説明

体脂肪を減らし、食欲を抑制し、脂肪酸代謝を調節するための食物および他の組成物、化合物ならびに方法

哺乳動物において体重を減らし、体脂質代謝を調節し、食物摂取を減らすための方法、医薬品、補助食品ならびにニュートラシューティカル組成物および化合物が提供される。本発明の化合物は、プロトタイプが内在性脂肪酸エタノールアミド、オレオイルエタノールアミドである脂肪酸エタノールアミド化合物、相同体および類似体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年10月16日出願の米国特許仮出願第60/512,471の恩典を主張する。
【0002】
連邦政府による援助を受けた研究開発の下で成された発明における権利に関する声明
本発明は、国立衛生研究所(National Institute of Health)によって付与された助成金交付DA12653号の下、政府援助を受けて成されたものである。政府は、本発明に一定の権利を保有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、脂肪酸エタノールアミド、それらの相同体およびそれらの類似体ならびに体脂肪を減らし、食物消費を減らし、脂質代謝を調節するための薬理学的に有効な薬剤および/または補助食品としてそれらの使用に関する。
【0004】
発明の背景
肥満は、米国および他の先進国では憂慮すべきレベルで起こっている全世界的な健康上の課題である。米国では約9700万人の成人が過体重である。そのうち4000万人が肥満である。肥満および過体重は、多くの病気の危険を大幅に増大させる。高血圧、II型糖尿病、異脂肪血症、冠動脈性心疾患、脳卒中、胆嚢疾患、変形性関節炎、睡眠時無呼吸および他の呼吸器障害、肝疾患(たとえば肝脂肪症)ならびに子宮体がん、乳がん、前立腺がんおよび大腸がんが高めの体重と関連している。また、体重が高めの人は、あらゆる原因での死亡率が高めである。国立衛生研究所によると、米国における毎年約280,000人の成人の死亡が一部には肥満に帰すことができる。
【0005】
肥満および過体重の人の場合には体重減少が望ましい。体重減少は、特に糖尿病および心血管性疾患(CVD)に関して、これら有害な結果の多くを予防するのに役立つ。体重減少はまた、過体重の高血圧および非高血圧の人の血圧、血清トリグリセリド値を下げることができ、体によい高密度リポタンパク質(HDL)形態のコレステロールを高めることができる。体重減少はさらに、一般に、総血清コレステロールおよび低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール値をいくらか下げる。また、体重減少は、過体重および肥満の人の血糖値を下げることもできる。
【0006】
体重減少は望ましいものの、それを達成することは困難である。過体重および肥満の管理ならびに体重減少の維持のための処置が数多く存在する。しかし、再発性が強い。概ね、女性の40%および男性の24%が常に積極的に体重を減らそうとしている。これらの処置は、低カロリー食および低脂肪食、運動量の増大、食物摂取を減らす方向への行動的治療、薬物治療、外科的処置ならびに上記の組み合わせを含む。
【0007】
体重減少のための薬物数は比較的乏しい。シブトラミン、デクスフェンフルラミン、オルリスタット、フェニルプロパノールアミン、フェンテラミンまたはフェンフルラミンのような薬物は、長期間使用されると、肥満成人の体重減少を促進することができる。しかし、一般に、薬物治療的体重減少剤の連用の安全性は不明である。たとえば、最近では、患者において認められる心臓弁膜症に関する懸念により、フェンフルラミンおよびデクスフェンフルラミンが市場から回収されている。手薄な薬物数ならびに肥満および過体重の蔓延に直面して、体重減少を促進し、維持するための新規な薬剤学的方法および組成物が要望されている。
【0008】
脂肪酸エタノールアミド(FAE)は、動物および植物の脂質の異例な成分であり、非刺激細胞中のそれらの濃度は一般に低い(Bachur et al., J. Biol. Chem., 240:1019-1024 (1965); Schmid et al., Chem. Phys. Lipids, 80:133-142 (1996); Chapman, K. D., Chem. Phys. Lipids, 108:22 1-229 (2000))。しかし、タバコ細胞中の真菌病原体への暴露(Chapman et al., Plant Physiol, 116:1163-1168 (1998))、ラット脳神経細胞中の神経伝達物質受容体の活性化(Di Marzo et al., Nature, 372:686-691 (1994); Giuffrida et al., Nat. Neurosci., 2:358-363 (1999))およびマウス上皮細胞中の代謝ストレス要因への暴露(Berdyshev et al., Biochem. J., 346:369-374 (2000))をはじめとする多様な生理学的および病理学的刺激に反応すると、FAEの生合成が急速に高められることができる。哺乳動物組織中の刺激依存性FAE生成の根底にある機序は、二つの同調した生化学的反応、すなわち、未知のホスホリパーゼDによって触媒される膜リン脂質N-アシルホスファチジルエタノールアミン(NAPE)の開裂ならびにカルシウムイオンおよびサイクリックAMP調整N-アシルトランスフェラーゼ(NAT)活性によって触媒されるNAPE合成を伴うと考えられている(Di Marzo et al., Nature, 372:686-691 (1994); Cadas et al., J. NeuroSci., 6:3934-3942 (1996); Cadas et al., H., J. Neurosci., 17:1226-1242 (1997))。
【0009】
植物細胞および動物細胞の両方が刺激依存的にFAEを放出するという事実は、これらの化合物が細胞間通信において重要な役割を演じるかもしれないことを示唆する。この考えのさらなる裏付けは、多価不飽和FAEであるアナンダミド(アラキドニルエタノールアミド)が、マリファナ成分Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)を認識するカンナビノイド受容体―神経細胞および免疫細胞中で発現するGタンパク質結合受容体―のための内在性配位子であるという発見(Devane et al., Science, 258:1946-1949 (1992))に由来する(たとえば参考文献(Pertwee, R. G. , Exp. Opin. Invest. Drugs, 9:1553-1571 (2000))を参照)。
【0010】
二つの観察が、他のFAEが同じくカンナビノイド神経伝達に参与するという可能性を低くする。FAEファミリーは、その大部分が、カンナビノイド受容体とは有意には相互作用しない飽和および一価不飽和種、たとえばパルミチルエタノールアミドおよびオレオイルエタノールアミドで構成されている(Devane et al., Science, 258:1946-1949 (1992); Griffin et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 292:886-894. (2000))。第二に、FAEの薬理学的性質がパルミチルエタノールアミドの場合と同様にいくらか詳細に調査されたとき、そのような性質がΔ9-THCの性質とは異なり、既知のカンナビノイド受容体サブタイプの活性化から独立しているということがわかった(Calignano et al., Nature, 394:277-281 (1998))。このように、FAEの生物学的意義は依然として理解しにくい。
【0011】
オレオイルエタノールアミド(OEA)は、内在性カンナビノイドアナンダミドの天然類似体である。アナンダミドと同様に、OEAは、細胞中で刺激依存的に産生され、酵素加水分解によって速やかに除去されて、細胞シグナル伝達における役割が示唆される。しかし、アナンダミドとは違って、OEAは、カンナビノイド受容体を活性化せず、その生物学的機能はこれまで本質的には未知である。
【0012】
肥満および過体重を処置し、体重減少を維持するためのさらなる方法および薬剤が要望されている。本発明は、オレオイルエタノールアミド(OEA)および他の脂肪酸エタノールアミド化合物(たとえばパルミチルエタノールアミドおよびエライジルエタノールアミド)が食欲、食物摂取、体重および体脂肪を減らし、脂肪代謝を変化させるという本発明者らの発見に関連して新規な方法および医薬組成物を提供することにより、この要望を満たす。
【0013】
肝脂肪症または脂肪肝は、脂肪が肝臓に蓄積する疾病であり、過食、アルコール過剰摂取、糖尿病および薬物投与の副作用によって引き起こされ、慢性肝炎および肝硬変のような重篤な疾病を招くおそれがある。
【0014】
この状態では、肝臓は、生理学的に許容可能な範囲を超える程度まで脂肪を蓄積する。一般に、脂肪肝とは、中性脂肪の蓄積おける顕著な形態学的変化が肝細胞中に認められる症例をいう。生化学的観点から、脂肪肝の判断基準は、中性脂肪の重量が肝組織の湿重量の約10%(湿重量1gあたり100mg)以上であるということである。
【0015】
規則的な食事の一部として、または一般的なビタミンもしくは他の栄養添加物と同様に補助食品の形態で消費することができる安全かつ効果的な方法および組成物が要望される。有利には、これらの食品または組成物は、体脂肪を減らす、食物摂取を減らす、または本明細書に記載する方法および組成物の有益な効果のいずれかを達成するための所望を認識して本発明の生成物を認め、選択する消費者自らによって投与される。
【0016】
発明の概要
本発明は、体脂肪を減らし、食欲を減らし、脂肪酸代謝を調節し、肝脂肪症を処置し、哺乳動物において肥満および過体重ならびにこれらの健康状態に伴う疾病を処置または予防するための化合物、組成物および方法を提供する。一つの局面で、本発明は、脂肪酸アルカノールアミド化合物、相同体または類似体を含む医薬組成物を、体脂肪もしくは体重を減らす、または体脂肪もしくは体重増を予防するのに十分な量で投与することにより、体脂肪または体重を減らし、肥満または過体重を処置または予防し、食物摂取を減らす方法を提供する。他の局面で、本発明は、脂肪酸エタノールアミド化合物、相同体、類似体およびそれらの医薬組成物ならびにそのような使用方法に関する。
【0017】
他の態様で、脂肪酸アルカノールアミドもしくはエタノールアミド化合物、相同体または類似体の脂肪酸部分は、飽和であっても不飽和であってもよく、不飽和であるならば、一価不飽和または多価不飽和であることができる。
【0018】
いくつかの態様では、脂肪酸アルカノールアミド化合物、相同体または類似体の脂肪酸部分は、オレイン酸、パルミチン酸、エライジン酸、パルミトオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびγ-リノレン酸からなる群より選択される脂肪酸である。特定の態様では、脂肪酸部分は炭素原子12〜20個を有する。
【0019】
脂肪酸アミド化合物、相同体または類似体のヒドロキシアルキルアミド部分を変えることにより、他の態様が提供される。これらの態様は、置換または非置換の低級(C1〜C3)アルキル基をアルカノールアミドまたはエタノールアミド部分のヒドロキシル基に導入して、対応する低級アルキルエーテルを形成することを含む。もう一つの態様では、アルカノールアミドまたはエタノールアミド部分のヒドロキシル基が置換または非置換のC2〜C6アルキルカルボン酸のカルボキシル基と結合して、脂肪酸エタノールアミドの対応するエステルを形成する。このような態様は、有機カルボン酸、たとえば酢酸、プロピオン酸およびブタン酸にエステル結合した脂肪酸アルカノールアミドおよび脂肪酸エタノールアミドを含む。一つの態様では、脂肪酸アルカノールアミドはオレオイルアルカノールアミドである。さらなる態様では、脂肪酸アルカノールアミドはオレオイルエタノールアミドである。
【0020】
さらに別の態様では、脂肪酸エタノールアミド化合物、相同体または類似体は、脂肪酸エタノールアミドの窒素原子に共有結合した置換または非置換の低級(C1〜C3)アルキル基をさらに含む。
【0021】
もう一つの態様で、本発明は、薬学的に許容される添加物および式

を有する化合物またはその薬剤学的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0022】
この式中、nは0〜5であり、aとbの和は0〜4であることができる。Zは、-C(O)N(R0)-; -(R0)NC(O)-; -OC(O)-; -(O)CO-; O; NR0; およびSから選択される要素であり、R0およびR2は、非置換または非置換のアルキル、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換の低級(C1〜C6)アシル、ホモアルキルおよびアリールからなる群より独立して選択される。また、化合物の脂肪酸部分およびエタノールアミン部分のいずれかまたは両方の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。加えて、炭素cおよびdの間の分子結合は、不飽和であっても飽和であってもよい。いくつかの態様では、上記式の脂肪酸エタノールアミドは、天然に存在する化合物である。
【0023】
本発明の他の態様では、方法および組成物は、体重を減らすために脂肪酸エタノールアミドおよび脂肪酸アルカノールアミド化合物、相同体ならびに類似体を使用し、それらの化合物、相同体および類似体が、実験動物(たとえばラット、マウス、ウサギ、ハムスター、モルモット)に投与されると、体重減少を生じさせる。
【0024】
さらに他の局面では、本発明は、アリールチアゾリジンジオン化合物ならびにヘテロアリールおよびアリールオキシ酢酸系化合物を使用して体脂肪、体重および食欲を減らす方法に関する。
【0025】
本発明のさらに他の局面は、哺乳動物(たとえばヒト、ネコまたはイヌ)において体重を減らす、または食欲を減らす、または食物摂取を減らす、または摂食低下を生じさせるために当該化合物および組成物を使用し、投与する方法に関する。当該組成物は、経口をはじめとする多様な経路で投与することができる。
【0026】
本発明の他の局面は、脂肪酸アルカノールアミドと摂取可能な物質、たとえば人間が消費する食品、動物の餌との組み合わせ、脂肪酸アルカノールアミドの濃度を高めた改変食品、ニュートラシューティカルならびに上記組成物を消費することによって体重減少、体重増の減少および肥満度の変化(たとえば、総体脂肪の減少、体脂肪率の減少、皮下脂肪の減少)を達成する方法を含む。
【0027】
本発明のもう一つの局面で、本発明の組成物および方法は、特に肝脂肪症をはじめとする肝疾患を処置するために処方され、投与される。本発明の脂肪酸アルカノールアミドの有効量が投与されると、これらの組成物および方法は、肝脂肪蓄積を抑制し、蓄積肝脂肪のレベルを低下させる。この局面で、FAEは、食品添加物もしくは成分または医薬品もしくは栄養補助食品として有効成分であることができる。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、OEAおよび他の脂肪酸アルカノールアミド化合物が、食物摂取、体重および体脂肪を減らし、脂肪酸酸化を調節するという驚くべき発見に関する。哺乳動物においてこれまで知られていなかった生物学的機能を有する天然の脂質であるオレオイルエタノールアミド(OEA)が、実験動物に投与された場合、強力な体脂肪減少性および体重抑制性化合物になるということが思いがけなく見いだされた。参照により全体が本明細書に組み入れられる、同一出願人による、2001年3月27日出願の米国特許出願第60/279,542号は、哺乳動物において体脂肪および食欲を減らすことができる薬剤としてOEAおよびOEA様化合物を開示している。
【0029】
プロトタイプOEAの発見により、他の脂肪酸アルカノールアミド化合物および相同体もまた有効であることがわかった。
【0030】
OEAは、肥満を処置し、体重減少を誘発し、食欲または食物摂取を減らすための他の脂肪酸アルカノールアミド化合物様脂肪減少性化合物の開発におけるモデルとして働くことができる。本発明は、以下に開示するそのような他の化合物を提供する。
【0031】
OEA投与が食欲、食物摂取および体重を減らすように働くという発見を使用して、他の脂肪酸アルカノールアミド、相同体および類似体を体重および食欲抑制剤として特定することができる。本発明はそのような薬剤を提供する。
【0032】
定義
本明細書で使用する略号は、化学および生物学の技術分野で一般的な意味を有する。
【0033】
置換基がそれらの通常の化学式によって左から右に書かれて指定されている場合、その構造を右から左に書いた場合に得られるであろう化学的に同一の置換基をも等しく包含する。たとえば、-CH2O-は-OCH2-をも意味する。
【0034】
医薬組成物におけるような用語「組成物」は、有効成分と、担体を構成する不活性成分とを含む産物および二つ以上の成分の組み合わせ、複合化もしくは凝集から、または一つまたは複数の成分の解離から、または一つまたは複数の成分の他のタイプの反応もしくは相互作用から直接的または間接的に生じる任意の産物を包含することを意図する。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬剤学的に許容される担体とを添加混合することによって製造される任意の組成物を包含する。用語「医薬組成物」は、動物またはヒトをはじめとする対象における薬学的使用に適した組成物を指す。医薬組成物は一般に、有効量の有効成分および薬剤学的に許容される担体を含む。
【0035】
本発明の化合物は、一つまたは複数の非対称中心を含むことができ、したがって、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単独の鏡像異性体、ジアステレオ異性体混合物および独立したジアステレオ異性体として存在することができる。本発明は、本発明化合物のそのような異性体形態すべてを包含することを意図する。
【0036】
本明細書に記載する化合物のいくつかは、オレフィン二重結合を含み、断りない限り、EおよびZ両方の幾何異性体を含むことを意図する。
【0037】
本明細書に記載する化合物のいくつかは、互変異性体と呼ばれる、異なる水素結合点を有するものとして存在することができる。このような例は、ケト-エノール互変異性体として知られる、ケトンおよびそのエノール形であることができる。個々の互変異性体およびそれらの混合物が本発明の式によって包含される。
【0038】
本発明の化合物は、鏡像異性体対のジアステレオ異性体を含む。ジアステレオ異性体は、たとえば、適当な溶剤、たとえばメタノールもしくは酢酸エチルまたはそれらの混合物から分別晶出によって得ることができる。こうして得られた鏡像異性体対は、従来の手段、たとえば光学活性の酸を分割剤として使用することによって個々の立体異性体に分割することができる。
【0039】
または、本発明化合物の鏡像異性体は、既知の配置の光学的に高純度の出発原料または試薬を使用する立体特異的合成によって得ることもできる。
【0040】
本明細書で使用する用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)を含むことを意図する。
【0041】
本明細書で使用する「アルカノール」は、ヒドロキシル置換基またはヒドロキシル部分から誘導可能な基、たとえばエーテル、エステルを有する、飽和または不飽和の、置換または非置換の、分岐状または非分岐状のアルキル基をいう。アルカノールはまた、好ましくは、「脂肪酸」とアルカノールとの間の結合Z(式I)に含まれる窒素、硫黄または酸素担持置換基で置換されている。
【0042】
本明細書で使用する「脂肪酸」は、カルボキシル置換基を有する飽和または不飽和の、置換または非置換の、分岐状または非分岐状のアルキル基をいう。好ましい脂肪酸はC4〜C22酸である。脂肪酸はまた、カルボキシル置換基が-CH2-部分で置換されている種を包含する。
【0043】
用語「アルキル」は、それだけで、または別の置換基の一部として、断りない限り、完全飽和、一価または多価不飽和であることができる直鎖状または分岐鎖状または環式の炭化水素基またはその組み合わせをいい、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C1〜C10は炭素1〜10個を意味する)二価および多価の基を含むことができる。飽和炭化水素基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、たとえばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの相同体および異性体を含むが、これらに限定されない。不飽和アルキル基は、一つまたは複数の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例は、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニルならびにより高級な相同体および異性体を含むが、これらに限定されない。用語「アルキル」はまた、断りない限り、以下さらに詳細に定義するアルキルの誘導体、たとえば「ヘテロアルキル」を含むことを意図する。炭化水素基に限定されるアルキル基は「ホモアルキル」と呼ばれる。
【0044】
用語「アルキレン」は、それだけで、または別の置換基の一部として、-CH2CH2CH2CH2-によって例示されるが、これに限定されない、アルカンから誘導される二価の基をいい、さらに、「ヘテロアルキレン」として以下に記す基を含む。通常、アルキル(またはアルキレン)基は、炭素原子1〜24個を有し、炭素原子10個以下の基が本発明では好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般には炭素原子8個以下の短鎖アルキルまたはアルキレン基である。
【0045】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)は、それらの通常の意味で使用され、酸素原子、アミノ基または硫黄原子を介して分子の残りに結合したアルキル基をいう。
【0046】
用語「ヘテロアルキル」は、それだけで、または別の語と組み合わさって、断りない限り、述べた数の炭素原子ならびにO、N、SiおよびSからなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなり、窒素および硫黄原子が酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子が第四級化されていてもよい、安定な直鎖もしくは分岐鎖または環式炭化水素基またはそれらの組み合わせをいう。ヘテロ原子O、N、SおよびSiは、ヘテロアルキル基のいかなる内部位置に位置してもよく、またはアルキル基が分子の残りに結合する位置に位置してもよい。例は、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、および-CH=CH-N(CH3)-CH3を含むが、これらに限定されない。ヘテロ原子2個までが連続している、たとえば-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3であってもよい。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それだけで、または別の置換基の一部として、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって例示されるが、これに限定されない、ヘテロアルキルから誘導される二価の基をいう。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子はまた、鎖末端のいずれかまたは両方を占有することができる(たとえば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基の場合、連結基の方向が、連結基が書かれる式における方向によって暗示されるわけではない。たとえば、式-C(O)2R'-は、-C(O)2R'-および-R'C(O)2-の両方を表す。
【0047】
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それだけで、または別の語と組み合わさって、断りない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環式形態を表す。さらには、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りに結合する位置を占有することができる。シクロアルキルの例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどを含むが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例は、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0048】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、それだけで、または別の置換基の一部として、断りない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子をいう。さらには、「ハロアルキル」のような用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。たとえば、用語「ハロ(C1〜C4)アルキル」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意味するが、これらに限定されない。
【0049】
用語「アリール」は、断りない限り、1個の環であってもよく、縮合または共有結合した多数の環(好ましくは1〜3個の環)であってもよく、多価不飽和芳香族炭化水素置換基をいう。用語「ヘテロアリール」は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子1〜4個を含み、窒素および硫黄原子が酸化されていてもよく、窒素原子が第四級化されていてもよいアリール基(または環)をいう。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残り部分に結合していることができる。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的な例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソキサゾリル、4-イソキサゾリル、5-イソキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリルおよび6-キノリルを含む。上記アリールおよびヘテロアリール環系それぞれの置換基は、以下に記す許容される置換の群から選択される。
【0050】
簡潔にいうと、用語「アリール」は、先に定義したアリールおよびヘテロアリール環の両方を含む。したがって、用語「アリールアルキル」は、アリール基が、炭素原子(たとえばメチレン基)がたとえば酸素原子によって置換されているアルキル基(たとえばフェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)を含むアルキル基に結合している基(たとえばベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことを意図する。
【0051】
上記用語(たとえば「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)それぞれは、指示された基の置換形態および非置換形態の両方を含むことを意図する。各タイプの基に好ましい置換基を以下に記す。
【0052】
アルキルおよびヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルと呼ばれることが多い基を含む)の置換基は、0〜(2m'+1)(m'は、そのような基における炭素原子の総数である)の範囲の数で、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R"、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O) R'、-CO2R', -CONR'R''、-OC(O)NR'R'', -NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R'')=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CNおよび-NO2から選択されるが、これらに限定されない多様な基の一つまたは複数であることができる。R'、R''、R'''およびR''''は、好ましくはそれぞれ独立して、水素、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール、たとえばハロゲン1〜3個で置換されているアリール、置換または非置換のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基またはアリールアルキル基を指す。本発明の化合物がR基2個以上を含む場合、たとえば、R基それぞれは、R'、R''、R'''およびR''''が2個以上存在する場合と同様、独立して選択される。R'およびR''が同じ窒素原子に結合している場合、その窒素原子と組み合わさって五、六または七員環を形成することができる。たとえば、-NR'R''は、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことを意図するが、これらに限定されない。置換基の上記考察から、当業者は、用語「アルキル」が、水素以外の基、たとえばハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)およびアシル(たとえば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3など)に結合した炭素原子を含む基を含むことを意図するということを理解するであろう。
【0053】
アルキル基に関して記載した置換基と同様に、アリールおよびヘテロアリール基の置換基は様々であり、0〜芳香環系の開環原子価の総数の範囲の数で、たとえばハロゲン、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R'', -SR'、-ハロゲン、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R''、-NR''C(O)2R'、-NR-C(NR'R''R''')=NR''''、-NR-C(NR'R")=NR'''、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R''、-NRSO2R'、-CNおよび-NO2、-R'、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1〜C4)アルコキシおよびフルオロ(C1〜C4)アルキルから選択され、R'、R''、R'''およびR''''は、好ましくは独立して、水素、(C1〜C8)アルキルおよびヘテロアルキル、非置換のアリールおよびヘテロアリール、(非置換アリール)-(C1〜C4)アルキルおよび(非置換アリール)オキシ-(C1〜C4)アルキルより選択される。本発明の化合物がR基2個以上を含む場合、たとえば、R基それぞれは、R'、R''、R'''およびR''''が2個以上存在する場合と同様、独立して選択される。
【0054】
用語「体脂肪減少」は、体脂肪の一部の損失をいう。
【0055】
体重指数(BMI)の式は[体重(ポンド単位)÷身長(インチ単位)÷身長(インチ単位)]×703である。成人のBMIカットポイントは、年齢および性別にかかわらず、以下のガイドラインを使用した一つの固定数である。過体重の成人は、BMIが25.0〜29.9である。肥満の成人は、BMIが30.0以上である。やせすぎの成人は、BMIが18.5未満である。成人の場合の正常な体重範囲は、BMIが18.5〜25の間と定義されている。16歳未満の子供のBMIカットポイントは、パーセンタイルにしたがって定義される。過体重は、85パーセンタイル以上の年齢BMIと定義され、肥満は、95パーセンタイル以上の年齢BMIと定義される。やせすぎは、5パーセンタイル未満の年齢BMIである。子供の場合の正常な体重範囲は、5パーセンタイル超かつ85パーセンタイル未満のBMIと定義されている。
【0056】
用語「脂肪酸酸化」は、脂肪酸(たとえばオレイン酸)のケトン体への転換をいう。
【0057】
用語「肝細胞」は、肝組織に由来する細胞をいう。肝細胞は、肝組織から単離されたままのものであってもよいし、樹立細胞株であってもよい。
【0058】
用語「調節」は、増減をはじめとするなんらかの変化を導くことをいう(たとえば、脂肪酸酸化の調節因子は、脂肪酸化の速度を増減させる)。
【0059】
用語「筋細胞」は、筋肉組織の主要な細胞に由来する細胞をいう。筋細胞は、筋組織から単離されたままのものであってもよいし、樹立細胞株であってもよい。
【0060】
用語「肥満」は、体重指数によって計測して理想体重を20%超える体重を指す。
【0061】
肝脂肪症または脂肪肝は、脂肪が肝臓に蓄積する疾病である。肝脂肪症は、過食、アルコール過剰摂取、糖尿病および薬物投与の副作用によって引き起こされ、慢性肝炎および肝硬変のような重篤な疾病を招くおそれがある。この状態では、肝臓は一般に、生理学的に許容可能な範囲を超える程度まで脂肪を蓄積する。一般に、脂肪肝とは、中性脂肪の蓄積における顕著な形態的変化が肝細胞中に認められる症例をいう。生化学的観点から、脂肪肝の判断基準は、中性脂肪の重量が肝組織の湿重量の約10%(湿重量1gあたり100mg)以上であるということである。
【0062】
オレオイルエタノールアミド(OEA)は、以下の構造の天然脂質をいう。

【0063】
本明細書の式中、「Me」はメチル基を表す。
【0064】
用語「体重減少」は、総体重の一部の損失をいう。
【0065】
用語「薬学的に許容される担体」は、リン酸緩衝食塩溶液、水およびエマルション(たとえば油/水または水/油エマルション)ならびに様々な湿潤剤および/または添加物を含む標準的な薬学的担体、緩衝剤および賦形剤を包含する。適当な薬学的担体およびそれらの処方は、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Publishing Co., Easton, 19th ed. 1995)に記載されている。好ましい薬学的担体は、有効薬剤の所期の投与形態に依存する。一般的な投与形態を以下に記す。
【0066】
用語「有効量」は、所望の結果を出すのに十分な服用量をいう。所望の結果は、投薬のレシピエントにおける自覚的または客観的改善を含むことができる。自覚的改善は、食欲または食物に対する欲求の減退であることができる。客観的改善は、体重、体脂肪もしくは食物の減少、食物消費の減少または食物探求行動の減少であることができる。
【0067】
「予防的処置」とは、疾病の症候を示さない、または疾病の早期的症候しか示さない対象に対して施される処置であって、体重または体脂肪の増加に伴う病状を発する危険を減らすために施される処置である。本発明の化合物は、望ましくない、または不要な体重増を防ぐための予防的処置として与えることもできる。
【0068】
「治療的処置」とは、病状の症候を示す対象に対して施される処置であって、そのような病的症候を軽減または解消するために施される処置である。
【0069】
補助食品とは、食事を補足するための「食事成分」を含有する経口摂取製品である。このような製品における「食事成分」は、ビタミン、ミネラル、ハーブまたは他の植物成分、アミノ酸ならびに酵素、器官組織、腺組織および代謝産物のような物質を含むことができる。補助食品はまた、抽出物または濃縮物であることもでき、多くの剤形、たとえば錠剤、ソフトカプセル、ジェルキャップ、液体または粉末で見いだすことができる。これらはまた、他の形態、たとえばバー、クッキー、クラッカーまたはウエハースの形態であることもできる。
【0070】
ニュートラシューティカルとは、重要な栄養素の総食事摂取量を増大させることによって食事を補足する天然産物である。この定義は、栄養補助食品、たとえばビタミン、ミネラル、植物抽出物、抗酸化物質、アミノ酸およびタンパク質補助食品を含む。
【0071】
栄養素に関して、一般に、「無」、「低」および「減/少」は以下の意味を有する:

【0072】
食品のカロリー含有量に関して、以下の語は以下の意味を有する:

【0073】
食品の脂肪含有量に関して、以下の語は以下の意味を有する:

【0074】
食品の飽和脂肪含有量に関して、以下の語は以下の意味を有する:

基準食品は「低飽和脂肪」であってはならない
【0075】
食品のコレステロール含有量に関して、以下の語は以下の意味を有する:

【0076】
砂糖に関して、以下の語は以下の意味を有する:

注記:*成分詳細情報開示書に掲載された成分が、脚注を参照する星印を有する場合を除く(たとえば、「*は、取るに足らない量の脂肪を加える」)。
・「基準量」=通常に消費される基準量。
・「小さな基準量」=30g以下または大さじ2杯以下の基準量(通常は水または基準量あたりすべての栄養素の、21 CFR 101.9(f)(1)に定義するわずかな量を含有する希釈剤で戻して消費される乾燥食品の場合、50gあたり規準は食品の調製形態を指す)。
【0077】
レベルが、基準量あたり、ラベル表示一人分あたり、または、小さな基準量の食品の場合、50gあたり、脂肪13g、飽和脂肪4g、コレステロール60mgおよびナトリウム480mgを超える場合、主張の一部として開示説明書が必要である(たとえば、所定レベルを超える栄養素を記入される空白のある「成分含有情報」を参照)。
【0078】
用語「体重を抑制する」は、時間的な体重の損失または体重増の減少を包含する。
【0079】
本発明の方法、化合物および組成物は、一般に、哺乳動物において体脂肪および体重を減少または抑制するのに有用である。たとえば、本発明の方法、組成物および化合物は、哺乳動物において食欲を減らす、または摂食低下を誘発するのに役立つ。方法、化合物および組成物はまた、体脂肪および体重の減少を促進することにより、過体重または肥満に伴う疾病を予防または緩和するのに有用である。
【0080】
本発明の方法、組成物および化合物は、脂質代謝、特に脂肪および脂肪酸異化作用の調節因子を含む。
【0081】
本発明の化合物
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有することができ、ラセミ化合物、ジアステレオ異性体、幾何異性体および個々の異性体がすべて本発明の範囲に包含される。
【0082】
本発明のこのような化合物は、たとえば、適当な溶剤、たとえばメタノールもしくは酢酸エチルまたはそれらの混合物から分別晶出によって鏡像異性体のジアステレオ異性体対に分割することができる。こうして得られた鏡像異性体対は、従来の手段、たとえば光学活性の酸を分割剤として使用することによって個々の立体異性体に分割することができる。
【0083】
または、本発明のこのような化合物の任意の鏡像異性体は、既知の配置の光学的に高純度の出発原料を使用する立体特異的合成によって得ることもできる。
【0084】
本発明の化合物は、それらの原子の一つまたは複数における原子同位体の不自然な比率を有することができる。たとえば、化合物は、トリチウムまたは炭素14のような同位体で放射標識することができる。本発明の化合物のすべての同位体変種が、放射性であるかどうかにかかわらず、本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
本化合物は、それらの薬剤学的に許容される酸付加塩、たとえば、無機酸および有機酸を使用して誘導された塩の形態で単離することもできる。そのような酸は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸などを含むことができる。加えて、酸性官能基を含む特定の化合物は、対イオンがナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどおよび有機塩基から選択されることができるそれらの無機塩の形態にあることができる。用語「薬剤学的に許容される塩」は、無機塩基または酸および有機塩基または酸をはじめとする薬剤学的に許容される非毒性塩基または酸から調製される塩をいう。
【0086】
本発明はまた、投与されると代謝過程によって化学的転換を受けたのち有効な薬理学的物質になる、本化合物のプロドラッグを包含する。一般に、そのようなプロドラッグは、インビボで本発明の機能性化合物へと容易に転換可能である、本化合物の誘導体である。適当なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来法は、たとえば、「Design of Prodrugs」, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。本発明はまた、本化合物の活性代謝産物を包含する。
【0087】
A. 脂肪酸アルカノールアミド化合物、相同体および類似体
本発明の化合物は、脂肪酸エタノールアミド化合物をはじめとする体脂肪減少性脂肪酸アルカノールアミド化合物ならびにそれらの相同体および脂肪酸アルカノールアミド化合物の特定の類似体を含む。そのような化合物は、実験動物に投与された場合、インビボで食欲、食物摂取および/または体重もしくは体脂肪の減少を生じさせる能力に関して特定し、定義することができる。
【0088】
したがって、多様なそのような脂肪酸アルカノールアミド、相同体および類似体が考えられる。本発明の化合物は、本出願と同一出願人による、参照により全体が具体的に本明細書に組み入れられる、2003年7月2日出願の米国特許出願第60/485,062号に記載されている化合物を含む。本発明の化合物は、以下の一般式の化合物を含む。

【0089】
この式では、nは0〜5であり、aとbの和は0〜4であることができる。Zは、-C(O)N(R0)-; -(R0)NC(O)-; -OC(O)-; -(O)CO-; O ; NR0; 及びSから選択される要素であり、ここでR0およびR2は、非置換または非置換のアルキル、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換の低級(C1〜C6)アシル、ホモアルキルおよびアリールからなる群より独立して選択される。また、化合物の脂肪酸部分およびアルカノールアミン(たとえばエタノールアミン)部分のいずれかまたは両方の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。加えて、炭素cおよびdの間の分子結合は、不飽和であっても飽和であってもよい。いくつかの態様では、上記式の脂肪酸エタノールアミドは、天然に存在する化合物である。
【0090】
本発明の化合物はまた、以下の式の化合物を含む。

【0091】
一つの態様では、式Iaの化合物は、0〜5であるnおよび0〜4であるaとbの和ならびに水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換の低級(C1〜C6)アシル、ホモアルキルおよび置換または非置換のアリールからなる群より独立して選択される要素R1およびR2を有する。この態様では、上記式の化合物の脂肪酸部分およびアルカノールアミン(たとえばエタノールアミン)部分の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。加えて、炭素cおよびdの間の分子結合は、不飽和であっても飽和であってもよい。アシル基を有するいくつかの態様では、アシル基は、プロピオン酸、酢酸または酪酸であってもよく、R2としてエステル結合を介して結合していてもよいし、R1としてアミド結合を介して結合していてもよい。
【0092】
もう一つの態様では、上記化合物は、脂肪酸部分がオレイン酸、エライジン酸またはパルミチン酸を含む化合物を特に含む。そのような化合物は、オレオイルエタノールアミド、エライジルエタノールアミドおよびパルミチルエタノールアミドを含む。

【0093】
もう一つの態様では、式Iaの化合物は、1〜3であるnおよび1〜3であるaとbの和ならびに水素、置換または非置換のC1〜C6アルキルおよび置換または非置換の低級(C1〜C6)アシルからなる群より独立して選択される要素R1およびR2を有する。この態様では、上記式の化合物の脂肪酸部分およびアルカノールアミン(たとえばエタノールアミン)部分の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。加えて、炭素cおよびdの間の分子結合は、不飽和であっても飽和であってもよい。さらなる態様では、炭素cおよびdの間の分子結合は不飽和であり、他の水素原子は置換されていない。なおさらなるその態様では、要素R1およびR2は、水素、置換または非置換のC1〜C3アルキルおよび置換または非置換の低級(C1〜C3)アシルからなる群より独立して選択される。
【0094】
例示的な化合物は、式Iaの、エタノールアミドをはじめとする、モノメチル置換化合物を提供する。そのような化合物は以下を含む。

【0095】
メチルで置換されている上記式の化合物は、特に、R1およびR2がいずれもHである化合物、すなわち(R)1'-メチルオレオイルエタノールアミド、S(1')-メチルオレオイルエタノールアミド、(R)2'-メチルオレオイルエタノールアミド、S(2')-メチルオレオイルエタノールアミド、(R)1-メチルオレオイルエタノールアミドおよびS(1)-メチルオレオイルエタノールアミドを含む。
【0096】
逆OEA様化合物
本発明の化合物はまた、OEAの多様な類似体を含む。これらの化合物は、以下の一般式の逆OEA化合物を含む。

【0097】
いくつかの態様では、本発明は、式IIの化合物を提供する。式IIの例示的な化合物は、1〜5のnおよび0〜4のaとbの和を有する。この態様では、要素R2は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換の低級(C1〜C6)アシル、ホモアルキルおよびアリールからなる群より選択される。加えて、上記式の化合物の脂肪酸部分およびアルカノールアミン(たとえばエタノールアミン)部分のいずれかまたは両方の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。
【0098】
式IIの例示的な化合物は、アルカノールアミン部分がエタノールアミンである化合物、R2がHである化合物ならびにaおよびbがそれぞれ1である化合物ならびにnが1である化合物を含む。
【0099】
式IIの化合物の一つの態様は以下である。

【0100】
もう一つの態様では、式IIの化合物は、1〜5のnおよび1〜3のaとbの和を有する。この態様では、要素R2は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキルおよび置換または非置換の低級(C1〜C6)アシルからなる群より選択される。加えて、上記式の化合物の脂肪酸部分およびアルカノールアミン(たとえばエタノールアミン)部分のいずれかまたは両方の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。
【0101】
オレオイルアルカノールエステル化合物
本発明の化合物はまた、以下の一般式のオレオイルアルカノールエステルを含む。

【0102】
いくつかの態様では、式IIIの化合物は、1〜5のnおよび0〜4のaとbの和を有する。要素R2は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、低級(C1〜C6)アシル、ホモアルキルおよびアリールからなる群より選択される。また、上記式の化合物の脂肪酸部分およびアルカノール(たとえばエタノール)部分のいずれかまたは両方の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。
【0103】
いくつかの態様では、式IIIの化合物は、1〜3のnおよび1〜3のaとbの和を有する。要素R2は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキルおよび置換または非置換の低級(C1〜C6)アシルからなる群より選択される。また、上記式の化合物の脂肪酸部分およびアルカノール(たとえばエタノール)部分の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。
【0104】
式IIIの化合物は、R2がHである化合物、aおよびbがそれぞれ1である化合物ならびにnが1である化合物を含む。式IIIの化合物の例はオレオイルジエタノールエステルを含む。

【0105】
また、式IIIの化合物は、モノメチル置換オレオイルエタノールエステル、たとえば、それぞれ以下に示す(RまたはS)-2'-メチルオレオイルエタノールエステル、(RまたはS)-1'-メチルオレオイルエタノールエステルおよび(RまたはS)-1'-メチルオレオイルエタノールエステルを含む。

【0106】
オレオイルアルカノールエーテル
本発明の化合物はまた、以下の一般式のオレオイルアルカノールエーテルを含む。

【0107】
いくつかの態様では、式IVの化合物は、1〜5のnおよび0〜4であることができるaとbの和を有する。要素R2は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキル、置換または非置換の低級(C1〜C6)アシル、アルキルならびに置換および非置換のアリールからなる群より選択される。また、上記式の化合物の脂肪酸部分およびアルカノール(たとえばエタノール)部分のいずれかまたは両方の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。
【0108】
他の態様では、式IVの化合物は1〜3のnを有し、aとbの和は1〜3であることができる。要素R2は、水素、置換または非置換のC1〜C6アルキルおよび置換または非置換の低級(C1〜C6)アシルからなる群より選択される。また、上記式の化合物の脂肪酸部分およびアルカノール(たとえばエタノール)部分のいずれかまたは両方の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。
【0109】
式IVの化合物は、R2がHである化合物、aおよびbがそれぞれ1である化合物ならびにnが1である化合物を含む。式IVの化合物の例は、以下の(RまたはS)1'-オレオイルエタノールエーテルおよび(RまたはS)-2'-オレオイルエタノールエーテルを含む。

【0110】
極性の頭部変異形を有する脂肪酸アルカノールアミド類似体
本発明の化合物はまた、OEAの多様な極性頭部類似体を含む。これらの化合物は、以下の一般式の脂肪酸部分を有する化合物を含む。

【0111】
いくつかの態様では、式Vの化合物は、0〜4であることができるaとbの和を有する。他の態様では、aとbの和は1〜3である。また、これらの態様では、上記式の化合物の水素原子4個までがメチルまたは二重結合によって置換されていてもよい。加えて、炭素cおよびdの間の分子結合は、不飽和であってもよいし、飽和であってもよい。特に好ましい態様は、以下のオレイン酸脂肪酸部分の態様である。

【0112】
上記構造のR3基は、以下のいずれかから選択することができる。
【0113】
HO-(CH2)z-NH-(式中、zは1〜5であり、そのアルキル部分は非分岐メチレン鎖である)。たとえば

【0114】
H2N-(CH2)z-NH-(式中、zは1〜5であり、そのアルキル部分は非分岐メチレン鎖である)。たとえば

【0115】
HO-(CH2x-NH-(式中、xは1〜8であり、そのアルキル部分は分岐状または環式である)。たとえば

【0116】
R3のためのさらなる極性頭部基は、たとえば、フラン、ジヒドロフランおよびテトラヒドロフラン官能基を有する化合物を含む。

【0117】
上記構造の化合物中、zは1〜5であることができる。
【0118】
本発明の化合物は、たとえば、ピロール、ピロリジンおよびピロリン環に基づくR3極性頭部基を有する化合物を含む。

【0119】
上記構造の化合物中、zは1〜5であることができる。
【0120】
他の例示的な極性頭部基は、多様なイミダゾールおよびオキサゾール、たとえば以下を含む。

【0121】
上記構造の化合物中、zは1〜5であることができる。
【0122】
また、以下のオキサゾルピリジン極性頭部基が例示的である。

【0123】
非極性の尾部変異形を有する脂肪酸アルカノールアミド類似体
本発明の化合物は、多様なフレキシブルな非極性尾部を有する多様なアルカノールアミドおよびエタノールアミド化合物を含む。これらの化合物は、Rがエタノールアミン部分、アルカノールアミン部分またはそれらの安定な類似体を表す以下の式の化合物を含む。エタノールアミンの場合、エタノールアミン部分は、好ましくは、エタノールアミン酸素ではなくエタノールアミン窒素を介して結合している。


【0124】
上記構造中、mは1〜9であり、pは独立して1〜5である。
【0125】
例示的な化合物は以下の化合物である。

【0126】
もう一つの例示的な化合物は、以下の構造式の非極性尾部を有するエタノールアミン類似体である。

【0127】
例示的な化合物は、脂肪酸アルカノールアミドの類似体を含む。このような類似体は、米国特許第6,200,998号(参照により本明細書に組み入れられる)で教示されている化合物を含む。この参考文献は、以下の一般式の化合物を教示している。

【0128】
上記式中、米国特許第6,200,998号で定義されているように、Ar1は、(1)アリーレンまたは(2)ヘテロアリーレンであり、アリーレンおよびヘテロアリーレンは、Raから選択される基1〜4個で置換されていてもよく、Ar2は、(1)オルト置換アリールまたは(2)オルト置換ヘテロアリールであり、該オルト置換基はRから選択され、アリールおよびヘテロアリールは、Raから独立して選択される基1〜4個でさらに置換されていてもよく、XおよびYは、独立して、O、S、N-RbまたはCH2であり、ZはOまたはSであり、nは0〜3であり、Rは、(1)ハロおよびC3-6シクロアルキルから選択される基1〜4個で置換されていてもよいC3-10アルキル、(2)C3-10アルケニルまたは(3)C3-8シクロアルキルであり、Raは、(1)C1-15アルカノイル、(2)C1-15アルキル、(3)C2-15アルケニル、(4)C2-15アルキニル、(5)ハロ、(6)ORb、(7)アリールまたは(8)ヘテロアリールであり、該アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルカノイルは、Rcから選択される基1〜5個で置換されていてもよく、該アリールおよびヘテロアリールは、Rdから選択される基1〜5個で置換されていてもよく、Rbは、(1)水素、(2)C1-10アルキル、(3)C2-10アルケニル、(4)C2-10アルキニル、(5)アリール、(6)ヘテロアリール、(7)アリールC1-15アルキル、(8)ヘテロアリールC1-15アルキル、(9)C1-15アルカノイル、(10)C3-8シクロアルキルであり、アルキル、アルケニル、アルキニルは、Rcから独立して選択される置換基1〜4個で置換されていてもよく、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、Rdから独立して選択される置換1〜4個で置換されていてもよく、あるいは、Rcは、(1)ハロ、(2)アリール、(3)ヘテロアリール、(4)CN、(5)NO2、(6)ORf、(7)S(O)mRf(m=0、1または2)(ただし、mが1または2であるとき、RfはHでない)、(8)NRfRf、(9)NRfCORf、(10)NRfCO2 Rf、(11)NRfCON(Rf)2、(12)NRf SO2 Rf(ただし、RfはHではない)、(13)CORf、(14)CO2Rf、(15)CON(Rf)2、(16)SO2 N(Rf)2、(17)OCON(Rf)2、または(18)C3-8 シクロアルキル、ここで該シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、ハロまたはC1-6アルキルの基1〜3個で置換されていてもよく、Rdは、(1)Rcから選択される基、(2)C1-10アルキル、(3)C2-10アルケニル、(4)C2-10アルキニル、(5)アリールC1-10アルキルまたは(6)ヘテロアリールC1-10アルキルであり、ここでアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールは、Reから独立して選択される基で置換されていてもよく、Reは、(1)ハロゲン、(2)アミノ、(3)カルボキシ、(4)C1-4アルキル、(5)C1-4アルコキシ、(6)ヒドロキシ、(7)アリール、(8)アリールC1-4アルキルまたは(9)アリールオキシであり、Rfは、(1)水素、(2)C1-10アルキル、(3)C2-10アルケニル、(4)C2-10アルキニル、(5)アリール、(6)ヘテロアリール、(7)アリールC1-15アルキル、(8)ヘテロアリールC1-15アルキル、(9)C1-15アルカノイル、(10)C3-8シクロアルキルであり、ここでアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルカノイルおよびシクロアルキルは、Reから選択される基1〜4個で置換されていてもよい。
【0129】
同じく好ましいものは、米国特許第5,859,051号で教示されている類似体である。これらの類似体は、以下の一般式を有する:

【0130】
式VIIの態様中、米国特許第5,859,051号で定義されているように、R1は、H、C1-6アルキル、C5-10アリールおよびC5-10ヘテロアリールからなる群より選択され、該アルキル、アリールおよびヘテロアリールは、Raの基1〜3個で置換されていてもよく、R1は、H、C1-15アルキル、C2-15アルケニル、C2-15アルキニルおよびC3-10シクロアルキルからなる群より選択され、該アルキル、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキルは、Raの基1〜3個で置換されていてもよく、R3は、H、NHR1、NHアシル、C1-15アルキル、C3-10シクロアルキル、C2-15アルケニル、C1-15アルコキシ、CO2アルキル、OH、C2-15アルキニル、C5-10アリール、C5-10ヘテロアリールからなる群より選択され、該アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびヘテロアリールは、Raの基1〜3個で置換されていてもよく、(Z-W-)は、Z-CR6R7-、Z-CH.=CH-または

である。
【0131】
R8は、CR6R7、O、NR6およびS(O)Pからなる群より選択され、R6およびR7は、H、C1-6アルキルからなる群より独立して選択され、Bは、1)0〜2個の二重結合ならびにO、NおよびSからなる群より選択される、五または六員複素環の任意の位置で置換されているヘテロ原子1個を含む五または六員複素環であって、非置換であるか、Raの基1〜3個で置換されていてもよい複素環、2)0〜2個の二重結合を含む五または六員炭素環であって、非置換であるか、五または六員炭素環の任意の位置でRaの基1〜3個で置換されていてもよい炭素環、および3)0〜2個の二重結合ならびにO、SおよびNからなる群より選択される、五または六員複素環の任意の位置で置換されているヘテロ原子3個を含む五または六員複素環であって、非置換であるか、Raの基1〜3個で置換されていてもよい複素環からなる群より選択され、X1およびX2は、H、OH、C1-15アルキル、C2-15アルケニル、C2-15アルキニル、ハロ、OR3、ORCF3、C5-10アリール、C5-10アラルキル、C5-10ヘテロアリールおよびC1-10アシルからなる群より独立して選択され、該アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびヘテロアリールは、Raの基1〜3個で置換されていてもよく、Raは、ハロ、アシル、アリール、ヘテロアリール、CF3、OCF3、--O--、CN、NO2、R3、OR3;SR3、=N(OR)、S(O)R3、SO2R3、NR3R3、NR3COR3、NR3CO2R3、NR3CON(R3)2、NR3SO2R3、COR3、CO2R3、CON(R3)2、SO2N(R3)2、OCON(R3)2からなる群より選択される要素を表し、該アリールおよびヘテロアリールは、ハロまたはC1-6アルキルの基1〜3個で置換されていてもよく、Yは、S(O)p、-CH2-、-C(O)-、-C(O)NH-、-NR-、-O-、-SO2NH-、-NHSO2からなる群より選択され、Y1は、OおよびCからなる群より選択され、Zは、CO2R3、R3CO2R3、CONHSO2Me、CONHSO2、CONH2及び5-(1H-テトラゾール)からなる群より選択され、tおよびvは、独立して、t+v=1になるように0または1であり、Qは、炭素原子2〜4個を含む飽和または不飽和の直鎖状炭化水素であり、pは0〜2であり、ただし、ZがCO2R3であり、BがOからなる五員複素環である場合、R3はメチルを表さない。
【0132】
本発明の方法および組成物を実施するのに適したさらなる類似体は、それぞれが全体を参照により本開示と矛盾しない程度に本明細書に組み入れられる米国特許第5,847,008号、米国特許第6,090,836号および米国特許第6,090,839号で教示されている化合物を含む。
【0133】
さらには、多様な適当な類似体が米国特許第6,274,608号で教示されている。アリールおよびヘテロアリール酢酸およびオキシ酢酸類似体がたとえば米国特許第6,160,000号で教示されている。置換5-アリール-2,4-チアゾリジンジオン類似体が米国特許第6,200,998号で教示されている。多価不飽和脂肪酸およびエイコサノイドのような他の可能な類似体が公知である(たとえば、Forman, BM, Chen, J and Evans RM, PNAS 94:4312-4317を参照。それぞれが全体を参照により本開示と矛盾しない程度に本明細書に組み入れられるこれらの刊行物の化合物を、以下に提供する方法によってスクリーニングすると、本開示にしたがって、たとえば体脂肪および体重を減らし、脂肪異化作用を調節し、食欲を減らすのに有用である化合物を提供することができる。
【0134】
脂肪酸アルカノールアミドの合成
本発明を実施するのに有用な化合物は、当技術分野で理解されている方法を使用して容易に合成し、精製される。例示的な合成スキーム(スキーム1)では、カルボン酸とアミノアルコール(またはそのO保護誘導体)とを、適当な溶剤中、脱水剤、たとえばジシクロヘキシルカルボジイミドの存在で反応させる。脂肪酸アルカノールアミドを、抽出、晶出、沈殿、クロマトグラフィーなどのような方法によって単離する。最終生成物がO保護アダクトであるならば、通常、当技術分野で理解されている方法によって脱保護して、遊離ヒドロキシル基を有する脂肪酸アダクトを得る。

【0135】
当業者は、上記のスキームの多くの変形が利用可能であることを認識するであろう。たとえば、酸の活性化誘導体、たとえばハロゲン化アシル、活性エステルを使用することができる。同様に、グリコール(好ましくはモノO保護)をアミノアルコールに代えて使用して、分子の二つの成分の間にエステル結合を生じさせることができる。
【0136】
また、逆エステルおよび逆アミドが、当技術分野で理解されている方法によって容易に合成される。たとえば、ヒドロキシカルボン酸を、脱水剤の存在で、長鎖アルキル(すなわちC4〜C22)のアミンまたはヒドロキシ誘導体と反応させる。特定の反応経路では、ヒドロキシカルボン酸のヒドロキシル部分を保護することが望ましい。
【0137】
エーテルおよびメルカプタンは、当業者に周知の方法、たとえばウィリアムソン合成によって調製される。たとえば、長鎖アルキルアルコールまたはチオールを塩基、たとえばNaHによって脱プロトン化し、得られたアニオンと反応性アルコール誘導体、たとえばハロ、トシル、メシルアルコールまたはその保護誘導体を反応させてエステルまたはメルカプタンを形成する。
【0138】
上述の方法およびそれらの変形は、たとえば次に見出すことができる。

【0139】
使用法、薬剤学的組成物およびそれらの投与
使用法
本発明の化合物、組成物および方法(たとえば、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸エタノールアミド化合物、類似体および相同体)は、イヌ、ネコおよび特にヒトをはじめとする哺乳動物において体脂肪および/または体重を減らすために使用される。体重減少は、美観目的であってもよいし、治療目的であってもよい。化合物はまた、食欲を減らす、または摂食低下を誘発するために使用してもよい。
【0140】
本発明の化合物、組成物および方法は、正常な体重範囲にある個人において体重増または体脂肪増を防ぐために使用される。化合物は、糖尿病または高脂血症またはがんに関連する疾病のための薬学的介入処置を他には要しない、他の点では健康な個人で使用することができる。いくつかの態様では、処置を受ける個人は、糖もしくは脂質のレベルまたは代謝の乱れに関連する疾病を有さず、または、心臓血管おおび脳血管疾患の危険因子を有しない。個人は、非糖尿病であってもよいし、正常範囲の血糖値を有してもよい。個人はまた、血中脂質(たとえばコレステロール)またはトリグリセリド値を正常範囲に有することができる。個人は、アテローム硬化症を有しなくてもよい。個人は、他の状態、たとえばがんまたは他の腫瘍、インスリン耐性を伴う障害、シンドロームXおよび膵炎を有しなくてもよい。
【0141】
他の態様では、対象は、体脂肪および/または体重の減少を必要としている過体重または肥満の人である。これらの態様では、本発明の方法、化合物および組成物を投与して、体重減少を促進し、また、ひとたびその性別および年齢および身長の人の正常範囲内の体重に達したならば、体重増を予防することができる。化合物は、糖尿病、高脂質血症またはがんに関連する障害の任意の薬学的治療を必要としない、他の点では健康な個人で使用することができる。個人はまた、他の点では、心臓血管および脳血管疾患の危険因子を有しないことができる。いくつかの態様では、処置を受ける個人は、糖(たとえばグルコース)または脂質代謝に関連する疾病を有しない。個人は、非糖尿病であってもよいし、正常範囲の血糖値を有してもよい。個人はまた、血中脂質(たとえばコレステロール、HDL、LDL、総コレステロール)またはトリグリセリド値を正常範囲に有することができる。個人は、アテローム硬化症の処置を受けていなくてもよい。
【0142】
本発明の化合物、方法および組成物はまた、ネコ、イヌおよびヒトをはじめとする哺乳動物において食欲を抑制するために投与することができる。いくつかの態様では、化合物は、いかなる疾病に関しても薬学的介入処置を必要としていない、他の点では健康な個人で使用することができる。いくつかの態様では、個人は、がん、糖尿病または高脂質血症をはじめとする疾病のための予防的または緩和的治療を必要としない。いくつかの態様では、処置を受ける個人は、異常な糖または脂質レベルに関連する疾病を有しない。他の態様では、個人は、心臓血管および脳血管疾患の危険因子を有しない。個人は、非糖尿病であってもよいし、正常範囲の血糖値を有してもよい。個人はまた、血中脂質(たとえばコレステロール)またはトリグリセリド値を正常範囲に有することができる。個人は、アテローム硬化症を有しなくてもよい。
【0143】
本発明の化合物、方法および組成物はまた、ネコ、イヌおよびヒトをはじめとする哺乳動物において脂肪代謝を調節する(たとえば脂肪異化作用を増す)ために投与することができる。いくつかの態様では、化合物は、他の点では健康な個人において食欲を減らすために使用することができる。いくつかの態様では、処置を受ける個人は、糖または脂質代謝に関連する疾病(たとえば糖尿病、高コレステロール血症、低HDL値または高LDL値)を有しない。個人は、非糖尿病であってもよいし、正常範囲の血糖値を有してもよい。個人はまた、血中脂質(たとえばコレステロール)またはトリグリセリド値を正常範囲に有することができる。個人は、アテローム硬化症を有しなくてもよい。
【0144】
本発明の化合物および組成物による処置は、達成された体重減少の程度または量によって事前に決められる期間であってもよいし、個人が正常範囲のBMIに達するまでの期間であってもよい。ひとたび所定の程度または量の体重減少が達成されたか、個人が正常範囲内のBMIに達したならば、本発明の化合物および組成物による処置を減らすことができる。
【0145】
本発明の化合物および組成物は、体脂肪を減らす、または食欲を減らす目的だけに投与することができる。
【0146】
本発明の食品組成物および経口投与のための組成物は、脂肪酸アルカノールアミドが有効成分として含有されること以外は従来の食品組成物または医薬品の場合と同様にして適当な担体、たとえば賦形剤または希釈剤を使用することにより、供給または投与に適した形態に調製することができる。
【0147】
食品組成物の形態は、たとえば、固形、たとえば粉末、顆粒、錠剤およびブロック、水溶液、たとえば飲料およびスープならびに液状、たとえばエマルション、分散液および懸濁液を含み、これらの形態は、従来の手法にしたがって適当な賦形剤、希釈剤および他の可食物質を使用することによって調製される。
【0148】
栄養源、たとえばタンパク質、脂肪および炭水化物が、本明細書で使用される担体に含められる。タンパク質は、たとえば、カゼインおよびその塩、ゼラチンおよびその塩、水溶性ゼラチン(たとえば、酵素加水分解されたゼラチンなど)、全乳粉、脱脂粉乳、大豆タンパク質、コーングルテンミールおよびコムギタンパク質を含む。脂肪は、たとえば、大豆油、オリーブ油、中鎖トリグリセリド(MCT)、綿実油、ヒマワリ油、カカオバター、ゴマ油、米油、ベニバナ油、ピーナツ油、パーム油およびナタネ油を含む。炭水化物は、たとえば、単糖類、たとえばデキストリン、スクロース、フルクトースおよびグルコース、二糖類、たとえば麦芽糖、マルトースならびにオリゴ糖類、たとえばフラクトオリゴ糖、ラクトオリゴ糖、ガラクトシルラクトースおよびラクトスクロースを含む。
【0149】
さらには、任意で、普通に食品に加えられる種々の公知の添加物を本発明の組成物に配合することができる。添加物は、たとえば、各種ビタミン、ミネラル、芳香、たとえば合成芳香および天然芳香、天然甘味料(たとえばタウマチン、ステビアなど)、合成甘味料(たとえばサッカリン、ステビア抽出物、アスパルテームなど)、着色剤、風味(たとえばチーズ、チョコレートなど)ならびに食物繊維、たとえばポリデキストロース、ペクチン酸およびその塩ならびにアルギン酸およびその塩を含む。これらの添加物は、単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの添加物の量は特に限定されないが、普通は、本発明の組成物100重量部に基づいて約0〜20重量部の範囲内で選択され、閾値効力に関して以下に指定する服用量を超える。
【0150】
本発明の組成物は、上記各成分を混合することによって調製され、同組成物を調製する方法は特に限定されない。しかし、任意で、普通に使用される乳化剤(たとえばレシチン、糖エステルなど)および補助乳化剤(たとえばタンパク質、炭水化物など)を脂溶性成分(たとえば、油脂および油脂を溶解させることができる他の原料成分など)に加え、その混合物を従来の手法にしたがって機械的に乳化させる方法を使用することができ、それによって本発明の組成物を調製することができる。
【0151】
こうして得られた本発明の組成物(固形物または液状製剤としての本発明の食品)を適当な容器に充填し、通例の滅菌処理、たとえば熱(120℃、20分)、ガンマ線への暴露または他の従来技術に付して滅菌食品を製造することにより、長い貯蔵または棚寿命を有する製品を得ることができる。この製品は、そのままで使用することもできるし、適当に希釈した後で使用することもできる。
【0152】
飲料の形態でこのように調製された本発明の組成物の用量は、哺乳動物、特にヒトの年齢、体重および性別ならびに体重減少、食物摂取の減少または他の所望の効果の程度にしたがって適切に選択され、具体的には限定されないが、好ましくは、約25〜約200kgまたは約50〜約150kgの重さの哺乳動物(たとえばヒト)の場合で、乾燥重量ベースで摂取1回あたり有効成分約10〜約1000mgの範囲、1日あたり約10〜4000mgで選択される。服用量は、いかなる量の飲料で送達してもよいが、好ましくは、約1オンス〜16オンス、より好ましくは約4〜約8オンスで送達してもよい。他の態様では、服用量は、約0.1mg〜約100mg/kg、より好ましくは約10mg〜約50mg/kg(有効成分の量/体重)である。服用は、1日1回であってもよいし、反復服用(たとえば1日2、3または4回)であってもよい。
【0153】
本発明の食品は、特に、機能性食品、栄養補助食品、栄養物、ファーマフード、ニュートラシューティカル、健康食品、デザイナーフードまたは任意の食品である。食品中の脂肪酸アルカノールアミドの適当な濃度は、たとえば、食品100gあたり約0.1〜約1gである。
【0154】
体重を減らし、食欲を抑制し、脂肪代謝を調節する方法
いくつかの態様で、本発明は、哺乳動物において食物摂取もしくは食欲を減らす、および/または体重減少を生じさせる、もしくは体重を減らす、もしくは体重増を予防する、もしくは脂肪代謝を調節する方法であって、それぞれが、該哺乳動物に対し、該哺乳動物において食物摂取を減らすのに有効である量の脂肪酸アルカノールアミド化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0155】
投与は、経口(たとえば摂取による)であってもよいし、非経口であってもよい。好ましい投与経路は経口である。いくつかの態様では、OEAは、胃環境(たとえば酸性の胃環境)で加水分解または他の分解から保護されるように処方される。このような方法は、ニュートラシューティカルおよび補助食品技術ならびに薬学技術の当業者に周知である。たとえば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,225,202号を参照。一般に、胃の酸性環境で容器またはカプセルの透過を制御する技術は公知である。通常、これらの技術は、丸剤または他のカプセル封入構造を含む容器に有効成分を収容することを含む。これらの保護カプセル封入系は、特徴的に、水不安定性結合を有する疎水性層であり、仕上げの塩化物または酢酸ビニルのポリマーコーティングをゼラチンおよびセルロースのゲルと組み合わせて含む。ポリマーコーティングは、特に、腸液不溶性ポリマーであるエチルセルロース成分と、腸液固化性メチルセルロース成分との組み合わせであってもよい。カプセルのポリマーコーティングはまた、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびステアリン酸マグネシウムで構成されることができる。大腸への送達の技術は、Saffran et al., Science 233:1081-1084 (1986)(スチレンおよびヒドロキシメタクリレートのポリマーコーティング)、Dressman et al., J. Pharmaceutical Sci 82:857-872 (1993)(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート)、(ペクチン酸カルシウム)およびHilton and Deasy, J. Pharmaceutical Sci 82:737-743 (1993)に記載されている。カプセル、マイクロカプセルおよび他の送達系を形成する方法は、一般に、Gennaro AR et al., Remington’s Pharmaceutical Sciences 20th ed (2000)およびAnsel et al., 「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems」 Lippincott Williams & Wilkins Publishers, January 2000で開示されている。これらの参考文献は、具体的に参照より本明細書に組み入れられる。
【0156】
いくつかの態様で、本発明は、本明細書に記載するOEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体の添加量を含む補助食品またはニュートラシューティカルを提供する。いくつかのさらなる態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体は、食品または加工食品における添加物として投与されて、その食品または加工食品中に天然に存在するよりも高い量を提供する。そのような食品は、好ましくは、体重を減らす、または体重増を防ぐための食事で有用な食品(たとえば低カロリー食品、脂肪または砂糖の含有量を減らすように加工された食品、脂肪または砂糖の量を減らした食品、脂肪、油または砂糖を実質的に含まない食品)である。いくつかのさらなる態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体は、乳製品(アイスクリーム、シャーベット、コテッジチーズまたはヨーグルト)に加えられる。他の食品態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体は、飲料(ソフトドリンク、液状補助食品)に加えられる。いくつかの態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体は、マリネまたはサラダドレッシングに加えられる。
【0157】
いくつかの態様で、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体は、食品1gあたり1mg〜200mgの範囲の量で食品に加えられる。他の態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物は、食品1gあたり0.1〜20mgの量で加えられる。
【0158】
上記のいくつかの態様では、脂肪酸アルカノールアミドはパルミトイルエタノールアミドまたはOEAである。
【0159】
いくつかの態様で、本発明は、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体または類似体を、摂取時に食欲を減らすのに有効な量で含む補助食品を提供する。好ましい化合物はOEAである。いくつかの態様では、食品は、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体を、食品が一人分として摂取されたとき食欲を減らすのに有効な量で含む。食品および一般的に摂取される量に依存して、一人分のサイズは大きく異なり、予想される一人分サイズに応じてOEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体の量を調節することができる。たとえば、一般的な一人分サイズは、1〜16重量オンスまたは1〜16容量オンスであることができる。いくつかの態様では、食品は、固形または液状またはゲルまたは半固形、エマルションまたは懸濁液であることができる。たとえば、食品は、飲料およびスープからなる群より選択される液体であることができる。
【0160】
いくつかの態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体は、食品1gあたりアルカノールアミド約0.1mg〜50mgの量である。他の態様では、脂肪酸アルカノールアミド化合物は、食品1gあたりアルカノールアミド約1mg〜10mgの量である。もう一つの態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物もしくは誘導体は、食品1gあたりアルカノールアミド約1mg〜10mgの量である。
【0161】
いくつかの態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、相同体、誘導体もしくは類似体は、PPAR-α選択的作動薬である。PPAR-α選択的作動薬であるOEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、相同体、誘導体および類似体ならびにPPAR-α選択的作動薬活性に関して化合物をスクリーニングする方法が、全体が参照により具体的に本明細書に組み入れられる、2003年7月2日出願の米国特許仮出願第60/485,062号に記載されている。この参考文献はまた、PPAR-α選択的作動薬であるOEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体の他の治療的および有益な用途を開示している。このような用途は、PPAR-α選択的作動薬であるOEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、相同体および類似体を投与することによって達成することができる。ニュートラシューティカルおよび補助食品処置に反応するであろう多様なPPAR-α媒介疾患および状態がその中に記載されている。
【0162】
加えて、本発明は、外来性OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体もしくは類似体を、ニュートラシューティカルまたは補助食品中の成分として、ニュートラシューティカルまたは補助食品が一般的な一人分サイズで摂取された場合に食欲を減らすのに十分な量で加えることにより、哺乳動物において食欲を減らす、体重を減らす、体重増を減らす、またはPPAR-α媒介疾患または状態を処置する、または脂肪代謝を調節するニュートラシューティカルまたは補助食品を製造する方法を提供する。いくつかの態様では、ニュートラシューティカルは、固形食品、半固形食品または飲料である。好ましい態様では、食品は、上記のような食品である。
【0163】
いくつかの態様では、本発明は、哺乳動物において食物摂取を減らす、または食欲を減らす方法であって、該哺乳動物に対し、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を、該哺乳動物において食物摂取を減らすのに有効である量で経口投与することを含む方法を提供する。他の態様では、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体は、食物とともに、食物の成分として、飲料としてまたは補助食品として摂取される。
【0164】
いくつかの態様では、本発明は、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を、食品または飲料中に、食品の一人分が摂取されたとき食欲を減らすのに十分な量で加えることにより、食欲を減らす能力を高めた食物または飲料を製造する方法を提供する。いくつかの態様では、化合物はOEAである。
【0165】
肝脂肪症
いくつかの態様では、本発明は、OEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物または誘導体を、脂肪肝の進行を遅らせる、または逆行させるのに有効な量で投与することにより、肝脂肪症の哺乳動物を処置する方法を提供する。好ましい態様では、哺乳動物はヒトである。もう一つの好ましい態様では、投与される化合物はOEAである。いくつかの態様では、OEAまたは脂肪酸アルカノールアミド化合物もしくは誘導体は、経口投与、腹腔内投与または非経口投与される。投与量は、薬剤、投与経路および当業者に公知の他の個々の要因に依存する。いくつかの態様では、化合物は、約0.1〜約100mg/kgまたは約10〜約1000mg/kgの範囲の量で投与される。他の態様では、化合物は、約1〜約100mg/kgの範囲の量で投与される。他の態様では、化合物は、約10〜約200mg/kgの範囲の量で投与される。いくつかの態様では、服用量は、好ましくは、1日1〜4回、1日1回またはそれよりも低い頻度で投与することができる。いくつかの態様では、服用量は、本明細書で開示するような動物モデルにおいて肝臓脂肪酸代謝を変化させる服用量である。用量、投与経路および服用頻度を決定する方法は当業者には周知である。一般に、投与は、肝脂肪症の程度および状態改善速度の応じて不定期間に及ぶことができる。このような処置は、数週間から数ヶ月の治療を要するかもしれず、好ましくは低めの服用レベルでの長期的な維持投薬の可能性を伴う。
【0166】
医薬組成物
本発明のもう一つの態様は、本発明の化合物および薬剤学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0167】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物またはその薬剤学的に許容される塩を有効成分として含み、さらに、薬剤学的に許容される担体および任意で他の治療成分を含有してもよい。
【0168】
組成物は、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内および静脈内を含む)、眼内、肺(経鼻または口腔吸入)または経鼻投与に適した組成物を含むが、所与の場合でもっとも適した経路は、一部には、処置される状態の性質および重篤度ならびに有効成分の性質に依存する。例示的な投与経路は経口経路である。組成物は、好都合には、単位剤形で提示され、薬剤学の分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0169】
実用では、従来の薬学的配合技術にしたがって、本発明の化合物を有効成分として薬学的担体と密に混合することができる。担体は、投与、たとえば経口または非経口(静脈内を含む)に望まれる調合物の形態に依存して、多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物を調製する場合、通常の薬学的媒体のいずれか、たとえば、経口液状調製物、たとえば懸濁液、エリキシル剤および溶液の場合には水、グリコール、油、アルコール、着香料、保存剤、着色剤など、または経口固形調製物、たとえば粉末、硬および軟ゼラチンカプセル剤ならびに錠剤の場合には担体、たとえばデンプン、砂糖、微晶質セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、分解剤などを用いることができ、固形経口調製物が液状調製物よりも好ましい。
【0170】
服用のしやすさのおかげで、錠剤およびカプセル剤がもっとも有利な経口単位剤形を代表し、その場合、固形薬学的担体が使用されることは明白である。望むならば、錠剤を、標準的な水性または非水性技術によってコーティングしてもよい。そのような組成物および調製物は、有効化合物を少なくとも0.1%含有することができる。これらの組成物中の有効化合物の割合は、当然、異なることができ、好都合には、単位の重量の約2%〜約60%であることができる。このような治療的に有用な組成物中の有効化合物の量は、治療的に有効な服用量が得られるような量である。有効化合物はまた、たとえば液滴またはスプレーとして鼻腔内投与することもできる。
【0171】
経口投与のための錠剤の形態に成形する場合、調製物の支持体として、賦形剤、たとえばラクトース、スクロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶質セルロース、ケイ酸およびリン酸カリウム、結合剤、たとえば水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース溶液、デンプン溶液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースおよびポリビニルピロリドン、崩壊剤、たとえばナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルシウムカルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天粉末、ラミナラン粉末、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸カリウム、界面活性剤、たとえばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸モノグリセリド、崩壊阻害剤、たとえばスクロース、ステアリン、カカオバターおよび硬化油、吸収促進剤、たとえば第四級アンモニウム塩基およびラウリル硫酸ナトリウム、湿潤剤、たとえばグリセリンおよびデンプン、吸着剤、たとえばデンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよびコロイダルケイ酸ならびに潤滑剤、たとえば精製タルク、ステアレート、粉末ホウ酸およびポリエチレングリコールを使用することができる。
【0172】
さらには、錠剤は、任意で、通常のコーティング錠、たとえば糖衣錠、ゼラチンコーティング錠、腸溶錠、フィルムコーティング錠、二層錠および多層錠の形態をとることができる。
【0173】
たとえば丸剤の形態に成形する場合、賦形剤、たとえばグルコース、ラクトース、デンプン、カカオバター、硬化植物油、カオリンおよびタルク、結合剤、たとえば粉末アラビアガム、粉末トラガカント、ゼラチンおよびエタノールならびに崩壊剤、たとえばラミナランおよび寒天を調製物の支持体として使用することができる。
【0174】
OEA組成物は、胃の中での高酸性環境への暴露から保護することが好ましく、胃の中よりもアルカリ性のpHでのみ溶解するポリマーカプセルに調製することができる。また、それにより、有効薬剤が消化酵素、たとえばプロテアーゼ、リパーゼおよびホスホリパーゼから保護され、潜在的に腸での吸収に適合される。特に好ましい組成物および方法では、有効薬剤脂肪酸アルカノールアミドは、酸および消化酵素に耐性の担体中にマイクロカプセル封入して、経口投与後、胃の中での分解を最小限にする。有効薬剤を胃の酸性環境での崩壊から保護するための技術は、本明細書で論じるように、当技術分野で周知である。
【0175】
投与
本発明の化合物は、非経口投与することもできる。これらの有効化合物の溶液または懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と好適に混合した水の中で調製することができる。また、分散系は、グリセロール、液状ポリエチレングリコールおよびそれらの油中の混合物中で調製することができる。通常の貯蔵および使用条件下、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。
【0176】
注射可能な使用に適した薬学的形態は、無菌水溶液または分散液および無菌注射可能溶液または分散液の即時調合物のための無菌粉末を含む。すべての場合で、形態は、無菌でなければならず、容易な注射器適性が存在する程度に流動性でなければならない。製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、バクテリアおよび真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコール)、それらの適当な混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒であることができる。
【0177】
本発明の化合物は、広い服用量範囲で効果を発揮することができる。たとえば、成人の処置では、約10〜約1000mg、約100〜約500mgまたは約1〜約100mgの服用量が必要であるかもしれない。1日あたり0.05〜約100mg、より好ましくは約0.1〜約100mgの服用量を使用することができる。もっとも好ましい服用量は、1日あたり約0.1mg〜約70mgである。患者のための投薬計画を選択する際、多くの場合、1日あたり約2〜約70mgの服用量から始め、状態が制御されてきたところで、服用量を1日あたり約0.1〜約10mgまで減らすことが必要であるかもしれない。たとえば、成人の処置では、1日あたり約0.05〜約100mg、好ましくは約0.1〜約100mgの服用量を使用することができる。正確な服用量は、投与形態、所望の治療、投与される形態、処置される対象および処置される対象の体重ならびに担当の医師または獣医師の好みおよび経験に依存する。
【0178】
一般に、本発明の化合物は、単位服用量あたり好ましくは約0.1〜約100mgの有効成分を薬剤学的に許容される担体とともに含む単位剤形で投与することができる。普通、経口、経鼻、肺または経皮投与に適した剤形は、約0.001mg〜約100mg、好ましくは約0.01mg〜約50mgの化合物を薬剤学的に許容される担体または希釈剤と混合して含む。貯蔵および使用のために、これらの製剤は、好ましくは、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。
【0179】
適切な量の候補化合物の投与は、当技術分野で公知の任意の手段、たとえば経口もしくは直腸、非経口、腹腔内、静脈内、皮下、真皮下、鼻腔内または筋肉内手段によって実施することができる。いくつかの態様では、投与は経皮投与である。候補化合物の適切な量または用量は、当技術分野で公知であるように経験的に決定することができる。適量または治療量とは、動物において時間とともに体脂肪の減少または体重の減少を生じさせるのに十分な量である。候補化合物は、体脂肪の減少または体重の減少を生じさせるのに必要な頻度で、たとえば1時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、12時間ごと、もしくは18時間ごと、1日1回または週1回、投与することができる。
【0180】
経口投与に適した製剤は、(a)溶液、たとえば有効量のパッケージングされた核酸を希釈剤、たとえば水、食塩水またはPEG400中に懸濁させたもの、(b)それぞれ所定の量の有効成分を液体、固体、顆粒またはゼラチンとして含有するカプセル剤、サッシェまたは錠剤、(c)適切な液体中の懸濁液、および(d)適当なエマルションからなることができる。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ポテトスターチ、微晶質セルロース、ゼラチン、コロイダル二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、加湿剤、保存剤、着香料、染料、崩壊剤ならびに薬剤学的に適合性の担体の一つまたは複数を含むことができる。ロゼンジ形態は、有効成分を着香料、たとえばスクロース中に含むことができ、パステル剤は、有効成分を、当技術分野で公知の担体を有効成分の他に含有する不活性ベース、たとえばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアエマルション、ゲルなどの中に含む。
【0181】
注射溶液および懸濁液は、前記種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。非経口投与、たとえば関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内および皮下経路による投与に適した製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を所期のレシピエントの血液とで等張にする溶質を含有する水性および非水性の等張無菌注射溶液ならびに沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存剤を含むことができる水性および非水性の無菌懸濁液を含む。
【0182】
経皮経路の投与に関して、薬物の経皮投与の方法がRemington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Edition(Gennaro et al. Eds., Mack Publishing Co., 1985)で開示されている。皮膚またはスキンパッチが、本発明の化合物の経皮送達に好ましい手段である。パッチは、好ましくは、化合物の吸収を高めるため、DMSOのような吸収促進剤を提供する。経皮的薬物送達のための他の方法が米国特許第5,962,012号、米国特許第6,261,595号および米国特許第6,261,595号で開示されている。これらはそれぞれ全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0183】
好ましいパッチは、皮膚への薬物送達速度を制御するパッチを含む。パッチは、貯蔵系または一体系をはじめとする多様な投薬系をそれぞれ提供することができる。貯蔵系設計は、たとえば、四つの層、すなわち、皮膚と直に接する接着層、薬物分子の拡散を制御する制御膜、薬物分子の貯蔵部および耐水性の裏地を有することができる。このような設計は均一な量の薬物を指定の期間にわたって送達し、送達の速度は様々なタイプの皮膚の飽和限界よりも低くなければならない。
【0184】
一体系設計は、たとえば、通常は三つの層、すなわち、接着層、化合物を含有するポリマーマトリックスおよび防水性の裏地しか有しない。この設計は、飽和量の薬物を皮膚に運ぶ。それにより、送達は皮膚によって制御される。薬物量がパッチ中で飽和レベル未満に減少すると、送達速度は低下する。
【0185】
本発明の化合物は、本発明の他の化合物または食事療法もしくは体脂肪の処置、予防、抑制または軽減に有用であることができる他の薬物と組み合わせて使用することができる。このような他の薬物は、そのために一般的に使用されている経路および量で、本発明の化合物と同時または順次に投与することができる。本発明の化合物が一つまたは複数の他の薬物と同時に使用される場合、そのような他の薬物および本化合物を収容する単位剤形の医薬組成物が好ましい。一つまたは複数の他の有効成分と組み合わせて使用される場合、本発明の化合物および他の有効成分は、それぞれが単独で使用される場合よりも低い用量で使用することができる。したがって、本発明の医薬組成物は、上記で開示した化合物に加えて一つまたは複数の他の有効成分を含有する組成物を含む。
【0186】
食品
本発明は、いくつかの態様で、OEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、OEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体の強化が、添加される脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食品1gあたり約1.0mgよりも多い量かつ50mgよりも少ない量である食品を提供する。OEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、OEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体の強化が、添加される脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食品1gあたり約10mgよりも多い量かつ約100mgよりも少ない量である食品であってもよい。OEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品は、付録Aに記すような、無脂肪、低脂肪もしくは減脂肪食品、無カロリー、減カロリーもしくは低カロリー食品、無糖、減糖もしくは低糖食品、無コレステロール、低コレステロールもしくは減コレステロール食品または無飽和脂肪、低飽和脂肪もしくは減飽和脂肪食品であってもよい。
【0187】
食品は、添加される脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食品1gあたり約0.1mgよりも多い量かつ約100mgよりも少ない量のOEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体で強化されることができる。食品は、添加される脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食品1gあたり約0.1mgよりも多い量かつ約10mgよりも少ない量のOEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体で強化されることができる。
【0188】
食品は、OEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を、食品1gあたり約1.0mg〜約100mg未満の量で含有することができる。食品は、OEA、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を、食品1gあたり約10.0mg〜約200mg未満の量で含有することができる。
【0189】
本発明の化合物の特定
上記で開示したような候補化合物は、当技術分野で公知の多様な手段によってスクリーニングすることができる。例示的な方法が、参照により本明細書に組み入れられる、2003年7月2日出願の米国特許仮出願第60/485,062号で教示されている。体脂肪減少性化合物は、たとえば、当業者に公知の動物バイオアッセイ技術を使用してインビボで特定することができる。試験化合物および適当な溶媒またはカロリー対照を多数の経路(たとえば経口経路、非経口経路)のいずれかで実験対象に投与し、治療の経過とともに対象の体重をモニタすることができる。実験対象は、ヒトまたは実験動物(たとえばラット、マウス)である。
【0190】
食欲に対する、または摂食低下もしくは食物摂取の減少を誘発する化合物の効果は、たとえば、試験対象の食物消費量をモニタする(たとえば対象が食べた量または食べなかった量を食品重量またはカロリー含有量に換算して計測する)ことによって評価することができる。食欲に対する化合物の効果はまた、ヒト対象による食欲または食物渇望のレベルに関するアンケートをはじめとする自覚的手段によって評価することもできる。脂質代謝に対する試験化合物の効果は、血中脂質および脂肪酸酸化をモニタすることによって評価することができる。これらの評価のための技術は当業者には周知である。実験は、投与の期間および/または投与の効果の追跡調査に関して急性、亜急性、慢性または亜慢性であることができる。
【0191】
体脂肪減少は、たとえば、動物の体脂肪の変化を直接計測することによって測定することもできるし、動物の体重の変化を計測することによって測定することもできる。動物は、マウス、ラット、モルモットまたはウサギからなる群より選択することができる。動物はまた、ob/obマウス、db/dbマウスもしくはZuckerラットまたは体重関連の疾病のための他の動物モデルであってもよい。ヒトにおける臨床実験を実施してもよい。
【0192】
コンビナトリアルケミストリーライブラリー
近年、新規リード化合物の生成を支援するためのコンビナトリアルケミストリーライブラリーの使用が注目されている。コンビナトリアルケミストリーライブラリーは、化学合成または生物学的合成により、試薬のような多数の化学的「構成単位」を組み合わせることによって生成される多様な化合物の集合である。たとえば、ポリペプチドライブラリーのような線形コンビナトリアルケミストリーライブラリーは、アミノ酸と呼ばれる化学的構成単位のセットを所与の化合物長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸の数)にわたってあらゆる可能な組み合わせ方で組み合わせることによって形成される。このような化学的構成単位の組み合わせ混合によって何百万種もの化合物を合成することができる。たとえば、ある解説者は、100個の互換可能な化学的構成単位の系統的組み合わせ混合が理論的には1億種の四量体化合物または100億種の五量体化合物の合成をもたらすとの見解を述べている(Gallop et al. J. Med. Chem. 37(9):1233 (1994))。
【0193】
コンビナトリアルケミストリーライブラリーの作成およびスクリーニングは当業者には周知である。このようなコンビナトリアルケミストリーライブラリーは、pベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、diversomer、たとえばヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド(Hobbs et al. PNAS USA 90: 6909 (1993))、小さな化合物ライブラリー(Chen et al.)J. Amer. Chem. Soc. 116:2661(1994)、オリゴカルバメート(Cho, et al., Science 261: 1303(1993))および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al., J. Org. Chem. 59: 658(1994))の類似有機合成ならびに小さな有機分子ライブラリー(たとえば、ベンゾジアゼピン(Baum C&EN, Jan 18, page 33(1993))を参照)、チアゾリジノンおよびメタチアザノン(米国特許第5,549,974号)、ピロリジン(米国特許第5,525,735号および第5,519,134号)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)などを含むが、これらに限定されない。
【0194】
コンビナトリアルケミストリーライブラリーの作成のための装置は市販されている(たとえば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville KY, Symphony, Rainin, Woburn, MA, 433A Applied Biosystems, Foster City, CA, 9050 Plus, Millipore, Bedford, MAを参照)。
【0195】
また、溶液相化学のための周知のロボットシステムが数多く開発されている。これらのシステムは、自動化ワークステーション、たとえばTakeda Chemical Industries社(大阪、日本)によって開発された自動化合成装置および化学者によって実施される手作業の合成操作を模倣するロボットアームを利用する多くのロボットシステム(Zymatte II, Zymark Corporation, Hopkinton, Mass.; Orca, HewlettPackard, Palo Alto, CA)を含む。上記装置のいずれも本発明との使用に適している。本明細書で論じるように作動することができるようにするためのこれらの装置への改変の性質および実施は当業者には自明であろう。加えて、数多くのコンビナトリアルライブラリーそのものが市販されている(たとえば、ComGenex, Princeton, N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos Inc., St. Louis, MO, ChemStar, Ltd., Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Market Biosciences, Columbia, MD, etc.を参照)。
【0196】
ケミカルライブラリーのハイスループットアッセイ
本明細書に記載する化合物のアッセイは、ハイスループットスクリーニングに適している。たとえば、好ましいアッセイは、試験化合物による転写の活性化(すなわち、mRNA産生の活性化)、試験化合物によるタンパク質発現の活性化または試験化合物による遺伝子産物(たとえば発現したタンパク質)への結合または以下に記す脂肪酸調節に対する効果を検出する。
【0197】
特定のタンパク質産物の存在、非存在または定量のためのハイスループットアッセイまたは結合アッセイは当業者には周知である。したがって、たとえば、米国特許第5,559,410号は、タンパク質のためのハイスループットスクリーニング法を開示し、米国特許第5,576,220号および第5,541,061号は、配位子/抗体結合のためのハイスループットスクリーニング法を開示している。
【0198】
加えて、ハイスループットスクリーニングシステムは市販されている(たとえば、Zymark Corp., Hopkinton, MA; Air Technical Industries, Mentor, OH; Beckman Instruments, Inc. Fullerton, CA; Precision Systems, Inc., Natick, MA, etc.を参照)。これらのシステムは、一般に、すべての試料および試薬のピペット移送、液体の小出し、時限インキュベーションおよびアッセイに適当な検出器中のマイクロプレートの最終読み取りを含む全手順を自動化している。これらの構成可能なシステムは、高いスループットおよび速やかな始動ならびに高度なフレキシビリティーおよびカスタマイズ能力を提供する。このようなシステムの製造業者は、様々な高いスループットの詳細なプロトコルを提供している。したがって、たとえば、Zymark Corp.は、遺伝子転写、配位子結合などの調節を検出するためのスクリーニングシステムを詳細に説明する技術報告書を提供している。
【0199】
化合物が食物摂取、体重、体脂肪、食欲、食物探求行動に影響するか、または脂肪酸酸化を調節するかどうかの決定
本発明の化合物を動物に投与して、化合物が食物摂取および体重、体脂肪、食欲、食物探求行動に影響するか、または脂肪酸酸化を調節するかどうかを決定することができる。
【0200】
動物は、たとえば、肥満または正常なモルモット、ラット、マウスまたはウサギであることができる。適当なラットは、たとえばZuckerラットを含む。適当なマウスは、たとえば、正常なマウス、食事誘発性肥満のALS/LtJ、C3.SW-H-2b/SnJ、(NON/LtJ x NZO/HlJ)F1、NZO/HlJ、ALR/LtJ、NON/LtJ、KK.Cg-AALR/LtJ、NON/LtJ、KK.Cg-Ay/J、B6.HRS(BKS)-Cpefat/+、B6.129P2-Gcktm/Efr、B6.V-Lepob、BKS.Cg-m+/+ Leprdb、およびC57BL/6Jを含む。
【0201】
適切な量の候補化合物の投与は、当技術分野で公知の任意の手段、たとえば経口もしくは直腸、非経口、たとえば腹腔内、静脈内、皮下、真皮下、鼻腔内または筋肉内手段によって実施することができる。好ましくは、投与は、腹腔内または経口投与であることができる。候補化合物の適切な有効量は、当技術分野で公知であるように経験的に決定することができる。適切な有効量は、動物において時間とともに体脂肪の減少または体重の減少または食物摂取の減少を生じさせるのに十分な量であることができる。候補化合物は、体脂肪の減少または体重の減少を生じさせるのに必要な頻度で、たとえば1時間ごと、6時間ごと、8時間ごと、12時間ごと、もしくは18時間ごと、1日1回または週1回、投与することができる。
【0202】
経口投与に適した製剤は、(a)溶液、たとえば有効量の候補化合物を希釈剤、たとえば水、食塩水またはPEG400中に懸濁させたもの、(b)それぞれ所定の量の有効成分を液体、固体、顆粒またはゼラチンとして含有するカプセル剤、サッシェまたは錠剤、(c)適当な液体中の懸濁液、および(d)適当なエマルションを含む。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ポテトスターチ、微晶質セルロース、ゼラチン、コロイダル二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、加湿剤、保存剤、着香料、染料、崩壊剤ならびに薬剤学的に適合性の担体の一つまたは複数を含む。ロゼンジ形態は、有効成分を着香料、たとえばスクロース中に含むことができ、パステル剤は、有効成分を、当技術分野で公知の担体を有効成分の他に含有する不活性ベース、たとえばゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアエマルション、ゲルなどの中に含む。
【0203】
注射溶液および懸濁液は、前記種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。非経口投与に適した製剤は、たとえば、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を所期のレシピエントの血液とで等張にする溶質を含有することができる水性および非水性の等張無菌注射溶液ならびに沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤および保存剤を含むことができる水性および非水性の無菌懸濁液を含む。
【0204】
動物に投与される量は、時間とともに体重、体脂肪および/または脂肪酸酸化の変化を生じさせるのに十分な量である。このような用量は、用いられる特定の候補化合物の効力および動物の状態ならびに動物の体重または表面積にしたがって決定することができる。用量の大きさはまた、候補化合物の投与に伴う任意の副作用の存在、性質および程度、候補化合物のLD50ならびに様々な濃度での候補化合物の副作用によって決定される。一般に、用量は、体重1kgあたり0.1〜50mg、好ましくは1〜25mg、もっとも好ましくは1〜20mgの範囲である。用量応答関係の決定は当業者には周知である。
【0205】
体脂肪減少
体重減少は一般に、体脂肪の変化の直接計測または体重の減少によって測定される。動物の体脂肪および体重は、候補化合物の投与の前、最中および後で測定される。体脂肪の変化は、当技術分野で公知の任意の手段、たとえばキャリパを用いる脂肪ひだ計測、生体電気インピーダンス、静力学的秤量または二重エネルギーX線吸収測定法によって計測される。好ましくは、動物は、少なくとも2%、5%、8%または10%の体脂肪減少を示す。体重の変化は、当技術分野で公知の任意の手段、たとえば携帯式体重計、デジタル体重計、天秤式体重計、フロア体重計またはテーブル体重計によって計測することができる。好ましくは、動物は、少なくとも2%、5%、10%または15%の体重減少を示す。体重減少は、候補化合物の投与の前ならびに処置中および処置後に規則的な間隔で計測される。好ましくは、体重は、5日ごと、より好ましくは4日ごと、さらに好ましくは3日ごと、なおさらに好ましくは2日ごと、もっとも好ましくは毎日計測される。
【0206】
脂肪酸代謝の変化
脂肪酸代謝の変化は、たとえば、主要な脂肪燃焼組織、たとえば肝臓(Beynen, et al. Diabetes 28:828 (1979))、筋肉(Chiasson Lab. Anat. of Rat, (1980))、心臓(Flink, et al. J. Biol. Chem. 267:9917 (1992))および脂肪細胞(Rodbell J. Biol. Chem. 239:375 (1964))からの細胞中の脂肪酸酸化を見ることによって計測することができる。細胞は、初代培養物または細胞株から得ることもできる。細胞は、初代培養物から当技術分野で公知の任意の手段、たとえば酵素的消化および解剖によって調製することができる。適当な細胞株は当業者に公知である。適当な肝細胞株は、たとえばFao、MH1C1、H-4-II-E、H4TG、H4-II-E-C3、McA-RH7777、McA-RH8994、Nl-S1 Fudr、N1-S1、ARL-6、Hepa 1-6、Hepa-lclc7、BpRcl、tao BpRcl、NCTCクローン1469、PLC/PRF/5、Hep 3B2.1-7 [Hep 3B]、Hep G2 [HepG2]、SK-HEP-1、WCH-17である。適当な骨格筋細胞株は、たとえば、L6、L8、C8、NOR-10、BLO-11、BC3H1、G-7、G-8、C2C12、P19、Sol8、SJRH30 [RMS 13] 、QM7である。適当な心細胞株は、たとえば、H9c2(2-1)、P19、CCD-32Lu、CCD-32Sk、Girardi、FBHEである。適当な脂肪細胞株は、たとえば、NCTCクローン929[L株細胞派生物、L-929、L細胞]、NCTC 2071、L-M、L-M(TK-)[LMTK-;LM(tk-)]、A9(L株細胞のAPRTおよびHPRT陰性派生物)、NCTCクローン2472、NCTCクローン2555、3T3-L1、J26、J27-neo、J27-B7、MTKP 97-12 pMp97b[TKMp97-12]、L-NGC-SHT2、Ltk-ll、L-アルファ-lb、L-アルファ-2A、L-アルファ-2C、B82である。
【0207】
脂肪酸酸化の速度は、ケトン体への14Cオレイン酸酸化(Guzman and Geelen Biochem. J. 287:487 (1982))および/またはCO2への14Cオレイン酸酸化(Fruebis PNAS 98:2005 (2001); Blazquez et al. J. Neurochem 71: 1597 (1998))によって計測することができる。脂肪分解は、適当な標識前駆体を使用する脂肪酸もしくはグリセロール放出または分光光度アッセイ(Serradeil-Le Gal FEBS Lett 475: 150 (2000))によって計測することができる。ケトン体への14Cオレイン酸酸化の分析の場合には、単離したままの細胞または培養細胞株を14Cオレイン酸とともに適当な期間、たとえば30、60、90、120または180分間インキュベートすることができる。インキュベート培地中の14C放射能の量を計測すると、オレイン酸酸化の速度を測定することができる。オレイン酸酸化は、x分間に細胞1gあたり生成されるnmolオレイン酸として表すことができる。脂肪分解/グリセロール放出の分析の場合には、単離したままの細胞または培養細胞株を洗浄したのち、適当な期間インキュベートすることができる。インキュベート培地中に放出されたグリセロールの量が脂肪分解の指標を提供することができる。
【0208】
実施例
以下の実施例は、例示のために提供するものであり、限定するものではない。当業者は、変更または修正されても本質的に同じ結果を出すであろう多様な非臨界パラメータを容易に認めるであろう。
【0209】
実施例1 脂肪酸エタノールアミド化合物、相同体および類似体の合成
エタノールアミンおよび対応する脂肪酸アシルから脂肪酸エタノールアミンを形成する方法は比較的簡単であり、当業者に公知である。たとえば、脂肪酸エタノールアミドは、Abadjjらによって記載されているように、脂肪酸または脂肪酸塩化物をアミノアルコールと反応させることによって合成することができる(Abadji, V., Lin, S. Y., Taha, G., Griffin, G., Stevenson, L. A., Pertwee, R. G. & Makriyannis, A. J. Med. Chem. 37, 1889-1893 (1994))。脂肪酸は、SerdarevichおよびCarrollの手法と同様にして調製することができる(Serdarevich, B. & Carroll, K. K. J. Lipid Res. 7, 277-284 (1966))。放射能標識した脂肪酸エタノールアミドは、Desarnaud, F., Cadas, H. & Piomelli, D. (1995) J. Biol. Chem. 270, 6030-6035によって記載されているように、塩化アシル(Nu-Check Prep, Elysian, MN)と[3H]エタノールアミン(10-30 Ci/mmol; American Radiolabeled Chemicals, St. Louis)との反応によって調製することができる。化合物は、フラッシュカラムクロマトグラフィーまたはHPLCによって精製することができる。化合物の実体は、NMRおよび/またはガスクロマトグラフィー−質量分析法ならびに薄層クロマトグラフィーの使用によって立証することができる。
【0210】
出発試薬および原料は、Avanti Polar Lipids、Cayman Chemicals(Ann Arbor, MI)、Nu-Check Prep、Research BiochemicalsまたはSigmaから購入することができる。つまり、Giuffrida, A.らによって教示されている方法(Lipid Second MessengersのGiuffrida, AおよびPiomelli, D.(Laycock, S.G. and Rubin, R.P. Eds. pp. 113-133 CRC Press LLC, Boca Raton, Florida)およびDevaneら(Devane W., Hanus, L. et al. Science 258,1946-1949 (1992))を参照)にしたがって、非標識または標識した脂肪酸アシルエタノールアミンを、対応する脂肪酸アシル塩化物と非標識または標識したエタノールアミンとの反応によって合成することができる。脂肪酸塩化物をジクロロメタンに溶解し(10mg/ml)、エタノールアミンと-0.4℃で15分間反応させることができる。反応物は、精製水の添加によって急冷することができる。激しく撹拌したのち、相を分離させる。上の水相を捨てる。有機相を2回水洗する。この水洗が未反応エタノールアミンを除去する。この方法は、脂肪酸アシルエタノールアミンの定量的形成を提供する。エタノールアミンを窒素気流下で濃縮乾固し、ジクロロメタンのような有機溶媒中、20mMの濃度で再構成することができる。得られる脂肪酸アシルエタノールアミン溶液は、必要とされるまで、-20℃で貯蔵することができる。
【0211】
脂肪酸カルボン酸基、第一級および第二級アミンならびに第一級アルコール基の化学は当業者に周知である。そのエタノールアミン部に多様な置換基を有する脂肪酸エタノールアミドは、多くの方法で形成することができるが、もっとも好ましくは、対応する置換エタノールアミンおよび脂肪酸部分で出発することによって形成することができる。このような置換エタノールアミンは、アルキルアミノエタノールエーテルおよびアシルアミノエタノールエステルならびに第二級アルキルエタノールアミンを含むであろう。または、特定の脂肪酸エタノールアミドを、対応する脂肪酸エタノールアミドから、適当な置換基の付加によって合成することもできる。
【0212】
実施例2 インビボの脂肪酸エタノールアミド(FAE)および本発明の他の化合物をスクリーニングする方法
動物
オスウィスターラット(200〜350g)を使用した。手順は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに詳述されたNIHガイドラインおよび動物実験を規定するEC指令86/609/EECに準じるべきである。
【0213】
薬品
FAEおよび[2H4]FAEは、実験室で合成し(Giuffrida et al., "Lipid Second Messengers" (ed. Laychock, S. G. & Rubin, R. P.) 113-133 (CRC Press LLC, Boca Raton, FL, 1998)、1,2-ジオレイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン-N-オレイルは、Avanti Polar Lipids(Alabaster, AL)から購入し、SR141716Aは、RBI(Natick, MA)により、NIMH(N01MH30003)の化学合成プログラム(Chemical Synthesis Program)の一部として提供され、SR144528は、Sanofi Rechercheの寛大な寄贈物であり、他すべての薬物は、Tocris(Ballwin, MO)またはSigma(Saint Louis, MO)からのものであった。FAEをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、無菌食塩水中の70%DMSO(急性処置)または無菌食塩水中5% Tween 80/5%プロピレングリコール(亜慢性処置)として投与した(1ml/kg、腹腔内)。カプサイシンを10% Tween 80/10%エタノール/80%食塩水として投与し、SR141716A、SR144528、CCK-8およびCP-93129は、5% Tween 80/5%プロピレングリコール/90%食塩水として投与した(1ml/kg、腹腔内)。
【0214】
酵素アッセイ
すべての生化学的実験で、異なる絶食期間ののち、ラットを屠殺し、組織を1400および1600時間の間で収集した。ミクロソーム分画を記載(Desarnaud et al., J. Biol. Chem., 270:6030-6035 (1995))のようにして調製した。1,2-ジ[14C]パルミチル-sn-グリセロホスホコリンを基質として使用してNATアッセイを実施した(108 mCi/mmol, Amersham, Piscataway, NJ) (Cadas et al., H., J. Neurosci., 17:1226-1242 (1997))。FAAHアッセイは、[3H]アナンダミド(アラキドニル-[1-3H]エタノールアミド、60Ci/mmol、ARC, St. Louis, MO)を基質として含め、クロロホルム抽出ののち放射能を水相で計測したことを除き、(Desarnaud et al., J. Biol. Chem., 270:6030-6035 (1995))にしたがって実施した。
【0215】
HPLC/MC分析
心臓穿刺によって得た血液から血漿を調製し(Giuffrida et al., Anal. Biochem., 280:87-93 (2000))、27G 1/2ニードル(Precisionglide, USA)を使用して大槽からCSFを収集した。FAEおよびNAPEをメタノール/クロロホルムで組織から抽出し、カラムクロマトグラフィーによって分別した(Giuffrida et al., "Lipid Second Messengers" (ed. Laychock, S.G. & Rubin, R.P.) 113-133 (CRC Press LLC, Boca Raton, FL, 1998))。FAEを、HPLC/MSにより、同位体希釈分析法を使用して定量した(Giuffrida et al., Anal. Biochem., 280:87-93 (2000))。個々のNAPE種を、HPLC/MSにより、外標準分析法を使用して特定し、定量した(Calignano et al., Nature, 408:96-101 (2000))。
【0216】
血液化学
市販のキット(Sigma, St. Louis, MO)を使用して、血漿β-ヒドロキシ酪酸およびグリセロールを計測した。血漿プロラクチン、コルチコステロンおよび黄体形成ホルモンをラジオイムノアッセイによって定量した(Navarro et al., Neuroreport, 8:491-496 (1997))。
【0217】
給餌実験
急性実験
24時間絶食させたラットで、食物提示の15分前に薬物を投与して、食物摂取を計測した(Navarro et al., J. Neurochem., 67:1982-1991 (1996))。
亜慢性実験
不断給餌ラットに対し、3日間、溶媒を注射した。4日目に、ラットを二つの等しいグループに分け、連続7日間、溶媒またはOEAを毎日注射し(1900時間で5mg/kg)、その間に体重、食物摂取および水摂取を計測した。
【0218】
条件付き味覚嫌悪
ラットを24時間絶水させたのち、4日間、30分の試験期間中、目盛り付きボトルから水を飲むように慣れさせた。5日目に、水を0.1%サッカリン溶液に換え、30分後、溶媒、OEA(20mg/kg)または塩化リチウム(0.4M、7.5ml/kg)を注射した。その後2日間、30分の試験期間中、水消費量を記録した。その後、ラットに水またはサッカリンを提示し、飲む量を計測した。
【0219】
食物に関するオペラント反応
ラットを、定率1(FR1)強化スケジュールで食物を得るためにレバー押しするように訓練し、その間、1匹あたり1日20gの餌に食制限した(Rodriguez de Fonseca et al., Acta Pharmacol. Sin., 20:1109-1114 (1999))。ひとたび安定な反応が達成されると、ラットを、FR5タイムアウト2分食物強化スケジュールを取得するように訓練し、食物へのアクセスを制限された状態に維持した。安定なベースラインが得られると、ラットを使用して、レバー提示の15分前に投与した溶媒またはOEA(1、5、20mg/kg)の効果を試験した。試験期間は60分であった。
【0220】
他の行動アッセイ
溶媒またはOEAの投与(20mg/kg、腹腔内)後、記載(Navarro et al., Neuroreport, 8:491-496 (1997))のようにして、高架式迷路試験を実施した。溶媒またはOEA(20mg/kg)の注射から15分後、露地水平活動(Beltramo et al., J. Neurosci., 20:3401-3407 (2000))およびホットプレート痛覚試験(55℃)(Beltramo et al., Science, 277:1094-1097 (1997))の閾値を計測した。デジタル温度計を使用して直腸温度を計測した(Martin-Calderon et al., Eur. J. Pharmacol., 344:77-86. (1998))。
【0221】
インサイチューハイブリダイゼーション
5日間かけてラットを、取り扱いおよび注射処置に慣れさせた。6日目、溶媒もしくは薬物OEA(10mg/kg、腹腔内)またはオレイン酸(10mg/kg)を投与し、60分後、ラットを麻酔下での断頭によって屠殺した。c-fos用の35S標識cRNAプローブ(Guthrie et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90:3329-3333 (1993))およびコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)(Lauterborn et al., Brain Res. Mol. Brain Res., 17:59-69 (1993))を使用してインサイチューハイブリダイゼーション分析を実施した。1匹あたり少なくとも3個の組織切片から平均ハイブリダイゼーション密度を決定した。一方向分散分析法(ANOVA)を使用したのち一対比較のためのテューキー・クレーマー事後検定によって統計的有意性を評価した。
【0222】
データ解析
結果をn回の別々の実験の平均±標準誤差として表す。グループ間の差の有意性は、断りない限り、ANOVAを使用したのちスチューデント・ニューマン・クールズ事後検定によって評価した。
【0223】
実施例3 ラットにおけるOEAおよび他のFAEレベルに対する飢餓の影響
一つの態様で、本発明は、体重および/または体脂肪を落とす必要のある個人を絶食前および/または絶食中のOEAレベルに関して試験する処置法を提供する。そして、絶食前または絶食に反応して低レベルのOEAを有する個人を特にOEA処置の対象にする。
【0224】
ラットを絶食させ、その間、心臓血中のFAEレベルを、エレクトロスプレー質量分析法(MS)と組み合わせた高速液クロマトグラフィー(HPLC)によって定期的に計測した。血漿OEAは、絶食のうち最初の12時間はベースラインレベルにとどまり、18〜24時間で顕著に増大し、30時間で正常に戻った(図1a)。そのような効果は、絶水(図1b)またはストレス要因の適用、たとえば拘束不動化およびリポ多糖(LPS)投与の後で認められなかった[pmol/ml単位、10.3±0.8、15分間の不動化の60分後で8.4±1.6、LPS注射(1mg/kg)後で7.0±0.7、n=6〜9]。血漿PEAは、これらの処置のいずれによって有意な影響を受けなかったが(データは示さず)、アナンダミドは、絶食によって急速に減少し、実験の全期間にわたってベースライン未満にとどまった(図1d)。アナンダミドレベルまた、不動化後に低下し(pmol/ml単位、対照で3.6±0.4、不動化で1.1±0.5、n=7〜8、P<0.01)、LPS処置後にも低下したが(対照で2.0±0.5、LPSで0.2±0.2、n=6、P<0.01)、絶水後では有意に低下しなかった(図1e)。これらの結果は、循環OEAレベルが飢餓の間に一過的に上昇することを示す。この反応は、アナンダミドおよび他のFAEよりもOEAに対して選択的であり、血中グリセロールおよびβ-ヒドロキシ酪酸の上昇と時間的に合致し(表1)、主要な燃料としての炭水化物から脂肪酸へのエネルギー代謝の移行を合図する(Cahill, G. F., Clin. Endocrinol. Metab., 5:397-415 (1976))。
【0225】
(表1)絶食中のラットにおけるβ-ヒドロキシ酪酸(β-HBA)およびグリセロールの血漿レベル

濃度はmg/dlで示す。*P<0.05、n=1グループあたり3
【0226】
脳髄液中のOEAレベルは絶食によって有意な影響を受けず(図1c)血漿OEAの急上昇がCNSの外に起因することを暗示している。この仮説を試験するため、様々なラット組織におけるOEA代謝に対する飢餓の影響を調査した。動物細胞がOEAおよび他のFAEを生成し、分解する生化学的経路は、三つの主要な酵素的工程を含むと考えられる。カルシウムイオン刺激NAT活性が脂肪酸基を供与体リン脂質のsn-1位置からホスファチジルエタノールアミンの第一級アミンまで移動させてNAPE2を生成する(Schmid et al., Chem. Phys. Lipids, 80:133-142 (1996); Piomelli et al., Neurobiol. Dis., 5:462-473(1998))。未知のホスホリパーゼDによるNAPE中の末端ホスホジエステル結合の切断がFAEを生成し(Schmid et al., Chem. Phys. Lipids, 80:133-142 (1996); Piomelli et al., Neurobiol. Dis., 5:462-473 (1998))、それらが最終的に細胞内脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)によって脂肪酸およびエタノールアミンに分解される(Schmid et al., J. Biol. Chem., 260:14145-14149 (1985); Cravatt et al., Nature, 384:83-87 (1996))。絶食(18時間)は、白色脂肪組織中ではNAT活性の顕著な増大を伴ったが(図2a)、脳、胃または腎臓の中では伴わなかった(図2b、d、データは示さず)。肝臓、腸および骨格筋では、NAT活性は絶食によって低下した(図2c、d、データは示さず)。これらの酵素的変化は、NAPE組織含有量の対応する変化と平行して起こった。OEA前駆体アルク-1-パルミトエニル-2-アラキドニル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン-N-オレイル(NAPE 1、図3a)およびアルク-1-パルミチル-2-アラキドニル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン-N-オレイル(NAPE 2、図3a)およびPEA前駆体アルク-1-パルミチル-2-アラキドニル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン-N-パルミチル(図示せず)をはじめとするいくつかのNAPE分子種がラット組織中に存在する。NAT活性計測値と合致して、絶食は、脂肪中のNAPE含有量を増大させ、肝臓中のNAPE含有量を減少させた(図3b、c)。
【0227】
NAPE生合成およびFAE形成は密に連結したプロセスであるため(Cadas et al., H., J. Neurosci., 17:1226-1242 (1997))、飢餓が脂肪細胞中でOEAおよび他のFAEのレベルを高めるが、他の組織では高めないと予想するかもしれない。したがって、飢餓ラットからの脂肪は、不断給餌対照ラットからの脂肪よりも多くのOEAおよびPEAを含有したが(図3d、データは示さず)、脳、胃および腸においてそのような差は見られなかった(データは示さず)。しかし、予想に反して、OEAおよびPEAの肝臓含有量は、不断給餌ラットにおけるよりも絶食ラットにおけるほうが高かった(図3d、データは示さず)。この不一致は、FAE再捕捉および代謝における肝臓の想定される役割と矛盾しない、この臓器によるFAEの蓄積によるものかもしれない(Bachur et al., J. Biol. Chem., 240:1019-1024 (1965); Schmid et al., J. Biol. Chem., 260: 14145-14149 (1985))。
【0228】
FAAHによって触媒される脂肪酸およびエタノールアミンへの加水分解は、FAE分解における主要工程である(Bachur et al., J. Biol. Chem., 240:1019-1024 (1965); Schmid et al., J. Biol. Chem., 260:14145-14149 (1985); Cravatt et al., Nature, 384:83-87 (1996); Desarnaud et al., J. Biol. Chem., 270:6030-6035 (1995))。絶食は、脂肪細胞膜中でFAAH活性を大いに低下させたが、脳、肝臓、胃、腸、腎臓および骨格筋中でのFAAH活性には影響を及ぼさなかった(図2a〜e、データは示さず)。したがって、絶食は、白色脂肪中のOEAおよび他のFAEのレベルを、脂肪分解中に起こる他の反応とは機序的に異なる二つの相乗的な方法で高めることができる。NAT活性の刺激は、NAPEおよびFAEの生合成の増大を招くことができ、FAAH活性の抑制は、新たに合成されたFAEの寿命を延ばすことができる。いくつかの組織が血流中のOEAの正常なレベルに貢献するかもしれないが、脂肪中に認められる動的な生化学的変化が、飢餓中にOEAを生成する際のこの組織の重要な役割を強調する。
【0229】
実施例4 OEAおよび他のFAEによる食物摂取の抑制
ラットにおける食物摂取に対する全身投与OEAの影響は、24時間の絶食を使用して評価することができる。この系では、OEAは、用量および時間依存的な食物摂取抑制を生じさせた(図4a、b)。この反応の選択性を定義するための、様々なOEA類似体を、摂食低下を生じさせるそれらの能力に関して評価した。
【0230】
アナンダミドおよびオレイン酸は影響を及ぼさなかった。
【0231】
パルミチルエタノールアミドは有効であったが、効力はOEAよりも有意に低かった。
【0232】
エライジルエタノールアミド(非天然のOEA類似体)は、効力がOEAと類似していた(図4a)。
【0233】
これらの結果は、OEAが構造的に選択的なやり方で食事を減らすこと、および本発明による使用に関して他の脂肪酸エタノールアミド様化合物を特定することができることを示す。
【0234】
実施例5 カンナビノイド受容体活性化因子に対する特異性
OEA摂食低下のための必須分子は、アナンダミドとその公知のカンナビノイド標的との相互作用に関与する必須分子とは異なる(Khanolkar et al., Life Sci., 65:607-616 (1999))。カンナビノイド受容体拮抗薬は、インビボではOEA摂食低下に影響せず、OEAは、インビトロでラット脳膜へのカンナビノイド結合に取って代わらなかった。したがって、その構造およびアナンダミドとの生物発生的関係にもかかわらず、OEAは、内在性カンナビノイド系に依存して食欲不振を生じさせるのではない。
【0235】
実施例6 持続的体重減少
いくつかの態様では、本発明の化合物は、哺乳動物に長期的に投与されると、持続的な脂肪減少または体重減少を提供する。多様な薬物が急性投与ののち食事を抑制するが、処置が長引くと抑制することができないため、この効果は有利である(Blundell, J., Trends Pharmacol. Sci., 12:147-157 (1991))。
【0236】
OEAをラットに亜慢性投与した。1日1回7日間のOEA注射(5mg/kg、腹腔内)が、累積食物摂取において、小さな程度ではあるが有意な減少を生じさせ(図5a)、それは体重増の深い抑制を伴うものであった(図5b、c)。OEAは水摂取に影響しなかった(図5d)。体重に対するOEAの影響は、食物消費におけるその適度な減少によっては部分的にしか説明されず、他の要因、たとえばエネルギー消費の刺激またはエネルギー蓄積の抑制がこの効果に寄与するかもしれないことを示唆する。
【0237】
実施例7 FAEは末梢作用部位を有するかもしれない
本発明は、その局面の一つで、末梢作用部位を有する化合物を提供する。そのような部位は、中枢神経系副作用の危険性を減らす際に有利である。
【0238】
OEAは、末梢投与された場合でも効力を示すが、脳室に直接注射した後では効果がなく(表2)、この化合物の主要な作用部位がCNSの外に位置しているかもしれないことを示唆した。さらなる実証として、成体ラットを神経毒カプサイシンで処置することにより、迷走神経および他の末梢神経中の感覚神経繊維を化学的に破壊した(Kaneko et al., Am. J. Physiol, 275:G1056-G1062 (1998))。カプサイシン処置ラットは、末梢投与されたコレシストキニン-8(CCK-8)に反応せず(図6a、c)、対照よりも多量の水を飲み(図6b、d)、角膜化学感覚反射を喪失し(データは示さず)、これら三つは、神経毒が遠心感覚神経を破壊したという指標である(MacLean, D. B., Regul. Pept., 11:321-333 (1985); Ritter et al., Am. J. Physiol, 248:R501-R504 (1985); Curtis et al., Am. J. Physiol., 272:R704-R709 (1997))。処置ラットはまた、OEA(10mg/kg、腹腔内)に反応しなかったが、CNS中の5-HT1B受容体を標的とする化合物CP-93129に対しては正常に反応した(図6a、c)(Lee et al., Psychopharmacology, 136:304-307 (1998))。これらの所見は、OEAが末梢部位に作用することによって摂食低下を生じさせ、この効果には感覚神経繊維が必要であるという仮説を裏付ける。
【0239】
(表2)食品摂取に対する脳室内プラナミドの影響

食物提示の15分前に、24時間絶食させたラットにプラナミド/OEA(プラナ、1匹あたりμg)または溶媒(DMSO、5μl)を投与した。n=1グループあたり12
【0240】
本発明の化合物は、末梢感覚神経入力を使用して食欲を抑制することができる。食欲抑制に関連する末梢感覚神経入力は、脳幹の孤束核(NST)ならびに視床下部の弓状および室傍核(PVN)を含むいくつかのCNS構造を動員する(Schwartz et al., Nature, 404:661-671 (2000))。OEA誘発摂食低下の際に関与する脳経路を識別するため、活動調整遺伝子c-fos(Curran et al., Oncogene, 2:79-84 (1987))のmRNAレベルを、OEA、オレイン酸および溶媒の全身投与ののちインサイチューハイブリダイゼーションによってマッピングした。対照と比較すると、OEA(10mg/kg、腹腔内)は、c-fos mRNAレベルにおいて、PVN、視索上核(図7a)およびNST(図7c)に高度に限局化された増大を誘発した。この増強は、他の脳領域におけるc-fos発現がOEA処置によって有意に影響されなかった限りにおいて、これらの区域に特異的であった(図7b、d)。OEAがNST(CNSへの迷走神経性感覚入力を処理する)およびPVN(中枢異化作用シグナルの指揮のための主要部位)におけるc-fos mRNA発現を刺激するという発見(Schwartz et al., Nature, 404:661-671 (2000))は、食欲不振の末梢神経媒介物質としてのこの脂質の生理学的役割と合致している。
【0241】
OEAが、非特異的な行動抑制状態を誘発することによって食事を減らしたということは考えられる。これが当てはまるならば、OEAは、条件付き味覚嫌悪を生じさせるはずであり、それは、塩化リチウムをはじめとする多数の侵害性物質(Green et al., Science, 173:749-751 (1971))によってラットで容易に誘発させることができる(図4c)。しかし、OEAの最大用量(20mg/kg、腹腔内)は、このアッセイではほとんど効果がなく(図4c)、この化合物が嫌悪誘発性ではないかもしれないことを示唆した。いくつかのさらなる観測がOEAの行動的特異性を裏付けている。OEAは、水摂取、体温、痛覚閾値(図4d〜f)または視床下部・脳下垂体・副腎(HPA)軸の活動を変化させなかった(表3)。そのうえ、OEAは、不安様症候を生じさせず(図4g)、食物に関する運動活性およびオペラント反応を低下させたが、摂食低下を生じさせるのに要する用量よりも実質的に高い用量で低下させた(図4h〜i)。この薬理学的側面は、OEAを、他の食欲抑制剤、たとえばアンフェタミンおよびグルカゴン様ペプチド1(これらの効果はしばしば嫌悪、多動性、不安およびHPA軸の活性化を含む)ならびに内在性カンナビノイドアナンダミド(これは、部分的に飽食した動物における食物摂取を刺激し、痛覚閾値を高め、体温を低下させ、HPA軸を活性化する)から区別する(Pertwee, R. G., Exp. Opin. Invest. Drugs, 9:1553-1571 (2000))。
【0242】
(表3)血漿ホルモンレベルに対するOEAの影響

表2中、血漿コルチコステロン(B)、プロラクチン(PRL)および黄体形成ホルモン(LH)レベルは、溶媒またはプラナミドの注射(プラナ、mg/kg、腹腔内)から60分後に採集した血漿試料中でラジオイムノアッセイによって計測し、ng/ml単位で表したものである。n=1グループあたり6〜9。
【0243】
OEAは、生理学的に適切な用量で摂食低下を誘発する。半最大有効量の投与(5mg/kg、腹腔内)の1時間後、循環OEAレベル(16.1±2.6pmol/ml)は、ベースライン(10.1±1.1、P<0.05、スチューデントt検定、n=5)よりも有意に高かったが、18時間絶食させたラットで計測されたレベルよりも低かった(図1a)。したがって、飢餓中に血液中OEAによって到達する濃度は、顕著な行動反応を誘発するのに十分であることができる。
【0244】
実施例8 本発明の体脂肪減少性化合物の特定
以下の例は、OEAを正の対照として使用して食欲抑制物質を特定する方法を実証する。特に、OEAの合成、体脂肪減少の計測および脂肪酸酸化を論じる。
【0245】
OEAの合成
塩化オレオイルは、Nu-Check Prep(Elysian, MN)から購入するか、標準的手順にしたがって調製される。塩化オレオイルをジクロロメタンに溶解し(10mg/ml)、5当量のエタノールアミンと0〜4℃で15分間反応させる。精製水の添加によって反応を止める。激しく撹拌し、相分離させたのち、上の水相を捨て、有機相を2回水洗して未反応エタノールアミンを除去する。得られるOEAをN2流下で濃縮乾固し、クロロホルム中20mMで再構成し、使用するまで-20℃で貯蔵する。
【0246】
候補化合物によって誘発される体脂肪減少の計測
化合物が体脂肪を減らす能力は、多数の方法によって評価することができる。たとえば、適量のOEAおよび/または候補化合物を腹腔内注射によってラットに投与する。OEAおよび候補化合物は、無菌食塩水中70% DMSO、無菌食塩水中5%Tween 80/5%プロピレングリコールまたは10%Tween 80/10%エタノール/80%食塩水として調合することができる。OEA 5mg/kgを正の対照として使用することができる。候補化合物の投与量は、たとえば、1kgあたり1〜25mgの範囲であることができる。一般に、各候補化合物1、2、5、10、15および20mg/kg用量を異なる組のラットに投与して、どの用量が最適であるのかを決定することができる。注射は、7〜14日間、ラットの主要な食事の30分前に実施することができる。
【0247】
総体脂肪に対する候補化合物の効果は、皮膚ひだキャリパを使用してラットの体脂肪の直接計測を実施することによって測定することができる。OEAおよび/または候補化合物の投与前ならびにOEAおよび/または候補化合物の投与中および投与後48時間ごとに、ラットの背中、腹部、胸部、前肢および後肢の皮膚をキャリパでつまんで計測値を得ることができる。つまんだ部位の少なくとも二箇所における計測値の差がラットの総体脂肪の変化を反映する。
【0248】
候補化合物によって誘発される脂肪酸酸化の計測
化合物はまた、脂肪酸代謝に対する効果に関してアッセイすることができる。脂肪酸代謝に対する候補化合物の効果は、肝細胞の初代培養物における脂肪酸酸化の計測によって計測することができる。肝細胞は、ケトン体および二酸化炭素へのオレイン酸酸化の速度を測定するために使用することもできる。このような細胞は、Beynen et al., in Diabetes 28:828 (1979) によって記載されているように、成体ラット肝臓から酵素的消化によって単離することができる。細胞は通常、Guzman & Geelen, Biochem. J. 287:487 (1992) によって記載されているように、懸濁培養し、ウシ血清アルブミンおよびグルコースで補足されたクレブス・ヘンセライト炭酸水素培地でインキュベートする。培養細胞のタンパク質濃度を測定し、細胞を、反応混合物中1mlあたりタンパク質4〜6mgが存在するように2ml培地に播種することができる。細胞は、10μM OEAの存在または非存在下、[14C]オレイン酸(Amersham)とともに37℃で10分間インキュベートすることができ、反応は、2M過塩素酸200μlで止めることができ、酸可溶性生成物をクロロホルム/メタノール/水(容量比5:1:1)で抽出することができる。水相を除去し、さらに2回洗浄することができる。タンパク質濃度は、ローリーアッセイを使用して測定することができる。ケトン体へのオレイン酸転換の速度は、毎時タンパク質1mgあたり酸化されるオレイン酸のnmolとして表すことができ、液体シンチレーション計数を使用して測定することができる。したがって、OEAは、オレイン酸酸化を21±6%高める(n=4、p<0.01対対照インキュベーション、スチューデントt検定)。
【0249】
実施例9 脂肪酸代謝に対するOEAの影響
オレオイルエタノールアミド(OEA)は、食欲を抑制することによってだけでなく、おそらくは体脂肪異化作用を増強することによっても体重を減らす。主要な体脂肪燃焼組織(ヒラメ筋、肝臓、培養心筋細胞および星状細胞)における脂肪酸酸化に対するOEAの影響を試験した。OEAは、肝臓、骨格筋(ヒラメ筋)および心細胞の初代培養物において脂肪酸酸化を有意に刺激するが、脳由来の星状膠細胞培養物では影響はない。加えて、OEAは、初代白色脂肪組織細胞からのトリアシルグリセロール貯蔵の有意な可動化を誘発する。表4は、これらの細胞における脂肪酸酸化に対するOEAの方法および影響を詳述する。構造活性相関実験が、骨格筋脂肪酸酸化に対するOEAの影響が特異的であるという証拠を提供する(図8)。したがって、OEAの効果は、加水分解耐性相同体メチルOEAおよび―部分的でしかないが―パルミチルエタノールアミド(PEA)によって模倣されるが、アラキドニルエタノールアミド(AEA)またはオレイン酸(OA)によっては模倣されない。簡潔にいうと、これらの結果は、脂質酸化および可動化がOEAによって増強され、OEAの影響が末梢部位に限定されるということを示す。
【0250】
(表4)

【0251】
引用文献:

【0252】
実施例10 腸における内在性OEAの役割
腸内OEA生合成に対する摂食の影響を研究した。高速液クロマトグラフィー/質量分析法が、不断給餌ラットからの小腸組織が実質的な量のOEA(1gあたり354±86pmol、n=3)を含有するということを明らかにした。腸内OEAレベルは、絶食ののち顕著に低下したが、再給餌ののち、ベースラインに復帰した。対照的に、胃の中ではそのような変化は認められなかった(1gあたりpmol単位、対照で210±20、飢餓で238±84、飢餓/再給餌で239±60、n=3)。腸内OEAレベルの変化は、OEA形成に参与するNAT活性の平行的な変化を伴ったが、OEA加水分解を触媒する脂肪酸アミド加水分解酵素活性の平行的な変化を伴わなかった。これらの発見は、飢餓および採食が小腸におけるOEAを相互に調整するということを示唆する。OEAの腹腔内供給源と合致して、飢餓状態のラットにおける血漿OEAレベルは、大静脈血中よりも門脈血中で高いということがわかった(1mlあたりpmol単位、門脈で14.6±1.8、大静脈で10.3±2.8、n=5)。今のところ、他の腹腔内組織のOEA形成への寄与を排除することはできない。これらの結果は、OEA系を採食行動に利用する多くの介入処置を示唆する。このモデルによると、食物摂取は、小腸およびおそらくは他の腹腔内組織におけるOEA生合成を促進するNAT活性を刺激するかもしれない。新たに生成されたOEAは、局所感覚神経繊維を活性化することができ、この局所感覚神経繊維が逆に、NSTおよびPVNのような脳構造と係わることにより、採食を抑制するのかもしれない。
【0253】
われわれの結果は、採食の末梢調整におけるOEAの予想外の役割を明らかにし、体重または体脂肪を減らす、体重増もしくは体脂肪増を予防する、食欲を抑制する、または食物探求行動もしくは食物摂取を減らし、食事障害、過体重もしくは肥満を処置するための新規な薬を開発するための枠組みを提供する。これらの薬は、OEA類似体および相同体を含むだけでなく、OEA形成に作用することによってOEAレベルを制御する薬剤ならびに上記で開示したような加水分解系および酵素をも含むであろう。
【0254】
実施例11 OEAの経口活性
ラットにおける食物摂取に対するOEAの経口投与の効果を図9に示す。OEAを50mg/kgでラットに経口投与すると、深く長期的な(24時間を超える)食物摂取抑制が生じる。25mg/kgの用量はさほど顕著な効果を示さない。
【0255】
本明細書で引用するすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願それぞれが具体的かつ個別に参照により組み入れられるかのごとく、本開示と矛盾しない程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0256】
前記発明は、理解を容易にするための例示および実施例によっていくらか詳細に説明したが、本発明の教示を考慮すると、請求の範囲の本質または範囲を逸することなく特定の変更および改変を本発明に加えることができることが当業者には容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1】飢餓がラットにおける循環オレオイルエタノールアミド値を高める。(a)血漿オレオイルエタノールアミド(オレイルエタノールアミド、OEA)値に対する絶食の影響の経時変化、(b)血漿オレオイルエタノールアミド値に対する絶水(18時間)の影響、(c)脳髄液(CSF)中オレオイルエタノールアミド値に対する絶食(18時間)の影響、(d)血漿アナンダミド(アラキドニルエタノールアミド、AEA)値に対する絶食の影響の経時変化、(e)血漿アナンダミド値に対する絶水(18時間)の影響、(f)CSF中アナンダミド値に対する絶食(18時間)の影響。結果は、平均±標準誤差として表す。星印、P<0.05、星印2個、P<0.01、n=1グループあたり10。
【図2】脂肪組織が循環オレオイルエタノールアミドの主要供給源である。様々なラット組織(a)脂肪、(b)脳、(c)肝臓、(d)胃、(e)小腸におけるN-アシルトランスフェラーゼ(NAT)および脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)活性における飢餓誘発変化。白棒は、不断給餌ラットの場合、黒棒は、18時間絶食させたラットの場合。活性は毎分タンパク質1mgあたりpmolの単位である。星印、P<0.05、n=3。
【図3】脂肪組織が循環オレオイルエタノールアミドの主要供給源である。脂肪および肝組織中のNAPEおよびオレオイルエタノールアミド(オレオイルエタノールアミド、OEA)含有量における飢餓誘発変化。(a)オレオイルエタノールアミド前駆体アルク-1-パルミトエニル-2-アラキドニル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン-N-オレイル(左側、NAPE 1)およびアルク-1-パルミチル-2-アラキドニル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン-N-オレイル(右側、NAPE 2)の構造。(b)不断給餌ラット(上)および18時間絶食させたラット(下)における、NAPE 1(左側、m/z=987、脱プロトン化分子、[M-H]-)およびNAPE 2(右側、m/z=1003、[M-H]-)に特徴的な選択されたイオンの代表的なHPLC/MSトレーシング。(c)絶食(18時間)が、脂肪中のNAPE種の含有量を増大させ、肝臓中のNAPE種の含有量を減少させる。オレオイルエタノールアミド前駆体NAPE 1およびNAPE 2ならびにPEA前駆体NAPE 3はじめとする特定可能なすべてのNAPE種を定量した。(d)絶食(18時間)が、脂肪および肝臓中のオレオイルエタノールアミド含有量を増大させる。白棒は、不断給餌ラットの場合、黒棒は、18時間絶食させたラットの場合。星印、P<0.05、スチューデントt検定、n=3。
【図4】オレオイルエタノールアミド/プラナミドが食物摂取を選択的に抑制する。(a)24時間食物をはく奪したラットにおける食物摂取に対するオレオイルエタノールアミド(オレオイルエタノールアミド/OEA/プラナミド)(腹腔内、白四角)、エライジルエタノールアミド(白丸)、PEA(三角)、オレイン酸(黒四角)およびアナンダミド(黒丸)の用量依存性効果。溶媒のみ(塩水中70%DMSO、1kgあたり1ml、腹腔内)は、急性食物摂取に対して有意な影響を及ぼさなかった。(b)食物摂取に対するオレオイルエタノールアミド(1kgあたり20mg、腹腔内)(四角)または溶媒(ロゼンジ)の摂食低下効果の経時変化。(c)条件付き味覚嫌悪アッセイにおける溶媒(V)、塩化リチウム(LiCl、0.4M、1kgあたり7.5ml)またはオレオイルエタノールアミド(1kgあたり20mg)の効果。白棒は水摂取の場合、黒棒はサッカリン摂取の場合。以下に対する溶媒(V)またはオレオイルエタノールアミド(1kgあたり5または20mg)の効果。(d)水摂取(4時間あたりml単位で表す)、(e)体温、(f)ホットプレート無痛覚試験でジャンプするまでの潜伏時間、(g)高架式迷路不安試験で腕を開いて費やした%時間、(h)露地活動試験における横断回数、(i)食物に関するオペラント反応の回数。星印、P<0.05、n=1グループあたり8〜12。
【図5】食物摂取および体重に対する亜慢性オレオイルエタノールアミド投与の効果。(a)累積食物摂取に対するオレオイルエタノールアミド(オレオイルエタノールアミド、OEA)(1kgあたり5mg、腹腔内、1日1回)(白棒)または溶媒(無菌塩水中5%Tween 80/5%プロピレングリコール、黒棒)の効果、(b)体重変化に対するオレオイルエタノールアミド(三角)または溶媒(四角)の効果の経時変化、(c)正味体重変化に対するオレオイルエタノールアミドまたは溶媒の効果、(d)累積水摂取に対するオレオイルエタノールアミド(1kgあたり5mg)または溶媒の効果。星印、P<0.05、星印2個、P<0.01、n=1グループあたり10。
【図6】オレオイルエタノールアミド誘発食欲不振における末梢感覚神経繊維の役割。a対照ラットおよびcカプサイシン処置ラットにおける食物摂取に対する溶媒(V)、オレオイルエタノールアミド(オレオイルエタノールアミド/プラナミド/OEA)(1kgあたり5mg、腹腔内)、CCK-8(1kgあたり10μg)および中枢活性5-HT1B受容体作動薬CP-93129(1kgあたり1mg)の効果。(b)対照ラットおよび(d)カプサイシン処置ラットにおける水摂取。星印、P<0.05、n=1グループあたり8〜12。
【図7】オレオイルエタノールアミド/プラナミドは、エネルギーホメオスタシスおよび採食行動に関連する別々の脳領域でc-fos mRNA発現を増大させる。(a)フィルムオートラジオグラフの擬似カラー画像は、オレオイルエタノールアミド(右断面)が、インサイチューハイブリダイゼーションによって評価される、室傍(PVN)核および視索上(SO)核でのc-fos mRNA標識の顕著かつ選択的な増大を顕在化させることを示す。溶媒処置したラットからの代表的な断面を左に示す。標識密度は色、青<緑<黄<赤によって示されている。(b)溶媒、オレオイルエタノールアミドおよびオレイン酸で処置したラットの前脳領域[PVN、SO、弓状(Arc)、第二層梨状皮質(pir)、腹側外側視床(VI)およびS1前肢皮質(S1FL)]におけるc-fos cRNA標識の定量。(c)オレオイルエタノールアミド処置ラットにおける孤束核(NST)における高められた35S c-fos mRNA発現を示すフィルムオートラジオグラフ。差し込み図は、NSTにおけるc-fos cRNA標識(赤く見える)を、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)mRNA(紫に見える)を発現する、隣接する遠心神経核(迷走神経の舌下神経核および背側運動神経核)に対するその定位によって識別したもの。(d)オレオイルエタノールアミドは、NSTにおいてはc-fos mRNA発現を増大させるが、舌下神経核(HgN)においては増大させない。星印、2個P<0.0001、n=1グループあたり5。
【図8】ヒラメ筋における脂肪酸酸化に対するOEA、オレイン酸(OA)、AEA、PEAおよびメチルOEAの効果。
【図9】OEAは経口で有効である。ラットへのOEA 50mg/kgの経口服用が、満腹感の増大による、食物摂取の深く長期的な抑制を生じさせる。25mg/kgの服用量もまた効力を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において食物摂取または食欲を減らす方法であって、哺乳動物に対し、該哺乳動物において食物摂取を減らすのに有効である量の脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を経口投与することを含む、方法。
【請求項2】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を食物とともに摂取させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食物の成分として配合されている、請求項1記載の方法。
【請求項4】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を補助食品の形態で摂取させる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
化合物または誘導体がパルミトイルエタノールアミドである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
化合物または誘導体を飲料の形態で摂取させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物において食欲を減らすニュートラシューティカルまたは補助食品を製造する方法であって、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を、ニュートラシューティカルまたは補助食品中の成分として、該ニュートラシューティカルまたは補助食品が摂取されたとき食欲を減らすのに十分な量で添加または配合することを含む方法。
【請求項9】
化合物がパルミトイルエタノールアミドである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を含む食品であって、脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を、食品が一人分として摂取されたとき食欲を減らすのに十分な量で含む食品。
【請求項11】
一人分が1〜16重量オンスである、請求項10記載の食品。
【請求項12】
一人分が1〜16容量オンスである、請求項10記載の食品。
【請求項13】
固形である、請求項10記載の食品。
【請求項14】
飲料およびスープからなる群より選択される液体である、請求項10記載の食品。
【請求項15】
添加物がパルミトイルエタノールアミドである、請求項10記載の食品。
【請求項16】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が、食品1gあたり該アルカノールアミド約0.1mg〜100mgの量である、請求項10記載の食品。
【請求項17】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が、食品1gあたり該アルカノールアミド約1mg〜約10mgの量である、請求項10記載の食品。
【請求項18】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、強化が、添加される脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食品1gあたり約0.1mgよりも多く、かつ約200mgよりも少ない量である食品。
【請求項19】
哺乳動物において脂肪酸代謝を調節する方法であって、該哺乳動物において脂肪酸代謝を調節するのに有効である量の脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を哺乳動物に経口投与することを含む、方法。
【請求項20】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を食物とともに摂取させる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食物の成分として配合されている、請求項19記載の方法。
【請求項22】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を補助食品の形態で摂取させる、請求項19記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物がヒトである、請求項19記載の方法。
【請求項24】
化合物がパルミトイルエタノールアミドである、請求項19記載の方法。
【請求項25】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を飲料の形態で摂取させる、請求項19記載の方法。
【請求項26】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が、式

(式中、nは1〜5の整数であり、aおよびbは、それぞれ非負の整数であり、aとbの和が0〜4であり、R1は水素であり、R2は、水素、非置換の(C1〜C6)アルキルおよび非置換の(C2〜C6)アシルからなる群より選択され、式の脂肪酸部分およびアルカノールアミド部分の水素原子4個までが、メチルまたは式の隣接する炭素を結合する二重結合によって置換されていてもよく、炭素cおよびdの間の結合が、アルキル、水素、C1〜C6アルキルおよび低級(C2〜C6)アシルであり、その脂肪酸部分およびアルカノール部分の水素原子4個までが、メチルまたは、隣接するならば、二重結合によって置換されており、炭素cおよびdの間の結合は、不飽和であっても飽和であってもよい)
、またはその薬剤学的に許容される塩である、請求項1〜25のいずれか一項記載の請求項。
【請求項27】
化合物がパルミトイルエタノールアミドである、請求項26記載の請求項。
【請求項28】
化合物が、エライジン酸、パルミトオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、α-リノレン酸およびγ-リノレン酸からなる群より選択される脂肪酸部分を含む、請求項26記載の請求項。
【請求項29】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、添加される脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食品1gあたり約10mgよりも多く、かつ約100mgよりも少ない量である食品。
【請求項30】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、無脂肪、低脂肪または減脂肪食品である食品。
【請求項31】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、無カロリー、減カロリーまたは低カロリー食品である食品。
【請求項32】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、無糖、減糖または低糖食品である食品。
【請求項33】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、無コレステロール、低コレステロールまたは減コレステロール食品である食品。
【請求項34】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を強化させた食品であって、無飽和脂肪、低飽和脂肪または減飽和脂肪食品である食品。
【請求項35】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体の強化が、添加される脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食品1gあたり約0.1mgよりも多く、かつ約100mgよりも少ない量である、請求項29〜34のいずれか一項記載の食品。
【請求項36】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体の強化が、添加される脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が食品1gあたり約0.1mgよりも多く、かつ約10mgよりも少ない量である、請求項29〜34のいずれか一項記載の食品。
【請求項37】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を、食品1gあたり約1.0mg〜約100mg未満の量で有する、請求項29〜34のいずれか一項記載の食品。
【請求項38】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体を、食品1gあたり約10.0mg〜約200mg未満の量で有する、請求項29〜34のいずれか一項記載の食品。
【請求項39】
脂肪酸アルカノールアミド化合物、誘導体、相同体または類似体が、式

(式中、nは0〜5であり、aとbの和は0〜4であることができ、Zは、-C(O)N(R0)-; -(R0)NC(O)-; -OC(O)-; -(O)CO-; O; NR0; およびS; からなる群より選択される要素であり、R0およびR2は、非置換または非置換のアルキル、水素、C1〜C6アルキルおよび低級(C2〜C6)アシルからなる群より独立して選択される要素であり、その脂肪酸部分およびアルカノール部分の水素原子4個までが、メチルまたは、隣接するならば、二重結合によって置換されており、炭素cおよびdの間の分子結合は、不飽和であっても飽和であってもよい)
、またはその薬剤学的に許容される塩である、請求項1〜25のいずれか一項記載の請求項。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−509066(P2007−509066A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535448(P2006−535448)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/034609
【国際公開番号】WO2005/046580
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】