説明

作業機のモニタ表示装置

【課題】モニタ表示器の表示内容を把握しやすくして作業機の操作性を向上させると共に、コストの低減を図る。
【解決手段】モニタ表示器(12)の表示制御を行なうモニタ表示制御コントローラ(C1)と作業機の作動部を制御する複数の制御コントローラ(C2)とを通信回線によって接続する。そして、表示切換スイッチ(SW1)を操作する毎に、複数の制御コントローラ(C2)からモニタ表示制御コントローラ(C1)へ送信される表示情報を設定された順位に従ってモニタ表示器(12)へ切換表示可能に構成する。更に、表示切換スイッチ(SW1)の操作にもかかわらず、モニタ表示制御コントローラ(C1)へ表示情報が送信されない場合には、当該設定順位の表示情報の表示をとばして次の順位の表示情報の表示へスキップさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等の作業機のモニタ表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等のモニタ表示装置において、モニタ表示器に複数の作動部の作動内容を表示し、作動部に異常が発生した場合には、異常状態と表示するようにしたものは、公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−182403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
同一型式のコンバインにおいて、刈取走行制御装置や車体水平制御装置のコントローラを装備しているものと装備していないものがある。従来のモニタ表示装置では、これら付属機器を装備していないものには、コントローラにジャンパ回線を付加するなどして付属機器の装備の有無を判定していた。しかし、この付加作業はめんどうで、コスト高となる不具合があった。そこで、本発明はこのような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、作業機の操縦部(3)にモニタ表示器(12)を設け、該モニタ表示器(12)の表示制御を行なうモニタ表示制御コントローラ(C1)と作業機の作動部を制御する複数の制御コントローラ(C2)とを通信回線によって接続し、前記モニタ表示器(12)に表示切換スイッチ(SW1)を設け、該表示切換スイッチ(SW1)を操作する毎に前記複数の制御コントローラ(C2)からモニタ表示制御コントローラ(C1)へ送信される表示情報を設定された順位に従って前記モニタ表示器(12)へ切換表示可能に構成し、前記表示切換スイッチ(SW1)の操作にもかかわらず、モニタ表示制御コントローラ(C1)へ表示情報が送信されない場合には、当該設定順位の表示情報の表示をとばして次の順位の表示情報の表示へスキップするように構成したことを特徴とする作業機のモニタ表示装置とする。
【0005】
前記構成によると、作業機の操縦部3にはモニタ表示器12が設けられていて、モニタ表示制御コントローラC1と複数の制御コントローラC2とは通信回線により接続されている。モニタ表示器12に設けられている表示切換スイッチSW1を操作する毎に複数の制御コントローラC2からモニタ表示制御コントローラC1へ送信される表示情報が設定された順位に従ってモニタ表示器12に表示される。また、表示切換スイッチSW1の操作にもかかわらず、モニタ表示制御コントローラC1へ表示情報が送信されない場合には、当該設定順位の表示情報の表示をとばして次の順位の表示情報の表示へスキップする。
【0006】
請求項2の発明は、前記表示切換スイッチ(SW1)の前回の一巡操作時に制御コントローラ(C2)からモニタ表示制御コントローラ(C1)へ表示情報が送信されずに当該設定順位の表示情報の表示をとばして次の順位の表示情報の表示へスキップした場合であっても、前記表示切換スイッチ(SW1)の今回の操作によりモニタ表示制御コントローラ(C1)への送信が回復した場合には、当該設定順位の表示情報を表示させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の作業機のモニタ表示装置とする。
【0007】
前記構成によると、請求項1発明の前記作用に加えて、表示切換スイッチSW1の前回の一巡操作時には制御コントローラC2からモニタ表示制御コントローラC1へ表示情報が送信されずに当該設定順位の表示情報の表示をとばした場合であっても、表示切換スイッチSW1の今回の操作によりモニタ表示制御コントローラC1への送信が回復した場合には、当該設定順位の表示情報が表示される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によると、例えば特定の制御コントローラC2の通信回線を断線させることによって不要な表示を省略することができ、モニタ表示器12の表示内容が把握しやすくなって操作性が向上するうえに、コントローラへのジャンパ回線の追加加工が不要となってコストの低減を図ることができる。
【0009】
請求項2の発明によると、請求項1記載の発明の効果に加えて、作業機の作動部における現状の制御作動状態に対応した表示をすることができ、この作業機の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に示すこの発明の実施の形態について説明する。
まず、図1により本発明を実施するコンバインの全体構成について説明する。
図1にはコンバインの全体側面図が図示されている。コンバインの走行車体1の下−方には左右走行クローラ2,2を配設し、走行車体1上には、右側前部に座席付きの操縦部3を、その後方にはエンジン(図示省略)及び穀粒収納用のグレンタンク4を配設し、走行車体1の左側部に脱穀部5を搭載し、脱穀部5の下方には選別部(図示省略)を設け、走行車体1の前側部には刈取搬送部7を昇降自在に設けている。
【0011】
次に、図2に基づき操縦部3の具体構成について説明する。
操縦部3の座席3aの前側部には、フロント操作ボックス3bを、左側部にはサイド操作ボックス3cを設けている。フロント操作ボックス3bの右側端部にパワステレバー11を、正面部にモニタ表示器12を設けている。また、サイド操作ボックス3cには、前側から後側にかけてスイッチの入切を表示するスイッチパネル13、エンジンの燃料噴射量を調節するアクセルレバー14、エンジンからの走行動力、作業動力を無段変速する無段変速装置(図示省略)変速用の主変速レバー15、副変速装置(図示省略)を変速する副変速レバー16、刈取搬送部7及び脱穀部6への動力を入切するクラッチ作動用の刈取脱穀クラッチレバー17を配設している。なお、図3はモニタ表示器12の拡大正面図で中央部に液晶表示部12aを設けている。
【0012】
次に、図4に基づきコンバインのモニタ表示制御装置のブロック構成について説明する。
モニタ表示制御を行なうモニタ表示制御コントローラC1、刈取走行制御を行なう刈取走行制御コントローラC2、車体の水平制御を行なう車体水平制御コントローラC3を近接配置し、これらコントローラC2,C3をCAN通信等のコントローラ間通信手段20を経由してモニタ表示制御コントローラC1のモニタ表示項目選択手段に接続し、モニタ表示項目選択手段からモニタ表示制御手段、液晶出力回路を経て、モニタ表示器12の液晶本体にモニタ表示するように構成している。また、表示切換スイッチSW1のON/OFF信号をデジタル信号入力処理回路を経由して、モニタ表示制御コントローラC1のモニタ表示項目選択手段に入力するように構成している。
【0013】
前記モニタ表示器12には表示切換スイッチSW1を設け、この表示切換スイッチSW1のON操作毎に設定された順位に沿ってモニタ表示内容を変更するように構成している。そして、表示切換スイッチSW1のON操作にもかかわらず、前記刈取走行制御コントローラC2、車体水平制御コントローラC3からのモニタ情報が得られないことを判断した場合には、当該コントローラのモニタ情報を表示せずに(スキップして)、次の表示切換スイッチSW1のON操作により次の順位のモニタ情報を表示するようにしている。
【0014】
図5(A)はモニタ表示の切換状態を示すもので、例えば、モニタ表示制御コントローラC1に刈取走行制御コントローラC2及び車体水平制御コントローラC3が接続されている場合には、表示切換スイッチSW1を第1回目のON操作により、標準画面の「走行速度及びグレンタンクの穀粒収納量」が表示され、表示切換スイッチSW1の第2回目のON操作により、左右傾斜状態表示画面の「車体水平制御による車体傾斜状態」が表示され、表示切換スイッチSW1の第3回目のON操作により、車高状態表示画面の「車体水平制御による車高状態」が表示される。
【0015】
また、モニタ表示制御コントローラC1に車体水平制御コントローラC3が接続されていない場合(あるいは、通信回線の故障の場合)には、表示切換スイッチSW1の第1回目のON操作により、図5(B)に示すように、表示切換1の「走行速度及びグレンタンクの穀粒収納量」が図5(A)と同様に表示される。次いで、表示切換スイッチSW1の第2回目のON操作をしても、左右傾斜状態表示画面の「車体水平制御による車体傾斜状態」のモニタ情報が受信されていない場合にはモニタ表示が中止される(スキップされる)。次いで、表示切換スイッチSW1の第3回目のON操作をしても、車高状態表示画面の「車体水平制御による車高状態」のモニタ情報が受信されてないときには、モニタ表示は中止される(スキップされる)。
【0016】
同一型式のコンバインにおいて、刈取走行制御装置や車体水平制御装置が装備されていない型式がある。従来装置では制御装備無しの型式の場合には、ジャンパ回線を付加するなどして制御の有無を判定したり、また、制御無し装備の場合には、モニタ画面に「装備なし」とモニタ表示するものもあった。しかし、これらの処置は手数がかかりコスト高となる不具合があった。
【0017】
しかし、前記構成によると、制御装備無しの処置、例えば、コントローラの通信回線を断線させたり、あるいは、装備無しの表示を省略することができ、構成を簡単にしコストの低減を図ることができる。
【0018】
また、前記コントローラC2,C3の装備なしと判定し「モニタ表示停止」の場合にも、その後の表示スイッチSW1をON操作時、当該モニタ表示情報の通信が回復している場合には、当該モニタ情報の表示を再開するように構成している。
【0019】
前記構成によると、型式設定や、ジャンパ回線の追加や、表示プログラムの変更を不要としながら、現状の制御装備状態に対応した表示をすることができる。
また、前記モニタ表示制御装置において、コンバインのメインキー(図示省略)をONしエンジンを始動した後の所定時間内に、前記コントローラC2,C2からの通信情報が受信できなかったモニタ表示項目については、表示切換スイッチSW1のその後の当該モニタ表示時にも表示しないように構成している。また、前記所定時間内に通信情報の受信が完了した場合には、表示切換スイッチSW1のその後のON操作で通信状態が発生すると、当該モニタ表示を行なうように構成している。
【0020】
図6に示すように、制御が開始されると、電源スタート監視中か否かを判定し(ステップS1)、電源スタート監視中であると、コントローラC1,C2,C3間の通信処理がなされる(ステップS2)。次いで、刈取走行制御コントローラC2の接続を判定し(ステップS3)、接続されていると刈取走行制御コントローラC2の接続完了を記憶装置に記憶する(ステップS4)。次いで、車体水平制御コントローラC3の接続を判定し(ステップS5)、接続されていると車体水平制御コントローラC3の接続完了を記憶装置に記憶する(ステップS6)。
【0021】
また、電源スタート監視中か否かを判定し(ステップS1)、電源スタートの監視中でない場合には、次いで、表示切換スイッチSW1の操作の有無を判定し(ステップS7)、操作有りの場合には、車体水平制御コントローラC3の接続完了か否かを判定し(ステップS8)、接続が完了していると、モニタ表示器12の表示画面が前記「標準画面」か否かを判定し(ステップS9)、標準画面であると、表示切換スイッチSW1を操作して傾斜表示データを選択表示する(ステップS10、14)。また、前記標準画面でない場合には(ステップS9)、モニタ表示が前記傾斜表示画面であるか否かを判定し(ステップS11)、傾斜表示画面であると、表示切換スイッチSW1を操作して車高表示データを選択表示する(ステップS12、14)。また、表示が傾斜表示画面であるか否かを判定し(ステップS11)、傾斜表示画面でないと、表示切換スイッチSW1を操作し、標準表示画面を選択し表示する(ステップS13,14)。
【0022】
前記構成によると、型式の入力誤りか、コントローラ間の通信異常かを判定することができる。
また、前記モニタ表示制御装置において、コンバインのメインキー(図示省略)をONしエンジンの始動後所定時間以内に、前記コントローラC2,C2からの通信情報が受信できなかったモニタ表示項目については、以後の表示切換スイッチSW1の当該表示操作時にも表示しないように構成する。また、その所定時間内に通信情報の受信が完了した場合には以後通信状態が発生し、当該モニタ表示を行なうにあたり、モニタ表示器12に所定時間わたり停止表示項目の表示が回復したことのモニタ表示をし、その後の表示切換スイッチSW1のON操作に応じてモニタ表示できるように構成してもよい。このようにすることにより、オペレータがモニタ表示の回復を確実に知ることができる。
【0023】
また、前記図6の刈取走行制御コントローラC2の接続判定(ステップS3)、及び、車体水平制御コントローラC3の接続判定(ステップS5)時に、接続なしと判定した場合において、これらコントローラC2,C3の通信が以後に回復したときに、表示切換スイッチSW1をON操作により当該コントローラの表示順番が巡ってきたときに、図7に示すように、「車体水平制御なし型式を選択している」旨のモニタ表示をし、「非表示項目」の表示回復をしないようにしてもよい。前記構成によると、通信に異常が発生したことを認識することができる。
【0024】
また、図6のフローチャートにおいて、車体水平制御コントローラC3の接続判定(ステップS5)時に接続なしと判定した場合において、その後に車体水平制御コントローラC3の通信が回復したときに、所定時間メインスイッチ(図示省略)を再投入する旨のメッセイジを表示し、車体水平制御コントローラC3の接続判定を再度実行し、「非表示項目」のモニタ表示の回復をしないようにしてもよい。前記構成によると、通信異常による車体水平制御型式の判定誤りの回復をオペレータが認識することができる。
【0025】
次に、図8及び図9に基づき刈取走行制御コントローラC2の他の制御内容について説明する。
刈取搬送部7の所定上昇位置への移動を刈取高さセンサSE1が検出すると、刈取搬送部7への動力断続用の刈取脱穀クラッチ(図示省略)を自動的に切り動力伝達を停止させるコンバインの刈取自動制御装置において、刈取搬送部7の刈取高さを設定する刈高さ設定ダイヤルSW2を設け、この刈高さ設定ダイヤルSW2の標準刈高さに対する高低の設定に応じて、前記所定上昇位置を所定比率で高低に変更した高さを、刈取搬送部7の動力伝達自動停止時の目標上昇位置とするものである。
【0026】
図8に示すように、刈取走行制御コントローラC2の入力側には、刈取自動入切スイッチSW3、刈取搬送部7の昇降位置を検出する刈高さセンサSE1、刈取搬送部7の上昇位置を設定する刈高さ設定ダイヤルSW2、走行車体1の前後傾斜を検出する前後傾斜センサSE2、後進走行センサSE4を接続し、出力側には、刈取クラッチ入り作動ソレノイドSL1及び刈取クラッチ切り作動ソレノイドSL2を接続している。なお、図9は刈高さ制御目標高さと、刈取搬送部7の動力伝達停止時の上昇高さとの関係を示すものである。
【0027】
従来の刈取搬送部7の上昇時動力自動停止装置は、刈取搬送部7の動力停止時の上昇高さを所定高さで固定的に設定していた。このため、オペレータが刈取搬送部7の動力停止時の上昇位置を低く設定したくても、上昇高さ位置を麦畦作業や湿田作業を考慮して比較的高い上昇位置に設定しているため、上昇位置が高くなるという不具合があった。このため、上昇時間及び下降時間が余分に発生し、作業能率が低下するという問題点があった。
【0028】
しかし、前記構成によると、刈取搬送部7の刈高さ位置を昇降調節設定した場合には、設定刈高さの上下変更に応じて刈取搬送部7の動力伝達自動停止位置を上下に変更できるので、刈取搬送部7を能率的に昇降しながら刈取作業をすることができる。
【0029】
次に、図8及び図10に基づき刈取走行制御コントローラC2の他の制御内容について説明する。
刈取搬送部7の所定上昇位置への移動を刈取高さセンサSE1が検出すると、刈取搬送部7の動力断続用の刈取クラッチ入りソレノイドSL1が作動し刈取脱穀クラッチ(図示省略)を自動的に切り動力伝達を停止させるコンバインの刈取自動制御装置において、前後傾斜センサSE2の傾斜検出に応じて、前記所定上昇位置を高低に変更し適正化しようとするものである。
【0030】
即ち、刈取作業中の走行車体1が後下がり傾斜の場合には、前記所定上昇位置を高くし、また、走行車体1が前下がり傾斜の場合には、前記所定上昇位置を高くする。なお、図10は刈高さ制御目標高さと、後下がり傾斜、水平、前下がり傾斜に対応する刈取搬送部7の動力伝達停止上昇高さ線との関係を示すものである。
【0031】
コンバインの刈取自動制御装置において、走行車体1の前後傾斜とは無関係に刈取搬送部7の動力伝達停止時の所定上昇位置に一定高さに固定すると、オペレータが前記所定上昇位置を低く設定した場合には、例えば、湿田刈取作業や畦のある麦刈取作業では、走行車体1が大きく前後に傾斜し、頻繁に刈取搬送部7の動力伝達が停止され、作業能率が低下するという不具合が発生する。
【0032】
しかし、前記構成によると、走行車体1が前後に傾斜しながら刈取作業をする場合には、刈取搬送部7の動力伝達停止時の目標上昇位置を地上から所定の高さを前後傾斜に応じて変更させることができ、前記不具合を解消しながら、刈取作業を円滑に行なうことができる。
【0033】
次に、図8及び図11に基づき刈取走行制御コントローラC2の制御内容について説明する。
走行車体1の後進を後進走行センサSE4が検出すると(あるいは、刈取搬送部7の刈取作業の終了を穀稈有無センサが検出すると)、刈取搬送部7を所定高さまで上昇させるコンバインの刈取搬送部自動上昇制御装置において、刈高さ設定ダイヤルSW2により標準刈高さに対し刈取高さを高低に設定することに応じて、前記所定上昇位置を所定比率で高低に変更した高さを、刈取搬送部7の目標上昇位置とするものである。なお、図11は刈高さ制御目標と、刈取搬送部7の補正上昇高さとの関係を示すものである。
【0034】
従来の刈取搬送部7の後進時自動上昇装置は、機体後進時の刈取搬送部7の上昇高さを所定高さで固定的に設定していた。このため、オペレータが刈取搬送部7の後進時上昇位置を低く設定したくても、麦畦作業や湿田作業を考慮して上昇高さを比較的高い位置に設定しているため、上昇位置が高くなってしまうという不具合があった。このため、刈取搬送部7の余分の上昇時間及び下降時間が発生し、作業能率が低下するという問題点があった。
【0035】
しかし、前記構成によると、刈取搬送部7の刈高さ位置を昇降調節設定した場合には、設定刈高さに応じて上下に変更した位置で後進時の刈取搬送部7を停止できるので、刈取搬送部7を能率的に昇降しながら刈取作業をすることができる。
【0036】
次に、図8及び図12に基づき刈取走行制御コントローラC2の他の制御内容について説明する。
走行車体1の後進を後進走行センサSE3が検出する(あるいは、刈取搬送部7の刈取作業の終了を穀稈有無センサで検出する)と、刈取搬送部7を所定位置まで上昇させるコンバインの刈取搬送部自動上昇制御装置において、前後傾斜センサSE2の傾斜検出に応じて、前記所定上昇位置を高低に変更し適正化しようとするものである。即ち、刈取作業中の走行車体1が後下がり傾斜の場合には、前記所定上昇位置を高くし、また、走行車体1が前下がり傾斜の場合には、前記所定上昇位置を高くする。なお、図12は刈高さ制御目標と、後下がり傾斜、水平、前下がり傾斜に対応する刈取搬送部7の所定上昇高さとの関係を示すものである。
【0037】
コンバインの刈取搬送部自動上昇制御装置において、刈取搬送部7の前記所定上昇位置を走行車体1の前後傾斜とは無関係に一定高さに設定とすると、オペレータが前記所定上昇位置を低く設定した場合には、例えば、湿田刈取作業や畦のある麦の刈取作業では、走行車体1が大きく前後傾斜し、頻繁に刈取搬送部7が上昇し作業能率が低下するという不具合が発生する。
【0038】
前記構成によると、走行車体1が前後傾斜しながら刈取作業をする場合には、機体後進時の刈取搬送部7の目標上昇位置を地上から所定の高さに上昇させることができ、刈取搬送部7の頻繁な上昇を回避しながら刈取作業を円滑に行なうことができる。
【0039】
次に、図13乃至図15に基づき選別部6の揺動選別棚26における異物付着センサSE4の表示装置について説明する。
脱穀部5の扱室の下方に脱穀物選別用の選別部6を前後方向に沿うように設け、選別部26の前側部の唐箕(図示省略)から前後方向の選別風路(図示省略)に後側に向かうように選別風を送り、選別風路には前後斜め上下に往復揺動する揺動選別棚26を配設している。この揺動選別棚26の上側部には、前側から後側に向けてグレンパン26a、チャフシーブ(図示省略)及びストローラック(図示省略)からなる粗選別部を構成し、揺動選別棚26の下側部には前側から後側に向けて下部グレンパン(図示省略)及び網体の下部グレンシーブ(図示省略)からなる精選別部を設け、脱穀部5からの脱穀処理物を受けて、後側に揺動移送しながら比重選別する構成である。
【0040】
濡れた穀粒や高水分の穀物を収穫する際に、揺動選別棚26のグレンパン26aの搬送突起部26b,…に、埃、枝梗、穀稈切れ、葉等の異物が付着し、脱穀物の搬送能力が低下し、選別精度が低下したり、詰まりが発生する。そこで、グレンパン26aの搬送突起部26b,26bの間の底板部26cには、その裏面側に異物付着センサSE4を設け、異物の付着具合を検出するように構成し、この異物付着センサSE4の検出内容を、図14に示すように、操縦部3のモニタ表示器12に表示するようにしている。
【0041】
この異物付着センサSE4は、例えば反射型光センサで、グレンパン26aの付着物が揺動運動とは無関係に常時反射光となるのを検出し、付着量が多くなるほど反射光量も多くなることを利用にて異物の付着量を検出している。
【0042】
図15のフローチャートに示すように、制御が開始されると、異物付着センサSE3が直流電圧値を測定し(ステップS1)、次いで、例えば、バンドパスフィルタ処理をし、揺動回転数の周波数成分を抽出する(なお、ハードで同様の機能を付加するように構成してもよい)(ステップS2)。次いで、検出電圧値に揺動成分があるか否かを判定し(ステップS3)、揺動成分がある場合には正常と判定し、前記ステップS1に戻る。また、揺動成分がない場合には、揺動選別棚26の選別異常と判定し、次いで、例えば揺動回転数センサ(図示省略)の検出値を測定して、揺動選別棚26の揺動装置の作動状態を確認し(ステップS4)、揺動選別棚26が作動状態か否かを判定する(ステップS5)。揺動選別棚26が作動しているときは、揺動選別棚26の詰まり状態と判定し(ステップS6)、モニタ表示器12に異常表示をする。
【0043】
なお、図13(B)は異物付着量とセンサ信号である直流電圧の発生状態を示すタイムチャートである。
また、モニタ表示器12の表示に際しては、図14に示すように、例えば、低い付着%から高い付着%に移行するに従って棒グラフが順次長くなるようにし、また、低い付着%で選別に支障にない状態では緑色の表示とし、付着%が高くなり選別不良の段階になると、赤色表示するように構成している。なお、図13(C)は、センサの直流電圧値と棒グラフの長さとの関係を示すものである。
【0044】
また、異物付着センサSE4の異物付着量が増加すると、モニタ表示器12に「揺動選別棚の清掃」を促す異常報知をしたり、あるいは、揺動選別棚26の清掃装置(図示省略)を作動するように構成してもよい。図16のフローチャートに示すように、本制御が開始されると、異物付着センサSE4は測定を開始し(ステップS)、センサの直流電圧成分の抽出処理をし(ステップS2)、異物の付着量の換算処理をする(ステップS3)。次いで、清掃開始基準値と検出付着量とを比較し、揺動選別棚26の清掃が必要か否かを判定し(ステップS4)、検出付着量が清掃開始基準値を超えると、清掃装置(図示省略)を所定時間作動する(ステップS5)。前記構成によると、揺動選別棚26の選別不良を未然に防止することができる。
【0045】
また、異物付着センサSE4を次のように構成してもよい。図17のフローチャートに示すように、制御が開始されると、異物付着センサSE3が直流電圧値を測定し(ステップS1)、次いで、例えば、ローパスフィルタ処理をし(なお、ソフトウェアで平均化処理をしたり、ハードで同様の機能を付加するように構成してもよい)(ステップS2)、次いで、測定電圧値が設定基準値より大きいと(ステップS3)、揺動選別棚26に異物付着と判定する(ステップS4)。
【0046】
揺動選別棚26のグレンパン26a上の穀粒等は揺動周期に同期して動くため、センサの検出電圧値は常に変動する。前記のように、ローパスフィルタ処理をして検出電圧値の略直流成分を抽出するため、穀粒等の搬送状態を正確に推定することができ、異物の付着状態を安定して判断することができる。
【0047】
図18に基づきコンバインの運転アシスト装置について説明する。
複数のコンバイン31,…及び業者基地局32に通信機能を設け、各コンバイン31,…にGPS等による位置計測機能、電子コンパス等の方位計測機能、電波時計等のカレンダー/時計機能を装備し、耕作圃場の位置/時計情報に対応する栽培作業情報(作物の栽培適否、栽培作物品種、収穫日時及び時刻、作物収穫方法、藁の処理方法、圃場内作業の注意事項等)を予め基地局32に登録しておく。そして、各コンバイン31,…からはその耕作圃場付近あるいは事前に耕作圃場に関する栽培作業登録情報をコンバイン31,…に搭載のモニタ表示器33で表示閲覧できるように構成する。
【0048】
また、コンバイン31,…からは作業をしている位置/時刻情報、作業情報を周期的に、また、コンバイン31,…が圃場を変更する毎に業者基地局32に自動的に送信し、コンバイン31,…の作業進捗状況を把握できるように構成している。なお、コンバインに限らずトラクタ、田植機等の作業機に応用できる。
【0049】
前記構成によると、コンバイン31,…は業者基地局32から当該耕作圃場の作業必要情報をモニタ表示器33により表示閲覧できるので、オペレータは耕作圃場の作業に必要な情報を認識し適正な作業を能率的に行なうことができる。また、業者基地局32では各コンバイン31,…の作業状況を把握でき、緊急な作業指示を的確に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバイン操縦部の平面図
【図3】モニタ表示器の拡大正面図
【図4】制御ブロック図
【図5】モニタ表示器の表示内容を示す図
【図6】フローチャート
【図7】モニタ表示器の表示内容を示す図
【図8】制御ブロック図
【図9】制御内容を示す図
【図10】制御内容を示す図
【図11】制御内容を示す図
【図12】制御内容を示す図
【図13】(A)揺動選別棚の切断側面図 (B)異物付着センサの検出電圧値を示すタイムチャート (C)検出電圧値とグラフ表示との関係を示す図
【図14】操縦部のモニタ表示器の斜視図
【図15】フローチャート
【図16】フローチャート
【図17】フローチャート
【図18】ブロック図
【符号の説明】
【0051】
3 操縦部
12 モニタ表示器
C1 モニタ表示制御コントローラ
C2 制御コントローラ
SW1 表示切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の操縦部(3)にモニタ表示器(12)を設け、該モニタ表示器(12)の表示制御を行なうモニタ表示制御コントローラ(C1)と作業機の作動部を制御する複数の制御コントローラ(C2)とを通信回線によって接続し、前記モニタ表示器(12)に表示切換スイッチ(SW1)を設け、該表示切換スイッチ(SW1)を操作する毎に前記複数の制御コントローラ(C2)からモニタ表示制御コントローラ(C1)へ送信される表示情報を設定された順位に従って前記モニタ表示器(12)へ切換表示可能に構成し、前記表示切換スイッチ(SW1)の操作にもかかわらず、モニタ表示制御コントローラ(C1)へ表示情報が送信されない場合には、当該設定順位の表示情報の表示をとばして次の順位の表示情報の表示へスキップするように構成したことを特徴とする作業機のモニタ表示装置。
【請求項2】
前記表示切換スイッチ(SW1)の前回の一巡操作時に制御コントローラ(C2)からモニタ表示制御コントローラ(C1)へ表示情報が送信されずに当該設定順位の表示情報の表示をとばして次の順位の表示情報の表示へスキップした場合であっても、前記表示切換スイッチ(SW1)の今回の操作によりモニタ表示制御コントローラ(C1)への送信が回復した場合には、当該設定順位の表示情報を表示させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の作業機のモニタ表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−182944(P2008−182944A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18618(P2007−18618)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】