説明

作業機の走行台車

【課題】旋回装置の地上高さが低くなり、走行体フレームの構成部品が少なく、重量の軽減が図れ、もって安価かつ容易に製作できると共に、作業機としての機能の向上が可能になる作業機の走行台車を提供する。
【解決手段】作業機は、レール上を走行する走行台車1上に旋回装置を介して旋回体を設置し、前記旋回体に作業用フロントを取付けて構成される。走行台車の前記旋回装置の下方に位置する旋回装置設置フレーム3を8角形の筒形に形成する。旋回装置設置フレーム3の外平面3aに1つおきにそれぞれビーム5を放射状に取付ける。各ビーム5の先端に、レール上を走行する車輪を有する走行装置7、8を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を走行して作業を行なうクレーン等のように、レール上を走行する作業機における走行台車に関する。
【背景技術】
【0002】
レール上を走行するクレーン等の従来の作業機は、例えば特許文献1に示すように、4つの走行装置を取付けた走行体フレーム本体の中央に、旋回装置を設置するためのフレームを設けた構造を有する。また、特許文献2には、旋回装置を設置するフレームを四角形に構成し、そのフレームの各コーナー部にそれぞれビームを取付け、各ビームの先端に走行装置を取付けたものが開示されている。また、従来の走行台車には、旋回装置設置フレームを旋回装置の形状に合わせて円形に構成したものもある。
【0003】
【特許文献1】特開平8−245175号公報
【特許文献2】特開平5−32391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載のように、走行体フレーム本体の中央に旋回装置を設置するフレームを設置したものは、走行体フレーム本体の高さにさらに旋回装置設置用のフレームの高さが加わるため、旋回装置の地上高さが高くなる上、部材数が多くなり、重量が大になるという問題点があった。
【0005】
また、前記特許文献2に記載のように、旋回装置を設置するフレームを四角形に構成したものにおいても、フレーム重量に対する強度の面で改良すべき点があった。また、旋回装置を設置するフレームを、旋回装置の形状に合わせて円形に構成した場合は、この円形のフレームの外面にビームを取付けるため、円形の外面に平面の取付け座を設ける必要があり、このため、部品点数および工数が多く、製作が容易ではないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、旋回装置の高さを低くすることができると当時に、構成部品が少なく、重量の軽減が図れ、もって安価かつ容易に製作できると共に、作業機としての機能の向上が可能になる作業機の走行台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の作業機の走行台車は、レール上を走行する走行台車上に旋回装置を介して旋回体を設置し、前記旋回体に作業用フロントを取付けてなる作業機において、
前記走行台車の旋回装置設置フレームを8角形の筒形に構成し、
前記旋回装置設置フレームの外平面に1つおきにそれぞれビームを放射状に取付け、
各ビームの先端に、レール上を走行する車輪を有する走行装置を設けた
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2の作業機の走行台車は、請求項1において、
前記旋回装置設置フレームに固定具により前記ビームを着脱自在に取付けると共に、前記ビームに走行装置を固定具により着脱自在に取付けた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、旋回装置設置フレームを8角形の筒形に構成し、その外平面に1つおきにビームを取付け、その各ビームの先端に走行装置を取付けた構造にしたので、走行体フレーム本体上に旋回装置設置フレームを設けた場合に比較して、作業機の重心を低くすることができ、作業機が安定する。また、円筒形の旋回装置設置フレームのように周囲にビームの取付け座を設ける場合に比較し、部品数、工数が少なくなると共に、構造が簡単になり、製作が容易になると共に、重量が軽減され、かつ安価に提供できる。また、旋回装置設置フレームを四角筒形に構成する場合に比較しても、重量に対する強度が大となり、重量の軽減に寄与する。また、走行台車の重量が軽減されるので、迅速な移動に寄与し、作業機としての機能の向上が可能になる。
【0010】
請求項2の発明によれば、旋回装置設置フレームとビームと走行装置をそれぞれ着脱自在としたので、それぞれ個別に製作しておいて組立てることにより、工数の低減が図れる共に、量産に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明のレール走行式作業機の一実施の形態を示す側面図であり、この実施の形態では作業機がクレーンである場合について示す。また、図2はそのブーム等の作業用フロントの図示を省略した正面図である。図1、図2において、1はレール2上を走行する走行台車である。この走行台車1は、図3の平面図、図4の側面図、図5の拡大平面図に示すように、8角形の筒形をなす中央の旋回装置設置フレーム3と、その8つの外平面3aの1つおきにそれぞれボルトまたはナットからなる固定具4により着脱自在に固定された断面形状がほぼ4角形のビーム5と、各ビーム5の先端に図6に示すようにボルトまたはピンからなる固定具6により着脱自在に取付けられる走行装置7、8とからなる。前記ビーム5の上下幅は旋回装置設置フレーム3側を大きく、走行装置7、8側を狭く構成する。各走行装置7、8はそれぞれレール2上を転動させるための複数個の車輪9を有し、後方の左右の走行装置8には走行モータ10を有する。
【0012】
図1、図2に示すように、前記走行台車1の旋回装置設置フレーム3上には旋回装置11を介して旋回体12が設置される。旋回体12上にはパワーユニット13、ブーム(作業用フロント)14、このブーム14の起伏装置15、巻上げロープ16や不図示のウインチ等からなる巻上げ装置および運転室17等が搭載される。
【0013】
本発明において、旋回装置設置フレーム3は8角形の筒形であればよく、必ずしも正8角形の断面構造とする必要はないが、この旋回装置設置フレーム3の断面構造が正8角形である場合について、この構造が図7に示すように旋回装置設置フレーム3Aを円形に構成した場合に比較して強度が大になることを以下に数式を用いて説明する。この旋回装置設置フレーム3の強度として曲げ強度が重要であり、この曲げ強度による性能比較のため、以下、断面積比および断面二次モーメント比を以下に示す。ただし図5、図7に示すように内径d2を同一とし、板厚(d1−d2)/2を同一とした。
【0014】
[円形断面(図7)の場合]
(断面積)Ac=(π/4)×(d1−d2
=0.785×(d1−d2
(断面二次モーメント)
Ic=(π/64)×(d1−d2
=0.049×(d1−d2
【0015】
[8角形断面(図5)の場合]
(断面積)A8=(2.8284×1.307/4)×(d1−d2
=1.208×(d1−d2
(断面二次モーメント)
I8=(0.6381×1.307/16)×(d1−d2
=0.116×(d1−d2
【0016】
また、両者の断面積比Arと断面二次モーメント比Irは下記のようになる。
[断面積比]
Ar=A8/Ac=1.208/0.785=1.539
[断面二次モーメント比]
Ir=I8/Ic=0.116/0.049=2.367
【0017】
このように、旋回装置設置フレーム3に本発明の8角形の断面構造を採用する場合、従来の円形の断面構造を採用する場合に比較して、重量比(=断面積比Ar)は1.539となるが、曲げ強度比(=断面二次モーメント比Ir)は2.367となり、重量比Arに対する曲げ強度比Irの比(=Ir/Ar)は1.538となり、同じ重量を用いた場合には8角形の断面構造を採用した場合の曲げ強度が円形の断面構造を採用した場合に比較して優位となることが明らかである。
【0018】
また、図7に示すように、円形の旋回装置設置フレーム3Aでは、ビーム5を取付けるための取付け座19を溶接により取付けてビーム5の取付け面を平面にしなければならず、このため、部品数、工数が多くなり、製作が容易ではないが、本発明のように旋回装置設置フレーム3を8角形に構成すればこのような部品、工程が不要になる。
【0019】
次に旋回装置設置フレーム3の断面形状を4角形の筒形にした場合には8角形の場合と比較して断面積と断面二次モーメントは下記のようになる(ただし同じ内径と板厚とする。)。
[4角形の場合の断面]
(断面積)A4=(d1−d2
(断面二次モーメント)
I4=(1/12)×(d1−d2
=0.083×(d1−d2
【0020】
また、両者の断面積比Arと断面二次モーメント比Irは下記のようになる。
[8角形の場合との断面積比]
Ar=A8/A4=1.208/1=1.208
[8角形の場合との断面二次モーメント比]
Ir=I8/I4=0.116/0.083=1.40
【0021】
したがって重量比Arに対する曲げ強度比Irの比(=Ir/Ar)は1.16となり、同じ重量を用いた場合には、8角形の断面構造を採用した場合の曲げ強度が4角形の断面構造を採用した場合に比較してやはり優位となることが明らかである。
【0022】
このように、本発明においては、走行台車1の旋回装置設置フレーム3を8角形の筒形に構成し、その外平面に1つおきにビーム5を取付け、その各ビーム5の先端に走行装置7、8を取付けた構造にしたので、従来のように走行体フレーム本体上に旋回装置設置フレームを設ける場合に比較して旋回装置の高さが低くなり、作業機の重心を低くすることができ、作業機が安定する。また、円筒形の旋回装置設置フレームのように周囲にビームの取付け座を設ける場合に比較し、部品数、工数が少なくなると共に、構造が簡単になり、製作が容易になると共に、重量が軽減され、かつ安価に提供できる。また、旋回装置設置フレームを4角形の筒形に構成する場合に比較しても、重量に対する強度が大となり、重量の軽減に寄与する。また、走行台車の重量が軽減されるので、迅速な移動に寄与し、作業機としての機能の向上が可能になる。
【0023】
また、本実施の形態においては、旋回装置設置フレーム3とビーム5と走行装置7、8をそれぞれ着脱自在としたので、それぞれ個別に製作しておいて組立てることにより、工数の低減が図れ、量産に適する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による走行台車を備えた作業機の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1の作業機をその作業用フロントを省略して示す正面図である。
【図3】この実施の形態の走行台車の平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】本実施の形態の旋回装置設置フレームの平面図である。
【図6】本実施の形態の走行装置のビームへの取付け構造を示す側面図である。
【図7】円形の旋回装置設置フレームを示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1:走行台車、2:レール、3:旋回装置設置フレーム、4:固定具、5:ビーム、6:固定具、7、8:走行装置、9:車輪、10:走行モータ、11:旋回装置、12:旋回体、13:パワーユニット、14:ブーム、15:起伏装置、16:巻上げロープ、17:運転室、19:取付け座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を走行する走行台車上に旋回装置を介して旋回体を設置し、前記旋回体に作業用フロントを取付けてなる作業機において、
前記走行台車の旋回装置設置フレームを8角形の筒形に構成し、
前記旋回装置設置フレームの外平面に1つおきにそれぞれビームを放射状に取付け、
各ビームの先端に、レール上を走行する車輪を有する走行装置を設けた
ことを特徴とする作業機の走行台車。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機の走行台車において、
前記旋回装置設置フレームに固定具により前記ビームを着脱自在に取付けると共に、前記ビームに走行装置を固定具により着脱自在に取付けた
ことを特徴とする作業機の走行台車。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−44895(P2006−44895A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230102(P2004−230102)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】