説明

作業状況表示装置および作業状況表示方法

【課題】作業者による作業を促し、当該作業者の作業効率を維持させることができる作業状況表示装置および方法を提供する。
【解決手段】本発明の作業状況表示装置1は、作業者の作業能力を示す能力値を記憶する記憶部21と、能力値に応じて作業者の作業基準となる基準値を演算する演算部22と、作業者の実際の作業状況を実績値として表示する表示部33と、を備え、表示部33は、基準値を実績値と比較可能に表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
作業者が行う作業状況を表示する作業状況表示装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、物流業や製造業などにおいて、様々な方法により作業者の作業実績が把握・収集されている。例えば、特開2007−95006号公報(特許文献1)では、無線を用いて作業者の作業内容等を収集できる作業実績収集方法が記載されている。また、特開2003−104520号公報(特許文献2)では、ピッキング作業者の作業実績を収集することができるピッキング設備が記載されている。
【0003】
このように、各業界において、作業者の作業実績を把握することは管理などの面で重要視されている。そして、作業現場では、作業者が常に能力を発揮していることが望まれている。つまり、作業者の作業実績が当該作業者のもつ能力通りであることが望まれている。
【特許文献1】特開2007−95006号公報
【特許文献2】特開2003−104520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、作業者は、自身の作業実績が能力通りであるか否かを客観的に判断することができなかった。作業実績が収集されても、作業者は、現在行っている作業のペースが、自分の能力からして遅いのか速いのかを客観的に判断することができない。つまり、作業者は、能力で決まる自分の作業基準と実際の作業状況とを比較し確認することができなかった。これにより、作業者は、作業ペースが遅れていても気が付かず、作業効率の面で問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、作業者による作業を促し、当該差業者の作業効率を維持させることができる作業状況表示装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業状況表示装置は、作業者の作業能力を示す能力値を記憶する記憶部と、能力値に応じて作業者の作業基準となる基準値を演算する演算部と、作業者の実際の作業状況を実績値として表示する表示部と、を備え、表示部は、基準値を実績値と比較可能に表示することを特徴とする。これにより、作業者は、表示部に表示された基準値と実績値とを比較しながら作業することが可能となる。作業者は、表示部を見ることで、実績値が基準値より小さい場合、現在の作業ペースが本来の自分の作業ペースから遅れていることを明確に把握することができる。これにより、作業者の作業が促され、当該作業者の作業効率が維持される。なお、作業状況表示装置(システム)において、記憶部と表示部は遠隔配置され、互いに無線等により通信するようにしてもよい。
【0007】
ここで、能力値は、作業者が行うと設定された所定時間当たりの作業工数(実行数)であってもよい。この場合、基準値は、能力値および経過時間に基づき演算される作業工数であり、実績値は、作業者が実際に行った作業工数である。これにより、作業者は、より明確に基準値と実績値を比較することができる。
【0008】
ここで、表示部は、実績値が基準値より小さい場合、前記作業者に対して警告することが好ましい。警告とは、例えば、表示部への警告表示、アラーム音発声、または、音声による警告などである。これにより、作業者は、より確実にペース遅れに気づき、ペースアップが促される。
【0009】
ところで、本発明は、作業状況を表示する方法としても記載することができる。すなわち、本発明の作業状況表示方法は、作業者の作業能力を示す能力値を記憶する記憶ステップと、能力値に応じて作業者の作業基準となる基準値を演算する演算ステップと、作業者の実際の作業状況を実績値として表示する表示ステップと、を備え、表示ステップは、基準値を実績値と比較可能に表示することを特徴とする。この方法によれば、上記同様の効果が発揮される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の作業状況表示装置および方法によれば、作業者による作業が促され、当該作業者の作業効率が維持可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。なお、本実施形態では、ピッキング作業で用いられる作業状況表示装置を例として挙げている。
【0012】
本実施形態の作業状況表示装置1について図1〜図3を参照して説明する。図1は、作業状況表示装置1を示す構成図である。図2は、作業状況表示装置1およびピッキング台車4を示す斜視図である。図3は、表示部31を示す模式図である。
【0013】
図1および図2に示すように、作業状況表示装置1は、サーバ2と、クライアントコンピュータ(以下、コンピュータと略称する)3とを備えている。サーバ2は、コンピュータ3と無線により通信可能であり、コンピュータ3と離れて配置されている。サーバ2は、記憶部21と、演算部22とを備えている。
【0014】
記憶部21は、作業者の作業能力を示す能力値を作業者毎に記憶している。能力値は、作業者毎に予め設定されており、作業者が行う所定時間当たりの作業工数(工数/時間)で記憶されている。
【0015】
演算部22は、能力値に応じて作業者の作業基準となる基準値を演算する。基準値は、記憶部21に記憶された能力値と経過時間から演算される作業工数である。つまり、演算部22では、「能力値×経過時間=基準値」の演算が行われる。ここで、演算部22は、演算で用いる能力値を、後述する情報読取部31からの情報(個人ID)に基づいて決定する。演算部22は、実際に作業する作業者の能力値に応じて基準値を演算する。
【0016】
コンピュータ3は、ピッキング作業を行うためのピッキング台車4上に設置されている。コンピュータ3は、情報読取部31と、工数カウント部32と、表示部33とを備えている。情報読取部31は、例えばスキャナなどであり、ピッキングする商品のバーコード(商品情報)や、作業者個々に割り当てられた個人IDを読み取ることができる。情報読取部31は、ピッキング台車4上に配置され、作業者が持って移動させることができる。
【0017】
情報読取部31は、読み取った情報が個人IDである場合、その情報を演算部22に送信する。演算部22は、受信した個人IDに基づいて、記憶部21内から当該個人IDに対応する能力値を決定する。つまり、作業者は、情報読取部31で自身のIDを読み込み、作業状況表示装置1にこれから作業する作業者を認識させる。演算部22は、上述のとおり、実際に作業する作業者の能力値に応じて基準値を演算する。
【0018】
一方、情報読取部31は、読み取った情報が商品情報である場合、その情報を工数カウント部32に送信する。
【0019】
工数カウント部32は、情報読取部31から商品情報を受信する毎に、作業工数をカウントしていく。つまり、工数カウント部32は、作業者が実際に行った作業工数をカウントしている。ただし、ここでは、1商品をピックすることが1工数として設定されている。
【0020】
表示部33は、作業者が見えるよう、ピッキング台車4のハンドル部41側を向いている。表示部33は、工数カウント部32でカウントされる作業工数、すなわち作業者が実際に行った作業工数(実績値)を表示する。さらに、表示部33は、演算部22から受信する作業工数を基準値として表示する。図3に示すように、表示部33は、実績値および基準値を棒グラフ状に並べて表示し、かつ、実績値と基準値を数値(図3における「10」)として並べて表示する。表示部33は、作業者がより容易に比較できるよう、実績値と基準値を表示する。
【0021】
さらに、表示部33は、実績値と基準値を比較する。表示部33は、実績値が基準値よりも小さい場合、「遅れています」等の音声により遅れていることを作業者に通知する。また、この場合、実績値を示す棒グラフを点滅させるなどして警告するようにしてもよい。また、表示部33は、「遅れています」等の警告文字を表示してもよい。表示部33は、作業者コード(ID)、作業者名、および、ピック対象表品画像なども表示している。なお、図3では、その他の表示(ピックすべき数量、仕分け先など)を省略している。
【0022】
以上、本実施形態の作業状況表示装置1によれば、作業者は、表示部33を見ることで、現在の作業ペースを容易かつ明確に把握することができる。作業者は、実績値が基準値より小さい場合、現在の作業ペースが本来の自分の作業ペースから遅れていることを客観的に把握できる。これにより、作業者の作業が促され、当該作業者の作業効率が維持される。
【0023】
なお、作業状況表示装置1は、1つのコンピュータで構成されてもよい。すなわち、作業状況表示装置1は、記憶部21と、演算部22と、情報読取部31と、工数カウント部32と、表示部33とを備えている。ただし、ピッキング台車に用いる場合は、サーバ2とコンピュータ3とに分けた構成のほうが、重量および処理負荷の面で適している。この構成の場合、作業者に対するピッキング指示情報(ピックする商品、数量、および、仕分け先の情報)をサーバ2に記憶し、コンピュータ3とデータの送受信を行うことでシステムの効率化が図れる。
【0024】
また、工数カウント部32は、指定された回数受信すると1工数として作業工数をカウントするようにしてもよい。この指定された回数は、ピッキング指示情報に応じて予め設定でき、例えば5個ピックする毎に1工数カウントするようにもできる。
【0025】
また、本実施形態は、作業状況を表示する方法としても記載することができる。すなわち、作業状況表示方法は、作業者の作業能力を示す能力値を記憶する記憶ステップと、能力値に応じて作業者の作業基準となる基準値を演算する演算ステップと、作業者の実際の作業状況を実績値として表示する表示ステップと、を備え、表示ステップは、基準値を実績値と比較可能に表示することを特徴とする。これによっても、上記同様の効果が発揮される。本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、ピッキング台車4以外にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】作業状況表示装置1を示す構成図である。
【図2】作業状況表示装置1およびピッキング台車4を示す斜視図である。
【図3】表示部31を示す模式図である。
【符号の説明】
【0027】
1:作業状況表示装置、
2:サーバ、21:記憶部、22:演算部、
3:クライアントコンピュータ、31:情報読取部、32:工数カウント部、
33:表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の作業能力を示す能力値を記憶する記憶部と、
前記能力値に応じて前記作業者の作業基準となる基準値を演算する演算部と、
前記作業者の実際の作業状況を実績値として表示する表示部と、
を備え、
前記表示部は、前記基準値を前記実績値と比較可能に表示することを特徴とする作業状況表示装置。
【請求項2】
前記能力値は、前記作業者が行うと設定された所定時間当たりの作業工数であり、
前記基準値は、前記能力値および経過時間に基づき演算される作業工数であり、
前記実績値は、前記作業者が実際に行った作業工数である請求項1に記載の作業状況表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記実績値が前記基準値より小さい場合、前記作業者に対して警告する請求項1または2に記載の作業状況表示装置。
【請求項4】
作業者の作業能力を示す能力値を記憶する記憶ステップと、
前記能力値に応じて前記作業者の作業基準となる基準値を演算する演算ステップと、
前記作業者の実際の作業状況を実績値として表示する表示ステップと、
を備え、
前記表示ステップは、前記基準値を前記実績値と比較可能に表示することを特徴とする作業状況表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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