説明

体重増加抑制剤及び体重増加抑制飲料

【課題】体重増加を抑制する効果に優れていて、かつ副作用の恐れがなく、安全性に優れた体重増加抑制剤及び体重増加抑制飲料を提供する。
【解決手段】酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスを含有する体重増加抑制剤及び体重増加抑制飲料は、体重増加を抑制する効果に優れていて、かつ副作用の恐れがなく、安全性に優れた体重増加抑制剤及び体重増加抑制飲料となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体重増加を抑制する効果に優れていて、かつ副作用の恐れがなく、安全性に優れた体重増加抑制剤及び体重増加抑制飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会の高カロリー型食生活のもたらす問題の一つに、カロリー過剰摂取に基づく体重の増加、いわゆる肥満が挙げられる。体重の増加により肥満に至ると、美容上望ましくないというだけでなく、糖尿病、高血圧症及び高脂血症などの生活習慣病の発生を導く大きな健康リスクとなる。また、糖尿病、高血圧症及び高脂血症などの生活習慣病を患っている患者の体重増加は、かかる疾病の悪化を誘導する場合もある。このように生活習慣病と体重増加は密接な関係があり、体重増加を抑制することは生活習慣病の発生を抑える上でも重要であると考えられている。
【0003】
体重の増加を抑制するためには、十分な運動や偏りのない食生活が重要である。しかし、食事療法は、カロリー計算が繁雑であり、また管理の困難さから必ずしも良好な効果を得難い。一方、運動による体重増加の抑制は、十分な効果が得られない場合がある。また、体重増加は必ずしも運動不足や食生活といった環境因子を原因とするわけではなく、遺伝因子を原因とする場合もあると考えられている。したがって、運動や偏りのない食生活だけでは十分に対応ができず、体重増加抑制の作用がある薬が開発されている。
【0004】
特許文献1には、アンギオテンシンII拮抗作用を有する化合物、そのプロドラッグまたはその塩を含有してなる体重増加の抑制剤が開示されている。
【0005】
特許文献2には、特定のアミノ酸配列(23個アミノ酸)を含有するポリペプチド、そのアミド又はエステル又はその塩を含有してなる体重増加抑制剤 、体重減少剤、脂肪量増加剤、摂食抑制剤が開示されている。
【0006】
一方、近年、腸内細菌のバランスを改善することにより、動物に有益な効果をもたらす生菌添加物が注目されている。これらは、プロバイオティクスと呼ばれ、腸内の有用細菌を増やし、有害物質を作る有害細菌を減らす。体に良いものは残し、体に悪いものは除くという予防医学の観点にたったものであり、体に良いものも悪いものも除いてしまう従来の抗生物質治療剤と異なるものである。例えば、プロバイオティクス食品としては、ヨーグルトが挙げられる。ヨーグルトは牛乳を乳酸菌で発酵させた食品であるが、栄養の機能以外に、乳酸菌による免疫賦活作用、ガン防止効果等のさまざまな効能が知られている。
【0007】
酪酸菌(Clostridium butyricum)は、偏性嫌気性の芽胞形成性菌であり、プロバイオティクスとしての酪酸菌が腸内において発育することにより、有機酸並びにビタミンB群を産生し、ビフィズス菌・乳酸菌等の腸内の有用細菌の発育を助長し、腐敗や異常発酵の原因になる有害細菌の発育を抑制して腸の働きを正常にすることが知られている。その酪酸菌の培養液、又は当該培養液をろ過して生菌を回収した後に残る酪酸菌培養エキスにも腸内菌叢作用があることが知られている(特許文献3参照)。酪酸菌は、100℃にも耐えうる胞子を形成し増殖ができない場所、たとえば強酸、強アルカリ、あるいは乾燥条件下にて活動を停止し、環境が良くなると改めて生育を開始することができるため、腸内に生きたまま届くことができる。このような酪酸菌は、長年医薬品または飼料として使われてきており、安全性についても確立されている。
【特許文献1】特開2004−217648号
【特許文献2】特開2004−2295号
【特許文献3】特開平6−92862号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、さまざまな体重増加抑制剤が開発されているが、これらは体重増加を抑制する効果を有するもののその効果が十分でない場合があった。また、従来の体重増加抑制剤は化学合成品であるため、副作用の面で満足のいかない場合があった。このため、副作用の恐れがなく、安全性に優れた体重増加抑制剤が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、体重増加を抑制する効果に優れていて、かつ副作用の恐れがなく、安全性に優れた体重増加抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスに関して、体重増加を抑制するという新たな効果を見出した。酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスは副作用の恐れがなく、安全性に優れていることは従来から知られているため、酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスは体重増加を抑制する効果に優れていて、かつ副作用の恐れがなく、安全性に優れた体重増加抑制剤となり得ることを見出し、本発明に想到した。
【0011】
本発明の請求項1の体重増加抑制剤は、酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2の体重増加抑制剤は、請求項1において、前記酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスに、酪酸菌(Clostridium butyricum)の生体菌及び/又は死菌体を加えることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3の体重増加抑制飲料は、酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスを含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4の体重増加抑制飲料は、請求項3において、前記酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスに、酪酸菌(Clostridium butyricum)の生体菌及び/又は死菌体を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1によれば、生活習慣病と密接な関係を有する体重増加を抑制するのに有効である。また、プロバイオティクスとしての酪酸菌が、整腸作用、抗菌作用、消化補助等の有益な作用をもたらす。酪酸菌は、有機物を分解してビタミンなどを産生するため、肥満や生活習慣病の一因である栄養の偏りを解消する補助となる。さらに、経口投与による酪酸菌の安全性はすでに確かめられているため、副作用の恐れがない体重増加抑制剤を提供することができる。
【0016】
本発明の請求項2によれば、生活習慣病と密接な関係を有する体重増加を抑制するのにさらに有効である。また、プロバイオティクスとしての酪酸菌が、整腸作用、抗菌作用、消化補助等の有益な作用をもたらす。酪酸菌は、有機物を分解してビタミンなどを産生するため、肥満や生活習慣病の一因である栄養の偏りを解消する補助となる。さらに、経口投与による酪酸菌の安全性はすでに確かめられているため、副作用の恐れがない体重増加抑制剤を提供することができる。
【0017】
本発明の請求項3によれば、体重増加を抑制する効果に優れていて、かつ副作用の恐れがなく、安全性に優れた酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスを、飲料として手軽に摂取することができる。また、本体重増加抑制飲料はプロバイオティクスとしての酪酸菌の効果が期待できる。
【0018】
本発明の請求項4によれば、体重増加を抑制する効果にさらに優れていて、かつ副作用の恐れがなく、安全性に優れた酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスを、飲料として手軽に摂取することができる。また、本体重増加抑制飲料はプロバイオティクスとしての酪酸菌の効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明に用いられる酪酸菌(Clostridium butyricum)は、偏性嫌気菌で芽胞を形成するグラム陽性の桿菌である。芽胞の形成により、耐熱性、耐酸性をもち、生菌としての安定性に富んでいる。
【0021】
本発明において酪酸菌培養液とは、酪酸菌を通常の酪酸菌を培養する培地例えば、アミノ酸,バレイショデンプン,水等を含む培地で20〜42℃、20〜72時間培養して得られる培養液のことをいう。
【0022】
また、本発明において酪酸菌培養エキスとは、上記酪酸菌培養液を遠心分離等により固液分離して、得られる液部のことをいう。
【0023】
なお、酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキス中には、酪酸菌の生菌体及び/又は死菌体の他に、代謝産物である酪酸,酢酸,プロピオン酸等の有機酸、アミラーゼ、各種アミノ酸、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、及び自己融解した菌体成分等が含まれている。また、酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスには有機酸として酪酸や酢酸等を含有しているため、特異臭を有する欠点があるが、この臭いを例えば香料でマスキングしてもよい。香料としては、酪酸菌臭のマスキングに有効なものであれば特に制限されないが、食品添加物として用いられるものが好ましい。
【0024】
さらに、上記のようにして得られた酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスをそのまま用いてもよいが、スプレードライや凍結乾燥などの操作により、エキス粉末として用いることもできる。
【0025】
本発明に用いられる酪酸菌の生菌体は、芽胞形成期のものでも栄養体期のものでも制限はないが、ペプチドグリカンを豊富に含有する栄養体期のものが好ましい。栄養体期を豊富に含有する生菌体は、例えばペプトン,イーストエクストラクト,グルコース,水等を含有するPYG培地などで、20〜42℃、20〜72時間培養し、遠心分離等の方法で集菌して得ることができる。
【0026】
また、本発明に用いられる酪酸菌の死菌体は、生菌体を通常の方法により、例えば空気(酸素)被爆や熱処理を用いて処理することによって得られる。死菌体を製造するための生菌としては芽胞形成期のものでも栄養体期のものでも制限はないが、ペプチドグリカンを豊富に含有する栄養体期のものが好ましい。
【0027】
本発明の体重増加抑制剤及び体重増加抑制飲料は、酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスを有効成分として含有するものである。そして、更に酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスに、酪酸菌の生菌体及び/又は死菌体を103個/ml以上含むことが好ましい。
【0028】
本発明の体重増加抑制剤を製剤するには、目的、投与形態、投与対象、最終形態等に応じて、上記のようにして得られた酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキス、或いは酪酸菌の生菌体及び/又は死菌体を含有する酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスに、任意成分として担体、賦形剤、統合剤、安定剤、香料等の添加剤を配合し、例えば錠剤,散剤,顆粒剤,カプセル剤,丸剤,トローチ剤,液剤,エキス剤等の任意の形状に調製することができる。これらは当業者の通常の方法に従って調製することができる。また、本実施形態の体重増加抑制剤は、そのまま単独で或いは一部分にそれを含ませたものとして配合してもよい。
【0029】
また、上記の酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキス、或いは酪酸菌の生菌体及び/又は死菌体を含有する酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスを飲料に加えて、一般の製造法により、本発明の体重増加抑制飲料を加工製造することができる。飲料としては、炭酸飲料,清涼飲料,乳飲料,コーヒー飲料,ミネラルウォーター,アルコール飲料,果汁飲料,茶類,栄養飲料等が挙げられる。また、上記の酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキス、或いは酪酸菌の生菌体及び/又は死菌体を含有する酪酸菌培養液又は酪酸菌培養エキスを上記飲料以外の飲食物に加え、一般の製造法により、あめ、せんべい、クッキー、調味料、米穀類、パン、麺類等の飲食物を加工製造することができる。なお、本発明における体重増加抑制剤中には103個/ml以上の酪酸菌培養液の生菌体及び/又は死菌体が含まれているのが好ましい。
【0030】
本発明の体重増加抑制剤及び体重抑制飲料は、美容のための使用に限定されず、糖尿病、高血圧症及び高脂血症などの生活習慣病の発生の予防並びに糖尿病、高血圧症及び高脂血症などの生活習慣病の治療の補助のために使用することができる。
【0031】
以下、本発明の調製例、実験例及び実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
〔製造例〕酪酸菌培養エキスの製造方法例:酪酸菌(Clostridium butyricum)を、バレイショ培地〔(バレイショデンプン1.0重量%,アミノ酸1.0重量%,水98.0重量%)又は(バレイショデンプン0.5重量%,アミノ酸0.5重量%,食塩0.1重量%,水98.9重量%)〕で、20〜42℃、20〜72時間培養し、遠心分離により固液分離を行い、この液部を酪酸菌培養エキス1として使用した。
【0033】
酪酸菌の栄養体死菌体の分取方法例:酪酸菌(Clostridium butyricum)を、グルコース培地(ブドウ糖1.0重量%,アミノ酸1.0重量%,水98.0重量%)で、20〜42℃、20〜72時間培養した。次いで、遠心分離により、固液分離を行い、液部と菌体等を含む固相部に分離し、菌体を回収した。この菌体を、オートクレーブにて100℃以上で15分間以上滅菌し、栄養体死菌体を得た。
【0034】
また、上記酪酸菌培養エキス1に、上述のようにして得られた栄養体死菌体を103個/ml以上添加し、これを酪酸菌培養エキス2とした。
〔試験方法〕NC/Nga TndCrj系雄性35日齢マウス(日本チャールズリバー株式会社)のうち、健康と判断したマウスを実験に使用した。1群6匹として、体重が均一になるようにこれらのマウスを2群に分けた。エキス群には、マウス用基本飼料及び酪酸菌培養エキス2をマウスに与え、時間経過によるその体重の推移を調べた。対照として水道水群には酪酸菌培養エキス2の代わりに水道水とマウス用基本飼料を与え、時間経過によるその体重の推移を調べた。なお、マウス用基本飼料として精製飼料(AIN93G,オリエンタル酵母株式会社製)を使用した。
【0035】
図1は体重の推移を表した図面である。図1に示すように、同一の飼料を摂取しているにもかかわらず、エキス群は、水道水群に比べ、体重は少なかった。このことより、酪酸菌培養エキス2には体重増加抑制作用があることが明らかとなった。
【実施例2】
【0036】
本発明の体重増加抑制剤の例を示す。実施例1の製造例で得た酪酸菌培養エキス2を、真空下で遠赤外線を照射して加熱して乾燥した。加熱温度は28〜40℃である。その後、乾燥物を砕機で粉砕し、酪酸菌末150mgを精製でんぷん末150mg及び乳糖700mgと混合して錠剤を得た。
【実施例3】
【0037】
本発明の体重増加抑制飲料の例を示す。実施例1の製造例で得た酪酸菌培養エキス2を、ポンプにて加圧スプレーにより、150〜180℃で熱風で瞬間乾燥した。更に、60〜85℃で二次乾燥して、乾燥物を砕機で粉砕し、酪酸菌末を得た。この酪酸菌末0.1gをリンゴ果汁100%のジュース1リットルに添加・混合して、ジュースを得た。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実験期間中の各群の体重の推移を表したグラフである。エキス群は、酪酸菌培養エキス2とマウス用基本飼料とをマウスに与えた。水道水群は、酪酸菌培養エキス2の代わりに水道水を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスを含有することを特徴とする体重増加抑制剤。
【請求項2】
前記酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスに、酪酸菌(Clostridium butyricum)の生体菌及び/又は死菌体を加えることを特徴とする請求項1記載の体重増加抑制剤。
【請求項3】
酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスを含有することを特徴とする体重増加抑制飲料。
【請求項4】
前記酪酸菌(Clostridium butyricum)培養液又は酪酸菌培養エキスに、酪酸菌(Clostridium butyricum)の生体菌及び/又は死菌体を加えることを特徴とする請求項3記載の体重増加抑制飲料。


【図1】
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【公開番号】特開2007−31291(P2007−31291A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212821(P2005−212821)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(599126110)エースバイオプロダクト株式会社 (7)
【Fターム(参考)】