用して評価され、ECC中の微小循環の灌流は、使用される駆動力のタイプよりも血液希釈によって決まることが認められ得る。同様に、微小塞栓という望ましくない影響を有する、ポリ塩化ビニル(PVC)又はシリコーンなどの材料に関係なく直径の小さな長い剛性チューブ内で、非常に壊れやすい成分を有する血液などの流体にパルスを印加することは逆説的であるように思える。
【0019】
従来のECC(持続流を有する)中にある一定量の拍動を得るための別の方法は、胸部大動脈に観血的に挿入される大動脈内カウンターパルセーション(intra−aortic counter−pulsation balloon)である。安価で拍動ECCと関連があるが、その方法は依然として観血的であり、特にアテローム性動脈硬化症に罹患した小児又は成人に血管合併症をもたらす。
【0020】
結論として、これらの方法は、通常、腎部又は内臓領域などの局所的な器官の改善された灌流によって評価されるが、脳循環などの遠位循環に対する保護はほとんど提供しない。これにより、渦が血管壁に近い乱流ずり応力又はレイノルズ応力のゾーンが作成され、2つの対向する流れ即ちECC層流及びバルーンからの拍動流が合流することによって渦が生成され、それによって、局所的な内皮が損なわれる。
【0021】
このように、前述の方法では、ECCの望ましくない影響が解決されない。
【0022】
本発明者らは、特許文献1において解決策を提示した。この解決策は、拍動チューブが、拡張可能なチューブが内部管腔又は外部管腔に組み込まれるいわゆる「2管腔(two−lumen)」部分を有する。
【0023】
本発明は、その2管腔拍動チューブの改善にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第2008/000110号
【特許文献2】仏国FR08/01818号明細書
【特許文献3】仏国FR08/02871号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の改善された拍動型医療デバイス(又はチューブ)の目的は、より均一な流れを生成し、特に実際の拍動ゾーン(図6を参照)において、拍動流の損失水頭を最小限にするデバイスを提供すること、並びに容易に利用でき、医療業務及び外科義務で小児患者のために及び成人のためにも利用可能なエネルギー源に適合された拍動型補助人工心臓を低コストの生理学的方法としてより広範に使用することである。
【0026】
本発明の拍動型医療デバイスは、すべてのタイプの持続流補助人工心臓に適合可能であり、単回使用を目的とするものであってよい。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の拍動型医療デバイスは、血流が循環することを可能にするデバイスであって、
・内壁と、外壁と、2つの端部とを提供する外部パイプであって、1つの端部はECCタイプの機械(ECC type machine)又は補助人工心臓又は患者の身体に接続するためのものであり、1つの端部は前記患者の身体に接続するためのものである、外部パイプと、
・前記外部パイプに挿入され、内壁と、外壁と、その周囲全体が外部パイプの周囲全体に固締(fasten)された2つの端部とを提供する内部パイプであって、血流が前記内部パイプを通過する、内部パイプとを備え、
・内部パイプの外壁及び外部パイプの内壁が、流体で充填されるための空間を画定し、前記空間が、前記空間の1回又は複数回の拡張/収縮を発生させ、それによって前記血流において1つ又は複数のパルスを生成するための器具にコネクタ・ポートを介して接続可能であるデバイスである。
【0028】
循環血の単流(circulating single blood flow)に拍動を加えることにより、従来技術よりはるかに均一で定期的な血流を作ることが可能である。従来技術では、ECCから来る層流と、例えば大動脈内コントラパルセーション(contra−pulsation)バルーンから来る拍動流が合流することによって、本発明のデバイスで生成されない渦が発生する。同様に、損失水頭が減少する。
【0029】
本発明の第1の実施例では、本発明の拍動型医療デバイスの内部パイプの端部は外部パイプの内壁に固締される。
【0030】
内部パイプの端部は、血管内ステント法に等しい技術即ち手術による保護(surgical umbrella)を使用して固締されシールされる。従って、より長いパイプを使用することが可能であり、過剰な数の接続を除去することによってエネルギー損失を減少する利点を有する。
【0031】
本発明の第2の実施例では、内部パイプは、長さに関して外部パイプと実質的に同一であり、本発明の拍動型医療デバイスの内部パイプの端部は外部パイプの外壁に固締される。
【0032】
内部パイプの端部は裏返され、外部パイプの外壁に対して外部からシールされる。有利には、これにより、体外システムを使用して、流体漏出によるガス状塞栓のリスクが回避される。
【0033】
本発明の特定の実施例では、弁は本発明の拍動型医療デバイスの前記内部パイプの一方又は両方の端部に固締される。
【0034】
前記弁(複数可)が存在することによって、血流の逆流が防止され、その後で血流が一方向のみに流れることができる。一方向の血流は、ボルテックス効果及び損失水頭を減少させる。
【0035】
特定の実施例では、本発明の拍動型医療デバイスの内部パイプの外壁と外部パイプの内壁の間に画定された前記空間は流体で予備充填される。
【0036】
拍動を生じさせることができる器具は、血流に圧力を加えるために、この既に充填された空間を圧迫するために必要な(更に充填される必要はない)流体を提供することのみが必要であるので、この予備充填のために、デバイスの使用は、エネルギーに関して低コストであることが分かる。この実施例では、流体は屈曲する外部パイプの外壁に圧力を加え、このような状況の下で、外部パイプは剛体材料で作製されてはならない。
【0037】
特定の実施例では、本発明の拍動型医療デバイスにおいて拍動を生じさせることを可能にする器具は、
・流体で充填されるように適合されたパウチと、
・拍動するように前記パウチを圧迫するように適合された、パウチを圧迫するための手段と、
・前記パウチを前記空間に接続し、流体が前記空間と前記パウチの間を流れることを可能にする前記コネクタ・ポートとを備える。このような器具は、同様に出願人に帰属する出願、特許文献2に特に記載されている。
【0038】
別の実施例では、本発明による医療デバイスに決定された拍動圧力を加えるための器具は、
・高圧持続流流体源から流体を取り出すように適合された流体取り出し用手段と、
・前記流体を低圧拍動流流体に変換するように適合された変換(transformating)用手段と、
・低圧拍動流内の前記流体を前記医療デバイスに加えるための少なくとも手段であって、コネクタ・ポートが、加えるための前記手段を前記空間に接続する、手段と、
・前記流体を評価するための手段とを備える。
【0039】
このような器具は、同様に出願人に帰属する出願、特許文献3に特に記載されている。
【0040】
好ましくは、拍動型医療デバイスは、流体で充填されるように適合されたパウチも含む。パウチは、その製造中に前記拍動型デバイスに接続されてもよく、及び/又は前記拍動性デバイスと一体的に作製されてもよく、従って、パウチを装備する拍動型医療デバイスを利用することを可能とし、パウチを圧迫するための同じ手段が本発明による複数のデバイスで使用可能であり、それぞれがそれぞれのパウチを有する。
【0041】
従って、本発明の拍動型医療デバイス(管類(tubing)と呼ぶこともできる)は、弁を有し、予備充填され、生体適合性材料で作製される端部を伴い、従って、直接縫合により心臓組織及び血管に固締されるのにも適する。その後で前述の種類の拍動を生じさせるように作用する器具に伴うデバイスは、完全な心室補助人工心臓を単独で構成する。
【0042】
このシステムは低コストで使いやすい。このシステムは、大動脈内バルーン用ポンプなどの高価な圧力源を必要としない。
【0043】
本発明は、
・ECCタイプのポンプと人工肺とを含む「Z0」ゾーンと、
・本発明の拍動型医療デバイスの第1の端部を含む「Z1」ゾーンと、
・本発明の拍動型医療デバイスを含む「Z2」ゾーンと、
・本発明の拍動型医療デバイスの第2の端部を含む「Z3」ゾーンと、
・大動脈カニューレを含む「Z4」ゾーンとを備える拍動型医療アセンブリ(pulsatile medical assembly)も提供する。
【0044】
拍動型医療アセンブリは、生理的で安価、容易に利用可能で、医療業務及び外科義務で小児患者のために及び成人のためにも利用可能なエネルギー源に適合可能な方法である拍動型補助人工心臓である。
【0045】
物理学の法則の適用分野においてプロトタイプを定義するパラメータを分析するために、その結果発生する現象の改善を説明するように、最小限にされたエネルギー損失により、体外循環(ECC)回路の回路は、6つのゾーン、即ち
Z0:従来のECCによって誘発される初期現象があるECCタイプのポンプ及び人工肺を含む、
Z1:本発明の拍動型医療デバイスの第1の端部を含み、人工肺からの定期的な持続流を有するゾーンに対応する、
Z2:本発明の拍動型医療デバイスを含み、このゾーンはプロトタイプの拍動部分を表し、周囲から中心に向かって停留層を推進させ、血液の成分(赤血球)に対する傷害の影響を減少させる、
Z3:本発明の拍動型医療デバイスの第2の端部を含み、このゾーンは拍動流を実際に有するゾーンである、即ち拍動エネルギーの最大量を保存するために回路の最も短いゾーンである、
Z4:このゾーンは大動脈カニューレである、
Z5:患者の灌注された組織、に細分される。
【0046】
血流は、エネルギー損失水頭を最小限にしながら、体外循環(ECC)機械から患者の灌流された器官(Z0〜Z5)に移される必要がある。
【0047】
要約すると、本発明のアセンブリは、エネルギー損失の低減及び溶血作用がゾーンZ3〜Z5のみで生じるので、流れの拡散によるエネルギー損失の低減、及び溶血作用の減少を引き起こすが、現代のECCシステムでは、拍動性であろうとなかろうと、これらの損失はZ0〜Z5に広がり、抵抗量を増大させる。
【0048】
特定の実施例では、前記拍動型医療アセンブリ内の本発明の拍動型医療デバイスは、人工肺と大動脈カニューレの間に配置される。
【0049】
別の特定の実施例では、本発明の前記拍動型医療アセンブリのいわゆる「Z3」ゾーンによって表される距離は最小限にされる。
【0050】
好ましくは、内側パイプと外部パイプとを含む部分は、長さ、直径、体積、及び拡張頻度に関して種々の寸法の補助人工心臓に適合される。
【0051】
本発明は、添付の図面を参照して、より良く理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】縦断面図に示された、本発明の拍動型医療デバイスの第1の実施例を示す図である。
【図2】縦断面図に示された、本発明の拍動型医療デバイスの第2の実施例を示す図である。
【図3】縦断面図に示された、本発明の拍動型医療デバイスの第3の実施例を示す図である。
【図4】本発明の拍動型医療デバイスによる拍動の作成に適した器具の一例を示す図である。
【図5a】図1の実施例において内部パイプを外部パイプに固締する方法を示す図である。
【図5b】図1の実施例において内部パイプを外部パイプに固締する方法を示す図である。
【図6】患者に係着された、本発明の拍動型医療アセンブリを示す図である。
【図7】図6の拍動型医療アセンブリにおける損失水頭を示す図である。
【図8a】患者をシミュレートする抵抗に加えられた、本発明の拍動型医療アセンブリを表す回路を示す図であって、この抵抗は、本発明の拍動型医療アセンブリに接続され、それによって閉回路を形成する。
【図8b】患者をシミュレートする抵抗に加えられた、本発明の拍動型医療アセンブリを表す回路を示す図であって、この抵抗は、本発明の拍動型医療アセンブリに接続され、それによって閉回路を形成する。
【図8c】患者をシミュレートする抵抗に加えられた、本発明の拍動型医療アセンブリを表す回路を示す図であって、この抵抗は、本発明の拍動型医療アセンブリに接続され、それによって閉回路を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図面において、同じ参照符号(1の位及び10の位)は1つの図と別の図で対応する構造を示すが、100の位の数は異なる実施例を示す。
【0054】
図1は、本発明の拍動型医療デバイス101の第1の実施例を示す。このデバイスは外部パイプ2を備え、ここには内部パイプ103が挿入される。内部パイプ103は、例えばポリウレタンなどの可撓性の生体適合性材料で作製された圧迫可能なパイプである。外部パイプ2は、より剛性で、例えばポリ塩化ビニル(PVC)で作製され、外殻として作用する。
【0055】
外部パイプ2は、外壁4と、内壁5と、例えばECCタイプの機械に接続するための第1の端部6と、患者の身体に接続するための第2の端部7とを有する。内部パイプ103も、外壁108と、内壁109と、並びに端部110及び111と有する。図1の内部パイプ103は外部パイプ2より短く、パイプ2及び103が存在するゾーンは、「2管腔」ゾーンと呼ばれるゾーンである。図1の実施例では、内部パイプ103の端部110及び111は、周囲全体のまわりが外部パイプ2の内壁5の周囲全体に固締される。従って、流体貯蔵槽と呼ばれる空間12は、2管腔ゾーンにおいて外部パイプ2の内壁5と内部パイプ103の外壁108の間に作製される。コネクタ・ポート13は、最初に前記空間12に固締され、次に拍動を生じさせるための器具(図1に示されていない)に固締されるように設計される。この拍動を生じさせるための器具は、例えば、律動的な(rhythmic)空気圧源又は律動的な電子システムであってよい。コネクタ・ポート13は、外部パイプ2に存在する1つ又は複数の開口によって空間12に固締されてもよい。一実施例では、この開口は逆止め弁を備えることができ、この逆止め弁は、コネクタ・ポートが固締されていないときに閉じ、コネクタ・ポート13がそれに固締されているときにコネクタ・ポート13から到達する流体の圧力下で開く。図1では、コネクタ・ポート13は、2管腔ゾーン内の外部パイプ2の2つの直径に沿って対向する位置に固締されているが、1つ又は複数の位置における固締が想定され得ることは明らかである。
【0056】
動作に際して、拍動型医療デバイス101は、最初にECCタイプの機械に(その端部6において)接続され、次に患者の身体に(その端部7において)接続される。次に、コネクタ・ポート13が、最初に拍動型医療デバイス101に空間12を介して固締され、次に拍動を生じさせるように作用する器具に固締される。コネクタ・ポート13は血流が循環させられた後に固締されてもよい。次いで、血流が循環させられる。血流は、外部パイプ2を通過し、その後で内部パイプ103を通って2管腔ゾーンを経由してから再度外部パイプ2を通過して患者の身体に達することによって、ECCタイプの機械から患者の身体に向かって進む。その場合、血流は持続的である。拍動を生じさせるために、拍動を生じさせるための器具が作動される。この器具は、コネクタ・ポート13を通って空間12に流れ込む流体(例えば、ヘリウム又は二酸化炭素などの気体)を定期的に供給する。空間12に達すると、流体は、内部パイプ103の外壁108を圧迫するように前記空間を充填し、外部パイプ2の内壁5は剛性の状態を維持する。その結果、内部パイプ103が圧迫され、それによって、前記内部パイプ103を通過する血流中にパルスを生成する。制御システムが、拍動を生じさせるために使用される前記器具に追加されてもよく、オペレータは、その場合、拍動の頻度並びにその力をプログラムしてもよい。
【0057】
図5a及び図5bは、図1の実施例において外部パイプ2の内部の内部パイプ103を使用して実施される方法の一例を示す。内部パイプ103は、従来通りにマンドレル22を用いて外部パイプ2の内部に挿入される。内部パイプ103がマンドレル22から分離されると、マンドレル22は除去され、この除去によって内部パイプ103の端部110及び111が拡散され、これら端部110及び111が外部パイプ2の内壁5に押し付けられるようになる。内部パイプ103は次に、従来通りにその端部110及び111のそれぞれにおいてそれぞれの展開可能な保護部(spreadable umbrella)によって固締される。
【0058】
本発明の特定の実施例では、空間12は、不活性液体で予備充填されることができる。この実施例では、次に、拍動を生じさせるための器具は、パルスを発生させるために後述の実施例で必要とされる量より少ない量の流体を供給する必要がある。実際には、空間12を充填するステップは既に実施されている。このように、本発明の拍動型医療デバイスのこの実施例はより簡潔である。もちろん、この実施例は、滅菌及び包装されるのに適していなければならない。
【0059】
図2は、内部パイプ203が外部パイプ2と同じ長さであり、従って内部パイプ203の端部210及び211に異なる構成を使用することが可能となることを除いて図1の実施例と同一である拍動型医療デバイス201という第2の実施例を示す。これらの端部は、外部パイプ2の内壁5ではなく、外部パイプ2の外壁4に、折り畳まれて固定される。この拍動型医療デバイス201は、次に、流体漏出の場合に血管内アクシデントを回避するように、その2つの端部6/210及び7/211のそれぞれにおいて標準的なECCコネクタ・ポート21に連結器(coupling)を介して固締される。
【0060】
図3は、2つの一方向形式の弁14A及び14Bが内部パイプ303の端部310及び311に配置される拍動型医療デバイス301という第3の実施例を示す。
【0061】
これらの弁14A及び14Bが存在することにより、一方向の血流(矢印によって示される)を達成し、それによって、ボルテックス効果及び損失水頭を減少させることが可能である。
【0062】
図4は、本発明の拍動型医療デバイスによる拍動の作成のための器具の一例である。この器具は、
・流体で充填され、一方の端部においてコネクタ・ポート13に接続され、その他方の端部において、パウチ15が流体で充填されるか又は空にされることを可能にする逆流防止弁17に接続されたパウチ15を含む第1の部分と、
・パウチ圧迫コンパートメント18と前記圧迫コンパートメント18を制御するための電気機械式制御装置などの制御装置19とを備えた、前記パウチ15を圧迫するための手段16により構成される第2の部分とを備える。圧迫コンパートメント18は凹部20を有する。
【0063】
動作に際して、本発明の拍動型医療デバイスは、患者の身体とECCタイプの機械の間に配置される。コネクタ・ポート13は、最初に本発明の拍動型医療デバイスに(空間12を介して)固締され、次にパウチ15に固締される。パウチ15は、弁17を開くこと(その動作は、コネクタ・ポート13をパウチ15に接続する前に実施されてもよい)によって、流体で充填される。パウチ15は、次に、電気機械式制御装置19の制御の下で圧迫コンパートメント18の凹部20内に配置される。電磁制御装置19が受け取る指示に応じて、特定の圧迫/減圧頻度がパウチ15に適用され、その頻度は1分あたり10〜300回の圧迫の範囲であってよい。パウチ15を圧迫することによって、膨張する(それによって、内部パイプを圧迫し、血流中にパルスを生成する)空間12に向かう流体の流れが発生し、パウチ15を減圧させることによって、空間12からパウチ15に流体を吸い込み、それによって空間12を縮小させる。図4の両方向矢印は、流体がたどる経路を表す。従って、流体の拍動運動、従って空間12の拍動による拡張/収縮が達成され、それによって、1つ又は複数のパルスを、内部パイプを通過する血流中に形成させる。圧迫の頻度(従って、パルスの頻度)が患者の心拍数と同期できるシステムを有する、圧迫するための手段16を想定することが可能である。これらの圧迫するための手段16は安価であり、小型であるので、持ち運ぶこともできる。
【0064】
圧迫するための手段16のこの例は、空間12が流体で充填された、本発明の拍動型医療デバイスの実施例に特に適合される。
【0065】
図6は、心臓手術中、又は補助人工心臓を使用している間に生じる、ECC機械と患者の間の接続を示す図である。この接続は、6つのゾーン(Z0〜Z5)に細分される回路を含む。ゾーンZ0はECCタイプのポンプ23と人工肺24とを含み、ゾーンZ1は拍動型医療デバイス401の第1の端部を含み(前述の種々の実施例のいずれかであってよい)、ゾーンZ2はコネクタ・ポート13を介して拍動を生じさせるための器具25に接続された拍動型医療デバイス401を含み、ゾーンZ3は拍動型医療デバイス401の第2の端部を含み(これが実際の拍動ゾーンである)、ゾーンZ4は大動脈カニューレ26を含む。ゾーンZ5の患者の灌流された器官27も含むことによって、圧力下で閉流体回路が達成される。
【0066】
図7は、上記で定義された回路における損失水頭を示す図である。損失水頭は人工肺24及び大動脈カニューレ26の従来の位置であるZ0及びZ4に常に存在し、このような損失は、血管収縮が層流又は不十分な拍動灌流によって引き起こされた結果、Z5にも存在する。3つのゾーンZ1、Z2、及びZ3は、拍動型医療デバイス401によって、最小の損失水頭を示すゾーンである。Z1では、拍動型医療デバイス401の形状、その制限、及び人工肺24の下流にあるその位置によって、層流が低い抵抗で流れる。Z2では、パルス中の内部パイプの圧迫により、乱流を発生させることなく、血液の成分(赤血球)に傷をつけずに、血流の周辺層が中央に向かって移動する。従って、実際の拍動流は、本発明のデバイスによりZ3のみにおいて始まる。最小限の損失水頭を持つ拍動性パルスを保存するために、拍動型医療デバイスと灌流された器官の間の距離(即ちゾーンZ3、Z4、及びZ5)は、最小限にされるべきである(言い換えれば、他の2つのゾーンは縮小できないので、ゾーンZ3が最小限にされるべきである)。
【0067】
ゾーンZ1、Z2、及びZ3において最小限の損失水頭に加えて、本発明の拍動型医療デバイスを使用することによって、
・ハーゲン・ポアズイユの式の適用において動脈壁によって徐々に補正される損失水頭を有する発散型(diverging)ディフューザを使用することによって、大動脈カニューレ26の端部(ゾーンZ4)において、及び
・NOSの分泌を増加させることによって、灌流された器官の血管拡張を可能にする本発明のデバイスによって提供される適切な拍動流によって、Z5において、損失水頭の減少を想定することが可能である。
【0068】
このように、本発明のデバイスに起因する損失水頭の減少がZ3、Z4、及びZ5において生じるが、従来のECCでは、拍動型であろうとそうでなかろうと、損失水頭はZ0〜Z5において、即ち3つの追加のゾーンにおいて生じる。デバイスは、損失水頭を減少させるために、二重灌流ポンプ(double perfusion pump)を必要とせず、他のECCとは異なり、抵抗の低い特別な人工肺も必要としない。損失水頭を最小限にするために、本発明の拍動型医療デバイスを単一のユニットとして製作することが好ましい。このデバイスでは、その端部において発生する乱流が減少し、ディフューザが損失水頭を発生させる場合は発散型ディフューザの数が削減され、発生する溶血作用も減少する。
【0069】
図8a、図8b、及び図8cは、図6に示す患者と共にECC機械の回路のモデルを示す図である。これらのモデルでは、患者の灌流された器官は抵抗28によってシミュレートされる。回路のこれら3つの変形例では、図6及び図7に示されるものと同じ要素、即ちECCタイプのポンプ23[ECC回路はPVCで作製され、直径は0.63センチメートル(cm)(4分の1インチ)]及び人工肺24(フィルタを有する)が存在し、本発明の拍動型医療デバイス501(おそらく上述の変形実施例のいずれか)、大動脈カニューレ26(サイズは14)、及び抵抗28は、灌流された器官の上流血管抵抗をシミュレートする。閉回路を達成する、従って血流を適切に最小限にするために、抵抗28をECCタイプのポンプ23に接続するシリコーン製の帰路(return)29が設けられる。試験では、次にこの回路内で流体を(ECCポンプ−人工肺−抵抗の方向に)循環させ始め、本発明の医療デバイス501の拍動を動作させ始めた。次いで、P1、P2、P3、P4、及びP5(回路内の固定された位置)において圧力を測定した。
【0070】
図8a、図8b、及び図8cの3つの変形例モデルの違いは、拍動型医療デバイス501の位置である。図8aでは人工肺の上流にあり、図8b及び図8cでは人工肺の下流にある(デバイス501と患者の灌流された器官をシミュレートする抵抗28との間の距離は図8cで最小である)。
【0071】
これらの圧力測定値(単位mmHg)の結果を以下の表に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
記録された損失水頭は、図8cの構成、即ち本発明の拍動型医療デバイス501が人工肺24の下流に配置され、且つ患者の灌流された器官から最短の距離にあるときに小さくなる。
【0076】
もちろん、本発明は説明及び図示された実施例に限定されるものではない。従って、例えば、本発明の拍動型医療デバイスは、弁を提供してもよく、図4を参照して説明したタイプの拍動を生じさせるように作用する器具に接続されてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外手術において、及び空気ポンプ又は電気ポンプを供給源として使用する他の補助人工心臓(cardiac assistance system)において使用するための拍動型医療デバイス(pulsatile medical device)に関する。例を挙げると、このデバイスを使用することにより、開心術を受ける患者又は心不全患者の生体において定期的な拍動灌流が得られる。
【背景技術】
【0002】
心血管系は、内皮細胞で内面を覆われた(internally lined with)、圧力下にある閉流体回路である。内皮は、窒化酸化物合成(NOS)、血液凝固、炎症反応、動脈硬化、血管新生、及びアポトーシスによる血管緊張を含む内皮機能を維持するために不可欠な接線方向に働く(tangential)ずり応力に絶えずさらされる。
【0003】
体外循環(ECC)は、手術区画(operating block)、心臓カテーテル・ラボ、又は集中治療室において、小児患者又は成人患者の心臓及び肺の代理をするために使用される医療デバイスである。
【0004】
エネルギー源として、ECCコンソールは、閉回路内の流体の運動を支配する物理学の法則に基づいて設計された数学的モデルである。具体的には、回路は、チューブ、動脈カニューレ及び静脈カニューレ、静脈血貯血槽、人工肺、動脈フィルタなどの生体適合性機器と共に、ポンプと、熱交換器と、流量計と、ガス及び血中電解質の分析器と、圧力記録計とから構成される。
【0005】
通常、遠心ポンプ又は蠕動ポンプが動脈の水頭ポンプ(arterial head pump)として使用され、他の4つの蠕動ポンプは、開心術時の吸引、心室循環、心筋保護液の投与、及び緊急ポンプに使用される。
【0006】
ECCは、手術時の心筋保護中に器官の灌流及び代謝機能を維持するため、又は心筋が回復するまで衰えた心筋を補助するため、又は移植前の中継として必要である。
【0007】
ECCが1950年代初期に登場してから、この分野で進歩が見られたにもかかわらず、ECCには今なお、術後の血行動態疾患を引き起こすという欠点がある。
【0008】
ECCの人工表面は、凝集及び血小板を活性化し、血餅が回路内部に形成される確率を大きく上昇させ、それにより術後出血、生化学的異常、電解質異常などの困難な状況をきたすことがある。
【0009】
従来のECCにおける層流は、内皮から、接線方向に働くずり応力の刺激を取り除き、特に新生児及び小児に関して補体カスケード、炎症反応、アポトーシス、及び血行動態疾患を活性化する原因となる内皮機能不全症候群に進展する。
【0010】
閉流体回路における流体の循環(摩擦による損失水頭を用いたエネルギー伝達)は、エネルギー源、チューブの形状、並びに流体の粘度及び密度に左右される。
【0011】
この機構に関係する3つの主な物理学の法則は、せん断力に関するニュートンの法則(1668)、エネルギー損失に関するベルヌーイの第3方程式(1738)、並びに液体の密度及び運動の特性を定義するレイノルズ数(1880)である。
【0012】
ECCは、チューブの形状が変わらない閉回路を一定の粘度で進むニュートン流体に依拠する理論に基づいている。
【0013】
心血管循環は非ニュートン流体を含み、これは形状が可変の血管内を移動する。
【0014】
従って、2つの異なる種類の流体回路の間に対立(confrontation)があり、これらの流体回路を機能的に互いに適合させ、調和して協働させるのは難しい。
【0015】
心血管循環に対する血管抵抗は一酸化窒素(NO)を分泌することによって主に制御され、それはせん断力による内皮刺激に左右される。対照的に、ECCでは、抵抗は、チューブのタイプ、人工肺、大動脈カニューレ、粘度、及び層流又は乱流に対する関連がより高い。
【0016】
実際には、これは、循環駆動力が自然(心臓)であれ人工(ECC)であれ、それを定量化することが必要であることを意味する。この循環駆動力は、低抵抗で血液を移動させ、従って血管緊張及び内皮機能をずり応力によって維持するその能力によって決まり、生理的な脈圧を含む定期的な拍動流を使用する。
【0017】
従来のECCのこれらの短所を克服するために、以下の種々の理論的戦略が適用される。
・抗凝固薬、変力薬、血管拡張薬、ホルモン、電解質、血液、血小板、又は他の代用品などの薬物の使用。これは、特定の望ましくない影響を引き起こす一方、血行動態の問題を完全には解決しない。
・常温でのECC。これは、ますます普及しており、低温ECCに取って代わりつつある。常温では、血液は事実上ニュートン流体であり、それによって、特にECC回路内部で損失水頭及び炎症反応を制限する。それにもかかわらず、これが心臓及び血管に及ぼす作用には疑問がある。その理由は、心筋が心筋保護液の注入によって保護され、微小循環は血液希釈(ファーレウス−リンドクヴィスト)効果によって促進されるからである。
・ECCを使用しない心拍動下手術。術後の血行動態に対する有益な効果に加えて、このような技術は難しく、複雑な要求がほとんどない患者に対してのみ使用することができる。この技術は、手術が実施される部分を静止して保持するための特別な機器を必要とし、このため、この方法は高価である。
・拍動ECC。手術中にずり応力刺激を一定に保ち、内皮機能を保持するために、過去30年にわたって灌流の拍動モードがさまざまなグループによって使用されてきた。現在、新世代の拍動ECC機器は、拍動流灌流を生成するために改変された蠕動ポンプ又は遠心ポンプを使用する。これは、通常、その妨害による影響を制限するために、動脈の2つの揚程を、人工肺の上流に1つと下流に1つ必要とする。従って、これは、コストが高く、普通の誘起圧力曲線を有する、先端技術を用いた特別な機器を必要とする。そのため、このような機器はあまり普及していない。
【0018】
事実上すべての拍動機械(machine)がベルヌーイのエネルギー損失式を使用して評価され、ECC中の微小循環の灌流は、使用される駆動力のタイプよりも血液希釈によって決まることが認められ得る。同様に、微小塞栓という望ましくない影響を有する、ポリ塩化ビニル(PVC)又はシリコーンなどの材料に関係なく直径の小さな長い剛性チューブ内で、非常に壊れやすい成分を有する血液などの流体にパルスを印加することは逆説的であるように思える。
【0019】
従来のECC(持続流を有する)中にある一定量の拍動を得るための別の方法は、胸部大動脈に観血的に挿入される大動脈内カウンターパルセーション(intra−aortic counter−pulsation balloon)である。安価で拍動ECCと関連があるが、その方法は依然として観血的であり、特にアテローム性動脈硬化症に罹患した小児又は成人に血管合併症をもたらす。
【0020】
結論として、これらの方法は、通常、腎部又は内臓領域などの局所的な器官の改善された灌流によって評価されるが、脳循環などの遠位循環に対する保護はほとんど提供しない。これにより、渦が血管壁に近い乱流ずり応力又はレイノルズ応力のゾーンが作成され、2つの対向する流れ即ちECC層流及びバルーンからの拍動流が合流することによって渦が生成され、それによって、局所的な内皮が損なわれる。
【0021】
このように、前述の方法では、ECCの望ましくない影響が解決されない。
【0022】
本発明者らは、特許文献1において解決策を提示した。この解決策は、拍動チューブが、拡張可能なチューブが内部管腔又は外部管腔に組み込まれるいわゆる「2管腔(two−lumen)」部分を有する。
【0023】
本発明は、その2管腔拍動チューブの改善にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第2008/000110号
【特許文献2】仏国FR08/01818号明細書
【特許文献3】仏国FR08/02871号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の改善された拍動型医療デバイス(又はチューブ)の目的は、より均一な流れを生成し、特に実際の拍動ゾーン(図6を参照)において、拍動流の損失水頭を最小限にするデバイスを提供すること、並びに容易に利用でき、医療業務及び外科義務で小児患者のために及び成人のためにも利用可能なエネルギー源に適合された拍動型補助人工心臓を低コストの生理学的方法としてより広範に使用することである。
【0026】
本発明の拍動型医療デバイスは、すべてのタイプの持続流補助人工心臓に適合可能であり、単回使用を目的とするものであってよい。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の拍動型医療デバイスは、血流が循環することを可能にするデバイスであって、
・内壁と、外壁と、2つの端部とを提供する外部パイプであって、1つの端部はECCタイプの機械(ECC type machine)又は補助人工心臓又は患者の身体に接続するためのものであり、1つの端部は前記患者の身体に接続するためのものである、外部パイプと、
・前記外部パイプに挿入され、内壁と、外壁と、その周囲全体が外部パイプの周囲全体に固締(fasten)された2つの端部とを提供する内部パイプであって、血流が前記内部パイプを通過する、内部パイプとを備え、
・内部パイプの外壁及び外部パイプの内壁が、流体で充填されるための空間を画定し、前記空間が、前記空間の1回又は複数回の拡張/収縮を発生させ、それによって前記血流において1つ又は複数のパルスを生成するための器具にコネクタ・ポートを介して接続可能であるデバイスである。
【0028】
循環血の単流(circulating single blood flow)に拍動を加えることにより、従来技術よりはるかに均一で定期的な血流を作ることが可能である。従来技術では、ECCから来る層流と、例えば大動脈内コントラパルセーション(contra−pulsation)バルーンから来る拍動流が合流することによって、本発明のデバイスで生成されない渦が発生する。同様に、損失水頭が減少する。
【0029】
本発明の第1の実施例では、本発明の拍動型医療デバイスの内部パイプの端部は外部パイプの内壁に固締される。
【0030】
内部パイプの端部は、血管内ステント法に等しい技術即ち手術による保護(surgical umbrella)を使用して固締されシールされる。従って、より長いパイプを使用することが可能であり、過剰な数の接続を除去することによってエネルギー損失を減少する利点を有する。
【0031】
本発明の第2の実施例では、内部パイプは、長さに関して外部パイプと実質的に同一であり、本発明の拍動型医療デバイスの内部パイプの端部は外部パイプの外壁に固締される。
【0032】
内部パイプの端部は裏返され、外部パイプの外壁に対して外部からシールされる。有利には、これにより、体外システムを使用して、流体漏出によるガス状塞栓のリスクが回避される。
【0033】
本発明の特定の実施例では、弁は本発明の拍動型医療デバイスの前記内部パイプの一方又は両方の端部に固締される。
【0034】
前記弁(複数可)が存在することによって、血流の逆流が防止され、その後で血流が一方向のみに流れることができる。一方向の血流は、ボルテックス効果及び損失水頭を減少させる。
【0035】
特定の実施例では、本発明の拍動型医療デバイスの内部パイプの外壁と外部パイプの内壁の間に画定された前記空間は流体で予備充填される。
【0036】
拍動を生じさせることができる器具は、血流に圧力を加えるために、この既に充填された空間を圧迫するために必要な(更に充填される必要はない)流体を提供することのみが必要であるので、この予備充填のために、デバイスの使用は、エネルギーに関して低コストであることが分かる。この実施例では、流体は屈曲する外部パイプの外壁に圧力を加え、このような状況の下で、外部パイプは剛体材料で作製されてはならない。
【0037】
特定の実施例では、本発明の拍動型医療デバイスにおいて拍動を生じさせることを可能にする器具は、
・流体で充填されるように適合されたパウチと、
・拍動するように前記パウチを圧迫するように適合された、パウチを圧迫するための手段と、
・前記パウチを前記空間に接続し、流体が前記空間と前記パウチの間を流れることを可能にする前記コネクタ・ポートとを備える。このような器具は、同様に出願人に帰属する出願、特許文献2に特に記載されている。
【0038】
別の実施例では、本発明による医療デバイスに決定された拍動圧力を加えるための器具は、
・高圧持続流流体源から流体を取り出すように適合された流体取り出し用手段と、
・前記流体を低圧拍動流流体に変換するように適合された変換(transformating)用手段と、
・低圧拍動流内の前記流体を前記医療デバイスに加えるための少なくとも手段であって、コネクタ・ポートが、加えるための前記手段を前記空間に接続する、手段と、
・前記流体を評価するための手段とを備える。
【0039】
このような器具は、同様に出願人に帰属する出願、特許文献3に特に記載されている。
【0040】
好ましくは、拍動型医療デバイスは、流体で充填されるように適合されたパウチも含む。パウチは、その製造中に前記拍動型デバイスに接続されてもよく、及び/又は前記拍動性デバイスと一体的に作製されてもよく、従って、パウチを装備する拍動型医療デバイスを利用することを可能とし、パウチを圧迫するための同じ手段が本発明による複数のデバイスで使用可能であり、それぞれがそれぞれのパウチを有する。
【0041】
従って、本発明の拍動型医療デバイス(管類(tubing)と呼ぶこともできる)は、弁を有し、予備充填され、生体適合性材料で作製される端部を伴い、従って、直接縫合により心臓組織及び血管に固締されるのにも適する。その後で前述の種類の拍動を生じさせるように作用する器具に伴うデバイスは、完全な心室補助人工心臓を単独で構成する。
【0042】
このシステムは低コストで使いやすい。このシステムは、大動脈内バルーン用ポンプなどの高価な圧力源を必要としない。
【0043】
本発明は、
・ECCタイプのポンプと人工肺とを含む「Z0」ゾーンと、
・本発明の拍動型医療デバイスの第1の端部を含む「Z1」ゾーンと、
・本発明の拍動型医療デバイスを含む「Z2」ゾーンと、
・本発明の拍動型医療デバイスの第2の端部を含む「Z3」ゾーンと、
・大動脈カニューレを含む「Z4」ゾーンとを備える拍動型医療アセンブリ(pulsatile medical assembly)も提供する。
【0044】
拍動型医療アセンブリは、生理的で安価、容易に利用可能で、医療業務及び外科義務で小児患者のために及び成人のためにも利用可能なエネルギー源に適合可能な方法である拍動型補助人工心臓である。
【0045】
物理学の法則の適用分野においてプロトタイプを定義するパラメータを分析するために、その結果発生する現象の改善を説明するように、最小限にされたエネルギー損失により、体外循環(ECC)回路の回路は、6つのゾーン、即ち
Z0:従来のECCによって誘発される初期現象があるECCタイプのポンプ及び人工肺を含む、
Z1:本発明の拍動型医療デバイスの第1の端部を含み、人工肺からの定期的な持続流を有するゾーンに対応する、
Z2:本発明の拍動型医療デバイスを含み、このゾーンはプロトタイプの拍動部分を表し、周囲から中心に向かって停留層を推進させ、血液の成分(赤血球)に対する傷害の影響を減少させる、
Z3:本発明の拍動型医療デバイスの第2の端部を含み、このゾーンは拍動流を実際に有するゾーンである、即ち拍動エネルギーの最大量を保存するために回路の最も短いゾーンである、
Z4:このゾーンは大動脈カニューレである、
Z5:患者の灌注された組織、に細分される。
【0046】
血流は、エネルギー損失水頭を最小限にしながら、体外循環(ECC)機械から患者の灌流された器官(Z0〜Z5)に移される必要がある。
【0047】
要約すると、本発明のアセンブリは、エネルギー損失の低減及び溶血作用がゾーンZ3〜Z5のみで生じるので、流れの拡散によるエネルギー損失の低減、及び溶血作用の減少を引き起こすが、現代のECCシステムでは、拍動性であろうとなかろうと、これらの損失はZ0〜Z5に広がり、抵抗量を増大させる。
【0048】
特定の実施例では、前記拍動型医療アセンブリ内の本発明の拍動型医療デバイスは、人工肺と大動脈カニューレの間に配置される。
【0049】
別の特定の実施例では、本発明の前記拍動型医療アセンブリのいわゆる「Z3」ゾーンによって表される距離は最小限にされる。
【0050】
好ましくは、内側パイプと外部パイプとを含む部分は、長さ、直径、体積、及び拡張頻度に関して種々の寸法の補助人工心臓に適合される。
【0051】
本発明は、添付の図面を参照して、より良く理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】縦断面図に示された、本発明の拍動型医療デバイスの第1の実施例を示す図である。
【図2】縦断面図に示された、本発明の拍動型医療デバイスの第2の実施例を示す図である。
【図3】縦断面図に示された、本発明の拍動型医療デバイスの第3の実施例を示す図である。
【図4】本発明の拍動型医療デバイスによる拍動の作成に適した器具の一例を示す図である。
【図5a】図1の実施例において内部パイプを外部パイプに固締する方法を示す図である。
【図5b】図1の実施例において内部パイプを外部パイプに固締する方法を示す図である。
【図6】患者に係着された、本発明の拍動型医療アセンブリを示す図である。
【図7】図6の拍動型医療アセンブリにおける損失水頭を示す図である。
【図8a】患者をシミュレートする抵抗に加えられた、本発明の拍動型医療アセンブリを表す回路を示す図であって、この抵抗は、本発明の拍動型医療アセンブリに接続され、それによって閉回路を形成する。
【図8b】患者をシミュレートする抵抗に加えられた、本発明の拍動型医療アセンブリを表す回路を示す図であって、この抵抗は、本発明の拍動型医療アセンブリに接続され、それによって閉回路を形成する。
【図8c】患者をシミュレートする抵抗に加えられた、本発明の拍動型医療アセンブリを表す回路を示す図であって、この抵抗は、本発明の拍動型医療アセンブリに接続され、それによって閉回路を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図面において、同じ参照符号(1の位及び10の位)は1つの図と別の図で対応する構造を示すが、100の位の数は異なる実施例を示す。
【0054】
図1は、本発明の拍動型医療デバイス101の第1の実施例を示す。このデバイスは外部パイプ2を備え、ここには内部パイプ103が挿入される。内部パイプ103は、例えばポリウレタンなどの可撓性の生体適合性材料で作製された圧迫可能なパイプである。外部パイプ2は、より剛性で、例えばポリ塩化ビニル(PVC)で作製され、外殻として作用する。
【0055】
外部パイプ2は、外壁4と、内壁5と、例えばECCタイプの機械に接続するための第1の端部6と、患者の身体に接続するための第2の端部7とを有する。内部パイプ103も、外壁108と、内壁109と、並びに端部110及び111と有する。図1の内部パイプ103は外部パイプ2より短く、パイプ2及び103が存在するゾーンは、「2管腔」ゾーンと呼ばれるゾーンである。図1の実施例では、内部パイプ103の端部110及び111は、周囲全体のまわりが外部パイプ2の内壁5の周囲全体に固締される。従って、流体貯蔵槽と呼ばれる空間12は、2管腔ゾーンにおいて外部パイプ2の内壁5と内部パイプ103の外壁108の間に作製される。コネクタ・ポート13は、最初に前記空間12に固締され、次に拍動を生じさせるための器具(図1に示されていない)に固締されるように設計される。この拍動を生じさせるための器具は、例えば、律動的な(rhythmic)空気圧源又は律動的な電子システムであってよい。コネクタ・ポート13は、外部パイプ2に存在する1つ又は複数の開口によって空間12に固締されてもよい。一実施例では、この開口は逆止め弁を備えることができ、この逆止め弁は、コネクタ・ポートが固締されていないときに閉じ、コネクタ・ポート13がそれに固締されているときにコネクタ・ポート13から到達する流体の圧力下で開く。図1では、コネクタ・ポート13は、2管腔ゾーン内の外部パイプ2の2つの直径に沿って対向する位置に固締されているが、1つ又は複数の位置における固締が想定され得ることは明らかである。
【0056】
動作に際して、拍動型医療デバイス101は、最初にECCタイプの機械に(その端部6において)接続され、次に患者の身体に(その端部7において)接続される。次に、コネクタ・ポート13が、最初に拍動型医療デバイス101に空間12を介して固締され、次に拍動を生じさせるように作用する器具に固締される。コネクタ・ポート13は血流が循環させられた後に固締されてもよい。次いで、血流が循環させられる。血流は、外部パイプ2を通過し、その後で内部パイプ103を通って2管腔ゾーンを経由してから再度外部パイプ2を通過して患者の身体に達することによって、ECCタイプの機械から患者の身体に向かって進む。その場合、血流は持続的である。拍動を生じさせるために、拍動を生じさせるための器具が作動される。この器具は、コネクタ・ポート13を通って空間12に流れ込む流体(例えば、ヘリウム又は二酸化炭素などの気体)を定期的に供給する。空間12に達すると、流体は、内部パイプ103の外壁108を圧迫するように前記空間を充填し、外部パイプ2の内壁5は剛性の状態を維持する。その結果、内部パイプ103が圧迫され、それによって、前記内部パイプ103を通過する血流中にパルスを生成する。制御システムが、拍動を生じさせるために使用される前記器具に追加されてもよく、オペレータは、その場合、拍動の頻度並びにその力をプログラムしてもよい。
【0057】
図5a及び図5bは、図1の実施例において外部パイプ2の内部の内部パイプ103を使用して実施される方法の一例を示す。内部パイプ103は、従来通りにマンドレル22を用いて外部パイプ2の内部に挿入される。内部パイプ103がマンドレル22から分離されると、マンドレル22は除去され、この除去によって内部パイプ103の端部110及び111が拡散され、これら端部110及び111が外部パイプ2の内壁5に押し付けられるようになる。内部パイプ103は次に、従来通りにその端部110及び111のそれぞれにおいてそれぞれの展開可能な保護部(spreadable umbrella)によって固締される。
【0058】
本発明の特定の実施例では、空間12は、不活性液体で予備充填されることができる。この実施例では、次に、拍動を生じさせるための器具は、パルスを発生させるために後述の実施例で必要とされる量より少ない量の流体を供給する必要がある。実際には、空間12を充填するステップは既に実施されている。このように、本発明の拍動型医療デバイスのこの実施例はより簡潔である。もちろん、この実施例は、滅菌及び包装されるのに適していなければならない。
【0059】
図2は、内部パイプ203が外部パイプ2と同じ長さであり、従って内部パイプ203の端部210及び211に異なる構成を使用することが可能となることを除いて図1の実施例と同一である拍動型医療デバイス201という第2の実施例を示す。これらの端部は、外部パイプ2の内壁5ではなく、外部パイプ2の外壁4に、折り畳まれて固定される。この拍動型医療デバイス201は、次に、流体漏出の場合に血管内アクシデントを回避するように、その2つの端部6/210及び7/211のそれぞれにおいて標準的なECCコネクタ・ポート21に連結器(coupling)を介して固締される。
【0060】
図3は、2つの一方向形式の弁14A及び14Bが内部パイプ303の端部310及び311に配置される拍動型医療デバイス301という第3の実施例を示す。
【0061】
これらの弁14A及び14Bが存在することにより、一方向の血流(矢印によって示される)を達成し、それによって、ボルテックス効果及び損失水頭を減少させることが可能である。
【0062】
図4は、本発明の拍動型医療デバイスによる拍動の作成のための器具の一例である。この器具は、
・流体で充填され、一方の端部においてコネクタ・ポート13に接続され、その他方の端部において、パウチ15が流体で充填されるか又は空にされることを可能にする逆流防止弁17に接続されたパウチ15を含む第1の部分と、
・パウチ圧迫コンパートメント18と前記圧迫コンパートメント18を制御するための電気機械式制御装置などの制御装置19とを備えた、前記パウチ15を圧迫するための手段16により構成される第2の部分とを備える。圧迫コンパートメント18は凹部20を有する。
【0063】
動作に際して、本発明の拍動型医療デバイスは、患者の身体とECCタイプの機械の間に配置される。コネクタ・ポート13は、最初に本発明の拍動型医療デバイスに(空間12を介して)固締され、次にパウチ15に固締される。パウチ15は、弁17を開くこと(その動作は、コネクタ・ポート13をパウチ15に接続する前に実施されてもよい)によって、流体で充填される。パウチ15は、次に、電気機械式制御装置19の制御の下で圧迫コンパートメント18の凹部20内に配置される。電磁制御装置19が受け取る指示に応じて、特定の圧迫/減圧頻度がパウチ15に適用され、その頻度は1分あたり10〜300回の圧迫の範囲であってよい。パウチ15を圧迫することによって、膨張する(それによって、内部パイプを圧迫し、血流中にパルスを生成する)空間12に向かう流体の流れが発生し、パウチ15を減圧させることによって、空間12からパウチ15に流体を吸い込み、それによって空間12を縮小させる。図4の両方向矢印は、流体がたどる経路を表す。従って、流体の拍動運動、従って空間12の拍動による拡張/収縮が達成され、それによって、1つ又は複数のパルスを、内部パイプを通過する血流中に形成させる。圧迫の頻度(従って、パルスの頻度)が患者の心拍数と同期できるシステムを有する、圧迫するための手段16を想定することが可能である。これらの圧迫するための手段16は安価であり、小型であるので、持ち運ぶこともできる。
【0064】
圧迫するための手段16のこの例は、空間12が流体で充填された、本発明の拍動型医療デバイスの実施例に特に適合される。
【0065】
図6は、心臓手術中、又は補助人工心臓を使用している間に生じる、ECC機械と患者の間の接続を示す図である。この接続は、6つのゾーン(Z0〜Z5)に細分される回路を含む。ゾーンZ0はECCタイプのポンプ23と人工肺24とを含み、ゾーンZ1は拍動型医療デバイス401の第1の端部を含み(前述の種々の実施例のいずれかであってよい)、ゾーンZ2はコネクタ・ポート13を介して拍動を生じさせるための器具25に接続された拍動型医療デバイス401を含み、ゾーンZ3は拍動型医療デバイス401の第2の端部を含み(これが実際の拍動ゾーンである)、ゾーンZ4は大動脈カニューレ26を含む。ゾーンZ5の患者の灌流された器官27も含むことによって、圧力下で閉流体回路が達成される。
【0066】
図7は、上記で定義された回路における損失水頭を示す図である。損失水頭は人工肺24及び大動脈カニューレ26の従来の位置であるZ0及びZ4に常に存在し、このような損失は、血管収縮が層流又は不十分な拍動灌流によって引き起こされた結果、Z5にも存在する。3つのゾーンZ1、Z2、及びZ3は、拍動型医療デバイス401によって、最小の損失水頭を示すゾーンである。Z1では、拍動型医療デバイス401の形状、その制限、及び人工肺24の下流にあるその位置によって、層流が低い抵抗で流れる。Z2では、パルス中の内部パイプの圧迫により、乱流を発生させることなく、血液の成分(赤血球)に傷をつけずに、血流の周辺層が中央に向かって移動する。従って、実際の拍動流は、本発明のデバイスによりZ3のみにおいて始まる。最小限の損失水頭を持つ拍動性パルスを保存するために、拍動型医療デバイスと灌流された器官の間の距離(即ちゾーンZ3、Z4、及びZ5)は、最小限にされるべきである(言い換えれば、他の2つのゾーンは縮小できないので、ゾーンZ3が最小限にされるべきである)。
【0067】
ゾーンZ1、Z2、及びZ3において最小限の損失水頭に加えて、本発明の拍動型医療デバイスを使用することによって、
・ハーゲン・ポアズイユの式の適用において動脈壁によって徐々に補正される損失水頭を有する発散型(diverging)ディフューザを使用することによって、大動脈カニューレ26の端部(ゾーンZ4)において、及び
・NOSの分泌を増加させることによって、灌流された器官の血管拡張を可能にする本発明のデバイスによって提供される適切な拍動流によって、Z5において、損失水頭の減少を想定することが可能である。
【0068】
このように、本発明のデバイスに起因する損失水頭の減少がZ3、Z4、及びZ5において生じるが、従来のECCでは、拍動型であろうとそうでなかろうと、損失水頭はZ0〜Z5において、即ち3つの追加のゾーンにおいて生じる。デバイスは、損失水頭を減少させるために、二重灌流ポンプ(double perfusion pump)を必要とせず、他のECCとは異なり、抵抗の低い特別な人工肺も必要としない。損失水頭を最小限にするために、本発明の拍動型医療デバイスを単一のユニットとして製作することが好ましい。このデバイスでは、その端部において発生する乱流が減少し、ディフューザが損失水頭を発生させる場合は発散型ディフューザの数が削減され、発生する溶血作用も減少する。
【0069】
図8a、図8b、及び図8cは、図6に示す患者と共にECC機械の回路のモデルを示す図である。これらのモデルでは、患者の灌流された器官は抵抗28によってシミュレートされる。回路のこれら3つの変形例では、図6及び図7に示されるものと同じ要素、即ちECCタイプのポンプ23[ECC回路はPVCで作製され、直径は0.63センチメートル(cm)(4分の1インチ)]及び人工肺24(フィルタを有する)が存在し、本発明の拍動型医療デバイス501(おそらく上述の変形実施例のいずれか)、大動脈カニューレ26(サイズは14)、及び抵抗28は、灌流された器官の上流血管抵抗をシミュレートする。閉回路を達成する、従って血流を適切に最小限にするために、抵抗28をECCタイプのポンプ23に接続するシリコーン製の帰路(return)29が設けられる。試験では、次にこの回路内で流体を(ECCポンプ−人工肺−抵抗の方向に)循環させ始め、本発明の医療デバイス501の拍動を動作させ始めた。次いで、P1、P2、P3、P4、及びP5(回路内の固定された位置)において圧力を測定した。
【0070】
図8a、図8b、及び図8cの3つの変形例モデルの違いは、拍動型医療デバイス501の位置である。図8aでは人工肺の上流にあり、図8b及び図8cでは人工肺の下流にある(デバイス501と患者の灌流された器官をシミュレートする抵抗28との間の距離は図8cで最小である)。
【0071】
これらの圧力測定値(単位mmHg)の結果を以下の表に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
記録された損失水頭は、図8cの構成、即ち本発明の拍動型医療デバイス501が人工肺24の下流に配置され、且つ患者の灌流された器官から最短の距離にあるときに小さくなる。
【0076】
もちろん、本発明は説明及び図示された実施例に限定されるものではない。従って、例えば、本発明の拍動型医療デバイスは、弁を提供してもよく、図4を参照して説明したタイプの拍動を生じさせるように作用する器具に接続されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流が循環することを可能にする拍動型医療デバイス(101、201、301、401、501)であって、
・内壁(5)と、外壁(4)と、2つの端部(6、7)とを提供する外部パイプ(2)であって、1つの端部(6)はECCタイプの機械又は補助人工心臓又は患者の身体に接続するためのものであり、1つの端部(7)は前記患者の身体に接続するためのものである、外部パイプ(2)と、
・前記外部パイプ(2)に挿入され、内壁(109)と、外壁(108)と、その周囲全体が前記外部パイプ(2)の周囲全体に固締された2つの端部(110、111、210、211、310、311)とを提供する内部パイプ(103、203、303)であって、前記血流が前記内部パイプ(103、203、303)を通過する、内部パイプ(103、203、303)とを備え、
・前記内部パイプ(103、203、303)の前記外壁(108)及び前記外部パイプ(2)の前記内壁(5)が、流体で充填されるための空間(12)を画定し、前記空間(12)が、前記空間(12)の1回又は複数回の拡張/収縮を発生させ、それによって前記血流において1回又は複数回の拍動を生じさせるための器具にコネクタ・ポート(13)を介して接続可能であり、
前記コネクタ・ポートが、少なくとも2つの直径に沿って対向する位置に前記外部パイプを通して形成された少なくとも2つの開口を介して前記空間に接続されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記内部パイプ(103)の前記端部(110、111)が前記外部パイプ(2)の前記内壁(5)に固締されることを特徴とする、請求項1に記載の拍動型医療デバイス(101)。
【請求項3】
前記内部パイプ(203)が、長さに関して前記外部パイプ(2)と実質的に同一であり、前記内部パイプ(203)の前記端部が前記外部パイプ(2)の前記外壁(4)に固締されることを特徴とする、請求項1に記載の拍動型医療デバイス(201)。
【請求項4】
弁(14A、14B)が前記内部パイプ(303)の一方又は両方の端部(310、311)に固締されることを特徴とする、請求項1、2、又は3に記載の拍動型医療デバイス(301)。
【請求項5】
前記空間(12)が流体で予備充填されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の拍動型医療デバイス(101、201、301、401、501)。
【請求項6】
拍動を生じさせるように作用する前記器具が、
・流体で充填されるように適合されたパウチ(15)と、
・拍動するように前記パウチ(15)を圧迫するように適合された、前記パウチを圧縮するための手段(16)と、
・前記パウチ(15)を前記空間(12)に接続し、流体が前記空間(12)と前記パウチ(15)の間を流れることを可能にする前記コネクタ・ポート(13)とを備えることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の拍動型医療デバイス(101、201、301、401、501)。
【請求項7】
拍動を生じさせることを可能にする前記器具が、
・高圧持続流流体源から流体を取り出すように適合された流体取り出し用手段と、
・前記流体を低圧拍動流流体に変換するように適合された変換用手段と、
・低圧拍動流内の前記流体を前記医療デバイスに加えるための少なくとも手段であって、前記コネクタ・ポート(13)が、加えるための前記手段を前記空間(12)に接続する、手段と、
・前記流体を評価するための手段とを備えることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の拍動型医療デバイス(101、201、301、401、501)。
【請求項8】
・ECCタイプのポンプ(23)と人工肺(24)とを含む「Z0」ゾーンと、
・請求項1から7までのいずれか一項に記載の前記拍動型医療デバイス(401)の第1の端部を含む「Z1」ゾーンと、
・請求項1から7までのいずれか一項に記載の拍動型医療デバイス(401)を含む「Z2」ゾーンと、
・請求項1から7までのいずれか一項に記載の前記拍動型医療デバイス(401)の第2の端部を含む「Z3」ゾーンと、
・大動脈カニューレ(26)を含む「Z4」ゾーンとを備える拍動型医療アセンブリ。
【請求項9】
前記拍動型医療デバイス(501)が前記人工肺(24)と前記大動脈カニューレ(26)の間に配置されることを特徴とする、請求項8に記載の拍動型医療アセンブリ。
【請求項10】
前記「Z3」ゾーンによって表される距離が最小限まで減らされることを特徴とする、請求項9に記載の拍動型医療アセンブリ。
【請求項1】
血流が循環することを可能にする拍動型医療デバイス(101、201、301、401、501)であって、
・内壁(5)と、外壁(4)と、2つの端部(6、7)とを提供する外部パイプ(2)であって、1つの端部(6)はECCタイプの機械又は補助人工心臓又は患者の身体に接続するためのものであり、1つの端部(7)は前記患者の身体に接続するためのものである、外部パイプ(2)と、
・前記外部パイプ(2)に挿入され、内壁(109)と、外壁(108)と、その周囲全体が前記外部パイプ(2)の周囲全体に固締された2つの端部(110、111、210、211、310、311)とを提供する内部パイプ(103、203、303)であって、前記血流が前記内部パイプ(103、203、303)を通過する、内部パイプ(103、203、303)とを備え、
・前記内部パイプ(103、203、303)の前記外壁(108)及び前記外部パイプ(2)の前記内壁(5)が、流体で充填されるための空間(12)を画定し、前記空間(12)が、前記空間(12)の1回又は複数回の拡張/収縮を発生させ、それによって前記血流において1回又は複数回の拍動を生じさせるための器具にコネクタ・ポート(13)を介して接続可能であり、
前記コネクタ・ポートが、少なくとも2つの直径に沿って対向する位置に前記外部パイプを通して形成された少なくとも2つの開口を介して前記空間に接続されることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記内部パイプ(103)の前記端部(110、111)が前記外部パイプ(2)の前記内壁(5)に固締されることを特徴とする、請求項1に記載の拍動型医療デバイス(101)。
【請求項3】
前記内部パイプ(203)が、長さに関して前記外部パイプ(2)と実質的に同一であり、前記内部パイプ(203)の前記端部が前記外部パイプ(2)の前記外壁(4)に固締されることを特徴とする、請求項1に記載の拍動型医療デバイス(201)。
【請求項4】
弁(14A、14B)が前記内部パイプ(303)の一方又は両方の端部(310、311)に固締されることを特徴とする、請求項1、2、又は3に記載の拍動型医療デバイス(301)。
【請求項5】
前記空間(12)が流体で予備充填されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の拍動型医療デバイス(101、201、301、401、501)。
【請求項6】
拍動を生じさせるように作用する前記器具が、
・流体で充填されるように適合されたパウチ(15)と、
・拍動するように前記パウチ(15)を圧迫するように適合された、前記パウチを圧縮するための手段(16)と、
・前記パウチ(15)を前記空間(12)に接続し、流体が前記空間(12)と前記パウチ(15)の間を流れることを可能にする前記コネクタ・ポート(13)とを備えることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の拍動型医療デバイス(101、201、301、401、501)。
【請求項7】
拍動を生じさせることを可能にする前記器具が、
・高圧持続流流体源から流体を取り出すように適合された流体取り出し用手段と、
・前記流体を低圧拍動流流体に変換するように適合された変換用手段と、
・低圧拍動流内の前記流体を前記医療デバイスに加えるための少なくとも手段であって、前記コネクタ・ポート(13)が、加えるための前記手段を前記空間(12)に接続する、手段と、
・前記流体を評価するための手段とを備えることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の拍動型医療デバイス(101、201、301、401、501)。
【請求項8】
・ECCタイプのポンプ(23)と人工肺(24)とを含む「Z0」ゾーンと、
・請求項1から7までのいずれか一項に記載の前記拍動型医療デバイス(401)の第1の端部を含む「Z1」ゾーンと、
・請求項1から7までのいずれか一項に記載の拍動型医療デバイス(401)を含む「Z2」ゾーンと、
・請求項1から7までのいずれか一項に記載の前記拍動型医療デバイス(401)の第2の端部を含む「Z3」ゾーンと、
・大動脈カニューレ(26)を含む「Z4」ゾーンとを備える拍動型医療アセンブリ。
【請求項9】
前記拍動型医療デバイス(501)が前記人工肺(24)と前記大動脈カニューレ(26)の間に配置されることを特徴とする、請求項8に記載の拍動型医療アセンブリ。
【請求項10】
前記「Z3」ゾーンによって表される距離が最小限まで減らされることを特徴とする、請求項9に記載の拍動型医療アセンブリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【公表番号】特表2012−511364(P2012−511364A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540125(P2011−540125)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066994
【国際公開番号】WO2010/066899
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(510312776)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066994
【国際公開番号】WO2010/066899
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(510312776)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]