説明

作業車のケーブルドラム駆動装置

【課題】ドラムの位置がずれることなく、ドラムへのケーブルの整列巻きが可能となる作業車のケーブルドラム駆動装置を提供する。
【解決手段】回転することによりケーブルの巻き取りもしくは繰り出しが可能なケーブルドラムを回転駆動可能に支持するケーブルドラム駆動装置であって、車体に設けられて、ケーブルドラムを載置するドラム載置台31と、ケーブルドラムを回転駆動させるドラム駆動モータ及びケーブルドラムの両端部を回転可能に把持するプレート24及び回転支持部25等からなるドラム回転把持装置とを備え、ドラム載置台31の上面に、第1突出部31b、第2突出部31cが設けられ、ケーブルドラムは、第1及び第2突出部31b,31cの間に載置された状態でドラム把持装置により把持されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行可能な車体に設けられ、道路等の上方に架設されるケーブルの繰り出しもしくは巻き取りを行うケーブルドラムを搭載可能な作業車のケーブルドラム駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路上または軌道上等に架設される電線やトロリ線等のケーブルは、消耗や劣化に対応するため定期的に張替えが行われる。その際には、走行可能な車体上に、張替え用の新しいケーブルが巻き付けられたケーブルドラムもしくは古いケーブルの巻取り用のケーブルドラム(空のドラム)を回転自在に支持するとともに当該ケーブルドラムを回転駆動するドラム駆動装置を備えた作業車が用いられ、ドラム駆動装置によりケーブルドラムを回転させて新しいケーブルの延線作業(繰出し作業)、及び古いケーブルの巻取り作業を行っている。
【0003】
上記のような作業を行う際に用いられる作業車としては、自走可能な車両の荷台上にケーブルを巻き取るためのケーブルドラムと、巻き取る対象のケーブルをケーブルドラムに案内するとともに当該ケーブルがケーブルドラムの幅方向に均等に巻き取られるようにケーブルドラムの回転軸方向(左右方向)に移動しながらケーブルを案内するトラバーサとを備えたものが周知となっている。さらに、ケーブルドラムにその両端から押し付けられることによりケーブルドラムを回転自在に把持するドラム押付機構と、ケーブルドラムに回転駆動力を付与するドラム駆動モータ等により構成されるドラム把持装置を備えた作業車(例えば、特許文献1を参照)も周知となっており、このような作業車においては、ケーブルドラムの両端がドラム押付機構により押し付けられた状態でケーブルドラムをドラム駆動モータにより回転させ、ケーブルドラムの両端の外周部に回転トルクが付与されるように構成されている。これにより、ケーブルドラムに対して大きな回転トルクを付与することが可能になり、重量の大きいケーブルを巻き取ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−188330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような作業車のケーブルドラム駆動装置においては、ケーブルドラムをドラム載置台に載置した後移動させ、移動させた後ケーブルドラムをその両側からドラム把持装置により把持させるが、トラバーサによりドラムへのケーブルの整列巻きを行うためケーブルドラムをドラム把持装置及びドラム載置台の左右方向に対して中央に位置させ、トラバーサの左右方向への往復移動の反転ポイントとケーブルドラムの両端部の左右方向の位置を合わせる必要がある。
【0006】
ところが、従来において上述したケーブルドラムを中央に位置させる作業は、作業者の目測で行っていた。また、ケーブルドラムを中央に位置させても、ドラム把持装置の同調不良等の不具合が発生した場合にケーブルドラムが右または左のいずれかの方向に押し出され中央位置からずれることがあり、このようにケーブルドラムが中央位置からずれた状態でケーブルのケーブルドラムへの巻き取りを行うと、トラバーサの左右方向への往復移動の移動領域に対してケーブルドラムが右または左にずれておりトラバーサの往復移動の反転ポイントとケーブルドラムの端の位置もずれているため、ケーブルドラムのケーブルの巻き取り位置が偏りケーブルドラムへのケーブルの整列巻きができなくなる。このため、一つのケーブルドラム当たりへのケーブルの巻き取り容量が少なくなり、さらに、ドラム駆動装置の左側の負荷と右側の負荷が均等でなくなる問題も発生する。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、ドラムの位置がずれることなく、ドラムへのケーブルの整列巻きが可能となる作業車のケーブルドラム駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る作業者のケーブルドラム駆動装置は、回転することによりケーブルの巻き取りもしくは繰り出しが可能なケーブルドラムを回転駆動可能に支持する作業車のケーブルドラム駆動装置であって、ケーブルドラムを載置する載置部を有し、載置部上に、ケーブルドラムの回転軸方向の長さより若干長い間隔を空けて設けられ上方に突出して形成される左右一対の第1突出部を備え、ケーブルドラムを、その回転軸方向が左右方向に一致するようにして、左右一対の第1突出部の間に位置して載置部上に載置させるように構成されたドラム載置台と、左右方向に移動可能に構成され、この移動によりケーブルドラムをその回転する回転軸の両端から回転可能に把持するドラム把持装置と、ドラム把持装置に把持されたケーブルドラムを回転駆動するドラム駆動モータと、ドラム把持装置およびドラム載置台の一方を他方に対して上下方向に相対移動させ、ドラム把持装置にケーブルドラムを把持させた状態でドラム載置台をケーブルドラムから離反させることが可能な相対移動機構とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、相対移動機構は、ドラム載置台をドラム把持装置に対して上下方向に相対移動させる載置台昇降装置(例えば、実施形態におけるドラム昇降シリンダ32)であることが好ましい。
【0010】
そして、ドラム載置台の載置部が、前後方向に所定間隔を空けて設けられ上方に突出して形成され、第1突出部の上面よりもその上面が下方に位置する前後一対の第2突出部を備えることが好ましい。
【0011】
さらに、ケーブルドラムが、互いに回転軸方向の長さが異なる大ドラムと小ドラムにより構成され、第1突出部は、左右方向に大ドラムの回転軸方向の長さより若干長い間隔を空けて設けられる左右一対の高突出部(例えば、実施形態における第1段差部31b)と、左右一対の高突出部の間に、左右方向に小ドラムの回転軸方向の長さより若干長い間隔を空けて設けられ、高突出部の上面よりもその上面が下方に位置する左右一対の低突出部(例えば、実施形態における第2段差部31c)とにより構成されることが好ましい。
【0012】
なお、作業車は、道路走行用車輪及び軌道走行用車輪を有し、道路走行時には前記道路走行用車輪を用いて走行し、軌道走行時には前記軌道走行用車輪を用いて走行する軌陸作業車であることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
以上、本発明に係る作業車のケーブルドラム駆動装置においては、ケーブルドラムを載置するドラム載置台に左右一対の第1突出部が設けられ、これらの第1突出部の間にケーブルドラムを載置することによりケーブルドラムの左右方向への位置を規制することが可能になる。このようにケーブルドラムの位置を規制した状態でドラム把持装置によりケーブルドラムを左右方向から把持することから、その後ドラム載置台をケーブルドラムから離隔してもケーブルドラムが左右方向に位置ずれすることを防止することが可能になるため、当該位置ずれによりケーブルの整列巻きができなくなるなどの問題を回避することができる。
【0014】
また、第2突出部を設けることにより、左右方向だけでなく前後方向に位置ずれすることも防止できるとともに、第1突出部が高突出部と低突出部により構成されることにより、大ドラム及び小ドラムの2種類の大きさのドラムを載置した時でも、上記同様、大ドラム及び小ドラムが、前後左右方向へ位置ずれすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るケーブルドラム駆動装置を適用させた軌陸作業車の構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は上面図を示している。
【図2】上記軌陸作業車における各種操作装置における構成を示すブロック図であり、(a)はドラム操作装置のブロック図、(b)は走行操作装置のブロック図である。
【図3】上記軌陸作業車におけるドラム載置台及びドラム把持装置の周辺における構成を示す概略構成図である。
【図4】ドラム載置台に大ドラム及び小ドラムを載置した時、または大ドラム及び小ドラムをドラム把持装置に把持させた時の構成を示す図であり、(a)はドラム載置台の上面図、(b)は大ドラム及び小ドラムをドラム載置台に載置させたときのドラムとドラム載置台の位置関係を示す図、(c)は大ドラム及び小ドラムをドラム載置台に載置したときの様子を左右方向(ドラムの幅方向)から見た図である。
【図5】上記軌陸作業車におけるトロリ線の巻き取り作業を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、張替用のケーブルが巻き付けられたドラム又はケーブル巻き取り用のドラム(空のドラム)を回転自在に支持するとともに当該ドラムを回転駆動させるドラム駆動装置を備えた作業車の一例として、道路上及び軌道上を走行可能な軌陸作業車1について説明する。軌陸作業車1の構成は図1に示しており、この図面を参照しながら軌陸作業車1の概略構成について説明する。
【0017】
軌陸作業車1は、車体2に設けられた運転キャブ2aを有するトラック車両をベースとして構成されており、車体2の前後左右の4箇所に取り付けられた道路走行用車輪3によって道路上を走行することができる。さらに、車体2の前後左右の4箇所(道路走行用車輪3の後側)には、軌道走行用車輪4(以下、鉄輪4と称する)が、車体2に揺動自在に支持された鉄輪支持部材4aに回転自在に取り付けられている。なお、以下の説明では、図1(a)及び(b)の矢印に示すように、車体2が前進する方向を前方向とし、運転キャブ2aに搭乗した運転した運転者から見て右の方向を右方向、運転者から見て上の方向を上方向というように、前後左右上下方向を定義する。
【0018】
鉄輪支持部材4aは、鉄輪張出格納シリンダ5の伸縮作動により揺動作動するようになっており、この鉄輪支持部材4aを揺動作動させることにより鉄輪4を下方に張り出したり上方に格納したりできるようになっている。軌陸作業車1は、鉄輪4を張り出した状態で車体2を軌道上に載置し、前側の2つの鉄輪4にそれぞれ接続された鉄輪駆動油圧モータ8,8により鉄輪4を駆動して軌道上を自走可能になっている。
【0019】
車体2の中央下部には、軌陸作業車1を軌道上へ載せ換え移動するための転車台6が設けられている。転車台6は、転車台張出格納シリンダ7の伸縮作動により下方に張り出したり上方に格納したりできるようになっており、さらに下方に張り出して車体2を持ち上げた状態で作業者の人力により車体2を転車台6に対して水平旋回することができるようになっている。
【0020】
車体2上には、高所作業装置10と、ドラム駆動装置20と、中央キャブ50等が設けられている。高所作業装置10は、運転キャブ2aの後側で垂直に立設され入れ子式に伸縮自在な昇降ポスト11と、昇降ポスト11の上部に取り付けられ作業者が搭乗可能に構成される作業台12とを有し、昇降ポスト11に内蔵された昇降シリンダ(図示せず)の伸縮作動により昇降ポスト11が昇降され、昇降ポスト11が昇降されることにより、昇降ポスト11に取り付けられている作業台12を上下方向に昇降移動できるようになっている。作業台12には、昇降操作装置13と、後に詳述するドラム駆動装置20によりケーブルを巻き取る際に使用するガイドローラ14とが設けられている。作業台12に搭乗した作業者は、昇降操作装置13を操作することにより作業台12を昇降移動させることができる。ガイドローラ14は、作業台12に対して揺動自在なローラ支持部材14aに回転自在に取り付けられており、使用しない時は下方に揺動させ作業台12内に格納できるようになっている。なお、図1では、ガイドローラ14を上方に揺動させた使用時の状態を示している。
【0021】
中央キャブ50は、高所作業装置10とドラム駆動装置20の間に設けられた、作業者が搭乗可能な箱状の操作室であり、内部に作業者が着座するためのオペレータシート(図示せず)と、軌陸作業車1の鉄道レール上での走行操作を行うための走行操作装置54(図2参照)と、ドラム駆動装置20の作動操作を行うためのドラム操作装置51(図2参照)と、高所作業装置10など車体2上に配設された各装置の作動操作を行うための作業操作装置(図示せず)等が設けられている。中央キャブ50は、車体2上において180度の水平旋回が可能(図1(b)に示す矢印F‐R間で旋回可能)に設けられており、中央キャブ50に搭乗した作業者は、旋回モータ(図示せず)により中央キャブ50を旋回動させることで、車体2の前方、側方もしくは後方を向いた状態で各種操作入力を行うことができるようになっている。
【0022】
このような構成の軌陸作業車1では、転車台6を用いて鉄輪4を下方に張り出した状態で車体2を鉄道レール上に載置する。また、鉄道レール上において、車体2の走行操作及び後述するドラム駆動装置20によるドラムの回転駆動を行うために、軌陸作業車1には、図2に示すように、ドラム駆動装置20に支持されたドラム(後に詳述)を回転駆動させるドラム操作装置51と、傾動操作をすることにより車体2の走行速度を調整可能な操作レバー(図示せず)及び車体2を急停止させることが可能な緊急停止スイッチ(図示せず)等により構成された走行操作装置54と、車体2に配設され、後述する油圧ポンプP2やコントロールバルブ62からなる走行制御装置60とが設けられている。このドラム操作装置51、走行操作装置54、及び走行制御装置60について、図2(a)及び(b)を参照しながら説明する。なお、図2(a)は、ドラム操作装置51と後述するドラム駆動モータ21及びドラムDの構成、図2(b)は、走行操作装置54及び走行制御装置60の構成を示すブロック図である。
【0023】
ドラム操作装置51は、中央キャブ50の内部に設けられ、作業者が中央キャブ50に搭乗してドラム操作装置51を操作することにより、後述するドラム駆動装置20に支持されたドラムを車体2の前後方向(図1(a)の紙面における時計回り又は反時計回り)に回転駆動させることが可能になっている。具体的には、図2(a)のブロック図に示すように、作業者がドラム操作装置51を操作するとそれに対応したドラム操作信号が出力され、当該ドラム操作信号はドラム制御装置52に入力される。そして、ドラム制御装置52からドラム操作装置51の操作に対応した作動制御信号がコントロールバルブ53に入力され、コントロールバルブ53は、油圧ポンプP2から供給される作動油の供給方向を制御し、ドラム操作装置51の操作に応じて後述するドラム駆動モータ21の回転方向を制御することが可能になっている。
【0024】
走行操作装置54は、中央キャブ50の内部に設けられ、操作レバー(図示せず)及び緊急停止スイッチ(図示せず)等により構成され、操作レバーを傾動操作することにより、走行操作信号が出力され車体2の走行速度を調整することが可能になっている。また、緊急停止スイッチを押下することにより、緊急停止信号が出力され、緊急時等に車体2の走行を急停止することが可能になっている。
【0025】
走行制御装置60は、車体2に設けられ、図2(b)に示すように、走行操作装置54からの走行操作信号(指令値)を受けるコントローラ61と、鉄輪駆動油圧モータ8に供給する作動油圧を制御するコントロールバルブ62と、鉄輪4に制動力を付与するブレーキ装置63等により構成されている。コントローラ61は、走行操作装置54からの操作信号、具体的には操作レバー(図示せず)による走行操作信号もしくは緊急停止スイッチ(図示せず)からの緊急停止信号に基づいて、コントロールバルブ62およびブレーキ装置63にそれぞれ作動制御信号を出力する。コントロールバルブ62は、油圧ポンプP1から鉄輪駆動油圧モータ8への作動油供給を制御する制御弁であり、コントローラ61から送られる作動制御信号に基づいて作動油供給を制御し、鉄輪駆動油圧モータ8の回転数を調整することが可能になっている。なお、油圧ポンプP1は、車体2内に設けられたエンジン(図示せず)により駆動され、コントロールバルブ62により作動油の供給量が制御された後、鉄輪駆動油圧モータ8に作動油が供給される。
【0026】
ドラム駆動装置20は、中央キャブ50の後方に設けられ、ケーブルを巻き付けることが可能なドラムDを回転自在に支持するとともに、ドラムDを回転駆動させることによりケーブルの繰り出し・巻き取りを行う装置である。まず、本実施形態で対象とするドラムDは、図1(b)に示すように、円柱状に構成されその底面が左右方向に向くように設けられケーブルをその側面の外周に巻き取ることが可能な巻胴Daと、円盤状に構成されその巻胴Daの底面を左右方向から覆うように設けられ巻胴Daに巻き取られたケーブルが巻胴Daから外れるのを防止する鍔部Dbとにより構成されている。なお、鍔部Dbの中央部分には後述するドラム把持装置22の回転支持部25を嵌合させるための孔部(図示せず)が設けられており、当該孔部を中心としてドラムDは回転できるようになっている(後に詳述)。ドラム駆動装置20は、図1に示すように、ドラムDの左右に1つずつ設けられ、ドラムDを車体2の前後方向(図1(a)の紙面における時計回り又は反時計回り)に回転駆動させるドラム駆動モータ21と、ドラムDの両端に設けられた鍔部Dbをその左右方向から把持し、ドラムDを回転自在に把持するドラム把持装置22(図1(b)参照)と、ドラムDを載置保持するドラム載置部材30(図3参照)とから構成されている。
【0027】
ドラム駆動モータ21は、上述したように、コントロールバルブ53を介して油圧ポンプP2から供給される油圧により回転駆動される。この回転駆動は作業者がドラム操作装置51を操作することにより制御される。ドラム把持装置22は、図1及び図3に示すように、ドラムDをその左右方向から把持する伸縮作動が可能に構成され、左右一対に設けられた2つの把持シリンダ23と、ドラム駆動モータ21とドラムDの間に設けられる2枚のプレート24と、ドラムDを回転可能に支持するドラム回転支持部25(図3参照)とから構成される。把持シリンダ23は、左右方向に伸縮可能に設けられ、ドラム回転支持部25をドラムDの鍔部Dbの中央に設けられる孔部(図示せず)に嵌合させ、2枚のプレート24によりドラムDの鍔部Dbをその左右方向から挟み込むことによりドラムDを把持することが可能になっている。プレート24及びドラム回転支持部25は、ドラム駆動モータ21から回転駆動力が供給されるとそれに伴い回転し、ドラムDの上記孔部にドラム回転支持部25を嵌合させプレート24を鍔部Dbに押し付けることによりドラム駆動モータ21の回転駆動力をドラムDに伝達し、ドラムDを、図3に示す回転軸Aを中心に回転駆動させることが可能になっている。
【0028】
ドラム載置部材30は、図3に示すように、ドラムDを載置保持するドラム載置台31と、上下方向に伸縮可能に構成されドラム載置台31を上下方向に昇降可能なドラム昇降シリンダ32とを備えて構成されている。ドラム載置台31は、車体2に固定されたガイド手段33により上下方向に移動可能に支持された状態になっている。ドラム昇降シリンダ32は、中央キャブ50に設けられたドラム昇降操作装置(図示せず)を操作することにより作動させることが可能になっており、図3に示すように、ドラム昇降シリンダ32が伸びると上記ガイド手段33に沿ってドラム載置台31が上方に移動し、縮むとガイド手段33に沿ってドラム載置台31が下方に移動するようになっている。このように、ドラム昇降シリンダ32の伸縮作動によりドラムDを載置した状態でドラム載置台31を上下移動できるようになっている。ドラム載置台31は、上面から見たときの形状が矩形枠状のベース部材31aと、ベース部材31aの左右両端にそれぞれ前後方向に延びて設けられる2つの第1段差部31bと、2つの第1段差部31bの内側(左側の第1段差部31bの右側に近接する位置と、右側の第1段差部31bの左側に近接する位置)且つその前後方向の両端にそれぞれ設けられる4つの第2段差部31cとを有し、ベース部材31aの上面より第2段差部31cの上面が、そして第2段差部31cの上面より第1段差部31bの上面が高くなっている。
【0029】
上述したような構成にすることにより、図4(a)及び(b)に示すように、回転軸に平行な方向の長さがW1の大ドラムと当該長さがW2の小ドラムをそれぞれドラム載置台31に載置保持することが可能になっている(以下、大ドラムD1、小ドラムD2と称する)。なお、図4(a)及び(b)に示すように、上記長さW1は、ベース部材31aの左端に設けられた第1段差部31bの右端とベース部材31aの右端に設けられた第1段差部31bの左端との距離よりも若干量だけ短くなっており、長さW2は、左側に設けられた第2段差部31cの右端と右側に設けられた第2段差部31cの左端との距離よりも若干量だけ短くなっている。
【0030】
ここで、大ドラムD1をドラム載置台31に載置したとき、図4(b)に示すように、大ドラムD1の左右下部の両端は第1段差部31bの側面と近接し、前後下部の両端は第2段差部31cと接触する(図4(c)参照)。また、小ドラムD2を載置したときは、小ドラムD2の左右下部の両端は第2段差部31cの側面と近接し、前後下部の両端はベース部材31aと接触するようになっている(図4(c)参照)。
【0031】
また、ドラム駆動装置20の前側上方には、トラバーサ40が設けられている。トラバーサ40は、ケーブルの巻取り時に使用される案内装置であり、図1に示すように、ドラム駆動装置20の前側上方において左右方向に延びるトラバース軸40aと、トラバース軸40aにその軸方向に移動自在に取り付けられたガイド台40bと、ガイド台40b内に回転自在に設けられた上下一対のガイドローラ(図示せず)とから構成され、このガイドローラ間にケーブルを通してトラバーサ駆動モータ(図示せず)によりガイド台40bがトラバース軸40aに沿って左右方向に往復移動するようになっている。
【0032】
上記のようにガイド台40bを往復移動させることにより、ドラムへのケーブルの巻取り位置を調整することができるようになっているが、トラバーサ40のガイド台40bの左右方向への往復移動の中央位置は、ドラム載置台31の左右方向の中央位置と一致している。また、中央キャブ50にトラバーサ操作スイッチ(図示せず)が設けられ、このトラバーサ操作スイッチを操作することにより、ガイド台40bの往復移動の振幅を、ドラムの大きさ(大ドラムD1か小ドラムD2か)に合わせて切り替えられるようになっている。こうして、ガイド台40bの往復移動の折り返し地点がドラム把持装置22に把持されたドラムの両端と左右方向が同一になるように調整可能となっている。
【0033】
以上のような構成の軌陸作業車1にドラム駆動装置20を適用させる例として、まず、軌道上に敷設するための新トロリ線T2が巻き付けられたドラムDをドラム駆動装置20に設置する方法について説明する。最初に、ドラムDを図3に示すドラム載置台31に載置するが、大ドラムD1を載置する際には、大ドラムD1の左右両端下部が第1段差部31bの側面に近接、前後両端下部が第2段差部31cに接するように載置し、小ドラムD2を載置する際には、その左右両端下部が第2段差部31cの側面に近接、前後両端下部がベース部材31aに接するように載置する(図4参照)。
【0034】
ドラムDをドラム載置台31に載置した後には、ドラム昇降シリンダ32を作動させて、ドラムDの鍔部Dbの中央に設けられた孔部(図示せず)の位置がドラム回転支持部25の高さと同一になるまでドラム載置台31を上方に移動させる。そして、把持シリンダ23により、ドラム回転支持部25をドラムDの上記孔部に嵌合させドラムDの左右両端の鍔部Dbをプレート24で押し付けることにより、ドラム把持装置22によりドラムDを把持させる。ドラムDを把持させた後は、ドラム昇降シリンダ32により、ドラム載置台31を下方に移動させドラムDから離隔させる。こうして、ドラムDをドラム載置台31の左右一対に設けられた第1段差部31bまたは第2段差部31cの間に載置し、ドラムDの左右方向の位置を規制した後にドラム把持装置22によりドラムを左右方向から把持させることにより、ドラムDをドラム把持装置22により把持させた時、把持シリンダ23の不具合等によりドラムDの位置が左右方向にずれることを防止することが可能になる。
【0035】
ドラムDをドラム駆動装置20に設置した後、作業者は、運転キャブ2aで軌陸作業車1を走行させ、作業目的地に移動する。そして作業目的地に到着した後、ドラム操作装置51を操作して、ドラム駆動装置20から新トロリ線T2を順次繰出すとともに、図5に示すように、既に張架されている旧トロリ線T1にS字フック103を掛け、このS字フック103を介して旧トロリ線T1の下方に新トロリ線T2を延線していく。その後、後述するハンガー102から旧トロリ線T1を取り外し、新トロリ線T2をハンガー102に取り付け、取り外した旧トロリ線T1をS字フック103に引っ掛けておく。なお、ハンガー102は、トロリ線を鉄道レールR上に張架するケーブルである吊架線101に吊り下げ支持する部材である。このように、新トロリ線T2をハンガー102に取り付けた後、図5に示すように、ドラム操作装置51を操作して、ドラム駆動装置20に空のドラムDを回転駆動させることにより、旧トロリ線T1を順次巻き取っていく。その後、作業台12内の作業者によりS字フック103を回収し、トロリ線の張替え作業は完了する。
【0036】
ここで、上述したような旧トロリ線T1の巻き取り時には、図5に示すように、旧トロリ線T1はガイドローラ14に掛けられ、トラバーサ40を通ってドラムDに巻き取られるが、このとき、ドラムDを、ドラム載置台31の第1又は第2段差部31b,31cの間に載置し左右方向の位置を規制した状態でドラム把持装置22で把持させたことにより、ガイド台40b(図1参照)の往復移動の中央位置とドラムDの左右方向の中央位置が一致した状態とすることができる。よって、ドラムDへのケーブルの整列巻きができるようになるため、ドラムDへのケーブルの整列巻きができずその巻き取り容量が減ったり、ドラム駆動モータ21の左側の負荷と右側の負荷が均等でなくなったりするなどの問題を回避することができる。
【0037】
以上、本実施形態においては、ドラム載置台31に第1段差部31b及び第2段差部31cが設けられていることにより、ドラムDをドラム載置台31及びドラム把持装置22の左右方向の中央に位置させることが可能になるため、ドラムDへのケーブルの整列巻きができなくなる問題を防止することができる。また、大ドラムD1及び小ドラムD2を用いた場合においても同様に上記の問題を回避することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、上述したように第1及び第2段差部31b,31cにより大ドラムD1及び小ドラムD2の位置を左右方向の中央位置に規制する例について説明したが、上記段差部の代わりにドラム載置台31の上面に突起等を配設してドラムの移動を規制するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、上下方向に伸縮可能に構成されたドラム昇降シリンダ32を用いてドラム載置台31を昇降させる例について説明したが、ドラム載置台31を昇降させる装置について必ずしもこれに限定されるわけではなく、シリンダ式でない他の昇降装置を用いてもよい。さらに、ドラムを把持させる装置についても把持シリンダ23に限定されることなく、例えば、把持シリンダ23を用いずにドラム把持装置自体を左右方向にスライド移動させるようにしてドラムを把持するようにしてもよい。
【0040】
そして、本実施形態においては、ドラム載置台31に載置保持させたドラムを移動させドラム駆動装置20のドラム回転支持部25の位置と一致させる例について説明したが、ドラムとドラム駆動装置20の位置合わせの方法はこれに限られず、ドラム載置台にドラムを載置した後、ドラム駆動装置のドラム回転支持部(ドラム把持装置)をドラムの位置に移動させるようにしてもよい。
【0041】
さらに、本実施形態では、ドラム駆動モータ21が2つ設けられたタイプの軌陸作業車1に本発明に係るドラム駆動装置を適用させた例について説明したが、適用対象の車両はこれに限定されることはない。他のタイプの軌陸作業車はもちろん、軌陸作業車以外の車両に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
D ドラム D1 大ドラム
D2 小ドラム 1 軌陸作業車
20 ドラム駆動装置(ケーブルドラム駆動装置)
21 ドラム駆動モータ 22 ドラム把持装置
31 ドラム載置台 31b 第1段差部(高突出部)
31c 第2段差部(低突出部)
32 ドラム昇降シリンダ(載置台昇降装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することによりケーブルの巻き取りもしくは繰り出しが可能なケーブルドラムを回転駆動可能に支持する作業車のケーブルドラム駆動装置であって、
前記ケーブルドラムを載置する載置部を有し、前記載置部上に、前記ケーブルドラムの回転軸方向の長さより若干長い間隔を空けて設けられ上方に突出して形成される左右一対の第1突出部を備え、前記ケーブルドラムを、その回転軸方向が前記左右方向に一致するようにして、前記左右一対の第1突出部の間に位置して前記載置部上に載置させるように構成されたドラム載置台と、
前記左右方向に移動可能に構成され、前記移動により前記ケーブルドラムをその回転する回転軸の両端から回転可能に把持するドラム把持装置と、
前記ドラム把持装置に把持された前記ケーブルドラムを回転駆動するドラム駆動モータと、
前記ドラム把持装置および前記ドラム載置台の一方を他方に対して上下方向に相対移動させ、前記ドラム把持装置に前記ケーブルドラムを把持させた状態で前記ドラム載置台を前記ケーブルドラムから離反させることが可能な相対移動機構とを備えたことを特徴とする作業車のケーブルドラム駆動装置。
【請求項2】
前記相対移動機構は、前記ドラム載置台を前記ドラム把持装置に対して上下方向に相対移動させる載置台昇降装置であることを特徴とする請求項1に記載の作業車のケーブルドラム駆動装置。
【請求項3】
前記ドラム載置台の載置部が、前後方向に所定間隔を空けて設けられ上方に突出して形成され、前記第1突出部の上面よりもその上面が下方に位置する前後一対の第2突出部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車のケーブルドラム駆動装置。
【請求項4】
前記ケーブルドラムが、互いに回転軸方向の長さが異なる大ドラムと小ドラムにより構成され、
前記第1突出部は、
前記左右方向に前記大ドラムの回転軸方向の長さより若干長い間隔を空けて設けられる左右一対の高突出部と、
前記左右一対の高突出部の間に、前記左右方向に前記小ドラムの回転軸方向の長さより若干長い間隔を空けて設けられ、前記高突出部の上面よりもその上面が下方に位置する左右一対の低突出部とにより構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の作業車のケーブルドラム駆動装置。
【請求項5】
前記作業車は、道路走行用車輪及び軌道走行用車輪を有し、道路走行時には前記道路走行用車輪を用いて走行し、軌道走行時には前記軌道走行用車輪を用いて走行する軌陸作業車であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の作業車のケーブルドラム駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−208743(P2010−208743A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54720(P2009−54720)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】