説明

作業用フロントの着脱装置および着脱方法

【課題】作業用フロントの着脱が容易になり、少ない労力で短時間に作業用フロントを作業機本体に着脱でき、かつ比較的安価に実現できる作業用フロントの着脱装置と着脱方法を提供する。
【解決手段】作業機本体の作業用フロント取付け用のブラケット26に、下部ピン孔32と、この下部ピン孔32より上方でかつ作業機本体の前後方向に見て後方に上部ピン孔35を設ける。作業用フロントのブームフート部12aに着脱用アタッチメント27を設ける。着脱用アタッチメント27は、ブームフート部12aにピン42により相対回動可能に連結されると共に、ブームシリンダ11の基端部がピン45により相対回動可能に連結される。着脱用アタッチメント12に、作業機本体側に開口部を向けて、上部ピン孔35に挿着する上部ピン34に嵌める凹部47を設けると共に、下部ピン孔32に位置を合わせて下部ピン31によりピン付けするピン孔を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームを有する油圧ショベルやその応用機等の作業機における作業用フロントの着脱装置と着脱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節構造を有する作業用フロントを有する作業機においては、作業用フロントのブーム、アーム間あるいは分割構造の分割ブーム間は連結部にそれぞれ設けたピン孔にピンを挿着することにより連結される(例えば特許文献1参照)。また、ブームフート部と作業機本体間も同様に両者の連結部に設けたピン孔にピンを挿着することにより連結される。
【0003】
特許文献2には、作業機本体(トラクタ)に作業用フロント(フロントローダ)を取付ける場合、作業機本体の前部ブラケットの下部に開口部が上向きの凹部を設け、前記ブラケットの上部にピン孔を設け、作業用フロントをこの作業用フロント自体に設けたスタンドにより自立させておき、作業機本体を自走させて自立させた作業用フロントに近づけて作業用フロントの作業機本体に対する位置合わせを行ない、作業機本体の油圧源と作業用フロントに備えた油圧シリンダとの油圧配管を接続し、作業機本体上のオペレータが前記油圧シリンダを操作することにより、作業用フロントの基端部を下げてその基端部に設けたピンを前記凹部に嵌合し、その後、作業用フロントに設けた別の油圧シリンダを作動させて作業用フロント側の前記ピンより上方に設けたピン孔を作業機本体側のピン孔に位置合させてして両ピン孔間にピンを挿着することにより作業用フロントを作業機本体に取付ける構造のものが開示されている。なお、この特許文献2に記載のものは、作業用フロントのピン孔と作業機本体のピン孔に位置合わせするため、作業用フロント側に一対のガイドローラを設け、このガイドローラ間で作業機本体側のヒッチを挟んで作業用フロントを移動させている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−76524号公報
【特許文献2】特開2000−170199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート建築物の解体を行なう場合、例えば自重が13t程度の解体機をそのまま大型クレーンにより屋上に上げ、その解体機により上方から解体を行なう解体工事が多数行なわれる趨勢にある。このような解体機吊り上げのための大型クレーンとして、従来は解体機全体をそっくり吊り上げ可能な100t程度の自重を有するものが用いられて来た。
【0006】
しかしながら近年における道路交通法の改正により、自重が100t程度の大型クレーンの自走が不可能となり、60t程度のものしか自走させることができない。このため、実質的に60t程度のクレーンしか使用することができないのが実情である。この小型化したクレーンでは例えば8t程度の自重の解体機しか吊り上げることができない。このため、小型化したクレーンにより吊り上げ可能な小型の解体機をそのままクレーンにより屋上に吊り上げることが考えられるが、このような小型の解体機では解体作業の能率が低下するという問題点がある。
【0007】
そこで従来より用いられてきた例えば13t程度の解体機を分解して小型化したクレーンにより分解して吊り上げ、屋上で組み立てることが行なわれている。しかしながら、例えば特許文献1に記載のような従来のピン連結構造の作業用フロントは、ブームフート部を取付ける場合、ブームフート部やブームシリンダのピン孔を作業機本体の各対応ピン孔に位置合わせしてそれぞれピンをピン孔に挿着することによりブームやブームシリンダを作業機本体に取付ける必要があり、この取付け作業が非常に手間が掛かり、最悪の場合、この作業用フロントの取付け作業に1日を要する場合があるという問題点があった。屋上に解体機を載せて組み立てる場合でなく、地下工事を行なう場合も吊り荷重に制限があるため、やはり作業用フロントを分解、組立を行なう必要があり、同様に組立に多大の時間と労力を要するという問題点がある。
【0008】
一方、前記屋上等にクレーンにより分解して吊り上げる作業機において、特許文献2に記載のような自立可能なスタンドを作業用フロントに備え、作業機本体の油圧源に作業用フロントの油圧シリンダを接続して作業用フロントの着脱を行なうことが考えられる。しかしながらこの特許文献2に記載の着脱装置、方法を用いる場合、自立している作業用フロントに作業機本体の自走により連結部の位置合わせを行なう必要があり、この位置合わせは容易ではない。また、この特許文献2に記載のものは、この位置合わせの困難さを克服するため、前述のように位置合わせのためのガイドローラやヒッチが必要となり、さらに前述した作業用フロントを自立させるためのスタンドが必要であるため、着脱装置が複雑化、大型化するという問題点がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、作業用フロントの着脱が容易になり、少ない労力で短時間に作業用フロントを作業機本体に着脱でき、かつ比較的安価に実現できる作業用フロントの着脱装置と着脱方法を提供することを目的とする。また本発明は、複数の種類の作業用フロントに作業機本体を共用することができ、ユーザーにとって経済的負担が軽減される作業用フロントの着脱装置を提供することを他の目的とする。また本発明は、作業用フロントの作業機本体からの外れが防止されて安全性が向上する作業用フロントの着脱装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の作業用フロントの着脱装置は、ブームを有する作業用フロントを作業機本体に取付ける自走式作業機における作業用フロントの着脱装置において、
前記作業機本体の前記作業用フロント取付け用のブラケットに、下部ピン孔と、この下部ピン孔より上方でかつ作業機本体の前後方向に見て後方に上部ピン孔を設け、
一方、前記作業用フロントのブームフート部と前記作業機本体の前記作業用フロント取付け用のブラケットとを着脱用アタッチメントにより連結し、
前記着脱用アタッチメントの前記ブームフート部への取付け側の一方に前記ブームフート部にピンにより相対回動可能に連結されるピン孔を設けると共に、他方に前記ブームに取付けるブームシリンダの基端部にピンにより相対回動可能に連結されるピン孔を設け、
前記着脱用アタッチメントの前記ブラケットへの取付け側の一方に、前記作業機本体側に開口部を向けて形成され、前記上部ピン孔に挿着する上部ピンに嵌める凹部を設けると共に、他方に前記ブラケットの下部ピン孔に位置を合わせて下部ピンによりピン付けされるピン孔を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の作業用フロントの着脱装置は、請求項1に記載の作業用フロントの着脱装置おいて、
前記着脱用アタッチメントは、前記ブラケットへの取付け側に設ける前記凹部と前記ピン孔のサイズおよびその距離が同一である共に、前記ブームフート部への取付け側に設ける前記2つのピン孔のサイズあるいはその距離が異なる複数種類用意されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の作業用フロントの着脱装置は、請求項1または2に記載の作業用フロントの着脱装置において、
前記着脱用アタッチメントと前記ブラケットの上部を着脱可能に連結する安全ピンを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項4の作業用フロントの着脱方法は、ブームを有する作業用フロントを作業機本体に取付ける自走式作業機における作業用フロントの着脱方法において、
前記作業用フロントの取付け時には、クレーンにより前記作業用フロントを吊り、前記作業用フロントを前記作業機本体に近づける方向に水平移動させて前記作業機本体の作業用フロント取付け用のブラケットの上部のピン孔に挿着した上部ピンに、前記作業用フロントのブームフート部に連結した着脱用アタッチメントの上部に設けた凹部を嵌合させ、その後、この嵌合状態を保った状態でクレーンにより前記作業用フロントを下げて前記下部ブラケットの下部に設けたピン孔に前記着脱用アタッチメントの下部に設けたピン孔の位置を合わせて両ピン孔に下部ピンを挿着することにより前記作業用フロントを前記作業機本体に取付け、
前記作業用フロントの取外し時には、クレーンにより前記作業用フロントを支持しておき、前記ブラケットの下部に設けたピン孔および前記着脱用アタッチメントの下部に設けたピン孔に挿着されていた下部ピンを抜き、クレーンにより前記作業用フロントを前記作業機本体から離す方向に水平移動させて前記着脱用アタッチメントの凹部を前記ブラケットの上部に設けたピン孔に挿着した上部ピンから離脱させることにより、前記作業用フロントを前記作業機本体から取外すことを特徴とする。
請求項5の作業用フロントの着脱方法は、請求項4に記載の作業用フロントの着脱方法において、
前記着脱用アタッチメントを、前記ブームフート部への取付け側に設ける前記2つのピン孔のサイズあるいはその距離が異なる複数種類用意することでサイズあるいは種類の異なる作業用フロントを前記作業機本体に対して取付け可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、ブームフート部に連結する着脱用アタッチメントの下部にピン孔を設け、上部に作業機本体側に向く凹部を設け、作業機本体のブラケットに、前記ピン孔と凹部にそれぞれ対応して下部ピン孔と上部ピン孔とを設けたので、作業用フロントをクレーンにより吊り上げた状態でクレーンにより作業用フロントを水平移動させることによりアタッチメントの凹部を前記上部ピン孔に挿着した上部ピンに嵌合し、その後、この嵌合状態を維持した状態でクレーンのワイヤロープを下げてアタッチメントのピン孔を前記下部ピン孔に位置合わせして両ピン孔に下部ピンを挿着することにより、短時間に少ない労力で作業用フロントを作業機本体に取付けることができる。すなわち特許文献1で記載した従来の作業機のように、2本のピン用ピン孔の位置合わせを行なう場合に比較して、はるかに短時間で作業用フロントの取付けを行なうことができる。特に高層建築物において、地上のクレーンのオペレータと屋上の作業員とで無線により連絡を取り合いながら位置合わせする場合、この位置合わせに要する時間、労力が軽減される。
【0015】
また、特許文献2に記載のように、スタンドにより作業用フロントを自立させて作業機本体の自走と作業用フロントに設けた油圧シリンダの操作によって作業用フロントに対する作業機本体の位置合わせとピン挿着を行なう場合に比較して、スタンドや位置合わせのためのガイドローラ等を必要とせず、経済的に構成できる。また、仮に特許文献2の構成を踏襲して、作業機本体側ブラケットの下部に上向きの凹部を設け、ブラケットの上部にピン孔を設け、クレーンにより吊った状態で作業用フロントを作業機本体に取付ける場合には、最初にクレーンのワイヤロープを下げて凹部にアタッチメントのピンを嵌めた後に上部ピン孔の位置合わせを行なう必要があり、この位置合わせのためには作業用フロントを作業機本体側基端部が下がるように傾ける必要があるが、このように作業用フロントをクレーン操作で行なうことは非常に困難である。
【0016】
一方本願発明によれば、作業用フロントの水平移動により作業機本体に向けた凹部を作業機本体のブラケットに設けた上部ピンに嵌めた後、クレーンのワイヤロープを下げることにより容易に下部ピン孔とアタッチメントのピン孔との位置合わせを行なうことができる。また、クレーンにより作業用フロントを吊る場合には、ワイヤロープにより作業用フロントが吊り下げられるので、人力による作業用フロントの多少の微調整は可能であり、位置合わせが容易となる。このため、作業機本体の自走や作業用フロント側油圧シリンダの操作による場合より位置合わせに要する時間や労力が軽減される。
【0017】
請求項2の発明によれば、異なるサイズや種類の複数の作業用フロントに対し、着脱用アタッチメントのブームやブームシリンダに対して連結するピンのサイズやピン孔間の距離が同一であるか如何にかかわらず、作業機本体のブラケットの上部ピンを嵌めるアタッチメントの凹部や下部ピン孔に位置合わせするピン孔のサイズやピン孔間の距離を同一にしたので、異なるサイズや種類の作業用フロントに対して作業機本体の共用化が達成できる。
【0018】
具体的には、例えば作業用フロントは、2ピース型、3ピース型、あるいはブームを短くして出力の増大を図ったショートリーチ型、さらには継ぎ足し型のブームを用いたもの等様々な構造のものがある。さらには作業具としてバケットを用いるか、ブレーカを用いるか、鋏状の破砕具を用いるか等の相違等がある。このような作業用フロントのブーム構造や作業具の相違に伴って、ブームフート部のピン孔とブームシリンダのピン孔のサイズや間隔が異なったとしても、作業機本体のブラケットのピンを嵌めるアタッチメントの凹部や下部ピン孔に位置合わせするピン孔のサイズ、ピン孔間の距離を同一にしたので、サイズあるいは種類の異なる作業用フロントであっても同じ作業機本体に取付けることが可能となる。このため、ユーザーは異なる種類の作業用フロントごとに作業機本体を準備する必要が無くなり、ユーザーの経済的負担が軽減されると共に、異なる作業を行なうごとに同じ作業機本体に異なる作業用フロントを取付けて作業を行なうことにより、作業機本体の稼働率が上がり、ユーザーは工事を請け負う場合の必要経費を軽減できる。この作業用フロントの交換は、本発明の着脱用アタッチメントによる作業機本体への着脱が容易であることにより促進される。
【0019】
請求項3の発明においては、作業機本体に設けるブラケットと、ブームフート部に設けるアタッチメントとの間を安全ピンにより着脱可能に連結したので、強い衝撃等の何らかの理由でブラケットからアタッチメントが外れることがなく、安全性が高まる。
【0020】
請求項4の発明においては、請求項1の作業用フロントの着脱装置を用い、クレーンで作業用フロントを吊り、水平移動によるアタッチメントの凹部とブラケットの上部ピンとの嵌合と、ワイヤロープの巻き下げによるブラケットの下部ピン孔とアタッチメントのピン孔との位置合わせ行なって下部ピンで結合することにより作業用フロントを作業機本体に取付け、作業用フロントの取外し時には、前記と逆の操作により作業用フロントを作業機本体から取外すようにしたので、前述した理由により、比較的簡単な構造で作業用フロントの着脱を容易かつ迅速に行なうことができる。
【0021】
請求項5の発明においては、異なるサイズや種類の複数の作業用フロントに対し、着脱用アタッチメントのブームやブームシリンダに対して連結するピンのサイズやピン孔間の距離が同一であるか如何にかかわらず、作業機本体のブラケットの上部ピンを嵌めるアタッチメントの凹部や下部ピン孔に位置合わせするピン孔のサイズやピン孔間の距離を同一にしたので、異なるサイズや種類の作業用フロントに対して作業機本体の共用化が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の作業用フロントの着脱装置を適用する作業機の一例である解体機を示す側面図である。図1において、1は下部走行体、2はこの下部走行体1上に旋回装置3を介して設置した上部旋回体であり、この上部旋回体2上には運転室4と、油圧源や電力源となるパワーユニット5と、旋回装置2を中心とした後述の作業用フロント9等との重量バランスをとるためのカウンタウエイト6等が設置され、これらにより自走式車両である作業機本体7を構成する。
【0023】
この作業機本体7に取付けられる本実施の形態の作業用フロント9は、後述のように、作業機本体7に設けたブラケット26に着脱可能に取付ける着脱用アタッチメント27を介して取付けられる。この作業用フロント9は、作業機本体7の上部旋回体2に第1の油圧シリンダ11により起伏可能に取付けられる第1の分割ブーム12と、この第1の分割ブーム12の先端に第2の油圧シリンダ13により回動可能に取付けられた第2の分割ブーム14と、この第2の分割ブーム14の先端に第3の油圧シリンダ16により回動可能に取付けられた第3の分割ブーム17とを備えた3ピース型のものである。この実施の形態においては、第3の分割ブーム17の先端に作業具回動用油圧シリンダ19によりアームリンク20および作業具リンク21を介して回動可能に解体用作業具22を取付けている。解体用作業具22は対をなす破砕体23、24を内蔵の油圧シリンダによって開閉することにより、解体対象物であるコンクリートあるいは木造移築物などの解体を行なうものである。作業具としてはこの他、バケットやブレーカ(油圧を用いてチゼルを振動させてコンクリートや岩石等を破砕する破砕具)等、作業目的に応じて各種のものが取付けられる。
【0024】
図2は前記作業用フロント7を上部旋回体2に取付ける本発明の作業用フロントの着脱装置の一実施の形態を示す側面図である。26は上部旋回体2に設けたブラケット、27は作業用フロント7のブームフート部12aに設けた着脱用アタッチメントである。
【0025】
ブラケット26は、図3の側面図と、図4の平面図と、図5の正面図に示すように、上部旋回体2上に溶接され、互いに平行に対面する2枚の縦板28、28と、これらの縦板28、28の対向面にそれぞれ溶接された補強板29、29と、縦板28、28の下部にそれぞれ対向させて設けた縦板30、30とを備える。縦板28の下部および前記下部の縦板30には、アタッチメント27を連結するための下部ピン31を挿着するための下部ピン孔32を設ける。また、縦板28の上部でかつ作業機本体7の前後方向に見て後方となる位置に、アタッチメント27に設けた凹部47を嵌合する上部ピン34を挿着する上部ピン孔35を設ける。さらに縦板28の上部には、それぞれ後述の安全ピン37を挿着するためのピン孔39を設ける。
【0026】
アタッチメント27の構造を図6に示す。図6において、(A)は側面図、(B)は背面図(作業機本体7側から見た図)、(C)は平面図、(D)は底面図、(E)は正面図である。アタッチメント27の上面側には、2枚の縦板40、40およびその縦板40、40の対向面に溶接された補強板41、41とを備え、補強板41、41間で前記第1のブーム12のブームフート部12aを挟む。この縦板40および補強板41にブームフート部12aを連結するピン42を挿着するピン孔43を設ける。また、アタッチメント27の上面部の下部には、2本の第1のブームシリンダ11の基端部を、縦板40、40との間でそれぞれ嵌め込む縦板44、44を設け、これらの縦板40、44には、ブームシリンダ11をピン45により連結するためのピン孔46を備える。
【0027】
アタッチメント27の下面の上部には、作業機本体7側に開口部を向けて形成された凹部47を設ける。この凹部47は、前記ブラケット26に取付ける上部ピン34に嵌合するものである。また、アタッチメント27の下面の下部には、作業機本体7のブラケット26の縦板28と縦板30との間に嵌め込むピン連結部49を設ける。このピン連結部49は、前記下部ピン31を挿着するためのピン孔50を有する。また、アタッチメント27の上部には、安全ピン37を挿着するためのピン孔51を有する。
【0028】
図7の断面図に示すように、安全ピン37はU字形をなし、かつ取付け板52を溶接したものであり、アタッチメント27の左右にそれぞれ取付けられるものである。これらの安全ピン37は一方の柱部37aをアタッチメント27に設けたピン孔51に挿着し、他方の柱部37bをブラケット26のピン孔39に挿着し、取付け用のボルト53を取付け板52のボルト挿通孔52aに挿通し、アタッチメント27に設けたねじ孔54に螺合して締結することにより、アタッチメント27とブラケット26とを連結する。55は安全ピン37の抜け止め用ワッシャであり、このワッシャ55はピン孔51の孔サイズより大きく、安全ピン37の一方の柱部37aに設けたねじ孔56に螺合するボルト57により、安全ピン37に着脱可能に取付けられる。なおこの安全ピン37はこの例で示すような手動式でなく、油圧ジョイントピンを用いて構成してもよい。
【0029】
図8ないし図10はこの実施の形態の作業機を分解してコンクリート建築物60に吊り上げる際の作業状況を説明する側面図である。図8ないし図10において、61はクレーン、62は作業機を搬送するトラックである。ここで作業機は例えば13t程度のもので、クレーン61の吊り上げ能力では一度に吊り上げることができない自重を有するものである。作業機は予め作業機本体7と作業用フロント9とに分解されて輸送されるかあるいは解体現場において作業機本体7と作業用フロント9に分解される。
【0030】
まず図8に示すように、作業機本体7をクレーン61によりコンクリート建築物60上に吊り上げる。続いて、図9に示すように、トラック62上の作業用フロント9を吊り上げる。続いて図10に示すようにクレーン61で作業用フロント9を吊り下げた状態で作業機本体7に取付ける。なお、クレーン61あるいは作業機の種類により作業機本体7とカウンタウエイト6とを同時に吊り上げることができない場合は、カウンタウエイト6を除いた作業機本体7をまず吊り上げ、その後にカウンタウエイト6を吊り上げて作業機本体7上にカウンタウエイト6を搭載する。また、作業具22は作業用フロント9のブームに取付けたままに吊り上げる場合と、図示のように作業用フロント9のブームから外して、クレーン62により別に吊り上げ、作業用フロント9のブームに取付ける場合とがある。
【0031】
図11は作業用フロント9のアタッチメント27を作業機本体7のブラケット26に対して連結する工程を示す図である。まず、クレーン61のワイヤロープ63により支持された作業用フロント9を吊り上げた状態でクレーン61の旋回やブーム64の伸縮あるいは起伏動作、ワイヤロープ63の巻き上げ、巻き下げにより、図11(A)に示すように、作業用フロント9に設けたアタッチメント27の凹部47をブラケット26に設けた上部ピン34の高さに合わせ、かつ凹部47をブラケット26に取付けた上部ピン34の前部に対面させる。
【0032】
次に図11(B)に示すように、クレーン61の操作と作業員による位置調整作業により凹部47を上部ピン34に嵌合する。この場合、必要に応じて作業機本体7を自走させて作業機本体7の方向や位置を調整する。続いてワイヤロープ63を巻き下げることにより、凹部47を上部ピン34に嵌合したままで図11(C)に示すようにアタッチメント27のピン孔50をブラケット26の下部ピン孔32に位置合わせし、両ピン孔34、50に下部ピン31を挿着して作業用フロント9を作業機本体7に結合する。高層建築物の場合、クレーン61上のオペレータと屋上の作業員とが無線により連絡をとりながら作業機本体7や作業用フロント9の吊り上げ、取付け作業を行なう。
【0033】
また、安全ピン37は、作業用フロント9を作業機本体7に取付けていない状態では、図2に二点鎖線で示すように、アタッチメント27に設けた退避用ねじ孔58に、取付け板52の端部に挿通するボルト53を螺合することにより、退避した姿勢に固定しておく。この場合、安全ピン37によりブラケット26とアタッチメント27を連結した状態から、ボルト57およびワッシャ55を外し、またボルト53を外し、安全ピン37をピン孔39、51からいったん引き抜き、安全ピン37の柱部37を再度ピン孔51に挿着してボルト53によりアタッチメント27に固定する。その後、柱部37aにワッシャ55をボルト57により取付けておく。
【0034】
本実施の形態においては、ブームフート部12aに設けるアタッチメント27の下部にピン孔50を設け、上部に作業機本体7側に向く凹部47を設け、作業機本体7のブラケット26に、前記ピン孔50と凹部47にそれぞれ対応して下部ピン孔32と上部ピン孔35とを設けたので、作業用フロント9をクレーン61により吊り上げた状態でクレーン61により作業用フロント9を水平移動させることによりアタッチメント27の凹部47を前記上部ピン孔35に挿着した上部ピン34に嵌合し、その後、この嵌合状態を維持した状態でクレーン61のワイヤロープ63を巻き下げてアタッチメント27のピン孔50を前記下部ピン孔32に位置合わせして両ピン孔32、50に下部ピン31を挿着することにより、短時間に少ない労力で作業用フロント9を作業機本体7に取付けることができる。すなわち特許文献1で記載した従来の作業機のように、2本のピン用ピン孔の位置合わせを行なう場合に比較して、はるかに短時間、例えば1時間程度で作業用フロント9の取付けを行なうことができる。特に高層建築物において、地上のクレーン61のオペレータと屋上の作業員とで無線により連絡を取り合いながら位置合わせする場合、この位置合わせに要する時間、労力が軽減される。
【0035】
また、特許文献2に記載のように、スタンドにより作業用フロントを自立させて作業機本体の自走と作業用フロントに設けた油圧シリンダの操作によって作業用フロントに対する作業機本体の位置合わせとピン挿着を行なう場合に比較して、スタンドや位置合わせのためのガイドローラ等を必要とせず、経済的に構成できる。また、仮に特許文献2の構成を踏襲して、作業機本体側ブラケットの下部に上向きの凹部を設け、ブラケットの上部にピン孔を設け、クレーンにより吊った状態で作業用フロントを作業機本体に取付ける場合には、最初にクレーンのワイヤロープを巻下げて凹部にアタッチメントのピンを嵌めた後に上部ピン孔の位置合わせを行なう必要があり、この位置合わせのためには作業用フロントを作業機本体側基端部が下がるように傾ける必要があるが、このように作業用フロントをクレーン操作で行なうことは非常に困難である。
【0036】
一方本願発明によれば、作業用フロント9の水平移動により凹部47を作業機本体7のブラケット26に設けた上部ピン34に嵌めた後、クレーン61のワイヤロープ63を巻き下げることにより容易に下部ピン孔32とアタッチメント27のピン孔50との位置合わせを行なうことができる。また、クレーン61により作業用フロントを吊る場合には、ワイヤロープ63により作業用フロント9が吊り下げられるので、人力による作業用フロント9の位置の多少の微調整は可能であり、位置合わせが容易となる。このため、作業機本体7の自走や作業用フロント9側油圧シリンダの操作による場合より位置合わせに要する時間や労力が軽減される。
【0037】
また、本実施の形態においては、作業機本体7に設けるブラケット26と、ブームフート部12aに設けるアタッチメント27との間を安全ピン37により着脱可能に連結したので、強い衝撃等の何らかの理由でブラケット26からアタッチメント27が外れることがなく、安全性が高まる。
【0038】
図12は本発明の作業用フロントの着脱装置、着脱方法を適用する作業機の他の例を示す側面図である。この実施の形態の作業機の作業用フロント9Aは、上部旋回体2に前記アタッチメント27と基本構造が同じアタッチメント27Aを用いて取付けられるブーム65およびブームシリンダ66と、このブーム65の先端にアームシリンダ67により回動可能に取付けられたアーム68とを備えた2ピース型のものである。この実施の形態においては、アーム68の先端にバケット69を作業具回動用油圧シリンダ70によりアームリンク71および作業具リンク72を介して回動可能に取付けている。
【0039】
図13は本発明の作業用フロントの着脱装置、着脱方法を適用する作業機の他の例を示す側面図である。この実施の形態の作業機の作業用フロント9Bは、上部旋回体2に前記アタッチメント27と基本構造が同一のアタッチメント27Bを用いて取付けられるブーム74およびブームシリンダ75と、ブーム74の先端にアームシリンダ76により回動可能に取付けられたアーム77とを備えた2ピース型のもので、ブーム74およびアーム77の長さが図12のものより短く構成されたショートリーチ型の作業用フロントである。この実施の形態においては、アーム77の先端に図1のものより大型の解体用作業具78を、作業具回動用油圧シリンダ79によりアームリンク80および作業具リンク81を介して回動可能に取付けている。このショートリーチ型のものは、ブーム74とアーム77を短くすることにより、作業具78として図1より大型のものを取付け可能とし、もって大きな破砕力が得られるようにしたものである。なお、図12、図13の作業用フロントにおいて使用する作業具は他の作業具に交換、変更が可能である。
【0040】
図14は図1の作業機で使用したアタッチメント27と図12、図13の作業機で使用したアタッチメント27Aまたは27Bとの構成を比較して示す図である。図14に示すように、アタッチメント27とアタッチメント27Aまたは27Bとでピン孔43(ブーム12または65、74に接続されるピン孔)のサイズD4、D5が異なる(D4≠D5)かまたは同一(D4=D5)とする。またピン孔46(ブームシリンダ11または66、75)のサイズD2、D3が異なる(D2≠D3)かまたは同一(D2=D3)とする。さらにピン孔43、46間の間隔L2とL3が異なる(L2≠L3)かまたは同一(L2=L3)とする。このようなピン孔43、46や間隔の如何に係らず、これらのアタッチメント27、27A、27Bの凹部47の幅t、ピン孔50の直径D1および凹部47とピン孔50との間隔L1を等しくする。このようにサイズや種類の異なる作業用フロント9、9A、9Bでアタッチメント27、27A、27Bのブラケット26に対する凹部47、ピン孔50のサイズおよび両者の間隔を等しくすることにより、いずれのアタッチメント27、27A、27Bも同じ作業機本体7に対して作業用フロント9、9A、9Bが互換性を有して取付け可能となる。なお、アタッチメント27A、27B間でピン孔43、46の直径D5、D3や間隔L3を異ならせてもよい。
【0041】
このように同じ作業機本体7に対して、ブラケット26に対する取付け部の構造が共通の複数種類の着脱用アタッチメント27、27A、27Bを用意しておき、もって複数種類の作業用フロント9、9A、9Bを交換取付け可能とすることにより、ユーザーは異なる種類の作業用フロント9、9A、9Bごとに作業機本体7を準備する必要が無くなり、ユーザーの経済的負担が軽減されると共に、異なる作業を行なうごとに同じ作業機本体7に異なる作業用フロント9、9A、9Bを取付けて作業を行なうことにより、作業機本体7の稼働率が上がり、ユーザーは工事を請け負う場合の必要経費を軽減できる。この作業用フロント9、9A、9Bの交換は、本発明の着脱用アタッチメントによる作業機本体への着脱が容易であることにより促進される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を適用する作業機の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】本発明の作業用フロントの着脱装置の一実施の形態を示す側面図である。
【図3】本実施の形態のブラケットの側面図である。
【図4】本実施の形態のブラケットの平面図である。
【図5】本実施の形態のブラケットの正面図である。
【図6】本実施の形態の着脱用アタッチメントを示す図であり、(A)は側面図、(B)は背面図、(C)は平面図、(D)は底面図、(E)は正面図である。
【図7】本実施の形態の安全ピンの取付け構造を示す縦断面図である。
【図8】本実施の形態の作業機本体の建築物屋上への吊り上げ作業状態を示す側面図である。
【図9】本実施の形態の作業用フロントの建築物屋上への吊り上げ作業状態を示す側面図である。
【図10】本実施の形態の作業用フロントの作業機本体への取付け作業状態を示す側面図である。
【図11】本実施の形態の作業用フロントの作業機本体への取付け作業工程を示す側面図である。
【図12】本発明の着脱装置、着脱方法を適用する作業機の他の例を示す側面図である。
【図13】本発明の着脱装置、着脱方法を適用する作業機の他の例を示す側面図である。
【図14】本発明において、異なる作業用フロントを同一の作業機本体に取付け可能とするための本発明によるアタッチメントの構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
1:下部走行体、2:上部旋回体、3:旋回装置、4:運転室、5:パワーユニット、6:カウンタウエイト、7:作業機本体、9、9A、9B:作業用フロント、11、13、16、19:油圧シリンダ、12、14、17:分割ブーム、12a:ブームフート部、22:解体用作業具、26:ブラケット、27、27A、27B:着脱用アタッチメント、31:下部ピン、32:下部ピン孔、34:上部ピン、35:上部ピン孔、37:安全ピン、43、46:ピン孔、42、45:ピン、47:凹部、50:ピン孔、60:コンクリート建築物、61:クレーン、62:トラック、63:ワイヤロープ、64:ブーム、65:ブーム、66:ブームシリンダ、67:アームシリンダ、68:アーム、70:作業具回動用油圧シリンダ、73:バケット、74:ブーム、75:ブームシリンダ、76:アームシリンダ、77:アーム、78:解体用作業具、79:作業具回動用油圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを有する作業用フロントを作業機本体に取付ける自走式作業機における作業用フロントの着脱装置において、
前記作業機本体の前記作業用フロント取付け用のブラケットに、下部ピン孔と、この下部ピン孔より上方でかつ作業機本体の前後方向に見て後方に上部ピン孔を設け、
一方、前記作業用フロントのブームフート部と前記作業機本体の前記作業用フロント取付け用のブラケットとを着脱用アタッチメントにより連結し、
前記着脱用アタッチメントの前記ブームフート部への取付け側の一方に前記ブームフート部にピンにより相対回動可能に連結されるピン孔を設けると共に、他方に前記ブームに取付けるブームシリンダの基端部にピンにより相対回動可能に連結されるピン孔を設け、
前記着脱用アタッチメントの前記ブラケットへの取付け側の一方に、前記作業機本体側に開口部を向けて形成され、前記上部ピン孔に挿着する上部ピンに嵌める凹部を設けると共に、他方に前記ブラケットの下部ピン孔に位置を合わせて下部ピンによりピン付けされるピン孔を設けたことを特徴とする作業用フロントの着脱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業用フロントの着脱装置おいて、
前記着脱用アタッチメントは、前記ブラケットへの取付け側に設ける前記凹部と前記ピン孔のサイズおよびその距離が同一である共に、前記ブームフート部への取付け側に設ける前記2つのピン孔のサイズあるいはその距離が異なる複数種類用意されていることを特徴とする作業用フロントの着脱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業用フロントの着脱装置において、
前記着脱用アタッチメントと前記ブラケットの上部を着脱可能に連結する安全ピンを備えたことを特徴とする作業用フロントの着脱装置。
【請求項4】
ブームを有する作業用フロントを作業機本体に取付ける自走式作業機における作業用フロントの着脱方法において、
前記作業用フロントの取付け時には、クレーンにより前記作業用フロントを吊り、前記作業用フロントを前記作業機本体に近づける方向に水平移動させて前記作業機本体の作業用フロント取付け用のブラケットの上部のピン孔に挿着した上部ピンに、前記作業用フロントのブームフート部に連結した着脱用アタッチメントの上部に設けた凹部を嵌合させ、その後、この嵌合状態を保った状態でクレーンにより前記作業用フロントを下げて前記下部ブラケットの下部に設けたピン孔に前記着脱用アタッチメントの下部に設けたピン孔の位置を合わせて両ピン孔に下部ピンを挿着することにより前記作業用フロントを前記作業機本体に取付け、
前記作業用フロントの取外し時には、クレーンにより前記作業用フロントを支持しておき、前記ブラケットの下部に設けたピン孔および前記着脱用アタッチメントの下部に設けたピン孔に挿着されていた下部ピンを抜き、クレーンにより前記作業用フロントを前記作業機本体から離す方向に水平移動させて前記着脱用アタッチメントの凹部を前記ブラケットの上部に設けたピン孔に挿着した上部ピンから離脱させることにより、前記作業用フロントを前記作業機本体から取外すことを特徴とする作業用フロントの着脱方法。
【請求項5】
請求項4に記載の作業用フロントの着脱方法において、
前記着脱用アタッチメントを、前記ブームフート部への取付け側に設ける前記2つのピン孔のサイズあるいはその距離が異なる複数種類用意することでサイズあるいは種類の異なる作業用フロントを前記作業機本体に対して取付け可能であることを特徴とする作業用フロントの着脱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−133630(P2008−133630A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319366(P2006−319366)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】