説明

作業機械の燃料遮断構造及び作業機械の燃料遮断方法

【課題】 作業機械の燃料遮断構造及び作業機械の燃料遮断方法に関し、簡素な構成で、供給燃料の流通を自動的に遮断することができるようにする。
【解決手段】 作業機械の燃料タンク5に貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路1と、エンジンが配設されるエンジンルーム内に設けられて、エンジンの通常運転時におけるエンジンルーム内の常温よりも高い所定温度以上で溶融して燃料タンク5内の燃料液面よりも高い位置において燃料供給路1を大気開放する溶融部材3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械においてエンジンへの燃料供給を遮断するのに用いて好適な燃料遮断構造及び燃料遮断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧ショベル等の作業機械において、燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給する燃料供給路には、その通路を開閉制御するシャットオフバルブが設けられている。このシャットオフバルブは、例えばエンジン内部の点検時や燃料タンクの取り外しの際などの整備点検時に、燃料通路を閉鎖するように操作されて、燃料流通を遮断することができるようになっている。
【0003】
このような燃料の流通を遮断するための装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1には、燃料タンク下部からエンジンへ接続される燃料配管の途中にシャットオフバルブが介装され、このシャットオフバルブが作業機械に備えられた施錠可能なドア内に配設される構成が開示されている。このような燃料供給を遮断する構成により、ドアを閉鎖して施錠することで関係者以外の第三者にシャットオフバルブが操作されないように適切に管理することができ、かつ、燃料供給を遮断する際には、ドアの施錠を解除してドアを開放することでシャットオフバルブの操作を可能とすることができるようになっている。
【特許文献1】特開2000−144804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の燃料遮断装置では、燃料供給を遮断するために、手動の操作を必要とするようになっている。例えば、上述の特許文献1に記載の技術の場合、作業機械のユーザは、施錠を解除した後にシャットオフバルブを閉方向へ操作することによって、初めて燃料供給を遮断できることになる。このように、従来の燃料遮断装置においては、燃料供給を遮断するための操作がユーザにとって煩雑に感じられることがあり、燃料遮断にかかる操作性をより向上させたい、という要望があった。
【0005】
一方で、上述のような操作性を向上させるべく、従来の燃料遮断装置に対して、例えば電気的にシャットオフバルブを開閉制御するような機能を付加し、ユーザにとって使いやすくすることも考えられるが、この場合、燃料遮断装置の構成が複雑となり、製造コストが増加してしまう。
本発明は、このような課題に鑑み案出されたもので、簡素な構成で、供給燃料の流通を自動的に遮断することができるようにした、作業機械の燃料遮断構造及び作業機械の燃料遮断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目標を達成するため、本発明の作業機械の燃料遮断構造(請求項1)は、作業機械の燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路と、該エンジンが配設されるエンジンルーム内に設けられて、該エンジンの通常運転時における該エンジンルーム内の常温よりも高い所定温度以上で溶融して、該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置において該燃料供給路を大気開放する溶融部材とを備えたことを特徴としている。
【0007】
また、該溶融部材は、該エンジンルーム内の常温よりも高く、かつ、該燃料供給路の耐用温度よりも低い所定温度以上で溶融する(すなわち、該所定温度は、該燃料供給路の耐用温度よりも低い温度である)ことが好ましい(請求項2)。
また、該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置で該燃料供給路から分岐し、該燃料供給路を大気へ開放しうる開口を有する分岐路を備え、該溶融部材は、該開口を閉塞するように設けられることが好ましい(請求項3)。
【0008】
また、該分岐路は、少なくとも該開口から該燃料供給路との分岐点への下り傾斜勾配を有することが好ましい(請求項4)。
また、該燃料供給路を構成する一部分であって、該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置に配置された高所部を備え、該溶融部材は、該高所部に介装されて燃料を流通させることが好ましい(請求項5)。
【0009】
また、本発明の作業機械の燃料遮断方法(請求項6)は、作業機械の燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路を用意し、該エンジンの通常運転時におけるエンジンルーム内の常温よりも高い所定温度以上で溶融する溶融部材を該エンジンルーム内に配置し、該エンジンルーム内が該所定温度以上となったときに、該エンジンルーム内の温度によって該溶融部材を溶融させて該燃料供給路を大気開放し、該燃料供給路における該燃料の流通を停止させることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の作業機械の燃料遮断方法(請求項7)は、作業機械の燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路と、該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置で該燃料供給路から分岐し該燃料供給路を大気へ開放しうる開口を有する分岐路とを用意し、該エンジンの通常運転時においては、該開口を溶融部材によって閉塞して該燃料供給路に該燃料を流通させ、該エンジンルーム内が該所定温度以上となったときに、該エンジンルーム内の温度によって該溶融部材を溶融させて該開口を開放し、該燃料供給路における該燃料の流通を停止させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の作業機械の燃料遮断方法(請求項8)は、作業機械の燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路を用意し、該燃料供給路を構成する一部分を、高所部として該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置に配置し、該エンジンの通常運転時においては、該高所部に溶融部材を介装して該燃料供給路に該燃料を流通させ、該エンジンルーム内が該所定温度以上となったときに、該エンジンルーム内の温度によって該溶融部材を溶融させて該高所部を寸断し、該燃料供給路における該燃料の流通を停止させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の作業機械の燃料遮断構造及び燃料遮断方法(請求項1,6)によれば、エンジンルーム内が、エンジンの通常運転時におけるエンジンルーム内の常温よりも高い所定温度以上となると、溶融部材が溶融し、燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置において燃料供給路が大気開放される。したがって、簡素な構成で、エンジンルーム内の温度に応じて自動的に、燃料流通を停止させることができる。
【0013】
また、本発明の作業機械の燃料遮断構造(請求項2)によれば、溶融部材が燃料供給路の耐用温度よりも低い温度で溶融するため、溶融部材によって燃料供給路を自動的に大気開放することができ、燃料供給路を保護することができる。
また、本発明の作業機械の燃料遮断構造及び燃料遮断方法(請求項3,7)によれば、溶融部材が設けられている開口を備えた分岐路は、燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置で燃料供給路から分岐しているため、簡素な構成で、大気圧を燃料供給路へ導入して、燃料供給を停止させることができる。さらに分岐路は、燃料供給路とは独立して設けられているため、例えば分岐路を構成する配管材として燃料配管専用品を用いる必要がなく、低コスト化を図ることができる。
【0014】
また、溶融部材を溶融させることによって分岐路を大気開放するようになっているため、エンジンルーム内の温度上昇に応じて自動的に燃料供給を遮断することができる。また、溶融部材及び開口の位置を任意の位置に設定することができる。
また、本発明の作業機械の燃料遮断構造(請求項4)によれば、分岐路が、少なくとも開口から燃料供給路との分岐点への下り傾斜勾配を有するため、開口からの燃料流出を防止できる。
【0015】
また、本発明の作業機械の燃料遮断構造及び燃料遮断方法(請求項5,8)によれば、溶融部材が設けられている高所部は、燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置に配置されているため、簡素な構成で、燃料供給を自動的に停止させることができる。さらに、高所部は燃料供給路を構成する一部分であるため、燃料供給路用以外の配管材が必要なく、コストを低減させることができる。
【0016】
また、溶融部材を溶融させることによって高所部を大気開放するようになっているため、エンジンルーム内の温度上昇に応じて自動的に燃料供給を遮断することができる。また、溶融部材及び高所部の位置を任意の位置に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5は本発明の実施形態にかかる作業機械の燃料遮断構造を示すものであり、図1は第1実施形態としての作業機械の燃料遮断構造の全体構成を示す模式的斜視図、図2はその要部構成を示す図であり、(a)はその模式的断面図〔図1におけるA−A断面図〕、(b)はその分岐路端部の拡大断面図、図3は本発明の燃料遮断構造が適用された作業機械の全体構成を示す模式的斜視図、図4は第2実施形態としての作業機械の燃料遮断構造の全体構成を示す模式的斜視図、図5はその要部構成を示す図であり、(a)はその模式的断面図、(b)はその高所部の拡大断面図である。
【0018】
[第1実施形態]
図3に、本発明の第1実施形態としての燃料遮断構造が適用された作業機械を示す。この作業機械20は、無限軌道の走行装置(クローラ)を設けられた下部走行体21と、下部走行体21の上部に旋回可能に載架された上部旋回体22とを備えて構成されている。
上部旋回体22には、その骨組みをなすスイングフレーム11上に、作業機械20の駆動源となるエンジン25とその燃料タンク5,掘削や揚重等の各種作業を行うための作業装置26,オペレータが搭乗するキャブ24及び機体の重量バランスをとるおもりとしてのカウンタウェイト23等が備えられている。
【0019】
エンジン25は、上部旋回体22の後方(図1中における左方)に搭載されたカウンタウェイト23の直前方において、上部旋回体22の外装材に囲まれたエンジンルーム内に備えられている。また、エンジン25の燃料を貯留する燃料タンク5は上部旋回体22の右側方に備えられており、燃料タンク5内の燃料がエンジン25へ燃料供給路としての配管材を介して供給されるようになっている。
【0020】
図1に、上部旋回体22を透視した模式的斜視図を示す。なお図1は、本発明にかかる燃料遮断構造が適用された、燃料タンク5からエンジン25への燃料の供給経路を明示すべく上部旋回体22を透視した図であり、上部旋回体22の外装板,カウンタウェイト23,エンジン25及びその他の機器については図示を省略してある。
まず、スイングフレーム11の右側方の上部に備えられた燃料タンク5の上面には、燃料を補給するための給油口10が形成されており、給油口10から燃料タンク5の内部に燃料を供給して貯留させておくことができるようになっている。
【0021】
スイングフレーム11の左側方の上部には、燃料タンク5内の燃料を吸い上げてエンジン25へ供給するライン上にウォーターセパレータ6が備えられている。このウォーターセパレータ6では、燃料中に含まれる水分を分離して燃料成分のみをエンジン25へ供給するようになっている。なお、燃料をエンジン25へ供給するための燃料ポンプは、ここでは図示が省略されている。
【0022】
燃料タンク5及びウォーターセパレータ6は、燃料ライン(燃料供給路としての配管材)1によって連通接続されており、また、ウォーターセパレータ6及び図示しないエンジン25も、燃料ポンプライン7によって連通接続されている。なお、図示しないエンジン25と燃料タンク5との間には、エンジン25で使われなかった燃料を燃料タンク5へ戻すための戻り燃料ライン9が設けられている。
【0023】
このような燃料供給路の構成により、燃料タンク5内の燃料は、燃料ライン1を通り、ウォーターセパレータ6を介して燃料ポンプライン7を流通し、エンジン25へ供給されるようになっている。また、エンジン25へ供給された燃料のうちエンジン25で使われなかった一部の燃料は、戻り燃料ライン9を通って燃料タンク5へ戻されるようになっている。なお、燃料ライン1は、図2に示すように、燃料タンク5の上面から燃料タンク5の内部の底部付近まで延設されている。
【0024】
また、燃料ライン1には、燃料タンク5の上部において燃料ライン1から分岐する分岐ライン(分岐路としての配管材)2が接続されている。この分岐ライン2は、図2(a)に示すように、燃料タンク5内の最高燃料液面〔図2(a)中における液面a〕よりも高い位置〔図2(a)中においては高さbの位置〕で燃料ライン1から分岐するようになっている。なお、図2(a)には、燃料が燃料タンク5内に最大量まで貯留された状態が示されている。
【0025】
また、図1,図2(b)に示すように、燃料ライン1から分岐した分岐ライン2の端部がエンジンルーム内へ延長されるとともに、その端面には、分岐ライン2を大気へ開放しうる開口8が形成され、開口8を閉塞する溶融プラグ(溶融部材)3が挿入されている。なお、ここでは、分岐ライン2が燃料ライン1との分岐点2aから略水平方向に延長されている。
【0026】
溶融プラグ3は、エンジン25の通常運転時におけるエンジンルーム内の常温よりも高い所定温度以上で溶融するようになっている。なお、溶融プラグ3が溶融する所定温度は、その配設位置に応じて任意に設定されるものであり、ここでは、所定温度が、燃料ライン1を構成する配管材の耐用温度よりも低く設定されており、溶融プラグ3は、例えば200℃程度で溶融するものが用いられている。
【0027】
これにより、開口8が密閉されている状態では、分岐ライン2内へ空気が流入しないようになっている。一方、エンジンルーム内が所定温度以上となって溶融プラグ3が溶融すると、開口8によって分岐ライン2が大気開放されるようになっている。なお、図2(a),(b)には、溶融プラグ3が開口8を閉塞した状態が示されている。
開口8は、燃料ライン1から分岐した管状の分岐ライン2の端面の開口として形成されており、本実施形態では、上部旋回体22の外装板の内部において分岐ライン2を開放するようになっている。
【0028】
本発明の第1実施形態にかかる作業機械の燃料遮断構造は上述のように構成されているので、以下のように作用する。
まず、エンジン25の通常運転時、すなわち、エンジンルーム内の温度が所定温度未満の状態においては、溶融プラグ3によって分岐ライン2の端部の開口8が閉塞されている。つまり、溶融プラグ3は分岐ライン2内の空気の流通を遮断するように働く。したがって、燃料ポンプによって燃料タンク5内の燃料が吸引されたときに、燃料を燃料ポンプへ吸引させることができ、燃料ライン1及び燃料ポンプライン7を介してエンジン25へ燃料を供給することができる。
【0029】
一方、エンジンルーム内の温度が所定温度以上になると、溶融プラグ3が溶融して分岐ライン2が大気開放され、開口8から空気が流入する。そのため、分岐ライン2から流入した空気の大気圧によって、燃料ライン1内における分岐点2aよりも燃料タンク5側の燃料が、燃料タンク5へ押し戻される。
つまり、本発明の燃料遮断構造によれば、従来の燃料遮断装置ように直接燃料の流通を遮断するのではなく、燃料ライン1へ空気(大気圧)を導入することによって間接的に燃料の流通を遮断することになる。また、燃料タンク5内の燃料液面よりも高い位置から大気を導入することによって、その大気圧により燃料が燃料タンク5へ押し戻されることになる。
【0030】
したがって、簡素な構成で、燃料の流通を空気で分断することができ、燃料供給を停止させることができる。
また、分岐ライン2は単に大気圧を燃料ライン1へ導入するよう機能すればよく、例えば、分岐ライン2を構成する配管材として燃料配管専用品を用いる必要がない。したがって、安価な材料で分岐ライン2を形成することができ、コストを低減させることができる。
【0031】
また、溶融プラグ3が溶融する所定温度が、燃料ライン1を構成する配管材の耐用温度よりも低い温度に設定されているため、例えばエンジンルーム内の温度が上昇した場合に、燃料ライン1を構成する配管材よりも先に溶融プラグ3が溶融することになる。つまり、溶融プラグ3を用いることにより、エンジンルーム内の温度に応じて自動的に燃料ライン1を大気開放して、燃料の流通を停止させることができる。
【0032】
さらに、分岐ライン2の配設形状は任意であり、その延長長さも任意であるから、溶融プラグ3の位置を任意の位置に設定することができる。
また、本発明の燃料遮断構造によれば、溶融プラグ3を用いることで、エンジン25を停止させるための外部操作を必要とせず、自動的にエンジン25を停止させることができる。
【0033】
また、分岐ライン2の端部の開口8が燃料タンク5内の燃料液面よりも高い位置に設けられているため、開口8から燃料が流出することがない。
また、実際に燃料が流通する燃料ライン1は、機体における比較的構造強度の高い箇所、すなわち、機体の内部側に配設して、燃料が流通しない分岐ライン2の配管経路のみを機体の外部側へ配設することができ、従来の燃料配管の設計経路を変更する必要がなく、製品の組み立てにおいても何ら作業が複雑化することもない。したがって、製品コストの上昇を抑制することができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態としての作業機械の燃料遮断構造を説明する。なお、本第2実施形態としての燃料遮断構造は、上記の第1実施形態と同様に、図3に示す作業機械20に適用されており、上記の第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図4に示すように、本実施形態における燃料ライン1は、燃料タンク5の下面に接続されるようになっている。また、燃料ポンプライン7におけるエンジンルーム内の一部分は、燃料タンク5内の燃料液面よりも高い位置となるように配置されて、高所ライン(高所部)7aを形成している。この高所ライン7aは、図5(a)に示すように、燃料タンク5内の最高燃料液面〔図5(a)中における液面a′〕よりも高い位置〔図5(a)中における高さb′の位置〕に配設されるようになっている。なお、図5(a)には、燃料が燃料タンク5内に最大量まで貯留された状態が示されている。
【0036】
また、高所ライン7aには、中空に形成されてその内部に燃料を流通させる溶融プラグ13が介装されている。この溶融プラグ13は、第1実施形態における溶融プラグ3と同様に、エンジン25の通常運転時におけるエンジンルーム内の常温よりも高い所定温度以上で溶融するようになっている。なおここでは、所定温度が、燃料ポンプライン7を構成する配管材の耐用温度よりも低く設定されている。また、ここでは溶融プラグ3が、エンジン25からの排気ガスを排出する図示しないマフラー近傍に設けられており、マフラー温度よりも低い350℃程度で溶融するものが用いられている。
【0037】
これにより、溶融プラグ13が高所ライン7a上に介装された状態では、高所ライン7a内へ空気が流入せず燃料が流通するようになっている。一方、エンジンルーム内が所定温度以上となって溶融プラグ13が溶融すると、高所ライン7aが分断されて大気開放されるようになっている。なお、図5(a),(b)には、溶融プラグ3が高所ライン7aに介装されている状態が示されている。
【0038】
本発明の第2実施形態にかかる作業機械の燃料遮断構造は上述のように構成されているので、以下のように作用する。
まず、エンジン25の通常運転時、すなわち、エンジンルーム内の温度が所定温度未満の状態においては、溶融プラグ13が高所ライン7aに介装された状態が保持される。つまり、中空に形成された溶融プラグ13が、高所ライン7a内に燃料を流通させるように働く。
【0039】
したがって、燃料ポンプによって燃料タンク5内の燃料が吸引されたときに、燃料ライン1及び燃料ポンプライン7へ空気が流入することなく、燃料を燃料ポンプへ吸引させることができ、燃料ポンプライン7を介してエンジン25へ燃料を供給することができる。
一方、エンジンルーム内の温度が所定温度以上になると、溶融プラグ13が溶融して高所ライン7aが大気開放され、高所ライン7aへ空気が流入する。そのため、高所ライン7aから流入した空気の大気圧によって、高所ライン7aよりも燃料タンク5側の燃料が、燃料タンク5方向へ押し戻される。ここで、高所ライン7aは、燃料タンク5内の燃料液面よりも高い位置に配置されているため、燃料は燃料ポンプライン7内において燃料タンク5内の燃料液面と同一の高さまで押し戻されることになる。
したがって、簡素な構成で、燃料の供給を空気で分断して燃料供給を停止させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、燃料供給路内へ大気圧を導入するための分岐ラインを備える必要がないため、分岐ラインにかかるコストを低減させることができる。
また、溶融プラグ3が溶融する所定温度が、燃料ポンプライン7を構成する配管材の耐用温度よりも低い温度に設定されているため、例えばエンジンルーム内の温度が上昇した場合に、燃料ポンプライン7を構成する配管材よりも先に溶融プラグ3が溶融することになる。つまり、溶融プラグ3を用いることにより、エンジンルーム内の温度に応じて自動的に燃料ポンプライン7を大気開放して、燃料の流通を停止させることができる。
【0041】
さらに、高所ライン7aの配設形状は任意であり、その延長長さも任意であるから、溶融プラグ3の位置を任意の位置に設定することができる。
また、本発明の燃料遮断構造によれば、溶融プラグ3を用いることで、エンジン25を停止させるための外部操作を必要とせず、即座にエンジンを停止させることができる。
【0042】
[その他]
以上、本発明の実施形態について2例を説明したが、本発明はこれらのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0043】
上述の各実施形態では、溶融部材としての溶融プラグ3,13を一つ備えた構成となっているが、溶融部材を複数備えた構成としてもよい。
例えば、第1実施形態においては、複数の分岐ライン2を形成するとともに各々の分岐ライン2に対して開口8及び溶融プラグ3を設けるように構成してもよいし、あるいは、一つの分岐ライン2に対して複数の開口8及びそれらに対応する複数の溶融プラグ3を備えた構成としてもよい。また、第2実施形態においても同様であり、溶融プラグ13が介装された高所ライン7aを複数形成してもよいし、1つの高所ライン7aに対して複数の溶融プラグ13を介装させてもよい。
【0044】
これらのような構成により、複数の溶融部材のうちのいずれか一つでも溶融すれば、エンジン25への燃料供給を遮断することができるようになる。
また、上述の第1実施形態では、分岐ライン2が燃料ライン1との分岐点2aから略水平方向に延長されるようになっているが、例えば分岐点2aから略鉛直上方へ延長するように構成してもよいし、あるいは、斜め上方へ延長するように構成してもよい。つまり、分岐ライン2は、少なくとも開口8から燃料供給路との分岐点2aへの下り傾斜勾配を有するように形成されることが好ましく、これにより効果的な燃料遮断構造をなすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態としての作業機械の燃料遮断構造の全体構成を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての作業機械の燃料遮断構造の要部構成を示す図であり、(a)はその模式的断面図〔図1におけるA−A断面図〕、(b)はその分岐路端部の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態としての燃料遮断構造が適用された作業機械の全体構成を示す模式的斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態としての作業機械の燃料遮断構造の全体構成を示す模式的斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態としての作業機械の燃料遮断構造の要部構成を示す図であり、(a)はその模式的断面図、(b)はその高所部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 燃料ライン(燃料供給路)
2 分岐ライン(分岐路)
2a 分岐点
3,13 溶融プラグ(溶融部材)
5 燃料タンク
7 燃料ポンプライン
7a 高所ライン(高所部)
8 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路と、
該エンジンが配設されるエンジンルーム内に設けられて、該エンジンの通常運転時における該エンジンルーム内の常温よりも高い所定温度以上で溶融して、該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置において該燃料供給路を大気開放する溶融部材と
を備えたことを特徴とする、作業機械の燃料遮断構造。
【請求項2】
該溶融部材は、該エンジンルーム内の常温よりも高く、かつ、該燃料供給路の耐用温度よりも低い所定温度以上で溶融する
ことを特徴とする、請求項1記載の作業機械の燃料遮断構造。
【請求項3】
該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置で該燃料供給路から分岐し、該燃料供給路を大気へ開放しうる開口を有する分岐路を備え、
該溶融部材は、該開口を閉塞するように設けられる
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の作業機械の燃料遮断構造。
【請求項4】
該分岐路は、少なくとも該開口から該燃料供給路との分岐点への下り傾斜勾配を有する
ことを特徴とする、請求項3記載の作業機械の燃料遮断構造。
【請求項5】
該燃料供給路を構成する一部分であって、該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置に配置された高所部を備え、
該溶融部材は、該高所部に介装されて燃料を流通させる
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の作業機械の燃料遮断構造。
【請求項6】
作業機械の燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路を用意し、
該エンジンの通常運転時におけるエンジンルーム内の常温よりも高い所定温度以上で溶融する溶融部材を該エンジンルーム内に配置し、
該エンジンルーム内が該所定温度以上となったときに、該エンジンルーム内の温度によって該溶融部材を溶融させて該燃料供給路を大気開放し、該燃料供給路における該燃料の流通を停止させる
ことを特徴とする、作業機械の燃料遮断方法。
【請求項7】
作業機械の燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路と、該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置で該燃料供給路から分岐し該燃料供給路を大気へ開放しうる開口を有する分岐路とを用意し、
該エンジンの通常運転時においては、該開口を溶融部材によって閉塞して該燃料供給路に該燃料を流通させ、
該エンジンルーム内が該所定温度以上となったときに、該エンジンルーム内の温度によって該溶融部材を溶融させて該開口を開放し、該燃料供給路における該燃料の流通を停止させる
ことを特徴とする、作業機械の燃料遮断方法。
【請求項8】
作業機械の燃料タンクに貯留された燃料をエンジンへ供給するための燃料供給路を用意し、
該燃料供給路を構成する一部分を、高所部として該燃料タンク内の燃料液面よりも高い位置に配置し、
該エンジンの通常運転時においては、該高所部に溶融部材を介装して該燃料供給路に該燃料を流通させ、
該エンジンルーム内が該所定温度以上となったときに、該エンジンルーム内の温度によって該溶融部材を溶融させて該高所部を寸断し、該燃料供給路における該燃料の流通を停止させる
ことを特徴とする、作業機械の燃料遮断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−219860(P2006−219860A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32874(P2005−32874)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】