説明

作業車両

【課題】走行機体に昇降可能に連結された作業機を昇降操作する昇降レバーの回動を規制して作業機の下降限を設定する規制部材を備えた作業車両において、昇降レバーによる作業機の昇降操作時、オペレータが規制部材に不測に触れることが防止される作業車両を提供することを課題とする。
【解決手段】走行機体3と、走行機体3に昇降可能に連結された作業機と、前記作業機を昇降操作する昇降レバー17と、昇降レバー17の回動を規制して作業機の下降限を設定する規制部材31とを備え、前記作業機が昇降レバー17の回動位置に応じた昇降高さに制御される作業車両において、昇降レバー17と一体回動する操作アーム36を設け、規制部材31の操作部48を昇降レバー17の回動範囲と重ならない下方側の側方位置に配置し、規制部材31と操作アーム36との当接により昇降レバーの回動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行機体に連結された作業機の昇降操作を行う昇降レバーを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体と、走行機体に昇降可能に連結された作業機と、前記作業機を昇降操作する昇降レバーとを備え、前記作業機が昇降レバーの回動位置に応じた昇降高さに制御される作業車両の従来公知である。
【0003】
そして、上記作業車両をさらに改良したものとして、昇降レバーの回動を規制して作業機の下降限を設定する規制部材を設けることにより、作業環境に応じて作業機の下降限を適宜変更設定することができる特許文献1に示す作業車両が公知になっている。
【特許文献1】実公平3−33214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献の作業車両は、規制部材の操作部を昇降レバーの回動範囲内に設けているため、昇降レバーによる作業機の昇降操作時、オペレータが規制部材に不測に触れ、オペレータの意図しない作業機の昇降操作が行われることがあるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、走行機体に昇降可能に連結された作業機を昇降操作する昇降レバーの回動を規制して作業機の下降限を設定する規制部材を備えた作業車両において、昇降レバーによる作業機の昇降操作時、オペレータが規制部材に不測に触れることが防止される作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明の作業車両は、第1に走行機体3と、走行機体3に昇降可能に連結された作業機と、前記作業機を昇降操作する昇降レバー17と、昇降レバー17の回動を規制して作業機の下降限を設定する規制部材31とを備え、前記作業機が昇降レバー17の回動位置に応じた昇降高さに制御される作業車両において、昇降レバー17と一体回動する操作アーム36を設け、規制部材31の操作部48を昇降レバー17の回動範囲と重ならない下方側の側方位置に配置し、規制部材31と操作アーム36との当接により昇降レバーの回動を規制することを特徴としている。
【0006】
第2に、規制部材31がアーム部47を備え、アーム部47が操作部48の上下回動に対して逆方向に回動し、アーム部47と操作アーム36との当接によって昇降レバー17の回動を規制することにより、規制部材31の操作部48の上下移動に対して昇降レバー17の下限位置が同一方向に上下移動することを特徴としている。
【0007】
第3に、昇降レバー17及び規制部材31の操作部48が合成樹脂よりなり、操作アーム36及び規制部材31のアーム部47が金属からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明の作業車両によれば、規制部材の操作部が昇降レバーの回動範囲外である下方側の側方位置に配置されるため、昇降レバーによる作業機の昇降操作時、オペレータが規制部材に不測に触れることを防止できるという効果がある。
【0009】
また、規制部材の操作部の上下移動に対して昇降レバーの下限位置が同一方向に上下移動することにより、オペレータの感覚にあった昇降レバーの下限規制を行うことが可能になり、規制部材の操作性が向上するという効果がある。
【0010】
さらに、昇降レバー及び規制部材の操作部を合成樹脂で形成しても、操作アーム及び規制部材のアーム部を金属で形成することにより、操作アーム及び規制部材の磨耗を最小限に抑えることが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の作業車両を適用したトラクタの全体側面図である。本トラクタは、主に、前輪1及び後輪2を備えた走行機体3と、走行機体3の上部の中央から後部に亘る範囲に設けられたキャビン4と、走行機体3の後方にリンク機構6を介して昇降自在に連結されるロータリ耕耘装置等の作業機(図示しない)とから構成されている。
【0012】
図2は、キャビン内の平面図である。キャビン4内のオペレータが着座する座席7の前方にはステアリングハンドル8、前後進切換レバー9及びクラッチペダル11その他のペダル類が、右斜め前方には作業機変速レバー12が、左右の後輪2,2のフェンダカバー13L,13Rの内側にはサイドパネル14L,14Rがそれぞれ設けられている。左サイドパネル14Lには走行変速レバー16が、右サイドパネル14Rには作業機の昇降及びポジションコントロールを行う昇降レバー17(昇降操作具)及び耕深設定ダイヤル18がそれぞれ設けられている。
【0013】
座席7に着座したオペレータは、ステアリングハンドル8、前後進切換レバー9、走行変速レバー16、エンジン(図示しない)からの動力を入り切り操作するクラッチペダル11等により、走行操作を行う。一方、作業機の変速切換をする作業機変速レバー12、昇降レバー17等により作業機の操作を行う他、耕深設定ダイヤル18によって作業機であるロータリ耕耘装置を圃場面に着地させた際の耕耘深さを調整する。
【0014】
図3は、右フェンダカバー、右サイドパネル及び座席の正面図であり、図4は、右サイドパネルの側面図であり、図5は、右サイドパネルの平面図である。右サイドパネル14Rは、前後及び上下方向に延びる中空のカバー体からなるFRP部材であり、その外側(右側)上端部の周縁は右フェンダカバー13Rの内側側面に沿って当接し、内側下端部から内側に延設された取付リブ20等を介して座席7を固設するシート設置面19上にボルト固定されている。なお、シート設置面19の前方には、シート設置面19より一段低くフロアステップ21が形成されている(図2参照)。
【0015】
右サイドパネル14Rの上面後半部には各種の設定及び制御を行うスッチ類が格納された開閉式のスイッチボックス22が設置され、右サイドパネル14Rの上面前半部にはオペレータの腕や手の平等を置くためのアームレスト面23が形成されている。
【0016】
アームレスト面23は、上記スイッチボックス22の前端から前方に延設され、前端部が下方に湾曲形成されている。アームレスト面23の左右幅は前端から後端にいくに従って徐々に広くなっており、アームレスト面23の前端部が右サイドパネル14R前面の外側の一部分を占めるのみであるのに対して、アームレスト面23の後端部の左右幅は右サイドパネル14Rの左右幅と略同一になっている。そして、アームレスト面23の左側の側端は後方に向かって内側に湾曲するように形成され、アームレスト面23の右側の側端は右フェンダカバー13Rの内側側面に沿うように形成されている。
【0017】
右サイドパネル14R上面における上記アームレスト面23の内側側方位置には、アームレスト面23よりも一段低い凹部24が形成されている。凹部24の後半部には略フラットな操作具設置面24aが形成される一方で、前半部には側面視上方に向かって山形をなす半円形状に突出した操作ガイド面24bが設けられている。
【0018】
上記操作具設置面24aには上記耕深設定ダイヤル18が設置される。上記操作ガイド面24bの内側側方は、右サイドパネル14Rの内側の側壁26における前側上端から上方に一体的に突出するガード部27によって保護されている。ガード部27は、側面視上記操作ガイド面24bと略同心の半円形状に成形されている。
【0019】
上記操作ガイド面24bとガード部27との間には、右サイドパネル14Rの内部と連通する前後方向の取付孔28が設けられている。左右方向の回動軸29を介して、前述の昇降レバー17は上記取付孔28に前後回動自在に収容支持されており、前述の作業機は上記昇降レバー17の回動位置に応じた昇降高さに制御される。
【0020】
上記回動軸29は側面視において上記操作ガイド面24a及びガード部27と略同心に位置しており、この回動軸29の下方側の側方位置には、昇降レバー17の下方回動を規制する規制部材31の後述する操作部48が設けられている。規制部材31は側壁26上の回動軸29の下方位置に穿設されたガイド孔32によって移動案内され、このガイド孔32は上記回動軸29を中心とする略円弧形状に形成されている。そして、規制部材31の操作部48を移動させ、昇降レバー17の下限位置を変更し、これによって作業機の下降限を設定する。
【0021】
なお、上記側壁26の下部には上面が段状をなすように内側に突出するボックス状のスカート部33が形成され、下端からは前述した取付リブ20が延設されている。
【0022】
次に、図3〜8に基づいて、昇降レバー17及び規制部材31の構成を説明する。
図6は、右サイドパネルの要部側断面図である。図7(A)は昇降レバーを上限位置に回動させた状態の右サイドパネルの要部側断面図であり、(B)は昇降レバーを規制部材により設定された下限位置に回動させた状態の右サイドパネルの要部側断面図である。図8(A)は昇降レバーを上限位置に回動させた状態の右サイドパネルの要部正断面図であり、(B)は昇降レバーを規制部材により設定された下限位置に回動させた状態の右サイドパネルの要部正断面図である。
【0023】
上記昇降レバー17は回動軸29における内側(進行方向左側、図8における右側)位置に外装されて回動軸29と一体回動するボス部37と、ボス部37の外周面から上方に突出形成されるレバーアーム38と、レバーアーム38の上端部に形成される側面視略逆U字形且つ正面視方形状の操作部39(把持部)とを備えている。操作部39の下端部には、前後方向に突出形成される鍔部41が設けられ、上記ボス部37、レバーアーム38、操作部39及び鍔部41は合成樹脂により一体的に成形されている。
【0024】
また、回動軸29の外側端部には、2つのナット34,34に挟持固定されて回動軸29(昇降レバー17)と一体回動する操作アーム36が設けられており、この操作アーム36の外側側方にはポテンショメータ42が近接配置されている。そして、操作アーム36の回動位置をポテンショメータ42によって検知することにより、昇降レバー17の上下回動位置が検出される。
【0025】
鍔部41は、側面視において回動軸29を中心とする略C字形状の円弧状に形成されている。そして、鍔部41の上面の一部が前述した取付孔28の開口縁全体に常時摺接し、昇降レバー17の操作部39及び鍔部41の上面が右サイドパネル14R外に露出し、昇降レバー17のそれ以外の部分が右サイドパネル14R内に収容された状態になる。このことにより、昇降レバー17の回動位置に係わりなく取付孔28が鍔部41によって常時塞がれるため、取付孔28から右サイドパネル14R内部への粉塵の入り込み、雨水の浸入等が防止される。
【0026】
また、操作ガイド面24bと、ガード部27の上端と、鍔部41とは、前述した構成から、それぞれ側面視同心の円弧形状をなしている。そして、操作ガイド面24bは操作部39上端に対して若干低く形成され、オペレータが操作部39に指を掛け易いようになっている。一方、ガード部28は操作部39上端に対して略同一の高さ又は若干高く形成され、作業中又は乗車中にオペレータが昇降レバー17に不測に触れることが防止される。
【0027】
操作アーム36は、基端部がポテンショメータ42側に傾斜するとともに先端部が内側側方に延設された金属部材であり、基端部に切欠き部36aが形成されている。そして、昇降レバー17は、最後方位置が上限位置になり、下限位置が最前方位置になるように回動範囲が定めされており、昇降レバー17を最上方位置に回動させると操作アーム36が下方を向いた姿勢になり、昇降レバー17を下方(前方)回動させると操作アーム36が上方(後方)回動する。
【0028】
これに対してポテンショメータ42の内側側面には上下回動自在に金属製のポテンショアーム43が支持されており、ポテンショメータ42は、このポテンショアーム43の回動位置を抵抗値に変換することにより位置検知を行うように構成されている。ポテンショアーム43の先端部は、正面視で操作アーム36基端部の回動範囲と重複するように内側側方に屈曲形成され、バネ等の弾性部材によって操作アーム36側に付勢されている。
【0029】
このことにより、操作アーム36基端部の切欠き部36aにポテンショアーム43の先端部が常時当接した状態で係合し、操作アーム36の回動位置、すなわち昇降レバー17の回動位置がポテンショメータ42によって検出される。操作アーム36は、以上のような昇降レバー17の上下回動位置検出に用いられる他、規制部材31を用いた昇降レバー17の下方回動規制にも用いられる。
【0030】
上記規制部材31は、主に、右サイドパネル14Rの内部に収容された上下方向の主プレート44と、主プレート44の上下長と略同一の径を有し主プレート44の上端部を中心とする側面視略扇形に形成されたカバー体46と、主プレート44の上端から上方に一体的に延設されたアーム部47と、右サイドパネル14R外である側壁26外面上における昇降レバー17(操作部29、ボス部37及びレバーアーム38)の回動範囲外である回動軸29の下方位置に配置された操作部48(把持部)と、主プレート44と操作部48とをガイド孔32を介して連結する左右方向の連結ネジ49(連結具)とから構成されている。
【0031】
主プレート44の上端部は上記回動軸29の内側端部に上下回動自在に支持されており、主プレート44が昇降レバー17とは各別に回動可能なように構成されている。アーム部47は金属材料を用いて主プレート44とともに一体成形され、アーム部47の先端部は正面視で操作アーム36の先端部の回動範囲と重複するように外側側方に屈曲形成されている。このことにより、昇降レバー17を下方(前方)回動操作すると、操作アーム36が上方回動され、操作アーム36の先端部がアーム部47に当接し、それ以上昇降レバーが下方回動されなくなる。
【0032】
操作部48は、合成樹脂により側面視略円形のキャップ状に形成され、外側側面にネジ孔(図示しない)が形成されている。一方、連結ネジ49の外側端部は主プレートの下端部に取付固定され、内側端部はガイド孔32を介して側壁26から右サイドパネル14R外に突出している。この連結ネジ49の内側端部に操作部48のネジ孔を係合させることにより、操作部48を主プレート44に連結する。なお、連結ネジ49に操作部48を締付けることにより、操作部48がガイド孔32に対して固定される。
【0033】
以上の構成により移動軌跡が側面視円弧状になる操作部48は、ガイド孔32の形状により、最後方位置が最下方位置になるとともに、最前方位置が最上方位置になるように構成されている。そして、操作部48を上方(前方)移動させるとアーム部47が下方回動し、操作アーム36とアーム部47との当接位置がより下方になるため、昇降レバー17の下限位置が上方に移動する。一方、操作部48を下方(後方)移動させるとアーム部47が上方回動し、操作アーム36とアーム部47との当接位置がより上方になるため、昇降レバー17の下限位置が下方に移動する。すなわち、規制部材31の操作部48の上下移動に対して、昇降レバー17の下限位置は同一方向に上下移動する。
【0034】
カバー体46は、主プレートの内側側面に一体的に取付けられている。そして、操作部48をガイド孔32内に対して変位させても、カバー体46が右サイドパネル14Rの内部からガイド孔32を常時塞ぎ、ガイド孔32から右サイドパネル14R内への粉塵の入り込み、雨水の浸入等を防止している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の作業車両を適用したトラクタの全体側面図である。
【図2】キャビン内の平面図である。
【図3】右フェンダカバー、右サイドパネル及び座席の正面図である。
【図4】右サイドパネルの側面図である。
【図5】右サイドパネルの平面図である。
【図6】右サイドパネルの要部側断面図である。
【図7】(A)は昇降レバーを上限位置に回動させた状態の右サイドパネルの要部側断面図であり、(B)は昇降レバーを規制部材により設定された下限位置に回動させた状態の右サイドパネルの要部側断面図である。
【図8】(A)は昇降レバーを上限位置に回動させた状態の右サイドパネルの要部正断面図であり、(B)は昇降レバーを規制部材により設定された下限位置に回動させた状態の右サイドパネルの要部正断面図である。
【符号の説明】
【0036】
3 走行機体
17 昇降レバー(昇降操作具)
31 規制部材
36 操作アーム
47 アーム部
48 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)と、走行機体(3)に昇降可能に連結された作業機と、前記作業機を昇降操作する昇降レバー(17)と、昇降レバー(17)の回動を規制して作業機の下降限を設定する規制部材(31)とを備え、前記作業機が昇降レバー(17)の回動位置に応じた昇降高さに制御される作業車両において、昇降レバー(17)と一体回動する操作アーム(36)を設け、規制部材(31)の操作部(48)を昇降レバー(17)の回動範囲と重ならない下方側の側方位置に配置し、規制部材(31)と操作アーム(36)との当接により昇降レバーの回動を規制する作業車両。
【請求項2】
規制部材(31)がアーム部(47)を備え、アーム部(47)が操作部(48)の上下回動に対して逆方向に回動し、アーム部(47)と操作アーム(36)との当接によって昇降レバー(17)の回動を規制することにより、規制部材(31)の操作部(48)の上下移動に対して昇降レバー(17)の下限位置が同一方向に上下移動する請求項1の作業車両。
【請求項3】
昇降レバー(17)及び規制部材(31)の操作部(48)が合成樹脂よりなり、操作アーム(36)及び規制部材(31)のアーム部(47)が金属からなる請求項2の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−100711(P2009−100711A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277644(P2007−277644)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】