説明

体表面温度チェッカー

【課題】出入りする人の体表面温度を一人ずつ確実に測定してチェックする。
【解決手段】体表面温度チェッカー1は、測定対象者が測定可能領域に存在するか否かを検出し検出情報を出力する測定対象者検出部3と、測定対象者から放射される赤外線を検知し、この検知した赤外線量に基づいて測定対象者の体表面温度を非接触で測定して温度信号を出力する体表面温度測定部2と、測定対象者検出部3からの検出情報に基づいて測定可能領域に対する測定対象者の存在及び離脱を判別し、測定可能領域内に測定対象者が存在すると判別したときのタイミングをトリガとした体表面温度測定部2からの温度信号と予め設定された閾値とを比較して温度信号が正常か否かを判別する制御部4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定領域を出入りする人の体表面温度を測定する体表面温度チェッカーに関し、特に、例えば工場、研究所などの各種施設のように人が出入りする場所の所定箇所に位置決めして設置され、出入りする人を測定対象者として体表面温度を一人ずつ非接触で測定する体表面温度チェッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定領域内における対象物の温度を監視する装置として、例えば下記特許文献1に開示される温度監視装置が知られている。この温度監視装置は、赤外線TVカメラ、A/D変換器、温度テーブル記憶メモリ、フレームメモリ、擬似カラーLUTと白黒LUTからなるLUT記憶メモリ、D/A変換器、温度設定回路、比較器を備えて構成され、赤外線TVカメラで対象物を撮像して温度データに変換された赤外線熱画像信号を得ている。そして、比較器では、LUT記憶メモリの2種類のLUTの選択を制御し、赤外線熱画像信号で表わされる温度が閾値温度外になったとき、擬似カラー熱画像信号を選択させアラームとしてTVモニタに送り、その他のときには白黒熱画像信号を選択させTVモニタに送っている。これにより、対象物のどの領域の温度が閾値を外れたかを明確かつ迅速に知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−206242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される温度監視装置は、領域内で閾値を外れた領域をカラーと白黒により色分けして識別できるようにしているが、領域内の人の体表面温度を一人ずつ確実に測定してチェックするチェッカーには適していなかった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、出入りする人の体表面温度を一人ずつ確実に測定してチェックすることができる体表面温度チェッカーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された体表面温度チェッカーは、人が出入りする場所の所定箇所に位置決めして設置され、出入りする人を測定対象者として体表面温度を一人ずつ非接触で測定する体表面温度チェッカーであって、
前記測定対象者が測定可能領域に存在するか否かを検出し検出情報を出力する測定対象者検出部と、
前記測定対象者から放射される赤外線を検知し、この検知した赤外線量に基づいて前記測定対象者の体表面温度を非接触で測定して温度信号を出力する体表面温度測定部と、
前記測定対象者検出部からの検出情報に基づいて前記測定可能領域に対する前記測定対象者の存在及び離脱を判別し、前記測定可能領域内に前記測定対象者が存在すると判別したときのタイミングをトリガとした前記体表面温度測定部からの温度信号と予め設定された閾値とを比較して前記温度信号が正常か否かを判別する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載された体表面温度チェッカーは、請求項1の体表面温度チェッカーにおいて、
前記測定可能領域に対する前記測定対象者の存在か否かの判別結果および/または前記温度信号が正常か否かの判別結果に応じて報知を行う報知部をさらに有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載された体表面温度チェッカーは、請求項1又は2の体表面温度チェッカーにおいて、
前記温度信号の判別を行った後に前記測定対象者が前記測定可能領域から離脱したと前記制御部が判別したときに待機状態に戻ることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載された体表面温度チェッカーは、請求項2又は3の体表面温度チェッカーにおいて、
前記体表面温度測定部からの温度信号を受けた後、前記温度信号が正常か否かの判別結果が出る前に、前記測定対象者が前記測定可能領域内から離脱したと前記制御部が判別したときに、測定異常である旨を識別して前記報知部が報知し、所定時間報知後に待機状態に戻ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、出入りする人の体表面温度を一人ずつ確実に測定してチェックすることができる。
【0011】
また、測定対象者が測定可能範囲に存在するか否かの判別機能、測定対象者が測定可能範囲に存在するときの測定対象者の体表面温度が正常か否かの判別機能を備えた構成なので、短時間で測定対象者の体表面温度を測定することができる。
【0012】
さらに、体表面温度チェッカーの設置後は人が体表面温度チェッカーを直接操作する必要がなく、非接触で簡単に測定対象者の体表面温度を測定することができる。しかも、体表面温度チェッカーに一切触れずに非接触で体表面温度を測定するため、体表面温度チェッカー1を清潔な状態に保つことができる。
従って、測定終了ごとに体表面温度チェッカーを消毒する必要なしに、多人数の測定を繰り返し連続的に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る体表面温度チェッカーのブロック構成図である。
【図2】本発明に係る体表面温度チェッカーの外観を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る体表面温度チェッカーにおける測定対象者の存在及び離脱判別時のタイミングチャートである。
【図4】本発明に係る体表面温度チェッカーにおける体表面温度OK/NG判別時のタイミングチャートである。
【図5】本発明に係る体表面温度チェッカーにおける測定異常判別時のタイミングチャートである。
【図6】本発明に係る体表面温度チェッカーにおける表示及び鳴動動作のフローチャートである。
【図7】本発明に係る体表面温度チェッカーにおける測定異常時の一連の流れを示すタイミングチャートである。
【図8】本発明に係る体表面温度チェッカーにおける体表面温度OK時の一連の流れを示すタイミングチャートである。
【図9】本発明に係る体表面温度チェッカーにおける体表面温度NG時の一連の流れを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る体表面温度チェッカーは、例えば工場、研究所などの各種施設のように人が出入りする場所の予め決められた所定箇所(例えば出入口の壁面、出入口の扉面、出入口近傍に設けた設置台など)に位置決めして設置され、危機管理対策として出入りする人の発熱の有無を検知するべく、出入りする人を測定対象者として体表面温度(顔の体表面温度)を一人ずつ非接触で測定するものである。
【0016】
図1に示すように、本例の体表面温度チェッカー1は、体表面温度測定部2、測定対象者検出部3、制御部4、記憶部5、報知部6、入出力部7の各構成要素が、図2に示すような矩形状の筐体8に装備して概略構成される。
【0017】
体表面温度チェッカー1は、図2に示す構造のホルダー(支持部材)9を用いた卓上タイプで構成され、例えば測定対象者が出入りする出入口近傍に設けた設置台に位置決めして設置される。図2に示すホルダー9は、くの字状に折曲された一対のアングル10を備えている。この一対のアングル10は、筐体8の裏面側の幅に合わせて所定の間隔を保つように、一端部10a,10a間及び折曲部10b,10b間に支柱部材11が取り付けられている。また、一対のアングル10の他端部10c,10cは、筐体8の裏面側に回動可能に軸支されている。これにより、体表面温度チェッカー1は、回動軸10dを中心として、図2の矢印A方向に回動させることで角度調整が可能となっている。
【0018】
さらに、筐体8の上面には、一人の測定対象者を決まった位置に誘導するための位置合わせ領域12が形成されたミラー13が取り付けられている。位置合わせ領域12は、例えば顔や目などの身体の一部を収めるための領域を示す矩形線、身体の一部の輪郭を象った線などで形成される。例えば矩形線からなる位置合わせ領域12を用いた場合、測定対象者は、体表面温度チェッカー1の前に立ち、位置合わせ領域12の矩形線の領域内に自分の顔が収まるようにミラー13を覗いて位置合わせする。これにより、体表面温度チェッカー1に対する測定対象者の上下左右および前後の位置が自動的に決まり、体表面温度を測定する際の測定位置の統一化を図ることができる。
【0019】
尚、体表面温度チェッカー1は、図2に示すような卓上タイプの構成に限定されるものではなく、筐体8を位置決めして設置できる構成であれば良い。例えば筐体8の両側面を背面側から回動可能に軸支したコ字状のホルダーに取り付け、このホルダーを出入口の壁面や扉面などに位置決めして体表面温度チェッカー1を設置する構成としても良い。
【0020】
体表面温度測定部2は、体表面温度チェッカー1の測定可能範囲内に存在する測定対象者から放射される赤外線を検知し、この検知した赤外線量に基づいて測定対象者の体表面温度(顔の表面温度)を非接触で測定している。さらに説明すると、体表面温度測定部2は、赤外線検知手段2aとA/D変換手段2bを備えている。赤外線検知手段2aは、例えば複数の画素を有するサーモパイル素子からなる多画素型熱型赤外線センサで構成され、集光レンズ2cを介して各画素に入射する入射赤外線を画素毎に光電変換し、この光電変換された電気信号(アナログ信号)を画素毎に出力している。A/D変換手段2bは、赤外線検知手段2aからの画素毎の電気信号(アナログ信号)をA/D変換し、このA/D変換されたディジタル信号を画素毎の熱画像データ(温度信号)として出力している。
【0021】
ここで、体表面温度測定部2について更に説明する。一般的に赤外線センサとしては、不審者の侵入を検知する人体検知センサや、火災などを検知する炎検知センサや、温度異常などを検知する温度監視センサなどとして使用されている。しかし、これらの赤外線センサは、赤外線を検知する素子が一画素である。このため、測定対象は「点」の温度のみしか測定することができない。
【0022】
そこで、本件発明の体表面温度測定部2に用いられている赤外線センサは、多数の画素を有する赤外線センサにて構成している。多画素の赤外線センサを用いることで、体表面温度測定部2が測定する範囲は、一画素のみの赤外線センサのような点の温度ではなく、一定の領域の面での温度測定が可能となる。従って、本件発明の目的に鑑みれば、多画素の赤外線センサを用いることで、測定対象者の顔全体の体表面温度を測定することが可能となる。
【0023】
仮に、一画素のみの赤外線センサを用いて測定対象者の体表面温度を測定した場合、測定対象者の顔の一部、つまり「点」のみの体表面温度を測定することになる。しかし、人間の顔は鼻や目、唇、頬のように場所によって体表面温度に差があるため、測定結果の信頼性が悪化してしまう。一方、本件発明のように、多画素の赤外線センサを用いて、測定対象者の顔全体の体表面温度を測定すれば、顔全体の温度分布が測定され、例えばそのうち最も高温の体表面温度を温度信号として出力すれば、常に正確な測定が可能となる。このため、体表面温度測定部2は多画素型赤外線センサから構成されている。
【0024】
測定対象者検出部3は、体表面温度チェッカー1に接近する測定対象者までの距離を算出して検出情報を出力している。ここでは、一例として検出情報を距離測定手段3cによって測定された距離の情報として説明する。さらに説明すると、測定対象者検出部3は、投光手段3a、受光手段3b、距離測定手段3cを備えた測距センサで構成される。投光手段3aは、体表面温度チェッカー1に接近する測定対象者に向かって光を照射している。受光手段3bは、例えばCCDやPSD等の受光素子からなり、投光手段3aからの光の照射に伴う測定対象者からの反射光を受光している。距離測定手段3cは、受光手段3bの出力に基づいて測定対象者までの距離を算出し、この算出した結果を検出情報として出力している。
【0025】
先に述べたように、体表面温度測定部2は多画素型赤外線センサから構成されている。このため、測定対象者は自身の顔が多画素型赤外線センサの測定領域に入るように、体表面温度チェッカー1から特定の範囲内に接近し、測定可能領域内に入る必要がある。測定対象者が測定可能領域に入ることで初めて体表面温度測定部2は体表面温度の測定を開始する。
【0026】
制御部4は、体表面温度チェッカー1の各構成要素を統括制御するCPUで構成され、測定対象者検出部3からの検出情報に基づく測定可能範囲における測定対象者の存在及び離脱の判別、測定対象者検出部3からの検出情報の判別結果に基づくトリガ信号による体表面温度測定部2の体表面温度測定の開始及び終了の制御、体表面温度測定結果の表示制御、測定結果NG発生時や測定異常発生時の報知制御などを行っている。さらに説明すると、制御部4は、距離判別手段4a、トリガ発生手段4b、体表面温度判別手段4c、報知制御手段4d、補正手段4eを備えている。
【0027】
距離判別手段4aは、測定対象者検出部3からの検出情報が予め設定された測定可能範囲内か否かにより測定可能範囲における測定対象者の存在及び離脱を判別している。基準となる測定可能範囲は、測定対象者が体表面温度チェッカー1に近接した際に、顔全体の表面温度が測定できるようにある程度の幅を持った距離が選定される。本例では、例えば100mm〜250mmが測定可能範囲として設定される。
【0028】
距離判別手段4aは、図3のタイミングチャートに示すように、測定対象者が移動して体表面温度チェッカー1に近接し、測定対象者検出部3の検出情報が100mm〜250mmになると、測定対象者が体表面温度チェッカー1に接近して測定可能範囲内に存在するものと判別している(存在判別)。
【0029】
また、距離判別手段4aは、測定可能範囲内に存在する測定対象者が移動して体表面温度チェッカー1に近づきすぎて測定対象者検出部3の検出情報が100mm未満になるか、測定対象者が移動し体表面温度チェッカー1から離れて測定対象者検出部3の検出情報が250mm以上になると、測定対象者が体表面温度チェッカー1から離脱して測定可能範囲内に存在しないものと判別している(離脱判別)。
【0030】
さらに、距離判別手段4aは、後述する体表面温度判別タイミングのときに、測定対象者が移動して測定対象者検出部3の検出情報が100mm未満又は250mm以上になると、測定対象者が測定可能範囲内から離脱したものと判別している(測定異常判別)。
【0031】
トリガ発生手段4bは、測定対象者検出部3の検出情報が測定可能範囲内に存在すると距離判別手段4aが判別したときに、「待機状態」から「測定開始状態」への移行を指示するトリガ信号を出力している。
【0032】
また、トリガ発生手段4bは、測定可能範囲内に存在する測定対象者が移動して測定対象者検出部3の検出情報が測定可能範囲内から離脱したと距離判別手段4aが判別したときに、「測定完了状態」から「待機状態」への移行を指示するトリガ信号を出力している。
【0033】
さらに、トリガ発生手段4bは、後述する体表面温度判別タイミングのときに、測定対象者が移動して測定対象者検出部3の検出情報が100mm未満又は250mm以上と距離判別手段4aが判別したときに、「測定異常アクション」が発生した旨のトリガ信号を出力している。
【0034】
体表面温度判別手段4cは、「待機状態」から「測定開始状態」への移行を指示するトリガ信号が入力されると、このトリガ信号の入力をトリガとして体表面温度測定部2から各画素毎の熱画像データを取り込み、この取り込んだ各画素毎の熱画像データから最高温度を検索し、検索された最高温度を測定値とし、この測定値と閾値との比較により測定値が正常か否かを判別している(OK/NG判別)。尚、測定値と比較する閾値は、異常と認める体表面温度の値に予め設定されている。
【0035】
さらに説明すると、体表面温度判別手段4cは、図4のタイミングチャートに示すように、測定対象者が測定可能範囲内に進入した状態から所定時間経過(約2秒)後を体表面温度判別タイミングとして、そのときの体表面温度測定部2からの熱画像データにおける最高温度を検索し、この検索された最高温度を、測定可能範囲内に存在する測定対象者の体表面温度を示す測定値としている。そして、体表面温度判別手段4cは、この測定値と予め設定された閾値とを比較し、測定値が閾値以下であれば、測定値が正常であると判別している(OK判別)。これに対し、測定値が閾値より大きければ、測定値が異常であると判別している(NG判別)。
【0036】
また、体表面温度判別手段4cは、図5のタイミングチャートに示すように、測定対象者が測定可能範囲内に進入した状態から所定時間経過(約2秒)する前に、測定対象者が測定可能範囲から離脱してトリガ発生手段4bから「測定異常アクション」が発生した旨のトリガ信号が入力されると、「測定異常」と判別している。
【0037】
報知制御手段4dは、電源のON/OFF状態、距離判別手段4aの判別結果、体表面温度判別手段4cの判別結果、トリガ発生手段4bからのトリガ信号に基づいて報知部6を制御している。
【0038】
補正手段4eは、測定される体表面温度が気温や日射その他の要因により変化し、例えば出社時など同じような行動(駅から会社まで歩く)をとった測定対象者集団の観測結果の分布は一様な傾向となる場合が多いので、これらの要因や傾向に応じて予め設定されたシフト値によって体表面温度を補正したり、閾値を補正したりしている。例えば冬季の場合は、気温が低いため、集団の温度分布は低くなる。この場合は、体表面温度を高めにシフト補正したり、閾値を低めにシフト補正したりすることで周囲の影響をある程度キャンセルすることができる。
【0039】
記憶部5は、測定対象者が測定可能範囲に存在するときの測定結果を履歴情報として逐次記憶している。尚、記憶部5に記憶される測定結果は、測定対象者が測定可能範囲から外れたときに、制御部4の制御により自動的に消去することもできる。
【0040】
報知部6は、報知制御手段4dの制御により、電源がオンされたか否か、測定対象者が測定可能範囲に存在するか否か、測定対象者が測定可能範囲から離脱したか否か、測定結果が正常か否かなどの各種動作状態を識別して測定対象者に報知している。本例では、表示手段6aと鳴動手段6bから報知部6が構成される。
【0041】
表示手段6aは、LED等の複数の表示器からなる。本例では、橙色のLED6a1と、緑色のLED6a2と、赤色のLED6a3の3つのLEDによって表示手段6aが構成される。表示手段6aは、各種動作状態を点灯・点滅や発光色の違いによって識別表示し、その旨を測定対象者に知らせている。具体的に、「電源ON」のときには、橙色のLED6a1が点灯する。「待機状態」から「測定開始状態」に移行するときは、橙色のLED6a1が点滅する。「測定完了状態」からOKの結果表示に移行するときは、緑色のLED6a2が点灯する。「測定完了状態」からNGの結果表示に移行するときは、赤色のLED6a3が点滅する。測定開始後に「測定異常アクション」が発生したとき、例えば測定している位置が適切でないときや測定途中で測定対象者が離れたときは、緑色のLED6a2と赤色のLED6a3とが同時に点灯する。
【0042】
鳴動手段6bは、ブザーからなり、各種動作状態を音の違いによって測定対象者に知らせている。具体的には、「待機状態」から「測定開始状態」に移行すると、鳴動手段6bが「ピッ ピッ」と鳴動する。「測定完了状態」に移行すると、鳴動手段6bが「ピピッ」と鳴動する。測定開始後に「測定異常アクション」が発生すると、鳴動手段6bが「ピッーーー」と鳴動する。体表面温度測定の結果表示がNGのときは、鳴動手段6bが「ピピピッピピピッ・・」と鳴動する。体表面温度測定の結果表示がOKで「待機状態」に移行するときは、鳴動手段6bが「ピッ」と鳴動する。
【0043】
入出力部7は、各種信号やデータの入出力を行うもので、接点インターフェースと通信インターフェースとを備えている。接点インターフェースは、制御部4が体表面温度異常や測定異常を判別した時に、その判別の種別を示す接点信号を警報信号として外部に出力している。通信インターフェースは、体表面温度チェッカー1を例えばパソコン等の外部端末装置に対して通信可能に接続するもので、体表面温度チェッカー1から外部端末装置への熱画像データの転送や外部端末装置から体表面温度チェッカー1に対する各種設定(閾値設定やシフト値設定など)を行っている。
【0044】
尚、特に図示はしないが、本例の体表面温度チェッカー1は、入出力部7としてLANインターフェースを備え、このLANインターフェース経由で例えば管理室や管理センターに設けられる外部端末装置との間で通信可能な構成とし、専用のアプリケーションソフトウェアにより体表面温度チェッカー1による熱画像を外部端末装置側で監視することができる。また、体表面温度チェッカー1で得られる測定値やアプリケーションソフトウェアによる判別を利用することもできる。
【0045】
次に、上記のように構成される体表面温度チェッカー1の報知部による表示及び鳴動処理を含む動作について、図6のフローチャート及び図7〜図9のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0046】
体表面温度チェッカー1は、電源ONすると、報知制御手段4dの制御により、橙色のLED6a1が点灯する。この橙色のLED6a1の点灯により、体表面温度チェッカー1が「待機状態」に移行する(ST1)。この「待機状態」から、体表面温度チェッカー1に測定対象者が接近し、前述した距離判別手段4aの「存在判別」により測定対象者が測定可能範囲に存在するものと判別されると、報知制御手段4dの制御により、橙色のLED6a1が点滅するとともに、鳴動手段6bが「ピッ ピッ」と鳴動し、体表面温度チェッカー1が「待機状態」から「測定開始状態」に移行する(ST2)。
【0047】
そして、体表面温度チェッカー1が「測定開始状態」に移行すると、体表面温度測定部2による測定可能範囲内の測定対象者の体表面温度測定が開始される。そして、体表面温度判別手段4cは、前述した距離判別手段4aの「存在判別」により測定対象者が測定可能範囲に存在するものと判別されると、測定対象者が測定可能範囲内に進入した状態から所定時間経過(約2秒)後を体表面温度判別タイミングとして、体表面温度測定部2からの熱画像データを取り込み、取り込んだ熱画像データの最高温度を検索し、この検索された最高温度を、測定可能範囲内に存在する測定対象者の体表面温度を示す測定値としている。そして、体表面温度判別手段4cは、この測定値と予め設定された閾値とを比較する。
【0048】
このとき、図7に示すように、測定異常アクションとして、測定している位置が適切でない場合や測定途中で測定対象者が測定可能範囲から離脱した場合には、前述した距離判別手段の「測定異常判別」により、測定可能範囲から測定対象者が離脱したものと判別し、報知制御手段4dの制御により、緑色のLED6a2と赤色のLED6a3が同時に点灯するとともに、鳴動手段6bが「ピッーーー」と鳴動する(離脱判別から約1秒:ST3)。これにより、測定異常アクションがあることを測定対象者に知らせる。そして、離脱判別から所定時間(例えば約1秒)が経過すると、報知制御手段4dの制御により、緑色のLED6a2と赤色のLED6a3が消灯し、橙色のLED6a1が点灯して「待機状態」に戻る(ST1)。
【0049】
測定可能範囲に存在する測定対象者の体表面温度測定が完了すると、報知制御手段4dの制御により、鳴動手段6bが「ピピッ」と鳴動する(ST4)。そして、前述した体表面温度判別手段4cの「OK/NG判別」、すなわち測定値が閾値以下で正常と判別されると、報知制御手段4dの制御により、図8に示すように、橙色のLED6a1が消灯するとともに、測定値が正常の旨を示す「結果表示」として、緑色のLED6a2が点灯する(ST5)。そして、その後、測定対象者が測定可能範囲から離脱すると(離脱判別から約0.5秒)、報知制御手段4dの制御により、緑色のLED6a2が消灯し、橙色のLED6a1が点滅するとともに鳴動手段6bが「ピッ」と鳴動し(ST6)、橙色のLED6a1が点灯して「待機状態」に戻る(ST1)。
【0050】
これに対し、前述した体表面温度判別手段4cの「OK/NG判別」、すなわち測定値が閾値より大きくて異常と判別されると、報知制御手段4dの制御により、図9に示すように、橙色のLED6a1が消灯し、測定値が異常の旨を示す「結果表示」として、赤色のLED6a3が点滅し、鳴動手段6bが「ピピピッピピピッ・・」と鳴動する(ST7)。その後、測定対象者が測定可能範囲から離脱すると(離脱判別から約0.5秒)、報知制御手段4dの制御により、赤色のLED6a3が消灯し、橙色のLED6a1が点灯して「待機状態」に戻る(ST1)。
【0051】
このように、本発明に係る体表面温度チェッカーは、電源ON時の待機中から測定対象者が体表面温度チェッカーに近づき、測定対象者がミラー13の位置合わせ領域12に身体の一部を位置合わせし、予め設定された測定可能範囲に測定対象者が存在すれば、そのときのタイミングをトリガとして測定対象者の体表面温度測定を開始し、短時間(約2秒程度)で測定結果(OK/NG、測定異常など)を識別表示し、測定者が測定可能範囲から離脱すれば、体表面温度チェッカーが待機状態に戻るようになっている。これにより、出入りする人の体表面温度を一人ずつ確実に測定してチェックすることができる。
【0052】
そして、本発明に係る体表面温度チェッカーは、測定対象者が測定可能範囲に存在するか否かの判別機能、測定対象者が測定可能範囲に存在するときの測定対象者の体表面温度が正常か否かの判別機能を備えた構成なので、短時間で測定対象者の体表面温度を測定することができる。
【0053】
また、体表面温度チェッカー1の設置後は人が体表面温度チェッカー1を直接操作する必要がなく、非接触で簡単に測定対象者の体表面温度を測定することができる。しかも、体表面温度チェッカー1に一切触れずに非接触で体表面温度を測定するため、体表面温度チェッカー1を清潔な状態に保つことができる。
【0054】
ところで、上述した実施形態では、体表面温度測定部2からの温度信号と比較する閾値を一つとし、温度信号がその閾値を越えた否かによってOK/NGを判別し、判別結果に応じた報知を行うものとして説明したが、温度信号と比較する閾値を複数設定することもできる。この場合、温度信号と各閾値とを比較し、その比較結果を識別して報知する。
【0055】
また、各種状態表示として、体表面温度の測定結果や測定異常を3つのLEDからなる表示手段6aで識別表示する例について説明したが、3つのLEDからなる表示手段6aに限定されるものではなく、各種状態表示を識別表示できる構成であれば良い。例えば体表面温度の測定結果がOKのときは緑のLEDを点灯し、NGのときは緑のLEDを点滅させる構成とすれば、1つのLEDで測定結果を識別表示することができる。さらに、LEDによる表示に限らず、例えば液晶表示器を用い、文字表示により識別表示したり、LEDと液晶表示器を併用することも可能である。
【0056】
さらに、本例では、体表面温度測定部2からの熱画像データによる測定対象者の体表面温度を閾値と比較して体表面温度判別手段4cによる前述した判別を行っているが、測定対象者の体表面温度を体温に換算し、この換算された体温と予め設定した閾値とを比較して上記判別を行い、必要に応じて温度補正を行うことも可能である。
【0057】
また、測定対象者検出部3としては、例えば測定対象者に光を照射し、この光の照射に伴う反射光を受光し、この受光した光に基づいて測定対象者までの距離を算出することで測定対象者を検出したり、光に代えて超音波を照射し、この超音波の反射を受信することで距離を算出し、測定対象者を検出したりしてもよい。また、光や音の反射に限らず、一直線上に赤外線照射器と赤外線受光器を配置し、この赤外線が遮断されることで測定対象者を検知するように構成してもよい。さらに、測定対象者の足元に感圧式のスイッチを配置し、測定対象者がスイッチを踏むことで、測定対象者を検知するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 体表面温度チェッカー
2 体表面温度測定部
2a 赤外線検知手段
2b A/D変換手段
3 測定対象者検出部
3a 投光手段
3b 受光手段
3c 距離測定手段
4 制御部
4a 距離判別手段
4b トリガ発生手段
4c 体表面温度判別手段
4d 報知制御手段
4e 補正手段
5 記憶部
6 報知部
6a 表示手段
6b 鳴動手段
7 入出力部
8 筐体
9 ホルダー(支持部材)
10 アングル
11 支柱部材
12 位置合わせ領域
13 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が出入りする場所の所定箇所に位置決めして設置され、出入りする人を測定対象者として体表面温度を一人ずつ非接触で測定する体表面温度チェッカーであって、
前記測定対象者が測定可能領域に存在するか否かを検出し検出情報を出力する測定対象者検出部と、
前記測定対象者から放射される赤外線を検知し、この検知した赤外線量に基づいて前記測定対象者の体表面温度を非接触で測定して温度信号を出力する体表面温度測定部と、
前記測定対象者検出部からの検出情報に基づいて前記測定可能領域に対する前記測定対象者の存在及び離脱を判別し、前記測定可能領域内に前記測定対象者が存在すると判別したときのタイミングをトリガとした前記体表面温度測定部からの温度信号と予め設定された閾値とを比較して前記温度信号が正常か否かを判別する制御部とを備えたことを特徴とする体表面温度チェッカー。
【請求項2】
前記測定可能領域に対する前記測定対象者の存在か否かの判別結果および/または前記温度信号が正常か否かの判別結果に応じて報知を行う報知部をさらに有することを特徴とする請求項1記載の体表面温度チェッカー。
【請求項3】
前記温度信号の判別を行った後に前記測定対象者が前記測定可能領域から離脱したと前記制御部が判別したときに待機状態に戻ることを特徴とする請求項1又は2記載の体表面温度チェッカー。
【請求項4】
前記体表面温度測定部からの温度信号を受けた後、前記温度信号が正常か否かの判別結果が出る前に、前記測定対象者が前記測定可能領域内から離脱したと前記制御部が判別したときに、測定異常である旨を識別して前記報知部が報知し、所定時間報知後に待機状態に戻ることを特徴とする請求項2又は3記載の体表面温度チェッカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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