説明

体液吸収性物品

【課題】 この発明では、吸尿パッド等の体液吸収性物品に対して、それを着用したときの体液の横漏れを防止することができるように、改良を施すことを課題にしている。
【解決手段】 この発明では、吸収性ポリマー粒子を含む上方吸液部の側方部分と防漏カフの固定部とが重なり合っている。したがって、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤することに伴い上方吸液部の厚さが増加すると、厚さが増加した分だけ防漏カフが肌に接近して防漏カフと肌との間隙を縮めて体液が防漏カフと肌との間から横漏れすることを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、体液吸収性物品に関し、さらに詳しくは、軽失禁パッド、パンティライナ、生理用ナプキン、吸尿パッド等として使用するのに好適な体液吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンツ等に当てて使用するための体液吸収性物品は、公知である。たとえば、特許文献1には、表面シートと裏面シートとの間に第1吸収体と第2吸収体とが介在する着用物品が開示されている。この着用物品は、パンティライナや生理用ナプキンなどとして使用するのに好適なもので、第1吸収体と第2吸収体とは、重なり合った状態で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−110535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の着用物品は、裏面シートをパンツの内面に当て、表面シートをパンツ着用者の肌に密着させるようにして着用する。しかし、表面シートと肌とが離間して両者の間に隙間が生じると、表面シートに向かって排泄された体液が着用物品の幅方向へ流れて、いわゆる横漏れが生じ易くなる。
【0005】
この発明では、吸尿パッド等の体液吸収性物品に対して、それを着用したときの体液の横漏れを防止することができるように、改良を施すことを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこでこの発明は、縦方向、横方向および厚さ方向を有し、肌側表面を形成する透液性表面シートと、前記肌側表面の反対面である着衣側表面を形成する不透液性裏面シートと、前記表面シートおよび前記裏面シートの間に介在する吸液性構造体と、前記吸液性構造体の前記縦方向に延びる一対の側縁のそれぞれに沿って延びる一対の防漏カフとを備える体液吸収性物品を改良することにある。
【0007】
この発明の特徴は、以下のとおりである。
前記吸液性構造体は、前記裏面シートに対向する下方吸液部と、前記下方吸液部の上方にあって前記表面シートに対向する上方吸液部とを有する。
前記下方吸液部は、吸液性材料として少なくとも吸水性繊維を含んでいて、前記吸液構造体における前記縦方向および前記横方向の全域に亘って広がっている。
前記上方吸液部は、少なくとも高吸収性ポリマー粒子を含む吸液性材料を透液性のラッピングシートで被覆することにより形成されていて、前記吸液性構造体における前記横方向のうちの少なくとも両側部分に個別に形成されて前記縦方向へ延びる側方部分を有する。
一対の前記防漏カフのそれぞれは、前記表面シートにおける前記肌側表面に接合していて前記縦方向に延びる固定部と、前記縦方向に弾性的に伸長された状態で延びていて収縮可能でありかつ前記体液吸収性物品の前記横方向の外側に向かって起立可能に倒伏しているカフ部と、前記体液吸収性物品の前記縦方向における両端部それぞれに前記固定部と前記カフ部とが固定された状態にある一対の端部とを有する。
一対の前記防漏カフのそれぞれはまた、前記固定部が前記表面シートを介して個別に形成されている前記側方部分と重なり合っている。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、吸収性ポリマー粒子を含む上方吸液部の側方部分と防漏カフの固定部とが重なり合っているので、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤することに伴い上方吸液部の厚さが増加すると、厚さが増加した分だけ防漏カフが肌に接近して防漏カフと肌との間隙を縮めて体液が防漏カフと肌との間から横漏れすることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】体液吸収性物品の一例である吸尿パッドの部分破断平面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】尿を吸収した吸尿パッドについての部分図。
【図4】個包装されている吸尿パッドの側面図。
【図5】着用状態にある吸尿パッドの側面図。
【図6】実施態様の一例である吸尿パッドについての図1と同様な図。
【図7】図7のVIII−VIII線断面図。
【図8】吸尿パッドの他の態様を示す図2と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明に係る体液吸収性物品として吸尿パッドを例にとり、添付図面を参照して発明の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0011】
図1および図2において、X、Y、Zは吸尿パッド1についての互いに直交する横方向と縦方向と厚さ方向とを示し、線Pは吸尿パッド1の横方向Xにおける寸法を二等分する縦中心線を示し、線Qは吸尿パッド1の縦方向Yにおける寸法を二等分する横中心線を示している。図1の吸尿パッド1は、縦方向Yに伸展された状態にあり、着用した場合に着用者の前側に位置する部分が図1の上方となるように配置されている。図1における仮想線A、Bは、後記図4に例示されるように吸尿パッド1が折り重ねられるときの吸尿パッド1に対する折曲線を示している。図1の吸尿パッド1において、折曲線Aよりも上方の部分は前端部Lであり、折曲線Bよりも下方の部分は後端部Nであり、折曲線AとBとの間の部分は中間部Mである。
【0012】
吸尿パッド1は、縦中心線Pおよび横中心線Qのうちの少なくとも縦中心線Pに関して対称に形成してあり、厚さ方向Zには肌側表面1aとその反対面である着衣側表面1bとを有する。吸尿パッド1はまた、肌側表面1aを形成している透液性の表面シート2と、着衣側表面1bを形成している不透液性の裏面シート3と、これら表面シート2と裏面シート3との間に介在する吸液性構造体10と、一対の防漏カフ30とを有している。表面シート3には、粘着剤72が塗布され、その粘着剤72が剥離紙73によって被覆保護されている。
【0013】
表面シート2および裏面シート3は、吸液性構造体10の周縁部から延出して互いに重なり合って接合することにより周縁部6を形成している。周縁部6は、縦方向Yの両端に位置する両端縁部4および横方向Xの両側に位置する両側縁部5を含んでいる。
【0014】
吸液性構造体10は、表面シート2の側に位置する第1吸液層21と、裏面シート3の側に位置する第2吸液層41とを有している。第1吸液層21と表面シート2、第2吸液層41と裏面シート3、および第1吸液層21と第2吸液層41とは、ホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合されている。
【0015】
第1吸液層21は、透液性であって厚さ方向Zにおいて互いに対向する上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとの間に吸液性の第1芯材22を介在させた上方吸液部24と、第1芯材22を介在させることなく上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとが接着、溶着、機械的交絡の少なくともいずれか一つによって接合している非吸液部25とを有する。図示例の第1吸液層21は、縦方向Yに長い矩形に形成されていて、上方吸液部24は、第1吸液層21の縦方向Yへ延びる一対の側縁部27にそれぞれ沿って延びる側方部分24b、24cと、側方部分24bと24cとの間にあって縦方向中心線Pに沿って延びる中央部分24aとに分けられている。第1芯材22は、高吸収性ポリマー粒子を100〜50重量%、粉砕パルプ等の吸水性繊維を0〜50重量%の割合で含んでいる吸液性材料の集合体であり、本実施態様における吸尿パッド1では、高吸収性ポリマー粒子のみで形成されている。高吸収性ポリマー粒子は、側方部分24b、24cおよび中央部分24aにおいて上方ラッピングシート23aおよび/または下方ラッピングシート23bに間欠的に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)によってその位置が固定されていることが好ましい。図示例の非吸液部25は、上方ラッピングシートと下方ラッピングシート23bとがホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合することにより形成されている。非吸液部25のうちで第1吸液層21の両端部に形成されている第1領域25aと、非吸液部25のうちで側方部分24b、24cのそれぞれと中央部分24aとの間に形成されている第2領域25bとにおいては、上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとがホットメルト接着剤を介して接合するとともに、エンボス加工を施されて機械的に交絡している。このような第1吸液層21では、側方部分24b、24cおよび中央部分24aの周囲において上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとがホットメルト接着剤を介して接合することと、これら両シート23a、23bにエンボス加工を施すことによって、第1芯材22を形成している高吸収性ポリマー粒子が側方部分24b、24cや中央部分24aに閉じ込められた状態にある。
【0016】
下方吸液部である第2吸液層41は、粉砕パルプ等の吸水性繊維の集合体である第2芯材42と、この第2芯材42を被覆する透液性のラッピングシート43とで形成されている。図示例の第2吸液層41は、平面形状が亜鈴型に形成されていて、縦方向Yの寸法が第1吸液層21の縦方向Yの寸法よりも大きい。
【0017】
防漏カフ30は、撥水性シート、不透液性シート、撥水性にして不透液性のシートのいずれかによって形成されていることが好ましいもので、固定部33と、カフ部34とを有する。固定部33は、第1吸液層21の側縁27に沿って縦方向Yへ延びていて表面シート2の肌側表面にホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合し、カフ部34は、折曲部35において幅方向Xの外側に向かって折曲され、固定部33の上に起立可能に倒伏している。カフ部34はまた、縦方向Yへ延びる縁部が折り返されることによってスリーブ34bが形成され、スリーブ34bの内側には弾性部材32が縦方向Yへ伸長された状態で取り付けられていて、縦方向Yにおいて弾性的に収縮可能である。固定部33とカフ部34との縦方向Yにおける端部33a、34aは、互いに重なり合った状態で吸尿パッド1の縦方向Yの端縁部4に対してホットメルト接着剤(図示せず)を介して固定されていて、防漏カフ30における端部30aを形成している。
【0018】
吸尿パッド1が着用されて厚さ方向Zにおいて湾曲し、弾性部材32が収縮すると、倒伏していたカフ部34は図2の仮想線の如くに固定部33から起立して、スリーブ34bの近傍が着用者の肌(図示せず)に接近または密着して、吸尿パッド1における尿の横漏れを防ぐように作用する。
【0019】
そのように作用する防漏カフ30のそれぞれにおいて、固定部33との境界となるカフ部34の基縁Fと横方向Xにおける基縁Fの近傍は、表面シート2を介して第1吸液層21の側方部分24bまたは24cに重なっている。カフ部34の基縁Fは、側方部分24b、24cの横方向外縁27b、27cよりも、横方向X内側に位置している。なお、図2の例において、防漏カフ30のカフ部34は基縁Fと平行な折曲部35において折曲されているが、カフ部34は、基縁Fにおいて折曲されていてもよいものである。
【0020】
吸尿パッド1において、表面シート2には、熱可塑性合成繊維で形成され、透液性を有する不織布や透液性の開孔プラスチックフィルムを親水化処理して使用することができる。その不織布には、たとえば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布などがある。熱可塑性合成繊維には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性合成樹脂で形成された繊維や、二種類の熱可塑性合成樹脂で形成された複合繊維がある。不織布には、単位面積当たりの質量が、10〜60g/m、より好ましくは15〜30g/mのものを使用し、プラスチックフィルムには厚さが約10〜40μmのものを使用することが好ましい。
【0021】
裏面シート3には、厚さが約10〜40μmのプラスチックフィルムを使用することが好ましいが、実質的な意味において、不透液性である繊維不織布を使用することもできる。なお、裏面シート3に使用したプラスチックフィルムは、その着衣側表面に繊維不織布を積層して、布様の肌触りを有するものにすることができる。
【0022】
防漏カフ30の防漏シート31には、熱可塑性合成繊維で形成され、難透液性または不透液性を有する不織布や不透液性のプラスチックフィルムを使用することができる。不織布には、たとえば、スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド不織布(SMS不織布、spun−bonded・melt−blown・spun−bonded nonwoven fabric)、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布等を用いることができる。
【0023】
高吸収性ポリマー粒子には、たとえばデンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系等のものであって、自重の少なくとも10倍以上の水を吸収可能であり、水不溶性かつ水膨潤性のポリマーを用いることができる。なお、この発明において高吸収性ポリマー粒子というときには、粒子状に形成されているものの他に、繊維状に形成されているものをも意味している。上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとには、熱可塑性合成繊維で形成された透液性の不織布やティッシュペーパーを使用することができる。上方吸液部24における高吸収性ポリマー粒子の単位面積当たりの使用量は、100〜400g/mであることが好ましい。
【0024】
第1吸液層21に吸水性繊維を使用する場合、木材フラッフパルプ等のパルプ繊維、レーヨンステープル等の再生繊維、およびこれらを混合したものを使用することができる。
【0025】
図3は、図2の吸尿パッド1が着用されて尿を吸収したときの側方部分24cと防漏カフ30の状態を示す吸尿パッド1の部分図であって、仮想線は尿を吸収していないときの吸尿パッド1を示している。吸尿パッド1が着用されて縦方向Yにおいて湾曲すると(後記図4参照)、弾性部材32の収縮に伴って防漏カフ30が仮想線の如くに起立する。その吸尿パッド1が尿を吸収すると、上方吸液部24の側方部分24cでは、そこに閉じ込められている高吸収性ポリマー粒子が尿を吸収して膨潤するとともに、側方部分24cにおける上方ラッピングシート23aとそれに重なる表面シート2とが変形して、仮想線で示されている側方部分24cの断面形状が、実線で示されているようにふくらんだ状態に変化し、厚さ方向Zの寸法が最大でHだけ増加する。側方部分24cは、その下側に第2吸液層41があることや下方ラッピングシート23bが第2吸液層41のラッピングシート43に接合していること等によって、図の下方に向かってはふくらみ難く、上方に向かって膨らんで寸法Hだけ高さが高くなり、着用者の肌に向かって隆起した状態となる。固定部33が側方部分24cに重なっていて基縁Fから起立するカフ部34もまた、最大で寸法Hだけ上昇し、仮想線の状態から実線の状態へと変化する。その結果として、側方部分24cにおいて起立していた防漏カフ30は、たとえば寸法Hだけ着用者の肌に接近して、防漏カフ30と肌との間の間隙を縮めるかまたは肌に対して強く密着する。なお、図示していない側方部分24bとそれに重なる防漏カフ30とは、尿を吸収すると、側方部分24cとそれに重なる防漏カフ30と同様な挙動を示す。カフ部34がこのように上昇することが可能な防漏カフ30では、固定部33が側方部分24b、24cに対して接合していて、幅方向Xにおいて基縁Fが側方部分24b、24cの内側に位置している。
【0026】
図3の側方部分24b、24cではまた、膨潤した高吸収性ポリマー粒子が互いに密着してゲルブロックを形成した状態で充満している。そのゲルブロックが縦方向Yにおいて折曲線A、Bのそれぞれと交差して端部30aと30aとの間に延びている側方部分24b,24cは、柔軟ではあるがそれを曲げることが難しいものになる。そのような側方部分24b、24cから起立する防漏カフ30のカフ部34は、端部30aを除く縦方向Yの全長が容易に起立する。
【0027】
第1吸液層21における非吸液部25は、表面シート2から第2吸液層22に向かっての尿の移動を可能にする部位でもある。その移動を容易にするために、表面シート2と上方ラッピングシート23aとを接合するためのホットメルト接着剤、上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとを接合するためのホットメルト接着剤、および下方ラッピングシート23bと第2吸液層41のラッピングシート43とを接合するためのホットメルト接着剤は、間欠的に塗布されていることが好ましい。また、その尿の移動を容易にするために、非吸液部25では、上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとを貫通する開孔を形成しておくことができる。
【0028】
第2吸液層41は、第1吸液層21で吸収することのできなかった尿を吸収保持するための部位である。そのような第2吸液層41の第2芯材42は、粉砕パルプ等の吸水性繊維の集合体である。ラッピングシート43には、上方ラッピングシート23aまたは下方ラッピングシート23bと同じものを使用することができる。また、第2吸液層41は、それが吸収すべき尿の量が少ない場合には、図2に例示の第2芯材とラッピングシート43とに代えて1枚または複数枚のティッシュペーパー等の吸水性シートを使用することもできる。
【0029】
第1吸液層21における上方吸液部24を形成するための方法の一例では、ホットメルト接着剤(図示せず)を、上方ラッピングシート23aおよび下方ラッピングシート23bのうちのいずれか一方のラッピングシートにおける上方吸液部24に塗布し、その上方吸液部24に向かって高吸収性ポリマー粒子を散布した後、非吸液部25にまで散布されている高吸収性ポリマー粒子を除去する。その後、もう一方のラッピングシートの全面にホットメルト接着剤を塗布して両ラッピングシート23a、23bを重ね合わせ、非吸液部25において接着することにより、両ラッピングシート23a、23bの間に高吸収性ポリマー粒子が収容されている上方吸液部24と、高吸収性ポリマー粒子が実質的には存在していない非吸液部25とを得ることができる。また別の例では、特開2010−22076号公報に記載されるように、吸気孔を有する成形型の上に上方ラッピングシート23aおよび下方ラッピングシート23bのうちのいずれか一方のラッピングシートを載せ、吸気孔から吸引しつつ上から高吸収性ポリマーを堆積させることにより、成形型の形状通りに高吸収性ポリマーを堆積させる。その後、非吸液部25にホットメルト接着剤を塗布してあるもう一方のラッピングシートを重ねて接合することにより、上方吸液部24と非吸液部25とを得る。非吸液部25では、上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとが互いに接合した状態にあるので、上方吸液部24に含まれている高吸収性ポリマー粒子は、それが上方吸液部24の内部を自由に動き得るものであったとしても、非吸液部25に侵入することがない。
【0030】
非吸液部25は、このように高吸水性ポリマー粒子の存在しない部位であるが、吸尿パッド1の製造過程における技術上の能力等に起因して、非吸液部25の本来の作用を著しく阻害しない程度の量の高吸収性ポリマー粒子が存在することもあり得る部位である。この発明では、この意味において、非吸液部25には、高吸収性ポリマー粒子が実質的には存在しない、という。
【0031】
図4は、個包装されている吸尿パッド1の側面図である。吸尿パッド1は、中央部Mに後端部Nが重なり、後端部Nに前端部Lが重なるように、図1における折曲線A、Bに沿って表面シート2を内側にして折り畳まれている。その吸尿パッド1を包装するために使用されている不織布またはプラスチックフィルムで形成された包装用シート71は、仮想線で示されている。また、吸尿パッド1の裏面シート3には粘着剤72が塗布され、その粘着剤72が剥離紙73によって被覆保護されている。好ましい剥離紙73は、包装用シート71に剥離不能に接合している。
【0032】
図5は、図4の吸尿パッド1が個包装を解かれ剥離紙73が剥がされ、粘着剤72を介してパンツの股部75の内面に取り付けられている状態にあるときの吸尿パッド1の側面図である。粘着剤72は、折曲線AとBとの間に塗布してあって、股部75に取り付けた吸尿パッド1は、折り畳まれていたときの折り癖の影響で前端部Lと後端部Nとが仮想線の如く立ち上がる傾向にある。パンツが着用されて吸尿パッド1に体圧がかかると、吸尿パッド1は実線で示された形状になるとともに防漏カフ30のカフ部34は縦方向Yにおいて緊張状態になる。しかし、パンツの股部75が身体から離れて吸尿パッド1に体圧がかからなくなると、吸尿パッド1は再び仮想線の形状になるとともにカフ部34は弾性部材32が弛緩状態となってその高さが低くなる。しかるに、吸尿パッド1では、側方部分24b、24cが尿を吸収して高吸収性ポリマー粒子がゲルブロックを形成すると、そのゲルブロックが折曲線A、Bと交差することによって(図1参照)、吸尿パッド1の前端部Lと後端部Nとが図示例の如く立ち上がることを抑えて、カフ部34を実線の状態の如く縦方向Yに緊張させることができる。緊張状態にあるカフ部34は、弛緩状態にあるカフ部34よりも厚さ方向Zにおける丈が高く、尿の横漏れを防ぐことに優れている。
【0033】
図6、7は、実施態様の一例を示す吸尿パッド1の平面図と、その平面図におけるVIII−VIII線断面図である。
【0034】
図6、7の吸尿パッド1には、表面シート2から裏面シート3に向かって凹となり縦方向Yへ延びる二条の圧縮溝50が形成されている。図示例において、その圧縮溝50は、部分50a〜50gに分断されているが、分断されることのない一連のものに代えることもできる。圧搾溝50は、第1吸液層21の非吸収部25と重なる位置にあって、この圧搾溝50では、表面シート2と、上方ラッピングシート23aと、下方ラッピングシート23bと、第2吸液層41のラッピングシート43と、第2芯材42とが密着し、より好ましくは、重なり合うものどうしが機械的に交絡した状態で密着している。このような状態により、表面シート2上の尿は、圧縮溝50の底部から第2吸液層22へと容易に移動する。
【0035】
図示例の吸尿パッド1に基づいて説明したこの発明は、吸尿パッド1の他に、吸尿パッド1とは平面形状の異なる吸尿パッドや、軽失禁パッド、パンティライナ、生理用ナプキン等の吸収性物品として実施することもできる。
【0036】
図示例の吸尿パッド1では、第1吸液層21の上方吸液部24が、中央部分24aおよび側方部分24b,24cを有するものであったが、吸尿パッド1は、中央部分24aが存在していなくてもよいものでもある。ただし、中央部分24aが存在することにより、吸尿パッド1が吸尿量の多いものになることは当然であるが、着用者の陰部にフィットし易い構造のものにもなる。
【0037】
また、側方部分24b,24cは、縦方向Yに一連のものとして存在していることによって、高吸収性ポリマー粒子が膨潤したときの側方部分24b、24cは、防漏堤としても作用する。しかし、中央部分24aに設けられた上方吸液部24でゲルブロックが形成されて第1吸液層21から第2吸液層41への尿の移動が困難になることを避けたい場合には、中央部分24aにおける上方吸液部を、縦方向Yに複数、たとえば3つに分割して、中央部分24aどうしの間に透液性の非吸液部25を設け、上方吸液部24において高吸液性ポリマー粒子がゲルブロックを形成した場合であっても、非吸液部25を介して、第1吸液層21から第2吸液層41への尿移動をさせることができる。
【0038】
また、図1〜7に示す吸尿パッド1は、2層の吸液層21,41を有する吸液性構造体10を有するが、この発明は、2層以上の吸液層を有する体液吸収性物品で実施することができる。たとえば、第1吸液層21と第2吸液層41との間に第3の吸液層を設けることができる。また、第1吸液層21における中央部分24aの真下にだけ第3の吸液層を設けて、吸尿パッド1の中央部分24aに相当する部分を中高に形成することができる。第2吸液層41は、中央部分24aの真下において、中高に形成することができる。第2吸液層41の第2芯材42は、高吸収性ポリマー粒子と吸収性繊維の混合物であってもよい。たとえば、第2芯材42は、吸水性繊維を100〜50重量%、吸収性ポリマー粒子を0〜50重量%の割合で含むことができる。
【0039】
図8は、実施態様の他の一例としての吸尿パッド101を示す図2と同様の図である。図8において、図1、2に例示の吸尿パッド1と同様の構造については、同じ参照番号を使用している。吸尿パッド1の吸液構造体110において、高吸液性ポリマー粒子を含む第1芯材22をラッピングシート123でそれぞれ個別に被覆することによって、側方部分124b、124cと中央部分124aとを含む上方吸液部124を形成している。
【0040】
本明細書中で使用される「接合」および「接合する」との用語は、ホットメルト接着剤、ヒートシール、ソニックシール、エンボス加工のうちの少なくとも1つによって、2つの対象物を一体化することを意味している。
【0041】
なお、体液吸収性物品を構成する部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている材料および/または公知の材料を制限なく用いることができる。
【0042】
また、本明細書において使用されている「第1」および「第2」なる用語は、この用語が使用されている要素、位置等を単に区別するためのものである。
【0043】
以上に記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
【0044】
縦方向Y、横方向Xおよび厚さ方向Zを有し、肌側表面1aを形成する透液性表面シート2と、前記肌側表面の反対面である着衣側表面1bを形成する不透液性裏面シート3と、前記表面シート2および前記裏面シート3の間に介在する吸液性構造体10と、前記吸液性構造体10の前記縦方向Yに延びる一対の側縁27のそれぞれに沿って延びる一対の防漏カフ30とを備える体液吸収性物品において、
前記吸液性構造体10は、前記裏面シート3に対向する下方吸液部41と、前記下方吸液部41の上方にあって前記表面シート2に対向する上方吸液部24とを有し、
前記下方吸液部41は、吸液性材料42として少なくとも吸水性繊維を含んでいて、前記吸液構造体10における前記縦方向Yおよび前記横方向Xの全域に亘って広がっており、
前記上方吸液部24は、少なくとも高吸収性ポリマー粒子を含む吸液性材料22を透液性のラッピングシートで被覆することにより形成されていて、前記吸液性構造体10における前記横方向Xのうちの少なくとも両側部分に個別に形成されて前記縦方向Yへ延びる側方部分24b、24cを有し、
一対の前記防漏カフ30のそれぞれは、前記表面シート2における前記肌側表面1aに接合していて前記縦方向Yに延びる固定部33と、前記縦方向Yに弾性的に伸長された状態で延びていて収縮可能でありかつ前記体液吸収性物品の前記横方向Xの外側に向かって起立可能に倒伏しているカフ部34と、前記体液吸収性物品の前記縦方向Yにおける両端部それぞれに前記固定部33と前記カフ部34とが固定された状態にある一対の端部30aとを有し、
一対の前記防漏カフ30のそれぞれはまた、前記固定部33が前記表面シート2を介して個別に形成されている前記側方部分24b、24cと重なり合っていることを特徴とする前記体液吸収性物品。
【0045】
前記段落0044に開示した本発明は、少なくとも下記の実施の態様を含むことができる。
(1)前記横方向Xにおいて、前記側方部分24b、24cどうしの間には、前記上方吸液部の一部分であって前記側方部分24b、24cのそれぞれからは離間した状態にある中間部分24aが形成されている。
(2)前記ラッピングシートが、前記吸液性構造体の前記一対の側縁の間に広がって前記縦方向へと延び前記厚さ方向において対向する上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとからなり、前記上方ラッピングシート23aと前記下方ラッピングシート23bとの間に前記吸液性材料22を介在させることによって、前記側方部分24b、24cが形成され、前記側方部分24b、24cどうしの間で前記上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとが接合している。
(3)前記ラッピングシートが、前記吸液性構造体の前記一対の側縁の間に広がって前記縦方向へと延び前記厚さ方向において対向する上方ラッピングシート23aと下方ラッピングシート23bとからなり、前記上方ラッピングシート23aと前記下方ラッピングシート23bとの間に前記吸液性材料22を介在させることによって、前記側方部分24b、24cと前記中間部分24aとが形成され、前記側方部分24b、24cそれぞれと前記中間部分24aとの間で前記上方ラッピングシート23aと前記下方ラッピングシート23bとが接合している。
(4)前記体液吸収性物品が前記横方向Xへ互いに並行して延びる第1折曲線Aと第2折曲線Bとにおいて、前記表面シート2を内側にして三つに折り重ねられた状態にあり、前記第1、第2折曲線A、Bが前記上方吸液部24の前記側方部分24a、24bそれぞれと交差している。
(5)前記固定部33と前記カフ部34との境界Fは、前記側方部分24a、24bの前記横方向Xの外縁27b、27cよりも前記横方向Xの内側に位置している。
(6)起立可能に倒伏している前記カフ部34は、前記一対の端部30aの間に位置する部分の全体が前記側方部分34に重なっている。
【符号の説明】
【0046】
1 吸尿パッド(体液吸収性物品)
1a 肌側表面
1b 着衣側表面
2 表面シート
3 裏面シート
10 吸液性構造体
22 第1芯材(吸液性材料)
23a 上方ラッピングシート(ラッピングシート)
23b 下方ラッピングシート(ラッピングシート)
24 上方吸液部
24a 中央部分
24b,24c 側方部分
27 吸液性構造体の側縁
27b、27c 側方部分の横方向の外縁
30 防漏カフ
30a 端部
33 固定部
34 カフ部
41 第2吸液層(下方吸液部)
42 第2芯材(吸液性材料)
X 横方向
Y 縦方向
Z 厚さ方向
A 第1折曲線
B 第2折曲線
F 基縁(防漏カフの固定部とカフ部との境界)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向、横方向および厚さ方向を有し、肌側表面を形成する透液性表面シートと、前記肌側表面の反対面である着衣側表面を形成する不透液性裏面シートと、前記表面シートおよび前記裏面シートの間に介在する吸液性構造体と、前記吸液性構造体の前記縦方向に延びる一対の側縁のそれぞれに沿って延びる一対の防漏カフとを備える体液吸収性物品において、
前記吸液性構造体は、前記裏面シートに対向する下方吸液部と、前記下方吸液部の上方にあって前記表面シートに対向する上方吸液部とを有し、
前記下方吸液部は、吸液性材料として少なくとも吸水性繊維を含んでいて、前記吸液性構造体における前記縦方向および前記横方向の全域に亘って広がっており、
前記上方吸液部は、少なくとも高吸収性ポリマー粒子を含む吸液性材料を透液性のラッピングシートで被覆することにより形成されていて、前記吸液性構造体における前記横方向のうちの少なくとも両側部分に個別に形成されて前記縦方向へ延びる側方部分を有し、
一対の前記防漏カフのそれぞれは、前記表面シートにおける前記肌側表面に接合していて前記縦方向に延びる固定部と、前記縦方向に弾性的に伸長された状態で延びていて収縮可能でありかつ前記体液吸収性物品の前記横方向の外側に向かって起立可能に倒伏しているカフ部と、前記体液吸収性物品の前記縦方向における両端部それぞれに前記固定部と前記カフ部とが固定された状態にある一対の端部とを有し、
一対の前記防漏カフのそれぞれはまた、前記固定部が前記表面シートを介して個別に形成されている前記側方部分と重なり合っていることを特徴とする前記体液吸収性物品。
【請求項2】
前記横方向において、前記側方部分どうしの間には、前記上方吸液部の一部分であって前記側方部分のそれぞれからは離間した状態にある中間部分が形成されている請求項1記載の体液吸収性物品。
【請求項3】
前記ラッピングシートが、前記吸液性構造体の前記一対の側縁の間に広がって前記縦方向へと延び前記厚さ方向において対向する上方ラッピングシートと下方ラッピングシートとからなり、前記上方ラッピングシートと前記下方ラッピングシートとの間に前記吸液性材料を介在させることによって、前記側方部分が形成され、前記側方部分どうしの間で前記上方ラッピングシートと下方ラッピングシートとが接合している請求項1記載の体液吸収性物品。
【請求項4】
前記ラッピングシートが、前記吸液性構造体の前記一対の側縁の間に広がって前記縦方向へと延び前記厚さ方向において対向する上方ラッピングシートと下方ラッピングシートとからなり、前記上方ラッピングシートと前記下方ラッピングシートとの間に前記吸液性材料を介在させることによって、前記側方部分と前記中間部分とが形成され、前記側方部分それぞれと前記中間部分との間で前記上方ラッピングシートと前記下方ラッピングシートとが接合している、請求項2記載の体液吸収性物品。
【請求項5】
前記体液吸収性物品が前記横方向へ互いに並行して延びる第1折曲線と第2折曲線とにおいて、前記表面シートを内側にして三つに折り重ねられた状態にあり、前記第1、第2折曲線が前記上方吸液部の前記側方部分それぞれと交差している請求項1または2記載の体液吸収性物品。
【請求項6】
前記固定部と前記カフ部との境界は、前記側方部分の前記横方向の外縁よりも前記横方向の内側に位置している、請求項1または2記載の体液吸収性物品。
【請求項7】
起立可能に倒伏している前記カフ部は、前記一対の端部の間に位置する部分の全体が前記側方部分に重なっている、請求項1または2記載の体液吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39163(P2013−39163A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176414(P2011−176414)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】