説明

作業機械

【課題】シーブアームを必要十分な長さとしながら、作業者が少ない労力で簡単に能率よく張出し/格納できるようにする。
【解決手段】下部走行体1上に旋回自在に搭載された上部旋回体2に、作業装置としてのグラップル9を備えた作業アタッチメント5を装着するとともにウィンチ3,4を搭載し、このウィンチ3,4から引き出されたロープを、シーブアーム16に設けられたシーブに通して集材作業を行う集材機において、シーブアーム16を、アム長さ方向とほぼ直交するアーム支軸20を中心として、アーム基端部からアーム長さ方向に突出する張出し姿勢と、アーム8の左右一側面に沿う格納姿勢との間で回動させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショベルを母体として構成され、ウィンチから引き出したロープによって集材作業等を行う作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショベルは、下部走行体上に上部旋回体が搭載され、この上部旋回体に、起伏起伏自在なブームと、このブームの先端に左右方向の水平軸まわりに回動可能に連結されたアームと、このアームの先端に取付けられたバケットとを備えた掘削アタッチメントを装着して構成される。
【0003】
このショベルを母体として、たとえば伐採した材木を集める集材機を構成する場合、アームの先端にバケットに代えて材木をつかんで運搬するグラップルが取付けられるとともに、上部旋回体にウィンチが搭載され、このウィンチから引き出したロープの繰り出し/巻取り作用によって集材作業が行われる。
【0004】
この場合、ロープをできるだけ高位置でガイドするために、アームにシーブアームを取付け、このシーブアームに設けたシーブにロープを通す構成がとられる。
【0005】
この構成をとる集材機として、特許文献1に示されているように、アームの基端部にシーブアームを、アーム垂下状態で上向きに突出する状態で固定したものが公知である。
【0006】
しかし、このシーブアームを固定した構成では、シーブアームが常にアーム基端から突出するため、集材作業以外の作業時に邪魔になる。
【0007】
そこで、特許文献2に示されるように、シーブアームを、ブームとアームを連結するピン(ブームトップピン=左右方向の水平軸)を支点として、ブームに対して起立する作業時の張出し姿勢と、ブーム背面に沿って折り畳まれる格納姿勢とに回動可能に取付けたもの(張り出し/格納方式)が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−21107号公報
【特許文献2】特開2004−315226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記張出し/格納方式をとる公知技術によると、シーブアームをブームトップピンという左右方向の水平軸を中心として、ほぼ水平な格納姿勢とほぼ垂直な張出し姿勢との間で回動させる構成であるため、この回動操作を作業者が手動で行うとすると、シーブアームの自重をすべて作業者が支えながら回動操作しなければならず、非常に大きな労力を要する。
【0010】
そこでこの公知技術では、作業者の代わりに、アームの回動運動を利用し、アームの上げ下げに連動してシーブアームを張出し姿勢と格納姿勢との間で回動させる構成をとっている。
【0011】
このため、この連動のために構造が大がかりとなるととともに、準備を含めて作業能率が悪くなるという弊害が生じていた。
【0012】
なお、シーブアームを手動操作に適した短尺のものに変えると、高位置でのロープガイド作用という所期の目的が十分達成されない。
【0013】
本発明は上記の点に鑑み、シーブアームを必要十分な長さとしながら、作業者が少ない労力で簡単に能率よく張出し/格納することができる作業機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、下部走行体と、この下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体に起伏自在に取付けられたブームと、このブームの先端に左右方向の水平軸まわりに回動可能に連結されたアームと、このアームの先端に取付けられた作業装置と、上記上部旋回体に搭載されたウィンチと、上記アームに設けられたシーブアームと、このシーブアームに取付けられて上記ロープをガイドするシーブとを備え、上記シーブアームは、その基端部がアーム長さ方向とほぼ直交するアーム支軸によって上記アームの基端部に枢着されることにより、上記アーム支軸を中心として、アーム基端部からアーム長さ方向に突出する作業時の張出し姿勢と、アームの左右一側面に沿う格納姿勢との間で回動可能に構成されたものである。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記アームの左右一側面において、基端部に基端側ブラケット、この基端側ブラケットよりもアーム先端側の位置に先端側ブラケットがそれぞれ設けられ、上記基端側ブラケットに上記アーム支軸と張出し固定ピン穴、上記先端側ブラケットに格納固定ピン穴がそれぞれ設けられるとともに、上記シーブアームに張出し及び格納両固定ピン穴が設けられ、上記シーブアームの張出し姿勢で上記張出し固定ピン穴に、上記格納姿勢で上記格納固定ピン穴にそれぞれ固定ピンが挿入されることによって、シーブアームが張出し姿勢及び格納姿勢に固定されるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、シーブを備えたシーブアームを、アーム長さ方向とほぼ直交するアーム支軸を中心として、アーム基端部からアーム長さ方向に突出する張出し姿勢と、アームの左右一側面に沿う格納姿勢との間で回動させる構成としたから、ブームを倒しかつアームをブーム側に抱き込んで地上に下ろした状態で、アーム支軸が地面に対して垂直に近い縦姿勢となり、シーブアームの自重がアーム支軸による支持部分で受けられる。
【0017】
従って、作業者はシーブアームの自重を負担する必要がなく、同アームを回動させるだけの力を加えればよい。
【0018】
すなわち、シーブアームを、ロープを高い位置でガイドするという所期の目的を達成するのに必要十分な長さとしながら、シーブアームを少ない労力で簡単に能率良く張出し/格納することができる。
【0019】
また、請求項2の発明によると、アームの一側面に基端側及び先端側両ブラケットを設け、この両ブラケットに設けた固定ピン穴に固定ピンを挿入することによってシーブアームを張出し、格納両姿勢に固定する構成としたから、この張り出し、格納固定とその解除をアームの同じ側面のみでのピン着脱操作によって簡単、迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態にかかる集材機の作業時の側面図である。
【図2】同集材機のアーム部分のみの正面図である。
【図3】図1の一部拡大図である。
【図4】図2の一部拡大図である。
【図5】同集材機のシーブアームの張出し/格納時の側面図である。
【図6】図5の状態からシーブアームを格納した状態の図5VI−VI線矢視拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態では集材機を適用対象としている。
【0022】
図1に実施形態に係る集材機の集材作業時の状態を示す。
【0023】
この集材機は、油圧ショベルを母体として構成される。
【0024】
すなわち、クローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が地面に対し鉛直な軸のまわりに旋回自在に搭載されてベースマシンが構成され、このベースマシンの上部旋回体2に、繰り出し用及び巻取り用の二台のウィンチ3,4が搭載されるとともに、作業アタッチメント5が装着される。
【0025】
作業アタッチメント5は、上部旋回体2に起伏自在に取付けられたブーム6と、このブーム6の先端に左右方向(上部旋回体2から見た左右方向。以下にいう前後、左右の方向性について同じ)の水平軸(ブームトップピン)7まわりに回動可能に取付けられたアーム8と、このアーム8の先端に取付けられた作業装置としてのグラップル9と、ブーム6を起伏させるブームシリンダ10と、アーム8を作動させるアームシリンダ11と、グラップル9を左右方向水平軸まわりに回動させるグラップルシリンダ12とによって構成される。
【0026】
グラップル9は、一対の把持爪13,13と、この把持爪13,13を開閉させる開閉シリンダ及び図1に示す垂直状態での縦軸Oまわりに回転させるモータ(いずれも図示省略)とを備え、把持爪13,13で材木をつかんで運搬する。
【0027】
この集材機において、アーム8の基端部に、上下二つのシーブ14,15を備えたシーブアーム16が設けられ、ウィンチ3,4から引き出されたロープ17,18がシーブ14,15に通される。
【0028】
なお、シーブ14,15はシーブアーム16に対して着脱可能となっている。
【0029】
シーブアーム16は、間隔を置いて平行に配置された二枚の板材が長さ方向の複数個所で連結されて成り(筒状としてもよい)、図3,4に拡大して示すように、その基端部が、アーム基端部に設けられた基端側ブラケット19に、アーム8の長さ方向とほぼ直交するアーム支軸20によって枢着されている。
【0030】
これにより、シーブアーム16が、アーム支軸20を中心として、図1〜図5に示すようにアーム基端部からアーム長さ方向に突出する作業時の張出し姿勢と、図6に示すようにアーム8の左右一側面(図例では右側面。以下、この例で説明する)に沿う格納姿勢との間で回動し得るようになっている。
【0031】
また、基端側ブラケット19におけるアーム支軸20よりもアーム基端側の位置、及びシーブアーム16の基端近傍部にそれぞれ張出し固定ピン穴21,22が設けられ、張出し姿勢で、この両張出し固定ピン穴21,22に跨って張出し固定ピン23が挿入されることによってシーブアーム16が張出し姿勢に固定される。
【0032】
一方、アーム8の右側面における基端側ブラケット19よりもアーム先端側の位置(アーム中間部)に、格納固定ピン穴24を備えた先端側ブラケット25が設けられ、格納姿勢で、同ブラケット25の格納固定ピン穴24と、シーブアーム先端部に設けられた格納固定ピン穴26(図4,6参照)とに跨って格納固定ピン27が挿入されることによってシーブアーム16が格納姿勢に固定される。
【0033】
なお、張出し、格納両固定ピン23,27として、別ピンを用いてもよいし、共用するようにしてもよい。
【0034】
以上の構成において、集材作業時には、図1〜図4に示すようにシーブアーム16を張出して固定し、ウィンチ3,4から引き出されたロープ17,18をシーブ14,15に通して集材作業を行う。
【0035】
そして、作業終了後、シーブアーム16を格納するときは、図5に示すように、ブーム6を倒し、かつ、アーム8をブーム側にくの字形に抱き込んで地上に下ろす。
【0036】
この状態で、アーム支軸20が地面に対して垂直に近い縦姿勢となり(図5中のXはこのアーム支軸20の中心線を示す)、シーブアーム16の自重がアーム支軸20による支持部分(基端側ブラケット19)で受けられる。
【0037】
前記したアーム支軸20の方向性についての「アーム長さ方向とほぼ直交する」とは、上記のように格納態勢でシーブアーム自重がアーム支軸20による支持部分で受けられる状態が得られる方向性をいう。
【0038】
この状態で、張出し固定ピン23を取外した上でシーブアーム16をアーム支軸20を中心に右側方に回動させてアーム8の右側面に沿う格納姿勢とし、格納固定ピン27で固定すればよい。
【0039】
このように、シーブアーム16の自重を基端側ブラケット19で支持されるため、作業者はシーブアーム16の自重を負担する必要がなく、シーブアーム16を回動させるだけの力を加えればよい。
【0040】
なお、シーブ14,15は、通常、格納時にはシーブアーム16から取外される。
【0041】
また、格納姿勢からの張出し時はこれと逆の操作を行えばよい。
【0042】
こうして、シーブアーム16を、ロープ17,18を高い位置でガイドするという所期の目的を達成するのに必要十分な長さとしながら、シーブアーム16を少ない労力で簡単に能率良く張出し/格納することができる。
【0043】
また、アーム8の右側面に設けた基端側及び先端側両ブラケット19,25の張出し、格納両固定ピン穴21,24に固定ピン22,27を挿入することによってシーブアーム16を張出し、格納両姿勢に固定する構成であるため、この張り出し、格納固定とその解除をアーム8の同じ側面(右側面)のみでのピン着脱操作によって簡単、迅速に行うことができる。
【0044】
他の実施形態
(1) シーブアーム16をアーム8の右側面でなく左側面に格納するようにしてもよい。
【0045】
(2) シーブアーム16を張出し、格納両姿勢に固定する手段は、上記実施形態のものに限られず、たとえば張出し姿勢でシーブアーム16とアーム基端部との間にステイを架け渡してシーブアーム16を張出し固定する構造等をとってもよい。
【0046】
(3) 本発明は集材機に適するが、ウィンチとロープを用いる他の作業機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3,4 ウィンチ
5 作業アタッチメント
6 ブーム
8 アーム
9 グラップル(作業装置)
14,15 シーブ
16 シーブアーム
17,18 ロープ
19 シーブアームの基端側ブラケット
20 アーム支軸
21 基端側ブラケットの張出し固定ピン穴
22 シーブアームの張出し固定ピン穴
23 張出し固定ピン
24 先端側ブラケットの格納固定ピン穴
25 先端側ブラケット
26 シーブアームの格納固定ピン穴
27 格納固定ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、この下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、この上部旋回体に起伏自在に取付けられたブームと、このブームの先端に左右方向の水平軸まわりに回動可能に連結されたアームと、このアームの先端に取付けられた作業装置と、上記上部旋回体に搭載されたウィンチと、上記アームに設けられたシーブアームと、このシーブアームに取付けられて上記ロープをガイドするシーブとを備え、上記シーブアームは、その基端部がアーム長さ方向とほぼ直交するアーム支軸によって上記アームの基端部に枢着されることにより、上記アーム支軸を中心として、アーム基端部からアーム長さ方向に突出する作業時の張出し姿勢と、アームの左右一側面に沿う格納姿勢との間で回動可能に構成されたことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
上記アームの左右一側面において、基端部に基端側ブラケット、この基端側ブラケットよりもアーム先端側の位置に先端側ブラケットがそれぞれ設けられ、上記基端側ブラケットに上記アーム支軸と張出し固定ピン穴、上記先端側ブラケットに格納固定ピン穴がそれぞれ設けられるとともに、上記シーブアームに張出し及び格納両固定ピン穴が設けられ、、上記シーブアームの張出し姿勢で上記張出し固定ピン穴に、上記格納姿勢で上記格納固定ピン穴にそれぞれ固定ピンが挿入されることによって、シーブアームが張出し姿勢及び格納姿勢に固定されるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−105403(P2011−105403A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259164(P2009−259164)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】