説明

作業機械

【課題】作業機械用旋回機構を作業機械のアタッチメントとの接触を防ぎながら、限られたスペースに配置できるようにする。
【解決手段】ハイブリッドショベル1(作業機械)に内輪及び外輪12が互いに回転自在に連結され、内輪内側に内歯車を有する旋回ベアリング10を設け、外輪12に上部旋回体5を回転一体に連結する。内歯車に旋回ピニオン13を噛み合わせ、この旋回ピニオン13を回転駆動させる電動機14を上部旋回体5に固定し、上部旋回体5における電動機14よりも前方の水平回動軸7にアタッチメント8を前後方向に起伏可能に支持する。電動機14の回転軸16を、旋回ピニオン軸13aに対して平行に後方へオフセットさせ、アタッチメント8の最大起立角度において、平面視で旋回ピニオン13とアタッチメント8とが重なり合うように配置して旋回ピニオン軸13aと歯車結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械用旋回機構を備えた作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内輪及び外輪が互いに回転自在に連結された旋回ベアリングと、この内輪の内側に設けられた内歯車と、この内歯車に噛み合って回転する旋回ピニオンと、この旋回ピニオンを回転駆動させる旋回駆動源とを備えた作業機械用旋回機構は知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の作業機械用旋回機構では、1段目がヘリカルギヤと、2段目がプラネタリギヤ装置とからなる旋回減速機において、1段目ヘリカルギヤと2段目サンギヤとを分割し、かつ、両ギヤを相互にスプライン嵌合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−93256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の作業機械用旋回機構を有する油圧ショベルでは、旋回駆動源の回転軸は、旋回ピニオン軸よりも前方側に配置されている。このため、油圧ショベルのアタッチメントと旋回駆動源との接触を避けるために、アタッチメントの最大起立角度を大きくすることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業機械用旋回機構を、作業機械のアタッチメントとの接触を防ぎながら限られたスペースに配置できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、旋回駆動源の回転軸を旋回ピニオン軸に対して平行に後方へオフセットして配置した。
【0008】
具体的には、第1の発明では、内輪及び外輪が互いに回転自在に連結され、該内輪内側に内歯車を有する旋回ベアリングと、
上記外輪に回転一体に連結された上部旋回体と、
上記内歯車に噛み合って回転する旋回ピニオンと、
上記上部旋回体に固定され、上記旋回ピニオンを回転駆動させる旋回駆動源と、
上記上部旋回体における上記旋回駆動源よりも前方の水平回動軸で前後方向に起伏可能に支持されるアタッチメントとを備えた作業機械を対象とする。
【0009】
そして、上記旋回駆動源の回転軸は、上記旋回ピニオン軸と歯車結合されると共に、該旋回ピニオン軸に対して平行に後方へオフセットして配置され、
上記アタッチメントの最大起立角度において、平面視で上記旋回ピニオンと該アタッチメントとが重なり合うように構成されている。
【0010】
すなわち、いわゆる後方小旋回ショベルに代表される作業機械では、後方だけでなく、前方旋回半径も小さくするためにアタッチメントをできるだけ大きく起立させる必要があり、そのような場合には、最大起立角度において旋回ピニオン上にアタッチメントが移動してくる。このため、アタッチメントが、旋回ピニオンを駆動させる旋回駆動源と接触しやすくなる。しかし、上記の構成によると、旋回駆動源の回転軸を旋回ピニオン軸に対し、平行に後方へオフセットして配置しているので、最大起立角度におけるアタッチメントと旋回駆動源との接触が回避される。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記回転軸と上記旋回ピニオン軸とを結合する歯車結合部は、上記旋回ピニオン軸上に少なくとも一段以上の遊星歯車減速部を有し、該遊星歯車減速部と上記回転軸との間は複数の平歯車又は、はすば歯車で接続されている。
【0012】
上記の構成によると、旋回駆動源を、旋回ピニオン軸上に少なくとも一段以上の遊星歯車減速部を有する汎用の旋回減速機に対し、複数の平歯車又は、はすば歯車を介して接続できるので、部品の共用化が図られると共に、既存の作業機械用旋回機構に対しての改造も可能となる。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記歯車結合部の減速比は1以上とする。
【0014】
上記の構成によると、旋回駆動源の回転軸を減速させて旋回ピニオン軸を駆動させることができるので、油圧モータに比べて高速低トルクの電動機を使用することができる。電動機は、低速高トルクの油圧モータに比べて容積が大きくなるが、旋回駆動源の回転軸を旋回ピニオン軸に対して平行に後方へオフセットして配置してアタッチメントと電動機との接触を回避しているので、アタッチメントの最大起立角度を大きくすることができる。
【0015】
第4の発明では、第3の発明において、
上記歯車結合部は、上記水平回動軸よりも下方に配置されている。
【0016】
すなわち、後方小旋回の作業機械では旋回ベアリングとの位置関係により、通常の作業機械に比べてより旋回ピニオン軸が前方に近寄ってくるが、上記の構成によると、旋回駆動源の回転軸を旋回ピニオン軸に対して平行に後方へオフセットして配置しているので、歯車結合部の高さを低くでき、歯車結合部をアタッチメント基端の回動軸の真下に持ってくることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、第1の発明によれば、旋回ピニオン軸と歯車結合する旋回駆動源の回転軸を旋回ピニオン軸に対して平行に後方へオフセットして配置したことにより、作業機械用旋回機構を作業機械のアタッチメントとの接触を防ぎながら、限られたスペースに配置することができる。
【0018】
上記第2の発明によれば、歯車結合部を一般的な一段以上の遊星歯車減速部と、複数の平歯車又は、はすば歯車とで構成したことにより、部品を共用化してコストを削減することができる。
【0019】
上記第3の発明によれば、旋回駆動源の回転軸を減速させて旋回ピニオン軸を駆動させるようにしたことにより、高速低トルクの電動機を利用でき、また、油圧モータよりも容積の大きい電動機を使用しても最大起立角度におけるアタッチメントとの接触を回避することができるので、旋回駆動源に油圧モータを使用しないハイブリット作業機械等にも適用することができる。
【0020】
上記第4の発明によれば、歯車結合部を水平回動軸よりも下方に配置したことにより、アタッチメントとの接触を防ぎながら、後方小旋回作業機械等の限られたスペースを有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態にかかる作業機械用旋回機構及びその周辺を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる作業機械用旋回機構及びその周辺を後側から見た斜視図である。
【図3】作業機械用旋回機構及び旋回フレームを示す底面図である。
【図4】作業機械用旋回機構の概要を説明する模式図である。
【図5】電動機、歯車結合部及び旋回ピニオンを拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1及び図2は、本発明の実施形態の作業機械用旋回機構を備えた作業機械としてのハイブリッドショベル1の主要な部分を示す。このハイブリッドショベル1は、いわゆる後方小旋回型のショベルであり、クローラ2を有する下部走行体3と、この下部走行体3に対して作業機械用旋回機構としての旋回機構4を介して回転自在に支持される上部旋回体5とを備えている。上部旋回体5のベースとなる旋回フレーム6の中央よりには、上方へ側面視三角形状に膨出するアタッチ支持部6aが形成され、このアタッチ支持部6aに支持された水平回動軸7によってアタッチメント8が前後に回動可能に支持されている。なお、図1及び図2では、アタッチメント8の下部ブームの基端側のみを示し、このアタッチメント8の構成は特に限定されない。
【0024】
旋回機構4は、内輪11及び外輪12が互いに回転自在に連結された旋回ベアリング10を備えている。図3及び図4に示すように、本実施形態の旋回ベアリング10は、例えばボール10aを有する玉軸受で、この内輪11の内側全周には、内歯車11aが形成されている。内輪11は、下部ベアリングボルト11bで下部走行体3のベアリング取付用フランジ3aに締結されている。一方、外輪12は、上部ベアリングボルト12aで旋回フレーム6に締結されている。そして、内歯車11aに旋回ピニオン13が噛み合って回転するように構成されている。旋回ピニオン13は、旋回駆動源としての電動機14で回転駆動されるようになっている。電動機14は、旋回フレーム6の水平回動軸7よりも後方に固定されている。
【0025】
具体的には、電動機14の回転軸16(出力軸)は、旋回ピニオン軸13aと歯車結合されている。回転軸16は、さらに旋回ピニオン軸13aに対して平行に後方へオフセットして配置されている。通常、後方小旋回型のハイブリッドショベル1では、後方だけでなく、前方の旋回半径も小さくするためにアタッチメント8を大きく起立させる必要があり、アタッチメント8の最大起立角度は、通常のショベルに比べて大きくなる(地面に対して90°以上)。このため、平面視で旋回ピニオン13とアタッチメント8とが重なり合う、言い換えれば最大起立角度において旋回ピニオン13の真上にアタッチメント8が来るように構成されている。
【0026】
図4に模式的に示すように、歯車結合部15は、一段以上例えば2段の遊星歯車減速部17を有する下部15aと、複数の例えば2つの平歯車18,19を有する上部15bとで構成されている。下部15a内の遊星歯車減速部17が旋回ピニオン軸13aに歯車結合され、上部15b内の平歯車18,19が回転軸16と歯車結合されている。電動機14の下端に形成されたフランジ部14aは、モータ固定用ボルト50で上部15bに締結されている。下部15aの下端フランジ部15cが、駆動源固定用ボルト51で旋回フレーム6の締結されている。下部15aは、汎用の旋回減速機と共通のものを使用することができ、上部15b部分を別部品とすれば、部品の共用化が図られると共に、既存のハイブリッドショベル1に対しての改造も可能となる。
【0027】
そして、図1に示すように、回転軸16が後方にオフセットされたことで、上部15bの前側15dの高さhは低くなり、歯車結合部15は、水平回動軸7よりも下方に配置されている。
【0028】
歯車結合部15の減速比は1以上、すなわち減速となっている。つまり、電動機14側の第1平歯車18は、遊星歯車減速部17側の第2片歯車19よりも小径となっている。このため、電動機14の回転軸16を減速させて旋回ピニオン軸13aを駆動させることができるので、油圧モータに比べて高速低トルクの電動機14を使用することができる。
【0029】
しかも、電動機14は、低速高トルクの油圧モータに比べて容積が大きくなっているが、本実施形態では、電動機14の回転軸16を旋回ピニオン軸13aに対し、平行に後方へオフセットして配置しているので、最大起立角度におけるアタッチメント8と電動機14との接触が回避される。
【0030】
したがって、本実施形態にかかる旋回機構4によると、旋回ピニオン軸13aと歯車結合する電動機14の回転軸16を旋回ピニオン軸13aに対して平行に後方へオフセットして配置したことにより、旋回機構4をハイブリッドショベル1のアタッチメント8との接触を防ぎながら、限られたスペースに配置することができる。
【0031】
また、容積の大きい電動機14を使用しても最大起立角度におけるアタッチメント8との接触を回避することができるので、油圧モータではなく電動機14を使用するハイブリッドショベル1で特に有利である。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0033】
すなわち、上記実施形態では、作業機械は、ハイブリッドショベル1としたがこれに限定されず、旋回駆動として電動機14ではなく油圧モータを備えるものとしても、本発明は適用可能である。
【0034】
上記実施形態では、歯車結合部15を2段の遊星歯車減速部17を有する下部15aと、2つの平歯車18,19を有する上部15bとで構成したが、歯車結合部15が3段以上の遊星歯車減速部17を有する下部15aを備えたり、3つの平歯車18,19を有する上部15bを備えたりしてもよい。
【0035】
上記実施形態では、遊星歯車減速部17と回転軸16との間を複数の平歯車18,19で接続したが、複数のはすば歯車で接続してもよい。
【0036】
さらに、後方小旋回のハイブリッドショベル1では旋回ベアリング10との位置関係により、通常のハイブリッドショベル1に比べてより旋回ピニオン軸13aが前方に近寄ってくるが、上記実施形態では、回転軸16が後方にオフセットされたことで、上部15bの前側15dは、高さhが低くなっているので、歯車結合部15をアタッチメント8基端の回動軸の真下に持ってくることもできる。
【0037】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0038】
1 ハイブリッドショベル(作業機械)
4 旋回機構
5 上部旋回体
7 水平回動軸
8 アタッチメント
10 旋回ベアリング
11 内輪
11a 内歯車
12 外輪
13 旋回ピニオン
13a 旋回ピニオン軸
14 電動機(旋回駆動源)
15 歯車結合部
16 回転軸
17 遊星歯車減速部
18,19 平歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪及び外輪が互いに回転自在に連結され、該内輪内側に内歯車を有する旋回ベアリングと、
上記外輪に回転一体に連結された上部旋回体と、
上記内歯車に噛み合って回転する旋回ピニオンと、
上記上部旋回体に固定され、上記旋回ピニオンを回転駆動させる旋回駆動源と、
上記上部旋回体における上記旋回駆動源よりも前方の水平回動軸で前後方向に起伏可能に支持されるアタッチメントとを備えた作業機械であって、
上記旋回駆動源の回転軸は、上記旋回ピニオン軸と歯車結合されると共に、該旋回ピニオン軸に対して平行に後方へオフセットして配置され、
上記アタッチメントの最大起立角度において、平面視で上記旋回ピニオンと該アタッチメントとが重なり合うように構成されている
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
上記回転軸と上記旋回ピニオン軸とを結合する歯車結合部は、上記旋回ピニオン軸上に少なくとも一段以上の遊星歯車減速部を有し、該遊星歯車減速部と上記回転軸との間は複数の平歯車又は、はすば歯車で接続されている
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の作業機械において、
上記歯車結合部の減速比は1以上である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
上記歯車結合部は、上記水平回動軸よりも下方に配置されている
ことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−203196(P2010−203196A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52618(P2009−52618)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】