説明

作業台

【課題】不使用時においてダウンフローの妨げにならず製造装置や検査装置の省スペース化を図ることができる作業台を提供する。
【解決手段】天板部2と、この天板部2の両端を支える少なくとも2つの支持脚部3とを備える門型形状の作業台1において、天板部2を、作業床面を構成する水平状態の位置と、この水平状態の位置から回転し立ち上がった位置とに移動させる天板回動機構6を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶パネル製造工場の製造ラインの高所においてメンテナンス等の作業を行うための作業台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業者が高所で作業を行うための作業台として、長方形の作業床面を構成する天板部と、この天板部の両端を支え作業者が上り下りできるようにステップを備えた2つの支持脚部とを備える門型形状の作業台が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
液晶パネル製造工場では、レジストコート、ベーク、露光、現像などのフォトリソグラフィ工程によりガラス基板(マザーガラス)にレジストパターニングを行って液晶パネルを製造している。さらに液晶パネル製造ラインには、フォトリソグラフィ工程で製造されたガラス基板を検査するための基板検査装置が配置されている。
【0004】
現在、液晶パネル製造工場では、生産性を高めるために一辺が3000mmを超える大型基板が採用され、この大型ガラス基板を搬送する搬送ラインの高さが1700mmと高くなっている。基板製造装置や検査装置は、搬送ラインよりも高い位置に配置されるため、高所でのメンテナンス作業を強いられることになる。
【0005】
メンテナンス作業を行う際には、ガラス基板を搬入・搬出させる基板搬送路を跨ぐように門型形状の作業台を配置し、作業台を移動させながら搬送面や処理ヘッドのメンテナンスの作業を行っている。作業台の天板部の高さは、基板搬送面をメンテナンスするために、基板搬送面に接触せず作業者の手の届く高さに設定されている。
【0006】
作業台は、メンテナンス作業が終わると、ダウンフローの邪魔にならないように搬送路から外れた位置に退避される。
【特許文献1】特開2008−106607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、作業台の天板部は、作業者を載せるのに十分な広さを確保するために大型のものとなり、作業台を基板搬送路上に置いておくと天板部によりダウンフローが遮られて良好に流れないという問題が生ずる。この問題を回避するために、作業終了後に作業台を搬送路から外れた位置に退避させると大きな退避スペースが必要となり、製造装置または検査装置の設置スペースが大きくなるという問題が生ずる。
【0008】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、不使用時においてダウンフローの妨げにならず製造装置や検査装置の省スペース化を図ることができる作業台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の作業台は、天板部と、この天板部の両端を支える少なくとも2つの支持脚部とを備える門型形状の作業台において、上記天板部を、作業床面を構成する水平状態の位置と、この水平状態の位置から回転し立ち上がった位置とに移動させる天板回動機構を備える構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、天板回動機構により天板部を立ち上がらせることで、不使用時においてダウンフローの流れを阻害することなく製造装置や検査装置の省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係る作業台について、図面を参照しながら説明する。
図1A〜図1Dは、本発明の一実施の形態に係る作業台1を示す斜視図、右側面図、正面図及び平面図である。
【0012】
図2は、上記作業台1の天板回動機構6を説明するための右側面図である。
図3は、上記作業台1の天板2が立ち上がった状態を示す斜視図である。
作業台1は、長い矩形状の天板部2と、この天板部2の両端を支える2つ(少なくとも2つ)の支持脚部3,3と、天板部2の長手方向の一辺に沿って配置された手摺り部5と、天板部2をほぼ垂直に立ち上げる天板回動機構6等を備える。
【0013】
各支持脚部3は、4本の脚柱3a、脚部上面板3b、踏板3c、支持枠3d、4つの車輪3e,4つのガイド用ローラ3fを有する。
4本の脚柱3aは、脚部上面板3bの4隅から下方に向かって作業台移動方向(矢印D1)へ徐々に下広がりになるように傾斜して配設され、側面視台形・正面視長方形を呈する。
【0014】
4本の脚柱3aのうち正面側の2本の脚柱3aの間には、作業者が昇り降りするための梯子を構成するように水平方向に延びる踏板3cが一定間隔で配設されている。4本の脚柱3aのうち両側面側及び背面側の脚柱3aの間には、水平方向に延びる補強部材3dが数箇所に配設されている。なお、4本の脚柱3aの下部には、それぞれ車輪3eが固定されている。
【0015】
内側(他方の支持脚部3に対向する側)の最下部の補強部材3dには、作業台進行方向(矢印D1)に延びるガイド部4を挟むように位置する一対のガイド用ローラ3fが2箇所に配設されている。ガイド部4,4は、図3に示すようにフォトリソグラフィ製造ラインに配置される各種製造装置(基板修正装置を含む)または検査装置など作業対象装置13が設置されるクリーンルームの床面に平行に一対敷設されている。
【0016】
作業台1は、例えば図3に示す基板検査装置(作業対象装置)13のメンテナンス作業に用いる際に、基板検査装置13の基板搬入・搬出用の基板搬送路を跨ぐように配置される。ガイド部4,4は、基板搬送路の両側に沿って床面に敷設され、このガイド部4,4に沿うようにして作業台1が作業台進行方向D1に移動できるようになっている。本実施の形態では、作業者が作業台を押して移動させるようにしているが、作業台1がガイド用ローラ3fのモータなどの駆動機構を備え、遠隔操作により駆動機構を駆動させてガイド部4に沿って作業台1を任意の位置に移動させてもよい。
【0017】
作業台1は、不使用時に基板検査装置13の端または作業台1よりも狭い装置外装との間の退避領域に退避させるようになっている。
図2に示すように、本実施の形態の天板回動機構6は、直線運動を回転運動に変換する回転駆動部として伸縮自在なロッドを有する伸縮ステー7と回動アーム8とからなる。伸縮ステー7の下端は、支持脚部3の退避位置側に突出して設けられた支持部材9aにブラケット7aを介して揺動可能に固定されている。また、伸縮ステー7の上端は、回動アーム8の底面にブラケット7bを介して揺動可能に固定されている。
【0018】
回動アーム8の一端は、伸縮ステー7の下端の固定揺動軸(ブラケット7a)より高い位置で、かつ水平に位置させた天板部2の端から退避側に所定距離Lだけ離れた位置に設けられた支持部材9bに揺動可能に接続されており、この接続位置が回動アーム8の回動中心となる第1の回動軸部10となっている。
【0019】
また、回動アーム8の他端は、天板部2の下部に配置され天板部2を支持する側面視略直角三角形状の天板支持部12に接続されており、この接続位置が天板支持部12の回動中心となる第2の回動軸部11となっている。天板支持部12は、回転アーム8に対して第2の回転軸部11を中心に図2の実線で示す水平位置から二点破線で示す退避側に回動可能になっている。
【0020】
各脚部上面板3b、3bの各内側側縁部には、脚部上面板3bの前端部から退避側に延出する第1のガイドレール15aが設けられている。また、各脚部上面板3b、3bの各外側側縁部より延出する第2のガイドレール15bが設けられている。第1のガイドレール15a、15aには、天板部2が載置される天板載置部16,16が移動可能に設けられている。天板載置部16、16の退避側の端部には、天板部2が揺動可能に連結され、天板回動機構6、6により天板部2を水平状態から垂直状態までに立ち上げる動作に連動して天板載置部16が第1のガイドレール15aに沿って移動可能になっている。この両天板載置部16の退避側の端部には、手摺り部5が固定されている。さらに、手摺り部5の両端は、第2のガイドレールに移動可能に設けられたスライダに固定されている。天板部2が水平位置から垂直に立ち上がって退避位置まで移動する際に、この動作に連動して天板載置部16が第1のガイドレール15aに沿って移動することにより、手摺り部5が天板載置部16により押されて退避位置まで移動する。
【0021】
支持脚部3の退避側には、天板部2より退避側に延出する第1のガイドレール15a及び第2のガイドレール15bを支える補助用の支持枠17が設けられている。
なお、第1の回動軸部10は、天板部2の退避側側面を中心にして垂直に立ち上げて後退した位置とほぼ同じ位置に取り付けられる。また、第1の回動軸部10は、作業台1が図3に示すように基板検査装置13の端まで移動した際に、基板検査装置13の上部空間から退避する位置となっている。このように第1の回動軸部10を退避側に設けることにより、この第1の回動軸部10を回転中心として回転アーム8が回動することにより天板部2が基板検査装置13から外れた退避領域に位置することになる。
【0022】
ここで、天板部2の回動動作について説明する。
まず、図示しない駆動手段により伸縮ステー7を上方に伸ばし(7´)、回動アーム8を第1の回動軸部10を中心に上方に回転させる(8´)。そして、回動アーム8の回転動作により天板支持部12が回動しながら退避側に移動する。このとき、天板部2の移動に連動して天板載置部16が第1のガイドレール15aに沿って退避側に移動する。天板支持部12は、天板載置部16と回転アーム8との連結関係により回転アーム8の回転角度よりも大きな角度で立ち上がる。
【0023】
これにより、天板部2は、天板支持部12と共に第2の回動軸部11を中心に回動するのに加え、天板支持部12及び回動アーム8と共に第1の回動軸10を中心に回動することで、作業床面が鉛直方向に立ち上がった位置(2´)に移動する。なお、天板部2が立ち上がった位置(2´)に到達した際には、天板部2或いは天板支持部12がロック部材18により手摺り部5に固定される。図示例では、回転フック式の手動ロック部材18を採用したが、天板部2の立ち上げを検出して自動でロックする電動式ロック部材を採用してもよい。
【0024】
図3に示すように、天板部2は、垂直に立ち上がった位置(2´)に移動すると、手摺り部5も天板載置部16の移動に連動して天板部2と同じ位置まで移動する。なお、天板部2は、基板検査装置13の基板載置面(基板搬送面)に対して鉛直方向まで立ち上げる必要はなく、ダウンフローの流れを損なわない程度の傾斜角度、例えば鉛直方向から±20°の範囲に立ち上げることでも、後述する省スペース化を図ることは可能でなる。
【0025】
また、天板部2の回動動作は、作業台1の退避領域への移動開始前又は移動終了後に行ってもよいが、作業台1が退避領域に移動している間に行うことで、天板部2の基板検査装置13からの退避動作を迅速に行うことができる。
【0026】
天板部2を、立ち上がった位置(2´)から作業床面を構成する水平状態の位置に移動させる場合には、図示しない駆動手段により、回動アーム8が水平に延びる位置まで伸縮ステー7を縮ませ、第1の回動軸部10及び第2の回動軸部11を中心に、上述の立ち上げ動作と反対方向に天板部2を回動させればよい。なお、天板部2が水平状態の位置に到達した際にも、天板部2或いは天板支持部12がロック部材18により固定されるようにするとよい。
【0027】
以上説明した本実施の形態によれば、天板回動機構6により天板部2を立ち上がらせることで、ダウンフローの流れを損なうことなく作業台1の省スペース化を図ることができる。
【0028】
また、本実施の形態では、作業台1をガイド部4に沿って移動できるため、広い領域で作業を行うことができると共に、不使用時において作業台1を基板検査装置13の端または退避領域に移動させることでスペースを有効活用することができる。
【0029】
また、本実施の形態によれば、天板回動機構6は、作業台1が退避領域に移動している間に、天板部2を、図1A等に示す水平状態の位置から図3に示す立ち上がった位置(2´)に回転させるため、天板部2の基板検査装置13からの退避動作を迅速に行うことができる。
【0030】
また、本実施の形態では、作業台1は、基板検査装置13を跨ぐように配置され、図3に示す退避領域に移動すると共に天板回動機構6により天板部2を立ち上がった位置に移動させることで、天板部2を基板検査装置13の上方から退避させる。したがって、基板検査装置13へのダウンフローを妨げないようにすることができると共に、天板部2周辺から発生する塵埃が基板検査装置13へ落下するのを防ぐことができる。
【0031】
また、本実施の形態では、第1の回動軸10は、作業台1が図3に示すように退避領域に位置する際に基板検査装置13の上部空間から退避した位置に配置される。そのため、より有効に天板部2の退避動作を行うことができる。
【0032】
また、本実施の形態では、天板部2は、天板支持部12と共に第2の回動軸部11を中心に回動するのに加え、天板支持部12及び回動アーム8と共に第1の回動軸10を中心に回動することで、作業床面を構成する水平状態の位置と、この位置から回転し立ち上がった位置とに移動する。そのため、図2に二点鎖線で示すように、天板部2´及びその周辺構造(天板支持部12´、回動アーム8´及び伸縮ステー7´)の配置スペースを小さく抑えることができ、不使用時において作業台1の更なる省スペース化を図ることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、作業台1の支持脚部3には車輪3eが設けられ、作業台1はガイド部4に沿って移動可能に構成されているが、作業台1は床面に固定されるものであってもよく、その場合でも、天板部2を立ち上がらせることで、不使用時に作業台1の省スペース化を図ることは可能である。
【0034】
また、本実施の形態では、作業対象物として基板検査装置13を例に説明したが、作業台1を用いて作業を行う対象物であれば、クリーンルーム内で使用される露光装置、現像装置、リペア装置、レビュー装置などダウンフロー下で用いられるその他の作業対象物であってもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、回動駆動部として伸縮ステー7を用いる例について説明したが、ギヤーなどの伝達機構を介して回転モータで回動させることも可能である。更には、天板回動機構としては、天板部2を水平状態から回転し立ち上げるだけでもダウンフローの流れを阻害することがないため、製造処理や検査処理の邪魔にならない位置に移動させることも可能である。
【0036】
また、本実施の形態では、第1の回動軸部10は、作業台1が図3に示すように退避領域に位置する際に基板検査装置13の上部空間から退避した位置にある例を説明したが、第1の回動軸部10は、天板部2の中央や端部に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】本発明の一実施の形態に係る作業台を示す斜視図である。
【図1B】本発明の一実施の形態に係る作業台を示す右側面図である。
【図1C】本発明の一実施の形態に係る作業台を示す正面図である。
【図1D】本発明の一実施の形態に係る作業台を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る作業台の天板回動機構を説明するための右側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る作業台の天板が立ち上がった状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 作業台
2 天板部
3 支持脚部
3a 脚柱
3b 脚部上面板
3c 踏板
3d 補強部材
3e 車輪
3f ガイド用ローラ
4 ガイド部
5 手摺り部
6 天板回動機構
7 伸縮ステー
8 回動アーム
9a,9b 支持部材
10 第1の回動軸部
11 第2の回動軸部
12 天板支持部
13 基板検査装置(作業対象装置)
15a 第1のガイドレール
15b 第2のガイドレール
16 天板載置部
17 支持枠
18 ロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、該天板部の両端を支える少なくとも2つの支持脚部とを備える門型形状の作業台において、
前記天板部を、作業床面を構成する水平状態の位置と、該水平状態の位置から回転し立ち上がった位置とに移動させる天板回動機構を備える、
ことを特徴とする作業台。
【請求項2】
前記作業台は、ガイド部に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1記載の作業台。
【請求項3】
前記天板回動機構は、前記作業台が退避領域に移動している間に、前記天板部を、前記水平状態の位置から立ち上がった位置に回転させることを特徴とする請求項2記載の作業台。
【請求項4】
前記作業台は、作業対象物を跨ぐように配置され、
前記天板回動機構は、前記天板部を、前記水平状態の位置から前記立ち上がった位置に回転させることで、前記作業対象物の上方から退避させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載の作業台。
【請求項5】
前記天板部を支持する天板支持部を更に備え、
前記天板回動機構は、一端に第1の回動軸部が設けられ該第1の回動軸部を中心に回動する回動アームと、該回動アームを回動させる回動駆動部とを有し、
前記天板支持部は、前記回動アームの残る他端に設けられた第2の回動軸部に接続され、
前記天板部は、前記天板支持部と共に前記第2の回動軸部を中心に回動するのに加え、前記天板支持部及び前記回動アームと共に前記第1の回動軸を中心に回動することで、前記水平状態の位置と前記立ち上がった位置とに移動する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の作業台。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−37822(P2010−37822A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202416(P2008−202416)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】