説明

使い捨ておむつ

【課題】比較的に簡易な操作により、おむつ本体の前ウエスト域を確実に外側に折り曲げることができるとともに、かかる状態において着用者の身体に確実にフィットさせることのできる使い捨て着用物品の提供。
【解決手段】おむつ本体11においてクロッチ域14から前後ウエスト域12,13に延びる吸収性コア22が配置されており、吸収性コア22には、前ウエスト域12において横軸Qの方向へ延びる折曲案内部24が形成されている。ファスニングシステムが、後ウエスト域13の両側縁部13a,13bから横軸Qの方向の外方へ延出する一対のファスニング部材の肌対向面に設けられた第1ファスニング要素17と、前ウエスト域12非肌対向面に位置する第2ファスニング要素18とから構成された第1ファスニングシステムと、第1ファスニング要素17と前ウエスト域12の肌対向面に形成された第3ファスニング要素45とから構成された第2ファスニングシステムとから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、主として新生児を対象とする開放型の使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の開放型の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新生児を対象とする使い捨て着用物品は公知である。例えば、特許文献1には、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、表裏面シート間に介在された吸収性コアと、ウエスト回り方向へ延びる一対の着用バンドとを含む使い捨ておむつが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3343199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された使い捨ておむつは、おむつ本体の前端部における所定部位において、吸収性コアが隣接する部位よりも薄くまたは吸収液性コアが存在していないことによって形成された、おむつの横方向へ延びる折曲案内部を有する。
【0005】
折曲案内部及び着用バンドの上縁部に沿っておむつ本体の前端部を外側に折り返すことによって、着用者である新生児のへそを露出することができ、その腹式呼吸を妨げることはない。また、前記前端部の外面に位置する止着手段によって、該折り返し部位をおむつ本体に固定することができるので、新生児のへそを確実に露出することができる。
【0006】
しかし、着用バンドによる止着の後に、折曲案内部及び着用バンドの上縁部に沿っておむつ本体の前端部を外側に向かって折り曲げるので、へそが折曲案内部の近傍又はその下方に位置している場合には、着用バンドの止着を外しておむつの位置を調整する必要がある。また、外側に折り曲げられた部位の捲れを防止するために、着用バンドの他に該折曲部位を止着するための手段を要し、止着操作が手間である。さらに、比較的に幅広の着用バンドが着用者のウエスト回りを締め付けるので、着用者の下腹部に圧迫感を与えるおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、従来の発明の改良であって、比較的に簡易な操作により、おむつ本体の前ウエスト域を確実に外側に折り曲げることができるとともに、かかる状態において着用者の身体に確実にフィットさせることのできる使い捨ておむつの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本願の第1及び第2発明が対象とするのは、縦軸及び横軸と、肌対向面及びこれに対向する非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間において前記縦軸の方向へ延びるクロッチ域とを有するおむつ本体と、前記前後ウエスト域の両側縁部どうしを互いに連結するファスニングシステムとを含む使い捨て着用物品である。
【0009】
本願の第1発明の特徴とするところは、前記おむつ本体において、前記クロッチ域から前記前後ウエスト域に延びる吸収性コアが配置されており、前記吸収性コアには、前記前ウエスト域において前記横軸の方向へ延びる折曲案内部が形成されており、前記ファスニングシステムが、前記後ウエスト域の両側縁から前記横軸の方向の外方へ延出する一対のテープファスナタブの前記肌対向面に設けられた第1ファスニング要素と、前記前ウエスト域の前記非肌対向面に位置する第2ファスニング要素とから構成された第1ファスニングシステムと、前記一対の第1ファスニング要素と前記前ウエスト域の前記肌対向面に位置する第3ファスニング要素とを有する第2ファスニングシステムとから構成されていることにある。
【0010】
また、本願の第2発明の特徴とするところは、前記おむつ本体において、前記クロッチ域から前記前後ウエスト域に延びる吸収性コアが配置されており、前記吸収性コアには、前記前ウエスト域において前記横軸の方向へ延びる折曲案内部が形成されており、前記ファスニングシステムが、前記後ウエスト域の両側縁から前記横軸の方向の外方へ延出する一対のテープファスナタブの前記肌対向面に設けられた第1ファスニング要素と、前記前ウエスト域の前記非肌対向面に位置する第2ファスニング要素とから構成された第1ファスニングシステムと、前記一対の第1ファスニング要素と前記前ウエスト域の肌対向面に位置する第3ファスニング要素とを有する第2ファスニングシステムとから構成されており、前記第2ファスニング要素が前記前ウエスト域の前記非肌対向面において前記折曲案内部よりもウエスト開口側に位置しており、前記前ウエスト域における前記折曲案内部から前記縦軸の方向の外方へ延びる部位を前記折曲案内部を介して前記クロッチ域の非肌対向面に向かって外側へ折り曲げることによって、前記第1ファスニング要素を前記第3ファスニング要素に係合することにある。
【0011】
本発明の他の実施態様の一つとして、前記クロッチ域における前記吸収性コアに、前記横軸に沿って延びるクロッチ折曲誘導部が形成されている。
【0012】
本発明の他の実施態様の一つとして、前記クロッチ域における前記吸収性コアの前記後ウエスト域側に偏倚した位置に、前記横軸の方向に延びるクロッチ折曲誘導部が形成されている。
【0013】
本発明の他の実施態様の一つとして、前記折曲案内部及びクロッチ折曲誘導部が凹条溝である。
【0014】
本発明の他の実施態様の一つとして、前記吸収性コアが前記折曲案内部において存在していない。
【0015】
本発明の他の実施態様の一つとして、前記前ウエスト域の前記非肌対向面において、前記第1折曲案内部に対応する位置に外部から視認可能な折曲案内線が設けられている。
【0016】
本発明の他の実施態様の一つとして、前記第3ファスニング要素が、前記前ウエスト域の肌対向面を形成する繊維不織布シートにエンボス加工を施すことによって形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前後ウエスト域の両側縁部どうしを連結するためのファスニングシステムが第1及び第2ファスニングシステムから構成されているので、着用者の体の大きさに合わせてそれらを適宜選択して使用することができ、おむつのサイズ調整が容易である。また、第2ファスニングシステムを用いた場合には、前ウエスト域が外側に折り曲げられ、着用者の腹部が比較的に広範囲に締め付けられることはないので、着用者の腹部が圧迫されるおそれはなく、特に、新生児の場合には、その腹式呼吸の妨げとなることはない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態における使い捨て着用物品の一例としての使い捨ておむつの斜視図。
【図2】おむつを前後方向に伸展した状態のその内面から見た一部破断展開平面図。
【図3】図1のIII−III線断面図。
【図4】図2のIVで示す領域の拡大図。
【図5】図4のV−V線断面図。
【図6】おむつの他の実施態様における斜視図。
【図7】図6のVI−VI線で示す断面図。
【図8】本発明の第2実施形態のおむつにおける図3と同様の断面図。
【図9】本発明の第3実施形態のおむつにおける図7と同様の断面図。
【図10】本発明の第3実施形態におけるおむつの着用状態を示す図7と同様の断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態における使い捨て着用物品の一例としての使い捨ておむつ10の斜視図、図2は、おむつ10を前後方向に伸展した状態のその内面から見た一部破断展開平面図、図3は、図1のIII−III線断面図、図4は、図2のIVで示す領域の拡大図、図5は、図4のV−V線断面図、図6は、おむつの他の実施態様における斜視図、図7は、図6のVII−VII線で示す縦断面図である。
【0020】
図1〜4に示すとおり、おむつ10は、縦軸P及び横軸Qを有し、肌対向面側及びそれに対向する非肌対向面側と、前ウエスト域12と、後ウエスト域13と、前後ウエスト域12,13間に位置するクロッチ域14を備えるおむつ本体11と、おむつ本体11の後ウエスト域13の両側縁13a,13bから横軸Qの方向の外方へ延びる一対のテープファスナタブ15,16とを含む。テープファスナタブ15,16の肌対向面には、メカニカルファスナのフック群から形成された第1ファスニング要素17が配置されている。また、前ウエスト域12の外面には、テープファスナタブ15,16の第1ファスニング要素17を脱離可能に止着するための、横軸Qの方向へ延びるメカニカルファスナのループ群から形成された第2ファスニング要素18がホットメルト接着剤(図示せず)を介して取り付けられている。
【0021】
おむつ本体11は、繊維不織布、多孔プラスチックフィルム、それらのラミネートシート等から形成され、肌対向側に位置する透液性のトップシート20と、おむつ10の外形をなし、透湿性プラスチックフィルム、繊維不織布、それらのラミネートシート等から形成され、非肌対向面側に位置する不透液性のバックシート21と、フラップパルプと超吸収性ポリマー粒子との混合等から形成され、トップシート20とバックシート21との間に介在された吸収性コア22とを含む。トップシート20とバックシート21とは、吸収性コア22の周縁部から延出しており、該延出部位における両シート20,21のうちの少なくともいずれか一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合されている。また、吸収性コア22は、図示していないが、ティッシュペーパ等の拡散シートによって被包されていてもよい。
【0022】
トップシート20は、質量が20〜50g/m、好ましくは、30〜40g/m、繊維密度が0.01〜0.04g/cm、好ましくは、0.025〜0.035g/cmの範囲である、エアスルー繊維不織布やスパンボンド繊維不織布、ポイントボンド不織布などから形成されている。また、バックシート21は、質量が15〜40g/m、好ましくは、25〜35g/m、繊維密度が0.06〜0.1g/cm、好ましくは、0.07〜0.09g/cmの範囲である、スパンボンド不織布などから形成されている。
【0023】
吸収性コア22には、前ウエスト域12において横軸Qの方向へ延びる折曲案内部24と、クロッチ域14において横軸Q上においてそれに沿って延びるクロッチ折曲誘導部25とが形成されている。折曲案内部24とクロッチ折曲誘導部25とは、吸収性コア22を他の部位に比しておむつ本体11とフラットに展開した(図2参照)におけるZ方向(三次元)において薄くすることによって形成された凹条溝である。吸収性コア22に折曲案内部24とクロッチ折曲誘導部25とが形成されていることから、着用時において、クロッチ折曲誘導部25を介しておむつ10を前後方向に2つ折りにし易く、また、後記するように、折曲案内部24を介して前ウエスト域12を外側に折り曲げることができる。また、クロッチ折曲誘導部25のほかに、2つ折りの起点となる折り皺が形成されている場合には、該部位が着用者の身体から離間し、排泄物の漏れを誘発する原因ともなるが、クロッチ折曲誘導部25がおむつ10を2つ折りにするときの起点にもなるので、かかる事態を避けることができる。図2及び3に示すとおり、折曲案内部24を形成する吸収性コア22の両対向縁部24a,24bは曲状であるので、該部位がトップシート20を介して着用者の肌に当接しても刺激を与えることはない。なお、折曲案内部24は、前ウエスト域12の下方に形成されており、すなわち、折曲案内部24によって前ウエスト域12全体を外側に折り曲げる位置に形成されているが、前ウエスト域12の縦軸Pの方向における中央部近傍に形成して、前ウエスト域12の一部のみを外側に折り曲げるようにしてもよい。
【0024】
折曲案内部24は、縦軸Pの方向において所要寸法の幅を有する凹条溝であって、縦軸Pの方向における長さ寸法lは、後記の本発明の効果を有するために、10mm以上であることが好ましい。折曲案内部24は、おむつ本体11の外面に位置する第2ファスニング要素18の下側縁18aと重なる位置に形成されており、おむつ本体11の外面における折曲案内部24に対応する部位、すなわち、第2ファスニング要素18の下側縁18a上及びその近傍には、おむつ10の外面視において折曲案内部24の位置を確認することのできる折曲案内線28が形成されている(図1参照)。折曲案内線28は、着用者及び着用補助者が折曲案内部24の位置を容易に視認できるように、第2ファスニング要素18とは異なる色彩を施すことによって形成してもよいし、テープ片を貼付することによって形成してもよい。
【0025】
なお、図3に示すとおり、折曲案内部24とクロッチ折曲誘導部25とは、吸収性コア22の肌対向面を凹状にすることによって形成した凹条溝であるが、吸収性コア22の非肌対向面を凹状にして形成してもよい。また、折曲案内部24とクロッチ折曲誘導部25とは、吸収性コア22の一部を取り除くことによって形成してもよいし、該部位において吸収性コア22を圧縮変形させることによって形成してもよい。さらに、折曲案内部24とクロッチ折曲誘導部25とにおいて、吸収性コア22の厚さを他の部位と同じ厚さにして、その密度を他の部位に比して低くすることによって形成してもよい。
【0026】
トップシート20とバックシート21との間には、不透液性かつ透湿性のプラスチックフィルムから形成された防漏シート29が配置されており、両シート20,21のうちのいずれか一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して固定されている。また、おむつ10の肌対向面における吸収性コア22の横軸Qの方向の外方には、縦軸Pに関して対称の一対のバリアシート30,31が取り付けられている。
【0027】
おむつ本体11は、縦軸Pの方向に対向して横軸Qの方向へ延びる前後端部32,33と、横軸Qの方向に対向して、クロッチ域14において縦軸Pの方向へ延びる両側部34,35とをさらに含む。おむつ10の着用時において、一対のテープファスナタブ15,16の第1ファスニング要素17と前ウエスト域12の非肌対向面に位置する第2ファスニング要素18とを係合することによって、前後ウエスト域12,13の両側縁部どうしが連結され、ウエスト開口37及び一対のレッグ開口38が画成されている(図1参照)。
【0028】
前後端部32,33は、吸収性コア22の前後端縁から縦軸Pの方向の外方へ延出する、トップシート20と、防漏シート29と、バックシート21及びバリアシート30,31とが互いに重ね合わされることによって形成されている。また、両側部34,35は、吸収性コア22の両側縁から横軸Qの方向の外方へ延出する、トップシート20と、防漏シート29と、バックシート21及びバリアシート30,31とが互いに重ね合わされることによって形成されている。また、バックシート21とバリアシート30,31とは、前後ウエスト域12,13において、両側部34,35を形成するトップシート20と防漏シート29との両側縁からさらに横軸Qの方向の外方へ延出して互いに重なり合い、前後方側部フラップ39,40が形成されている。後方側部フラップ40を形成するバックシート21とバリアシート30,31との両側縁部間には、一対のテープファスナタブ15,16の固定部15a,16aが介在されており、両シートの内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して固定されている。また、後方側部フラップ40の側縁(後ウエスト域13の側縁13a,13b)から横軸Qの方向の外方へ延びるテープファスナタブ15,16の自由部15b,16bの肌対向面には、第1ファスニング要素17が設けられている。
【0029】
第1ファスニング要素17と第2ファスニング要素18とからなる第1ファスニングシステムにおいて、それが所要の剥離強度を有するものであれば、第1ファスニング要素17をフック群に替えて接着剤を塗布して形成してもよい。この場合には、第1ファスニング要素17を保護するために、第1ファスニング要素17の表面をシリコンを塗布したセパレータで被覆してもよい。
【0030】
テープファスナタブ15,16は、例えば、プラスチックフィルム、繊維不織布、それらのラミネートやクラフト紙等の比較的に剛性及び引張強度の高いシート材料から形成することが好ましい。また、本発明の所要の効果を奏する限りにおいて、テープファスナタブ15,16を用いることなく、後方側部フラップ40に設けられた第1ファスニング要素17を直接第2ファスニング要素18に脱離可能に係合してもよい。
【0031】
図4に示すとおり、前端部32のトップシート20の肌対向面には、第1ファスニング要素17が係止可能であって、エンボス加工されていて縦軸P及び横軸Qに関して斜めに延びる複数本の第1及び第2凹状ライン43,44が格子状に交差してなる第3ファスニング要素45が形成されている。第3ファスニング要素45は、折曲案内部24と前ウエスト域12の両側部34,35とに囲まれた領域に位置している。第3ファスニング要素45は、第1ファスニング要素17とともに第2ファスニングシステムを構成している。第1及び第2凹状ライン43,44の形状、大きさ及び互いの交差角度等は、適宜自由に選択しうるものであるが、本実施形態では、第3ファスニング要素45を構成する第1凹状ライン43と第2凹状ライン44との交差角度は、約90度であって、第1凹状ライン43と第2凹状ライン44とが交差することによって形成される各格子部47の大きさ(面積)は、約9.0〜12.0mmである。このように、第1及び第2凹状ライン43,44によって複数の格子部47が形成されていることによって、第1ファスニング要素17をトップシート20の表面に係止したときに、トップシート20を形成する繊維の毛羽立ちを抑えることができ、また、エンボス加工された部位には第1ファスニング要素17が係止され難いので、第2ファスニングシステムの係合強度を適度に調整することが可能である。さらに、エンボス加工がなされていることによって、着用者及び/または操作者が、第3ファスニング要素45の位置を容易に視認することができる。
【0032】
図5に示すとおり、トップシート20は、その表面側において縦方向に延びる複数の凸条50と、これら凸条50の間に位置する凹条51とを有する。トップシート20を形成する繊維は、全方位的にランダムに配向(3次元方向を含む。)しており、かかる凹凸形状は、トップシート20を形成する連続繊維ウエブ上に配置されたノズルから気体を噴射したり、ウォータージェット処理、スチームジェット処理、プレス加工またはギア加工によって形成することができる。トップシート20が凹凸形状を有することによって、第1及び第2凹状ライン43,44による第3ファスニング要素がより第1ファスニング要素17と係合しやすくなるとともに、トップシート20全体において主として凸条50が着用者の身体に接触することから、凹条51では縦軸Pの方向に延びる、いわば空気の通気路が形成され、おむつ内の湿気を外部へ放出することができ、通気性に優れている。
【0033】
また、繊維ウエブの繊維の再配向により凸条50の密度よりも凹条51における密度を低くすることもできる。その場合には、凹条51を介して排泄物が吸収性コア22に速やかに移動し、トップシート20の湿潤状態による着用者の不快感を防止することができる。また、噴射する気体量を調整することによって、凹条51に間欠的な透孔を形成し、該透孔を介して粘性度の高い軟便を速やかに下方へ移動させるようにしてもよい。
【0034】
トップシート20は、前記のとおり、その表面側において凹凸形状を有していることから、第1及び第2凹状ライン43,44によるエンボス加工が施されていない場合であっても、第1ファスニング要素17と係合することができ、第3ファスニング要素45としての機能を果たすことができる。また、本実施例のトップシート20のように凹凸形状を有する、トップシートとは別体の繊維不織布シートを第3ファスニング要素45として配置してもよいし、該別体の繊維不織布シートにエンボス加工が施されていてもよい。さらに、凹凸形状を有さず、かつ、エンボス加工が施されていない長繊維からなるスパンボンド繊維不織布などから作られたトップシート20を第3ファスニング要素45としてもよい。
【0035】
再び、図2を参照すれば、バリアシート30,31は、両側部34,35の一部を形成する近位縁部54と、前後ウエスト域12,13においてトップシート20及びバックシート21の肌対向面に固定された前後固定端部55,56と、前後固定端部55,56間において縦軸Pの方向へ延びる、バリアシート30,31の内側縁を内方へ折り返すことによって形成された遠位縁部57とを有する。防漏シート29の両側縁の横方向Xの外方には、縦軸Pの方向へ延びる3条のストランド状又はストリング状のレッグ弾性要素58がバリアシート30,31の近位縁部54とバックシート21の両側部との間にホットメルト接着剤(図示せず)を介して収縮可能に取り付けられている。また、遠位縁部57には、縦軸Pの方向へ延びる2条のストランド状又はストリング状のカフ弾性要素59が収縮可能に配設されている。遠位縁部57は、おむつ10の着用状態において、カフ弾性要素59の収縮作用によってトップシート20の肌対向面から離間し、排泄物の横漏れを防止するための一対の防漏カフが形成される。
【0036】
図6は、第1実施形態におけるおむつ10の他の実施態様を示す図、図7は、図6のVII−VII線断面図である。
【0037】
図6に示すとおり、折曲案内部24に沿って前ウエスト域12を外側に向かって折り曲げて、前端部32の肌対向面に形成された第3ファスニング要素45に第1ファスニング要素17を係止することによって、前ウエスト域12をクロッチ域14の非肌対向面に折り重ねた状態でおむつ10を着用することができる。この場合には、着用者の腹部が露出するので、着用者が未熟児を含む新生児の場合に、前ウエスト域12による締め付けによってその腹式呼吸が妨げられることはない。特に、新生児の場合にはへそ及びその周辺が十分に成熟しておらず、前ウエスト域12によるわずかな締め付けによっても刺激を与えるおそれがあるが、かかる事態を避けることができる。
【0038】
また、へその下方において、前ウエスト域12を折曲した後に、第1ファスニング要素17が第3ファスニング要素45に係合されているので、たとえ前ウエスト域12が着用者の腹部に当接していなくとも、下腹部において安定的におむつ10を着用者の身体に固定させることができるとともに、着用中に前ウエスト域12の折曲状態が解かれることはない。
【0039】
さらに、図6,7に示すとおり、第2ファスニングシステムによるおむつ10の着用状態では、前ウエスト域12がクロッチ域14の非肌対向面に向かって折り曲げられるので、後ウエスト域13及びその後方側部フラップ40がわずかに斜め前方に引っ張られて、テープファスナタブ15,16が第2ファスニング要素18に対して斜めに取り付けられる。かかる状態では、第1ファスニングシステムによるおむつ10の着用状態(図3参照)に比してレッグ開口38が小さくなるので、比較的に身体の小さな新生児の脚回りに対してレッグ開口38近傍をフィットさせることができ、レッグ開口38から排泄物が漏れ出るのを防止することができる。
【0040】
以上のとおり、本発明によれば、着用者の身体の大きさに合わせて第1及び第2ファスニングシステムのいずれかを適宜選択的に使用することができる。具体的には、着用者が通常の乳幼児の場合には、第1ファスニングシステムを用い、乳幼児よりも体の小さな未熟児を含む新生児の場合には、第2ファスニングシステムを用いておむつ10を着用者の身体にフィットさせることができるので、おむつ10のサイズ調整が比較的に容易である。
【0041】
また、既述のとおり、折曲案内部24の縦軸Pの方向の長さ寸法lは10mm以上であって、所与の幅寸法を有するものであるから、折曲案内部24及びその近傍が先尖状とならず、緩やかな湾曲状に折れ曲がるので、吸収性コア22が所要の剛性を有していても、折曲案内部24からなる前ウエスト域12の上端縁12aが着用者の腹部に食い込むおそれはない。
【0042】
さらに、前ウエスト域12が外側に折り曲げられることによって、前ウエスト域12に位置する吸収性コア22とクロッチ域14に位置する吸収性コア22とがおむつ10の前後方向において互いに重なり合うので、クロッチ域14のクッション性が向上するとともに、着用時及び着用中においておむつ10の位置ずれが生じた際に、前ウエスト域12とクロッチ域14とを指で摘んでおむつ10を引き上げ易くなる。
【0043】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態を示す図7と同様の縦断面図である。第2実施形態におけるおむつ10の基本態様は第1実施形態のそれと同様であるので、相違する点についてのみ以下に説明する。
【0044】
図8に示すとおり、本実施形態では、折曲案内部24には、吸収性コア22が存在していない。吸収性コア22は、前ウエスト域12に位置する分離部22Aと、クロッチ域14から後ウエスト域13に延びる本体22Bとに分離されている。このように、吸収性コア22が2つに分離されていることから、折曲案内部24による折り曲げがさらに容易になるとともに、クロッチ域14に位置する吸収性コア22の本体22Bで吸収された体液のクロッチ域14の外側に位置する分離部22Aへの拡散されることはなく、被服が体液によって汚されるのを抑制することができる。
【0045】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態を示す図7と同様の縦断面図,図10は、本発明の第3実施形態におけるおむつ10の着用状態を示す図7と同様の縦断面図である。第3実施形態におけるおむつ10の基本的態様は第1実施形態のそれと同様であるので、相違する点についてのみ以下に説明する。
【0046】
図9に示すとおり、本実施形態では、クロッチ折曲誘導部25がクロッチ域14における吸収性コア22の後ウエスト域13に偏倚した位置において横軸Qの方向へ延びている。かかる態様の場合には、前ウエスト域12を折曲案内部24を介して折り曲げた後に、後ウエスト域14をずり下げて、クロッチ折曲誘導部25を着用者の股下の中央部と対向する位置に配置させ、クロッチ折曲誘導部25を介しておむつ10を前後方向に折り曲げることによって、折曲案内部24によって折り曲げられた状態の前ウエスト域12の高さ、すなわち、前ウエスト域12の上端縁12aの位置と、後ウエスト域13の高さ、すなわち、後ウエスト域の端縁13cの位置とをほぼ平行にすることができる(図10参照)。このような場合には、前後ウエスト域12,13の高さがほぼ同じであって、着用者の腹部が露出した状態となり、該腹部を圧迫することがないとともに、おむつ10を比較的に身体の小さな着用者(例えば、新生児や未熟児など)のウエスト回り及び/又は下腹部回り全体にフィットさせた状態で着用させることができる。すなわち、前記のとおり、第1ファスニングシステムによる止着状態よりも第2ファスニングシステムによる止着状態におけるおむつ10のレッグ開口38は小さく画成されており、必要に応じて第2ファスニングシステムによる止着を行うことによって、乳幼児に比して脚周りが小さな新生児や未熟児などに対してもおむつ10のレッグ開口縁部をフィットさせることができる。
【0047】
また、さらに、第2ファスニングシステムによる止着の際に、かかる実施態様のごとく、前後ウエスト域12,13の高さをほぼ同じにすることで、おむつ10のウエスト開口縁部が着用者の胴回りによりフィットするとともに、第2ファスニングシステムを一度外して、レッグ開口38の縁部を着用者の脚周りにフィットした状態となるように止着し直すことによって、より身体の小さな着用者に対してもジャストフィットした状態で着用させることができる。このように、おむつ10は、第1ファスニングシステムによって止着された着用状態(第1着用状態)、第2ファスニングシステムにより止着され、かつ、前後ウエスト域12,13の高さが相違する着用状態(第2着用状態)、さらには、第2ファスニングシステムによって止着され、かつ、前後ウエスト域12,13の高さがほぼ並行である着用状態(第3着用状態)からなる、いわば3つの着用状態を着用者の身体の大きさに合わせ適宜使い分けることによって、容易にサイズ調整ができる。
【0048】
また、おむつ10は、通常、2つ折りにされた状態で複数枚が重ねられて包装されているところ、2つ折りにされている部位に、特に、シート部材に比して剛性の高い吸収性コア20に折り皺が発生する。かかる折り皺が前ウエスト域12における着用者の排尿器官と対向する位置に配置された場合には、該部位におけるフィット性が低下するとともに、排泄物の漏れを誘発するおそれがある。しかし、図9に示すとおり、クロッチ折曲誘導部25がクロッチ域14における吸収性コア22の後ウエスト域13に偏倚した位置に形成されていることから、該部位近傍に皺が生じるので、それよりも前方に位置する、2つ折りによる折り皺付近ではおむつ10と着用者の排尿器官近傍とがフィットした状態となり、排泄物の漏れを生じるおそれはない。
【符号の説明】
【0049】
10 使い捨て着用物品
11 おむつ本体
12 前ウエスト域
13 後ウエスト域
13a,13b 後ウエスト域の両側縁
14 クロッチ域
15,16 テープファスナタブ
17 第1ファスニング要素
18 第2ファスニング要素
22 吸収性コア
24 折曲案内部
25 クロッチ折曲誘導部
28 折曲案内線
45 第3ファスニング要素
P 縦軸
Q 横軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸及び横軸と、肌対向面及びこれに対向する非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間において前記縦軸の方向へ延びるクロッチ域とを有するおむつ本体と、前記前後ウエスト域の両側縁部どうしを互いに連結するファスニングシステムとを含む使い捨て着用物品において、
前記おむつ本体において、前記クロッチ域から前記前後ウエスト域に延びる吸収性コアが配置されており、
前記吸収性コアには、前記前ウエスト域において前記横軸の方向へ延びる折曲案内部が形成されており、
前記ファスニングシステムが、前記後ウエスト域の両側縁から前記横軸の方向の外方へ延出する一対のテープファスナタブの前記肌対向面に設けられた第1ファスニング要素と、前記前ウエスト域の前記非肌対向面に位置する第2ファスニング要素とから構成された第1ファスニングシステムと、
前記一対の第1ファスニング要素と前記前ウエスト域の前記肌対向面に位置する第3ファスニング要素とを有する第2ファスニングシステムとから構成されている
ことを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
縦軸及び横軸と、肌対向面及びこれに対向する非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間において前記縦軸の方向へ延びるクロッチ域とを有するおむつ本体と、前記前後ウエスト域の両側縁部どうしを互いに連結するファスニングシステムとを含む使い捨て着用物品において、
前記おむつ本体において、前記クロッチ域から前記前後ウエスト域に延びる吸収性コアが配置されており、
前記吸収性コアには、前記前ウエスト域において前記横軸の方向へ延びる折曲案内部が形成されており、
前記ファスニングシステムが、前記後ウエスト域の両側縁から前記横軸の方向の外方へ延出する一対のテープファスナタブの前記肌対向面に設けられた第1ファスニング要素と、前記前ウエスト域の前記非肌対向面に位置する第2ファスニング要素とから構成された第1ファスニングシステムと、
前記一対の第1ファスニング要素と前記前ウエスト域の肌対向面に位置する第3ファスニング要素とを有する第2ファスニングシステムとから構成されており、
前記第2ファスニング要素が前記前ウエスト域の前記非肌対向面において前記折曲案内部よりもウエスト開口側に位置しており、前記前ウエスト域における前記折曲案内部から前記縦軸の方向の外方へ延びる部位を前記折曲案内部を介して前記クロッチ域の非肌対向面に向かって外側へ折り曲げることによって、前記第1ファスニング要素を前記第3ファスニング要素に係合することを特徴とする前記着用物品。
【請求項3】
前記クロッチ域における前記吸収性コアに、前記横軸に沿って延びるクロッチ折曲誘導部が形成されている請求項1又は2記載の着用物品。
【請求項4】
前記クロッチ域における前記吸収性コアの前記後ウエスト域側に偏倚した位置に、前記横軸の方向に延びるクロッチ折曲誘導部が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の着用物品。
【請求項5】
前記折曲案内部及び前記クロッチ折曲誘導部が凹条溝である請求項3又は4に記載の着用物品。
【請求項6】
前記吸収性コアが前記折曲案内部において存在していない請求項5に記載の着用物品。
【請求項7】
前記前ウエスト域の前記非肌対向面において、前記折曲案内部に対応する位置に外部から視認可能な折曲案内線が設けられている請求項1〜6のいずれかに記載の着用物品。
【請求項8】
前記第3ファスニング要素が、前記前ウエスト域の前記肌対向面を形成する繊維不織布シートにエンボス加工を施すことによって形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−10991(P2012−10991A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150648(P2010−150648)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】