説明

作物油からの環状有機化合物の生産方法

バイオマス油を容器に追加し、バイオマス油を分解するためバイオマス油を加熱し、不要又は未反応な材料、重質留分、及び分解された前記バイオマス油からの軽質留分を除去し、5重量%〜90重量%の環状有機化合物を含む生産混合物を生産するために分解されたバイオマス油から成分を抽出する、バイオマス油から環状有機化合物を含む化学的生産物を生産するための方法。バイオマス油を分解し、分解されたバイオマス油から中間蒸留混合物を分離し、少なくとも約50重量%の環状アルカン及びアルケン化合物を含む化学的生産物の混合物を生産するために前記中間蒸留混合物を脱カルボキシル化し、少なくともオクタン価が100の航空燃料を生産するためにオクタン価が95より下である燃料とともに生産物の混合物を混合する低鉛含有の高オクタン価の航空燃料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アメリカ合衆国政府はこの発明及びアメリカ連邦航空局によって授けられた契約番号61047の約定によって提供された妥当な条件で他人にライセンスできることを特許権者に要求できるという限定的条件での権利についてライセンス料を支払った。
【背景技術】
【0002】
現代の工業化社会が直面している主な問題は、大部分の輸送燃料や多くの有機化学物質の一次原料である原油が急速に枯渇することである。石油化学工業は人間社会にとって相当な利益をもたらし、石油化学製品の代替資源の発明や事業化は非常に重要である。
【0003】
石油から度々生産される有機化学物質の一つの部類は芳香族及びシクロパラフィンを含む。これらの化学物質は、多種ポリマーや塗料、被覆剤のためのモノマーの提供、多種工業的及び消費化学物質のための中間生成物の提供、ガソリン、ディーゼル、航空ガソリン、及びジェット燃料のような異種の輸送燃料の有益な化学的成分の提供を包含する広い範囲で使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
意外にも、トリアシルグリセリド(TAGs)や他の脂肪酸から生成された芳香族及び/又はシクロパラフィンに富んだ業務用関連生産物の開発はわずかしかなされていない。したがって、原料、すなわち原油の供給が枯渇するとき、その要求を満たすには、化学物質のための代替資源を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
バイオマス油を反応容器に追加し、前記バイオマス油を分解するに十分な時間前記バイオマス油を約100℃〜約800℃の温度範囲まで加熱し、不要な材料、未反応のバイオマス油、重質留分、及び分解された前記バイオマス油から軽質留分を除去し、5重量%〜90重量%の環状有機化合物を含む化学的生産混合物を生産するために分解されたバイオマス油から成分を抽出することを含むバイオマス油から環状有機化合物を含む化学的生産物を生産するための方法である。前いいバイオマス油は真空条件から約2000psiaまでの圧力範囲で加熱される。
【0006】
バイオマス油を分解するため、約100℃〜約800℃の温度となるように前記バイオマス油を加熱し、分解されたバイオマス油から中間蒸留混合物を分離し、少なくとも約50重量%の環状アルカン及びアルケン化合物を含む化学的生産物の混合物を生産するために前記中間蒸留混合物を脱カルボキシル化し、少なくともオクタン価が100の航空燃料を生産するためにオクタン価が95より下である燃料とともに化学的生産物の混合物を混合することを備えた低鉛含有の高オクタン価の航空燃料の製造方法である。バイオマス油はほぼ真空条件〜約2000psiaの圧力で加熱される。中間蒸留混合物は少なくとも約50重量%の環状有機化合物を含む。航空燃料は約0.5g/lよりも少ない鉛濃度である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】環状有機化合物の生産処理の一実施例を示す概略ブロック図である。
【図2】航空ガソリンのための高オクタン価ブレンド原料流を生産するための処理の一実施例を示す概略ブロック図である。
【図3】高沸点芳香族及びシクロパラフィン化合物を生産するための処理の一実施例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
芳香族やシクロパラフィン化合物はゼオライト基材や異種触媒を用いた化学反応を経た作物油から生産される。一般に、H-ZSM-5触媒(アルミノケイ酸塩ゼオライト)はキャノーラやパーム油の実験による他の触媒よりも多くの芳香族化合物を生産する。しかしながら、H-ZSM-5触媒反応生産物の複合混合物は他の化学物質の生産に用いるための適合に制限している。さらに、H-ZSM-5によって生産された化学反応生産物の混合物は、気体、固体、水性液体、及び有機液体材料が混合した生産混合物であるため、航空ガソリンすなわちJP-8ジェット燃料のような用途には実用的ではない。
【0009】
本発明は前述の問題を予期することなく解決する。多様な製造工程の統合は一般的な作物油の製造の範囲外にある有益な化学的生産物を創造する。一例として、ポリマーを製造するための未精製の材料に転換するための芳香族化合物の精製がある。他の例として、アルキレート芳香族化合物を製造するために他の生産物とさらに反応される芳香族化合物の追加的な化学反応に利用可能であり、作物油から新規生産物を創造する製造工程の追加がある。これらのアルキレート芳香族化合物は航空ガソリンとジェット燃料の両方にふさわしいという特性を示しているが、もともとの芳香族化合物はそうではない。選択的に連続する反応は、航空ガソリンやジェット燃料に適しているとして製造される他の化合物に比べて幾つかの独特の特性を有するアルキレート芳香族化合物や他の芳香族化合物の幾つか又は全てをシクロパラフィンに転換するために使用される。芳香族、シクロパラフィン及び他の化合物の異種混合物の製造が可能であり、この異種混合物は、航空タービン燃料を生成する通常のプロセスでの石油ベースの芳香族化合物に置き換えて使用できる芳香族化合物の濃度が高い混合材料として好適する。
【0010】
「環状有機化合物」は化学的な化合物の主鎖を形成する炭素原子の環結合を一又はそれ以上含む化学的な化合物である。環状有機化合物は、ベンゼンやトルエン、あるいはシクロアルカン、例えばシクロヘキサンやシクロデカン、そしてシクロパラフィンのような芳香族化合物を含む。「芳香族」、「芳香族化合物」又は「芳香族炭化水素」は、一重及び二重の共有結合を交互にして接続されているかのような方法で電子を非局在化することによって接続された平面的な一組の6個の炭素原子を包含する炭化水素である。「シクロパラフィン」は分子の化学的構造中に一又はそれ以上の炭素原子の環を備えたアルカンであり、一般的には分子全体に20又はそれ以上の炭素原子を有している。
【0011】
芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、エチルベンゼン、メチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、プロピルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、テトラメチルベンゼン、セチルブテニルベンゼン、及びメチルプロピルベンゼンを含むがこれらには限定されない。また、芳香族化合物は多環芳香族、例えばナフタレン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、テトラヒドロメチルナフタレン、及びテトラヒドロエチルナフタレンを含んでいる。シクロパラフィンは、シクロペンタン、ブチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルメチルシクロヘキサン、メチルプロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ペンチルシクロヘキサン、シクロデカン、ジメチルエチルシクロデカン、ヘプチルシクロヘキサン及びオクチルシクロヘキサンを含むがこれらには限定されない。
【0012】
本発明の実施例は、植物油、生物学的に生成された脂質、及び動物性油からの環状有機化合物を含む生産物の生産及び精製のためのものである。特に、供給原料はトリアシルグリセリド(TAGs)、長鎖脂肪酸、長鎖脂質、又は類似化学物質である。本発明の実施例は現在においては使用されていない供給原料から前記化学物質の製造に有益且つ必要な化学物質を作り出す手段の提供を意味する。分解、化学反応、及び化学的分離技術に基づいた化学的改質は、他の供給原料源から生成された同等の化学製品と直接的に置換できる業務用品質の化学製品や、芳香族化合物及びシクロパラフィンを含む環状有機化合物の濃度が高いために好都合である燃料の混合原料を製造する。
「分解」とは、一又はそれ以上の炭素−炭素結合を切断することで有機化学物質又は化学的混合物の化学的構造を変化させる全ての処理をいう。
【0013】
TAGsや熱や触媒的な分解(個々のTGsか植物油のどちらか)に関連する研究は過去数十年で散発的に行われていた。表1に示すように、この研究で一組の有機反応がTAGsの熱又は触媒的な分解中に生じることが確認された。
【0014】
【表1】

【0015】
表1について以下に説明する。
1.TGエステル結合の熱分解
反応式の最後の矢印は「RCOOH及びR'COOHの製法に類似している」
2.脱ケテン化(反応1aの続き)
括弧内は「ケテン」、その先の矢印の後には「気体及びポリマー」
3.脱カルボニル化(反応1aの続き)
4.ラジカルの安定化
5.不飽和炭化水素の分解(アリル位置が優位なものを示す)
6.異性化
6a.二重結合の移動
6b.多くの安定化ラジカルの形成
7.分枝ラジカルの形成
7a.直接の異性化から多くの安定化ラジカルへの形成
反応式の矢印の後には「反応4によるアルカン及びアルケン」
7b.二重結合を備えたラジカルの反応
反応式の矢印の後には「反応4によるアルカン及びアルケン」
8.ディールズアルダー反応
反応後の物質は「環状アルケン」
9.脱水素化及び水素化
反応9aによる物質は「芳香族炭化水素」
反応9bによる物質は「シクロアルカン」
10.停止反応
「これまでは未知又はまれな反応」
11.脂肪酸分解
中段は「反応4〜9による炭化水素」、下段左下は「反応11bでのさらなる分解」、下段右下の矢印は「さらなる分解」
【0016】
温度、圧力、反応時間、そして特殊な触媒の存在又は不存在のような反応条件にもよるが、異なる反応生産混合物が生成される。かねてから「ルート」として表示されている3組の反応条件が記録され、「分解物(クラッケート)」として知られる反応生産混合物について表2を用いて要約する。
【0017】
【表2】

【0018】
ここで、
aルート1は300℃の低温での触媒的分解:アレンカル(Alencar)、1983年
bルート2は450℃の高温での触媒的分解:カティカネニ(Katikaneni)、1995年
cルート3は300℃〜360℃の低温での非触媒的分解:シュワーブ(Schwab)、1988年
表2での*は、追加的な9.7〜10.1%が「分解されていない不飽和化合物」として記載されている
【0019】
ルート2は高濃度の芳香族化合物の形成が生じた一組の状態を示している。しかしながら、この分解物の組成はこの形式では業務用として適用するには実用的ではない。
【0020】
出願人は、表2のルート2の反応条件に類似した反応条件を用いて分解物が生成され、この後、分解物が精製されて軽質留分、再生可能物、及びタールが除去されたとき、その結果物として5%〜50%の環状有機化合物を含む中間留出物が得られることを見出した。本発明の実施例は、熱又は触媒を用いた分解技術を用いていて、この分解技術は蒸留、濾過、膜濾過又は膜分離、溶媒抽出、及びTAGs及び他の脂肪酸から高濃度の環状有機化合物を生産するための関連技術のような分離技術と結びつけて考えられている。加えて、一定の生産物は追加的に続く化学反応を必要とする。分解と分離技術が当業者にとって公知であるが、これらの技術を組み合わせることは、業務用品質の環状有機化合物からなる燃料ブレンド原料を生産するため、又は業務用品質に精製された芳香性及び/又はシクロパラフィン性であって5%〜90%の環状有機化合物を有する化学的生産物を生産するためには用いられていない。芳香族化合物及びシクロパラフィン製品の混合物が製造可能であり、この混合物の少なくとも約20%、30%又は50%は芳香族化合物及び/又はシクロパラフィン製品である。
【0021】
さらに、出願人は処理中で生成された芳香族化合物の幾つか又は全てをさらに処理すると経済的に有利になることを見出した。後処理の一つとして、オレフィンとの反応に利用し、追加的に特殊なシクロパラフィンを生産することがある。この反応は、蒸留、濾過、溶媒抽出、及び関連技術のような分離技術と結びつけて考えられている。この場合の関連技術は、業務用品質のシクロパラフィンの多い炭化水素からなる燃料ブレンド原料を生産するため、又は業務用品質に生成されたシクロパラフィン性の化学的生産物を生産するためのものである。他の後処理として、特殊な誘導体である芳香族又はシクロパラフィンを主とする化学物質を生産するためにホスゲン又は他の化学物質と反応させることがある。この反応は、蒸留、濾過、溶媒抽出、及び関連技術と結びつけて考えられ、業務用品質の化学的生産物を生産するために用いられている。
【0022】
現在開示されている処理のための未精製の材料は、植物油又は藻のようなバイオマス、又は自然に合成された中及び/又は長鎖の脂肪酸中にある、並びに藻、動物性油、又は改質材料のようなバイオマス中にある化学的な化合物のグループに代表されるTAGとなることができる。「バイオマス」は、石炭又は石油のような物質の地質学上の処理によって変換された集団を除く生物学的な有機体の集団から誘導された有機的、非化石的な材料を指す。植物油中のTAGsは、グリセロール基を媒介させて接続された3つの中及び/又は長鎖の脂肪(自然に合成されたカルボキシル基の)酸からなる。中鎖及び/又は長鎖の脂肪酸は、食料源、化学的供給原料又は輸送燃料として用いるために精製、分離、そして、化学的に改質される。「長鎖脂肪酸」は、少なくとも15の炭素原子を包含する脂肪酸鎖のことを指す。「中鎖脂肪酸」は、10〜14の炭素原子を包含する脂肪酸鎖のことを指す。
【0023】
「植物油」は植物源から得られた脂質のことを指す。植物油は綿実、亜麻仁、大豆、ベニバナ、ヒマワリ、ゴマ、キャノーラ、菜種、ジャトロファ、ホホバ、マツヨイグサ、ケシ、カメリナ、ハマナ、オリーブ、ココナツ、ヤシ、コットン、トウモロコシ、ダイズ、及びナッツを含むがこれに限定されるものではない。主として工業的に利用できる作物油の組成が表3に記載されている。作物油中に含まれる典型的な脂肪酸は飽和及び不飽和脂肪酸を包含している。飽和脂肪酸は炭素原子間にどのような二重結合も含んでいない。不飽和脂肪酸は炭素−炭素間二重結合を有する2又はそれ以上の炭素原子を含んでいる。飽和脂肪酸はステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、及びラウリン酸を含む。不飽和脂肪酸はリノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ヘキサデカン酸、及びミリストレイン酸を含む。
【0024】
【表3】

【0025】
分離及び精製技術と結びつけて考えられている中及び/又は長鎖脂肪酸の熱的及び触媒的な分解は、公知技術であり、そして燃料又は燃料ブレンド原料として、明確にはディーゼル、灯油、航空タービン及び自動車用ガソリン燃料中の成分として用いることに適している化学的混合物を生産できる。「熱分解」とは、分解される物質の温度上昇によって測定される熱エネルギの態様でエネルギを付加する分解処理のことを指す。「触媒的な分解」は触媒を用いた分解処理を指す。
【0026】
分解処理において、エネルギは炭素−炭素結合を分解するために用いられる。互いの炭素原子は最終的に1個の電子及びフリーラジカルとなる。フリーラジカルのどのような反応においても表1に示した種々の生産物を導くことができる。巨大有機的分子を小さい及び多くの有益な分子に分解することは、触媒(触媒的分解)を伴う又は伴わない(熱分解)、高圧及び/又は高温を用いることによって達成できる。中鎖(10〜14の炭素)及び長鎖(16の炭素より多い)の脂肪酸は、熱的又は触媒的分解のいずれを用いても、分解処理にて混合した際に化学反応を起こさないことが示されている。この技術は、作物油又はバイオディーゼルの化学的組成を変更するために用いられている。しかしながら、業務用品質の環状有機化合物を生産するためには用いられていない。
【0027】
熱的又は触媒的分解を用いたTAGs及び脂肪酸から生産された芳香族化合物については前述されているが、従来技術では、分解中に生成される芳香族化合物及び/又はシクロパラフィンを得て、続いて業務上実行可能な製品を生産するという処理工程の全系列を一体としていない。本発明の実施例は作物油、生物学的に生成された脂質、すなわち動物性原料油を重要かつ有益な化学的生産物に変化させることを可能にしている。本発明は分離及び化学的反応技術に適用でき、この技術は他の原料油源から生成される業務用に利用できる化学物質に置き換えることができる作物油、生物学的に生成された脂質、すなわち動物性油を開発するため、及び異種の環状有機化合物が多い燃料ブレンド原料を開発するために熱的及び/又は触媒的分解技術に結びつけて考えられている。
【0028】
図1は本発明に係る分解及び芳香族化処理の一実施例を簡略化したブロックフロー図を描いたものである。作物油、脂質、すなわち動物性油源である原料10は現在利用可能な処理又は将来開発される処理によって製造される。原料10は分解反応12を促進するために予熱されて適切な容器(分解反応炉)に送り込まれるか,又は、容器に直接送り込まれる。原料の分解条件の下での時間、温度及び圧力を変化させることで、分解(転換)の度合いを制御可能である。温度及び時間(滞留時間)は二次的な役割を果たす圧力とともに重要な処理変数である。分解反応12は、約100℃〜約800℃、且つ真空条件から約2000psiaの圧力範囲で行われる。より好ましくは、分解反応12は約300℃〜約700℃で行われる。好ましくは、条件は、分解されるべき原料10にとって十分な時間、一般には約15分から約500分又はそれ以上の範囲で維持される。幾つかの原料の分解反応にとっては5分より短く、そして、500分より長い時間が適している。
【0029】
分解反応12から得られた生産物は分解条件及び原料10の最初の組成(例えば給油)及び分解反応炉での気体環境に依存されている。分解条件は化学的な成分の最適な混合物を生産するために詳細な化学的分析に基づいて変化しやすいものである。(1)好ましい生産物、特に芳香族化合物の収率を向上するため、(2)不要な生産物の形成を減少するため、及び/又は(3)低圧、低温、又は必要とする滞留時間が少ないことによる分解反応12の効率を向上するため、触媒は分解反応炉で用いられる。適切な触媒としては、活性アルミナ、シリカアルミナ、アルミニウム、ゼオライト、硝酸金属酸化物、パラジウム、ニオブ、モリブデン、プラチナ、チタン、コバルト、金及びこれらの組み合わせのようなレアメタルが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0030】
分解生産物(分解物)は生成された材料に依存する精製及び/又は処理工程14にかけられる。分解反応からの生産物は使用される反応炉の設計に明確に依存している。適切な反応炉の種類としては、バッチ式、連続的なフロースルー式、フロースルー充填床式及び流動床式が含まれる。一般に、分解反応炉で生成された材料は4つの普遍的なクラスのうちの一つに分類される。このクラスは、残った材料すなわち残渣16と、中間蒸留物18と、軽質留分20及び未反応の原料22である。精製及び/又は処理工程14は、分離して残った材料すなわち残渣16、中間蒸留物18、軽質留分20及び未反応の原料22を含む。
【0031】
残った材料すなわち残渣(タール)16は分解反応12中に生成された化学物質を含み、この化学物質は中間蒸留物18にとって望ましい分子量、揮発性又は発熱量よりも高分子量、低揮発性又は低発熱量を有する。多少の残渣16は未反応の原料22とともに中間蒸留物18から分離でき、未反応の原料22とともに処理できる。一般的に高分子量である他の残渣16は、分解反応12後に固体材料の形態となる。一般的に、この化合物は「タール」として知られている。「タール」とは分解反応中に生成された非常に長鎖の化学的化合物のことを指す。タール16は、例えば溶媒抽出又は蒸留を包含する種々の処理方法によって抽出されるボイラー燃料又は他の副産物のような有益な化学的化合物を含む。分解反応炉の設計に依存して、タール16はさらなる処理に影響を受けない。これらのタール16は技術的に知られた方法により分解反応炉又は分解触媒で酸化され、燃焼され、又は別の方法で除去される。
【0032】
中間蒸留物18は、芳香族化合物、シクロパラフィン化合物、短鎖のカルボン酸化合物、線上パラフィン化合物、オレフィン、及び好ましい特性を有し、計画的な処理で生じた主要な生産物を含む分解反応炉で生成された他の化合物の混合物である。「中間蒸留物」とは、ガソリン、灯油、又はディーゼル燃料への含有が容易な化学物質、又は、ガソリン、灯油、又はディーゼル燃料への含有が容易なパラフィン及び/又はオレフィンと同等の揮発性を有す化学物質のことを指す。
【0033】
「軽質留分」とは、中間蒸留物が液相中にあるときの温度及び圧力条件で、気相中にとどまっている化学物質のことを指す。軽質留分20は、分解反応12を処理するための反応炉に加えられる未反応の蒸気相材料を含み、例えば低分子量の有機化学物質及び分解反応12で生成した炭化水素に加えて、例えば水素、窒素、又は水蒸気のようなものである。メタン、メタノール、エタン、エタノール、n-ペンタン、i-ペンタン、辺点、ペンタノール、n-ブタン、i-ブタン、ブタノール、ブタン、メチルエステル、エチルエステル等の低分子量の有機化学物質及び炭化水素は、芳香族化合物及び他の中間蒸留物18の混合物中に相当な濃度で存在するとき、好ましくない化学的及び物理的特性(例えば揮発性)を有する。軽質留分20は、気液相分離、蒸留、凝縮、又は他の処理によって分解反応炉から出る他の材料から分離される。
【0034】
未反応の原料22は分解反応炉に入り、そして分解反応されるが、C16よりも短鎖の炭素を有する化学的化合物には変化しない。「未反応の原料」は、分解反応生産流れにおいて中間蒸留物成分のように反応性が高いものではなく、分解反応条件にさらされ、中間蒸留物及び/又は軽質留分及び又はタール中で変化した化学的組成を有する化合物である。この化合物は、TAGsが原料油か、又は部分的に分解されたパラフィン、オレフィン、若しくは中間蒸留物のブレンド成分のように反応性が高くなるように主要な炭素鎖中の多くの炭素原子を有するカルボン酸中にあるとき、発生油、もともとのTAGの脂肪酸鎖と長さが一致又は類似する脂肪酸と化学的に一致する。未反応の原料22は蒸留法又は他の分離技術によって中間蒸留物18から分離される。未反応又は未分解の原料22は追加の分解反応12のために分解反応炉に戻され、第2の反応炉又は他の目的のために利用するために供給される。
【0035】
中間蒸留物18のための後段の精製及び/又は処理工程24は特定利用のために要求された生産物に依存する。精製及び/又は処理工程24は溶媒抽出、蒸留、化学的反応、及びこれらの組み合わせを含む。中間蒸留物18に含まれた環状有機化合物を追加的に精製及び/又は処理ステップ24にさらすことは、適切な芳香族化合物又はシクロパラフィン最終製品28と同様に、追加的に中間蒸留物26を生じる。最終製品28は燃料ブレンド原料又は業務用化学物質として使用するための芳香族化合物及びシクロパラフィンを含む。不要な材料(図1では不図示)は、追加的な中間蒸留物26に加えて精製及び/又は処理工程24中に除去される。不要な材料には、精製及び/又は処理工程14及び/又は24に使用された溶媒と、最終製品28として得られたものではない他の化学的化合物を含む。
【0036】
上述した一連の例は、本発明が利用可能であることを証明するために記載されている。これらは典型的な例であるが、本発明が利用可能な様々の選択枝及び適用の全てを列挙しているものでもない。むしろ、本発明にとって現在のところ期待されている使用法の一般的な部類の典型的な代表例である。
【0037】
例1−航空ガソリンのためのオクタンブレンド原料流動向上の発生
図2に示すように、本発明の一実施例として、航空ガソリンのためのオクタン価向上剤の生産がある。オクタン価向上剤には、航空ガソリン(ASTM International Test Method (ASTM)D 910-04a)として必要な要件を満たす燃料混合物を生産するための主要な燃料流(灯油、バイオディーゼル又は燃料ブレンド原料)が混合される。図1に示したように、原料10は分解反応12及び上述した精製及び/又は処理工程14を経る。結果物たる中間蒸留物18はほぼ50重量%の芳香族化合物を含む。
【0038】
中間蒸留物18は、脂肪酸をアルカンに変化するために脱カルボキシル化30を目的としている。脱カルボキシル化30のために必要な水素32は精製及び/又は処理工程14で得られた軽質留分20から直接取り戻される。随意に、軽質留分20は、水素32の集合と導入が脱カルボキシル化30に進行する前に一酸化炭素及び又はメタン(不図示)と反応される。脱カルボキシル化30は脱カルボキシル化された中間蒸留物34及び二酸化炭素36を生じる。さらに、対象とする環状有機化合物の濃縮は、高オクタン価の航空ガソリンブレンド原料を含む最終製品40の仕様に合わせることが望まれるとき、脱カルボキシル化された中間蒸留物の追加的な処理工程38によって成し遂げられる。処理工程38は溶媒抽出、蒸留法、化学的反応及びこれらの組み合わせを含む。
【0039】
最終製品40(高オクタン価航空ガソリンブレンド原料)としての典型的な組成を表4に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
高オクタン価航空ガソリンブレンド原料としての最終製品40を調査したところ、そのオクタン価は123であった。最終製品40は燃料自体よりも高オクタン価の混合燃料を製造するための燃料に混合される。例えば、オクタン価が123の高オクタン価航空ガソリンブレンド原料としての最終製品40とオクタン価91のガソリンを3:7の割合にすると、100オクタン価の航空ガソリンが得られる。混合は従来の手段によって行うことができる。
【0042】
最終製品40のような環状有機化合物は初期燃料流と混合されることで、初期燃料流よりも少なくとも2オクタン単位高いオクタン価が結果として生じる。適切な初期燃料流はアルキレート(添加剤無しのガソリン)、航空ガソリンブレンド原料、航空ガソリン最終製品、自動車用ガソリンブレンド原料、及び自動車用ガソリン最終製品を含む。上述した100オクタン価の航空ガソリンは100LL航空ガソリンよりも低い鉛含有量である。一般に、100LL航空ガソリンはテトラエチル鉛(TEL)を含有している。100LL航空ガソリンの最大鉛含有量は0.56g/l(2g/U.S.ガロン)である。最終製品40は生産され、100LL航空ガソリンよりも著しく低い最大値の鉛(約0.39g/l以下)を含む100オクタン価の航空ガソリンを提供するために通常の航空ガソリンと混合される。また、最終製品40は、(鉛含有量を希薄化することによって)限界鉛含有量と一致している燃料生産物を生産するための限界許容量よりも高い鉛含有量の航空ガソリンと混合される。このような燃料生産物は約0.5g/l又はそれより低い鉛含有量を有して生産される。本発明によれば、芳香族、シクロパラフィン、及び他の化合物からなり、従来の100オクタン価の航空ガソリン生産物が一般に加えられているTELの幾つか又は全てを置き換えるために用いられている高オクタン価のブレンド原料として適した異種混合物が生産される。
【0043】
実験室規模の実験では処理に必要な環状有機化合物中の多くの分解物生成が行われている。この実験では、大豆油が小型の分解反応炉に送り込まれ、H-ZMS-5触媒で400℃の反応温度を超えて80分加熱される。この実験の全体的な目的は、航空ガソリンにとって、芳香性に富んだオクタン価向上剤を生産することである。分解反応で生産された芳香族化合物が確認され量化されている。分析では、個々の組成物の濃度(w/w%)が計算され、様々な化学的部類(直鎖状、イソ、及びシクロアルカンや、直鎖状、分枝状アルケンや、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン)や、他の芳香族や、脂肪酸や、全体として確定された留分)の下に計算した濃度を一緒に加えることで要約される。表5は、分解反応12語における分解物のBTEX、完全な芳香族、完全な脂肪酸、及び完全な確定又は未確定の留分の典型的な分解物組成を示している。図示したように、生産された70%の分解物が芳香族化合物である。
【0044】
【表5】


ここで
BTEXはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレンを含む
ARsは芳香族化合物である
FAsは脂肪酸である
【0045】
例2−ジェット燃料のための環状有機化合物ブレンド原料流の生成
本発明の一実施例として、高芳香性ジェット燃料ブレンド原料の製造方法を図3に示す。この環状有機化合物ブレンド原料は、JetA(ASTM D 1655-09),JP-8(MIL-DTL-83133),JP-4(MIL-DTL-5624U)又はJP-5(MIL-DTL-5624U)のために必要な条件を満たす混合燃料を生産するため、作物油又は石炭を含む他の原料から生産されたパラフィン系ケロセンと後に混合される。原料10は上述した図1で示した分解反応12並びに精製及び/又は処理工程14を経る。結果物としての中間蒸留物18はほぼ50重量%の芳香族化合物を含んでいる。
【0046】
ジェット燃料は芳香族化合物のための最低限及び最大限の仕様の両方を有している。業務上有益な多くのジェット燃料ブレンド原料を生産するため、中間蒸留物18は第2の精製42にかけられる。第2の精製42は芳香族44及び他の中間蒸留物26を含む分離能力がある生産物を生産する。芳香族44の一部はアルキル化反応46を経て高沸点芳香族へと変化する。一定条件下の分解反応12で、最終的に軽質留分20となるほぼ5%の2−4炭素(C−C)オレフィン50が生成される。このオレフィン50は精製工程52で軽質留分20から抽出され、アルキル化反応46に用いられる。また、アルキル化変換反応46はエチレン、プロピレン、ブチレン(不図示)の形式的な原料として軽質留分20から抽出されたオレフィンを伴い又は伴わずに利用される。
【0047】
さらに、高沸点芳香族48は水素化54を経てシクロパラフィン56に変化する。水素化54のために必要な水素58は軽質留分20から再利用される。水素化54を容易にするための水素58を抽出及び導入する前に、軽質留分20が一酸化炭素及び/又はメタン(不図示)と最初に反応することは選択的に行われる。水素源32及び58の一方又は両方は水素化54に導入される。
【0048】
図3に示された処理の主な反応は、分解反応及び精製42中に生産された様々な芳香族のアルキル化をもたらす。実験的にこれらの主な反応を確実なものとするため、分解反応12及び精製42で生産された一次的な芳香族44はそれぞれ反応され混合される。表6は、圧力釜で実行された変化、一致した生産物、及び続く以下の液相アルキル化のための転換、製品の同定、そして、精選を示している。
・個々の芳香族(ベンゼン、トルエン、及びオルト、メタ、パラキシレン)
・分解又は芳香族化で予想された流出物と調和されたA BTEX混合
・H-ZSM-5及び続く精製による大豆油の分解で生産された芳香性に富んだ中間蒸留物
【0049】
【表6】

【0050】
ここで
圧力釜容量は300mL〜1000mLの範囲
反応温度は150℃
反応圧力は500psig
シメンは1−メチル−x−(1−メチルエチル)ベンゼン及びこれらの異性体
イソプロピルキシレンは一つのイソプロピル基を有するキシレンアルキラート
【0051】
分解反応12並びに精製及び/又は処理工程14で多量に生産されるため、プロペンはアルキル化反応46のための模範アルケンとして最も優れている。また、エテンやブテンのような他のアルケンは芳香族化のために活発なアルキル化因子であり、おそらくプロペンとよく似た反応を示す。水素、エチレン、ブチレン及び他のオレフィンは、例えばメチルシクロヘキサンやエチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、並びに
1、3−ジメチルシクロヘキサン、1−メチル−2−エチルシクロヘキサン、1−メチル2−エチルシクロヘキサン、1、3、5−トリメチルシクロヘキサン、及び1、3、5−トリエチルシクロヘキサンのようなメチル、エチル、プロピル、ブチル、及びペンタシクロヘキサンの全ての組み合わせのような特定のシクロパラフィンを生成する。また、芳香族化合物は、クメン、トルエン、全てのキシレン、エチルベンゼン、n-及びイソプロピルベンゼン、n-及びイソブチルベンゼン、1,2-ジメチルベンゼン(オルトキシレン)、1-メチル-3-エチルベンゼン、1-メチル-3-プロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、(1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ビス(1-メチルエチル)ベンゼン、1-メチル-2-(1-メチルエチル)ベンゼン、1-メチル-3-(1-メチルエチル)ベンゼン、1-メチル-4-(1-メチルエチル)ベンゼン、2-エチル-1,3-ジメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1,2-ジメチル-3-(1-メチルエチル)ベンゼン、1,2-ジメチル-4-(1-メチルエチル)ベンゼン、1-エチル-4-(1-メチルエチル)ベンゼン、2,4-ジメチル-1-(1-メチルエチル)ベンゼン、1,3-ジメチル-5-(1-メチルエチル)ベンゼン、1,2,3,4,5-ペンタメチルベンゼン、1-エチル-2,4,5-トリメチルベンゼン、1,4-ジメチル-2-(1-メチルエチル)ベンゼン、及び1-エチル-4-(1-メチルエチル)ベンゼンを生成するため、水素、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレンのような他の化学物質と反応する。
【0052】
表6について言及する。
ベンゼンのアルキル化は、全て予想された同一の反応生産物であった。プロペンを伴うベンゼンのアルキル化は選択率がほぼ100%のクメンを形成した。150℃では、60分後に高プロペン変換に達した。
【0053】
トルエンのアルキル化では、トルエンのアルキル化率がベンゼンよりも非常に高く、10分に満たないうちに90%変化に達した。プロペンを伴うトルエンのアルキル化は選択率がほぼ100%のシメン(イソプロピルトルエン)を形成した。
【0054】
キシレンのアルキル化では、オルト及びパラキシレンの両方のアルキル化が60分後に本質的に完了し、期待された製品の混合物が製造される。この混合物は、オルトキシレンの2つの環位置でのイソプロピル基と、パラキシレンの単一の「イソプロピルキシレン」とからなる。
【0055】
BTEX混合に類似するアルキル化では、BTEX混合がクメン(ベンゼンから)、シメン(トルエンから)、及びイソプロピルキシレンを形成するために反応する。生産物の全ては、ジェット燃料ブレンド原料としては全て好ましい濃度、発火点、凝固点を生産するC−C11の範囲である。例えば、オルト及びパラシメンは、発火及び凝固点がそれぞれ47℃及び−70℃に近似している。処理の規模を大きくすると、ポリアルキル化のために芳香性が向上しているC14が含まれることが期待される。
【0056】
分解反応12及び精製及び/又は処理工程14及び処理工程42からの芳香性に富んだ中間蒸留物44のアルキル化では、芳香性に富んだ中間蒸留物44は、ベンゼン、トルエン、及びキシレンを選択的にアルキル化することによって生産されるようなクメン、シメン、及びイソプロピルキシレンの状態へと導かれる。アルキル化に用いられた約50%のプロペンは、当面の他の芳香族化合物44のアルキル化のために消費された残りを伴うベンゼン、トルエン、及びキシレンによって消費される。出願人は、他の成分によって著しく抑制されなかった反応と結論づけた。分解反応12並びに精製及び/又は処理工程14並びに処理工程42を通して得られた中間蒸留生産物44中のBTEX化合物が中間生成物精製工程をすることなく直接アルキル化されている(工程46)ことが結果として表されている。
【0057】
例3−ジェット燃料のための業務用ベンゼン及び芳香性が豊富なブレンド原料の生成
本発明の他の実施例では業務用品質のベンゼンが生産される。このベンゼン最終製品はASTM D 4734−04による純粋ベンゼン545(ASTM D 4492につきベンゼンが99.9重量%)に必要な純度条件を満たしている。原料10は、本質的な内容は上述し、図1で示したような分解及び精製をされる。結果物としての中間蒸留物18はほぼ50%の芳香族化合物を含む。
【0058】
中間蒸留物18には精製工程14がなされる。精製工程14は軽質留分20,再利用品22、およびタール16から中間蒸留物18を分離する。ベンゼンは第2の精製工程24にて中間蒸留物18から遊離される。第2の精製工程24は、芳香族化号物又はシクロパラフィン最終製品28となる業務用品質のベンゼンを製造するための抽出蒸留法及び/又は他の生成方法を含む。例えばベンゼン及び/又はトルエンのように選択された芳香族化合物は分解されたバイオマス油から遊離され、現在において適切な業務用化学的特性を満たす生産物へと精製される。さらに、これらの芳香族化合物は、例えばメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及び/又はトルエンジイソシアネート(TDI)のような有益な化学的中間生成物を精製するため、限定はされないがホスゲンを含む他の化学物質と反応する。
【0059】
本発明の他の実施例では、例えばトルエン、クメン(イソプロピルベンゼン)、エチルベンゼン、オルトキシレン及びパラキシレン原料のためのキシレンのような他の業務用品質の環状有機化合物が生産される。トルエン最終製品はASTM D 5606−01によるトルエンジイソシアネート(TDI)原料(ASTM D 2360又はD 6526による99.9重量%のトルエン)に必要な純度条件を満たしている。クメン最終製品はASTM D 4077−00によるクメン(ASTM D 3760による99.92重量%のクメン)に必要な純度条件を満たしている。エチルベンゼン最終製品物はASTM D 3193−96によるエチルベンゼン(ASTM D 5060による99.00重量%のエチルベンゼン)に必要な純度条件を満たしている。オルトキシレン最終製品はASTM D 5471−97によるオルトキシレン980(ASTM D 3797による98.0重量%のオルトキシレン)に必要な純度条件を満たしている。キシレン最終製品はASTM D 5211−01によるパラキシレン原料のためのキシレン(ASTM D 2306による18重量%の最少パラキシレン、20重量%の最多エチルベンゼン)に必要な純度条件を満たすことができる。
【0060】
典型的な実施例に言及して本発明の特徴を述べたが、本発明の範囲からそれることなくその要素を同等のものに代えたり、様々なもの変更できる。加えて、本質的な範囲から離れることなく本発明が示す個々の状態や材料を適用して多くの変形を施すことができる。それ故、本発明は開示した特定の実施例に限定されるものではなく、添付した請求項の範囲内に含まれる全ての実施例を包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器にバイオマス油を加え、
真空条件から約2000psiaまでの圧力範囲且つ約100℃〜約800℃の温度範囲にて前記バイオマス油を十分な時間加熱して分解し、
分解された前記バイオマス油から不要な材料、未反応のバイオマス油、重質留分及び軽質留分を除去し、
分解されたバイオマス油から成分を抽出し、5重量%〜90重量%の環状有機化合物を含む化学製品の混合物を生産するバイオマス油から環状有機化合物を含む化学製品の製造方法。
【請求項2】
前記分解されたバイオマス油から成分を抽出する前に、分解されたバイオマス油を反応させ、分解されたバイオマス油に官能基を加える請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記環状有機化合物は芳香族及びシクロパラフィン化合物である請求項1の製造方法。
【請求項4】
前記化学製品の混合物は20%又はそれ以上の環状有機化合物を含む請求項1の製造方法。
【請求項5】
前記化学製品の混合物は30%又はそれ以上の環状有機化合物を含む請求項4の製造方法。
【請求項6】
前記化学製品の混合物は50%又はそれ以上の環状有機化合物を含む請求項5の製造方法。
【請求項7】
前記分解されたバイオマス油の反応は、脱カルボニル化、アルキル化、水素化、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1の製造方法。
【請求項8】
前記分解されたバイオマス油からの成分抽出は、溶媒抽出、蒸留法、蒸発濃縮法、膜分離法、化学的反応及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1の製造方法。
【請求項9】
前記バイオマス油は植物油、生物学的に生成された脂質、動物性油及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項1の製造方法。
【請求項10】
前記植物油は大豆油、キャノーラ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、亜麻仁油、ジャトロファ油、ホホバ油、綿実油、ベニバナ油、ハマナ油、マツヨイグサ油、ゴマ油、菜種油、オリーブ油、ココナツ油、カメリナ油、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項9の製造方法。
【請求項11】
前記バイオマス油は約300℃〜約700℃までの温度に加熱される請求項1の製造方法。
【請求項12】
前記バイオマス油は約5分〜約500分の時間、加熱される請求項1の製造方法。
【請求項13】
前記バイオマス油は気体環境にて加熱される請求項1の製造方法。
【請求項14】
前記気体環境は不活性ガス、窒素、水蒸気、水素、気相有機化学物質の混合物及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項13の製造方法。
【請求項15】
前記バイオマス油を加熱する前に、前記反応容器に触媒を加える請求項1の製造方法。
【請求項16】
前記触媒はアルミナ、シリカアルミナ、硝酸金属酸化物、ゼオライト、パラジウム、ニオブ、モリブデン、プラチナ、チタン、アルミニウム、コバルト、金、及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項15の製造方法。
【請求項17】
前記反応容器はバッチ式、連続的なフロースルー式、スラリー式、フロースルー充填床式及び流動床式からなるグループから選択される請求項1の製造方法。
【請求項18】
前記環状有機化合物は、第1のオクタン価を有する一次燃料流と混合され、少なくとも第1のオクタン価よりも2オクタン単位高いオクタン価を有する燃料製品を作り出す請求項1の製造方法。
【請求項19】
前記1次燃料流は、アルキレート、航空ガソリンブレンド原料、航空ガソリン最終製品、自動車用ガソリンブレンド原料、及び自動車用ガソリン最終製品及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項18の製造方法。
【請求項20】
前記環状有機化合物は1次燃料流と混合され、0.56g/l(2g/U.S.ガロン)よりも低い鉛含有量を有した100オクタン価の航空ガソリンを製造する請求項1の製造方法。
【請求項21】
前記環状有機化合物は少なくとも50重量%のトルエン及び/又はベンゼンを備えている請求項1の製造方法。
【請求項22】
前記環状有機化合物は灯油、バイオディーゼル、処理されたバイオマス流、又は燃料ブレンド原料からなるグループから選択された1次燃料流と混合され、ASTM D 910−04aの条件を満たす燃料製品を製造する請求項1の製造方法。
【請求項23】
前記燃料製品は、アメリカ合衆国の軍燃料JP−8、JP−4又はJP−5又は業務用航空タービン燃料ASTM D 1655−09の代替品又はブレンド原料として使用可能な十分な化学的組成を有する請求項22の製造方法。
【請求項24】
前記環状有機化合物は精製されてASTM基準を満足する製品を作り出し、前記製品はベンゼン、トルエン、クメン、キシレン、及びエチルベンゼンからなるグループから選択される請求項1の製造方法。
【請求項25】
前記環状有機化合物は、溶媒の除去又はその精製のために処理される請求項1の製造方法。
【請求項26】
ほぼ真空条件〜約2000psiaの圧力且つ約100℃〜約800℃の温度にて前記バイオマス油を加熱して分解し、
分解されたバイオマス油から少なくとも約50重量%の環状有機化合物を含む中間蒸留混合物を分離し、
前記中間蒸留混合物を脱カルボキシル化し、少なくとも約50重量%の環状アルカン及びアルケン化合物を含む化学製品の混合物を作り出し、
化学的製品の混合物にオクタン価が95よりも下の燃料を混合して、少なくともオクタン価が100の航空燃料を製造し、この航空燃料は約0.5g/lよりも少ない濃度の鉛を含む低鉛含有の高オクタン価の航空燃料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509955(P2012−509955A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537438(P2011−537438)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/006282
【国際公開番号】WO2010/062390
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511126176)ユニヴァーシティー オブ ノースダコタ (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF NORTH DAKOTA
【住所又は居所原語表記】264 Centennial Drive,Stop 7095, Grand Forks, ND, USA 58202−7095
【Fターム(参考)】