説明

作動油タンク

【課題】車体フレームが弾性変形したとしても、その影響を受け難いように車体フレームに固定することが可能な作動油タンクを提供する。
【解決手段】本発明の作動油タンクは、作業車輌の車体フレームにおける左右の側枠部材間を跨いで配置されており、前記作動油タンクと前記左右側枠部材とを連結する左右一対の脚部と、前記作動油タンクと前記車体フレームとを連結する1本以上の支柱とを有し、前記各脚部と前記支柱とにより、前記作動油タンクを前記車体フレームに対して3点以上の支持にて固定してなり、前記脚部及び前記支柱は、ピン継手を介して前記車体フレームに対して回動自在に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータグレーダ等の作業車輌において、車体フレームに固定される作動油タンクに関し、特に、車体フレームの左右の側枠部材間を跨ぐようにして固定される作動油タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータグレーダは、路面、地面などを平滑な地面となるように整地する車輪式の土木機械である。また、モータグレーダに取り付けられているブレードは、地面を整地するために、上下方向への昇降、上下方向での傾斜、車輌の前後方向に対しての傾斜、車輌の左右方向へのスライド、所定の旋回軸周りの旋回等を行うことができるように構成されている。
【0003】
このようなモータグレーダ等の作業車輌において、運転席の後部に配設したエンジンフード内には、エンジン、クーリング機器、トランスミッション、燃料タンク、作動油タンク等の各種機器が配設されている。これらの機器の中で、油圧装置を作動させるための作動油を蓄える作動油タンクは、作業車輌の車体フレームにボルトを用いて固定されていることが一般的である。例えば、特開2003−81277号公報(特許文献1)には、作動油タンクを無駄なスペースを設けることなく、簡単に且つ強固に車体フレームに固定することが可能な作動油タンクの取付構造が開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示されている取付構造では、作動油タンクの底面に、ボルトを挿入可能な取付ブロック(取付凹部)がタンク内部に突出するように配設されている。また、各取付ブロックの内部には、ねじ山が形成されている。一方、作動油タンクを固定する車体フレームには、作動油タンクに配設された取付ブロックのネジ位置と対応する位置にボルト孔が穿設されている。
【0005】
従って、前記特許文献1の取付構造により作動油タンクを車体フレームに固定する場合には、作動油タンクを車体フレームの所定位置に載置し、車体フレームのボルト孔にその下面側からワッシャーを介してボルトを挿入して締め付け固定する。これにより、作動油タンクを車体フレームに直接固定することが可能となる。
【0006】
特に、前記特許文献1の取付構造では、作動油タンクの取付ブロックと車体フレームのボルト孔とを複数の位置に配設することができる。また、各取付ブロックの内部には、ねじ山を十分な長さで形成することができる。このため、作動油タンクを車体フレームに強固に固定することが可能となる。
【0007】
ところで、モータグレーダ等の作業車輌においては、エンジンフード内の各機器を機能的に配置するとともに、エンジンフードの省スペース化を図ることによって、操縦者の後方視界を良好に確保することが求められている。また、作業車輌の油圧装置においては、作動油タンクから油圧ポンプに空気が流入することを避けるために、作動油タンクを油圧ポンプよりも高い位置に配設することが望まれている。
【0008】
このため、近年では、作動油タンクが、エンジンフード内にてエンジンやトランスミッションの上方に配置されるように車体フレームから持ち上げられた状態で、また、車体フレームの左右の側枠部材間を跨ぐようにして車体フレームに固定されている。この場合、例えば図6に示すように、作動油タンク41は、タンク41のタンク部43と車体フレームの左右側枠部材42L,42Rとを連結する左右の脚部44を有しており、この脚部44の下端部が左右の側枠部材42L,42Rに複数のボルト52を用いて固定されている。
【0009】
なお、この図6に示した作動油タンク41において、タンク部43の上壁45には、作動油が供給される給油口46と、油圧ポンプに接続される作動油吸出口47と、油圧回路から作動油を戻す作動油戻り口48とが設けられている。更に、作動油吸出口47と作動油戻り口48とには、作動油に混入した異物を除去するフィルターが取り付けられている。また、作動油タンク41の前壁49には、各アクチュエータからのドレイン配管を接続する複数のドレイン配管接続口50と、作動油タンク41内から作動油を排出するための排油口51とが設けられている。
【0010】
また一般に、作動油タンクは、作動油タンクの各壁部における板厚を薄くするほど、更に、作動油タンクを構成する部品の部品点数を少なくするほど、作動油タンク自体を軽量化するとともに製造コストを低く抑えることができる。特に、現在では、道路を通行可能な車輌の車体重量が法律により制限されているため、モータグレーダ等の道路を通行する作業車輌については、車体重量を増加させずに作動油タンクを構成することが望まれている。このため、従来の作動油タンクは、2種類又は3種類の比較的薄肉の板状部材を用い、これらの板状部材間に密閉された空間部が形成されるようにして溶接等による組み立てを行うことにより構成されている。
【0011】
例えば、図6に示したような左右の脚部44を設けた作動油タンク41は、板厚が薄い2種類の板状部材を組み合わせて構成されており、一方の板状部材としては、タンクの上壁45、前壁49、及び下壁となるコ字形状の薄肉板状部材が用いられている。また、他方の板状部材としては、タンクの後壁及び左右側壁53となるコ字状板部と、左右側壁53の下端から延長して形成された方形状の平板部とを有する薄肉板状部材が用いられている。
更に、このような脚部44を設けた作動油タンク41では、作動油タンク41を側枠部材42L,42Rにしっかりと安定して固定するために、作動油タンク41と側枠部材42L,42Rとを固定するボルト52による固定部が数多く設けられている。
【0012】
また、作動油タンクは、例えばタンクを構成する各壁部の板厚が異なる場合、作動油タンク自体の重量バランスを悪くしてしまうことがあった。また、タンクの内圧が変化したときに、他の壁部よりも板厚が薄い壁部が大きく膨らんだり、又は大きく縮んだりする。このため、板厚が異なる境界部分では集中荷重が作用して亀裂等を発生させてしまう恐れもあった。このため、作動油タンクは、一般に各壁部の板厚が略等しくなるように構成されている。また、タンクを支持する脚部は、タンクを構成する左右側壁部から連続して形成されているため、その板厚も壁部と略等しい厚さで形成されている。
【特許文献1】特開2003−81277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
例えば、モータグレーダ等の作業車輌においては、車輌が凹凸のある路面や傾斜した路面を走行するとき、また、カーブを曲がるとき等に、車体フレームの左右の側枠部材が互いに異なる動きをする。このため、車体フレームは、ねじれ応力や曲げ応力等の応力を受ける。またその他に、車体フレームに取り付けた作業装置やアタッチメントで作業を行っているときにも、車体フレームは絶えずねじれ応力や曲げ応力等を受けている。
【0014】
なお、このように作業車輌の車体フレームがねじれ応力や曲げ応力等を受ける場合、車体フレーム自体は、その弾性変形可能な範囲内において変形することができるため、車体フレームが歪んだり、破損したりすることはない。
【0015】
しかし、例えば前記特許文献1のように、作動油タンクが車体フレームにボルトで直接固定されている場合には、作動油タンクが車体フレームに生じた変形の影響を直接的に受けてしまう。また、例えば図6に示したように、作動油タンク41が複数のボルト52で固定した脚部44によって支持固定されている場合でも、作動油タンク41は、脚部44を介して、車体フレームに生じた変形の影響を大きく受けてしまう。このため、作動油タンクでは、作動油タンクを構成している各壁部や、脚部と車体フレームとの固定部等において歪みや破損が生じてしまう恐れがあった。
【0016】
そこで従来では、車体フレームの弾性変形に起因して作動油タンクに歪みや破損が生じることを防ぐために、例えば、作動油タンクの各壁部を厚く構成してタンク自体をねじれや曲げ等に対して強固となるように構成することが行われている。また、図6に示したように作動油タンク41が脚部44を有する場合には、作動油タンク41の脚部44に、様々な補強リブ54や補強片55を設けて作動油タンクを頑丈に構成すること等が行われていた。
【0017】
しかしながら、例えば作動油タンクの壁部を全体的に厚肉に形成してタンク自体を強固に構成する場合、作動油タンクの重量が増大しコストアップを招くという問題があった。更に、作業車輌の車体重量が増加するため、車体バランスが悪くなってしまうという問題や道路通行上における重量制限の問題もあった。
【0018】
また、作動油タンクが脚部を有する場合に、補強リブや補強片による増強等を行うと、作動油タンクの部品点数が更に増えてしまい、結果として、作動油タンクの重量増大による車体重量の増大や製造コストの増大を引き起こしていた。更にこの場合、作動油タンクの構造が複雑となるため、作動油タンクの取付作業や点検、修理等において、それらの作業が煩雑になるという問題もあった。
【0019】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、少ない部品点数で構成して車体重量の増加を抑えることができ、車体フレームが弾性変形したとしても、その影響を受け難いように車体フレームに固定することが可能な作動油タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の課題は請求項1〜5に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本発明により提供される作動油タンクは、基本的な構成として、作業車輌の車体フレームにおける左右の側枠部材間を跨いで配置された、作動油タンクであって、前記作動油タンクと前記左右側枠部材とを連結する左右一対の脚部と、前記作動油タンクと前記車体フレームとを連結する1本以上の支柱とを有し、前記各脚部と前記支柱とにより、前記作動油タンクを前記車体フレームに対して3点以上の支持にて固定してなり、前記脚部及び前記支柱は、ピン継手を介して前記車体フレームに対して回動自在に連結されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0021】
本発明において、前記作動油タンクを構成する少なくとも1つの壁部及び前記左右の脚部は、断面をコ字形状に折り曲げた板状部材によって構成されていることが好ましい。
【0022】
本発明に係る作動油タンクは、タンクの前壁及び左右側壁を形成する断面がコ字形状の第1板状部材と、タンクの上壁及び後壁を形成する断面がL字形状の第2板状部材と、タンクの下壁及び前記左右の脚部を形成する断面がコ字形状の第3板状部材とを組み合わせて、前記第1板状部材と前記第2板状部材と前記第3板状部材との間に密閉された空間部を有して構成されていることが好ましい。
【0023】
またその他に、本発明に係る作動油タンクは、タンクの上壁、前壁、及び下壁を形成する断面がコ字形状の第4板状部材と、タンクの後壁及び左右側壁を形成する断面がコ字形状の第5板状部材とを組み合わせて、前記第4板状部材と前記第5板状部材との間に密閉された空間部を有して構成されてなり、左右の前記脚部は前記第5板状部材の左右側壁部の下端を延長して形成されていても良い。
【0024】
更に、前記作動油タンクは、前記作業車輌に配されるエンジンルームとクーリングルームとの間を仕切る壁として配設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る作動油タンクは、左右一対の脚部と1本以上の支柱とにより3点以上の支持、好ましくは3点又は4点の支持にて、車体フレームの左右側枠部材間を跨ぐように固定されている。このとき、脚部及び支柱と車体フレームとは、ピン継手により、脚部及び支柱が車体フレームに対して回動可能に連結されている。
【0026】
このような構成を有する本発明の作動油タンクであれば、作動油タンクが3点以上の支持にて車体フレームに十分な強度で支持されているため、作動油タンクを車体フレームの左右側枠部材間を跨ぐように安定して配置することができる。しかも、作動油タンクを支持する脚部及び支柱が、ピン継手を介して車体フレームに連結されている。
【0027】
従って、車体フレームに対してねじれ応力や曲げ応力等が作用しても、これらの応力による車体フレームの変形を脚部と車体フレームとの連結部や支柱と車体フレームとの連結部で吸収することができる。これにより、作動油タンクに対しては、車体フレームに生じる弾性変形の影響を小さくすることができ、作動油タンクに歪みや破損が生じることを効果的に防ぐことができる。
【0028】
更に、上述のように車体フレームの変形を脚部と車体フレームとの連結部で吸収することができるので、例えば従来のように作動油タンクを厚肉に形成する必要はなくなり、また、脚部に対して様々な補強リブを設けて作動油タンクの構造を複雑にすることもない。このため、作動油タンクを簡単な構造で構成でき、車体フレームに安定して固定することができる。しかも、作業車輌の車体重量を軽量化することができ、車体の重量バランスが悪くなることも防げる。
【0029】
特に、本発明の作動油タンクは、作動油タンクの少なくとも1つの壁部と左右の脚部とに断面がコ字形状となる1つの板状部材を用いて組み立てられている。例えば、前述のように、タンクの前壁及び左右側壁を形成する断面がコ字形状の第1板状部材と、タンクの上壁及び後壁を形成する断面がL字形状の第2板状部材と、タンクの下壁及び前記左右の脚部を形成する断面がコ字形状の第3板状部材とを用いて、密閉された空間部が内部に形成されるようにして、溶接等で組み立てられている。
【0030】
またその他に、本発明の作動油タンクは、前述のような断面がコ字形状の第4板状部材と、タンクの後壁及び左右側壁を形成し、左右側壁部の下端部から左右の脚部となる平板部が延設された第5板状部材とを用いて、密閉された空間部が内部に形成されるようにして、溶接等で組み立てられていても良い。
【0031】
このような前記第1板状部材〜前記第3板状部材を用いて組み立てることによって、又は、前記第4板状部材と前記第5板状部材とを用いて組み立てることによって得られた本発明の作動油タンクであれば、肉厚の薄い板状部材を用いても作動油タンク自体の強度を十分に確保することができる。しかも、作動油タンクを構成する部品点数を少なくすることができるため、作動油タンクの軽量化とコストダウンとを図ることができる。
【0032】
また、本発明の作動油タンクは、作業車輌に配されるエンジンルームとクーリングルームとの間を仕切る壁として配設されていることにより、作動油タンクを遮音壁や熱遮断壁としての機能を持たせることができる。これにより、エンジンから発生した騒音を作動油タンクで効果的に遮断することができ、また、エンジンから発生した音がクーリングルームを通って外部に漏れ出ることを抑えることができる。
【0033】
また、エンジンで発生した熱も作動油タンクによって断熱することができるので、エンジンルームで発生した熱によってクーリングルーム内が加熱されるのを防止できる。しかも、作動油タンクを熱遮断壁として利用する場合、作動油タンクの容器及び作動油タンク内に貯留されている油によって、その断熱効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する各実施例に限定されるものではなく、本発明と実質的に同様な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば、下記実施例においては、モータグレーダに搭載される作動油タンクについて説明している。しかし、本発明はこれに限定されず、モータグレーダ以外の作業車輌に搭載する作動油タンクに対しても同様に適用することができるものである。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明の実施例1に係る作動油タンクが車体フレームに連結されている状態を示した斜視図であり、図2は、同作動油タンクを分解して示した分解斜視図である。なお、本発明においては、モータグレーダが前進・後進する向きを作動油タンクの前後方向とし、モータグレーダの上下・左右の向きを、それぞれ作動油タンクの上下方向、左右方向として説明している。
本実施例1の作動油タンク1は、モータグレーダのエンジンフード内でエンジンルームとクーリングルームとの間を仕切る壁として設けられており、図1に示すように、モータグレーダの車体フレーム2の上方に、車体フレーム2の左右の側枠部材2L,2R間を跨いで配置されている。
【0036】
この作動油タンク1において、作動油が蓄積されるタンク部3は直方体状に形成されている。また、タンク部3の上壁11aには、従来と同様に、給油口7、作動油吸出口8、及び作動油戻り口9が配設されており、前記作動油吸出口8と前記作動油戻り口9とにはフィルターが取り付けられている。更に、タンク部3の前壁には、図示していない複数のドレイン配管接続口と、排油口とが配設されている。
【0037】
また、作動油タンク1は、左右一対の脚部4と、左右一対の支柱5と、脚部4を補強する補強部6とを有している。前記脚部4は、タンク部3の下壁11bの左右側縁から左右幅方向に向けて延設した延設部と、その延設部の先端から直角に屈曲して左右側枠部材2L,2Rに向けて垂設した垂設部とを有しており、その断面がL字状に形成されている。また、脚部4の垂設部下端は、ピン継手10によって、左右側枠部材2L,2Rに取り付けたブラケット15に連結されている。
【0038】
即ち、左右の脚部4の一端は、作動油タンク1に連結されており、また、左右の脚部4の他端は、側枠部材2L,2Rに対してピン継手10を中心にして回動可能に連結されている。特に、本実施例1においては、ピン継手10が、図3(a)に示したように、円板上のストッパー10aと、ストッパー10aの中心部から延設した円柱状の軸部10bとを有しており、このピン継手10の軸部10bが脚部4の下端に形成したピン挿通孔4aとブラケット15のピン挿通孔とに嵌挿されている。この構成により、脚部4を側枠部材2L,2Rに対して回動可能に連結することができる。
【0039】
しかし、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば図3(b)に示したように、軸部10bに球面受部10cが形成されたピン継手10’を用いて、脚部4を側枠部材2L,2Rに対して回動可能に連結することもできる。これにより、脚部4とブラケット15との連結部において、側枠部材2L,2Rに対する脚部4の位置合わせを確実に行うことができる。また、ピン継手10’が脚部4及びブラケット15から緩んで外れることがないので、作動油タンク1の位置が左右方向にずれることを確実に防ぐことができる。これにより、作動油タンク1の固定状態を安定して維持することができる。
【0040】
また、本発明では、例えば図3(c)に示したように、脚部4のピン挿通孔4aの周辺に弾性を有するゴム部材16を配設しておき、このゴム部材16に形成した中心孔(ピン挿通孔4a)内にピン継手10を嵌挿させることができる。この構成によっても、脚部4を側枠部材2L,2Rに対して回動可能に連結することができる。しかもこの場合、例えば車体フレーム2からの振動がゴム部材16で吸収されるため、作動油タンク1に対して車体フレーム2の振動が伝わることを抑制することができる。
【0041】
なお、このように脚部4にゴム部材16を設ける場合、ピン継手10による固定をより安定させるとともに、脚部4を車体フレーム2に対して円滑に回動させるために、ゴム部材16の中止孔の内壁面に金属板を配設しておくことが好ましい。更に、本発明では、図3(c)に示したように、脚部4のピン挿通孔4aの周辺にゴム部材16を配するとともに、図3(b)に示したように、球面受部10cを有するピン継手10’を用いて、脚部4を側枠部材2L,2Rに連結する構成を採用することも可能である。
【0042】
左右の前記支柱5は、脚部4の屈曲位置に設けられた支柱取付部17と左右側枠部材2L,2Rとを接続している。支柱5の下端部は、前記脚部4と同様に(図3(a)を参照)、ピン継手10を介して左右側枠部材2L,2Rに取り付けたブラケット15に回動可能に連結されている。このように支柱5を設けることにより、作動油タンク1が前後方向や左右方向に傾倒することを防ぎ、作動油タンク1をバランス良く支持することができる。
【0043】
なお、本発明では、支柱5と側枠部材2L,2Rとを、図3(b)に示したように、球面受部10cを有するピン継手10’によって連結することが可能である。また、図3(c)に示したように、支柱5のピン挿通孔5aの周辺にゴム部材を配し、そのゴム部材の中止孔にピン継手10を嵌挿させることによって、支柱5と側枠部材2L,2Rとを連結することも可能である。
【0044】
一方、支柱5と脚部4の支柱取付部17とを連結する方法は特に限定されず、例えば、ピン継手、ボルト固定、溶接等によって支柱5と支柱取付部17とを連結することができる。なお、本実施例1では、ボルト固定が採用されている。
前記補強部6は、脚部4の後端において脚部4と直交するように設けられており、脚部4が容易に変形してしまうことを防止している。
【0045】
また、このような本実施例1の作動油タンク1は、図2に示したように、板厚が薄い3つの板状部材18,19,20と左右の支柱5を組み合わせることによって構成されている。即ち、薄肉の第1板状部材18は、上下方向に垂直な断面がコ字形状を有するように構成されており、タンクの前壁12a及び左右側壁13a,13bを形成している。
【0046】
第2板状部材19は、左右方向に垂直な断面が略L字形状を有するように構成されており、タンクの上壁11a、後壁12b、及び補強部6を形成している。第3板状部材20は、前後方向に垂直な断面がコ字形状を有するように構成されており、タンクの下壁11b及び左右の脚部4を形成している。また、これらの第1〜第3板状部材18〜20は、給油口7や支柱取付部17等が設けられている部分を除いた平板部分の板厚が略等しくなるように構成されている。
【0047】
そして、第1板状部材18と第2板状部材19と第3板状部材20との間に密閉された空間部が形成されるようにして、第1〜第3板状部材18〜20を溶接等の固着手段により組み立てる。更に、第2板状部材19に設けた支柱取付部17に対して、支柱5を前述のようにボルトで固定する。これによって、本実施例1の作動油タンク1を構成することができる。
【0048】
上述のような構成を有する本実施例1の作動油タンク1は、車体フレーム2の側枠部材2L,2Rに対して、脚部4と支柱5とにより4点の支持にて固定されており、且つ、脚部4及び支柱5が、ピン継手10により車体フレーム2に対して回動自在に連結されている。
【0049】
これにより、従来のような補強リブ等を設けなくても、作動油タンク1を簡単な構造で構成して、車体フレーム2の左右側枠部材2L,2R間を跨ぐように安定して固定することができる。しかも、第1〜第3板状部材18〜20の平板部が、薄肉で略等しい厚さに形成されているため、作動油タンク1を軽量化して製造コストの低減を図ることができ、作動油タンク1による車体重量の増加や車体における重量バランスの悪化を招くことはない。
【0050】
また、モータグレーダの走行中に車体フレーム2に対してねじれ応力や曲げ応力等の弾性変形力が作用しても、この弾性変形力による変形を、脚部4を車体フレーム2に回動可能に支持した連結部、及び支柱5を車体フレーム2に回動可能に支持した連結部において吸収することができる。これにより、車体フレーム2に生じた弾性変形が作動油タンク1に殆ど影響することがなく、作動油タンク1に対して歪みや破損が生じることを効果的に防ぐことができる。
【0051】
更に、本実施例1の作動油タンク1は、前述のようにモータグレーダのエンジンルームとクーリングルームとの間を仕切る壁として配設されている。このため、エンジンから発生した騒音や熱を作動油タンク1によって効果的に遮断することができる。従って、エンジンから外部に漏れる音を小さくするとともに、エンジンの熱によってクーリングルーム内が加熱されてしまうのを防止することができる。
【0052】
なお、本実施例1の変形例として、例えば作動油タンク1の左右方向のバランスが、脚部4の支持によって十分に保つことができる場合には、左右に配した支柱5のうちの一方を省略して、片方の支柱5のみを配設しておくことが可能である。これにより、作動油タンク1を構成する部品点数を更に少なくして、作動油タンク1の重量を一層軽減することができ、車体重量の軽減や作動油タンク1の更なるコストダウンを図ることが可能となる。
【0053】
更に、この変形例では、作動油タンク1を車体フレーム2に3点支持にて固定しているため、例えば車体フレーム2に大きな弾性変形が生じても、図1に示した4点支持による作動油タンク1の固定に比べて、その弾性変形を脚部4及び支柱5によって、より容易に吸収することが可能となる。
【実施例2】
【0054】
次に、本発明の実施例2に係る作動油タンクについて、図4を参照しながら説明する。ここで、図4は、本実施例2の作動油タンク21を示した斜視図である。なお、本実施例2及び以下に示す実施例3の説明や、その参照図面において、前記実施例1で説明した部材と同様の構成を有する部材については同じ符号を用いて表し、それによってその説明を省略するものとする。
【0055】
本実施例2の作動油タンク21では、支柱25を連結する支柱取付部27が、作動油タンク21の後壁12bの下端において、左右方向の中央位置よりも右側の脚部4に寄った位置に配設されている。また、1つの支柱25は、右側よりに配された支柱取付部27と、左側の側枠部材2Lとを連結するように配設されている。従って、この支柱25は、作動油タンク21を上面から見たときに、支柱取付部27から左側に傾斜するように配設されている。
【0056】
この支柱25の下端部は、図示していないものの、前記実施例1と同様に、ピン継手10を介して左側の側枠部材2Lに取り付けたブラケット15に回動可能に連結されている。なお、本実施例2においても、支柱25と側枠部材2Lのブラケット15とを連結するピン継手10の構成は限定されるものではなく、例えば前述の図3(b)や図3(c)に示したようなピン継手の構成を採用することもできる。
【0057】
このような3点の支持にて固定された本実施例2の作動油タンク21であれば、補強リブ等を設けなくても、車体フレーム2の左右側枠部材2L,2R間を跨ぐように作動油タンク21を十分な強度をもって安定して配置することができる。しかも、前記実施例1の作動油タンク1と同様の作用効果を得ることができる。更に、本実施例2の作動油タンク21では、前記実施例1の作動油タンク1よりも、タンクの部品点数を少なくして簡単に構成することができるため、より一層の作動油タンク1の軽量化や車体重量の軽減、また更なるコストダウンを図ることが可能となる。
【0058】
しかも、本実施例2の作動油タンク21は、3点支持にて固定されているため、4点支持にて固定する前記実施例1の作動油タンク1に比べて、車体フレーム2に大きな弾性変形が生じても、その弾性変形をより容易に吸収することができる。しかも、支柱25は、支柱取付部27から側枠部材2Lまで傾斜して配設されているため、例えば前記実施例1の変形例で説明した3点支持の作動油タンクに比べて、作動油タンク21をよりバランス良く支持することができる。
【実施例3】
【0059】
次に、本発明の実施例3に係る作動油タンクについて、図5を参照しながら説明する。ここで、図5は、本実施例3の作動油タンク31の一部を分解して示した作動油タンクの斜視図である。
本実施例3の作動油タンク31は、板厚が薄い2つの板状部材34,35と左右の支柱33を組み合わせることによって構成されている。即ち、一方の板状部材34(第4板状部材)は、左右方向に垂直な断面がコ字形状を有するように構成されており、タンク31の上壁11a、前壁12a、及び下壁11bを形成している。他方の板状部材35(第5板状部材)は、上下方向に垂直な断面がコ字形状を有するように構成されており、タンク31の後壁12b及び左右側壁13a,13bを形成している。また、第5板状部材35には、左右の脚部32が左右側壁13a,13bの下端から延長して連続的に形成されている。
【0060】
そして、このような第4板状部材34と第5板状部材35との間に密閉された空間部が形成されるようにして、第4板状部材34及び第5板状部材35を溶接により組み立てる。更に、本実施例3では、第5板状部材35に形成された左右の脚部32の上部に、左右の支柱33をボルト36で固定する。これによって、本実施例3の作動油タンク31を構成することができる。
【0061】
なお、本実施例3の作動油タンク31では、脚部32と車体フレーム2との連結部及び支柱33と車体フレーム2との連結部は図示していないものの、前記実施例1と同様に、左右の脚部32及び左右の支柱33が、ピン継手10を介して車体フレーム2に回動可能に連結されている。
【0062】
このような本実施例3の作動油タンク31であっても、前記実施例1の作動油タンク1と同様の作用効果を得ることができる。また、本実施例3においては、作動油タンク31を前述のように2つの板状部材34,35と左右の支柱33とを組み合わせて構成している。このため、作動油タンク31の構成部品の点数を前記実施例1よりも少なくし、且つ、その組み立てを容易に行うことができる。従って、本実施例3の作動油タンク31は、前記実施例1よりも、作動油タンク31の軽量化による車体重量の軽減やコストダウンを容易に図ることができる。
【0063】
なお、前記実施例1〜実施例3の説明では、作動油タンク1,21,31が3点又は4点の支持にて車体フレーム2に固定されている場合について説明している。また、本発明では、作動油タンクを支持する支柱の本数が減少するほど、作動油タンク31の軽量化を図ることができ、ひいては車体重量の軽減やコストダウンに繋がるので、支柱の設置数を少なくすることが好ましい。しかし、本発明は、作動油タンクのバランスや、作動油タンクの支持の安定性等を考慮して、必要であれば支柱の設置数を増やして、作動油タンクを5箇所以上の点で支持することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例1に係る作動油タンクが車体フレームに連結されている状態を示した斜視図である。
【図2】同作動油タンクを分解して示した分解斜視図である。
【図3】脚部とピン継手との連結部の構成を拡大して示した断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る作動油タンクを示した斜視図である。
【図5】本発明の実施例3に係る作動油タンクの一部を分解して示した作動油タンクの斜視図である。
【図6】従来の作動油タンクを示した斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1・・・作動油タンク、
2・・・車体フレーム、
2L,2R・・・左右の側枠部材、
3・・・タンク部、
4・・・脚部、
4a・・・ピン挿通孔、
5・・・支柱、
10・・・ピン継手、
10a・・・ストッパー、
10b・・・軸部、
10c・・・球面受部、
15・・・ブラケット、
17・・・支柱取付部、
18・・・第1板状部材、
19・・・第2板状部材、
20・・・第3板状部材、
21・・・作動油タンク、
25・・・支柱、
27・・・支柱取付部、
31・・・作動油タンク、
32・・・脚部、
33・・・支柱、
34・・・第4板状部材、
35・・・第5板状部材、
36・・・ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車輌の車体フレームにおける左右の側枠部材間を跨いで配置された、作動油タンクであって、
前記作動油タンクと前記左右側枠部材とを連結する左右一対の脚部と、前記作動油タンクと前記車体フレームとを連結する1本以上の支柱と、を有し、
前記各脚部と前記支柱とにより、前記作動油タンクを前記車体フレームに対して3点以上の支持にて固定してなり、
前記脚部及び前記支柱は、ピン継手を介して前記車体フレームに対して回動自在に連結されてなる、
ことを特徴とする作動油タンク。
【請求項2】
前記作動油タンクを構成する少なくとも1つの壁部及び前記左右の脚部は、断面をコ字形状に折り曲げた板状部材によって構成されてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の作動油タンク。
【請求項3】
前記作動油タンクは、タンクの前壁及び左右側壁を形成する断面がコ字形状の第1板状部材と、タンクの上壁及び後壁を形成する断面がL字形状の第2板状部材と、タンクの下壁及び前記左右の脚部を形成する断面がコ字形状の第3板状部材とを組み合わせて、前記第1板状部材と前記第2板状部材と前記第3板状部材との間に密閉された空間部を有して構成されてなる、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の作動油タンク。
【請求項4】
前記作動油タンクは、タンクの上壁、前壁、及び下壁を形成する断面がコ字形状の第4板状部材と、タンクの後壁及び左右側壁を形成する断面がコ字形状の第5板状部材とを組み合わせて、前記第4板状部材と前記第5板状部材との間に密閉された空間部を有して構成されてなり、
左右の前記脚部は前記第5板状部材の左右側壁部の下端を延長して形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の作動油タンク。
【請求項5】
前記作動油タンクは、前記作業車輌に配されるエンジンルームとクーリングルームとの間を仕切る壁として配設されてなる、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作動油タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−110773(P2008−110773A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293894(P2006−293894)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】