説明

作業車の運転部構造

【課題】 荷物の運搬、レジャー、軽作業、などの多目的に利用することのできる作業車の運転部構造において、。
【解決手段】 空調ユニット20を収容したボンネット6を運転キャビンの前方に配備し、前記空調ユニット20に、調温空気を後方に向けて送出する後ダクト35と、調温空気を前方に向けて送出する前ダクト36とを備え、運転キャビンの前部に配備されたダッシュボード13に、上部吹出し部U、デフロストグリル28、および、下部吹出し部Dをそれぞれ設け、上部吹出し部Uを後ダクト35に連通接続するとともに、前ダクト36を空調ユニット20の下側を通して後方に延出し、デフロストグリル28、および、下部吹出し部Dを前ダクト36に連通接続してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の運搬、レジャー、軽作業、などの多目的に利用することのできる作業車の運転部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車としては、例えば、特許文献1に開示されているように、転倒保護フレームに屋根を設けた日除けで運転部を覆うように構成したものが知られている。
【特許文献1】特開2005−178783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の作業車においても、運転部のキャビン化が要望されており、運転キャビンを備えた場合には、キャビン内の空調が必要となる。
【0004】
本発明は、このような要望を満たすためになされたものであって、キャビン内を好適にの空調するとともに、前方視界を確保して快適な環境のもとで運転することができる作業車の運転部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、空調ユニットを収容したボンネットを運転キャビンの前方に配備し、前記空調ユニットに、調温空気を後方に向けて送出する後ダクトと、調温空気を前方に向けて送出する前ダクトとを備え、運転キャビンの前部に配備されたダッシュボードに、上部吹出し部、デフロストグリル、および、下部吹出し部をそれぞれ設け、前記上部吹出し部を前記後ダクトに連通接続するとともに、前記前ダクトを空調ユニットの下側を通して後方に延出し、前記デフロストグリル、および、下部吹出し部を前ダクトに連通接続してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、夏季や高温時には、空調ユニットから後ダクトに冷風を送り出すことで、上部吹出し部から冷風を吹出して運転キャビンの内部全体を好適に冷房することができる。冬季や寒冷時には、空調ユニットから前ダクトに温風を送り出すことで、デフロストグリル、および、下部吹出し部から温風を吹き出し、足元を主体に運転キャビン内部を好適に暖房することができるとともに、運転キャビンにおけるフロントガラスでの曇り発生を未然に回避することができる。
【0007】
このように、空調ユニットから送出される調温空気を後ダクトとの前ダクトに分けて送出することで、冷房時に主として使用する上吹出し部と、暖房時に主として使用する下部吹出し部に別径路で調温空気を供給することができ、径路の開閉や吹出し口での開閉を行うことで、冷房運転および暖房運転に好適な調温空気吹出しを行うことができる。
【0008】
前ダクトを空調ユニットの下側を通って後方に延出することで、ボンネット内に空調機器を嵩低く収容配置することができ、ボンネットを低くすることができる。
【0009】
従って、本発明によると、作業車における運転キャビン内を好適に空調することができるとともに、ボンネットに収容する空調機器を嵩低く配備することでボンネット高さを低く抑え、前方視界を確保して快適な環境のもとで運転することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記空調ユニットに備えられた主ダクトにエバポレータを配備して、エバポレータの下手にヒータを配備し、エバポレータとヒータとの間において主ダクトに前記後ダクトを連通接続するとともに、ヒータの下手において主ダクトに前記前ダクトを連通接続し、エバポレータを通過した冷風とヒータを通過した温風を混合して後ダクトから送り出し可能に構成して、冷風と温風との混合比率を変更調節する温度調節ドアをエバポレータとヒータとの間に配備し、ヒータを通過した温風を、前ダクトへのみ送り出す状態と、前ダクトと後ダクトとに送り出す状態と、後ダクトへのみ送り出す状態とに切換え可能な吹出しモード選択ドアをヒータの下手に配備してあるものである。
【0011】
上記構成によると、吹出しモード選択ドアを操作して前ダクトへの温風送り出しを阻止した状態で、温度調節ドアを操作して冷風に混合する冷風の量を調節することにより、後ダクトに送り出す冷風の温度を簡単に加減することができる。
【0012】
吹出しモード選択ドアを操作して温風を前ダクトと後ダクトとに送り出す状態を現出することで、上部吹出し部、デフロストグリル、および、下部吹出し部の全てから温風を吹出すことができ、冷房運転時におけるフロントガラスの曇り除去を行うことができる。
【0013】
吹出しモード選択ドアを操作して前ダクトへのみ温風を送り出す状態を現出することで、下部吹出し部から温風を吹出して好適な暖房運転を行うことができる。
【0014】
このように、第2の発明によると、上記第1の発明を好適に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、作業車の一例である多目的車両の側面が、図2に、その平面がそれぞれ示されている。この作業車は、前半が低く後半が高い段違い状に形成された車体フレーム1の前後に、独立懸架された左右の操向自在な前輪2と、独立懸架された左右の後輪3とが装備されるとともに、車体フレーム1の後半部下方に原動部4が配備され、車体フレーム1の前後中間に運転部を構成する運転キャビン5が設けられ、運転キャビン5の前端部に連なるボンネット6が車体フレーム1の前部に装備され、さらに、車体フレーム1の後半部上方に油圧シリンダ7によって後部支点p回りに上下に揺動されるダンプ荷台8が配備された基本構造を備えている。
【0016】
原動部4は、車体フレーム1の後半部下方に防振支持したマウントフレーム9に、前後に直結されたエンジン10とミッションケース11を搭載して構成されており、ミッションケース11で変速された動力が左右に取出されて後輪3に伝達されるとともに、ミッションケース11から車体前方へ向けて軸伝達された走行系動力で左右の前輪2が駆動され、四輪駆動での走行が行われるようになっている。
【0017】
運転キャビン5の内部後方には、左側を運転席、右側を助手席とした二人掛け用の座席12が配備されるとともに、運転キャビン5の内部前方にはダッシュボード13が配備されている。図5に示すように、ダッシュボード13の左側に操縦ハンドル14や変速レバー15、などの運転用の操作具類と計器、等が設けられ、図示されていないが、ダッシュボード13における左側の足元には加速ペダルやブレーキペダルが配備されている。
【0018】
ボンネット6は開閉自在に構成されており、その内部には、図3に示すように、空調ユニット20、空調用のコンデンサ21、などの空調機器類が収容配備されている。図7に示すように、空調ユニット20には、前記コンデンサ21で凝縮した冷媒が流通されるエバポレータ22、暖房用のヒータ23、および、調温空気を送出する縦軸型の送風ファン24が備えられ、前記コンデンサ21は電動ファン25で冷却されるようになっている。
【0019】
図5に示すように、前記ダッシュボード13における左右中央部位の上部に、上部吹出し部Uを構成する左右一対のセンターグリル26が設けられるとともに、ダッシュボード13における左右両端近くに、別の上部吹出し部Uを構成するサイドグリル27が設けられ、ダッシュボード13における上部に左右一対のデフロストグリル28設けられ、さらに、ダッシュボード13の左右下部に、下部吹出し部Dを構成する足元グリル29が設けられている。
【0020】
上部吹出し部Uとしてのセンターグリル26およびサイドグリル27は、それぞれ吹出し方向の変更が可能に構成されており、左側の運転者および右側の添乗者の好みの風向きで調温空気を吹出すことができるようになっている。デフロストグリル28は、フロントガラス5aに向けて左右に幅広く調温空気を吹出すよう構成されている。下部吹出し部Dとしての足元グリル27は、運転者および添乗者の足元に向けて調温空気を吹出すよう構成されている。
【0021】
図4に示すように、センターグリル26とサイドグリル27は、キャビン内に装備された第1内部ダクト31に装備されるのに対して、デフロストグリル28と足元グリル29は、キャビン内に装備された別の第2内部ダクト32に装備され、センターグリル26およびサイドグリル27の風路と、デフロストグリル28および足元グリル29の風路が分けられている。
【0022】
前記空調ユニット20には、送風ファン24に接続された吸気ダクト33、送風ファン24から送出されてきた空気を車体右方向に案内する主ダクト34が備えられ、この主ダクト34の流路上手にエバポレータ22が組み込まれるとともに、その流路下手にヒータ23が組み込まれている。主ダクト34には、調温された空気を後方に向けて送り出す後ダクト35と、調温空気を前方に向けて送り出す前ダクト36とが連設されるとともに、後ダクト35および前ダクト36への調温空気の送り出しを制御するために温度調節ドア37と吹出しモード切換えドア38が装備されている。主ダクト34の右側後部には、ヒータ23の流路下手と後ダクト35とを連通する迂回通路39が備えられている。
【0023】
前記吸気ダクト33は、ダッシュボード13の左側下方において、キャビン前壁5bに設けられたフィルタ付きの内気導入口40に連通接続されるとともに、吸気ダクト33の上面にはフィルタ付きの外気導入口41が形成されている。吸気ダクト33には吸気切換えドア42が内装されており、これを切換えることで、キャビン内の内気あるいはボンネット内の外気のいずれかを選択吸入して送風ファンに24に導入することができるようになっている。
【0024】
エバポレータ22は、空調運転モードでは常に一定量の冷媒が流動され、空調停止モードで冷媒の流動が停止されるようになっている。ヒータ23は、原動部4に配備されたエンジン冷却用のラジエータ16の冷却水(温水)を循環流動させるものであり、図示されていないバルブの開度調節によって温水の流動量を変更することが可能となっている。
【0025】
後ダクト35は、エバポレータ22とヒータ23との間に臨んで主ダクト34に連通接続されており、後ダクト35の後端部がキャビン前壁5bにおいて前記第1内部ダクト31に連通接続されている。前ダクト36は、ヒータ23の流路下手において主ダクト34に連通接続されて主ダクト34の下側を通って後方に延出され、キャビン前壁5bにおいて前記第2内部ダクト32に連通接続されている。
【0026】
図5,図6に示すように、ダッシュボード13の右側には空調用のオン・オフスイッチ45、吸気切換えドア42を切換え作動させる内外気切換えスイッチ46、温度調節ダイヤル47、キャビン内への吹出し位置を選択する吹出しモード選択ダイヤル48、送風ファン24からの送風量を5段階(停止を含む)に調節する風量調節ダイヤル49が備えられている。
【0027】
吹出し選択ダイヤル48は3つの操作位置(A),(B),(C)に切換え可能であり、操作位置(A)を選択すると、図7に示すように、吹出しモード切換えドア38が前方閉じ位置(a)に切換えられ、操作位置(B)を選択すると、図8に示すように、吹出しモード切換えドア38が中間位置(b)に切換えられ、操作位置(C)を選択すると、図9に示すように、吹出しモード切換えドア38が後方閉じ位置(c)に切換えられるようになっており、以下に、運転例を説明する。
【0028】
冷房運転時には、オン・オフスイッチ45を入れ、温度調節ダイヤル47を左半部の冷房域に操作し、風量調節ダイヤル49で所望の送風量を選択し、吹出しモード選択ダイヤル48を操作位置(A)に操作する。これによって、図7に示すように、吹出しモード切換えドア38が前方閉じ位置(a)に切換えられられるとともに、温度調節ドア37が温度調節ダイヤル47の操作位置に対応した位置に切換えられる。
【0029】
温度調節ダイヤル47が冷房域の中間位置にセットされた状態では、温度調節ドア37は作動範囲の中間に操作され、エバポレータ22を出た冷風の多くが後ダクト35に送り込まれるとともに、エバポレータ22を出た冷風の一部がヒータ23を通過したのち迂回通路39を経て後ダクト35に送り込まれ、ヒータ23を通過しない冷風とヒータ23で暖められた風とが混合されて後ダクト35に送り込まれ、センターグリル26とサイドグリル27から吹き出される。
【0030】
この場合、温度調節ダイヤル47を左方(冷房強)に操作するほど温度調節ドア37が開放側(ヒータ側)に操作されてヒータ23を通過する風量が減少されるとともに、ヒータ23への温水循環量が減少制御され、冷風に混合される温風の量が減少するとともに、迂回通路39を流れる温風の温度が下げられて、温度調節ダイヤル47の操作位置に対応した温度に調整された冷風がセンターグリル26とサイドグリル27から吹き出される。温度調節ダイヤル47を左方に最大限操作して冷房域の最強位置にすると、温度調節ドア37はヒータ23の前面に重合された位置まで操作されるとともにヒータ23への温水循環が遮断され、後ダクト35に最も低温の冷風が送り出される。
【0031】
冷房運転状態において、フロントガラス5aが曇ると、吹出しモード選択ダイヤル48を操作位置(B)に切換えることで、図8に示すように、吹出しモード切換えドア38が中間位置(b)に切換えられ、ヒータ23を通過した温風の一部が前ダクト36に送り出され、この温風がデフロストグリル28から吹き出してフロントガラス5aの曇りが除去される。
【0032】
暖房運転時には、オン・オフスイッチ45を入れ、温度調節ダイヤル47を右半部の暖房域に操作し、風量調節ダイヤル49で所望の送風量を選択し、吹出し選択ダイヤル48を操作位置(C)に操作する。これによって、図9に示すように、吹出しモード切換えドア38が後方閉じ位置(c)に切換えられられるとともに、温度調節ドア37が閉じ位置に操作され、かつ、エバポレータへ22への冷媒の循環が停止され、調温されることなくエバポレータ22を通過した風がヒータ23を通過して前ダクト36に送り込まれ、デフロストグリル28と足元グリル29から吹き出される。この場合、温度調節ダイヤル47を右方に操作するほどヒータ23への温水循環量が増加されて温風の温度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】作業車の全体側面図
【図2】作業車の全体平面図
【図3】空調手段の配置を示す平面図
【図4】空調手段の縦断側面図
【図5】ダッシュボードの正面図
【図6】空調用操作部の正面図
【図7】冷房運転モードの空気流動を示す平面図
【図8】冷房・曇り除去運転モードの空気流動を示す平面図
【図9】暖房運転モードの空気流動を示す平面図
【符号の説明】
【0034】
5 運転キャビン
6 ボンネット
13 ダッシュボード
20 空調ユニット
22 エバポレータ
23 ヒータ
28 デフロストグリル
34 主ダクト
35 後ダクト
36 前ダクト
37 温度調節ドア
38 吹出しモード選択ドア
U 上部吹出し部
D 下部吹出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ユニットを収容したボンネットを運転キャビンの前方に配備し、前記空調ユニットに、調温空気を後方に向けて送出する後ダクトと、調温空気を前方に向けて送出する前ダクトとを備え、
運転キャビンの前部に配備されたダッシュボードに、上部吹出し部、デフロストグリル、および、下部吹出し部をそれぞれ設け、前記上部吹出し部を前記後ダクトに連通接続するとともに、
前記前ダクトを空調ユニットの下側を通して後方に延出し、前記デフロストグリル、および、下部吹出し部を前ダクトに連通接続してあることを特徴とする作業車の運転部構造。
【請求項2】
前記空調ユニットに備えられた主ダクトにエバポレータを配備して、エバポレータの下手にヒータを配備し、エバポレータとヒータとの間において主ダクトに前記後ダクトを連通接続するとともに、ヒータの下手において主ダクトに前記前ダクトを連通接続し、
エバポレータを通過した冷風とヒータを通過した温風を混合して後ダクトから送り出し可能に構成して、冷風と温風との混合比率を変更調節する温度調節ドアをエバポレータとヒータとの間に配備し、
ヒータを通過した温風を、前ダクトへのみ送り出す状態と、前ダクトと後ダクトとに送り出す状態と、後ダクトへのみ送り出す状態とに切換え可能な吹出しモード選択ドアをヒータの下手に配備してある請求項1記載の作業車の運転部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−120249(P2008−120249A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306388(P2006−306388)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】