説明

作業記録解析装置、作業記録解析方法、プログラム、および記録媒体

【課題】従来の作業記録解析装置においては、容易に検出し、通知することができないという課題があった。
【解決手段】生産ライン20の生産能力情報と、各製造装置で製造された中間品が計数されるまでの所要時間の情報である無駄時間情報と、作業記録受付部103が受け付けた作業記録情報とを用いて、所定の時間間隔毎の推定生産数を算出する推定生産数算出部104と、作業記録の不備を検出するために用いられる基準値が格納され得る基準値格納部105と、生産数情報を用いて集計した集計生産数と、推定生産数との差分を、基準値と比較して、作業記録受付部103が受け付けた作業記録の不備を検出する作業記録不備検出部106と、作業記録の不備を通知する不備通知情報を構成し、出力する出力部108とを具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ライン等に対して行った作業についての作業記録を解析して、作業記録の不備の通知等を行う作業記録解析装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生産ラインにおいては、製造装置の修理等の、生産ラインを停止させるような作業が行われた場合、現場作業員が作業終了後に、作業内容を、紙や電子データの作業記録に記入していた。
【0003】
しかしながら、トラブルや故障が頻発する生産ラインでは切り目なく復旧作業が続いたり、複数の復旧作業が同時に発生することが起こる。このような現場では作業員は復旧作業に追われる結果、すべての発生現象を作業記録に残すことは難しい。また、人手で作業記録を残そうとすると、記録忘れなどが発生してしまう。そのため、作業記録に記入漏れや記入間違い等の不備が発生し、クレーム対応時や品質改善時に作業記録から原因追求できないことがある。
【0004】
一方、稼動データを収集する収集手段により停止情報(非稼働情報)を収集し、その停止情報に対して入力手段で入力された停止原因を、停止情報と対応付けて保存しておく方法や装置等が従来から提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0005】
このような従来の方法や装置等においては、停止情報に対応する停止原因がない場合、停止原因の入力漏れが発生していると判断できるので、簡単に作業記録の入力漏れを検出することができる。
【特許文献1】特開平11−188584公報(第1頁、第1図等)
【特許文献2】特開2002−202810公報(第1頁、第1図等)
【特許文献3】特開2004−54701公報(第1頁、第1図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術において、生産ラインを構成する生産設備の稼働データを収集する必要がある。既存の生産設備の稼動情報の収集を行うには、設備を改造したり、設備に装着されているプログラマブルコントローラなどのシーケンスプログラムを大幅に変更しなければならない。また、これにより、現場作業員の作業手順を変更しなければならない場合もある。従って、既存の生産設備に、このような方法や設備を導入することは、多大なコストと手間隙がかかり、容易に導入することができない。このため、従来の技術においては、入力漏れ等の作業記録の不備を、容易に検出し、通知することができない、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業記録解析装置は、1以上の製造装置により構成される生産ラインで生産された製品の生産数を計数した情報である生産数情報を取得する生産数情報取得部と、前記生産ラインの生産能力を示す情報である生産能力情報と、前記1以上の製造装置のそれぞれで製造された中間品が、前記製品となって生産数が計数されるまでの所要時間の情報である無駄時間情報とが格納され得るライン情報格納部と、前記生産ラインに対する、当該生産ラインの停止を伴う作業に関する記録である作業記録についての情報である作業記録情報を受け付ける作業記録受付部と、前記生産能力情報と、前記無駄時間情報と、前記作業記録情報を用いて、所定の時間間隔毎に推定される前記製品の生産数である推定生産数を算出する推定生産数算出部と、前記作業記録受付部が受け付けた作業記録情報の不備を検出するために用いられる基準値が格納され得る基準値格納部と、前記生産数情報を用いて取得した前記所定の時間間隔毎の生産数である集計生産数と、前記推定生産数との差分を、前記基準値と比較して、前記作業記録受付部が受け付けた作業記録情報の不備を検出する作業記録不備検出部と、前記作業記録不備検出部が前記作業記録情報に不備を検出した場合に、前記作業記録情報に対応した作業記録の不備を通知する不備通知情報を構成し、出力する出力部とを具備する作業記録解析装置である。
【0008】
かかる構成により、生産設備等を変更したりする必要がなく、記載の不備を容易にかつ安価に検出することができる。
【0009】
また、本発明の作業記録解析装置は、前記作業記録解析装置において、前記作業記録不備検出部は、前記推定生産数の値から、前記集計生産数の値を減算した値が、前記基準値よりも大きい場合に、前記作業記録情報の不備である作業記録情報の記入漏れがあることを検出し、前記出力部は、前記作業記録情報に対応した作業記録の記入漏れを通知する情報を含む前記不備通知情報を出力する作業記録解析装置である。
【0010】
かかる構成により、一時停止の影響を取り除いて、作業の記入漏れを判断することができる。
【0011】
また、本発明の作業記録解析装置は、前記作業記録解析装置において、前記作業記録不備検出部は、前記集計生産数の値から、前記推定生産数の値を減算した値が、前記基準値よりも大きい場合に、前記作業記録情報の不備である作業記録情報の記入間違いがあることを検出し、前記出力部は、前記作業記録情報に対応した作業記録の記入間違いを通知する情報を含む前記不備通知情報を出力する作業記録解析装置である。
【0012】
かかる構成により一時停止の影響を取り除いて、作業の記入間違いを判断することができる。
【0013】
また、本発明の作業記録解析装置は、前記作業記録解析装置において、前記作業記録不備検出部は、不備を検出した場合に、前記推定生産数の値と前記集計生産数の値との差分から、前記基準値を減算した値を、前記生産能力情報の値で除算して、前記作業記録の不備が発生している時間である不備時間を算出し、前記出力部は、前記不備時間の情報を含む前記不備通知情報を出力する作業記録解析装置である。
【0014】
かかる構成により、作業者に作業記録に不備が発生している時間を知らせることができ、この不備時間を手がかりに、作業者は作業内容を思い出すことができ、作業記録の不備の修正を補助することが可能となり、修正を容易にすることができる。
【0015】
また、本発明の作業記録解析装置は、前記作業記録解析装置において、前記作業記録不備検出部は、前記所定の時間間隔毎の作業記録情報の不備を検出し、当該作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の開始時刻および終了時刻と、前記無駄時間情報とを用いて、前記作業記録における不備の発生している時刻の範囲を示す情報である発生時刻範囲情報を算出する発生時刻算出部を更に具備し、前記出力部は、前記発生時刻算出部が算出した発生時刻範囲情報の示す時刻の範囲を通知する情報を含む前記不備通知情報を出力する作業記録解析装置である。
【0016】
かかる構成により、作業者が作業記録に不備が発生している時刻を知ることができ、これを手がかりに、作業者が不備の修正を容易に行うことが可能となる。
【0017】
また、本発明の作業記録解析装置は、前記作業記録解析装置において、前記発生時刻算出部は、前記作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の開始時刻から、前記1以上の製造装置の全てについての無駄時間情報のうちの最大値を減算し、前記作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の終了時刻から、前記1以上の製造装置の全てについての無駄時間情報のうちの最小値を減算して、前記発生時刻範囲情報を算出する作業記録解析装置である。
【0018】
かかる構成により、作業者が作業記録の不備が発生した時刻を知ることができ、これを手がかりに、作業記録の不備の修正を容易に行うことができる。
【0019】
また、本発明の作業記録解析装置は、前記作業記録解析装置において、前記発生時刻算出部は、前記作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の開始時刻および終了時刻から、前記1以上の製造装置に対応した前記無駄時間情報をそれぞれ減算して、前記1以上の製造装置のそれぞれについての前記発生時刻範囲情報を算出する作業記録解析装置である。
【0020】
かかる構成により、作業者に、各製造装置別に、作業記録の不備が発生したと考えられる時刻を提示することができ、これを手がかりに、作業者に、それぞれの時刻に行った作業を容易に思い出させることができる。
【0021】
また、本発明の作業記録解析装置は、前記作業記録解析装置において、前記基準値は、前記生産ラインの所定の時間間隔あたりの一時停止の発生回数と、当該一時停止の平均時間との積を用いて設定された値である作業記録解析装置である。
【0022】
かかる構成により、一時停止の影響を取り除いて、作業の記入間違いを精度良く判断することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による作業記録解析装置等によれば、作業記録についての不備を、容易に検出し、通知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、作業記録解析装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0025】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における生産システムの構成の概略を示す概念図である。本生産システムは、作業記録解析装置10と、製造装置D1〜D5と、生産数計数装置Cとを備えている。作業記録解析装置10と生産数計数装置Cとは、例えば、通信可能なように、通信回線等を介して接続されている。
【0026】
製造装置D1〜D5は、電気機器や機械やその他の製品や部品等を生産する装置であり、その構成やその製造する物品は問わない。ここでは、製造装置D1〜D5および生産数計数装置Cが、所定の製品を製造する生産ライン20を構成している。製造装置D1〜D5は、例えばベルトコンベア等の搬送路によって連結されており、搬送路で搬送されてきた部品や半製品に対して、予め決められた手順で加工や組み立て等の処理を行う。なお、ここでは、説明の便宜上、製造装置D5で製造され、生産数計数装置Cにおいて計数されるものを製品と呼び、製品になる前の部品や半製品を中間品と呼ぶ。したがって、ここで言う製品は、最終完成品に限定されず、中間品も含む。中間品の場合は、本生産システムの後工程でさらに加工や組立が行われ、最終完成品となる。通常、各製造装置D1〜D5は、それぞれ前段の製造装置から搬送される中間品を待つ状態が発生しないように、処理速度がコントロールされ、生産ライン20のタクトバランスが保たれている。製造装置D1〜D5の行う処理の内容は、図示しない受付部が受け付ける指示等により設定可能である。例えば、曲げ、圧力、温度等の加工条件を変更することにより、製品の形状寸法や、動作特性等の、製品の品質を変更可能である。ここで述べる品質は、製品の特性等も含む概念である。各製造装置D1〜D5は、通常は異なる処理を行う異なる装置であるが、各製造装置D1〜D5は、同じ処理を行っても良いし、同じ装置であっても良い。なお、ここでは、製造装置が5つの場合について説明しているが、製造装置は1以上であれば、その数は問わない。また、ここでは、製造装置D1から、製造装置D2、製造装置D3、製造装置D4、製造装置D5の順に、製品を製造する処理が行われ、製造装置D5から最終的な製品が搬出されるようにしているが、各製造装置の配置順等は、製造する製品等により、適宜設定される。
【0027】
生産数計数装置Cは、生産される製品の数を計数(カウント)する。ここでは、生産ラインにより生産された製品の生産数、具体的には製造装置D5で製造されて搬出された製品の数を計数する。生産数計数装置Cは、例えば、赤外線センサー等のセンサー等を用いて、当該センサー等により検出可能な位置を通過した製品の数をカウントする。なお、生産数を計数する構成については、一般的な生産ラインにおいて、生産数の計数に利用されている生産数計数装置のさまざまな構成が利用可能である。生産数計数装置Cは、通常、製品を一つカウントする毎に、生産数を示す計数値を1インクリメントし、この生産数を示す計数値を含む情報である生産数情報を構成する。また、この生産数情報には、計数を行った時刻の情報を含めるようにすることが好ましい。例えば、生産数計数装置Cは、製品をカウントした際の時刻の情報を、例えば、図示しない時計等から取得し、生産数の計数値と対応付けて、生産数情報を構成する。生産数計数装置Cは、構成した作業記録解析装置10に送信する。生産数計数装置Cが作業記録解析装置10に生産数情報を送信するタイミングやトリガー等は問わない。生産数計数装置Cは、生産数情報を構成するごとに、この生産数情報を送信しても良いし、生産数情報を図示しない記録媒体等に順次蓄積し、生産数情報を出力する指示を受け付けた場合に、生産数情報を送信するようにしても良い。なお、生産数情報を、送信する代わりに、着脱可能な記録媒体等に、生産数情報を順次蓄積するようにしても良い。なお、生産数計数装置Cについては、通常の生産ライン等で生産数の計数に利用されている計数装置と同様の構成を有しているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0028】
図2は、作業記録解析装置10の構成を示すブロック図である。
【0029】
作業記録解析装置10は、生産数情報取得部101、ライン情報格納部102、作業記録受付部103、推定生産数算出部104、基準値格納部105、作業記録不備検出部106、発生時刻算出部107、出力部108を具備する。
【0030】
生産数情報取得部101は、複数の製造装置D1〜D5および生産数計数装置Cにより構成される生産ライン20で生産された製品の生産数を計数した情報である生産数情報を取得する。生産数情報取得部101は、生産ライン20の生産数計数装置Cから、直接、または間接的に、生産数情報を取得する。生産数情報取得部101が、生産数情報を取得する方法は問わない。生産数情報取得部101は、生産ライン20の生産数計数装置Cから、生産数情報を受信しても良いし、着脱可能なメモリやディスク等の記録媒体に記録された生産数情報を読み出しても良い。ここでは、例として、生産数情報取得部101が、生産数計数装置Cから送信される生産数情報を取得する場合について説明する。生産数情報取得部101は、取得した生産数情報等を、図示しないメモリ等の記録媒体に一時記憶する。また、生産数情報取得部101は、生産数計数装置Cから、計数が行われるごとに生産数情報が送信される場合において、生産数情報に計数を行った時刻情報が含まれていない場合に、生産数情報を受信した時刻情報と、生産数情報とを対応付けて記憶しても良い。生産数情報取得部101は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。また、生産数情報取得部101は、受信を行うための通信手段を備えていても良い。生産数情報取得部101の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0031】
ライン情報格納部102は、生産ライン20の生産能力を示す情報である生産能力情報と、複数の製造装置D1〜D5のそれぞれで製造された中間品が、製品となって生産数が計数されるまでの所用時間である無駄時間を示す情報である無駄時間情報とを格納している。生産能力とは具体的には、生産ライン20の所定の時間あたりの生産数であり、生産能力情報は、その所定の時間あたりの生産数を示す情報である。例えば、生産能力は、35(個/分)等で表される。生産能力情報は、通常ラインタクトと呼ばれる。無駄時間とは、各製造装置D1〜D5のそれぞれで製造された中間品が、最終的に製品となって、生産数計数装置Cで計数されるまでに要する時間であり、無駄時間情報は無駄時間を示す情報である。例えば、製造装置3についての無駄時間は、製造装置D3で製造された中間品が、製造装置D4および製造装置D5を経て製品となり、生産数計数装置Cで計数されるまでの時間である。通常、タクトバランスが保たれている生産ラインにおいて、一つの製造装置が停止すると、他の製造装置も停止するが、製品の生産ロスを減らすため、停止した製造装置よりも後段の製造装置については、それぞれ、停止した製造装置により停止前に製造された中間品の全てについての処理が終了後に停止する。すなわち、停止した製造装置により停止前に製造された中間品の全て、言い換えれば停止した製造装置以降の搬送路上にある中間品の全てが、停止した製造装置よりも後段の製造装置による処理によって製品となって生産数計数装置Cでカウントされるまでは生産ライン20全体は停止しない。したがって、上述した無駄時間は、言い換えれば、各製造装置D1〜D5のそれぞれが停止してから、生産ライン20が停止するまでの時間となる。ライン情報格納部102には、各製造装置D1〜D5に対応した無駄時間情報が格納されている。具体的には、各製造装置D1〜D5を識別する情報である製造装置識別情報と、各製造装置D1からD5に対応する無駄時間情報とが対となって格納されている。製造装置識別情報は製造装置の名称や、製造番号等である。ライン情報格納部102には、生産能力情報および無駄時間情報が、工場出荷時等に予め格納されていても良いし、図示しない受付部等が適宜受け付けたものが蓄積されても良い。生産能力情報および無駄時間情報は、生産ライン20を用いた実験等により求めても良いし、生産ラインの設計値等から算出して求めても良い。ライン情報格納部102は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。不揮発性の記録媒体でも、揮発性の記録媒体でも良い。なお、ライン情報格納部102を、物理的に異なる複数の記録媒体等により構成するようにし、生産能力情報と、無駄時間情報とが、異なる記録媒体に格納されているようにしてもよい。
【0032】
作業記録受付部103は、生産ライン20に対する、当該生産ライン20の停止を伴う作業に関する記録である作業記録についての情報である作業記録情報を受け付ける。「生産ライン20に対する、当該生産ライン20の停止を伴う作業」とは、具体的には生産ライン20を構成する各製造装置D1〜D5のいずれか一つを停止させる必要がある作業である。各製造装置D1〜D5を停止させることにより、上述したように、停止した時刻に、停止した製造装置についての無駄時間を加算した時刻後に、結果的に生産ライン20全体が停止する。作業記録とは、具体的には、作業者等が、実施した作業について記入した記録であり、例えば、作業開始時刻や作業時間や作業対象となる製造装置や作業者名や作業内容等の記録である。また、作業記録情報はこのような作業記録を示す情報であり、具体的には、生産ライン20に対して行われた生産ライン20の停止を伴う作業の開始時刻および作業時間が特定できる情報と、作業対象となる製造装置の製造装置識別情報とを含む。製造装置識別情報は結果として製造装置が識別できれば、例えば、製造装置の配置されている場所の情報等であっても良い。また、作業記録情報は、作業内容の情報を含むようにすることが好ましい。開始時刻および作業時間が特定できる情報とは、例えば、開始時刻の情報と終了時刻の情報とを組み合わせた情報であっても良いし、開始時刻または終了時刻の情報と作業時間の情報とを組み合わせた情報であっても良い。作業内容とは、修理、交換、調整等の、製造装置に対して行われた作業の名称等である。作業記録受付部103は、作業記録情報をどのように受け付けても良い。例えば、作業記録を受け付ける入力画面等から作業記録情報を受け付けても良い。また、予め、作業管理情報を管理するアプリケーションや、ワープロ等により、テキスト情報等の電子データとしてメモリ等に蓄積されている作業記録情報を、読み出して受け付けても良い。また、作業記録紙等に作業者が記録した作業記録情報をOCR等により読み出しても良い。作業記録情報の入力手段は、テンキーやキーボードやマウスやメニュー画面によるもの等、何でも良い。作業記録受付部103は、テンキーやキーボード等の入力手段のデバイスドライバーや、メニュー画面の制御ソフトウェア等で実現され得る。
【0033】
推定生産数算出部104は、生産能力情報と、無駄時間情報と、作業記録情報を用いて、所定の時間間隔毎に推定される製品の生産数である推定生産数を算出する。推定生産数算出部104は、ライン情報格納部102に格納されている無駄時間情報と作業記録受付部103が受け付けた作業記録情報とから、所定の時間間隔毎の生産ライン20の停止時間の合計を算出し、この停止時間を所定の時間間隔から減算することで、所定の時間間隔当たりの生産時間を算出する。そして、この算出した生産時間に対して、ライン情報格納部102に格納されている生産能力情報を乗算することで、所定の時間間隔毎に生産されたと推定される製品の生産数を算出する。所定の時間間隔は、一定の所定の時間間隔であっても、不定の所定の時間間隔であっても良い。推定生産数算出部104が推定生産数を算出する具体的な処理については後述する。推定生産数算出部104は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。推定生産数算出部104の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0034】
基準値格納部105は、作業記録受付部103が受け付けた作業記録情報の不備を検出するために用いられる基準値が格納されている。基準値は、例えば、作業記録情報を用いて算出された所定の時間間隔毎の推定生産数と、所定の時間間隔毎の製品の生産数との差分が、作業記録の不備によって発生したものであるか否かを判断するために用いられる値である。例えば、生産ラインにおいては、製品詰まり等により、作業記録に記録されない1分程度の生産ラインの一時停止が数回発生し得ることから、作業記録が正確に記録されていても、このような一時停止が発生した分だけ、推定生産数よりも、製品の計数生産数が減少する可能性がある。このため、所定の時間間隔当たりの、このような一時停止によって生産されなかったと考えられる製品数を、基準値に設定することにより、推定生産数と製品の生産数情報との差分が、基準値以内であれば、作業記録に不備がないと判断可能となる。具体例としては、生産ライン20の所定の時間間隔あたりの一時停止の発生回数と、当該一時停止に要する平均時間との積を算出し、これを基準値に設定して、基準値格納部105に格納しておく。このとき、発生回数と平均時間の積に対して、不備の検出精度を高めたり低くしたりするために、所望の値を加算したり、乗算したりしてもよい。なお、一時停止の発生回数や、一時停止の平均時間等は、生産ライン20を用いた実際に測定した情報等を用いて求めても良いし、生産ラインの設計値等から算出して求めても良い。また、生産ライン20の所定の時間間隔当たりに発生した一時停止の時間の実測値の合計の平均値を、基準値に設定しても良い。このような基準値は、図示しない受付部等から受け付けたものが、基準値格納部105に蓄積されてもよいし、工場出荷時等に予め基準値格納部105に格納されているようにしてもよい。この基準値は所定の時間間隔に対応して設定される。基準値格納部105は、不揮発性の記録媒体が好適であるが、揮発性の記録媒体でも実現可能である。不揮発性の記録媒体でも、揮発性の記録媒体でも良い。
【0035】
作業記録不備検出部106は、生産数情報取得部101が取得した生産数情報を用いて取得した所定の時間間隔毎の生産数である集計生産数と、推定生産数算出部104が算出した推定生産数との差分と、基準値格納部105に格納されている基準値とを比較して、作業記録受付部103が受け付けた作業記録情報の不備を検出する。作業記録情報の不備とは、具体的には、作業記録情報の記入漏れや作業記録情報の記入間違いである。作業記録情報の不備とは、実質的には、作業記録情報に対応した作業記録の不備のことである。集計生産数とは、所定の時間間隔内に製造された製品の数を集計した値、もしくはこれに相当する値である。ここでは、作業記録不備検出部106は、生産数情報取得部101が取得した生産数情報を用いて集計生産数を算出する。ただし、結果として、集計生産数が取得できれば、作業記録不備検出部106がどのように生産数情報を用いて、集計生産数を取得するかは問わない。例えば、生産数情報が有している時刻情報を利用することにより、それぞれの所定の時間間隔内に含まれる生産数情報を検出できることから、時刻情報を用いて生産数情報取得部101がメモリ等に格納されている生産数情報のうち、所定の時間間隔毎の生産数情報数を計数して、この計数により得られた値を、集計生産数としてもよい。また、生産数情報が有している時刻情報を利用することにより、各所定の時間間隔の開始時刻等から、各所定の時間間隔が開始される直前、直後等に得られた生産数情報を検出することができるため、これらの生産数情報の計数生産数の値を演算して、集計生産数を得ても良い。例えば、一つの所定の時間間隔が終了する直前の生産数情報の計数生産数の値から、その所定の時間間隔が開始される直前の計数生産数の値を減算した値を、集計生産数としても良い。集計生産数は、具体的には、所定の時間間隔毎の製品の生産数の値である。作業記録不備検出部106は、具体例としては、推定生産数算出部104が算出した推定生産数の値から、当該作業記録不備検出部106が取得した集計生産数の値を減算した値が、基準値格納部105に格納されている基準値よりも大きい場合に、作業記録情報の不備である作業記録情報の記入漏れがあったことを検出する。ここで作業記録不備検出部106が検出できる記入漏れは、例えば、作業記録に作業が行われたことが全く記入されていないことや、作業記録に記入されている作業時間が実際よりも短く記入されていることや、作業が行われた時間についての情報が記入されていないこと等である。また、作業記録不備検出部106は、取得した集計生産数の値から、推定生産数算出部104が算出した推定生産数の値を減算した値が、基準値格納部105に格納されている基準値よりも大きい場合に、作業記録の不備である作業記録の記入間違いがあったことを検出する。ここで作業記録不備検出部106が検出できる記入漏れは、例えば、作業記録に実際に行われていない作業等の記録が記入されていることや、作業記録に記入されている作業時間が実際よりも長く記入されていること等である。なお、作業記録不備検出部106は、記入漏れと記入誤りの両方を検出しても良いし、いずれか一方のみを検出しても良い。また、作業記録不備検出部106は、作業記録情報の不備が、記入漏れまたは記入誤りのいずれであるかを示す検出結果として出力してもよいし、単に記入漏れと記入誤りとのいずれを検出した場合においても、作業記録に不備があることを示す検出結果を出力しても良い。また、作業記録不備検出部106は、不備を検出した場合に、不備を検出した所定の時間間隔についての推定生産数と集計生産数との差分から、基準値格納部105に格納されている基準値を減算して得られた値を、ライン情報格納部102に格納されている生産能力情報の値で除算して、作業記録の不備が発生している時間である不備時間を算出するようにしてもよい。なお、ここでの差分は、両者の差の絶対値としても良い。作業記録不備検出部106は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。作業記録不備検出部106の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0036】
発生時刻算出部107は、作業記録不備検出部106が不備を検出した所定の時間間隔の開始時刻および終了時刻と、ライン情報格納部102に格納されている無駄時間情報とを用いて、作業記録情報における不備の発生している時刻の範囲を示す情報である発生時刻範囲情報を算出する。例えば、発生時刻算出部107は、作業記録不備検出部106が不備を検出した所定の時間間隔の開始時刻から、複数の製造装置D1〜D5の全てについての無駄時間情報のうちの最大値を減算して、不備の発生している時刻の範囲についての、始まりの時刻の情報を得る。また、作業記録不備検出部106が不備を検出した所定の時間間隔の終了時刻から、複数の製造装置D1〜D5の全てについての無駄時間情報のうちの最小値を減算して、不備の発生している時刻の範囲についての、終わりの時刻の情報を得る。このようにして得られた始まりの時刻の情報と、終わりの時刻の情報とを、発生時刻範囲情報とする。また、以下のように、各製造装置D1〜D5毎の発生時刻範囲情報を算出しても良い。すなわち、発生時刻算出部107は、作業記録不備検出部106が不備を検出した所定の時間間隔の開始時刻から、複数の製造装置D1〜D5のそれぞれに対応した無駄時間情報をそれぞれ減算して、各製造装置D1〜D5毎の、不備の発生している時刻の範囲についての、始まりの時刻の情報を得る。また、作業記録不備検出部106が不備を検出した所定の時間間隔の終了時刻から、複数の製造装置D1〜D5のそれぞれに対応した無駄時間情報をそれぞれ減算して、各製造装置D1〜D5毎の、不備の発生している時刻の範囲についての、終わりの時刻の情報を得る。このようにして得られた始まりの時刻の情報と、終わりの時刻の情報とを、各製造装置D1〜D5の発生時刻範囲情報としてもよい。発生時刻算出部107は、通常、MPUやメモリ等から実現され得る。発生時刻算出部107の処理手順は、通常、ソフトウェアで実現され、当該ソフトウェアはROM等の記録媒体に記録されている。但し、ハードウェア(専用回路)で実現しても良い。
【0037】
出力部108は、作業記録不備検出部106が作業記録情報に不備を検出した場合に、作業記録情報に対応した作業記録の不備を通知する不備通知情報を構成し、出力する。出力部108は、作業記録情報の不備の内容に応じた出力を行うようにしてもよいし、単に不備があることだけを示す通知を出力しても良い。出力部108は、例えば、作業記録不備検出部106が作業記録の記入漏れを検出した場合に、作業記録の記入漏れを通知する情報を含む不備通知情報を構成し、出力する。また、出力部108は、例えば、作業記録不備検出部106が作業記録の記入間違いを検出した場合に、作業記録の記入間違いを通知する情報を含む不備通知情報を出力する。また、作業記録不備検出部106が、不備情報を算出した場合、作業記録の不備に加えて、この不備情報を含む不備通知情報を構成し、出力しても良い。また、出力部108は、作業記録の不備の通知に加えて、発生時刻算出部107が算出した発生時刻範囲情報の示す時刻の範囲を通知する情報を含む不備通知情報を構成し、出力してもよい。出力部108の構成する不備通知情報は、作業記録の不備等が通知可能なものであれば、数字やテキスト情報であっても良いし、画像情報であっても良いし、チャートやグラフ等を含む情報であっても良い。特に、出力部108は、不備の発生した時刻等を横軸を時刻に設定したチャートやグラフや表で表す場合に、発生時刻範囲情報の示す時刻の範囲を矢印や線等の記号を用いて示してもよいし、その範囲を背景色や、背景パターン等を変更して表示しても良い。ここで述べる出力とは、ディスプレイへの表示、プリンタによる紙等への印字、音出力、外部の装置への送信等を含む概念である。出力部108は、ディスプレイやプリンタ等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えても良い。出力部108は、出力デバイスのドライバーソフトまたは、出力デバイスのドライバーソフトと出力デバイス等で実現され得る。また、出力部108は不備通知情報を構成するための、MPUやメモリ等を備えていても良い。
【0038】
次に、本実施の形態の生産システムの動作について説明する。
【0039】
まず、生産ライン20の動作について説明する。生産ライン20は、各製造装置D1〜D5が、中間品を用いた製造を順次行うとともに、生産数計数装置Cは、製造された製品の数を計数し、計数の結果と、計数した時刻の情報とを含む計測生産数情報を順次構成する。そして構成した生産数情報を作業記録解析装置10に送信する。また、製造装置D1〜D5のいずれかを停止させた場合、停止した製造装置の後段の製造装置は、停止した製造装置が停止前に製造していた中間品の全てに対して、それぞれの処理を行った後に順次停止する。
【0040】
次に、作業記録解析装置10の動作について図3のフローチャートを用いて説明する。なお、ここでは、生産ライン20から出力された複数の生産数情報が、予め、生産数情報取得部101により取得され、メモリ等に記録されているものとする。
【0041】
(ステップS301)作業記録受付部103は、作業記録情報を受け付ける。
【0042】
(ステップS302)推定生産数算出部104は、ステップS301において受け付けた作業記録情報に対応した無駄時間を、ライン情報格納部102に格納されている無駄時間情報から取得する。具体例としては、推定生産数算出部104は、各作業記録情報に含まれる、作業対象となる製造装置を識別する製造装置識別情報を検索キーとして、この検索キーと一致する製造装置識別情報に対応付けられた無駄時間を無駄時間情報から検索し、取得する。
【0043】
(ステップS303)推定生産数算出部104は、ステップS301において受け付けた作業記録情報と、ステップS302で読み出した無駄時間情報とを用いてロス時刻を算出する。ロス時刻とは、作業記録情報を用いて算出される、生産数計数装置Cが製品の計数を行っていなかったと推定される期間を特定可能な時刻、例えば開始時刻等のことである。例えば、通常、生産数計数装置Cが計数を行わなかった時間は、所望の製造装置に対して行われた作業に要した時間と同じとなるため、作業記録情報が、所望の製造装置を対象として行われた作業の開始時刻と、作業に要した時間の情報を含む場合には、ロス時刻としては、生産数計数装置Cが製品の計数を行わなかったと推定される開始時刻だけを算出する。具体的には、各製造装置が作業により停止してから、その停止した製造装置に対応した無駄時間だけ遅れた時刻から生産数計数装置Cの製品のカウントが停止することとなる。このため、例えば、ステップS302の検索により得られた無駄時間を、作業記録情報のレコードのうちの、検索に用いた製造装置識別情報に対応したレコードに含まれる作業開始時刻から減算することで、ロス時刻を取得する。
【0044】
(ステップS304)推定生産数算出部104は、生産ライン20により生産が行われた期間において、所定の時間間隔毎に含まれている総ロス時間を、ステップS303において取得されたロス時刻を用いて算出し、所定の時間間隔から減算することで、所定の時間間隔毎の生産時間を算出する。総ロス時間とは、製品が製造されなかった時間である。ここでは、総ロス時間を、作業に伴う製造装置の停止によって、生産数計数装置Cによる計数が行われなかった時間であるロス時間の、所定の時間間隔毎の合計として算出する。例えば、所定の時間間隔により決定された時間が、13時から14時までであったとし、ロス時刻が、13時45分から14時10分までであったとすると、13時から14時までの総ロス時間は、13時45分から14時00分までの15分間となり、生産時間は、45分間となる。
【0045】
(ステップS305)推定生産数算出部104は、ライン情報格納部102に格納されている生産能力情報を取得し、この生産能力情報とステップS304で取得した生産時間とを用いて、所定の時間間隔毎の推定生産数を算出する。具体的には、生産能力情報の示す所定の時間あたりの生産数を示す値を、生産時間に乗算して、推定生産数を算出する。
【0046】
(ステップS306)作業記録不備検出部106は、生産数情報取得部101が取得した生産数情報を用いて、所定の時間間隔毎の製品の生産数である集計生産数を取得する。具体例としては、各所定の時間間隔の終了時の直前に取得された生産数情報に含まれる計数値から、各所定の時間間隔の開始時の直前に取得された生産数情報に含まれる計数値を減算して、所定の時間間隔毎の集計生産数を取得する。また、各所定の時間間隔内に含まれる生産数情報の数をカウントして集計生産数を取得しても良い。取得した集計生産数は例えば図示しないメモリ等に一時記憶しておく。
【0047】
(ステップS307)作業記録不備検出部106は、カウンターKに1を代入する。
【0048】
(ステップS308)作業記録不備検出部106は、作業記録情報の記入対象となる期間内に、K番目の所定の時間間隔が存在するか否かを判断する。例えば、作業記録の記録対象となる期間、具体例としては作業者の勤務時間が、時刻が8時から20時までの時間であり、所定の時間間隔が1時間であったとすると、K=1番目の所定の時間間隔は、時刻が「8:00から9:00」までの時間となり、K=2番目の所定の時間間隔は、時刻が「9:00から10:00」までの時間となる。存在する場合、ステップS309に進み、存在しない場合、ステップS317に進む。
【0049】
(ステップS309)作業記録不備検出部106は、ステップS305において取得された推定生産数と、ステップS306で取得された集計生産数とから、K番目の所定の時間間隔についての推定生産数と、集計生産数とを取得する。
【0050】
(ステップS310)作業記録不備検出部106は、ステップS309で取得された推定生産数から、ステップS309で取得された集計生産数を減算する。
【0051】
(ステップS311)作業記録不備検出部106は、基準値格納部105から基準値を取得し、ステップS310の減算の結果得られた差が、基準値より大きいか否かを判断する。大きい場合、ステップS312に進み、大きくない場合、ステップS318に進む。
【0052】
(ステップS312)作業記録不備検出部106は、K番目の所定の時間間隔内に作業記録の記入漏れがあることを検出する。
【0053】
(ステップS313)作業記録不備検出部106は、ライン情報格納部102に格納されている生産能力情報を読み出し、ステップS309で取得された推定生産数から、ステップS309で取得された集計生産数を減算して得られた値を、読み出した生産能力情報が示す値で除算してK番目の所定の時間間隔内における不備時間を算出する。
【0054】
(ステップS314)発生時刻算出部107は、ステップS312において不備を検出したK番目の所定の時間間隔の開始時刻および終了時刻と、ライン情報格納部102に格納されている無駄時間情報とを用いて、生産ライン20全体についての不備の発生している時刻の範囲を示す発生時刻範囲情報または各製造装置D1〜D5毎の発生時刻範囲情報の少なくとも一方を算出する。
【0055】
(ステップS315)作業記録不備検出部106は、記入漏れの検出結果と、発生時刻算出部107が算出した発生時刻範囲情報とを対応づけて、図示しないメモリ等に蓄積する。
【0056】
(ステップS316)作業記録不備検出部106はカウンターKを1インクリメントする。そして、ステップS308に戻る。
【0057】
(ステップS317)出力部108は、メモリ等に格納されている記入漏れの検出結果や、発生時刻範囲情報等を用いて、不備通知情報を構成し、ディスプレイ等の出力デバイスに出力する。そして、処理を終了する。なお、作業記録に不備が検出されなかった場合、不備がない旨を示す出力を行うようにしても良いし、出力を行わないようにしても良い。
【0058】
(ステップS318)作業記録不備検出部106は、ステップS309で取得された集計生産数から、ステップS309で取得された推定生産数を減算する。
【0059】
(ステップS319)作業記録不備検出部106は、基準値格納部105から基準値を取得し、ステップS318の減算の結果得られた差が、基準値より大きいか否かを判断する。大きい場合、ステップS320に進み、大きくない場合、ステップS316に進む。
【0060】
(ステップS320)作業記録不備検出部106は、K番目の所定の時間間隔内に作業記録の記入間違いがあることを検出する。
【0061】
(ステップS321)作業記録不備検出部106は、ライン情報格納部102に格納されている生産能力情報を読み出し、ステップS309で取得された集計生産数から、ステップS309で取得された推定生産数を減算して得られた差分を、読み出した生産能力情報が示す値で除算してK番目の所定の時間間隔内における不備時間を算出する。
【0062】
(ステップS322)発生時刻算出部107は、ステップS320において不備を検出したK番目の所定の時間間隔の開始時刻および終了時刻と、ライン情報格納部102に格納されている無駄時間情報とを用いて、生産ライン20全体についての不備の発生している時刻の範囲を示す発生時刻範囲情報または各製造装置D1〜D5毎の発生時刻範囲情報の少なくとも一方を算出する。
【0063】
(ステップS323)作業記録不備検出部106は、記入間違いの検出結果と、発生時刻算出部107が算出した発生時刻範囲情報とを対応づけて、図示しないメモリ等に蓄積する。そして、ステップS316に進む。
【0064】
なお、図3のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0065】
以下、本実施の形態における作業記録解析装置の具体的な動作について説明する。作業記録解析装置の概念図は図1である。
【0066】
図1に示すような自動組み立て工程等の生産ライン20においては、各製造装置D1〜D5は、ベルトコンベア等の搬送路で連結されているものとする。また、この工程においては、製品を処理する処理速度が図示しない制御装置等でコントロールされ、各製造装置D1〜D5においては、手待ち状態が発生しないようにタクトバランスが保たれているものとする。
【0067】
この生産ライン20により、複数の製品が生産されると、生産数計数装置Cにより、製品の生産数が順次カウントされ、そのカウント結果を用いて構成された生産数情報が、作業記録解析装置10に送信される。そして、送信された生産数情報が生産数情報取得部101により受信され、メモリやハードディスク等に蓄積される。
【0068】
図4は生産数情報取得部101により取得された生産数情報を管理するための生産数情報管理表を示す図である。生産数情報管理表は、「生産数」と、「時刻」という情報を有している。「生産数」は、生産数計数装置Cのカウント値であり、通常は連続した値である。また、「時刻」は、生産数計数装置Cがカウントを行った時刻である。生産数情報管理表における各行が、1回のカウントにより構成される一つの生産数情報である。
【0069】
次に作業記録解析装置10に、ユーザが帳票等に手書きで記録した作業記録情報を入力端末やキーボード等を用いて入力したとすると、作業記録受付部103が作業記録情報を受け付ける。受け付けた作業記録情報は、図示しないメモリ等に蓄積される。
【0070】
図5は、作業記録受付部103が受け付けた作業記録情報を示す図である。作業記録情報には、「勤怠時間」と、「勤怠時間」内に行った作業の「作業開始時刻」と、「作業時間」と、「作業場所」と、「作業内容」が記載されている。「勤怠時間」とは作業者の勤務時間である。「作業開始時刻」は、作業を開始した時刻である。「作業時間」とは、作業に要した時間である。ここでの作業は、上述したように、製造装置の停止を伴う作業である。「作業場所」とは、ここでは、作業対象となる製造装置のことであり、製造装置識別情報である装置の名称が入力される。ここでは、製造装置D1〜D5の名称が、それぞれ設備1〜5という名称であるとする。「作業内容」は作業の内容を示す情報である。
【0071】
なお、作業記録情報は、キーボード等を用いて入力された作業記録を、データベース等に蓄積する装置である作業記録装置等がある場合、この作業記録情報が蓄積されたデータベースから自動入力させるようにしてもよいし、上述したように、人が作業記録の手書き帳票を読み取り、入力端末を使って直接入力しても良い。
【0072】
図6はライン情報格納部102に格納されている無駄時間情報と、生産能力情報とを管理する管理表を示す図である。無駄時間情報は、「装置名」と、「無駄時間」という属性を有している。「装置名」は、製造装置D1〜D5の名称である。「無駄時間」は、製造装置が停止してから、製品の計数が停止するまでに要する時間である。生産能力情報(ラインタクト)は、ここでは、生産ライン20の1分間当たりの生産量である。無駄時間と生産能力情報は生産ライン20のライン設計値を用いてもよいが、生産ライン20を用いて、ライン実験を行い、実験結果から統計処理により、あらかじめ求めるようにしてもよい。
【0073】
つぎに、推定生産数算出部104は、作業記録情報と無駄時間情報と生産能力情報とを用いて所定の時間間隔毎の製品の生産数を推定する処理を行う。
【0074】
具体的には、推定生産数算出部104は、図5に示したような作業記録情報の一のレコードについて、当該レコードに含まれている「作業場所」属性の製造装置識別情報である製造装置の装置名を検索キーとして、この検索キーと一致する装置名を「装置名」属性に有するレコードを、図6に示した無駄時間情報において検索し、検索されたレコードに含まれる無駄時間を取得する。そして、検索により得られた無駄時間を、その作業記録情報のレコードの「作業開始時刻」の属性値から減算することで、作業記録情報に対応したロス時刻を算出する。この処理を、図5に示したような作業記録情報の各レコードについて繰り返す。取得したロス時刻の情報は、図示しないメモリ等に蓄積する。
【0075】
図7は、推定生産数算出部104が算出したロス時刻の上方を管理するロス時刻管理表である。ロス時刻管理表は、「勤怠時間」と、「ロス時刻」と、「ロス時間」と、「無駄時間」と、「作業内容」が記載されている。「勤怠時間」および「作業内容」は、図5に示した作業記録情報の「勤怠時間」および「作業内容」がそのまま用いられている。ロス時刻は、推定生産数算出部104が算出した、各作業記録情報に対応したロス時刻である。「ロス時間」は、各作業記録情報に対応した生産数計数装置Cがカウントを行っていない期間を示すロス時間であり、図5に示した作業記録情報の「作業時間」の値が、そのまま用いられている。「無駄時間」は、ロス時刻を算出する際に用いられた無駄時間である。
【0076】
次に、推定生産数算出部104が、このロス時刻の情報を任意の所定の時間間隔で切り分け、その所定の時間間隔ごとの生産時間を求める。まず、所定の時間間隔で切り分けた「8:00〜9:00」までの時間に含まれるロス時間を、図7に示したロス時刻管理表から検出する。ここでは、この時間帯に含まれるロス時間がない。従って、この時間帯においてはロス時間が検出されず、生産時間は60分に設定される。「9:00〜10:00」の時間帯についても、同様に生産時間が60分に設定される。一方、「10:00〜11:00」の時間帯においては、「10:05」からの25分間と、「10:53」からの8分間に、ロス時間が検出される。このため、この時間帯のロス時間の合計である25(分)+7(分)=32(分)が、所定の時間間隔である60分から減算され、生産時間は60(分)−32(分)=28(分)となる。また、「11:00〜12:00」では「10:53」から繰り越されたロス時間が1分あるので、生産時間は60(分)−1(分)=59(分)になる。このようにして、12時以降の時間帯においても同様に計算が行われる。図8は、このようにして算出された各所定の時間間隔毎の生産時間を示す表、および横軸を時間で表した生産時間を示すタイムチャートである。なお、図8において、「時間」は、各所定の時間間隔を示しており、ここでは、各所定の時間間隔の開始時刻を表示している。
【0077】
なお、所定の時間間隔については、時間の間隔を大きくすると、製品詰まり等の一時停止などの誤差の影響を受けにくくなり、作業記録情報の記入漏れ等の記入の不備の誤検出が少なくなるが、記入の不備の発生している時刻の推定精度が悪くなる。
【0078】
一方、所定の時間間隔の時間の間隔を小さくすると、一時停止などの誤差の影響を受けやすくなり記入の不備の誤検出が多くなるが、不備の発生した時刻の推定精度が良くなるという特徴がある。従って、所定の時間間隔を設定する際には一時停止の停止時間の平均値や発生回数を考慮するのが望ましい。なお、所定の時間間隔は、必ずしも全て一定でなくても良い。
【0079】
次に、推定生産数算出部104は、図8に示したような所定の時間間隔毎の生産時間と、ライン情報格納部102に格納されている生産能力情報とを用いて、所定の時間間隔毎の推定生産数を算出する。算出方法としては特開2006−146876号公報等に記載されているように、タクトバランスが保たれていれば次式で求めることができる。
【0080】
推定生産数=所定の時間間隔当たりの生産時間×ラインタクト
【0081】
ここではライン情報格納部102に格納されている生産能力情報が示すように、ラインタクトが40個/分であるので、各所定の時間間隔毎に、図9に示すような推定生産数を算出することができる。なお、図9において、「時間」は、各所定の時間間隔を示しており、ここでは、各所定の時間間隔の開始時刻を表示している。
【0082】
次に、作業記録不備検出部106は、メモリ等に格納されている生産数情報取得部101が取得した生産数情報を用いて、推定生産数算出部104が推定生産数を算出する際に利用した所定の時間間隔と同じ所定の時間間隔である1時間毎の製品の生産数である集計生産数を取得する。ここでは、各所定の時間間隔の終了時の直前に取得された生産数情報に含まれる計数値から、各所定の時間間隔の開始時の直前に取得された生産数情報に含まれる計数値を減算して、所定の時間間隔毎の集計生産数を取得する。
【0083】
図10は、作業記録不備検出部106が取得した所定の時間間隔毎の集計生産数を示す図である。なお、図10において、「時間」は、各所定の時間間隔を示しており、ここでは、各所定の時間間隔の開始時刻を表示している。
【0084】
次に、作業記録不備検出部106は、図9に示した推定生産数と、図10に示した集計生産数とから、1番目の所定の時間間隔の推定生産数と集計生産数とを取得する。ここでは、時刻の早い所定の時間間隔を1番目とすると、「時間」が「8」である、「8:00から9:00」までの時間帯の推定生産数と集計生産数とを取得する。そして、取得した推定生産数から取得した集計生産数を減算し、差分を求める。そして、その差分と、基準値格納部105に格納されている基準値とを比較し、減算結果が基準値より大きい場合、記入漏れの発生を検出する。ここでは、基準値が「200」であったとすると、「8:00から9:00」までの所定の時間間隔の推定生産数から集計生産数の示す集計生産数を減算した差分は「16」であり、基準値である200以下であるので、記入漏れは検出されない。
【0085】
記入漏れがないと判断された場合、作業記録不備検出部106は、同じ所定の時間間隔に関して、集計生産数から推定生産数を減算して差分を求め、この差分を、基準値格納部105に格納されている基準値と比較し、減算結果が基準値より大きい場合、記入間違いの発生を検出する。ここでは、減算結果が「−16」であり、基準値である「200」以下となるため、記入間違いは検出されない。これにより、「8:00から9:00」までの時間については、作業記録の不備が検出されないこととなる。
【0086】
図11は、各所定の時間間隔についての、推定生産数から、集計生産数の示す集計生産数を減算して得られた値を示す参考図である。
【0087】
次に、2番目の所定の時間間隔である「9:00から10:00」までの所定の時間間隔、3番目の所定の時間間隔である「10:00から11:00」までの所定の時間間隔、4番目の所定の時間間隔である「11:0から12:00」までの所定の時間間隔についても、それぞれ上記と同様の処理が行われる。これらの各所定の時間間隔についても、図11に示すように、推定生産数から、集計生産数を減算して得られた差分が基準値以下であり、同様に集計生産数から、推定生産数を減算して得られた差分も基準値以下であることから、作業記録の不備が検出されないこととなる。
【0088】
つぎに、6番目の所定の時間間隔である「12:00から13:00」までの所定の時間間隔についての推定生産数と集計生産数とを取得し、この推定生産数から集計生産数を減算して差分を求める。そして、その差分と、基準値格納部105に格納されている基準値とを比較する。「12:00から13:00」までの所定の時間間隔の推定生産数から集計生産数を減算して得られた差分は、図11に示すように「368」であり、基準値である「200」より大きいので、記入漏れがあると判断される。記入漏れが有ると判断された場合、記入漏れがあったと推定される時間である不備時間を、作業記録不備検出部106が算出する。具体的には、不備時間については、推定生産数から集計生産数を減算して得られた差分から、次式で計算される。
【0089】
不備時間=(差分−基準値)/ラインタクト
【0090】
例えば、「12:00から13:00」までの時間帯においては、ラインタクト=40(個/分)、差分=368(個)、基準値=200(個)であるため、不備時間は(368−200)/40=4.2(分)になる。
【0091】
つぎに、発生時刻算出部107は、作業記録不備検出部106が記入漏れを検出した所定の時間間隔の開始時刻と終了時刻との情報、ここでは、開始時刻の情報である「12:00」と、終了時刻の情報である「13:00」とを用いて、各製造装置D1〜D5についての発生時刻範囲情報と、生産ライン20全体についての発生時刻範囲情報とを算出する。
【0092】
まず、各製造装置D1〜D5についての発生時刻範囲情報を、発生時刻算出部107は以下のように算出する。すなわち、製造装置D1〜D5のうちのn(nは1〜5の整数)番目の製造装置の発生時刻範囲情報は、(作業記録不備検出部106が記入漏れを検出した時間帯の開始時刻−n番目の製造装置の無駄時間)から(作業記録不備検出部106が記入漏れを検出した時間帯の終了時刻−n番目の製造装置の無駄時間)までの時間である。これにより、図12に示すように、各製造装置D1〜D5についての発生時刻範囲情報が算出される。図12においては、「装置」は各製造装置D1〜D5の名称、「発生時刻範囲」は、算出された発生時刻範囲情報が示す発生時刻の範囲、「無駄時間」は、発生時刻範囲情報を算出する際にそれぞれ用いた無駄時間である。また、発生時刻算出部107は、生産ライン20全体についての発生時刻範囲情報を以下のように算出する。すなわち、(作業記録不備検出部106が記入漏れを検出した時間帯の開始時刻−製造装置の無駄時間の最大値)から(作業記録不備検出部106が記入漏れを検出した時間帯の終了時刻−製造装置の無駄時間の最小値)までの時間を、生産ライン20全体についての発生時刻範囲情報とする。ここでは、製造装置の無駄時間の最大値は、製造装置D1の30分、最小値は、製造装置D5の5分であることから、生産ライン20全体の発生時刻範囲情報は、「11:30〜12:55」となり、この期間内に製造装置D1〜D5のいずれで記入漏れが発生していることがわかる。そして、上述した記入漏れが発生したことを示す情報と、不備時間と、発生時刻範囲情報とが対応付けられて、メモリ等に蓄積される。
【0093】
ここで、仮に、「12:00」から「13:00」までの所定の時間間隔の推定生産数が「2032」で、集計生産数が「2400」であったとすると、推定生産数から集計生産数を減算して得られた差分は、「−368」であり、基準値以下と判断され、記入漏れがないと判断される。そして、記入間違いを判断するために、集計生産数から推定生産数を減算して得られた差分を算出し、この差分が基準値より大きいか否かが判断される。この場合においては、この差分は「368」となり、基準値である「200」より大きいため、記入間違いありと判断される。そして、上述した記入漏れありの場合と同様に、不備時間と発生時刻情報とが算出され、記入間違いがあることを示す情報と、メモリに格納されることとなる。
【0094】
なお、基準値は、実際の製造時等や実験時に測定した情報を用いて統計処理により得られた、製品詰まり等の一時停止に要する平均時間と、所定の時間間隔内に発生する一時停止の発生回数を用いて設定することが好適である。例えば、1時間あたり平均1分の一時停止が5回発生していたとすると、判断基準はラインタクト×一時停止の平均時間×一時停止の発生回数で算出可能であり、この場合においては、基準値は、40(個/分)×1(分)×5(回)=200(個)ぐらいにするとよい。このように基準値を設定すると、ある所定の時間間隔に一時停止が多発した場合、一時停止が多発したことを記入漏れとして検出できる。
【0095】
その後、残りの所定の時間間隔についても、上記と同様の処理を繰り返し行う。
【0096】
次に、出力部108は、メモリ等に蓄積された、記入に不備があることを示す情報、具体的には記入漏れが有ることを示す情報または記入間違いがあることを示す情報と、これに対応した発生時刻情報と、不備時間等を用いて、不備通知情報を構成し、構成した不備通知情報をモニタ等の表示デバイスに表示する。
【0097】
図13は、出力部108が出力する不備通知情報の表示例を示す図である。ここでは、作業記録受付部103が受け付けた作業記録情報と、作業記録情報を用いて作成したタイムチャートを含む不備通知情報が構成され、図示しないモニタに表示される。このタイムチャートには、各作業記録情報の示す作業時間の範囲が、作業記録情報と同じ番号を付した直線で表示される。さらに、メモリ等に蓄積された生産ライン20についての記入漏れの発生時刻情報が示す時刻の範囲、ここでは、上述した「11:30〜12:55」の範囲、が両矢印線で描画され、不備時間がこの両矢印線の上方に表示される。また、タイムチャートの下に表示される作業記録情報とともに、生産ライン20についての記入漏れの発生時刻情報131と、各製造装置D1〜D5別の記入漏れの発生時刻情報132とが、各製造装置D1〜D5に対応した設備1〜5の表示を付して表示される。
【0098】
なお、ここでは、記入漏れが発生した場合の表示例を示したが、記入間違いがあった場合においても図13と同様の表示が可能である。
【0099】
図14は、作業記録情報に記入間違いがあった場合の表示例を示す図である。ここでは、記入間違いが発生した時間の範囲を両矢印線で描画した点と、各製造装置D1〜D5別の記入間違いの発生時刻情報を表示していない点を除けば、図13と同様である。なお、図14において、各製造装置D1〜D5別の記入間違いの発生時刻情報を表示するようにしても良いことは言うまでもない。
【0100】
なお、出力部108は、上記以外のどのような形態の異常通知情報を構成して出力するようにしても良く、生産の現場の作業記録の運用方法等に応じた表示を行うようにすることが好ましい。
【0101】
なお、本実施の形態においては、推定生産数から集計生産数を減算して、記入漏れを判断し、集計生産数から推定生産数を減算して記入間違いを判断するようにしたが、この判断の順番は問わず、また、このような判断の代わりに、推定生産数と集計生産数との差分を求め、この差分の絶対値と基準値との比較結果と、差分の正負の符号との組み合わせから、記入間違いと記入漏れとを判断するようにしてもよい。例えば、推定生産数から集計生産数を減算して得られた差分の絶対値が基準値より大きい場合に、その差分の符号が正であれば記入漏れがあると判断し、負であれば記入間違いがあると判断しても良い。また、推定生産数と集計生産数との差分を求め、この差分の絶対値と基準値とを比較し、比較の結果、基準値よりも差分の絶対値が大きい場合に、記入に異常があることだけを判断するようにしてもよい。
【0102】
また、差分が基準値より大きいか否かを判断する代わりに、基準値の値を変更して、差分が基準値以上であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0103】
また、記入漏れを判断する際の基準値と、記入間違いを判断する際の基準値とを、異なる値に設定しても良い。
【0104】
また、上記具体例においては、推定生産数と集計生産数との差分が、基準値と比較することにより、記入の不備を検出するようにしたが、基準値と比較したことと同じ結果が得られれば、ここでは基準値と比較することと考える。例えば、推定生産数と集計生産数との差分もしくはその絶対値から、基準値を減算した値が、正であれば、作業記録に不備があることを判断し、負であれば作業記録に不備がないことを判断することも、ここでは、推定生産数と集計生産数との差分を、基準値と比較することであると考える。
【0105】
以上、本実施の形態によれば、作業記録情報から求めた製品の推定生産数と、実際に計数した製品の集計生産数との差分を用いて記入の不備を判断するようにしたので、生産設備等を変更したりする必要がなく、記載の不備を容易にかつ安価に検出することができる。
【0106】
また、本実施の形態によれば、作業記録情報から求めた製品の推定生産数から、実際に計数した製品の集計生産数を減算して得られた差分が、一時停止によるロス時間に製造可能であったと推定される生産数よりも多い場合に、記入漏れの発生を判断するようにしたので、一時停止の影響を取り除いて、作業の記入漏れを判断することができる。
【0107】
また、本実施の形態によれば、実際に計数した製品の集計生産数から、作業記録情報から求めた製品の推定生産数を減算して得られた差分が、一時停止によるロス時間に製造可能であったと推定される生産数よりも多い場合に、記入間違いの発生を判断するようにしたので、一時停止の影響を取り除いて、作業の記入間違いを精度良く判断することができる。
【0108】
また、本実施の形態によれば、作業記録情報から求めた製品の推定生産数と実際に計数した製品の集計生産数かとの差分から、一時停止によるロス時間に製造可能であったと推定される生産数を減算した値をラインタクト、すなわち生産能力情報が示す値で除算して作業記録に不備があった不備時間を算出するようにしたので、この不備時間を手がかりに、作業者は作業内容を思い出すことができ、作業記録の不備の修正を補助することが可能となり、修正を容易にすることができる。
【0109】
また、本実施の形態によれば、各製造装置D1〜D5と、生産数計数装置Cとの間の無駄時間の最大値と最小値とを用いて、生産ライン20全体における作業記録の不備が発生した時刻を推定するようにしたので、作業者が作業記録の不備が発生した時刻を知ることができ、これを手がかりに、作業記録の不備の修正を容易に行うことができる。
【0110】
また、本実施の形態によれば、各製造装置D1〜D5と、生産数計数装置Cとの間の無駄時間を用いて、各製造装置D1〜D5毎の、作業記録の不備が発生した時刻を推定するようにしたので、作業者に、各製造装置別に、作業記録の不備が発生したと考えられる時刻を提示することができ、これを手がかりに、作業者に、それぞれの時刻に行った作業を思い出させることが可能となる。
【0111】
なお、上記実施の形態においては、生産ラインを構成する製造装置が5つである場合について説明したが、本発明は、生産ラインを構成する製造装置の数が1以上であれば適用可能なものであり、このような場合においても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0112】
なお、上記実施の形態において、各処理(各機能)は、単一の装置(システム)によって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置によって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0113】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。
【0114】
なお、上記実施の形態における作業記録解析装置を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータに、1以上の製造装置により構成される生産ラインで生産された製品の生産数を計数した情報である生産数情報を取得する生産数情報取得ステップと、前記生産ラインに対する、当該生産ラインの停止を伴う作業に関する記録である作業記録についての情報である作業記録情報を受け付ける作業記録受付ステップと、ライン情報格納部に格納されている前記生産ラインの生産能力を示す情報である生産能力情報と、前記1以上の製造装置のそれぞれで製造された中間品が前記製品となって生産数が計数されるまでの所要時間の情報である無駄時間情報と、前記作業記録情報を用いて、所定の時間間隔毎に推定される前記製品の生産数である推定生産数を算出する推定生産数算出ステップと、前記生産数情報を用いて取得した前記所定の時間間隔毎の生産数である集計生産数と、前記推定生産数との差分を、基準値格納部に格納されている前記作業記録受付ステップにより受け付けた作業記録情報の不備を検出するために用いられる基準値と比較して、前記作業記録受付ステップで受け付けた作業記録情報の不備を検出する作業記録不備検出ステップと、前記作業記録不備検出ステップにより前記作業記録情報に不備を検出した場合に、前記作業記録情報に対応した作業記録の不備を通知する不備通知情報を構成し、出力する出力ステップとを実行させるためのプログラムである。
【0115】
なお、上記プログラムにおいて、情報を送信する送信ステップや、情報を受信する受信ステップなどでは、ハードウェアによって行われる処理、例えば、送信ステップにおけるモデムやインターフェースカードなどで行われる処理(ハードウェアでしか行われない処理)は含まれない。
【0116】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。
【0117】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0118】
また、上記実施の形態において、一の装置に存在する2以上の通信手段(情報送信部など)は、物理的に一の媒体で実現されても良いことは言うまでもない。
【0119】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0120】
また、上記実施の形態では、作業記録解析装置がスタンドアロンである場合について説明したが、作業記録解析装置は、スタンドアロンの装置であってもよく、サーバ・クライアントシステムにおけるサーバ装置であってもよい。後者の場合には、出力部や受付部は、通信回線を介して入力を受け付けたり、画面を出力したりすることになる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上のように、本発明にかかる作業記録解析装置等は、作業記録を解析する装置として適しており、作業記録の記入漏れや記入間違い等の不備を検出する装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】実施の形態における生産システムの構成の概略図
【図2】同作業記録解析装置のブロック図
【図3】同作業記録解析装置の動作について説明するフローチャート
【図4】同生産数情報管理表を示す図
【図5】同作業記録情報を示す図
【図6】同無駄時間情報と、生産能力情報とを管理する管理表を示す図
【図7】同ロス時刻管理表を示す図
【図8】同所定の時間間隔毎の生産時間を示す図
【図9】同推定生産数を示す図
【図10】同集計生産数を示す図
【図11】同推定生産数から、集計生産数を減算して得られた値を示す図
【図12】同発生時刻情報を示す図
【図13】同表示例を示す図
【図14】同表示例を示す図
【符号の説明】
【0123】
10 作業記録解析装置
20 生産ライン
101 生産数情報取得部
102 ライン情報格納部
103 作業記録受付部
104 推定生産数算出部
105 基準値格納部
106 作業記録不備検出部
107 発生時刻算出部
108 出力部
131 発生時刻情報
132 発生時刻情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の製造装置により構成される生産ラインで生産された製品の生産数を計数した情報である生産数情報を取得する生産数情報取得部と、
前記生産ラインの生産能力を示す情報である生産能力情報と、前記1以上の製造装置のそれぞれで製造された中間品が、前記製品となって生産数が計数されるまでの所要時間の情報である無駄時間情報とが格納され得るライン情報格納部と、
前記生産ラインに対する、当該生産ラインの停止を伴う作業に関する記録である作業記録についての情報である作業記録情報を受け付ける作業記録受付部と、
前記生産能力情報と、前記無駄時間情報と、前記作業記録情報を用いて、所定の時間間隔毎に推定される前記製品の生産数である推定生産数を算出する推定生産数算出部と、
前記作業記録受付部が受け付けた作業記録情報の不備を検出するために用いられる基準値が格納され得る基準値格納部と、
前記生産数情報を用いて取得した前記所定の時間間隔毎の生産数である集計生産数と、前記推定生産数との差分を、前記基準値と比較して、前記作業記録受付部が受け付けた作業記録情報の不備を検出する作業記録不備検出部と、
前記作業記録不備検出部が前記作業記録情報に不備を検出した場合に、前記作業記録情報に対応した作業記録の不備を通知する不備通知情報を構成し、出力する出力部とを具備する作業記録解析装置。
【請求項2】
前記作業記録不備検出部は、前記推定生産数の値から、前記集計生産数の値を減算した値が、前記基準値よりも大きい場合に、前記作業記録情報の不備である作業記録情報の記入漏れがあることを検出し、
前記出力部は、前記作業記録情報に対応した作業記録の記入漏れを通知する情報を含む前記不備通知情報を出力する請求項1記載の作業記録解析装置。
【請求項3】
前記作業記録不備検出部は、前記集計生産数の値から、前記推定生産数の値を減算した値が、前記基準値よりも大きい場合に、前記作業記録情報の不備である作業記録情報の記入間違いがあることを検出し、
前記出力部は、前記作業記録情報に対応した作業記録の記入間違いを通知する情報を含む前記不備通知情報を出力する請求項1または請求項2記載の作業記録解析装置。
【請求項4】
前記作業記録不備検出部は、不備を検出した場合に、前記推定生産数の値と前記集計生産数の値との差分から、前記基準値を減算した値を、前記生産能力情報の値で除算して、前記作業記録の不備が発生している時間である不備時間を算出し、
前記出力部は、前記不備時間の情報を含む前記不備通知情報を出力する請求項1から請求項3いずれか記載の作業記録解析装置。
【請求項5】
前記作業記録不備検出部は、前記所定の時間間隔毎の作業記録情報の不備を検出し、
当該作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の開始時刻および終了時刻と、前記無駄時間情報とを用いて、前記作業記録における不備の発生している時刻の範囲を示す情報である発生時刻範囲情報を算出する発生時刻算出部を更に具備し、
前記出力部は、前記発生時刻算出部が算出した発生時刻範囲情報の示す時刻の範囲を通知する情報を含む前記不備通知情報を出力する請求項1から請求項4いずれか記載の作業記録解析装置。
【請求項6】
前記発生時刻算出部は、前記作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の開始時刻から、前記1以上の製造装置の全てについての無駄時間情報のうちの最大値を減算し、前記作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の終了時刻から、前記1以上の製造装置の全てについての無駄時間情報のうちの最小値を減算して、前記発生時刻範囲情報を算出する請求項5記載の作業記録解析装置。
【請求項7】
前記発生時刻算出部は、前記作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の開始時刻から、前記1以上の製造装置に対応した前記無駄時間情報のうちの最大値をそれぞれ減算し、前記作業記録不備検出部が不備を検出した前記所定の時間間隔の終了時刻から、前記1以上の製造装置に対応した前記無駄時間情報のうちの最小値をそれぞれ減算して、前記1以上の製造装置のそれぞれについての前記発生時刻範囲情報を算出する請求項5または請求項6記載の作業記録解析装置。
【請求項8】
前記基準値は、前記生産ラインの所定の時間間隔あたりの一時停止の発生回数と、当該一時停止の平均時間との積を用いて設定された値である請求項1から請求項7いずれか記載の作業記録解析装置。
【請求項9】
1以上の製造装置により構成される生産ラインで生産された製品の生産数を計数した情報である生産数情報を取得する生産数情報取得ステップと、
前記生産ラインに対する、当該生産ラインの停止を伴う作業に関する記録である作業記録についての情報である作業記録情報を受け付ける作業記録受付ステップと、
ライン情報格納部に格納されている前記生産ラインの生産能力を示す情報である生産能力情報と、前記1以上の製造装置のそれぞれで製造された中間品が前記製品となって生産数が計数されるまでの所要時間の情報である無駄時間情報と、前記作業記録情報を用いて、所定の時間間隔毎に推定される前記製品の生産数である推定生産数を算出する推定生産数算出ステップと、
前記生産数情報を用いて取得した前記所定の時間間隔毎の生産数である集計生産数と、前記推定生産数との差分を、基準値格納部に格納されている前記作業記録受付ステップにより受け付けた作業記録情報の不備を検出するために用いられる基準値と比較して、前記作業記録受付ステップで受け付けた作業記録情報の不備を検出する作業記録不備検出ステップと、
前記作業記録不備検出ステップにより前記作業記録情報に不備を検出した場合に、前記作業記録情報に対応した作業記録の不備を通知する不備通知情報を構成し、出力する出力ステップとを具備する作業記録解析方法。
【請求項10】
コンピュータに、
1以上の製造装置により構成される生産ラインで生産された製品の生産数を計数した情報である生産数情報を取得する生産数情報取得ステップと、
前記生産ラインに対する、当該生産ラインの停止を伴う作業に関する記録である作業記録についての情報である作業記録情報を受け付ける作業記録受付ステップと、
ライン情報格納部に格納されている前記生産ラインの生産能力を示す情報である生産能力情報と、前記1以上の製造装置のそれぞれで製造された中間品が前記製品となって生産数が計数されるまでの所要時間の情報である無駄時間情報と、前記作業記録情報を用いて、所定の時間間隔毎に推定される前記製品の生産数である推定生産数を算出する推定生産数算出ステップと、
前記生産数情報を用いて取得した前記所定の時間間隔毎の生産数である集計生産数と、前記推定生産数との差分を、基準値格納部に格納されている前記作業記録受付ステップにより受け付けた作業記録情報の不備を検出するために用いられる基準値と比較して、前記作業記録受付ステップで受け付けた作業記録情報の不備を検出する作業記録不備検出ステップと、
前記作業記録不備検出ステップにより前記作業記録情報に不備を検出した場合に、前記作業記録情報に対応した作業記録の不備を通知する不備通知情報を構成し、出力する出力ステップとを実行させるためのプログラム。
【請求項11】
1以上の製造装置により構成される生産ラインで生産された製品の生産数を計数した情報である生産数情報を取得する生産数情報取得ステップと、
前記生産ラインに対する、当該生産ラインの停止を伴う作業に関する記録である作業記録についての情報である作業記録情報を受け付ける作業記録受付ステップと、
ライン情報格納部に格納されている前記生産ラインの生産能力を示す情報である生産能力情報と、前記1以上の製造装置のそれぞれで製造された中間品が前記製品となって生産数が計数されるまでの所要時間の情報である無駄時間情報と、前記作業記録情報を用いて、所定の時間間隔毎に推定される前記製品の生産数である推定生産数を算出する推定生産数算出ステップと、
前記生産数情報を用いて取得した前記所定の時間間隔毎の生産数である集計生産数と、前記推定生産数との差分を、基準値格納部に格納されている前記作業記録受付ステップにより受け付けた作業記録情報の不備を検出するために用いられる基準値と比較して、前記作業記録受付ステップで受け付けた作業記録情報の不備を検出する作業記録不備検出ステップと、
前記作業記録不備検出ステップにより前記作業記録情報に不備を検出した場合に、前記作業記録情報に対応した作業記録の不備を通知する不備通知情報を構成し、出力する出力ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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