説明

作業工具

【課題】本発明は、柄部間に対向配置される同極磁石の反発力をブレードの剪断力の向上及び寿命延長にも有効利用可能とした作業工具を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の作業工具(1)は、先端に作業部(2)、中間に枢着部(3)、後端に柄部(4)を備えた工具杆(5)を2個相対向するように前記枢着部(3)を交叉重合するように枢軸(6)で枢着し、前記柄部(4)(4)間に同極の磁石(7)(7)を対向配置し、その際、前記両方の磁石(7)(7)を前記柄部(4)(4)間に前記作業部(2)(2)のブレード(2a)(2a)の刃(2b)(2b)が前記枢軸(6)の軸線方向に対して相互に近付く方向に向くようにずらせて対向配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアニッパー、ハンド式ニッパー、ペンチ、プライヤー、ハサミ、バリカン等の作業工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアニッパーブレード、ハンド式ニッパー、ペンチ、プライヤー、ハサミ、バリカン等の作業工具の開閉を楽に、また使いやすくするために、柄部にスプリングを使用したものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、上記スプリングの代わりに同極の磁石を柄部間に対向配置したものもある(例えば、特許文献2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−179952号公報
【特許文献2】特開昭53−130600号公報
【特許文献3】実公昭60−1983号公報
【特許文献4】国際公開番号:WO2005/060732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、柄部間にスプリングを配置したものは、開閉頻度の多いエアニッパーブレードでは、スプリングの金属疲労等により折れが発生し、大きなトラブルを発生させる要因でもあった。また、ブレードの交換時に起こるスプリング紛失も問題であった。
上記スプリングに代えて、特許文献2〜4のように、柄部間に同極の磁石を対向配置したものは、上記スプリングを配置したのもののようなトラブルは解消できるが、上記磁石の反発力のさらなる有効利用を図るという点においては、未だ満足できるものではなかった。即ち、この種の作業工具は、枢軸廻りに僅かとは云うものの摺動スキマがあり、また、枢軸と直交する摺動面間にも摺動スキマがあるため、被切断物を切断する際、ブレードの刃が、前記スキマの範囲内で枢軸の軸線方向に対して相互に離隔する方向にずれようとする傾向がある。このため、ブレードの剪断力は、前記ずれによる損失が発生し、寿命の短縮を招き、ブレードの交換頻度を増加させるという問題があった。特に、前記磁石の取付け仕様精度が劣悪であると、上記傾向が一層助長される欠点があった。
【0005】
本発明は、従来技術の上記問題点に鑑みて開発されたものであって、その目的とするところは、柄部間に対向配置される同極磁石の反発力をブレードの剪断力の向上及び寿命延長にも有効利用可能とした作業工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明は、先端に作業部、中間に枢着部、後端に柄部を備えた工具杆を2個相対向するように前記枢着部を交叉重合するように枢軸で枢着し、前記柄部間に同極の磁石を対向配置した作業工具において、前記両方の磁石を前記柄部間に、前記作業部のブレードの刃が前記枢軸の軸線方向に対して相互に近付く方向に向くようにずらせて対向配置してあることを特徴としている。
また、前記柄部間に対向配置されている両方の磁石は、相互の対向面中心を前記枢軸の軸線方向にずらせて対向配置してある。
【0007】
さらに、前記両方の磁石の相互の対向面中心のずらせてある方向は、前記作業部のブレードの刃が前記枢軸の軸線方向に対して相互に近付く方向と逆の方向としてある。
本発明の作業工具は、上記構成としてあることによって、柄部をエア等の外力又は手動握力によって接近動作させると、柄部間に対向配置されている両方の磁石に発生する反発力の枢軸方向成分によって、作業部のブレードの刃を枢軸の軸線方向に対して相互に近付ける方向に作用させることができ、しかも、この反発力は、柄部を接近させるほど大きくなり、これによって、作業工具のブレードの剪断力を効果的に向上させることができる。そして、前記柄部への外力又は手動握力を除去することにより、両方の磁石の反発力で柄部が離隔動作せしめられ、作業部のブレードが開放動作せしめられる。
【0008】
また、前記柄部の対向面には、前記磁石の取付用凹部がそれぞれ形成され、各取付用凹部の周囲には前記磁石の周面に対して該凹部よりも浅い周溝が形成してある。
この構成によれば、磁石による反発磁力を多く(強く)することができる。
このように、本発明の作業工具は、エアニッパーブレードに適用すれば、スプリングの折れによるトラブルを無くすことができ、また、ブレード交換時等に起こるスプリング紛失も無くすことができ、さらに、定期的なスプリングの交換作業も不要とでき、しかも、ブレード寿命の延長が図れて交換頻度を減らすことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柄部間に対向配置される同極磁石の反発力をブレードの剪断力の向上及び寿命延長にも有効利用可能とした作業工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る作業工具の実施形態の後部より見た斜視図である。
【図2】図1の作業工具の磁石取付位置で柄部を切断した状態の斜視図である。
【図3】図1の作業工具の後部より見た正面図である。
【図4】図1の作業工具の磁石取付位置で柄部を切断した状態の拡大断面図である。
【図5】本発明の作業工具をエアニッパーに適用した場合の要部縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る作業工具の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明に係る作業工具1は、図1〜図4に示すように、先端に作業部2、中間に枢着部3、後端に柄部4を備えた工具杆5を2個相対向するように組み合わされ、かつ、前記枢着部3を交叉重合するように枢軸6で枢着してなり、前記柄部4、4間に同極(例えば、N極とN極、又は、S極とS極)の磁石7、7を対向配置した構成からなっている。工具杆5は、硬質金属材料で構成されており、作業部2のブレード2aは焼き入れ等の表面処理が施され、刃2bはシャープに仕上げられている。
【0012】
前記両方の磁石7、7は、前記柄部4、4間に、図1〜図4に示すように、前記作業部2、2のブレード2a,2aの刃2b、2bが前記枢軸6の軸線方向に対して相互に近付く方向に向くようにずらせて対向配置されている。
前記柄部4、4間に対向配置される両方の磁石7、7は、図2〜図4に示すように、相互の対向面7a、7aの中心を前記枢軸6の軸線方向にずらせて対向配置されている。
前記両方の磁石7、7の相互の対向面中心のずらせてある方向は、図1〜図4に示すように、前記作業部2、2のブレード2a、2aの刃2b、2bが相互に近付く方向と逆の方向とされている。これにより柄部4、4は、両方の磁石7、7の反発力によって枢軸6を中心として上下方向に離隔動作すると同時に、枢軸6の軸線方向にも反発し合うことによって、枢軸6の位置を支点として、作業部2、2のブレード2a、2aの刃2b、2bを枢軸6の軸線方向に対して相互に近付ける動作が得られる。
【0013】
前記柄部4、4の対向面4a、4aには、図2、図4に示すように、前記磁石7、7の取付用凹部8、8がそれぞれ形成され、各取付用凹部8、8の周囲には前記磁石7、7の周面に対して該凹部8、8よりも浅い周溝9、9が形成されている。磁石7、7は、取付用凹部8、8に嵌合され、適宜の接着剤を介して接着保持させてある。なお、接着剤を省力して磁石7、7自体の磁気吸着力で取付用凹部8、8に嵌合保持させるようにしてもよい。また、磁石7、7の周囲に前記周溝9、9を設けておくことによって、磁石7、7の反発磁力を多く(強く)することができる。
【0014】
前記磁石7、7は、柄部4、4の対向面4a、4aのどの位置に取り付けてもよいのであるが、枢軸6に近付けるほど開放角度を大きく保持させることができ、本実施形態における図示例では、枢軸6に近付けて取り付けた場合を例示している。なお、柄部4、4の対向面4a、4aの後端付近には、柄部4、4の閉鎖端を規制するストッパ凸部4b、4bが一体的に突設されており、これによって、作業部2、2のブレード2a,2aの刃2b、2bを保護するように構成されている。また、柄部4、4の開放端は、交叉重合させた枢着部3、3の外側切込み部3a、3aによって規制するように構成されている。
【0015】
図5は、本発明の作業工具1をエアニッパー10に適用した場合の要部縦断側面図であって、エアニッパー10は、円筒状本体11と、この円筒状本体11内に摺動可能に挿入されているピストン12とを備えている。
円筒状本体11の先端には、前記作業工具1が先端側の作業部2、2を円筒状本体11の先端側に突出させ、後端側の柄部4、4を円筒状本体11内に挿入した状態で枢軸6を利用して取り付けられている。
即ち、円筒状本体11の先端側には枢軸6の両端を支持するためのブラケット部11aが一体に突設されている。そして、ピストン12の先端面側には、円錐凹部12aが形成されており、この円錐凹部12aに作業工具1の柄部4、4の後端が挿入されている。
【0016】
円筒状本体11の後端には端板13が螺合されており、この端板13とピストン12との間に空気室14が形成されている。空気室14には、端板13に形成されている通気孔15から圧縮空気が供給されることによって、ピストン12が円筒状本体11内で圧縮ばね16に抗して先端側へ移動し、円錐凹部12aによって作業工具1の柄部4、4を相互に接近させる方向に閉動作させ、先端側の作業部2のブレード2a、2aの刃2b、2bによって被切断物Wを切断動作させ、前記空気室14から圧縮空気が排除されることによって、圧縮ばね16の弾性復帰力によりピストン12が後端側へ押し戻されるように構成されている。圧縮ばね16は、円筒状本体11の先端側内面段部とピストン12の外面段部との間に圧縮状態で設置されており、ピストン12を、常時、後端側へ押し戻すように設けられている。ピストン12の外周面には、Oリング17が設けられている。ピストン12が後端側へ押し戻されることに関連して、作業工具1の柄部4、4は、磁石7、7の反発力によって離隔する方向に開放される。
【0017】
本発明の作業工具1は、上記実施形態のような構成としてあることによって、柄部4、4をエア等の外力又は手動握力によって接近動作させると、柄部4、4間に対向配置されている両方の磁石7、7に発生する反発力の枢軸6方向成分によって、作業部2、2のブレード2a、2aの刃2b、2bを枢軸6の軸線方向に対して相互に近付ける方向に作用させることができ、しかも、この反発力は、柄部4、4を接近させるほど大きくなり、これによって、作業工具1のブレード2a、2aの剪断力を効果的に向上させることができる。そして、前記柄部4、4への外力又は手動握力を除去することにより、両方の磁石7、7の反発力で柄部4、4が離隔動作せしめられ、作業部2、2のブレード2a,2aが開放動作せしめられる。
【0018】
また、前記柄部4、4の対向面4a、4aには、前記磁石7、7の取付用凹部8、8がそれぞれ形成され、各取付用凹部8、8の周囲には前記磁石7、7の周面に対して該凹部8、8よりも浅い周溝9、9が形成してあることによって、磁石7、7による反発磁力を多く(強く)することができる。
このように、本発明の作業工具1は、図5に示すようなエアニッパー10のニッパーブレードに適用すれば、従来のスプリング採用方式のもののようなスプリングの折れによるトラブルを無くすことができ、また、ブレード交換時等に起こるスプリング紛失も無くすことができ、さらに、定期的なスプリングの交換作業も不要とでき、しかも、ブレード寿命の延長が図れて交換頻度を減らすことができる。
【0019】
本発明に係る作業工具1は、以上の実施形態からなるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で自由に変形して実施してもよい。例えば、磁石7、7の形状は、円柱形状、その他、任意の形状としてもよい。また、磁石7、7は、ネオジウム磁石が最も磁力が強く、これ以外に、サマリウム・コバルト磁石や異方性フェライト磁石、アルニコ磁石等があり、用途に応じて最適のものを採用すればよい。さらに、磁石7、7のずらせ量は、図示実施形態では、磁石7、7の対向面の枢軸6方向幅寸法の約1/2とした場合を例示しているが、これに制約されるものではなく、0以上の適正な値とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の作業工具1は、エアニッパー、ハンド式ニッパー、ペンチ、プライヤー、ハサミ、バリカン等に適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 作業工具
2 作業部
2a ブレード
2b 刃
3 枢着部
4 柄部
5 工具杆
6 枢軸
7 磁石
8 取付用凹部
9 周溝
10 エアニッパー
11 円筒状本体
12 ピストン
13 端板
14 空気室
15 通気孔
16 圧縮ばね
17 Oリング
W 被切断物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に作業部、中間に枢着部、後端に柄部を備えた工具杆を2個相対向するように前記枢着部を交叉重合するように枢軸で枢着し、前記柄部間に同極の磁石を対向配置した作業工具において、前記両方の磁石を前記柄部間に、前記作業部のブレードの刃が前記枢軸の軸線方向に対して相互に近付く方向に向くようにずらせて対向配置してあることを特徴とする作業工具。
【請求項2】
前記柄部間に対向配置される両方の磁石は、相互の対向面中心を前記枢軸の軸線方向にずらせて対向配置してあることを特徴とする請求項1に記載の作業工具。
【請求項3】
前記両方の磁石の相互の対向面中心のずらせてある方向は、前記作業部のブレードの刃が前記枢軸の軸線方向に対して相互に近付く方向と逆の方向としてあることを特徴とする請求項2に記載の作業工具。
【請求項4】
前記柄部の対向面には、前記磁石の取付用凹部がそれぞれ形成され、各取付用凹部の周囲には前記磁石の周面に対して該凹部よりも浅い周溝が形成してあることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の作業工具。
【請求項5】
前記作業工具がエアニッパーブレードに適用されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の作業工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−178984(P2010−178984A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26357(P2009−26357)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(500208885)株式会社ベツセル福知山 (2)
【Fターム(参考)】