説明

作業車の空調構造

【課題】生産性の低下やコストの高騰を招くことなく、空調ダクトでの結露の発生を防止する。
【解決手段】空調ユニットにより調節した調節空気を空調ユニットの吹出口から搭乗空間に案内する空調ダクト55を備え、空調ダクト55を発泡樹脂により形成し、キャビンのインナルーフとアウタルーフとの間に空間を形成し、前記空間に空調ダクト55を配備する。空調ダクト55に、ダクト固定用、ハーネス固定用のブラケット67を一体形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ユニットにより調節した調節空気を前記空調ユニットの吹出口からキャビンの搭乗空間に案内する空調ダクトを備えた作業車の空調構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車の空調構造においては、空調ダクトに、ポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂を利用して形成した樹脂成形品を採用するようにしている(例えば特許文献1参照)。そして、この構成では、空調ユニットによって温度調節した空気が空調ダクトの内部を流れると、空調ダクトの内部と外部との温度差により、空調ダクトにおいて結露が発生することがある。そこで、この結露を防止するために、従来では、空調ダクトの表面に断熱性の高い発泡ウレタンなどの発泡樹脂を貼り付けるようにしていた。
【特許文献1】特開2007−308032号公報(段落番号0056)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、空調ダクトの表面に発泡樹脂を貼り付けるようにすると、空調ダクトとは別に断熱用の発泡樹脂を用意する必要がある。そのため、部品点数の増加による生産性の低下やコストの高騰を招くようになっていた。そして、作業車の空調ダクトは、空調ユニットの吹出口からキャビン内の所定部位に分散配備した複数の吹出口にわたるように配備するものであることから、その形状がかなり複雑になっている。そのため、空調ダクトの形状に合わせて発泡樹脂を模ることや、空調ダクトの表面に発泡樹脂を隙間なく貼り付けることに、かなりの手間を要するようになっている。
【0004】
つまり、空調ダクトでの結露の発生を防止する上において生産性の低下やコストの高騰を招くようになっていた。
【0005】
本発明の目的は、生産性の低下やコストの高騰を招くことなく、空調ダクトでの結露の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
空調ユニットにより調節した調節空気を前記空調ユニットの吹出口からキャビンの搭乗空間に案内する空調ダクトを備え、
前記空調ダクトを発泡樹脂により形成してあることを特徴とする。
【0007】
この特徴構成によると、空調ダクト自体に高い断熱性を持たせることができる。そのため、断熱用の発泡樹脂を用意して空調ダクトの表面に貼り付けるようにしなくても、空調ユニットからの調節空気が空調ダクトの内部を流れることによって空調ダクトの内部と外部との間において温度差が発生する場合には、空調ダクト自体の高い断熱性により、その温度差に起因した空調ダクトにおける結露の発生を防止することができる。
【0008】
つまり、空調ダクトの形状に合わせて発泡樹脂を模る手間や、空調ダクトの表面に発泡樹脂を隙間なく貼り付ける手間を要することなく、空調ダクトの内部と外部との温度差に起因した空調ダクトにおける結露の発生を防止することができる。
【0009】
従って、生産性の低下やコストの高騰を招くことなく、空調ダクトでの結露の発生を防止することができる。
【0010】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記キャビンのインナルーフとアウタルーフとの間に空間を形成し、前記空間に前記空調ダクトを配備してあることを特徴とする。
【0011】
この特徴構成によると、空調ダクトをキャビンの搭乗空間に配備する場合に要する、空調ダクトを隠すための化粧部材を不要にすることができる。
【0012】
従って、部品点数の削減による生産性の向上やコストの削減を図ることができる。
【0013】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項2に記載の発明において、
外気導入口から取り入れた外気を、前記空間を介して前記空調ユニットの吸気口に供給するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
この特徴構成によると、インナルーフとアウタルーフとの間に形成する空間を、空調ユニットの吸気口に対する外気供給用の通路に有効利用することができる。これにより、その通路の全域を専用の部材で形成する場合に比較して、部品点数の削減や部品長さの短縮などを図ることができる。
【0015】
又、空調ダクトを配備する空間に外気を通すようにしても、空調ダクト自体が高い断熱性を有することにより、空調ユニットからの調節空気が流れる空調ダクトの内部と、空調ユニットによる調節前の外気が流れる空調ダクトの外部との温度差に起因して、空調ダクトにおいて結露が発生することを防止することができる。
【0016】
従って、部品点数の削減や部品長さの短縮などによる生産性の向上やコストの削減を図りながら、空調ダクトでの結露の発生を防止することができる。
【0017】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、
前記空調ダクトに、ダクト固定用のブラケットを一体形成してあることを特徴とする。
【0018】
この特徴構成によると、空調ダクトを固定するためのブラケットを用意する必要がなくなる。
【0019】
従って、部品点数の削減による生産性の向上やコストの削減を図ることができる。
【0020】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、
前記空調ダクトに、ハーネス固定用のブラケットを一体形成してあることを特徴とする。
【0021】
この特徴構成によると、車体側に形成するハーネス固定用のブラケットなどの数量を削減することができる。
【0022】
従って、加工数量の削減による生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明に係る作業車の空調構造を、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1はトラクタの全体左側面図、図2はトラクタの全体背面図、図3は空調構造を示すキャビンの一部切り欠き平面図、図4は空調構造を示すキャビンの横断平面図、図5は空調構造を示すキャビン後半部の横断平面図、図6は空調構造を示すキャビン前半上部の縦断側面図、図7は空調構造を示すキャビン後半上部の縦断側面図、図8は空調構造を示すキャビン後半部の横断底面図、図9はシャッタの構成を示す要部の縦断側面図、図10はシャッタの構成を示す要部の背面図、図11は空調ダクトの底面図、図12は空調ダクトの構成及びハーネス固定構造を示す要部の分解斜視図、図13は調節空気吹出部の構成を示す要部の縦断面図、図14は別実施形態での空調構造を示すトラクタの左側面図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、このトラクタは、前部フレーム1に防振搭載したエンジン2からの動力を、車体フレーム兼用のトランスミッションケース(以下、T/Mケースと略称する)3の内部に備えた走行用の変速装置(図示せず)などを介して左右一対の前輪4及び後輪5に伝達する四輪駆動型に構成してある。
【0026】
T/Mケース3の後部には、左右一対のリフトアーム6や動力取り出し用のPTO軸7などを装備してある。左右のリフトアーム6は、T/Mケース3の内部に備えた油圧式の昇降シリンダ(図示せず)の作動により上下方向に揺動する。
【0027】
PTO軸7には、エンジン2からの動力を、T/Mケース3の内部に備えた作業用の変速装置(図示せず)や作業クラッチ(図示せず)などを介して伝達する。
【0028】
図示は省略するが、T/Mケース3の後部には、左右のリフトアーム6及びリンク機構を介してロータリ耕耘装置やプラウなどの作業装置を昇降可能に連結することができる。そして、ロータリ耕耘装置などの駆動型の作業装置を連結する場合には、PTO軸7を作業装置の入力軸に伝動軸などを介して連結することにより、PTO軸7から取り出した動力により作業装置を駆動することができる。
【0029】
図1及び図2に示すように、トラクタの後半部には、ステアリングホイール8や運転座席9などを配備して搭乗運転部10を形成し、この搭乗運転部10を覆うキャビン11を装備してある。
【0030】
図1〜9に示すように、キャビン11は、キャビンフレーム12に、透明の曲面ガラスなどからなるウインドシールド13、透明の平面ガラスなどからなる後支点による外開き式の左右一対のドアパネル14、透明の曲面ガラスなどからなる外開き式の左右一対のサイドウインド15、透明の曲面ガラスなどからなる外開き式のリヤウインド16、及び、樹脂製のルーフ17、などを備えて構成してある。
【0031】
キャビンフレーム12は、異形パイプからなる左右一対のフロントピラー18、左右一対のクォータピラー19、角パイプからなる左右一対のリヤピラー20、断面形状がコの字状のフロントクロスメンバ21、断面形状がコの字状の左右一対のサイドメンバ22、及び、断面形状がコの字状のリヤクロスメンバ23、などを溶接して構成してある。
【0032】
リヤクロスメンバ23は、左右のリヤピラー20の間に空調ユニット24の配置空間を確保するために、左右のリヤピラー20の上端部から所定距離だけ下げた高さ位置に配置してある。リヤクロスメンバ23の上部には、空調ユニット24を支持する3つの支持ステー25を装備してある。
【0033】
ルーフ17は、インナルーフ26やアウタルーフ27などにより、インナルーフ26とアウタルーフ27との間に空間28を有するように構成してある。
【0034】
インナルーフ26は、その中央部がアウタルーフ27に向けて膨出するように真空成形した樹脂成形品であり、その周縁部を、フロントクロスメンバ21、左右のサイドメンバ22、及び、リヤクロスメンバ23の各下面に接合してある。これにより、キャビン11における天井部内面の見栄えを良くしながら、圧迫感を与えにくい広い搭乗空間29を確保してある。
【0035】
アウタルーフ27は、その前後中間部に外気導入経路30を有するようにブロー成形した樹脂成形品であり、その周縁部を、フロントクロスメンバ21及び左右のサイドメンバ22の各上面に支持させてある。又、その後端部が空調ユニット24の上部を覆う上部カバーとして機能するように、後端部をリヤウインド16よりも車体後方側に延出させてある。
【0036】
アウタルーフ27には、空調ユニット24の後下部を覆う下部カバー31を連結してある。そして、インナルーフ26の後端部とアウタルーフ27の後端部と下部カバー31により、空調ユニット24を収納する収納空間32を形成してある。
【0037】
図1〜5、図9及び図10に示すように、インナルーフ26における後部の左右中央側には、ルーフ17の空間28を搭乗空間29に連通する左右一対の連通口33を形成してある。アウタルーフ27における後部の左右中央側には、ルーフ17の空間28を外気導入経路30に連通する左右一対の連通口34を、インナルーフ26の連通口33と対向するように形成してある。
【0038】
アウタルーフ27の後部には、左右のサイドウインド15を開けた場合に、キャビン11の内部に雨水が降り込むことを防止する左右一対の庇35を一体形成してある。左右の庇35は、その内部が外気導入経路30の一部になるように中空状に形成してある。そして、左側の庇35の底壁にのみ、外気導入経路30を外部に連通する外気導入口36を形成してある。外気導入口36には、外気導入口36からの塵埃や洗浄水などの入り込みを防止するエアフィルタ37を装備してある。
【0039】
図5、図7〜9及び図10に示すように、インナルーフ26の連通口33とアウタルーフ27の連通口34との間には、左右向きの支軸38を支点にして上下揺動し、かつ、図外のバネにより上向きに揺動付勢したシャッタ39を配備してある。シャッタ39の遊端部には前後向きの連係軸40を備えてある。連係軸40は、前後向きの支点ピン41を支点にして揺動するクランクアーム42や連係ワイヤ43などを介して、電動モータ44の操作アーム45に連係してある。
【0040】
この連係により、電動モータ44を作動させることによって、シャッタ39を、バネの作用に抗して下方に向けて揺動変位させた状態と、バネの作用によって上方に向けて揺動変位させた状態とに切り換えることができる。
【0041】
シャッタ39は、下方に向けて揺動変位した状態では、インナルーフ側の連通口33の開口面積を小さくしながら、アウタルーフ側の連通口34を開放する状態となって、搭乗空間29と外気導入経路30とをルーフ17の空間28に連通する。これにより、搭乗空間29からの内気と外気導入経路30からの外気とを、ルーフ17の空間28を介して空調ユニット24に供給することができる。又、上方に向けて揺動変位した状態では、インナルーフ側の連通口33を大きく開放し、かつ、アウタルーフ側の連通口34を閉塞する状態となって、搭乗空間29のみをルーフ17の空間28に連通する。これにより、搭乗空間29からの内気のみを、ルーフ17の空間28を介して空調ユニット24に供給することができる。
【0042】
つまり、電動モータ44の作動でシャッタ39を上下方向に揺動変位させることにより、空調ユニット24に対する未調節空気の供給状態を、搭乗空間29からの内気に外気導入経路30からの外気を混入して空調ユニット24に供給する外気混入状態と、搭乗空間29からの内気のみを空調ユニット24に供給する内気循環状態とに切り換えることができる。
【0043】
図3〜5、図7及び図8に示すように、空調ユニット24は、ケーシング46の内部に、シロッコファン47、エバポレータ48、及びヒータ49、などを備えて構成してある。又、その全体が運転座席9よりも車体後方側に位置するように各支持ステー25により支持してある。そして、このように空調ユニット24を配備することにより、空調ユニット24をルーフ17の前端部に配備する場合に比較して、キャビン11の全高を極力低くしながら広い搭乗空間29を確保することができる。又、能力の高い大型の空調ユニット24を装備することが可能になり、更に、前上方に対する視界が広がることから、例えば、フロントローダ(図示せず)を連結装備したローダ作業時には、上昇させたバケット位置の視認が容易になり、作業性が向上する。
【0044】
ケーシング46は、その右上部に吸気口50を形成し、その前部に左右一対の吹出口51を形成してある。シロッコファン47は、エバポレータ48の右側方に位置し、吸気口50から取り込んだ未調節空気を、エバポレータ48とそれに対向するケーシング46の後壁52との間に形成した給気経路53を介して、エバポレータ48及びヒータ49に供給する。
【0045】
ケーシング46の後壁52は、シロッコファン47からの未調節空気をエバポレータ48の全域に略均一に案内する案内壁として機能するように、シロッコファン47から離れる左端側ほどエバポレータ48に接近する多段形状に形成してある。このようにケーシング46の後壁52を多段形状に形成することにより、後壁52の左端部とルーフ17の後部壁面との間に比較的大きい空間54を形成することができる。そして、この空間54を有効利用して、ケーシング46の後壁52にシャッタ操作用の電動モータ44を装備してある。
【0046】
図示は省略するが、搭乗運転部10には、空調用のオン・オフスイッチ、温度設定器、風量設定器、及び、空調ユニット24に対する給気状態切り換え用の切換スイッチ、などを配備してある。
【0047】
図3〜7及び図11〜13に示すように、ケーシング46の各吹出口51には、対応する吹出口51からの調節空気をキャビン11の搭乗空間29に案内する左右一対の空調ダクト55を外嵌してある。
【0048】
左右の空調ダクト55は、ブロー成形によって発泡樹脂を中空の略L字状に成形した樹脂成形品であり、ルーフ17の空間28に、ケーシング46の吹出口51からキャビン11の前端部に向けて、左右のサイドメンバ22とフロントクロスメンバ21とに沿って延出するように配備してある。
【0049】
左右の空調ダクト55の中間部には、空調ユニット24からの調節空気を、操縦者に対する左右上部の前側から操縦者に向けて吹き出させる第1吹出口56と第2吹出口57とを切り取り形成してある。左右の空調ダクト55の前端部には、空調ユニット24からの調節空気を、キャビン11における前端上部の横側端側から下方に向けて吹き出させる第3吹出口58と、キャビン11における前端上部の左右中央側から下方に向けて吹き出させる第4吹出口59とを切り取り形成してある。
【0050】
各吹出口56〜59には、インナルーフ26に対する左右の空調ダクト55の位置決め部材に兼用する吹出グリル60〜63を係止装備してある。第1吹出口56及び第2吹出口57に装備する吹出グリル60,61は、第1吹出口56又は第2吹出口57からの調節空気を、操縦者の上半身側に向かわせる状態や下半身側に向かわせる状態などに向き変更可能に構成してある。第3吹出口58に装備する吹出グリル62は、第3吹出口58からの調節空気を、左右のドアパネル14や、左右のフロントピラー18に装備したサイドミラー64(図1及び図2参照)に向けて吹き出させる状態、あるいは、操縦者の足元側に向けて吹き出させる状態などに向き変更可能に構成してある。第4吹出口59に装備する吹出グリル63は、第4吹出口59からの調節空気を、ウインドシールド13に向けて吹き出させる状態や、操縦者の足元側に向けて吹き出させる状態などに向き変更可能に構成してある。
【0051】
左右の空調ダクト55は、第1吹出口56と第3吹出口58との間に、第1吹出口56よりも車体前方側への調節空気の流量を低下させることにより、第1吹出口56から吹き出す調節空気の流量を確保する第1絞り部65を形成してある。第2吹出口57と第3吹出口58との間には、第2吹出口57よりも車体前方側への調節空気の流量を低下させることにより、第2吹出口57から吹き出す調節空気の流量を確保する第2絞り部66を形成してある。
【0052】
この構成により、空調ユニット24をルーフ17の後部に配備して居住性の向上などを図るようにしながらも、調節空気を、操縦者、左右のドアパネル14におけるサイドミラー64の目視領域、左右のサイドミラー64、あるいは、ウインドシールド13の前方視界領域、などに優先的に供給することが可能になる。これにより、キャビン11の搭乗空間29での快適性を向上させることができる上に、ウインドシールド13の前方視界領域や、左右のドアパネル14におけるサイドミラー目視領域などを晴らすことができて、前方確認やサイドミラー64による後方確認などが行い易くなり、結果、操縦性や作業性の向上を図ることができる。
【0053】
特に、第1吹出口56の前方に第1絞り部65が位置し、第2吹出口57の前方に第2絞り部66が位置することにより、第1吹出口56及び第2吹出口57から操縦者に向けた調節空気の車体後方向きの吹き出しを良好に行なうことができる。
【0054】
前述したように、左右の空調ダクト55は、ブロー成形によって発泡樹脂を中空の略L字状に成形した樹脂成形品であり、詳しくは、その材料にポリプロピレンを採用し、高い断熱性を得るために、2mm以上(好ましくは3〜4mm)の厚みを有するように発泡させて中空の略L字状に形成したものである。
【0055】
このように、左右の空調ダクト自体に高い断熱性を持たせることにより、空調ダクト55を、外気導入経路30からの外気などの未調節空気を空調ユニット24の吸気口50に供給する際に、未調節空気の通路として使用するルーフ17の空間28に配備するようにしても、冷房時に、空調ユニット24により温度調節した冷気が流れる空調ダクト55の内部と、空調ユニット24による温度調節前の外気などの温かい空気が流れる空調ダクト55の外部との温度差に起因して、空調ダクト55の表面に結露が発生することを防止することができる。
【0056】
そして、このように結露を防止することによって、結露による水滴が搭乗空間29に浸入するなどの不都合の発生を防止することができる。
【0057】
図3、図4、図6及び図11〜13に示すように、左右の空調ダクト55には、その中間部の外側部位と角部の外側部位と第4吹出口側の端部とのそれぞれにブラケット67を一体形成してある。それらのブラケット67は、空調ユニット24や電動モータ44などに対する複数のハーネス68を、ハーネス用の固定バンド69を介して固定するための固定部70と、一対の補強部71とを有するように、又、それらのブラケット67のうちの角部のブラケット67のみが、左右のサイドメンバ22に備えた支持具72にボルト連結して固定するための連結部73をも有するように屈曲形成してある。
【0058】
つまり、この構成では、左右の空調ダクト55に一体形成した各ブラケット67のうち、中間部のブラケット67と端部のブラケット67とを、ハーネス68を固定するための専用のものに形成し、角部のブラケット67を、ハーネス固定用とダクト固定用とを兼ねるものに形成してある。
【0059】
これにより、左右の空調ダクト55は、その開口端側を、ケーシング46の対応する吹出口51に対して車体前方側から外嵌し、かつ、その角部に位置するブラケット67の連結部73を、対応するサイドメンバ22の支持具72にボルト連結することにより、ルーフ17の空間28における所定位置に所定姿勢で固定することができる。
【0060】
又、複数のハーネス71を束ねた固定バンド69を対応するブラケット67の固定部70に係止連結することにより、複数のハーネス68を、サイドメンバ22と空調ダクト55との間などに束ねて通した状態で容易に固定することができる。
【0061】
〔別実施形態〕
【0062】
〔1〕作業車としては、空調ユニット24により調節した調節空気を、空調ユニット24の吹出口51からキャビン11の搭乗空間29に案内する空調ダクト55を備えるものであれば、トラクタ以外の作業車、具体的には、コンバインなどの農用の作業車、バックホーなどの建設用の作業車、あるいは運搬車などの作業車、などであってもよい。
【0063】
〔2〕空調構造としては、アウタルーフ27に外気導入経路30を形成せずに、インナルーフ26とアウタルーフ27との間に形成した空間28のみを介して、外気導入口36から取り入れた外気を空調ユニット24の吸気口50に供給するように構成したものであってもよい。
【0064】
〔3〕空調構造としては、外気導入口36から取り入れた外気を空調ユニット24の吸気口50に供給するための専用のダクトを備えるように構成したものであってもよい。
【0065】
〔4〕空調構造としては、空調ユニット24に対する未調節空気の供給状態を、外気導入経路30からの外気のみを空調ユニット24に供給する外気供給状態と、搭乗空間29からの内気のみを空調ユニット24に供給する内気循環状態とに切り換え可能に構成したものであってもよい。又、外気導入経路30からの外気のみを空調ユニット24に供給するように構成したものや、搭乗空間29からの内気と外気導入経路30からの外気とを混合したもののみを空調ユニット24に供給するように構成したものであってもよい。
【0066】
〔5〕空調ユニット24や空調ダクト55の配置、及び、空調ダクト55の形状や装備数量、並びに、空調ダクト55における吹出口56〜59の数量や配置などは種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、図示は省略するが、インナルーフ26とアウタルーフ27との間に形成した空間28の車体前部側に空調ユニット24を配備し、その空間28に、空調ダクト55を空調ユニット24の吹出口51から車体後部側に向けて延出するように配備してもよい。
【0068】
又、図14に示すように、空調ユニット24を運転座席9の下方に配備し、空調ダクト55を、搭乗ステップ76の下方を通って、空調ユニット24の吹出口51から、フロントパネル77に形成した複数の吹出口78にわたるように形成することにより、空調ユニット24からの調節空気を、搭乗ステップ6の下方を通る空調ダクト55を介してキャビン11の搭乗空間29に供給するように構成してもよい。
【0069】
更に、空調ダクト55を、インナルーフ26とアウタルーフ27との間に形成した空間28の左右中央を通るように配置してもよく、又、空調ダクト55を、空調ユニット24の吹出口51からキャビン11の前端部にわたるI字状やT字状などに形成してもよい。
【0070】
〔6〕空調ダクト55としては、ポリスチレンやポリエチレンなどの材料を、高い断熱性を得るために発泡させて中空に形成したものであってもよい。
【0071】
〔7〕空調ダクト55に、空調ダクト55を固定するための専用のブラケット67を一体形成するようにしてもよい。
【0072】
〔8〕空調ダクト55に一体形成するダクト固定用のブラケット67やハーネス固定用のブラケット67の形状や数量及び形成箇所などは種々の変更が可能である。
【0073】
〔9〕外気導入口36の形成箇所は種々の変更が可能である。例えば、アウタルーフ27の前端部又は後端部の左右中央部に外気導入口36を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】トラクタの全体左側面図
【図2】トラクタの全体背面図
【図3】空調構造を示すキャビンの一部切り欠き平面図
【図4】空調構造を示すキャビンの横断平面図
【図5】空調構造を示すキャビン後半部の横断平面図
【図6】空調構造を示すキャビン前半上部の縦断側面図
【図7】空調構造を示すキャビン後半上部の縦断側面図
【図8】空調構造を示すキャビン後半部の横断底面図
【図9】シャッタの構成を示す要部の縦断側面図
【図10】シャッタの構成を示す要部の背面図
【図11】空調ダクトの底面図
【図12】空調ダクトの構成及びハーネス固定構造を示す要部の分解斜視図
【図13】調節空気吹出部の構成を示す要部の縦断面図
【図14】別実施形態での空調構造を示すトラクタの左側面図
【符号の説明】
【0075】
11 キャビン
24 空調ユニット
26 インナルーフ
27 アウタルーフ
28 空間
29 搭乗空間
36 外気導入口
50 吸気口
51 吹出口
55 空調ダクト
67 ブラケット(ダクト固定用、ハーネス固定用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ユニットにより調節した調節空気を前記空調ユニットの吹出口からキャビンの搭乗空間に案内する空調ダクトを備え、
前記空調ダクトを発泡樹脂により形成してあることを特徴とする作業車の空調構造。
【請求項2】
前記キャビンのインナルーフとアウタルーフとの間に空間を形成し、前記空間に前記空調ダクトを配備してあることを特徴とする請求項1に記載の作業車の空調構造。
【請求項3】
外気導入口から取り入れた外気を、前記空間を介して前記空調ユニットの吸気口に供給するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の作業車の空調構造。
【請求項4】
前記空調ダクトに、ダクト固定用のブラケットを一体形成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の作業車の空調構造。
【請求項5】
前記空調ダクトに、ハーネス固定用のブラケットを一体形成してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の作業車の空調構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−149731(P2010−149731A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330711(P2008−330711)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】