説明

作業機

【課題】様々なアタッチメントに対応した制御を行うことができ、アタッチメントの操作が行い易い。
【解決手段】操作部材25の操作量θに対応した作動信号を前記電磁弁35に出力する制御部28とを備えた作業機であって、制御部28は、操作部材25の操作量θとこの操作量θに対応して作動信号とは別に仮想的に定められた仮想制御量との関係が示された仮想制御量変換マップと、仮想制御量の上限値を多段のレベルに分けた制御量上限変換マップと、仮想制御量を作動信号に変換する実制御変換マップとを備えており、当該制御部28は、仮想制御量変換マップと制御量上限変換マップ及び実制御変換マップに基づいて操作部材25の操作量θに応じた作動信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブレーカやグラップル等のアタッチメントが装着される作業装置を備えたバックホーが開示されている(例えば、特許文献1)。アタッチメントは、油圧シリンダ等のアクチュエータを運転席に設けられた操作部材で動かすことによって動作させることができる。
操作部材を操作すると、その操作量に対応して電磁弁が開閉することで制御弁のパイロット圧が制御され、当該制御弁からアクチュエータに所定の作動油が供給されることで、アタッチメントは動作するようになっている。制御弁のパイロット圧を制御する際、操作部材の操作量を電磁弁が作動する作動信号の値(例えば、電流値)に置き換えることでなされている。
【特許文献1】特開2002−39373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の作業機では、パイロット圧の制御において操作部材の操作量を直接電磁弁の電流値に変換しているため、ブレーカやグラップル等の様々なアタッチメントに対応した制御を行うことは非常に大変であった。
本発明は上記問題点に鑑み、様々なアタッチメントに対応した制御を簡単に行うことができ、アタッチメントの操作が行い易い作業機を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、アクチュエータによって動作するアタッチメントと、このアタッチメントが動作するようにアクチュエータに作動油を供給する制御弁と、作動信号により作動して前記制御弁のパイロット圧を調整可能な電磁弁と、操作部材の操作量に対応した作動信号を前記電磁弁に出力する制御部とを備えた作業機であって、前記制御部は、操作部材の操作量とこの操作量に対応して前記作動信号とは別に仮想的に定められた仮想制御量との関係が示された仮想制御量変換マップと、前記仮想制御量の上限値を多段のレベルに分けた制御量上限変換マップと、前記仮想制御量を作動信号に変換する実制御変換マップとを備えており、当該制御部は、仮想制御量変換マップと制御量上限変換マップ及び実制御変換マップに基づいて操作部材の操作量に応じた作動信号を出力する点にある。
【0005】
これによれば、操作量を直接的に電磁弁を開閉させるための作動信号(例えば、電流値)でなく、仮想制御量を介して作動信号に変換しているので、様々なアタッチメントの特性を含めた制御を簡単に行うことができる。即ち、仮想制御量は中間変数であって、当該仮想制御量をファクタとして有する制御量上限変換マップにより制御を行っているので、アタッチメントが異なっても当該アタッチメントの動作速度の上限を自在に制御することができる。
前記仮想制御量変換マップでの仮想制御量の上限値のレベルを選択する上限値設定手段を有しており、前記制御部は、操作量により定められた仮想制御量が前記上限値設定手段で設定された仮想制御量の上限値を超えないように前記作動信号を出力することが好ましい。
【0006】
これによれば、アタッチメントの種類に対応してアタッチメントの動作速度の上限を簡単に制御することができる。
前記制御部は、制御量上限変換マップでの仮想制御量の上限値のレベルに、操作部材の操作量と前記仮想制御量との関係を示した複数の仮想制御量変換マップを有し、当該制御部は、前記レベルに応じた前記仮想制御量変換マップ及び実制御変換マップに基づいて作動信号の出力をすることが好ましい。
前記仮想制御量変換マップの仮想制御量は、前記操作部材の操作量に応じた作動油の流量とされており、前記実制御変換マップは前記作動油の流量を作動信号に変換するものであることが好ましい。
【0007】
これによれば、アタッチメントを制御するにあたって流量を仮想制御量とすれば、アタッチメントの動特性を考慮した制御を行い易い。
前記制御部は、エンジン回転に応じて実制御変換マップでの前記仮想制御量と作動信号との関係を変換する作動信号変換手段を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々なアタッチメントに対応した制御を行うことができ、アタッチメントの操作が行い易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図13は、本発明のバックホー等の作業機を示している。
図12に示すように、作業機(バックホー)1は、下部の走行装置2と、上部の旋回体3とから構成されている。
走行装置2は、ゴム製覆帯を有する左右一対の走行体4を備え、両走行体4を走行モータMで駆動するようにしたクローラ式走行装置が採用されている。また、該走行装置2の前部にはドーザ5が設けられている。
【0010】
旋回体3は、走行装置2上に旋回ベアリング11を介して上下方向の旋回軸回りに左右旋回自在に支持された旋回台12と、該旋回台12の前部に備えられた作業装置13(掘削装置)とを有している。旋回台12上には、エンジン7,ラジエータ8,運転席9,燃料タンク,作動油タンク等が設けられている。また、旋回台12上には運転席9を囲むキャビン14が設けられ、前記エンジン7は左右方向右側に配置されて開閉ボンネット等で覆われている。
エンジン7は、エンジン始動キーで図示しないイグニッションスイッチ(キースイッチ)をオフ位置からオン位置に切り換えた後に、キースイッチをスタート位置にすることで始動するようになっている。
【0011】
作業装置13は、旋回台12の前部に左右方向の中央部よりやや右寄りにオフセットして設けられた支持ブラケット16に上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持されたスイングブラケット17と、該スイングブラケット17に基部側を左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて上下揺動自在に支持されたブーム18と、該ブーム18の先端側に左右方向の軸心廻りに回動自在に枢着されて前後揺動自在に支持されたアーム19と、該アーム19の先端側にスクイ・ダンプ動作可能に設けられたバケット20とを備えている。
スイングブラケット17は、旋回台12内に備えられたスイングシリンダの伸縮によって揺動され、ブーム18は、該ブーム18とスイングブラケット17との間に介装されたブームシリンダ22の伸縮によって揺動され、アーム19は、該アーム19とブーム18との間に介装されたアームシリンダ23の伸縮によって揺動され、バケット20は、該バケット20とアーム19との間に介装されたバケットシリンダ21の伸縮によってスクイ・ダンプ動作される。
【0012】
アーム19の先端部には、バケット20の代わりにグラップル,サム,ブレーカ,ブラッシュカッタ,チルトバケット,ロータリーグラーブル等の各種アタッチメント(以降、バケット20の代わりにアーム19の先端部に装着されるアタッチメントをSP用アタッチメントということがある)が装着できるようになっている。
また、アーム19の先端部には、SP用アタッチメントを動作させるためのアクチューエータ33(以降、SP用アクチュエータということがある)に対し、作動油を供給する作動油供給部(図示省略)が設けられている(SP用アクチュエータ33については図1,2参照)。運転席9の近傍又はキャビン14内には、SP用アタッチメントを操作する操作部材25が左右方向又は前後方向に揺動自在に支持されている。
【0013】
図1は、SP用アクチュエータを動作させるシステム構成図を示している。図2はSP用アクチュエータの油圧回路図を示している。
操作部材25の操作量(操作角度)θは、ポジションメータやセンサ等で検出され、キャビン14内等に設けられた制御部28(例えば、CPU)に入力されるようになっている。この制御部28には、電磁弁35(35a,35b)が電気的に接続されている。
図2に示すように、各電磁弁35には第1油路38aを介して第1ポンプ37からパイロット油が供給されるようになっており、SP用アクチュエータ33に作動油を供給する制御弁24には第2油路38bを介して第2ポンプ39から作動油が供給されるようになっている。
【0014】
図1、2に示すように、操作部材25を中立位置より一方(左側)に揺動させると、制御部28は操作部材25の操作量θに応じて左SP用電磁弁35aのソレノイド36aに所定値の電流I(作動信号)を出力する。そうすると、左SP用電磁弁35aは電流値Iに応じて開き、その結果、SP用制御弁24のパイロット圧が制御される。また、一方に揺動させた操作部材25を中立位置側に戻すと、制御部28は操作部材25の操作量θに応じて左SP用電磁弁35aのソレノイド36aに所定値の電流Iを出力する。そうすると、左SP用電磁弁35aは電流値Iに応じて開き、その結果、SP用制御弁24のパイロット圧が制御される。
【0015】
このように、操作部材25の操作量θに応じて左SP用電磁弁35aを操作することで、SP用制御弁24のパイロット圧が制御され、SP用アクチュエータ33が動作し、SP用アタッチメントが一方向に動く。
なお、操作部材25を中立位置より他方(右側)に揺動させると、制御部28、左SP用電磁弁35bのソレノイド36bを介してSP用制御弁24のパイロット圧が制御され、SP用アクチュエータ33が動作し、SP用アタッチメントが他方向に動く。操作部材25を他方に揺動させたときの右SP用電磁弁35bのソレノイド36b動作は左SP用電磁弁35aのソレノイド36aと同様である。
【0016】
図3〜5は、制御部によって電磁弁を制御するにあたっての制御マップを示している。 図3は、操作部材25を中立位置から揺動させたときの操作部材25の操作量θと当該操作量θに対応して電磁弁35を動作させる作動信号(例えば、電流値I)とは別に予め仮想的に定められた仮想制御量との関係をマッピングした仮想制御量変換マップである。
図4は、仮想制御量の上限値を多段のレベルに分けた制御量上限変換マップである。図5は、仮想制御量を作動信号に変換する実制御変換マップである。制御部28は、仮想制御量変換マップ、制御量上限変換マップ及び実制御変換マップをプログラムとして有している。
【0017】
仮想制御量変換マップの横軸は操作部材25の操作量θを示しており、横軸の原点は操作部材25の中立位置を示しており、横軸の最大値は操作部材25を最大に揺動させたときの最大位置を示している。仮想制御量変換マップの縦軸は電磁弁35(アクチュエータ)を制御するために用いられる仮想制御量を示したもので、具体的には、操作部材25を揺動させたときの作動油の流量Q(仮想流量ということがある)を示している。
仮想制御量変換マップの縦軸おいては、操作部材25を中立位置から最大位置に向けて揺動させた際(後述する行き側の操作の際)に作動油が流れ始める起動点の流量Qを基準値としている。そして、同仮想制御量変換マップでは、基準値に対して作動油の流量Qが増加する側を百分率でプラス側とし、基準値に対して作動油が減少する側を百分率でマイナス側としている。
【0018】
図6は、電磁弁35に流した電流値Iと作動油の流量Qとの関係をまとめたものである。仮想制御量変換マップの基準値について図6を用いて説明する。
図6に示すように、操作部材25を中立位置から傾けて、操作部材25の操作量θに応じて電磁弁35に付加する電流Iを増加させると、電磁弁35の開閉度が電流値Iに応じて徐々に増加し、作動油の流量Qは増加する。このときの電流値Iと作動油の流量Qとの関係は曲線aのようになる。
一方で、操作部材25を操作した状態から徐々に中立位置に戻すと、電流値Iに応じて電磁弁35の開閉度は減少するが、電流値Iと作動油の流量Qとの関係は曲線aのようにならず曲線bのようになり、操作部材25を起動点に戻したときの作動油の流量Qは操作部材25を揺動させる前と比べてΔQだけ増加する。即ち、操作部材25を最大側へ向けて傾けた場合(行き側)と、操作部材25を中立位置側へ戻した場合(帰り側)とでは、電流値Iと作動油の流量Qとの関係が異なり、ヒステリシス特性が存在することとなる。
【0019】
本発明の作業機では、このようなヒステリシス特性を考慮し、図3に示すように、操作部材25の行き側(言い換えれば、電磁弁35の開側)と帰り側(言い換えれば、電磁弁35の閉側)とで生じる作動油の流量Q差ΔQを基準値に対する割合(百分率)で表して、制御量変換マップの縦軸に、その値(−A%)をマイナス側として示している。
このように、制御量変換マップにおいては、起動点の流量Qを基準値として、当該基準値から−A%(ΔQ)〜+B%[例えば、−20%〜120%]までの作動油の流量範囲(仮想流量範囲)を縦軸に示している。
【0020】
制御量変換マップにおいて、仮想流量Qと操作部材の操作量θとの関係を示す制御線Lは、操作部材の操作量θが増加する毎に作動油の流量Qが徐々に増加する右肩上がりの直線状であって、当該制御線Lにおいて起動点よりも中立位置側に操作部材を傾けた際は、仮想流量Qはマイナス側に推移し、起動点よりも最大位置側に操作部材を傾けた際は、仮想流量Qはプラス側に推移するようになっている。図3に示す不感体の領域は、操作部材25を中立位置から最大位置へと操作した際(行き側)に作動油が流れない領域である。 図4に示すように、制御量上限変換マップは、仮想流量Qの流量範囲を15分割することで15種類の仮想流量Qの上限を設定したものである。この制御量上限変換マップでは縦軸を仮想流量Qとしていて当該縦軸の範囲は、仮想制御量変換マップの縦軸と同じである。また、制御量上限変換マップでは、仮想流量Qの流量範囲を略均等に15分割したものである。
【0021】
図1に示すように、作業機は、仮想制御量変換マップでの仮想流量Qの上限値のレベル(以降、上限レベルということがある)を選択する上限値設定手段30を有している。
具体的には、上限値設定手段30は制御部28に電気的に接続された選択スイッチ(選択ボタン)で構成されており、この選択スイッチ30を1回押す毎に上限レベルが1段階上がるようになっている。また、選択スイッチ30で選択された上限レベルが最高レベル(レベル14)になった後に、選択スイッチ30を押すと上限レベルが最低レベル(レベル0)に戻るようになっている。なお、選択スイッチ30は運転席9の周囲に設けられた表示装置に具備されており、選択スイッチ30を押す毎で運転者が適宜上限レベルを変更することができる。
【0022】
図5に示すように、実制御変換マップでは、縦軸を電磁弁に流す電流Iとし、横軸を仮想流量Qとしていて、当該横軸の範囲は仮想制御量変換マップの縦軸と同じである。
図3〜5及び図7を用いて制御部28の動作を説明する。
作業者が操作部材25を操作すると、制御部28は、操作部材25の操作量θを操作信号により読み取り(S1:読み取り工程)、仮想制御量変換マップより読み取った操作量θから仮想流量Qを割り出す(S2:割り出し工程)。制御部28は、割り出し工程で割り出した仮想流量Qが、選択スイッチ30により予め設定された仮想流量Qの上限値よりも超えていないか否かを制御量上限変換マップにより判断する(S3:仮想制御量判定工程)。
【0023】
制御部28は、割り出し工程で割り出した仮想流量Qが制御量上限変換マップによる上限値よりも超えていれば、割り出し工程で割り出した仮想流量Qを、制御量上限変換マップで求められる上限値に変える(S4:上限値決定工程)。制御部28は、仮想制御量変換マップより割り出した仮想流量Qが制御量上限変換マップによる上限値より超えていなければ、次の処理に進む。
制御部28は、割り出し工程又は上限値決定工程で求めた仮想流量Qから電磁弁35に掛ける電流値Iを実制御変換マップに決定して、当該電流値Iを電磁弁35に出力する(S5:実制御工程)。
【0024】
例えば、操作部材25を操作したときの操作量θがNであるとき、割り出し工程で仮想流量Qは50%となる。ここで、選択スイッチ30により上限レベルがレベル8に設定されている場合は、割り出し工程で割り出された仮想流量Qが、上限レベルにおける仮想流量Qの上限を超えているため、上限値決定工程で仮想流量Qはレベル8の上限値、即ち、42%に変換される。
一方で、選択スイッチ30により上限レベルがレベル11に設定されている場合は、割り出し工程で割り出された仮想流量Qが、上限レベルにおける仮想流量Qの上限を超えていないため、仮想流量Qは割り出し工程で割り出した50%となる。
【0025】
そして、実制御工程において、割り出し工程又は上限値決定工程で求めた仮想流量Qの50%又は42%から電磁弁35に出力する電流値Iが決められて当該電流値Iが出力される。
このように、制御部28は、仮想制御量変換マップと制御量上限変換マップ及び実制御変換マップに基づいて操作部材25の操作量θに応じた電流値Iを出力する。また、この制御部28は、操作部材25の操作量θによって定められた仮想流量Qが選択スイッチ30で設定された仮想流量Qの上限値を超えないように電流Iを出力する。
【0026】
上記では、制御部28は、1つの仮想制御量変換マップと1つの仮想制御量変換マップと1つの実制御変換マップとにより電磁弁35の制御を行っているが、1つの仮想制御量変換マップではなく、複数の仮想制御量変換マップ(言い換えれば、複数の制御線Lを有するマップ)を有していて、この複数の仮想制御量変換マップで電磁弁35の制御を行ってもよい。
以下、複数の仮想制御量変換マップで電磁弁35を制御する場合について説明する。
図8は、複数の仮想制御量変換マップを1つの制御マップにまとめたものである。即ち図8では、横軸は操作部材25の操作量θ、縦軸は仮想流量Qであり、当該図は仮想流量Qの上限値を定めたレベル毎に、複数の制御線Lをマッピングしたものである。
【0027】
各仮想制御量変換マップ、即ち、各仮想制御量変換マップをまとめた図8では、操作部材25を最大位置に操作した際に、仮想流量Qがレベルにより定められた値よりも大きくならないように制御線Lが設定されている。同図において、レベル14に対応する制御線Lの傾き(操作量θに対する仮想流量Qの増加度)が一番大きく、レベルの数値が小さくなるほど制御線Lの傾きは小さくなっている。
図8,9を用いて複数の仮想制御量変換マップでの制御部28の動作を説明する。
作業者が操作部材25を操作すると、制御部28は、操作部材25の操作量θを操作信号により読み取る(S10:読み取り工程)。制御部28は、選択スイッチ30で設定された上限レベル(レベル)に基づいて、制御を行うにあたっての仮想制御量変換マップを複数の仮想制御量変換マップから決定する(S11:マップ決定工程)。制御部28は、選択された仮想制御量変換マップより、読み取り工程で読み取った操作量θから仮想流量Qを割り出す(S12:割り出し工程)。
【0028】
制御部28は、割り出し工程で求めた仮想流量Qから電磁弁35に掛ける電流値Iを実制御変換マップに決定して、当該電流値Iを電磁弁35に出力する(S13:実制御工程)。
例えば、選択スイッチ30により仮想流量Qの上限レベルが「5」に設定されている場合、制御部28はマップ決定工程でレベル5に対応する仮想制御量変換マップを決定する(言い換えれば、図8に示すように、レベル5に対応する制御線Lを用いて制御を行う)。
【0029】
制御部28は、レベルに応じた仮想制御量変換マップと実制御変換マップに基づいて電磁弁35に電流Iを出力する。
例えば、仮想流量Qの上限レベルが最高であるレベル14を設定した状態で、操作部材25を操作すると、操作部材25の操作量θに対応する電流値Iの大きさ及びその変化量(制御線Lで言うと傾き)が大きいので、操作部材25を少しだけ揺動させても出力される電流値I及びその変化量は大きくなる。その結果、電磁弁35の開度が大きくなるとともに電磁弁35の開くスピードが早くなるので、アクチュエータの動作速度は速くなると共に、操作部材25の操作に対する反応速度(素早く反応する)が速くなる。
【0030】
一方で、仮想流量Qの上限レベルが最低であるレベル0を設定した状態で、操作部材25を操作すると、操作量θに対応する電流値Iの大きさ及びその変化量が小さく、レベル15と同じように操作部材25を揺動させてもその操作量θに対して出力される電流値I及びその変化量は小さくなる。その結果、電磁弁35の開度が小さくなるとともに、電磁弁35の開くスピードは遅くなり、アクチュエータの動作速度は遅くなると共に、操作部材25の操作に対してゆっくりと動作する(ゆっくり反応する)。
したがって、上限レベルが高いもので制御を行うと、アタッチメント(アクチュエータ)の動作速度を速くできると共に、操作量θに対する反応速度を速くすることができる。また、上限レベルが低いもので制御を行うと、アタッチメントの動作速度を遅くできると共に、操作量θに対する反応速度を遅くすることができる。
【0031】
制御部28は、エンジン回転に応じて実制御変換マップでの仮想流量Qと電流値Iとの関係を変換する作動信号変換手段34を有することが好ましい。
作動信号変換手段34は、仮想流量Qを電流値Iに置き換える実制御工程の際に、実制御変換マップを変更するもので、エンジンをアイドリング状態としたときの実制御変換マップ(図10(a):アイドリング制御マップということがある)と、エンジンを最高回転にしたときの実制御変換マップ(図10(b):高回転制御マップということがある)と、式(1)とを用いて、エンジン回転に応じて仮想流量Qと電流値Iとの関係を変換するものである。
【0032】
なお、制御部28は、予めアイドリング制御マップ、高回転制御マップ及び式(1)をプログラムとして有している。アイドリング制御マップは、アタッチメントを操作していない無負荷状態においてエンジンをアイドリングにした場合の仮想流量Qと電流Iとの関係を示したものである。高回転制御マップは、無負荷状態においてエンジンの回転数を最高回転にした場合の仮想流量Qと電流Iとの関係を示したものである。
【0033】
【数1】

【0034】
図10〜11を用いて作動信号変換手段34を有する場合の制御部の動作を説明する。なお、説明の便宜上、仮想流量QはP値であるとする。
まず、制御部28は、実制御工程において、仮想流量QのP値からアイドリング制御マップでの電流値Iを算出して当該電流値Iを式(1)のIminとする(S20)と共に、仮想流量Qから高回転制御マップでの電流値Iを算出して当該電流値Iを式(1)のImaxとする(S21)。
そして、制御部28は、現在のエンジンの回転を読み込んでその値を式(1)のRnowとする(S22)と共に、アイドリング状態のときのエンジンの回転を読み込んで式(1)のRminとする(S23)。制御部28は、Imin、Imax、Rnow及びRminを式(1)に代入して、エンジンの回転に応じた電流値Iを求め、当該電流Iを電磁弁35に出力する(S24)。
【0035】
作動信号変換手段34によれば、エンジン回転、即ち、エンジンの負荷に応じてSP用アクチュエータ33を作動させることができる。
本発明の作業機は、上記で示した実施形態に限定されない。即ち、上記の実施の形態では、仮想制御量変換マップの制御において、操作部材25を最大位置側へ向けて傾けた場合(行き側)と、操作部材25を中立位置側へ戻した場合(帰り側)とでは、同じ制御線L(ルート)を用いていたが、図13に示すように、行き側と帰り側との制御線Lのルートを別々にしてもよい。例えば、図13の操作部材25を最大位置側に傾けたとき(行き側)は制御線L1を用い、操作部材25を中立位置側に傾けたとき(帰り側)は制御線L2を用いる。
【0036】
また、仮想制御量変換マップにおいて、操作部材25を揺動させた際に作動油が流れ始める起動点の流量Qを基準値として縦軸の値をプラス側とマイナス側に分けているが、縦軸を作動油の流量Q(実質値)としてもよい。
また、仮想制御量を作動油の流量としたが、電磁弁35の開閉度にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】アクチュエータを動作させるシステム構成図である。
【図2】アクチュエータを作動させる油圧回路図である。
【図3】仮想制御量変換マップを示す図である。
【図4】制御量上限変換マップを示す図である。
【図5】実制御変換マップを示す図である。
【図6】仮想制御量変換マップを導出した過程を説明する図である。
【図7】制御部の制御動作フローチャートを示す図である。
【図8】複数の仮想制御量変換マップをまとめた図である。
【図9】複数の仮想制御量変換マップを用いて制御する制御部の制御動作を示すフローチャート図である。
【図10】(a)はアイドリング制御マップを示す図で、(b)は高回転制御マップを示す図である。
【図11】作動信号変換手段における制御部の制御動作を示すフローチャート図である。
【図12】バックホーの側面全体を示す全体図である。
【図13】仮想制御量変換マップの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 作業機
25 操作部材
28 制御部
24 制御弁
35 電磁弁
θ 操作量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータによって動作するアタッチメントと、このアタッチメントが動作するようにアクチュエータに作動油を供給する制御弁と、作動信号により作動して前記制御弁のパイロット圧を調整可能な電磁弁と、操作部材の操作量に対応した作動信号を前記電磁弁に出力する制御部とを備えた作業機であって、
前記制御部は、操作部材の操作量とこの操作量に対応して前記作動信号とは別に仮想的に定められた仮想制御量との関係が示された仮想制御量変換マップと、前記仮想制御量の上限値を多段のレベルに分けた制御量上限変換マップと、前記仮想制御量を作動信号に変換する実制御変換マップとを備えており、当該制御部は、仮想制御量変換マップと制御量上限変換マップ及び実制御変換マップに基づいて操作部材の操作量に応じた作動信号を出力することを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記仮想制御量変換マップでの仮想制御量の上限値のレベルを選択する上限値設定手段を有しており、前記制御部は、前記操作量により定められた仮想制御量が前記上限値設定手段で設定された仮想制御量の上限値を超えないように、前記作動信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御部は、制御量上限変換マップでの仮想制御量の上限値のレベル毎に、操作部材の操作量と前記仮想制御量との関係を示した複数の前記仮想制御量変換マップを有し、当該制御部は、前記レベルに応じた前記仮想制御量変換マップ及び実制御変換マップに基づいて作動信号の出力をすることを特徴とする請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記仮想制御量変換マップの仮想制御量は、前記操作部材の操作量に応じた作動油の流量とされており、前記実制御変換マップは前記作動油の流量を作動信号に変換するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の作業機。
【請求項5】
前記制御部は、エンジン回転に応じて実制御変換マップでの前記仮想制御量と作動信号との関係を変換する作動信号変換手段を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−231696(P2008−231696A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69466(P2007−69466)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】