説明

作業データ収集装置及び作業データ収集方法

【課題】機器の運転者の負担を増大させることなく、複数稼動している荷役機器同士の間の係わり合いについての作業データを簡易且つ迅速に収集可能とした作業データ収集装置及び作業データ収集方法を提供する。
【解決手段】被運搬物を運搬する運搬手段と該運搬手段に被運搬物を積載する積載手段との間で行われる荷役作業の管理を行うための作業データ収集装置であって、前記作業データ収集装置が、運搬手段側に取り付けられ、少なくとも当該運搬手段の識別信号を所定の距離範囲内に送信する送信手段1と、積載手段側に取り付けられ、前記送信手段から送信される識別信号を受信した場合に、少なくとも前記識別信号の内容と前記識別信号を受信している間の時刻データとを記憶する読み取り手段2とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被運搬物を運搬する運搬手段とこの運搬手段に被運搬物を積載する積載手段との間で行われる積載作業の管理、特に横持ち作業の管理を行うための作業データ収集装置及び作業データ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄所においては、原料鉱石ヤードに積まれている鉱石やコークス等の原料を特定の地点Aから特定の地点Bへ、トラック等を用いて移動させる作業(横持ち作業)が日常的に行われている。ここでの作業としては、原料鉱石ヤードのA地点に積まれている鉱石やコークスを、その地点に配備されたショベルローダー等を用いてトラックの荷台に積み込み、トラックが積まれた鉱石やコークスをB地点へ運び、そこで積み込まれた荷物を降ろす、という一連の作業として行われる。
【0003】
実際の作業においては、原料鉱石ヤード内での横持ちする地点の数は上記のようなA,Bの2地点には限られず、さらに多い数となるのが通常である。また、横持ち作業に従事する荷役機器としての前記トラックやショベルローダーの数も、それぞれが複数台ずつ稼動しているのが一般的である。
【0004】
このような横持ち作業においては、従来から個々の荷役機器であるトラックやショベルローダー等について、作業日誌等により稼動状況等を収集、分析して、効率的な機器配置や運用を行うようにスケジューリングを行うことが一般に行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の荷役機器のスケジューリングを行う際の稼動状況等のデータ収集は、個々の機器であるトラックやショベルローダー毎に記載された作業日誌等により行われていた。この場合、作業日誌等により個々の機器単体についての稼動状況は、運転者の申告次第ではあるが、ある程度把握することは可能である。しかし、荷役機器同士の係わり合いに関するデータ、例えば、どのショベルローダーがどのトラックに対して、いつ、何回積み込みを行ったか等のデータについては作業日誌等からでは収集が困難であるという問題があった。
【0006】
これに関し、例えば、ある短い期間を特定して、各機器の運転者に詳細な作業日誌、例えばショベルローダーの運転者に、何時何分から何時何分までどのトラックに対して積み込みを行ったか等、を漏れなく記入してもらい、それを分析することで他の機器とどのように係わり合いを持ったかを調べることは可能である。しかし、これを定常的な作業として行うには運転者に負担がかかり過ぎ、現実的には非常に困難である。
【0007】
そこで、本発明は、機器の運転者の負担を増大させることなく、複数稼動している荷役機器同士の間の係わり合いについての作業データを簡易且つ迅速に収集可能とした作業データ収集装置及び作業データ収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有する。
[1]被運搬物を運搬する運搬手段と該運搬手段に被運搬物を積載する積載手段との間で行われる荷役作業の管理を行うための作業データ収集装置であって、
前記作業データ収集装置が、
運搬手段側に取り付けられ、少なくとも当該運搬手段の識別信号を所定の距離範囲内に送信する送信手段と、
積載手段側に取り付けられ、前記送信手段から送信される識別信号を受信した場合に、少なくとも前記識別信号の内容と前記識別信号を受信している間の時刻データとを記憶する読み取り手段と
を有することを特徴とする作業データ収集装置。
[2]被運搬物を運搬する運搬手段と該運搬手段に被運搬物を積載する積載手段との間で行われる荷役作業の管理を行うための作業データ収集方法であって、
積載手段が運搬手段に被運搬物を積載するため前記運搬手段の所定の距離範囲内に近づき、前記積載手段側に取り付けられた読み取り手段が前記運搬手段側に取り付けられた送信手段から送信される当該運搬手段の識別信号を受信した場合に、前記読み取り手段が、少なくとも前記識別信号の内容と前記識別信号を受信している間の時刻データとを記録することを特徴とする作業データ収集方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機器の運転者の負担を増大させることなく、複数稼動している荷役機器同士の間の係わり合いについての作業データを簡易且つ迅速に収集可能とした作業データ収集装置及び作業データ収集方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例を説明する。
【0011】
図1に、本発明に係る作業データ収集装置を、荷役作業の管理に適用した場合の一例を示す。図1に示す例は、例えば、製鉄所における原料鉱石ヤードに積まれている鉱石やコークス等の原料10を特定の地点Aから特定の地点Bへ、運搬手段であるトラック11等を用いて移動させる作業、つまり、横持ち作業の場合を示したものである。ここでの作業としては、原料鉱石ヤードのA地点に積まれている鉱石やコークス等の原料10を、その地点に配備された積載手段であるショベルローダー12を用いて運搬手段であるトラック11の荷台に積み込み、トラック11が積まれた鉱石やコークスをB地点へ運び、そこで積み込まれた原料を降ろす、という一連の作業を繰り返す。なお、前記トラック11及びショベルローダー12は、それぞれが1台ずつの場合に限られず、それぞれが複数台ずつ稼動している場合も本発明が適用できる。
【0012】
このような作業において、本発明に係る作業データ収集装置は、運搬手段であるトラック11側に取り付けられ、少なくともこのトラック11を特定できる固有の識別信号を所定の送信範囲内に送信する送信手段1と、積載手段であるショベルローダー12側に取り付けられ、前記送信手段1から送信される識別信号を受信した場合に、少なくとも前記識別信号の内容と前記識別信号を受信している間の時刻データとを記憶する読み取り手段2とを有するものである。
【0013】
図2に、前記作業データ収集装置の概略構成を示すブロック図の一例を示す。
【0014】
図2に示すように、前記作業データ収集装置を構成する送信手段1は、その送信手段1が取り付けられている運搬手段であるトラック11を、他のトラックと区別することができる、そのトラック11固有の識別番号、例えば車番等のデータを記憶する記憶部1aと、この記憶部1aに記憶されている識別番号を、所定の範囲に識別信号として送信する送信部1bとを有する。このような送信手段1としては、例えば(無線)ICタグ等を用いることができる。
【0015】
また、前記識別信号を送信する所定の送信範囲としては、積載手段であるショベルローダー12が、この送信手段1が取り付けられているトラック11に被運搬物である原料を積み込むために接近して、まさに積み込み作業をしている際には、その積み込み作業をしているショベルローダー12に取り付けられている読み取り手段2が、前記送信手段1から送信される識別信号を受信できるぎりぎりの範囲とすることが好ましい。前記送信範囲が短すぎると、積み込み作業をしているショベルローダー12に取り付けられている読み取り手段2が、送信手段1からの識別信号を受信できず作業管理データの取得ができないこととなる。また、前記送信範囲があまり広すぎると、積み込み作業に無関係なショベルローダーが、トラック11の近くを通過しただけで識別信号を受信してしまい、誤った作業管理データが記録されてしまうこととなる。そのため、積み込み作業をしているショベルローダー12の読み取り手段2には確実に識別信号が届き、単に近くを通過しているにすぎないショベルローダーの読み取り手段には信号が届かない所定の送信範囲に適宜調整する必要がある。
【0016】
また、図2に示すように、前記作業データ収集装置を構成する前記読み取り手段2は、前記送信手段1から送信される、その送信手段1が取り付けられているトラック11を特定するための固有の識別信号を受信するための受信部2aと、この受信部2aで受信した内容を作業データとして記憶する記憶部2bとを有する。さらに、この読み取り手段2は、前記送信手段1から送信される識別信号を受信している間の時刻データ、具体的には、前記識別信号を受信した時刻のデータと、受信していた識別信号が受信できなくなった時刻のデータとを、前記識別信号に紐付けて記憶部2b内に作業データとして記憶する。このような読み取り手段2としては、例えばリーダー等を用いることができる。
【0017】
前記読み取り手段2内の記憶部2bに記憶する作業データとしては、前記識別信号の内容と前記識別信号を受信している間の時刻データとの他に、ショベルローダー12がトラック11に積み込んだ被運搬物である原料の質量データを記憶することも好ましい。これにより、ショベルローダー12が、どのトラック11に対して、どれだけの質量の原料を積み込んだのかを解析することが可能となる。前記原料の質量データは、例えば、ショベルローダー12のショベルアームにロードセルを取り付けておき、ショベルですくい上げた原料の質量を計測可能としておくことで取得することができる。
【0018】
さらに、前記読み取り手段2内の記憶部2bに記憶する作業データとしては、この読み取り手段2が取り付けられているショベルローダー12が配備されている作業場所を特定できるデータも記憶しておくことが好ましい。ショベルローダー12が、原料鉱石ヤードの複数の作業場所に複数台配備されているような場合に、その後のデータ解析を容易にするためである。
【0019】
ここで、個々のショベルローダー12に取り付けられている読み取り手段2の記憶部2bに記憶されている作業データは、所定の期間毎、例えば1日の作業が終了した時点で、作業管理を行うホストコンピュータ等の記憶装置内に記憶される。なお、1日の作業終了後に、原料鉱石ヤードの複数の作業場所に配備されていた、複数のショベルローダーの作業データを集計して解析することで、どのショベルローダー12が、どのトラック11に対して、どれだけの質量の原料を積み込んだのかを解析することが可能となる。
【0020】
なお、前記所定の期間は、作業データの解析を行いたい期間に合わせて適宜設定され得るものである。例えば、リアルタイムでデータの収集及び解析を行いたい場合には、前記読み取り手段2に、さらにデータ送信部を設けて、記憶部2bに作業データが記憶された時点で、無線等によりホストコンピュータに作業データを送信するようにしてもよい。
【0021】
以上、本実施形態においては、本発明に係る作業データ収集装置を、製鉄所における原料鉱石ヤードの横持ち作業に適用した場合について説明したが、本発明が適用できる作業はこの場合に限られない。例えば、アンローダー作業、ショベルローダー作業、沿岸クレーン作業、横持車両作業、ホッパー回収作業等に同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る作業データ収集装置を、荷役作業の管理に適用した場合の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る作業データ収集装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0023】
1 送信手段
1a 記憶部
1b 送信部
2 読み取り手段
2a 受信部
2b 記憶部
10 原料
11 トラック
12 ショベルローダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被運搬物を運搬する運搬手段と該運搬手段に被運搬物を積載する積載手段との間で行われる荷役作業の管理を行うための作業データ収集装置であって、
前記作業データ収集装置が、
運搬手段側に取り付けられ、少なくとも当該運搬手段の識別信号を所定の送信範囲内に送信する送信手段と、
積載手段側に取り付けられ、前記送信手段から送信される識別信号を受信した場合に、少なくとも前記識別信号の内容と前記識別信号を受信している間の時刻データとを記憶する読み取り手段と
を有することを特徴とする作業データ収集装置。
【請求項2】
被運搬物を運搬する運搬手段と該運搬手段に被運搬物を積載する積載手段との間で行われる荷役作業の管理を行うための作業データ収集方法であって、
積載手段が運搬手段に被運搬物を積載するため前記運搬手段の所定の送信範囲内に近づき、前記積載手段側に取り付けられた読み取り手段が前記運搬手段側に取り付けられた送信手段から送信される当該運搬手段の識別信号を受信した場合に、前記読み取り手段が、少なくとも前記識別信号の内容と前記識別信号を受信している間の時刻データとを記録することを特徴とする作業データ収集方法。

【図1】
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【図2】
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