説明

作物の強制通水気及び排水による地下根圏の環境制御方法とその装置

【課題】農業生産の向上を図るため、低コスト、省力的で高い収益性を可能とする地下環境制御技術を提供する。
【解決手段】簡易型の土壌の強制通水気及び強制排水の方法、農業の省力型根圏土壌環境制御の方法及び、根圏土壌への強制通水気とマイクロバブル供給及び、過湿状態の根圏の排水及び、土壌病害虫の防除の方法と装置を組み合わせた、一つのシステムで多くの作業をこなす総合的な土壌環境制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の根圏の土層における空気(酸素)、水及び培養液、更にマイクロバブルの強制的供給による農作物の収量、品質の飛躍的向上を図り、一方、集中豪雨等天候不順に伴う冠水による圃場の根圏土層の強制排水による湿害防止更には土壌病害虫窒息防除等に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌通気に関する技術としては、農作物の根圏環境の改善のため、心土を破砕し、土の団粒化と土の中に空気を送り、透水性を高める深耕鋤(ハロー)、深耕ローター、トレンチャー、サブソイラー等の深耕する技術や土層を穿孔して空気と肥料養分を深層まで貫注する技術が行われてきたが、いずれも、土層の深層耕運と深層への空気の供給を目指したものである。従って、堆厩肥の施用や酸度矯正の石灰施用による土壌の団粒化と合わせて「土づくり」の一環として行われている。
【0003】
強制通気は、水耕栽培で行われており、バブリング通気、水気耕栽培等が行われ、最近ではマイクロバブルによる通気栽培が開発され、マイクロバブルには従来は知られていない生理的な活性を起こす効果があることが判明し、根に対する空気の供給が如何に重要なことであるかを示している。土耕の強制通気も開発されているが、多くは鉢植え用、又は防暑壁面、屋上のビオトープに関するもので、畑が対象ではない。
【0004】
潅水方法では、通水溝による導水に始まり、スプリンクラー、レインガンによる樹上潅水、防除を兼ねたスピードスプレーヤー等が主流である。乾燥地、ハウス栽培では、点滴栽培用の潅水チューブが用いられている。
土中潅水については、技術開発の数も少なく、多くが鉢やポットの栽培形式が多い。
今後、温暖化が進むと潅水も蒸散によるロスを如何に防止するかが課題である。
【0005】
土壌病害虫防除については、メチルブロマイドの土壌注入による防除が行われてきたが、メチルブロマイドの製造禁止により現場では防除に支障を来たしている。
現状では、接ぎ木による作物の耐病害虫性を強化する方法、地表をシートで密封して穴にクロールピクリンを注いで土壌薫蒸する方法。殺菌剤を散布する方法、ボイラーの蒸気で殺菌殺虫する方法、バーナーで土壌を焼却し焼き殺す方法、黒いシートで地表を覆い太陽熱で蒸し殺す方法等が用いられている。
【0006】
土壌環境制御技術としては、上記のような各種の技術を組み合わせることが重要である。実際には、温床など地温制御の技術、強制通気の技術、暗渠による強制排水の技術が開発されているが、何れも総合化されていないので、根圏土層の環境制御と言うには程遠いのが現状である。
【0007】
作物の生育にとっては、根に対する酸素供給が最も重要で、これに養分の供給、温度の保持などを加え環境制御と称する発明が多い。酸素供給については水耕栽培については、以前から多くの研究がなされてきた。そこで最近の出願状況を調査した。
特許文献1は、ブドウの根に空気を触れさせながら、培養液を散水する水気耕栽培である。本出願は土耕栽培である。
【0008】
特許文献2は、水耕栽培の根圏周辺に画像処理装置及び根圏環境制御装置を設置し、温度、肥料濃度、イオン濃度を制御する技術である。本出願は土耕栽培である。
【0009】
特許文献3は、作物の栽培に於いて、根に溶液を噴霧しながら空中に曝し、温度、培養液を制御する環境制御装置で、水耕栽培であるが、本出願は土耕栽培である。
【0010】
特許文献4は、メタン発酵のエネルギーを利用して、植物への温度、光照射を制御する装置である。本出願は根の通気、養水分の制御が主要な目標である。
【0011】
特許文献5は、根に溶液を噴霧しながら空中に曝し、熱媒体循環配管により温度を制御する環境制御装置で、一種の水耕栽培であり、本出願は土耕栽培である。
【0012】
特許文献6は、植物栽培環境医於いて、放熱体と植物体の熱交換を向上させる技術である。これは温度の制御が目的であり、本出願は根の通気、養水分の制御が主要な目標である。
【0013】
特許文献7は、有機質培地で培地内に強制通気を行い地上部から散水する方法と装置あり、本出願と原理の点で一部類似しているが、鉢やプランターを対称としたものであり、本願の場合は樹木を含む広い圃場を対称としたものである。
技術的にも水の供給が土壌表面から行っているのに対し、本出願は水及び培養液を強制注入するので相違する。
また、本出願の場合は過湿状態になった圃場からの排水を行ったり、土壌病害虫防除行うなどの圃場の土壌環境の制御が目的であるので基本的に相違する。
【0014】
特許文献8は、温室ハウスで吸水性フィルム上に植物培養液を隔離し、点滴予定に組み込まれた条件の点滴装置と温室ハウスに設置されたカメラで撮影記録しながら自動製御する環境制御装置である。これは水耕栽培の根の監視技術であるが、本出願は根圏地下土壌環境の制御が主眼である。
【0015】
特許文献9は、リビング、屋外で土を使わず水と液肥だけで水気耕栽培を行う施設である。この出願は水気耕栽培であり、本出願は土耕で土中の環境制御が主眼である。
【0016】
特許文献10は、垂直な壁面及び傾斜する屋根面の温度を下げ、環境を涼化するため、温度、潅水、肥料の管理による根圏環境制御である。これは、建造物の壁面や屋根の傾斜面が対称であるが、本出願は広い圃場を対称としたものである。
【0017】
特許文献11は、水流の旋回により中央の減圧で微細気泡を発生させる装置で、気泡のサイズ、扱い易い、持ち運び簡単、極めて堅牢など性能の高い装置で、実用上優れたマイクロバブルの発生装置である。ただ、発明の趣旨は、本発明の地下制御とは異なる。本発明のマイクロバブルを供給する発生装置として活用可能である。
【0018】
特許文献12は、本発明者が提案したキャビテーションによる減圧加圧条件で気泡を高速破砕してマイクロバブルを発生させる装置である。本装置は大量の水処理を可能としているので、大型の事業に向いている。発明の趣旨も、本発明の地下制御とは異なる。本発明のマイクロバブルを供給する発生装置として活用可能である。
【0019】
特許文献13は、水田への潅水に際し、フロートを用いて潅水の自動調節を行うものである。軽便で能率的な潅水施設ではあるが、水田の地下潅水を行うものではない。
本発明では、稲、レンコン、イ草などの水田に於ける地下潅水も可能としている。
【0020】
特許文献14は、建物の外壁に近接して植裁域を設け、雨樋からの水を貯留する水槽と複数の小孔を有する管体で土中に水を供給する装置である。地中潅水と言う点では本発明と同じ発想であるが、対象がテラスやベランダであり、本発明の畑や水田とは相違する。また、強制通気、強制通水、強制排水、病害虫防除等の発想ではない。
【0021】
特許文献15は、特許文献14と同様雨水タンクを使用し、毛管現象を利用してウォーターディフュザーからパイプを通じて土中に潅水する装置である。これは乾燥地や屋上庭園を対象とするもので、本発明の畑や水田とは相違する。また、強制通気、強制通水、強制排水、病害虫防除等の発想ではない。
【0022】
特許文献16は、ポリプロピレン繊維の不織布により形成された管状体の表面にポリプロピレンの線状体を螺旋状に固着して形成した流水部の端部に給水口を取り付け、流水部を土壌に埋設して給水口より加えた潅水がスムースに植物根部へ効率よく給水する装置である。本発明の強制通気、強制通水、強制排水等の発想ではない。
【0023】
特許文献17は、水源から圧送ポンプで、注水管を介して内径が2mm以下の流路を有する高圧ジェットのずるの固定ノズルから地中へ均等に潅水する装置である。
地中潅水の機能としては優れているが、本発明の強制通気、強制通水、強制排水等の発想ではない。
【0024】
特許文献18は、スギ、ヒノキの難腐敗性天然樹皮あるいは繊維と燃焼灰を混合し、これを土壌に施用、よく混合した植栽用のベッドを形成し、ここに定植した作物を土壌病害から保護する技術である。本発明の窒素ガスによる窒息防除とは異なる。
【0025】
特許文献19は、クロールピクリン、ジクロルジイソプロピルエーテル、メチルイソチオシアネート等の殺菌殺虫剤をスティック状に密封又はリボン状に吸収固形化し、スティック状及びリボン状の殺菌殺虫剤を土耕中に埋設又は土壌表面に靜置し、土壌表面をプラスチック被覆材で覆い、薫蒸する方法である。土壌表面をプラスチック被覆材で覆う点は、本発明の趣旨と同じであるが、本発明では窒素ガスを使用する。
【0026】
特許文献20は、パスツリア属細菌を水中で保存した後、超音波処理することにより、パスツリア属細菌の線虫に対する付着活性及び病原防除活性を増進させる方法である。
【0027】
特許文献21及び特許文献22は、土壌にエタノール及び酢酸希釈水溶液を含有させ、湛水状態とし、土壌表面をプラスチックフィルムもしくはシートで覆い、水とエタノールの蒸発を抑制しつつ保持して消毒する土壌還元消毒方法。一端が水供給源に接続され、他端が潅水チューブ入り口に接続された配水管と液肥混合器とエタノール水溶液貯蔵槽と多岐に枝分かれした潅水チューブを備える土壌消毒剤潅注システムである。
土壌中に埋設する配管及び潅水チューブと土壌表面を被覆するラスチックフィルムもしくはシートは本発明と発想が同じであるが、防除の主体が湛水状態にすることとアルコール、酢酸であることが本発明と相違する。本発明は、畑状態のまま窒素ガス及び/又はクロールピクリンを使用している。
【0028】
特許文献23は、栽培ベッドへ園芸鉢の底面を水没させる水位まで一時的に給水する。即ち、給排水ポンプを用いて先のベッドへ給水を行い、設定水位まで給水が達成されれば、給排水ポンプを用いてベッドから強制排水する。給排水ポンプを用いる点は本発明と同じであるが、用途が園芸鉢であり、給排水の様式も相違する。
【0029】
特許文献24は、鉢栽培、ベッド栽培に於いて、溶液を培地から効率よく吸引排水するため、ベンチュリー式の吸引装置によって排水路から強制排水する。過湿水を除去する点では本発明と発想が同じであるが、方法が全く相違する。
【0030】
<強制通気、環境制御に関する文献>
【特許文献1】特許公開平09−205911
【特許文献2】特許公開平09−275782
【特許文献3】特許公開平10−313704
【特許文献4】特許公開平11−275965
【特許文献5】特許公開2000−083489
【特許文献6】特許公開2001−251971
【特許文献7】特許公開2006−101724
【特許文献8】特許公開2008−125479
【特許文献9】特許公開2008−154822
【特許文献10】特許公開2009−125048
<マイクロバブルに関する文献>
【特許文献11】特許公開2003−181258
【特許文献12】特許公開2004−344859
<土壌潅水に関する文献>
【特許文献13】特許公開平09−23766
【特許文献14】特許公開平11−89453
【特許文献15】特許公開2003−23883
【特許文献16】特許公開2004−73139
【特許文献17】特許公開2010−187545
<土壌病害虫防除に関する文献>
【特許文献18】特許公開平09−169603
【特許文献19】特許公開平11−116420
【特許文献20】特許公開2000−95627
【特許文献21】WO2007/12967
【特許文献22】特許公開2010−106034
<強制排水に関する文献>
【特許文献23】特許公開平11−18599
【特許文献24】特許公開2000−312539
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
作物の根圏へ酸素を供給する技術は、作物の生育、収量に加え品質に与える影響も極めて大きいものがある。特に水耕栽培では、溶存酸素の影響が極めて深刻な影響を有するので、多くの研究により技術開発が行われている。
広い畑やハウスの圃場における土耕栽培では、土層の孔隙に含まれる空気の影響もあって水耕栽培のようには、酸素欠乏による深刻な影響は起こらないが、粘土質の地帯、高地下水の地帯では、土壌通気が栽培上重要な意味を有する。
また、集中豪雨などで冠水したり、過湿になった場合やハウスで高炭酸ガス栽培を行う場合は、酸素が不足するので同様に土壌通気が栽培上重要な意味を有する。
通常上記のような悪条件がない場合でも、実際には土壌中の空気は、低気圧が来ると表層の空気が外気へ吸い出され、高気圧が来ると外気が土中へ押し込まれる過程を通じ、一種の受動的呼吸が多行われている。しかし、土壌の微細な孔隙内での気体の交換であるので、土中空気は深さによっても異なるが、極めて高濃度の炭酸ガスを含む。それで、土壌への強制的な通気は、作物の生育、収量、品質を著しく向上させる。その上、メチルブロマイドの生産禁止に伴う防除困難な土壌病害虫の効率的防除についても、地表を密封して窒素ガスとクロールピクリンを送入する新しい防除法が可能であり、病害虫防除を含めた総合的な技術開発が望まれる。
しかし、強制通水、強制通気など圃場の装置化は、一般に施設費が嵩み、農業経営上採算が取れ難い場合がしばしばであるので、低コストで高生産の技術が要求される。
そこで、本発明では、低コストの地下環境制御技術と省力的で高い収益性を可能とする地下環境制御技術が農業生産の向上を図る重要な課題として提案した。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記課題を解決するため、簡易型の土壌の強制通水気及び強制排水の方法、農業の省力型根圏土壌環境制御の方法及び、根圏土壌への強制通水気とマイクロバブル供給及び、過湿状態の根圏の排水及び、土壌病害虫の防除の方法と装置を組み合わせた、一つのシステムで多くの作業をこなす総合的な土壌環境制御装置を提案した。
【0033】
簡易短作期型の土壌の強制通水気並びに土壌病害虫防除の方法と装置
図1には、請求項1の簡易型の土壌の強制通水、強制通気及び難防除性土壌病害虫防除を可能とする地下埋設の短期間栽培簡易型の環境制御装置を示した。
原理は、図1に示すように、野菜の畑、ハウス栽培において、圃場の作畝に添って地下5〜30cmの深さの溝を掘り、溝中 へ直径12mmで径1mmの小孔を有する多孔パイプ1又はピンホールを有する潅水チューブ1又は複数のノズルを有する直径10mm以下の耐圧通水気チューブ1を埋設する。
多孔パイプ1又は潅水チューブ1の両端は、地上への立上がりパイプ3、6を取り付け、パイプ出口に開閉バルブ4,7を取り付ける。パイプ両端に配した水、培養液の注入口、排水口を設け、注入口、排水口末端には、防除用噴射ポンプのホースとの接続や送気ポンプとの接続及び排水ポンプと接続するコネクター5、8を装備する。
強制通水及び培養液供給を行う場合は、コネクター5に加圧給水ポンプ又は農薬散布用の加圧送水ポンプの接続ホースと連結し、反対側のパイプ出口の開閉バルブ7を全開して送水し、排水口8から水、培養液が吐出して多孔パイプに空気が排除されたことを確認して開閉バルブ7を閉じて地中の根圏へ水、培養液を供給する。
強制通気を行う場合は、コネクター5に加圧空気ポンプの接続ホースと連結し、反対側のパイプ出口の開閉バルブ7を閉じて地中へ空気を供給する。
土壌病害虫防除を行う場合は、図5に示すように、土壌表面を密封するシート35で覆い、コネクター5からクロールピクリンを注入し、コネクター5へ窒素ボンベ34の接続ホースと連結し、反対側のパイプ出口の開閉バルブ7を閉じて窒素供給装置から窒素で地中へクロールピクリンを押し込みながら供給し、併せて窒素ガスで線虫その他の害虫を窒息させて防除する。この装置は長期設置を続ければ、小孔やピンホールが水黴等の微生物、土壌、植物根などで目詰まりを起こすので、その時点で掘り上げ、再度設置する必要がある。
【0034】
簡易常設型圃場地下根圏の環境制御方法と装置
図2には、請求項2の簡易型で常設の土壌の強制通水、強制通気及び強制排水を可能とする地下埋設の簡易常設型地下環境制御装置を示した。
原理は、図2に示すように、水田、野菜の畑、ハウス栽培において、圃場の作畝に添って地下30〜40cmの深さの溝を掘り、溝中へ外側に防根布膜袋2を施した直径12mmで径1mmの小孔を有する多孔パイプ1を埋設する。
多孔パイプ1両端は、地上への立上がりパイプ3、6を取り付け、パイプ出口に開閉バルブ4,7を取り付ける。パイプ両端に配した水、培養液の注入口、排水口を設け、注入口、排水口末端には、防除用噴射ポンプのホースとの接続や送気ポンプとの接続及び排水ポンプと接続するコネクター5、8を装備している。
多孔パイプは、図7に示す通り、設置する上面に直径2mm以下の細い孔を5cm間隔で、小孔9を1列に配置している。小孔9を上面に配置するのは溶液を通水する場合に末端まで均等に通水するためである。
図8に示した通り多孔パイプの外側を目の細かい、耐腐食性の防根布膜袋で覆い、多孔パイプに作物根が侵入することを防止している。
強制通水、培養液供給を行う場合は、コネクター5に加圧給水ポンプ又は農薬散布用の加圧送水ポンプ又は図9に示す簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプと接続ホースと連結し、反対側のパイプ出口の開閉バルブ7を全開して送水し、排水口8から水、培養液が吐出して多孔パイプに空気が排除されたことを確認して開閉バルブ7を閉じて地中の根圏へ水、培養液を供給する。
強制通気を行う場合は、コネクター5に加圧空気ポンプの接続ホースと連結し、反対側のパイプ出口の開閉バルブ7を閉じて地中へ空気を供給する。
強制排水を行う場合は、パイプの一端の注入口の開閉バルブ4を閉め、排水口のコネクター8に図9に示した手動排水ポンプの接続ホースと連結して手動ポンプで排水を行う。
【0035】
省力型農業に対応した根圏土壌環境制御の方法と装置
図3及び図4には、請求項3及び請求項4の農作業の省力化を目指し、土壌の強制通水、強制通気及び強制排水を可能とする圃場地下埋設の地下環境制御装置を示した。
原理は簡易型の強制通水気及び強制排水と同じである。
図3及び図4に示すように水田、果樹園、広い畑作で作畝に添って30〜100cmの深さの溝を掘り、溝中に外側に防根布膜袋2を施した直径20〜200mmの多孔パイプ1を埋設する。パイプは深さの異なる位置に多段設置する場合は効果がより高まる。
省力型では、図4に示すよう埋設多孔パイプの径も簡易型より太く、各畝に配水する畝を横断する太い横断パイプを有するので、送水量、送気量、排水量が多く、同時に幾畝にも亘る強制的通気、配水、及び排水が可能で、給排水ポンプの場所一箇所の作業で、広大な面積の、地下根圏環境制御と省力的施肥管理を行うことが可能である。
多孔パイプ1の一端の注水気側には、地上への立上がりパイプ3を取り付け、パイプ3には、バルブ4を通じて送気ポンプ13と接続し、一方でバルブ12を通じて水・培養液槽16と接続した水・培養液送付ポンプ14と接続する。
図3に示すように、パイプ排水側の端には、余剰地下水を溜めるドレン槽11を設け、ドレン槽から排水用パイプ6を地上に立ち上げる。排水用パイプ6は、2方向に分岐し、一方は排水・排気パイプとして外気出口に向け開閉バルブ7を設け外気に開口し、一方は過湿水排除の排水ポンプ18へ開閉バルブ17を通して接続し、排水口19へ通じている。
多孔パイプは、図7に示す通り、設置する上面に直径1mmの最適な小孔を5cm間隔で、1列に配置している。又大容量注水が必要な場合は、上半分のパイプにピンホールが無数に配置される。小孔を上面に配置するのは溶液を通水する場合に末端まで均等に通水するためである。図8に示した通り多孔パイプの外側を目の細かい、耐腐食性の防根布膜袋で取り巻き、多孔パイプに作物根が侵入することを防止している。
強制通水、培養液供給を行う場合は、開閉バルブ4を閉じて、開閉バルブ12を開き、反対側の排水ポンプへ通ずる開閉バルブ17を閉じ、加圧給水ポンプを作動して送水し、排水口8から水、培養液が吐出して多孔パイプに空気が排除されたことを確認して開閉バルブ7を閉じて地中へ水、培養液を供給する。
強制通気を行う場合は、パイプ出口の開閉バルブ7、12、17を閉じて、送気ポンプ13で地中へ空気を供給する。
強制排水を行う場合は、パイプ出口の開閉バルブ4、7、12を閉じて、排水側の開閉バルブ17を開き、排水ポンプ18で吸水を行い排水口19から排水する。
【0036】
マイクロバブル供給並びに地下根圏の環境制御方法と制御システム装置
図5には、請求項5のマイクロバブルによる省力型の土壌の強制通水、強制通気及び強制排水を可能とする地下埋設の地下環境制御装置を示した。原理は、簡易型の土壌の強制通水気と同じである。
図4及び図5に示すように、水田、果樹園や広大な面積の畑作では作畝に添って30〜100cmの深さの溝を掘り、溝中に外側に防根布膜袋2を施した直径20〜200mmの多孔パイプ1を埋設する。
多孔パイプ1の一端の注水気側には、地上への立上がりパイプ3を取り付け、パイプ3には、バルブ4を通じて送気ポンプ13と接続し、一方でバルブ12を通じて水・培養液槽16と接続した水・培養液のマイクロバブル送付ポンプ15と接続する。
パイプ排水端には、余剰地下水を溜めるドレン槽11を設け、ドレン槽から排水用パイプ6を地上に立ち上げる。排水用パイプ6は、2方向に分岐し、一方は排水・排気パイプの外気出口に向け開閉バルブ7を設け外気に開口し、一方は過湿水排除の排水ポンプ18へ開閉バルブ17を通して接続し、排水口19へ通じている。
多孔パイプは、図7に示す通り、設置する上面に直径1mmの小孔9を5cm間隔で、1列に配置している。又大容量注水が必要な場合は、上半分のパイプにピンホールが無数に配置することも効果的である。細孔を上面に配置するのは溶液を通水する場合に末端まで均等に通水するためである。
図8に示した通り多孔パイプの外側を目の細かい、耐腐食性の防根布膜袋で取り巻き、多孔パイプに作物根が侵入することを防止している。
マイクロバブルによる強制通水、培養液供給を行う場合は、開閉バルブ4を閉じて、開閉バルブ12を開き、反対側の排水ポンプへ通ずる開閉バルブ17を閉じ、マイクロバブル加圧給水ポンプ15を作動して送水し、排水口8から水、培養液が吐出して多孔パイプに空気が排除されたことを確認して開閉バルブ7を閉じて地中へ水、培養液を供給する。
強制通気を行う場合は、パイプ出口の開閉バルブ7、12、17を閉じて、送気ポンプ13で地中へ空気を供給する。
強制排水を行う場合は、パイプ出口の開閉バルブ4、7、12を閉じて、排水側の開閉バルブ17を開き、排水ポンプ18で吸水を行い排水口19から排水する。
本装置で用いるマイクロバブル発生装置は、発明者が考案した特許第3843361号の装置を使用しているが、他の発明によるマイクロバブル発生装置も利用できる。
【0037】
簡易手動型強制通水、過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置
図9には、請求項6の簡易手動型強制通水、過湿土壌水吸引除去兼用のポンプ装置の構造を示した。
動力は手動による人力である。作動は、人が踏み台の上20に乗り、上部の梶棒に取り付けた把手(ハンドル)21を前後に動かすと梶棒22に接続したポンプ室23のピストン24が作動して吸引口30から水を吸い出し、吐出口33から水を吐出する。
各部の説明を加えると作動部は、踏み台20、把手(ハンドル)21、往復梶棒22、ポンプ室23、ピストン24、ピストンの往復の押棒25、往復梶棒作動支点26から成り、往復梶に連結作動する上側のピストン作動支点27は作動を潤滑にするため支点自体が上下に動く構造である。
強制通水、過湿土壌水吸引除去部は、過湿土壌水吸い出し口30で多孔パイプ1のコネクター8と接続する。
吸引した過湿土壌水は地下水吸い出し誘導パイプ31で前後のポンプ室23へ導く。
ポンプ室23はピストンシリンダー容器で、踏み台20と強固に固定されている。強制通水と過湿土壌水は、土壌水吸い出し口30から、吸い出した水を誘導パイプ31でポンプ室23に導く。ポンプ室23は前後のポンプ室に分かれ、ピストンの動きにつれ一方が吸引、一方が排出の役割を受け持ち、常時排水が継続して持続する仕組みになっている。
従って、それぞれのポンプ室23には、ポンプ入り口側の逆流防止弁28とポンプ出口側の逆流防止弁29が装備されている。ポンプ室23から注入する通水と排出される土壌水は、2ポンプ室それぞれに接続している土壌水の排出誘導パイプ32を通って排出口33からパイプへの強制通水する場合とパイプから強制排水する場合に使い分けられる。
【0038】
土壌病害虫窒息防除方法及び土壌病害虫防除システム装置
図6には請求項1と請求項8の土壌病害虫防除システムを示した。畑作に於ける夜盗虫、根切り虫の被害は大きく、連作障害による線虫の被害、立ち枯れ病、青枯病等の土壌病害も深刻である。
地下環境制御技術は、窒素ガス単独による窒息死又はクロールピクリン及び窒素ガスの吹き込みによる薫蒸の省力化が可能である。
方法は、図2、図3、図4に示す多孔パイプ1を用い、図6に示すように土壌表面を機密性のシート35で覆い、多孔パイプコネクター8に窒素ガスボンベ34を連結して窒素ガスを供給し、地下根圏土壌に窒素ガスを送り、線虫・土壌病害を窒息死させる機能を有している。又同様に多孔パイプのコネクター8からクロールピクリンを送入して、更に窒素ガスで浸透させ病害虫を窒息死させ、省力的に土壌薫蒸を行い効果の高い病害虫防除を行うこともできる。防除時のクロールピクリン注入と窒素ガス通気に伴うロールピクリンとガスの噴出方向は図6の矢印の方向である。
防除が難しい線虫等は、作物の栽培期間に根の活性が高まる本通水気のパイプ周辺に集まり増殖するので、栽培終了後に次の作物を植えるまでの1〜2週間くらいの短期間で死ぬので栽培期間中パイプ周辺に集まり増殖した線虫を窒息死させると効果が高い。
また、その時点で難防除性の青枯病、立枯病に対しても、クロールピクリンの注入の際、窒素ガスでパイプ周辺の広い土層空間へ押込み、効果的なクロールピクリン薫蒸を行う。これにより次作の作物根圏の青枯病、立枯病を除去することが可能である。
この方法の有利な点は、図5の矢印の方向に深層の土層まで分布する青枯病、立枯病、線虫等の防除を従来は困難な深層の土層まで殺虫、殺菌が可能なことである。
さらに、処理後土壌を堀り上げたり、耕運する等の移動させることがないので、新たな菌汚染が起こり難いことである。
作物の栽培に際しては、土壌表面の機密性のシート35を剥がし、エアーポンプで長時間空気を強制的に送り、窒素ガスとクロールピクリンを完全に除去し、土壌へ酸素を十分に与えて健全な栽培を行う。畑が使用できるまでの期間も大幅に短縮される。
このように一つのシステムによって防除困難な土壌病害虫の防除と強制通気、強制通水、省力施肥を交互に繰り返し装置を有効に使用することを可能としている。
【0039】
地下環境制御技術は、地下潅水により効率的灌漑が可能であり、培養液の地下供給で施肥が省力化され、地下への強制通気により作物根が活性化され、成長が助長されて高生産で高品質になることが主目的である。
高生産で高品質になること、強制排水は制御し難い地下の過湿を除去して湿害防止に役立つこと、省力的防除等は周知の事実で、これらの機能を新めて実証試験をする必要はない。実施例としては通常知られていない未知の事柄を示した。
【実施例】
【0040】
実施例1 お茶の香気成分を改善し高品質化試験
【0041】
試験の方法
実証が難しい茶の品質向上を目指し、茶園畝間中心の畝に添って深さ40cmの位置に簡易型強制通水及び強制通気の装置の通気パイプを埋設し、強制通気による茶の栽培試験を行った。香気の改善は栽培技術に基づくので茶の香気に関する試験を、春の1番茶で試験した。
製茶は、茶葉を蒸しぐり煎茶の製造法で実施し、香気成分の品質評価を行った。
【0042】

茶成分は、基本的には表中の清香青葉アルコール、リナロール、ゲラニオール、ヘキサノール等が含まれ、条件が良いとフェニル・エチル・アルコール(バラの香り)など花の香りが含まれる。高級な茶葉ほど、香りが深く製茶に際して花の香りがする。
結果の概要
強制通気を行って、茶根を活性化すれば、茶の成長が向上し、生体内代謝が活発になるので、製茶の段階で茶葉内の芳気成分とされる、各種の精油が増加し、特にバラの花の香気とされるフェニル・エチル・アルコール等が増加し、茶の香気の面からも品質向上が起こるものと考えられる。
【0043】
実施例2 マイクロバブルに供給による野菜の高収穫、高品質化試験
試験の方法
マイクロバブルによる作物の高生産と高品質化は余り知られていないので、その証明を行った。試験は水耕栽培により、同一組成の培養液で一方を100〜500μm程度の気泡、一方を10〜100μm程度の気泡の泡のサイズの違う2種類のマイクロバブルを供給し、カキチシャを栽培した。
生長量と根系のデヒドロゲナーゼ活性で根の活力を比較した。
【0044】

結果の概要
カキチシャの生育は、100〜500マイクロメートルのマイクロサイズの気泡では1株平均約400g、10〜100マイクロメートルのナノサイズの気泡では1株平均約700gであって、気泡のサイズの小さいほど作物生育を助長することが明確である。生育量の相違は写真1に示した。
写真1では、aは100〜500マイクロメートルのマイクロバブルで生育したカキチシャ、bは10〜100マイクロメートルのナノサイズのナノバブルにより生育したカキチシャの生長量である。
酵素活性については、カキチシャの根の活性を調査した。
調査結果の単位は、1グラムの生体が1分間に呼吸によって何マイクロモルの水素を出し、指示薬のメチレンブルーを還元するかを調べる分析方法である。
単位は、生重1グラム当たり、1分間に発生する水素のマイクロモルで表示される。
このように、根の活性は、100〜500マイクロメートルのマイクロサイズの気泡の示す活性1μM/gFW/minより10〜100マイクロメートルのナノサイズの気泡の示す2μM/gFW/minの方が高かった。
その為写真1に見られるようにマイクロサイズの気泡aでは、根の還元力が弱く、根の表面に酸化鉄が沈着し、褐変して黒っぽくなっているのに対し、ナノサイズの気泡bでは根の還元力が強く、鉄の沈着もなく色が白くなっている。
写真2では、根の酵素活性を調査する、メチレンブルーの標準液の色素比較液と、調査飼料の反応液の比較を示した。写真の中でcはメチレンブルーの標準液、dは酵素反応比較液、eは温度計である。
このように、何れも通気をしているが、気泡のサイズによって成長促進効果が相違することがわかる。従って根圏の土壌環境制御する場合もサイズの小さい気泡を溶液と一緒に供給することが重要である。
この結果は、マイクロバブルによる酸素の供給が如何に根の活動に影響するかを示している。同様に、マイクロバブルは土耕栽培でも同様の結果を与えるが、土耕では根の調査が観察的に不鮮明になるので水耕栽培で代行した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
現在、世界的規模で農業生産の生産力が低下している。穀物や野菜など農業生産を支える土台は、畑の地力である。作物が健康で旺盛な生育をする地力を引き出すには、根の活性を如何に高めるかが重要である。作物根は、根圏の土壌空気、養水分の供給、過湿の防止など土壌環境を制御することができれば、極めて健全に活動し、本来土壌が有する養分と供給される養分を効率的に吸収し、健全で旺盛な生育により、高品質で多収穫をもたらすことが出来る。
本発明による、根圏土壌の強制通気は、土壌中に貯まりやすい炭酸ガスを追い出し、酸素を供給するので、根の活性が極めて高くなる。根圏への強制通水、培養液供給は、地下制御パイプ周辺に作物根を集め、効率的灌漑、効率的施肥を行うものである。
また、連作障害など防除困難な土壌病害虫の新しい防除を可能にする技術でもある。
温暖化する今後の世界に於いては、砂漠化が進み、貴重な水を樹上冠水などで行うと蒸散によって折角の灌水を失うなど効率が悪い。従って樹上灌水は望ましくない。マイクロバブルなどの供給も可能な新しい効率の良い灌漑が必要である。
マイクロバブルの供給は作物根の活性を高め、温暖化による作物の高温障害を防止することも判明しており、今後の農業には欠かせない技術である。
温暖化による気象変動は、干魃をもたらす一方で集中豪雨による圃場の冠水、過湿条件をもたらせ、過湿の害による極端な生育抑制が起こる。強制排水は根圏の過湿水を除去して湿害の被害を広大な圃場で防止する効果がある。
根圏土壌の環境制御技術は、これら土壌の強制通気、強制通水、培養液供給、強制排水、土壌病害虫防除を一つのシステムで、省力的多角的に管理できる新技術であり、生産面でも今後の畑作農業、施設型農業生産の飛躍的向上と品質向上が期待される。
本根圏土壌の環境制御技術は、世界的食糧不足が進行する今後の社会に於いては、効率的な食糧生産の推進上重要な役割を有する技術である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】は簡易型の土壌の強制通水気及び土壌病害虫防除装置横断面モデルである。
【図2】は常設簡易型の土壌の強制通水気及び過湿土壌排水装置横断面モデルである。
【図3】は省力的根圏土壌環境制御装置横断面モデルである。
【図4】は省力的根圏土壌環境制御装置平面モデルである
【図5】はマイクロバブル供給による根圏土壌環境制御装置横断面モデルである。
【図6】は土壌病害虫防除システム装置横断面モデルである。
【図7】は多孔パイプ装置である。
【図8】は多孔パイプに作物根の侵入すを防止する耐腐食性の防根布膜袋である。
【図9】は簡易手動型強制通水、過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置である。
【写真の説明】
【0047】
【写真1】
はマイクロバブルの供給による野菜の高収穫、高品質化試験である。
【写真2】
はメチレンブルー脱色による根の酵素活性調査状況である。
【符号の説明】
【0048】
1 多孔パイプ
2 作物根侵入防止耐腐敗性の防根布膜袋
3 立ち上がりパイプ
4 パイプ出入口の開閉バルブ又は強制通気用開閉バルブ
5 通気ポンプ、通水ポンプコネクター
6 立ち上がりパイプ
7 パイプ出入口の開閉バルブ
8 簡易排水ポンプコネクター
9 多孔パイプ小孔
10 栽培作物
11 排水用ドレン槽
12 水、培養液、マイクロバブル供給用開閉バルブ
13 強制通気ポンプ(エアーポンプ)
14 強制通水ポンプ(加圧給水ポンプ)
15 マイクロバブル加圧給水ポンプ
16 水、培養液供給タンク
17 強制排水用開閉バルブ
18 強制排水ポンプ
19 強制排水口
20 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置踏み板
21 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置の作動ハンドル
22 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプの人力で前後に往復する梶棒
23 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置のポンプ室
24 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置のピストン
25 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置のピストン押棒
26 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置の踏み板装着支点
27 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置のピストン押棒装着支点
28 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置室の吸入側逆流防止弁
29 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置室の排出側逆流防止弁
30 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置強制通水の水の供給口及 び土壌溶液吸い出し口
31 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置強制通水及び強制通気吸 入の誘導パイプ及び土壌溶液吸入のための誘導パイプ
32 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置強制通水及び強制通気の 送り出し誘導パイプ及び土壌溶液排出のための誘導パイプ
33 簡易手動型強制通水・過湿土壌水吸引除去兼用ポンプ装置強制通水及び強制通気の 送り込み口及び土壌溶液排出口
34 窒素ガスボンベ
35 土壌表面被覆密封シート
a 100〜500μmの大きなサイズのマイクロバブルで生育したカキチシャ
b 10〜100μmの小さなサイズのナノバブルで生育したカキチシャ
c メチレンブルー標準溶液比較液シリーズ
d メチレンブルー反応溶液へ採取したカキチシャ根を浸漬した活性測定液
e 活性測定液の温度測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農地圃場地下5〜30cmの深さまで作畝にそってトレンチャーで溝を掘り、
溝底に直径12mmで径7mm以下の小孔を有する多孔塩化ビニルパイプ又はピンホール潅水チューブ又は複数のノズルを有する直径10mm以下の耐圧通水気チューブを埋設し、
パイプ又はチューブの末端に地上へ導くパイプと開閉バルブ及び接続コネクターを設け、
作物栽培期間中は接続コネクターと給水ポンプ又はエアーポンプを用途に応じて接続して水、培養液及び空気を必要に応じて根圏土壌内へ強制的に送り込んで作物の健康で旺盛な生育管理を行い、
栽培終了後の土壌病害虫防除に際しては土壌表面をシートで覆い密封して接続コネクターからクロールピクリンの注入をおこない窒素ガス供給装置を用いて窒素ガス噴射で強制的に薫蒸ガスを根圏土壌内へ送り込んで薫蒸を行うか、又は窒素ガスの単独噴射で強制的にガスを根圏土壌内へ送り込んで窒息させることにより、作物の生育及び農産物の収量及び品質を向上させる管理と土壌病害虫防除管理を目的にそって別々の時期に同一装置を用いて行うことを特徴とする圃場地下根圏の簡易短作期型の強制通水及び強制通気及び土壌病害虫窒息防除の方法。
【請求項2】
請求項1において圃場地下30〜40cmの深さまでトレンチャーで溝を掘り、
溝底に直径12mmで径7mm以下の小孔を有する多孔の塩化ビニルパイプを作畝にそって埋設し、
パイプの外側を被覆する耐腐敗性で通水、通気が可能な目の細かい布の防根布膜袋で覆い、
パイプ又はチューブの末端に地上へ導くパイプと開閉バルブ及び接続コネクターを設け、
通常の栽培ではコネクターと加圧給水ポンプ又はエアーポンプを接続して水、培養液及び空気をそれぞれパイプを通して根圏土壌内へ強制的に送り込み、
集中豪雨等で冠水又は過湿になった場合はコネクターと排水ポンプを接続して排水し、
作物の生育及び農産物の品質を向上させる強制通水及び強制通気及び強制排水を併せ行うことを特徴とする簡易常設型圃場地下根圏の環境制御方法。
【請求項3】
請求項1及び請求項2において圃場地下30〜100cmの深さまで作畝にそって溝をほり、
この作畝にそった溝の両端にこれらの溝を横断的に繋ぐ溝を掘り、
作畝にそった溝には溝底に直径15〜200mmで径7mm以下の小孔を有する多孔のプラスティックパイプ又は多孔の硬質ゴムチューブを埋設し、
横断する溝には太いパイプを埋設して作畝にそって設置したパイプ又はチューブと連結し、
作畝の多孔パイプ又はチューブは外側を耐腐敗性で通水気性の目の細かい布の防根布膜袋で被覆し、
横断パイプの一端と接続した加圧給水ポンプ又はエアーポンプ又はマイクロバブル送水機で強制的に水、培養液、マイクロバブル及び空気をそれぞれ多孔パイプから根圏土壌内へ送り込み、
作物の生育及び農産物の品質を向上させる強制通気及びマイクロバブル強制通水に加え、
培養液を強制供給する施肥管理の省力化と、
パイプ又はチューブと連結した横断パイプの一端に接続した排水ポンプで、豪雨水害時の畑の冠水による土壌過湿水を強制排水して湿害の被害を防止することと、
を合わせ機能することを特徴とする省力型農業の根圏土壌環境制御の方法。
【請求項4】
請求項1、請求項2及び請求項3において、
地下5〜100cmの深さの位置まで作畝にそって溝を掘り、
溝底に埋設する直径12〜200mmで径7mm以下の小孔を有する多孔のプラスティックパイプ又はゴムチューブ又は潅水チューブと、
パイプ又はチューブと末端で接続してパイプ内に溜まる水の集水ドレンと、
パイプ又はチューブの外側を被覆する耐腐敗性で通気性の目の細かい防根布膜袋と、
パイプ又はチューブに接続してパイプ内へ水を強制給水して加圧する給水ポンプと、
パイプ又はチューブに接続してパイプ内へ空気を強制通気する加圧エアーポンプと、
パイプ又はチューブと繋がった集排水ドレンに接続した排水ポンプと、
ドレン排水口の開閉を行うバルブとからなる装置で、
農地圃場の根圏へ水と空気及び培養液を強制的に供給し、
冠水時の土壌中の過湿水を強制的に排除する機能を有し、
強制通水気及び強制排水を特徴とする根圏土壌環境制御システム装置。
【請求項5】
請求項4において、装置のパイプ又はゴムチュ−ブに接続加設し、
パイプ又はゴムチュ−ブ内へマイクロバブルを強制的に送付する装置を取り付け、
マイクロバブルによる土壌への水の浸透力と酸素の浸透力を高め、
作物の生育収量と品質向上をさらに促進するためマイクロバブルの強制通水、強制通気及び強制排水を行うことを特徴とするマイクロバブルを供給する地下根圏の環境制御装置。
【請求項6】
請求項1及び請求項2における強制通水及び強制排水兼用の手動ポンプで、
人が乗って作業する踏み台と、
人が操作する把手のハンドルと、
てこの機能でピストンを動かし往復振幅する梶棒と、
シリンダー容器で踏み台に固定している二つのポンプ室と、
シリンダー容器に密着して気密性のピストンと、
振幅する梶棒と連結してピストンを動かす押し棒と、
踏み台と振幅する梶棒を連結する支点ベアリングと、
ピストンの押し棒と振幅する擢棒を連結する上下可動の支点ベアリングと、
給水時は給水タンクから過湿土壌水吸引時は多孔パイプからコネクターと接続して給水・配水のポンプへの吸引口と、
吸引した水を二つのポンプ室へ導く誘導パイプと
ポンプ室の入り口側の逆流防止弁と、
ポンプ室の出口側の逆流防止弁と、
二つのポンプ室から排出される水を排出口へ導く排出誘導パイプと、
排出口とから構成し、
排出口では給水時は給水タンクへ過湿土壌水吸引時は多孔パイプへコネクターと接続し、
人力で往復梶を前後に押し引きして、土中へ水や培養液を強制的に送水したり、過湿土壌溶液を吸い出すことが可能であることを特徴とする土壌の簡易手動型強制通水、過湿土壌溶液吸引排出兼用ポンプ。
【請求項7】
請求項2、請求項3、請求項4、請求項5において、耐腐敗性の防根布膜袋で周囲を覆ったパイプを深さの異なる位置に2〜数段設置する多段方式の地下根圏の環境制御方法。
【請求項8】
請求項2、請求項3、請求項4、請求項5及び請求項7において、土壌表面を機密性のシートで覆い、強制通気システムで地下根圏に窒素ガスを送り、窒素ガス単独で線虫及び土壌棲息害虫を窒息死させる機能、或いは窒素ガスとクロールピクリンで省力的に薫蒸することを特徴とする土壌病害虫窒息防除の方法。
【請求項9】
基本的装備として、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項7及び請求項8における強制通水、強制通気、土壌害虫窒息防除、強制排水等の根圏地下環境制御の方法と装置を採用する農業栽培技術。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−120523(P2012−120523A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294664(P2010−294664)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510077299)株式会社丸徳 (1)
【出願人】(398053550)有限会社情報科学研究所 (16)
【Fターム(参考)】