説明

体液漏出防止具

【課題】 カニューレ等のコネクタ部から流出する体液を効果的に受け止めて、体液の身体や衣類への漏出を防止する。
【解決手段】 水平床板部(2)と、該床板部の周縁に起立形成され該床板部の周縁を隙間無く包囲する直立壁(3)と、上記床板部に貫設された貫通孔(7)からなる上面開口の箱状の体液漏出防止具であって、上記水平床板部の貫通孔(7)にその後方側からカニューレのコネクタ部(15)を上向きに挿入し得るように構成し、上記貫通孔(7)に上記コネクタ部(15)を嵌合した状態において、上記コネクタ部(15)の開口部が直立壁(3)によって囲まれた当該防止具の内側に位置するように構成し、上記貫通孔(7)の直径はカニューレのチューブに連通するコネクタ部(15)が上記貫通孔(7)に嵌合し得る程度の大きさとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体の切開孔等に取り付けられたカニューレのコネクタ部から体液(痰等)を吸引する際等に、上記コネクタ部からの体液の流出を受け止めることができる体液漏出防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カニューレのコネクタ部から痰等を吸引する際、切開孔から流出する体液を受け止める装置として、切開孔の回りにガーゼを敷いて体液の漏出や拡散を防止して、衣類等の汚れを回避するものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、カニューレのコネクタ部と人体との間に体液回収容器を取り付けることにより、切開孔から流出する体液を上記回収容器で受け止めて、体液のさらなる漏出や拡散を防止して、衣類等の汚れを回避するものが提案されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−52615号公報
【特許文献2】実用新案登録第3123393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のものでは、切開孔そのものから漏出する体液は回収し得るが、カニューレのコネクタ部から流出する体液は、何ら回収し得ないため、上記容器等を使用しても結果として上記コネクタ部から流出する体液が身体や衣服等に付着してしまうという課題がある。
【0006】
また、痰等を吸引する場合は、カニューレのコネクタ部に吸引チューブを挿入して行うことになるが、吸引チューブの取り外し時等において、特にコネクタ部からの痰の流出が生じる。
【0007】
このように、切開孔からの痰等の流出は従来のガーゼ等で効果的に阻止できるが、現実の吸引作業時においては、むしろ上記コネクタ部からの流出が多く、かかる部分から流出した痰等をいかに回収するかが課題となる。
【0008】
また、吸引作業時に限らず、リハビリ時や通常の生活時に咳をした時等において、カニューレの先端から相当量の痰が一度に流出する場合があるが、このような状況においては上記従来の装置では流出する痰を受け止められないという課題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、カニューレのコネクタ部から流出した体液を効果的に回収し得る体液漏出防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、水平床板部と、該床板部の周縁に起立形成され該床板部の周縁を包囲する直立壁と、上記床板部に貫設された貫通孔からなる上面開口の箱状の体液漏出防止具であって、上記水平床板部の貫通孔にその後方側からカニューレのコネクタ部を上向きに挿入し得るように構成し、上記貫通孔に上記コネクタ部を嵌合した状態において、上記コネクタ部の開口部が直立壁によって囲まれた当該防止具の内側に位置するように構成し、かつ上記貫通孔の直径は、カニューレのチューブに連通するコネクタ部が上記貫通孔に嵌合し得る程度の大きさであることを特徴とする体液漏出防止具により構成される。
【0011】
よって痰等の体液の吸引時にコネクタ部から体液が流出したとしても上記防止具の水平床板部と直立壁によって受け止めて、体液の身体や衣服への漏出を効果的に防止し得る。
【0012】
第2に、上記体液漏出防止具の貫通孔は、上記床板部の一端部に設けられると共に、上記貫通孔近傍の上記直立壁の高さを他の直立壁の高さより低く形成したものであることを特徴とする上記第1記載の体液漏出防止具により構成される。
【0013】
上記床板部の一端部とは、例えば床板部の前端部をいう。よって、貫通孔に嵌合されたコネクタ部への吸引具等の着脱処置等を当該防止具の装着状態において容易に行なうことができる。
【0014】
第3に、上面開口の縦長有底箱状の体液漏出防止具であって、当該防止具の後板部の上部に貫通孔を貫設し、上記垂直状態の後板部の上記貫通孔にその後方側からカニューレのコネクタ部を横向きに挿入し得るように構成し、上記貫通孔に上記コネクタ部を嵌合した状態において、上記コネクタ部の開口部が当該防止具内に位置するように構成し、かつ上記貫通孔の直径は、カニューレのチューブに連通するコネクタ部が上記貫通孔に嵌合し得る程度の大きさであることを特徴とする体液漏出防止具により構成される。
【0015】
よって、患者が起立状態においても、コネクタ部から流出する体液を当該防止具にて受け止めることができ、体液の身体や衣類等への漏出を効果的に防止し得る。
【0016】
第4に、上記体液漏出防止具は、その防止具の左右上端部に、患者の首にかけるストラップを接続したものであることを特徴とする上記第3記載の体液漏出防止具により構成される。
【0017】
よって患者は当該防止具を首にかけたままの状態で歩行等を行い得る。
【0018】
第5に、上記体液漏出防止具の後板部の下縁に当該防止具の床板部から前板部の上部に至る補強用延長片を形成し、当該延長片を上記前板部側に折り曲げることにより上記防止具の床板部と前板部に重合させたものであることを特徴とする上記第3又は4記載の体液漏出防止具により構成される。
【0019】
よって、床板部と前板部を上記補強用延長片によって2重に形成し得るため、体液等によって容易に形崩れしない丈夫な体液漏出防止具を形成し得る。
【0020】
第6に、上記体液漏出防止具の前板部の一部に切り込みを設け、上記貫通孔に対応する一部を開閉し得るように構成したものであることを特徴とする上記第3〜5の何れかに記載の体液漏出防止具により構成される。
【0021】
よって、貫通孔に嵌合したコネクタ部への吸引具の着脱等、体液の吸引処置を当該防止具を装着したままの状態で容易に行ない得る。尚、貫通孔に対応する一部とは前板部における切り込みによって開閉可能に形成された部分をいい、貫通孔に対向する前板部の部分、貫通孔に対向しない前板部の部分を含む。
【0022】
第7に、上記体液漏出防止具は防水加工の施された紙製であることを特徴とする第1〜6の何れかに記載の体液漏出防止具により構成される。
【0023】
よって、防水性を有する体液漏出防止具を簡単に低コストで製造することができる。
【0024】
第8に、上記貫通孔は、円形外周縁から貫通孔中心に向かって複数の切り込み線を設けることにより複数の切り込み片を形成し、上記コネクタ部の未挿入状態では複数の上記切り込み片により閉鎖状態としたものであることを特徴とする上記第1〜7の何れかに記載の体液漏出防止具。
【0025】
よって、カニューレのコネクタ部を貫通孔に挿入すると、コネクタ部の直径に応じて切り込み片が挿入方向に対向して起立してコネクタ部を保持し得るため、コネクタ部の直径の大小にかかわらず、確実に体液漏出防止具をコネクタ部に装着し得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明は上述のように構成したので、カニューレ等のコネクタ部から流出した体液を効果的に回収し得て、体液の身体や衣類への漏出を効果的に防止し得る。
【0027】
また、体液漏出防止具の装着状態において、コネクタ部への吸引具等の着脱処置等を容易に行なうことができる。
【0028】
また、患者は本発明に係る体液漏出防止を装着したままの状態で歩行等を行い得る。
【0029】
また、本発明に係る体液漏出防止具は防水加工の施された紙等によって簡単に低コストで作ることができる。
【0030】
また、カニューレのコネクタ部の直径が異なっても確実に装着することができる体液漏出防止具を提供し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて本考案の一実施形態を詳細に説明する。
【0032】
図1は本発明に係る第1の実施形態の体液漏出防止具1を示す斜視図である。
【0033】
かかる図において、当該体液漏出防止具1は、全体として上面開口の横長直方体形状をなしており、長方形状の水平床板部2と該床板部2の四辺から直立方向に起立する4つの直立壁3,3,3,3から構成されている。即ち、水平床板部2の周囲には該床板部2の周囲を隙間無く包囲する直立壁3,3,3,3が起立形成されている。
【0034】
この直立壁3,3,3,3の内、後方壁部4が最も背が高く、左右に位置する左右壁部5,5’は上記後方壁部4と同一高さの後方接続部5a,5a’を以って上記後方壁部4に接続され、左右壁部5,5’の略中央部から前方よりの位置においては、上記後方接続部5a,5a’より前方側に向かう下り傾斜のテーパ部5b,5b’により形成されている。
【0035】
上記直立壁部3,3,3,3の内、前方壁部6は最も背が低く、上記左右壁部5,5’の上記テーパ部5b,5b’の前端の最も低い高さと同一の高さを有している。
【0036】
7は上記床板部2の前方よりの中央部(前端部)に貫通形成された接続用の貫通孔であり、後述するカニューレ11のコネクタ部15を嵌合挿入するものである。尚、上記貫通孔7の近傍の上記直立壁3(上記テーパ部5b,5b’、上記前方壁部6)の高さを他の直立壁3(後方接続部5a,5a’、後方壁部4)の高さより低く形成することにより、当該体液漏出防止具1の装着状態で、上記貫通孔7に後方から接続されたコネクタ部15への吸引チューブの挿入等の処置を行い易くしている。
【0037】
また、上記貫通孔7にコネクタ部15を上向きに嵌合装着した状態において、上記コネクタ部15の開口部15aが上記直立壁3,3,3,3によって囲まれた当該体液漏出防止具1の内側に位置するように構成する(図2参照)。
【0038】
この体液漏出防止具1の材質は、厚さが例えば0.5mm〜1.5mmの比較的厚い原紙(例えばコートボール310g/m等)であり、当該原紙の表面に、防水性の透明インキ(オーバープリントニス(OPニス)等)をニス引き、プレスコート等の手法により防水加工を施したり、樹脂フィルム(PPフィルム)をラミネート加工することにより防水加工を施したものである。
【0039】
上記体液漏出防止具1は、上述のように厚紙により構成されるものであるが、簡易的には図1の防止具1の各直立壁3,3,3,3に糊代等を設けて平面的に展開した状態の厚紙から、各直立壁3,3,3,3を起立させ、各壁同士を係合或いは接着することにより構成することができる。この場合、床板部2の四隅における各直立壁3,3,3,3間の角部には小さな間隙が生じるが、大部分の体液は床板部2の面によって受け止めることができる。尚、組み立て後の体液漏出防止具1の上記四隅の角部にテープを貼着して上記間隙を塞いだり、床板部2にガーゼ、ティッシュ等を敷くことにより体液の漏出を確実に防止することができる。
【0040】
本発明の体液漏出防止具1は上述のように構成されるものであるから、次にその使用方法を図2、図3に基づいて説明する。
【0041】
患者9は、痰等の体液を吸引するため咽9aに切開孔8を形成し、当該切開孔8から気管10内にカニューレ11のカフ12及びチューブ13を挿入し、上記切開孔8から固定片14及び上記チューブ13に連通するコネクタ部15が突出した状態となっている。
【0042】
痰等の吸引処置を行う場合は、図3に示すように、患者9は上向きで横になった状態となっている。そこで、痰等の吸引を行う前に、本発明に係る体液漏出防止具1の水平床板部2を上記患者の咽の切開孔8上に宛がい、その貫通孔7の中に上記コネクタ部15を後方側から上向きに挿入して勘合固定する(図3の状態)。この状態においては、上記コネクタ部15の直径と上記貫通孔7の直径は略同一に形成されているので、上記コネクタ部15は上記貫通孔7内に隙間無く勘合固定される。即ち、上記貫通孔7の直径は、カニューレ11のチューブ13に連通するコネクタ部15が上記貫通孔7に隙間無く嵌合し得る程度の大きさに構成されている。又は、貫通孔7は上記カニューレ11のチューブ13に連通するコネクタ部15と上記貫通孔7との間に多少隙間が存在しても、両者が嵌合し得る程度の大きさに構成されている。即ち、上記コネクタ部15と上記貫通孔7との関係は、隙間なく嵌合した状態でも良いが、多少の隙間があっても当該体液漏出防止具1が上記コネクタ部15に係止され容易に外れない状態となれば良い。
【0043】
この状態で、上記コネクタ部15からカニューレ11の内部に吸引チューブCを挿入し、図示しない吸引装置にて痰の吸引を行う。痰等の体液は吸引チューブCを介して吸引装置内に吸引されていく。吸引が終了したら、上記カニューレ11のコネクタ部15から吸引チューブCを抜き取るが、その際、上記コネクタ部15から痰等の体液が外部に流出する。
【0044】
このとき、上記コネクタ部15から流出した痰等の体液は、上記体液漏出防止具1の水平床板部2に流出していくため、該体液が患者の身体或は衣類に付着することはない。また、当該体液漏出防止具1は、四方に直立壁3,3,3,3を有しているので、床板部2に流出した体液は、床板部2の四方の何れの方向に流出しても、当該体液漏出防止具1から漏出することはない。
【0045】
また、直立壁3,3,3,3は或る程度の高さを有しているので、コネクタ部15から流出する体液の量が多くても上記直立壁3,3,3,3によって防止具1外への漏出を確実に防止し得る。また、上記直立壁3,3,3,3の内、後方壁部4及び左右壁部5,5’の後方接続部5a,5a’においては前方壁部6より高さが高いので、患者が上半身をある程度起こしたとしても床板部2に溜まった体液が容易に当該防止具1から漏出することはない。
【0046】
また、上記患者が咳をした場合、上記コネクタ部15から相当量の痰が一度に流出する場合があるが、その場合においても流出した痰はその大部分を体液漏出防止具1の水平床板部2で受け止めることができ、患者の衣類に付着することは少ない。
【0047】
また、上記貫通孔7の近傍の直立壁3の高さが低いので、コネクタ部15への吸引チューブの挿脱処置を容易に行なうことができる。
【0048】
さらに、図7に示すように、吸入器のマスク30をコネクタ部15を覆うように上記床板部2に宛がい、チューブ31を通して霧状の薬剤を上記カニューレ11のコネクタ部15から患者の気管10内に投入することが行われるが、この場合、霧状の薬剤が上記床板部2によって患者の衣服に直接接触することが妨げられる。よって、本発明に係る体液漏出防止具1は、吸入操作に伴う患者の衣類の汚れをも防止することもできる。
【0049】
次に、本発明に係る体液漏出防止具の第2の実施形態を図4乃至図6により説明する。図4に示すものは、第2の実施形態を示す体液漏出防止具20であり、主に患者が立ち上がった状態、或は上半身を起こした状態で使用するものである。
【0050】
かかる図において、体液漏出防止具20は、全体として上面開口の縦長の有底箱状に構成されており、上端部にコネクタ部15に接続するための貫通孔21の貫通形成された後板部22と、床板部23と前板部24と、上記後板部22と前板部24と上記床板部23の側縁を閉鎖する左右側板部25a,25a’とから構成されている。
【0051】
上記左右側板部25a,25a’の上端部には、各々吊り下げ紐の係合用透孔26、26’が貫通形成されており、当該係合用透孔26、26’に吊り下げ紐(ストラップ)27の両端部を係合する。
【0052】
上記左右側板部25a,25a’の前端部は図4に示すように、後板部22の上端部の位置より低い位置の切り欠き部25c,25c’が設けられており、上記前板部24の上端位置は上記切り欠き部25c,25c’と同一位置、即ち、上記後板部22の上端位置より低い位置となるように構成されている。これにより、上記貫通孔21に接続されたコネクタ部15への吸引チューブの挿脱作業が行ない易いように構成している。
【0053】
尚、上記前板部24の両端位置を上端から下方向けて所定距離切り込むことにより切り込み24a、24a’を形成し、その後、上記切込に囲まれたフラップ部分24bを矢印A方向(前方)に回動自在とすることにより、上記前板部24の上部(貫通孔21に対応する前板部24の一部)を開閉可能としても良い。このように構成すると、当該防止具20の装着状態において、コネクタ部15への吸引チューブCの挿脱処置時に、上記フラップ部分24bを矢印A方向に回動することにより、フラップ部分24bが邪魔になることがなく、上記挿脱作業を容易に行なうことができる(図8も参照)。
【0054】
また、上記貫通孔21に上記コネクタ部15を横向きに嵌合装着した状態において、上記コネクタ部15の開口部15aが当該体液漏出防止具20の内部に位置するように構成する。
【0055】
この体液漏出防止具20は、上記第1の実施形態と同様の材質により構成されており、厚さが例えば0.5mm〜2mmの比較的厚い原紙(例えばコートボール310g/m等)であり、当該原紙の表面に、防水性の透明インキ(OPニス等)をニス引き、プレスコート等の手法により防水加工を施したり、PPフィルムをラミネート加工することにより防水加工を施したものである。
【0056】
上記体液漏出防止具20は、上述のように厚紙により構成されるものであるが、第1の実施形態と同様に、簡易的には図4の防止具20の左右側板部25a,25a’、前板部24、床板部23に糊代等を設けて平面的に展開した状態の厚紙から、各板部を箱状に組み立てて各々を係合又は接着することにより構成することができる(例えば図8(b)参照)。この場合、床板部23と左右側板部間に多少の間隙が生じるが、床板部23隅部又は周囲をテープで塞いだり、当該防止具20内部にガーゼ、ティッシュ等を敷くことにより、体液の漏出を確実に防止することができる。
【0057】
本実施形態の体液漏出防止具1は上述のように構成されるものであるから、次にその使用方法を図5、図6に基づいて説明する。
【0058】
患者9は、上記第1の実施形態と同様に、咽9aに切開孔8を形成し、当該切開孔8から気管10内にカニューレ11のカフ12及びチューブ13を挿入し、上記切開孔8から固定片14及び上記チューブ13に連通するコネクタ部15が突出した状態となっているものとする。
【0059】
第2の実施形態においては、患者は図6に示すように起立状態或は上半身を起こした状態となっているものとする。かかる状態で、痰等の吸引を行う前に、本発明に係る体液漏出防止具20の後板部22を上記患者9の咽9aの切開孔8に宛がい、その貫通孔21の中に上記コネクタ部15を横向きに挿入して勘合固定する(図6の状態)。この状態においては、上記コネクタ部15の直径と上記貫通孔21の直径は略同一に形成されているので、上記コネクタ部15は上記貫通孔21内に隙間無く勘合固定される。即ち、上記貫通孔21の直径は、カニューレ11のチューブに連通するコネクタ部15が上記貫通孔21に隙間無く嵌合し得る程度の大きさに構成されている。又は、上記カニューレ11のチューブ13に連通するコネクタ部15と上記貫通孔21との間に多少隙間が存在しても、両者が嵌合し得る程度の大きさに構成されている。即ち、上記第1の実施形態と同様に、上記コネクタ部15と上記貫通孔21との関係は、隙間なく嵌合した状態でも良いが、多少の隙間があっても当該体液漏出防止具20が上記コネクタ部15に係止され容易に外れない状態となれば良い。
【0060】
さらに、この状態において患者は吊り下げ紐(ストラップ)27を首にかけて、当該防止具20の落下を防止する。
【0061】
かかる状態において、上記コネクタ部15からカニューレ11の内部に吸引チューブ(図示せず)を挿入し、図示しない吸引装置にて痰の吸引を行う。痰等の体液は吸引チューブを介して吸引装置内に吸引されていく。吸引が終了したら、上記カニューレ11のコネクタ部15から吸引チューブを抜き取るが、その際、上記コネクタ部15から痰等の体液が流出する。
【0062】
このとき、上記コネクタ部15から流出した痰等の体液は、上記体液漏出防止具20内に流出していくため、該体液が患者9の身体或は衣類に付着することはないし、流出した体液が該防止具20外に漏出することもない。
【0063】
また、当該体液漏出防止具20は、縦長の箱状であるため、コネクタ部15から流出した体液をある程度の量当該防止具20内に溜めることができ、頻繁に交換する必要もない。
【0064】
また、この第2の実施形態の防止具20によれば、患者9は当該防止具20を首に掛けた状態で、歩行、リハビリ等を行なうことができるため、コネクタ部15から漏出する体液を気にすることなく、簡単な移動、或は簡単な作業を行なうことができるという効果をも奏するものである。特に、咳をした場合等において、相当量の痰が上記コネクタ部15から流出する場合があるが、そのような場合においても流出した痰の大部分を当該体液漏出防止具20により受けることができ、痰による汚れ等を気にすることなく、歩行、リハビリ等を行うことができる。
【0065】
尚、本発明にかかる体液漏出防止具は防水加工が施されているから、例えば一晩装着した状態でも支障なく使用することができる。
【0066】
図8に示すものは、上記第3の実施形態であり、上記第2の実施形態と同一又は対応部分には同一符号を付している。この第3の実施形態の体液漏出防止具20は、展開状態において後板部22に隣接して左側板部25a、前板部24、右側板部25a’を左右方向に連続して設け、上記左右側板部25a,25a’下端に左右折曲片23b,23bを設けると共に、前板部24下縁に床板部23及びそれに続く折曲片23aを設け、さらに、上記後板部22の下縁に連続して、組み立て時に床板部23の下側に位置する床板補強用延長片28aと、同じく組み立て時に前板部24の前面に位置し、上記前板部24と同等の面積を有する前板補強用延長片28bが設けられている。
【0067】
また、上記前板補強用延長片28bの左右側縁の対称位置には小係合片29,29が突出形成され、さらに上記左右側板部25a,25a’と上記前板部24とのコーナ部には上記小係合片29,29を挿入係合するためのスリット24c,24c’が貫通形成されている。即ち、上記体液漏出防止具の後板部22の下縁に当該防止具20の床板部23から前板部24の前面側の上部に至る補強用延長片28a,28bを形成し、当該延長片28a,28bを上記防止具20の床板部23と前板部24に重合させた。
【0068】
よって、この第3の実施形態によると、本体を図8(a)に示すように筒状に組み立てて例えば右側板部25a’と後板部22を接着剤等で接着する。その後、上記左右折曲片23b,23bを内側に折り曲げ、かつ床板部23を前板部24に対して直角に折り曲げ、さらに折曲片23aを後板部22の内側に折り曲げて箱状の本体を形成する。その後、さらに床板補強用延長片28aを上記床板部23の下側に折り曲げて床板部23に重合させ、さらにそれに続く前板補強用延長片28bを上記前板部24の前面に重合させ(矢印B方向)、かつ左右の小係合片29,29を上記スリット24c,24c’に貫通して上記前板補強用延長片28bを前板部24の前面に重合状態で固定する(図8(b)参照)。
【0069】
この第3の実施形態においても、使用時は内部にガーゼ等を敷いて使用することが好ましいが、床板部23と前板部24の部分が床板補強用延長片28aと前板補強用延長片28bによって2重に形成されているので、当該防止具20内部にある程度の体液が溜まっても容易に形崩れ等することはないという効果がある。
【0070】
また、この第3の実施形態では、貫通孔21の前面側の位置には前板部24が位置するように構成し、当該貫通孔21に勘合したコネクタ部15から流出する体液を確実に受け止められるように構成している。尚、第2の実施形態と同様、フラップ部分24bは手前(矢印A方向)に倒してコネクタ部15へのチューブの着脱を容易に行うものである。
【0071】
図9(a)に示すものは、本発明の体液漏出防止具の貫通孔7,21の他の実施形態であり、この貫通孔は、円形外周縁35から貫通孔中心Pに向かって複数の切り込み線(直線的切込み又はミシン目)36を設けることにより複数の円弧状の切り込み片37を形成し、上記カニューレ11の未挿入状態では複数の上記切り込み片37により閉鎖状態としたものである。
【0072】
このように構成すると、カニューレ11のコネクタ部15を貫通孔7に挿入する場合、図9(b)に示すようにコネクタ部15の直径が小さい場合は当該直径に合わせて上記切り込み片37が体液漏出防止具1のコネクタ部15への挿入方向とは対向方向に小さく起立し、その先端部がコネクタ部15の外周に接した状態でコネクタ部15を保持し、図8(c)に示すようにコネクタ部15の直径が大きい場合は当該直径に合わせて上記切り込み片37が体液漏出防止具1のコネクタ部15への挿入方向とは対向方向に大きく起立し、その先端部がコネクタ部15の外周に接した状態でコネクタ部15を保持する。このように、コネクタ部15の直径の大小にかかわらず、貫通孔7(又は21)に上記コネクタ部15が保持されるため、確実に体液漏出防止具1をコネクタ部に装着し得る。
【0073】
以上のように本発明によれば、カニューレ11のコネクタ部15から流出する痰等の体液を効果的に回収することができ、体液が患者9の身体や衣類に付着することを防止することができる。
【0074】
また、本発明に係る体液漏出防止具は、樹脂をコーティングした紙等で簡単に作ることができるし、防水性を有するため、極めて使い勝手の良いものである。
【0075】
また、体液漏出防止具の装着常態において、コネクタ部15への吸引具等の着脱処置等を容易に行なうことができる。
【0076】
また、患者は本発明に係る体液漏出防止を装着したままの状態で歩行や簡単な作業等を行い得る。
【0077】
また、咳等により相当量の痰等が一度に流出する場合であっても、相当量の痰等を確実に受けることができ、よって患者は咳等に伴う痰の流出を気にすることなくリハビリ等を行うことができる。
【0078】
また、本発明に係る体液漏出防止具は防水加工を施した紙等によって低コストで比較的簡単に作ることができる。
【0079】
また、カニューレのコネクタ部の直径が異なっても確実に装着することができる体液漏出防止具を提供し得るものである。
【0080】
さらに薬剤の吸入操作時等においても吸入器のマスクを体液漏出防止具の床板部に装着して行うことにより、吸入に伴う衣類の汚れをも防止できる。
【0081】
このように、本発明に係る体液漏出防止具を使用することにより、体液漏出に伴う患者の衣類の汚れを解消することができるため、看護士を含め、介護者の負担を大幅に軽減することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の体液漏出防止具は、カニューレ等の各種器具を装着した患者用の体液漏出防止具として、広く適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の体液漏出防止具の斜視図である。
【図2】同上防止具の使用状態を示す断面図である。
【図3】同上防止具の使用状態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る第2の実施形態の体液漏出防止具の斜視図である。
【図5】同上第2の実施形態の防止具の使用状態を示す断面図である。
【図6】同上第2の実施形態の防止具の使用状態を示す斜視図である。
【図7】同上防止具を装着した状態で吸入操作を行う場合の斜視図である。
【図8】本発明に係る第3の実施形態の体液漏出防止具の斜視図を示すものであり、(a)は組み立て前の状態、(b)は組み立て後の状態を示す。
【図9】(a)は貫通孔の他の実施形態を示す正面図、(b)及び(c)は当該貫通孔に直径の異なるコネクタ部を装着した状態の側面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,20 体液漏出防止具
2 水平床板部
3 直立壁
5b テーパ部
7,21 貫通孔
11 カニューレ
15 コネクタ部
22 後板部
24 前板部
24a,24a’ 切り込み
24d フラップ
25a,25a’ 左右側板部
27 ストラップ
28a 床板部補強用縁長片
28b 前板部補強用延長片
36 切り込み線
37 切り込み片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平床板部と、該床板部の周縁に起立形成され該床板部の周縁を包囲する直立壁と、上記床板部に貫設された貫通孔からなる上面開口の箱状の体液漏出防止具であって、
上記水平床板部の貫通孔にその後方側からカニューレのコネクタ部を上向きに挿入し得るように構成し、
上記貫通孔に上記コネクタ部を嵌合した状態において、上記コネクタ部の開口部が直立壁によって囲まれた当該防止具の内側に位置するように構成し、
かつ上記貫通孔の直径は、カニューレのチューブに連通するコネクタ部が上記貫通孔に嵌合し得る程度の大きさであることを特徴とする体液漏出防止具。
【請求項2】
上記体液漏出防止具の貫通孔は、上記床板部の一端部に設けられると共に、上記貫通孔近傍の上記直立壁の高さを他の直立壁の高さより低く形成したものであることを特徴とする請求項1記載の体液漏出防止具。
【請求項3】
上面開口の縦長有底箱状の体液漏出防止具であって、
当該防止具の後板部の上部に貫通孔を貫設し、
上記垂直状態の後板部の上記貫通孔にその後方側からカニューレのコネクタ部を横向きに挿入し得るように構成し、
上記貫通孔に上記コネクタ部を嵌合した状態において、上記コネクタ部の開口部が当該防止具内に位置するように構成し、
かつ上記貫通孔の直径は、カニューレのチューブに連通するコネクタ部が上記貫通孔に嵌合し得る程度の大きさであることを特徴とする体液漏出防止具。
【請求項4】
上記体液漏出防止具は、その防止具の左右上端部に、患者の首にかけるストラップを接続したものであることを特徴とする請求項3記載の体液漏出防止具。
【請求項5】
上記体液漏出防止具の後板部の下縁に当該防止具の床板部から前板部の上部に至る補強用延長片を形成し、当該延長片を上記前板部側に折り曲げることにより上記防止具の床板部と前板部に重合させたものであることを特徴とする請求項3又は4記載の体液漏出防止具。
【請求項6】
上記体液漏出防止具の前板部の一部に切り込みを設け、上記貫通孔に対応する一部を開閉し得るように構成したものであることを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の体液漏出防止具。
【請求項7】
上記体液漏出防止具は防水加工の施された紙製であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の体液漏出防止具。
【請求項8】
上記貫通孔は、円形外周縁から貫通孔中心に向かって複数の切り込み線を設けることにより複数の切り込み片を形成し、上記コネクタ部の未挿入状態では複数の上記切り込み片により閉鎖状態としたものであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の体液漏出防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−112366(P2009−112366A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285779(P2007−285779)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(507363244)新光印刷株式会社 (1)
【出願人】(507363255)
【出願人】(507363266)
【出願人】(507363277)
【Fターム(参考)】